タイトル: | 公開特許公報(A)_イソシアヌレート化合物 |
出願番号: | 2012000442 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C08G 59/02,C07D 405/14 |
熊野 岳 武田 琢磨 溝部 昇 JP 2013139527 公開特許公報(A) 20130718 2012000442 20120105 イソシアヌレート化合物 四国化成工業株式会社 000180302 熊野 岳 武田 琢磨 溝部 昇 C08G 59/02 20060101AFI20130621BHJP C07D 405/14 20060101ALI20130621BHJP JPC08G59/02C07D405/14 1 OL 9 4C063 4J036 4C063AA05 4C063BB08 4C063CC71 4C063DD43 4C063EE10 4J036AJ18 4J036DB06 4J036DB15 4J036DC01 4J036DC41 4J036DD02 4J036DD07 4J036FB07 4J036GA01 4J036GA04 本発明は、新規なイソシアヌレート化合物に関するものである。 イソシアヌレート化合物を熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の原料として用いた場合には、同化合物の有するリジッドなトリアジン骨格が、樹脂を構成する重合体の分子中に取り込まれることにより、樹脂の機械的強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、耐候性(耐光性)、難燃性、電気的特性等を改善することができる。そのため、樹脂が使用される用途や、樹脂に求められる特性に応じて、数多くの種類のイソシアヌレート化合物が開発・検討され、また実用にも供されている。 本発明に類似する物質として、特許文献1には、例えば化学式(II)で示されるイソシアヌレート化合物が開示されている。この物質はオキシラン環(エポキシ基)を有するところから、エポキシ樹脂の原料として好適なものである。特開2010−1424号公報 本発明は、エポキシ樹脂の原料としての用途が期待される、新規なイソシアヌレート化合物を提供することを目的とする。 本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、化学式(I)で示されるイソシアヌレート化合物を合成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。 本発明のイソシアヌレート化合物は、トリアジン環と共にエポキシ基およびグリシジル基を有する物質であるので、一般に使用されている種々のエポキシ化合物との併用や代替が可能であり、これを硬化させて得られるエポキシ樹脂は、優れた耐候性や耐熱性を発揮することが期待される。そして、このイソシアヌレート化合物は液体であるので、エポキシ樹脂の添加剤として使用される種々の改質剤や充填剤との相溶性に優れることが期待される。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明は、前記の化学式(I)で示される2つのイソシアヌレート化合物であり、これらの物質名は、1−モノ[2−(3,4−エポキシシクロヘキシルカルボニルオキシ)エチル]−3,5−ジグリシジルイソシアヌレートと、1,3−ビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシルカルボニルオキシ)エチル]−5−グリシジルイソシアヌレートである。 本発明のイソシアヌレート化合物は、1,3−ジアリル−5−モノ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、または1−アリル−3,5−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸との脱水反応により得られる生成物を、更にエポキシ化することにより合成することができる。 上記脱水反応においては、公知の酸性触媒を使用することができる。該触媒としては、例えばパラトルエンスルホン酸、硫酸等が挙げられる。 この脱水反応は、生成する水を反応系外に留去することにより進行し、水の留去が終了することによって、当該脱水反応が完了する。 この脱水反応においては、必要により反応溶媒を使用することができる。反応溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼンやキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素、メチルエチルケトンやシクロヘキサノン等のケトン類の他、四塩化炭素、ジクロロエタンやトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。 また、この脱水反応の反応温度は、使用する原料、反応溶媒や反応スケール等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは80〜150℃である。この反応温度が80℃未満の場合には反応が遅くなり、一方、反応温度が150℃を超える場合は、反応系が不安定になって副反応が起こり易くなったり、反応液がゲル化する虞がある。 前記のエポキシ化の手段としては、公知の方法を採用することができる。このような方法としては、例えばオキソン試薬を用いる方法、過酢酸、メタクロロ過安息香酸などの過酸を用いる方法や、タングステン酸ナトリウムを触媒とした過酸化水素を用いる方法を挙げることができる。 本発明のイソシアヌレート化合物は、公知のエポキシ化合物の代わりに、または公知であるか新規であるかを問わず、エポキシ化合物であると分類される物質と共に、硬化剤および必要に応じて硬化促進剤(硬化触媒)を配合してエポキシ樹脂組成物とすることができる。 前記の公知のエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのような環状脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートやヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環状エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂や、ハロゲン化エポキシ樹脂等の他、炭素−炭素二重結合およびグリシジル基を有する有機化合物と、SiH基を有するケイ素化合物とのヒドロシリル化付加反応によるエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物(例えば、特開2004−99751号公報や特開2006−282988号公報に開示されたエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物)が挙げられる。 なお、上記のエポキシ樹脂とは、硬化前のエポキシ化合物を指す。 前記の硬化剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物、酸無水物やアミン類の他、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂末端メルカプト化合物等のメルカプタン化合物、トリフェニルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン等の有機ホスフィン系化合物、芳香族ホスホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族セレニウム塩等が挙げられる。 前記のフェノール性水酸基を有する化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジヒドロキシナフタレン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、レゾルシノール等が挙げられる。 前記の酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ナジック酸無水物、ハイミック酸無水物、メチルナジック酸無水物、メチルジシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸等が挙げられる。 前記のアミン類としては、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノールエーテル、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等や、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。 前記の硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等イミダゾール化合物、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、テトラブチルホスフォニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオネート等のホスホニウム化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−メチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、酢酸鉛、オクチル酸錫、ヘキサン酸コバルト等の脂肪族酸金属塩等が挙げられる。 なお、これらの物質のうちの一部は、前述のとおり硬化剤としても使用される。 前記のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて非晶性シリ力、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、クレー、タルク、ケイ酸カルシウム、酸化チタン等の無機質充填材の他、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル等の各種ポリマーを配合することができる。 また、これら以外にも、エチレングリコール、プロピレングリコール等脂肪族ポリオール、脂肪族又は芳香族カルボン酸化合物、フェノール化合物等の炭酸ガス発生防止剤、ポリアルキレングリコール等の可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、シラン系等のカップリング剤、無機充填材の表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、有機ポリマービーズ、ガラスビーズ、グラスファイバー等の無機充填材等の耐衝撃性改良剤、揺変性付与剤、界面活性剤、表面張力低下剤、消泡剤、沈降防止剤、光拡散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、離型剤、蛍光剤、導電性充填材等の添加剤を配合することができる。 このようなエポキシ樹脂組成物は、プリント配線板や電子部品用の塗料、封止材、接着剤、レジストインク等の他、木工用塗料、光ファイバーやプラスチック、缶の表面を保護するためのコーティング剤としての利用が期待される。 以下、本発明を実施例に示した合成試験によって具体的に説明する。〔実施例1−1〕<1,3−ジアリル−5−[2−(3−シクロヘキセニルカルボニルオキシ)エチル]イソシアヌレートの合成> 温度計を備えた100mLフラスコに、1,3−ジアリル−5−モノ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業社製)1.3g(5.0mmol)、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸767mg(6.0mmol)、パラトルエンスルホン酸38mg(0.2mmol)およびトルエン10mLを投入し、反応液を調製した。 反応の進行と共に生成する水を系外に留去しながら、反応液を還流下にて6時間攪拌した。 続いて、反応液を室温まで冷却して、炭酸水素ナトリウム水溶液20mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去することにより、淡黄色液体として、化学式(III)で示される標題の物質(以下、前駆体Aと云う)を1.8g(収率99%)得た。〔実施例1−2〕<1−モノ[2−(3,4−エポキシシクロヘキシルカルボニルオキシ)エチル]−3,5−ジグリシジルイソシアヌレートの合成> 温度計を備えた100mLフラスコに、前述の前駆体A1.8g(5.0mmol)およびジクロロメタン10mLを投入し、反応液を調製した。 氷冷下にて、この反応液にメタクロロ過安息香酸(純度65%)4.4g(16.5mmol)を添加し、室温にて、撹拌を行いながら反応を一晩継続した。 続いて、反応液に10%亜硫酸ナトリウム水溶液25mLを添加して、未反応のメタクロロ過安息香酸をクエンチした後、反応生成物をクロロホルム25mLで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去しシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/1、v/v)により精製し、無色液体1.9g(収率90%)を得た。 得られた液体の1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。1H-NMR(CDCl3) δ:4.30-4.40(m,2H), 4.00-4.21(m,4H),4.00(dd,2H), 3.13-3.27(m,4H), 2.82-2.85(m,2H), 2.69-2.70(m,2H), 1.31-2.48(m,7H). また、この液体のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。 これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化学式(IV)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。〔実施例2−1〕<1−アリル−3,5−[2−エチル(3−シクロヘキセニルカルボニルオキシ)エチル]イソシアヌレートの合成> 温度計を備えた100mLフラスコに、1−アリル−3,5−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業社製)5.9g(23.2mmol)、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸5.9g(46.5mmol)、パラトルエンスルホン酸177mg(0.9mmol)およびトルエン46mLを投入し、反応液を調製した。 反応の進行と共に生成する水を系外に留去しながら、反応液を還流下にて6時間攪拌した。 続いて、反応液を室温まで冷却して、炭酸水素ナトリウム水溶液23mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去することにより、淡黄色液体として、化学式(V)で示される標題の物質を(以下、前駆体Bと云う)10.6g(収率97%)を得た。〔実施例2−2〕<1,3−ビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシルカルボニルオキシ)エチル]−5−グリシジルイソシアヌレートの合成> 温度計を備えた100mLフラスコに、前述の前駆体B2.4g(5.0mmol)およびジクロロメタン10mLを投入し、反応液を調製した。 氷冷下にて、この反応液にメタクロロ過安息香酸(純度65%)4.4g(16.5mmol)を添加し、室温にて、撹拌を行いながら反応を一晩継続した。 続いて、反応液に10%亜硫酸ナトリウム水溶液25mLを添加して、未反応のメタクロロ過安息香酸をクエンチした後、反応生成物をクロロホルム25mLで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去しシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/1、v/v)により精製し、無色液体2.4g(収率90%)を得た。 得られた液体の1H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。1H-NMR(CDCl3) δ:4.29-4.38(m,4H), 4.16-4.19(m,4H),4.00(dd,1H), 3.13-3.22(m,5H), 2.82-2.84(m,1H),2.69-2.70(m,1H), 2.45-2.50(m,1H),1.31-2.30(m, 14H). また、この液体のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。 これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化学式(VI)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。実施例1−2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。実施例2−2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。 本発明によれば、エポキシ樹脂の原料としての用途が期待されるイソシアヌレート化合物を提供することができる。化学式(I)で示されるイソシアヌレート化合物。 【課題】優れた耐候性や耐熱性を発揮し、種々の改質剤や充填剤との相溶性に優れるエポキシ樹脂を与える、エポキシ樹脂の原料である、新規なイソシアヌレート化合物を提供する。【解決手段】化学式(I)で示されるトリアジン環と共にエポキシ基およびグリシジル基を有するイソシアヌレート化合物。【選択図】なし