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タイトル:公開特許公報(A)_糖鎖試料の調製方法
出願番号:2012001839
年次:2013
IPC分類:G01N 30/88,G01N 30/06,G01N 30/26,G01N 30/60,G01N 30/72,G01N 27/447,B01D 15/08,G01N 1/10


特許情報キャッシュ

阿部 碧 島岡 秀行 JP 2013142566 公開特許公報(A) 20130722 2012001839 20120110 糖鎖試料の調製方法 住友ベークライト株式会社 000002141 特許業務法人セントクレスト国際特許事務所 110001047 阿部 碧 島岡 秀行 G01N 30/88 20060101AFI20130625BHJP G01N 30/06 20060101ALI20130625BHJP G01N 30/26 20060101ALI20130625BHJP G01N 30/60 20060101ALI20130625BHJP G01N 30/72 20060101ALI20130625BHJP G01N 27/447 20060101ALI20130625BHJP B01D 15/08 20060101ALI20130625BHJP G01N 1/10 20060101ALN20130625BHJP JPG01N30/88 NG01N30/88 101KG01N30/88 201GG01N30/06 ZG01N30/26 AG01N30/60 DG01N30/72 CG01N27/26 301AB01D15/08G01N1/10 CG01N1/10 F 6 OL 12 2G052 4D017 2G052AA28 2G052AB17 2G052AD26 2G052AD46 2G052DA06 2G052DA08 2G052DA09 2G052ED06 2G052ED07 2G052ED17 2G052GA22 2G052GA27 4D017AA11 4D017BA07 4D017CA01 4D017CB10 4D017DA03 4D017DB01 4D017EA01 本発明は、ラベル化した糖鎖試料の調製方法、該方法により調製された糖鎖試料、及び該糖鎖試料を用いた糖鎖の分析方法に関する。 糖鎖とは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸などの単糖及びこれらの誘導体がグリコシド結合によって鎖状に結合した分子の総称である。 糖鎖は非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。糖鎖は生体内でタンパク質や脂質などに結合した複合糖質として存在することが多く、生体内の重要な構成成分の一つである。生体内の糖鎖は、細胞間情報伝達、タンパク質の機能や相互作用の調整などに深く関わっていることが明らかになりつつある。 例えば、糖鎖を有する生体高分子としては、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、及び細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等が挙げられる。これらの高分子の糖鎖が、互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは阻害しあいながら高度で精密な生体反応を制御する機構が次第に明らかにされつつある。さらに、このような糖鎖と細胞の分化増殖、細胞接着、免疫、及び細胞の癌化との関係が明確になれば、糖鎖工学と、医学、細胞工学、あるいは臓器工学とを密接に関連づけて、研究開発における新たな展開を図ることが期待できる。 病気を早期に発見して生活の質(QOL)を高く保つためには、病気の発症の予防や推移を診断できるバイオマーカーが必要である。糖鎖生合成にかかわる糖転移酵素の遺伝子破壊マウスの解析から、糖鎖はさまざまな組織・器官の機能維持に必須であることが明らかにされている(非特許文献1,2)。また、糖鎖修飾に異常がみられるとさまざまな疾病が引き起こされることも知られている(非特許文献3)。糖鎖の構造は細胞の癌化やさまざまな疾病によって著しく変化するため、疾病の推移を調べるためのバイオマーカーとしての利用が期待されている。 糖鎖自体は蛍光性、紫外吸収性をもたないため、糖鎖を分析する際には予め修飾(ラベル化)を施すことが多い。糖鎖をHPLCあるいはHPLC-MSで分析する場合は、2-aminobenzamide誘導体化(2AB化)、2-aminopyridine誘導体化(PA化)などの蛍光ラベル化を施すことが一般的である(非特許文献4)。また、糖鎖をMALDI-TOF MSで分析する場合にも、ラベル化を施すことにより測定感度の向上を図ることが行われている(非特許文献5、6)。 糖鎖をラベル化する際には、ラベル化効率を高めるため糖鎖に対して過剰量のラベル化試薬を作用させる場合が多い。試料溶液中に過剰のラベル化試薬が存在すると、HPLC測定や質量分析に支障をきたすため、あらかじめ除去する必要がある。試薬の除去にはゲルろ過(例えばSephadex G-15を使用、非特許文献6)、固相抽出(例えばシリカゲル、グラファイトカーボン等を使用)などの方法が利用される。従来、これらの分離を行う場合には、適当な容器(カラム、カートリッジなど)に固相(充填材)を充填したものが主に使用されてきた。これらのカラム(カートリッジ)の分離性能を上げるためには、固相の充填密度を上げるか、充填剤の数平均直径を小さくするかのいずれかの方法が通常用いられている。しかし、前者では、充填剤の形状や直径のばらつきが原因となって充填密度が思うように上がらず、後者では、カラムや装置への圧力負荷が大きくなるため、処理速度に限界を生じやすい。また、小スケールのカラム(カートリッジ)では、充填剤を保持するために必要なフリット(ビーズ塞き止め用の部材)のデッド・ボリュームが分離性能や回収率を下げる要因となりやすい。そこで、これらの問題を解決するために、モノリスシリカを流路内に充填したカラムを用いる方法が開発されている(特許文献1)。国際公開2009-150834号公報Ioffe E., Stanley P., Proc. Natl. Acad. Sci., 91, pp.728-732 (1994)Metzler M., Gertz A., Sarker M., Schachter H., Schrader J.W., Marth J.D., EMBO J., 13, pp.2056-2065 (1994)Powell L.D., Paneerselvam K., Vij R., Diaz S., Manzi A., Buist N., Freeze H., Varki A., J. Clin. Invest., 94, pp.1901-1909 (1994)Shilova N.V., Bovin N.V., Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 29, pp.309-324 (2003)Shinohara Y., Furukawa J.-i., Niikura K., Miura Y., Nishimura S.-I., Anal. Chem., 76, pp.6989-6997 (2004)Furukawa J.-i., Shinohara Y., Kuramoto H., Miura Y., Shimaoka H., Kurogochi M., Nakano M., Nishimura S.-I., Anal. Chem., 80, pp.1094-1101 (2008) 本発明の目的は、モノリスシリカを流路内に充填したカラムを用いて過剰のラベル化試薬を除去することを特徴とする糖鎖試料の調製方法であって、ハイスループット化した場合でも、効率的に過剰のラベル化試薬を除去することが可能な方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレートを用いることにより、ハイスループット化が可能であることを見出した。すなわち、本発明者らは、このプレートによれば、複数の糖鎖試料を同時に処理した場合でも、高い糖鎖回収率を維持しつつ、過剰のラベル化試薬を効果的に除去することが可能であり、しかも、糖鎖試料を吸引(バキューム)などによってカラムのモノリスシリカ部を通過させて迅速な処理を行うことも可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。 (1) 糖鎖試料の調製方法であって、 (工程1)マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレートにおける当該カラムに、ラベル化糖鎖を含む試料溶液を注入することにより、モノリスシリカに糖鎖成分を吸着させる工程、 (工程2)モノリスシリカを洗浄液で洗浄する工程、 (工程3)モノリスシリカに溶出液を接触させ、吸着した糖鎖成分を溶出させる工程、を含むことを特徴とする方法。 (2) 工程1において、試料溶液を吸引、自然落下、加圧、又は遠心によってカラムを通過させる、(1)に記載の調製方法。 (3) 工程3において、溶出液が水を20%以上含む溶液である(1)又は(2)に記載の調製方法。 (4) (1)〜(3)のいずれか記載の方法によって調製された糖鎖試料。 (5) (1)〜(3)のいずれか記載の方法を実施するために用いる、マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレート。 (6) (4)に記載の糖鎖試料を、HPLC、質量分析、LC-MS、又はキャピラリ電気泳動法によって分析することを特徴とする、糖鎖の分析方法。 マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレートを用いる本発明の糖鎖試料の調製方法によれば、ハイスループット化することが可能となる。すなわち、本発明によれば、複数の糖鎖試料を同時に処理した場合でも、ラベル化糖鎖を含む試料溶液中の未反応のラベル化試薬を低減させ、糖鎖分析を高効率化することが可能となる。また、試料溶液について吸引などによってカラムのモノリスシリカ部を通過させることができ、迅速な処理も可能となる。さらに、糖鎖回収量のばらつきを抑制することも可能となる。図1は、実施例1で得られたHPLCチャートを示す図である。図2は、実施例1、2、及び比較例1で得られたHPLCにおける糖鎖由来のピークについて、その面積値の総量を比較した結果を示すグラフである。 (糖鎖試料) 本発明において使用する糖鎖試料は、例えば全血、血清、血漿、尿、唾液、細胞、組織、ウイルス、植物組織などの生体試料から調製されたものを用いることができる。また、精製された、あるいは未精製の糖タンパク質から調製されたものを用いることができる。試料として、別途精製された純粋な糖鎖を用いてもよい。糖鎖遊離手段を用いて上記生体試料に含まれる糖タンパク質から糖鎖を遊離させる。糖鎖を遊離させる手段としては、N-グリコシダーゼあるいはO-グリコシダーゼを用いたグリコシダーゼ処理、ヒドラジン分解、アルカリ処理によるβ脱離などの方法を用いることができる。N型糖鎖の分析を行う場合は、N-グリコシダーゼを用いる方法が好ましい。グリコシダーゼ処理に先立って、トリプシンやキモトリプシンなどを用いてプロテアーゼ処理を行ってもよい。 (糖鎖精製) 糖鎖をラベル化する前に、糖鎖以外の莢雑物(例えばタンパク質、ペプチド、核酸、脂質等)を除去することが好ましい。莢雑物の除去法としては、例えばゲルろ過精製、限外ろ過、透析、極性を利用した固相抽出、イオン交換樹脂による精製、溶解性の差を利用した沈殿などを用いることができる。糖鎖と選択的に結合する固相担体(例えば住友ベークライト(株)製 BlotGlyco BS-45603、非特許文献6参照)による精製を用いることもできる。莢雑物の除去を行わずに糖鎖をラベル化してもよい。 (糖鎖のラベル化) 糖鎖を含む試料を、必要に応じて乾燥させたのち、ラベル化試薬を加えて反応させラベル化する。ラベル化試薬としては、糖鎖の還元末端と反応性を有するアミノ基、ヒドラジド基、アミノオキシ基等の官能基を含む物質が好ましい。 アミノ基を有する物質としては、以下に列挙した化合物群から選ぶことが好ましいが、これに限定されるものではない。 2-aminopyridine; 2-aminobenzamide; 2-aminoanthranilic acid; 7-amino-1-naphthol; 3-(acetylamino)-6-aminoacridine; 9-aminopyrene-1,4,6-trisulfonic acid; 8-aminonaphtalene-1,3,6-trisulfonic acid; 7-amino-1,3-naphtalenedisulfonic acid: 2-amino-9(10H)-acridone; 5-aminofluorescein; Dansylethylenediamine; 7-amino-4-methylcoumarine; benzylamine. これら化合物のうち、2-aminopyridine(PA化)、2-aminobenzamide(2AB化)、2-aminoanthranilic acid(2AA化)、3-(acetylamino)-6-aminoacridine(AA-Ac化)は糖鎖をHPLC分析する際のラベル化として多用されており、特に好ましい。 また、8-aminonaphtalene-1,3,6-trisulfonic acid(APTS)は糖鎖をキャピラリ電気泳動法で分析する際に多用されており、特に好ましい。 ヒドラジド基を有する物質としては、以下に列挙した化合物群から選ぶことが好ましいが、これに限定されるものではない。 2-aminobenzhydrazide; 2-hydrazinobenzoic acid; benzylhydrazine;5-Dimethylaminonaphthalene-1-sulfonyl hydrazine (Dansylhydrazine); 2-hydrazinopyridine;9-fluorenylmethyl carbazate (Fmoc hydrazine); 4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-propionoc acid, hydrazide;2-(6,8-difluoro-7-hydroxy-4-methylcoumarin)acetohydrazide;7-diethylaminocoumarin-3-carboxylic acid, hydrazide (DCCH); phenylhydrazine;1-Naphthaleneacethydrazide; phenylacetic hydrazide. アミノオキシ基を有する物質としては、以下に列挙した化合物群から選ぶことが好ましいが、これに限定されるものではない。 N-aminooxyacetyl(tryptophyl)arginine methyl ester; O-benzylhydroxylamine; O-phenylhydroxylamine; O-(2,3,4,5,6-pentafluorobenzyl)hydroxylamine; O-(4-nitrobenzyl)hydroxylamine; 2-aminooxypyridine; 2-aminooxymethylpyridine; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid methyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid ethyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid n-butyl ester; aminooxy-biotin. これらの化合物のうち、N-aminooxyacetyl(tryptophyl)arginine methyl ester(aoWR)は、MALDI-TOF MS測定時の感度を向上させる効果があり、特に好ましい。 本発明の方法は、例えば糖鎖に対して10等量以上のラベル化試薬を添加し、還元剤の存在下で加熱反応を行うことが好ましいが、これらのラベル化反応の条件に限定されるものではない。ヒドラジド基含有化合物やアミノオキシ基含有化合物でラベル化を行う場合には、還元剤は必ずしも添加しなくともよい。 (ラベル化糖鎖の精製) 上記の方法により調製されたラベル化糖鎖溶液には、未反応のラベル化試薬が含まれているため、直接分析に供することは困難である。このため、測定前に予め未反応のラベル化試薬を除去することが必要となる。試薬の除去には、一般に、ゲル粒子、あるいはシリカゲル粒子等をカラム、カートリッジに充填したデバイスを用いることが多い。そして、これらのカラム(カートリッジ)の分離性能を上げるために、固相の充填密度を上げるか、充填剤の数平均直径を小さくするかのいずれかの方法が通常用いられている。しかし、前者では、充填剤の形状や直径のばらつきが原因となって充填密度が思うように上がらず、後者では、カラムや装置への圧力負荷が大きくなるため、処理速度に限界を生じやすい。また、小スケールのカラム(カートリッジ)では、充填剤を保持するために必要なフリット(ビーズ塞き止め用の部材)のデッド・ボリュームが分離性能や回収率を下げる要因となりやすい。 本発明では、これらの問題を回避するための手段として、流路内にモノリスシリカを充填したカラムを用いる。モノリスシリカとは、3次元網目構造をもつフィルター状の多孔質連続体をなすシリカである。モノリスシリカは2種類の大きさの細孔(メソポア・マクロポア)を有した一体型シリカであり、本明細書においては、μmサイズの細孔の直径をマクロ径、nmサイズの細孔の直径をメソ径と称する。モノリスシリカは、従来の粒子状シリカと比較して、通液性が良好、フリットが不要、デッドボリュームが少ないなどの長所がある。 複数の試料溶液について同時に処理する場合(ハイスループット化する場合)には、これらカラムが複数配置されているプレート(マルチウェルプレート)を用いることが好ましい。 本発明においては、ハイスループット化に適したモノリスシリカとして、細孔径(マクロ径)が1〜20μmのものを用いることができる。従って、本発明は、マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレートをも提供するものである。 カラムにおけるモノリスシリカの細孔径(マクロ径)は、より好ましくは2〜10μmであり、さらに好ましくは3〜8μmであり、最も好ましくは5〜7μmである。この最も好ましい範囲よりもモノリスシリカの細孔径(マクロ径)が小さい場合には試料溶液の通過が悪くなる傾向があり、大きい場合には、糖鎖試料の回収の効率が低下したり、糖鎖の回収量のばらつきが大きくなる傾向にある。 モノリスシリカの性状については、順相モード、あるいは、HILIC(Hydrophilic interaction chromatography)モードが好ましい。 モノリスシリカの使用形態としては、流路内にモノリスシリカを充填したカラムにラベル化糖鎖を含む試料溶液を注入し、吸引、自然落下、加圧、又は遠心などの方法により試料溶液についてカラムのモノリスシリカ部を通過させたのち、洗浄液で洗浄し、溶出液を添加し糖鎖成分を溶出させる。多くの試料溶液を迅速に処理し得るという観点からは、吸引が好ましい。 モノリスシリカに適用する試料溶液は、90体積%以上の有機溶媒を含むことが好ましく、95体積%以上の有機溶媒を含むことがさらに好ましい。有機溶媒はアセトニトリル、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ヘキサン、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフランなどを用いることができるが、アセトニトリルが最も好ましい。 糖鎖試料を適用したのち、モノリスシリカを洗浄液で洗浄する。洗浄液は90体積%以上の有機溶媒と10体積%以下の水を含むことが好ましく、95体積%以上の有機溶媒と5体積%以下の水を含むことがさらに好ましい。有機溶媒はアセトニトリル、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ヘキサン、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフランなどを用いることができるが、アセトニトリルが最も好ましい。組成の異なる洗浄液(例えば、100%アセトニトリルと、アセトニトリル/水(95:5, v/v)混合溶媒)で順次洗浄することも好ましい。 洗浄操作後、モノリスシリカに溶出液を接触させ、吸着したラベル化糖鎖を溶出する。溶出液は20体積%以上の水を含むことが好ましく、50体積%以上の水を含むことがより好ましく、純水が最も好ましい。なお、洗浄操作後、溶出操作前にモノリスシリカを乾燥させると、効果的に洗浄操作に用いた溶媒を除去することができるため、好ましい。モノリスシリカに対して、30秒程度の吸引処理を行うことにより、簡便かつ迅速にモノリスシリカを乾燥させることができる。 回収した糖鎖溶液は、必要に応じて濃縮、乾燥、あるいは希釈して各種測定に供することができる。 (MALDI-TOF MSを用いた糖鎖分析) 得られたラベル化糖鎖は、MALDI-TOF MSに代表される質量分析法で分析することができる。特に糖鎖がN-aminooxyacetyl-tryptophanyl(arginine methyl ester)でラベル化されている場合、MALDI-TOF MSを用いて高感度分析を行うことができる。 (HPLCを用いた糖鎖分析) 得られたラベル化糖鎖は、HPLCを用いて分析することができる。特に糖鎖がPA化、2AB化、2AA化、AA-Ac化されている場合、特に好適に分析可能である。 (その他の糖鎖分析) 得られたラベル化糖鎖は、HPLC-MS、キャピラリ電気泳動など各種分析に供することができる。 以下、実施例にて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 (糖鎖試料の調製) モデル糖タンパク質としてIgG(ウシ胎児血清由来)を用いた。IgG 1mgを容器に取り、100mM重炭酸アンモニウム溶液50μLに溶解させた。120mMジチオスレイトール溶液5μLを加えて60℃で30分インキュベートしたのち、123mMヨードアセトアミド溶液10μLを加え、室温で1時間静置した。さらにトリプシン400ユニットを加え、37℃で16時間静置した。90℃で5分間処理してトリプシンを失活させたのち、N-glycosidase F(Roche Diagnostics社製)1ユニットを添加し、37℃で16時間インキュベートすることで糖鎖を遊離させた。純水を加えて液量を100μLに調整した。 (糖鎖精製) 糖鎖捕捉性を有するポリマービーズを用いて糖鎖精製を行った。上記で得られたIgG糖鎖溶液20μL(IgG 200μg相当)を、ヒドラジド基含有ポリマービーズ(住友ベークライト株式会社製、BS-45603)5mgに添加し、2%酢酸を含むアセトニトリル180μLを加えたのち、80℃で1時間反応させ、乾固させた。2Mグアニジン塩酸塩溶液、水、メタノール、1%トリエチルアミン溶液にてポリマービーズを洗浄後、10%無水酢酸/メタノール溶液を添加し、室温で30分間反応させヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、メタノール及び水でポリマービーズを洗浄した。ビーズに純水20μL及び2%酢酸を含むアセトニトリル180μLを加え、80℃で1時間加熱・乾固させることにより、ビーズから糖鎖を遊離させた。 (糖鎖のラベル化) 糖鎖のラベル化を以下の方法で行なった。 2-aminobenzamideを350mMの濃度で30%(v/v)酢酸/DMSO混合溶媒に溶解した。さらに、還元剤としてシアノ水素化ホウ素ナトリウムを1Mの濃度で上記溶液に溶解した。この溶液50μLを上述のビーズに添加し、80℃で2時間反応させることにより糖鎖を2ABラベル化した。溶液を回収し、2ABラベル化糖鎖溶液(未反応の2ABを含む)を得た。 (ラベル化糖鎖の精製) 未反応のラベル化試薬を除去するため、以下の方法で固相抽出を行った。 [実施例1] 2ABラベル化した試料溶液を96ウェルクリーンアッププレートを用いて未反応2ABの除去を行った。本プレートの各ウェル内に、細孔径(マクロ径)6.5μmのディスク状モノリスシリカフィルターが容量約1mLのウェルの底部に固定されている。 上記で得た2ABラベル化糖鎖溶液をアセトニトリルで希釈し、アセトニトリル含量が95%(v/v)となるように調製した。この試料溶液の全量を、96ウェルクリーンアッププレートのウェルに注入後、速やかに吸引(バキューム)しラベル化糖鎖をモノリスシリカに吸着させた。アセトニトリル、アセトニトリル/水(95:5, v/v)でカラムを順次洗浄したのち、30秒間吸引(バキューム)し、カラムを乾燥させた。その後、カラムに純水100μLを加えて吸着成分を溶出させ、回収した。 [実施例2] 2ABラベル化した試料溶液を実施例1で用いた96ウェルクリーンアッププレートを用いて未反応2ABの除去を行った。 上記で得た2ABラベル化糖鎖溶液をアセトニトリルで希釈し、アセトニトリル含量が95%(v/v)となるように調製した。この試料溶液の全量を、96ウェルクリーンアッププレートのウェルに注入し、10分間自然落下させた。残った溶液をバキュームしラベル化糖鎖をモノリスシリカに吸着させた。アセトニトリル、アセトニトリル/水(95:5, v/v)でカラムを順次洗浄したのち、30秒間吸引(バキューム)し、カラムを乾燥させた。その後、カラムに純水100μLを加えて吸着成分を溶出させ、回収した。 [比較例1] 2ABラベル化した試料溶液をモノリスシリカを用いて未反応2ABの除去を行った。モノリスシリカとして、ジーエルサイエンス株式会社製「MonoFasスピンカラム」を用いた。本カラムは、細孔径15μmのディスク状モノリスシリカフィルターが容量約1mLのチューブの底部に固定されたものであり、試料溶液をチューブ内に注入して遠心することにより、試料溶液をモノリスシリカの細孔内を通過させる仕組みになっている。 上記で得た2ABラベル化糖鎖溶液をアセトニトリルで希釈し、アセトニトリル含量が95%(v/v)となるように調製した。この試料溶液の全量を、モノリスシリカスピンカラムに注入し、卓上遠心機で遠心して通過させてラベル化糖鎖を吸着させた。アセトニトリル、アセトニトリル/水(95:5, v/v)でカラムを順次洗浄したのち、純水50μLを加えて吸着成分を溶出させ、回収した。 (HPLC測定) 上記実施例及び比較例の方法で得た糖鎖溶液をHPLCで測定した。HPLC装置はWaters HPLC system, 2695 Alliance separations module, 2475 fluorescence detectorを用い、分析用カラムは昭和電工製Shodex Asahipak NH2P-50 4Eを用いた。分析はグラジエントモードで行い、移動相は、(A) 2%(v/v)酢酸/アセトニトリル溶液、(B) 3%(v/v)酢酸、5%(v/v)トリエチルアミン/水溶液を用い、90分間で(A)の比率を70%から5%に変化させた。カラム温度は40℃に保った。検出は蛍光検出で行い、実施例1及び比較例(2AB化糖鎖)の場合は励起波長330nm、蛍光波長420nmで検出し、実施例2(PA化糖鎖)の場合は励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出した。サンプル溶液の注入量は、実施例、比較例とも、全サンプル溶液の1/20、すなわち、IgGに換算して10μgとなるように調整した。 図1には実施例1で得られたHPLCチャートを示す。横軸は保持時間(分)、縦軸は蛍光強度である。図中、(a)は未反応ラベル化試薬由来のピーク、(b)は中性糖鎖由来のピーク、(c)はシアル酸を1つ含む糖鎖由来のピーク、(d)はシアル酸を2つ含む糖鎖由来のピークを示す。図2は、実施例1、2、比較例1で得られたHPLCの糖鎖由来のピークについて、その面積値の総量を比較したグラフを示す。 実施例、比較例ともにほぼ同等の回収量であることが判明した。 なお、実施例1及び2に関して、細孔径(マクロ径)が3μm、7μm、10μm、15μmのディスク状モノリスシリカフィルターを用いて同様の実験を行った。その結果、スルーポア径(マクロ径)が7μmのディスク状モノリスシリカフィルターを用いた場合には、実施例1及び2と同様の結果が得られたが、スルーポア径(マクロ径)が10μm又は15μmのディスク状モノリスシリカフィルターを用いた場合には、試料溶液について、吸引によりモノリスシリカフィルターを通過させた場合には、自然落下によりモノリスシリカフィルターを通過させた場合よりも、糖鎖回収量が低下するウェルが生じた。 一方、細孔径(マクロ径)が5μmよりも小さいディスク状モノリスシリカフィルターを用いた場合には、糖鎖試料のフィルターの通過が悪くなった。 本発明の方法を用いると、ハイスループット化した場合でも、糖鎖のラベル化反応後におこなう未反応試薬の除去工程を効率的に行うことが可能となる。従って、本発明は、糖鎖研究はもとより、天然物からの糖鎖回収や糖鎖標準物質の製造にも利用でき、さらには、糖鎖分析による疾患マーカーの探索や糖鎖分析による診断など医療の分野にも応用可能である。糖鎖試料の調製方法であって、 (工程1)マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレートにおける当該カラムに、ラベル化糖鎖を含む試料溶液を注入することにより、モノリスシリカに糖鎖成分を吸着させる工程、 (工程2)モノリスシリカを洗浄液で洗浄する工程、 (工程3)モノリスシリカに溶出液を接触させ、吸着した糖鎖成分を溶出させる工程、を含むことを特徴とする方法。工程1において、試料溶液を吸引、自然落下、加圧、又は遠心によってカラムを通過させる、請求項1に記載の調製方法。工程3において、溶出液が水を20%以上含む溶液である請求項1又は2に記載の調製方法。請求項1〜3のいずれか記載の方法によって調製された糖鎖試料。 請求項1〜3のいずれか記載の方法を実施するために用いる、マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレート。請求項4に記載の糖鎖試料を、HPLC、質量分析、LC-MS、又はキャピラリ電気泳動法によって分析することを特徴とする、糖鎖の分析方法。 【課題】 モノリスシリカを流路内に充填したカラム状を用いて過剰のラベル化試薬を除去する方法であって、ハイスループット化した場合でも、効率的に過剰のラベル化試薬を除去することが可能な方法を提供すること。【解決手段】 マクロ径が1〜20μmのモノリスシリカを流路内に充填したカラムが複数配置されたプレートを用いることにより、複数の糖鎖試料を同時に処理した場合でも、高い糖鎖回収率を維持しつつ、過剰のラベル化試薬を効果的に除去することが可能であり、しかも、糖鎖試料を、吸引などによってカラムのモノリスシリカ部を通過させて迅速な処理を行うことも可能であることを見出した。【選択図】 なし


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