タイトル: | 特許公報(B2)_坪量及び水分量の測定方法と装置 |
出願番号: | 2011551666 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 22/04 |
永田 紳一 澤本 英忠 黒沢 雅宏 JP 5541294 特許公報(B2) 20140516 2011551666 20100921 坪量及び水分量の測定方法と装置 王子ホールディングス株式会社 000122298 野口 繁雄 100085464 永田 紳一 澤本 英忠 黒沢 雅宏 JP 2010016546 20100128 20140709 G01N 22/04 20060101AFI20140619BHJP JPG01N22/04 B G01N 22/00−22/04 D21F 7/00− 7/12 JSTPlus(JDreamIII) 特開2009−58379(JP,A) 特開2006−349425(JP,A) 佐々木宏,マイクロ波空洞共振器によるシート状物質の水分・坪量・厚さ管理について,Nonwovens Review,1993年 2月 2日,Vol.3,No.3,P.62−69 澤本英忠,外4名,オンライン繊維配向計(誘電率測定型)の開発,紙パ技協誌,2006年 1月,Vol.60,No.1,P.83−91 6 JP2010066286 20100921 WO2011092889 20110804 21 20130827 比嘉 翔一 本発明は、シート状物質、特に紙シートの坪量(1平方メートル当たりの重量)及び水分量をオンラインで測定する方法と装置に関するものである。 紙の製造工程において、坪量(1平方メートル当たりの重量)及び水分率をオンラインで測定することは非常に重要であり、坪量は紙の品質上及び商取引上の重要な管理項目となっている。従来、BM計(Basis Weight & Moisture Measurement System)を用い、紙の坪量はβ線の透過減衰量から、紙の水分は近赤外線の吸収量から求めるのが一般的である。BM計による坪量測定値は最も信頼性が高いとされている。 坪量を測るには、Kr85(クリプトン)又はPm147(プロメシューム)などの放射線源から得られるβ線を用いている。坪量が大きいとβ線の減衰量が大きく、坪量が小さいと減衰量が小さいため、β線の透過量と坪量とは反比例に近い関係にある。坪量を正確に求めるには、β線の透過量と坪量との関係を示す検量線が用いられる。 水分を測る近赤外線としては、通常、基準光、測定光及び補正光の3種類が用いられている。基準光は波長が1.8μmであり、この波長光は水分により減衰しない。測定光は波長が1.9μmであり、この波長光は水分により減衰する。補正光は波長が2.1μmであり、この波長光はセルロースによる影響を受けない。水分による測定光の減衰量と水分量との関係を予め検量線として調べておくことによって、正確な水分量が求められる。 従来のBM計の坪量測定においてはβ線を用いるため、線源としてクリプトン85又はプロメシューム147などの放射線源を用いなければならない。放射線源は人体に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、測定時には線源に近づかないように立入り禁止区域を設け、また近辺で作業する機会の多い人にはフィルムバッチの携帯を義務付け、浴びた放射線量を定期的にチェックしなければならない。また、放射線を取り扱うことができる主任技術者を配置する必要があり、放射線の取扱いに十分な注意と専門知識が要求される。 放射線源を用いることによるこのような課題を回避する方法として、本発明者らは放射線を使用しないで紙などのシート状物質の坪量及び水分を測定する方法を提案している(特許文献1参照。)。その提案の方法は、マイクロ波誘電体共振器を用いて坪量と水分を同時に測定するものであり、紙の繊維配向などのサンプルの誘電的異方性をオンラインで測る装置の応用として、繊維配向以外に坪量及び水分量も同時に測定できることを示したものである。その提案の方法によれば、坪量はサンプルがないときの共振周波数とサンプルを配置したときの共振周波数との差である共振周波数シフト量から求められ、水分量はサンプルがないときの共振周波数でのピークレベルとサンプルを配置したときの共振周波数でのピークレベルとの差である共振ピークレベル変化量から求められる。特開2006−349425号公報(米国特許第7,423,435B2号公報) マイクロ波誘電体共振器を用いた提案の方法により坪量と水分量を同時に測定する場合、水分量が一定であれば、図19に示すように、非常に高い測定精度で坪量が測定できることが分かった。図19は、長尺の紙サンプルをマイクロ波誘電体共振器に対して760m/分の速度で供給しながらオンライン測定をした結果であり、水分量を一定に保ったまま坪量が60.0g/m2から49.3g/m2へ変化する部分を測定したものである。 また、水分量が一定であれば、図20の上図に示すように、坪量の異なる種々の紙の銘柄について共振周波数シフト量とBM計での坪量の測定結果との間に強い相関関係がみられる。そのため、坪量は共振周波数シフト量に係数を掛けることによって、図20の下図に示すように、正確に測定できることが窺われる。 しかし、誘電体共振器に限らず、空洞共振器であっても、マイクロ波共振器を用いて坪量を測定する場合には、測定された坪量の値が水分量の影響を受けることが明らかになった。例えば、図21は誘電体共振器を用いて図19と同様のオンライン測定により坪量と水分率を測定した場合の表示画面である。この場合は、坪量が一定の紙のサンプルであるにも拘わらず、水分率を2.7%から5.8%に変化させると坪量の測定値も変化してしまった。図21の表示画面の坪量は共振周波数シフト量に比例するものとして算出されたもの、水分率は共振ピークレベル変化量から算出されたものである。さらに、図21には比較のためのBM計による坪量(B)と水分率(M)の測定結果も数値で表示されている。 なお、本明細書では水分の量に関する用語として「水分率」と「水分量」を同等なものとしてともに使用している。「水分率」と「水分量」は、 水分率=(水分量/(絶乾坪量+水分量)×100 (%) (絶乾坪量は水分率が0%のときの坪量)の関係がある。 本発明は、マイクロ波共振器を用いて坪量を測定する際の水分量(水分率)の影響を排除して坪量を正確に測定できるようにすることを目的とするものである。 マイクロ波共振器を用いた坪量測定において、坪量が水分量の影響を受ける原因について検討をした結果、坪量は絶乾(水分率が0)の紙の誘電率から1を引いた値と紙の厚みとの積に比例する共振周波数シフト量から計算されており、計算上は水分による影響を考慮していないためであると考えられる。共振周波数シフト量の測定結果には、紙の絶乾部分による共振周波数シフト分に加えて、水の誘電率によって生ずる共振周波数シフト分が加算されてしまう。水は誘電率が大きく、4GHzで約80程度もあり、共振周波数シフト量の結果に与える影響を無視できないのである。 本発明は、この知見に基づき、水の誘電率によって生ずる共振周波数シフト分を計算によって排除することにより坪量測定値から水分の影響を排除しようとするものである。 まず、坪量及び水分量(又は水分率)を測定する装置の概要について説明する。 マイクロ波共振器を用いて紙の繊維配向を測定するのではなく、紙の坪量と水分量を測定する場合には、誘電率の異方性をキャンセルする必要がある。キャンセルする方法としては、例えば1個のマイクロ波共振器を使用する方法がある。マイクロ波共振器は空洞共振器であっても誘電体共振器であってもよい。この場合、空洞共振器の場合は円筒空洞共振器や球形空洞共振器などを用いて、例えば電界ベクトルがループ状になるTE011モードのように、電界ベクトルがある方向に偏らない共振モードを選択する。誘電体共振器の場合は、エバネセント波の電界ベクトルがある一定方向に偏って向くのではなく、円柱型誘電体共振器を用いて四方八方に向く電界分布、又はループ状となる電界分布などの電界分布となる共振モードを選択するのが望ましいのは当然である。この場合はサンプルがないときとあるときにおける共振器によって得られる共振周波数シフト量と共振ピークレベル変化量をそのまま用いて坪量と水分量を算出することができる。 オンラインで紙の繊維配向などのサンプルの誘電的異方性を測る装置の応用として坪量及び水分量も測定する場合には、逆にサンプルの誘電率異方性の影響を受けてしまう問題がある。誘電率はテンソルであるため方向によって値が異なるが、坪量や水分量はスカラー量であるため方向によって値が異なることはない。坪量又は水分量を測定するときにこの誘電率異方性をいかにキャンセルするかが課題である。 サンプルの誘電的異方性を測る装置でサンプルの誘電率異方性をキャンセルする方法を説明する。図2Aと図2Bに矩形のマイクロ波誘電体共振器の概観図を示す。図2Aは平面図、図2Bはそのアンテナ2a、2bを通る位置での垂直断面図である。誘電体共振器1が一方のアンテナ2aにより励振され、もう一方のアンテナ2bから出力を出す。共振器1やアンテナ2a,2bはシールドケース4内に収容されている。 ほとんどの共振エネルギーは共振器1の内部に閉じ込められているが、一部はエバネセント波として表面に滲み出している。矩形の誘電体共振器の場合、共振モードを適切に選択することによって、共振器表面に沁み出した電界分布は長辺方向と平行になる。ここでは電界分布が長辺方向と平行になるそのような共振モードで使用する。エバネセント波6の電界ベクトルのほとんどすべてが平行になっていると、サンプル8の誘電率異方性、つまり配向性を測定することが可能になる。 誘電体共振器1の上面にサンプル8を近接又は接触させて配置すると、エバネセント波6の電界ベクトル方向の誘電率に対応して図3のように共振周波数が低周波数側にシフトする。その共振周波数シフト量をΔfとする。共振周波数シフト量はサンプルがない場合のブランク時の共振周波数からサンプルがあるときの共振周波数を引いた値と定義される。 誘電体共振器1の上面にサンプル8を近接又は接触させて配置すると、共振周波数のシフトと同時に、サンプルの誘電損失率に対応して共振周波数位置でのピークレベルが下がる。そのピークレベル変化量をΔPとする。ピークレベル変化量はサンプルがない場合のブランク時の共振周波数位置でのピークレベルからサンプルがあるときの共振周波数位置でのピークレベルを引いた値と定義される。サンプルの誘電率をε’、誘電損失率をε”、サンプルの厚みをTとすると、周波数シフト量Δfは(ε’−1)×Tに比例し、ピークレベル変化量ΔPは、ε”×Tに比例する。 配向性を測定する場合は、誘電率の異方性を見ればよい。そこで、複数の矩形誘電体共振器を互いに方向が異なるように配置し、各共振器における共振周波数シフト量を検知すれば、誘電率異方性がわかる。 図4に、例えば5個の矩形誘電体共振器1a〜1eを基準方向から互いに異なる方向(θ)をもつように配置した場合のレイアウト例を示す。5個の共振器1a〜1eはなるべく近い場所を測定できるように互いに接近して配置することが好ましい。この例では、直径200mmの円内に5個の共振器1a〜1eを配置している。基準方向は任意に定めることができるが、ここでは一例としてサンプルの移動方向(MD方向)を基準方向とする。 これに対応した配向パターンを図5に示す。これは角度をθ、原点からの距離をrとする極座標(r,θ)上に、共振器1a〜1eの方向(θ)を角度θとし、それぞれの共振器が検出した共振周波数シフト量Δfをrとしてプロットし、楕円近似を行ったものである。楕円の長軸方向が周波数シフト量の最大方向を示すため、この方向でサンプルの誘電率が最大となる。したがって、この方向に繊維又は分子鎖が並んでいることになる。楕円の長軸方向が配向角度(φ)である。一方、配向度は近似した楕円の長軸aと短軸bの差又は比で表すことができる。 特許文献1に記載の発明は、紙などのシート状物質の繊維配向又は分子配向を誘電率の異方性から求める方法と装置の副次的なものとして考え出されたものであり、配向測定と同時に坪量も測定できるというものである。そのために、スカラー量である坪量を測定する場合、誘電率の方向依存性が逆に障害となる。共振周波数シフト量を極座標上にプロットすると、サンプルが無配向でない場合、例えば図5のようにサンプルの誘電率方向依存性によって異なる値になる。しかし、坪量はスカラーであるため、方向依存性を有しない。 その誘電率の異方性に起因する共振周波数シフト量の方向依存性をキャンセルする第1の方法は、複数個の共振器の共振周波数シフト量を単純に平均化処理する方法である。 方向依存性をキャンセルする第2の方法として、図5のように共振周波数シフト量Δfを極座標上にプロットし、楕円近似をしてできる楕円体の面積と同面積の円の半径をサンプルの誘電的異方性をキャンセルした換算シフト量Δfrとする方法である。例えば、シート状サンプルの一面側のみに配置された複数個の矩形誘電体共振器をその長辺方向がそれぞれ基準方向から異なる方向(θ)を向くように同一平面上に配置してそれぞれの共振器の共振周波数f1〜fnを測定し、あるサンプルについて各矩形誘電体共振器の共振周波数シフト量Δf1〜Δfnを求める。シフト量Δf1〜Δfnは、先に定義したように、サンプルがない場合の共振周波数f0とサンプルがある場合の各矩形誘電体共振器の共振周波数f1〜fnとの差である。次に、角度をθ、原点からの距離をrとする極座標(r,θ)上に、前記方向(θ)を角度θとし、シフト量Δf1〜Δfnをrとしてプロットし、図5のように楕円近似処理により楕円を描き、その楕円の面積を求める。その楕円の面積と同面積の円の半径を求めると、この半径が異方性をキャンセルした共振周波数シフト量に相当する。 以下の説明では、上記いずれかの方法で誘電的異方性をキャンセルした周波数シフト量Δfが得られたという前提で記述する。 (基本的な考え方) マイクロ波共振器を用いると、サンプルの有無により図3のように共振周波数シフト量Δfと共振ピークレベル変化量ΔPが現れる。サンプルの厚みをTとすると、共振周波数シフト量Δfは((誘電率-1)×T)に比例し、共振ピークレベル変化量ΔPは(誘電損失率×T)に比例する。この原理は、特許文献1にも記載されているように摂動理論から導き出されるものである。 図6のように紙を絶乾部分と水とに分離したモデルを考え、測定している絶乾部分の体積をV1、水の体積をV2とすると、この原理に基づいて以下の式が成立する。 Δf=Kf(V1・ε’1+V2・ε’2) (1) ΔP=Kp(V1・ε”1+V2・ε”2) (2)ここで、Δf:共振周波数シフト量、 ΔP:共振ピークレベル変化量、 V1:ある一定条件における絶乾の紙の体積、 V2:ある一定条件における水の体積、 Kf:ディメンジョンを合わせるための比例定数、 Kp:ディメンジョンを合わせるための比例定数、 ε’1:絶乾の紙の誘電率−1、 ε’2:水の誘電率、 ε”1:絶乾の紙の誘電損失率、 ε”2:水の誘電損失率(周波数、束縛の程度、温度によっても変わる) V1は絶乾坪量に比例した値、V2は水分量に比例した値である。(1)式は、共振周波数シフト量は紙の絶乾部分の誘電率によるものと水の誘電率によるものとの和になることを示している。同様に、(2)式はピークレベル変化量ΔPが、紙の絶乾部分の誘電損失率によるものと水の誘電損失率によるものとの和になることを示している。 Kf及びKpは装置に起因する比例定数であり、一定値である。Kf及びKpはまた、ディメンジョンの変換及び測定面積の規定も兼ねている。 (1)(2)式から、V1、V2について解くと、以下の式が得られる。V1=(Δf・ε”2/Kf−ΔP・ε’2/Kp)/(ε’1・ε”2−ε”1・ε’2) (3)V2=(Δf・ε”1/Kf−ΔP・ε’1/Kp)/(ε”1・ε’2−ε’1・ε”2) (4) ここで、ε’1、ε’2、ε”1、ε”2は物質定数であるが、本発明ではこれらの定数もKf及びKpとともに装置定数として決定する方法をとる。具体的には、定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2は以下のステップA及びBにより決定する。 (ステップA)坪量又は水分量の異なる複数の標準サンプルについて、マイクロ波共振器を用いた測定装置により共振周波数シフト量Δfとピークレベル変化量ΔPを測定し、BM計により絶乾坪量(BD)と水分量(WT)を測定する。 V1,V2と絶乾坪量(BD)、水分量(WT)との間には次の関係がある。 絶乾坪量(BD)=β・V1 (5) 水分量(WT)=γ・V2 (6)ここで、β、γは比例定数である。βは絶乾状態の紙の比重であり、予め求めておく。一例として、β=0.85とする。γは水の比重であり、γ=1とすることができる。 (ステップB)ステップAで得られたBM計による絶乾坪量(BD)を用いてV1=BD/βとし、水分量(WT)を用いてV2=WT/γとして、ステップAで得られたΔfとΔPを用い、(3),(4)式の関係においてKf及びKpの分散値が所定値より小さくなるときのε’1、ε’2、ε”1及びε”2を求める。γ=1として、V2=WTとしてもよい。 ここで、(3),(4)式は(1),(2)式から導かれたものであるので、(3),(4)式の関係は(1),(2)の関係と同じことである。 定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2の決定方法の好ましい形態として、定数ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を適当な制約条件のもとで変化させながらKfとKpを算出し、測定した全ての標準サンプルについてKf及びKpの分散値が所定値より小さくなるときのKf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2の組合せをその測定装置についての最適な装置定数とする。 定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定する作業は測定装置ごとに行う。より正確な測定結果を得るためには、その定数決定作業はサンプルの種類、すなわち銘柄が変わればその銘柄の標準サンプルを複数用意して定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定する作業を改めて行うのが好ましい。 定数ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を変化させながらKfとKpをそれぞれの分散値が所定値より小さくなるように収束させる作業は、コンピュータ上で適当なプログラムを使用することにより実行することができる。そのようなプログラムの一例として、「ソルバー」(マイクロソフト社製表計算ソフト「エクセル」の機能の1つ)と称されるプログラムを使用することができる。その「ソルバー」を使用して定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定する際の制約条件を次のように設定する。 (1)絶乾の紙の誘電率ε’1: 誘電率ε’1そのものを測定するのは難しいため、セルロースの分子構造と添加された無機物(タルクなど)から判断して、以下の範囲に入っているものとする。 1.0<ε’1<20.0 (2)絶乾の紙の誘電損失率ε”1: 誘電損失率ε”1そのものを測定するのは難しいため、種々の高分子材料の誘電損失率から判断して、以下の範囲に入っているものとする。 0<ε”1<1.0 (3)水の誘電率ε’2: 何の束縛もないフリーの水(自由水)の誘電率は、誘電分散により温度及び周波数によって変化するが、常温で4GHzでは概ね80程度である。しかし、食品やセメントなどの内部に入り込んだ水は結合水や束縛水とも呼ばれ、水分子の周囲からの束縛のされ方にもよるが、一般的には外部電界に対して十分に分極(交番)できないため誘電率は下がる。そこで、水の誘電率ε’2は以下の範囲に入っているものとする。 1.0<ε’2<80 (4)水の誘電損失率ε”2: 自由水の場合、誘電損失率のピークは概ね20GHz(常温)にあり、そのときの値は34程度であるが、束縛水となると、周囲の状況にもよるが概ね2桁程度ピーク周波数が低周波数側にシフトする。従って、4GHzでの束縛水の誘電損失率は誘電損失率の周波数分散カーブの右肩に相当し、34からかなり小さくなる。そこで、水の誘電損失率ε”2は以下の範囲に入っているものとする。 0<ε”2<15 (5)装置固有の比例定数KfとKpは種々の実測データから求めてプロットした場合、本来は一定値なのでグラフ上の1点に集中するべきものである。その収束条件として、Kf及びKpの分散が以下の条件を満たしたときにKfとKpが一定値に収束したものとする。 Kfの分散<0.1 Kpの分散<0.0001 Kf及びKpの分散値に関するこれらの数値が本発明でのKf及びKpの分散値に関する「所定値」であり、予め設定しておく。この所定値は大きく設定すると定数を決めるための処理時間が短くてすむが、結果として得られる坪量と水分量の精度が低下する。逆にこの所定値は小さく設定すると得られる坪量と水分量の精度がよくなる反面、定数を決めるための処理時間が長くなる。得られる坪量と水分量の精度をみながら適当な大きさの「所定値」を設定する。 以上の制約条件の下で(1)式と(2)式に「ソルバー」を使用して定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定する。 38個の種々の紙サンプルについて、Kf、Kpが上記(5)の条件を満たすような物質定数ε’1、ε’2、ε”1及びε”2の組合わせを求めたところ、次のようになった。 ε’1(絶乾の紙の誘電率−1)=4.0 ε’2(水の誘電率)=29.95 ε”1(絶乾の紙の誘電損失率)=0.210 ε”2(水の誘電損失率)=9.71 また、このときのKf、Kpのプロットは図7のようになり、ほぼ一定値に集中することがわかった。この場合のKfとKpはそれぞれの平均値として、 Kf=10.843 Kp=0.1191となった。 このように決定された定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を用いると、測定対象試料について測定した共振周波数シフト量Δfとピークレベル変化量ΔPから(3),(4)式によりV1,V2が求められるので、(5),(6)式を用いて測定対象のサンプルの絶乾坪量(BD)と水分量(WT)が計算で求められる。 また、風乾坪量及び水分率は以下の式によって求められる。 風乾坪量=絶乾坪量(BD)+水分量(WT) (g/m2) (7) 水分率=(水分量(WT)/風乾坪量)×100 (%) (8) 定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2は装置定数として決定されるものであるため、測定装置ごとに決定する必要がある。上記の数値は測定を行ったこの装置に特有のものであり、他の測定装置では異なった数値となるものである。 本発明の坪量・水分量測定方法は、マイクロ波共振器を用い、以下のステップS1からS6によって紙シートからなるサンプルの坪量及び水分量を算出する方法である。(ステップS1) サンプルがないときのマイクロ波共振器における共振周波数と共振ピークレベルを求めるステップ。(ステップS2) サンプルを測定したときの前記マイクロ波共振器における共振周波数と共振ピークレベルを求めるステップ。(ステップS3) ステップ1で求めた共振周波数からステップ2で求めた共振周波数との差として共振周波数シフト量Δfを求めるステップ。(ステップS4) ステップS1で求めた共振ピークレベルからステップS2で求めた共振ピークレベルとの差としてピークレベル変化量ΔPを求めるステップ。(ステップS5) 定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2の決定された(3),(4)式を用いて、V1及びV2を求めるステップ。(ステップS6) (5),(6)式を用いて、絶乾坪量及び水分量を求めるステップ。 好ましい形態では、さらに、以下の式を用いて、風乾坪量及び水分率まで求める。 風乾坪量=絶乾坪量+水分量 水分率=水分量×100/風乾坪量 サンプルの誘電的異方性を測る装置で本発明の坪量・水分量測定方法を実施する場合は、マイクロ波共振器としてサンプルの一面側のみに配置された複数個の矩形誘電体共振器を、それらの共振器の長辺方向がそれぞれ異なる方向(θ)を向くように同一平面上に配置する。そして、方向(θ)を角度θとしそれらの共振器の共振周波数シフト量Δf1〜Δfnをrとして、角度をθ、原点からの距離をrとする極座標(r,θ)上にプロットし、楕円近似処理により楕円を描き、その楕円の面積と同面積の円の半径Δfrを求めて、そのΔfrを(3),(4)式中のΔfとする。また、それらの共振器のピークレベル変化量ΔP1〜ΔPnを求め、次の(A)から(C)のいずれかのΔPrを(3),(4)式中のΔPとする。(A)ΔP1〜ΔPnのいずれかからなるΔPr。(B)ΔP1〜ΔPnの平均値からなるΔPr。(C)前記方向(θ)を角度θとしΔP1〜ΔPnをrとして、角度をθ、原点からの距離をrとする極座標(r,θ)上にプロットし、楕円近似処理により楕円を描き、その楕円の面積と同面積の円の半径として求めたΔPr。 本発明の坪量・水分量測定装置は、好ましい形態を表わす図1に示されるように、マイクロ波共振器(100)と、前記共振器に電界ベクトルを発生させるマイクロ波用励振装置(102)と、前記共振器(100)による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する検出装置(104)と、前記検出装置(104)からサンプルがない状態とサンプルがある状態での前記マイクロ波共振器(100)の共振周波数とその共振周波数位置でのピークレベルを取り込み、サンプルの坪量と水分量を算出するデータ処理装置(106)とを備えている。 データ処理装置(106)はΔf・ΔP算出部(108)、第1定数決定手段(112)、定数記憶部(114)、V1・V2算出部(116)、及び絶乾坪量・水分量算出部(120)を備えている。 Δf・ΔP算出部(108)は検出装置(104)から取り込んだ共振周波数とピークレベルからそれぞれ共振周波数シフト量Δfとピークレベル変化量ΔPを算出するものである。 第1定数決定手段(112)は、坪量又は水分量の異なる複数の標準サンプルをマイクロ波共振器(100)により測定したときにΔf・ΔP算出部(108)から得られるΔf及びΔPを用い、それらの標準サンプルをBM計(110)により測定して得られる絶乾坪量(BD)をV1/βとし水分量(WT)をV2/γとして、(3),(4)式の関係((1),(2)式の関係と同じ。)においてKf及びKpの分散値が所定値より小さくなるときのε’1、ε’2、ε”1及びε”2を求めて各定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定するものである。 定数記憶部(114)は、第1定数決定手段(112)により決定された定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2、並びに予め設定された比例定数β及びγを記憶している。 V1・V2算出部(116)は、定数記憶部(112)に記憶された定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2と、マイクロ波共振器(100)によりサンプルを測定したときにΔf・ΔP算出部(108)から得られるΔf及びΔPとを用い、(3),(4)式に基づいてV1とV2を算出するものである。 絶乾坪量・水分量算出部(120)は、マイクロ波共振器(100)により測定対象のサンプルを測定したときにV1・V2算出部(116)から得られるV1及びV2と定数記憶部(114)に記憶されている比例定数β及びγとから(5),(6)式に基づいて絶乾坪量と水分量を算出するものである。 好ましい形態では、絶乾坪量・水分量算出部(120)で得られた絶乾坪量と水分量から請求項2中に記載された式に基づいて風乾坪量と水分率を算出する風乾坪量・水分率算出部(122)をさらに備えている。 サンプルの誘電的異方性を測る装置を兼ねている場合は、マイクロ波共振器はサンプルの一面側のみに配置される複数個の矩形誘電体共振器であって、それらの共振器の長辺方向がそれぞれ異なる方向(θ)を向くように同一平面上に配置されたものであり、Δf・ΔP算出部(108)は異方性がキャンセルされたΔfrとΔPrを算出するものであり、絶乾坪量・水分量算出部(120)はΔf・ΔP算出部(108)により算出され異方性がキャンセルされたΔfrとΔPrを用いて演算を行うものである。 本発明によれば、マイクロ波共振器を用いて紙などのシート状物質の坪量及び水分量(水分率)を測定する際に、坪量と水分の測定値がお互いに影響されることなく、別々に分離して測定できることが確認され、放射線を使用せず、安全に測定できる。坪量・水分量測定装置の好ましい形態を示すブロック図である。一実施例で使用する誘電体共振器を示す平面図である。同共振器の垂直断面図である。サンプルの有無による誘電体共振器における共振カーブの変化を示す波形図である。5個の誘電体共振器を配置した配向計測定部の一例を示す平面図である。図4に示した5個の誘電体共振器から得られた配向パターンの一例を示す図である。水分モデルを示す断面図である。最適化されたときの物質定数を用いて求めた定数Kf,Kpを示すグラフである。5個の誘電体共振器からの信号を処理する回路を示すブロック図である。図8のブロック図における信号処理を示すタイムチャートである。図8の回路中の一つの誘電体共振器についての信号処理回路を詳細に示すブロック図である。Δfrを求める手順を示すフローチャートである。ΔPrを求める手順を示すフローチャートである。定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定する手順を示すフローチャートである。サンプル測定動作の一例を示すフローチャートである。坪量が一定で水分量を変化させたサンプルを実施例の装置で測定した場合の坪量測定結果を示すグラフである。同サンプルを実施例の装置で測定した場合の水分量測定結果を示すグラフである。水分率が一定で坪量を変化させたサンプルを実施例の装置で測定した場合の坪量測定結果を示すグラフである。同サンプルを実施例の装置で測定した場合の水分率測定結果を示すグラフである。水分率が一定の場合のマイクロ波誘電体共振器を用いた坪量測定結果の一例を示す図である。マイクロ波誘電体共振器を用いた坪量測定結果とBM計での測定結果との相関関係を示すグラフである。水分率を変化させたときのマイクロ波誘電体共振器を用いた坪量測定結果を示す図である。 測定装置の具体例を示す。これはサンプルの誘電的異方性を測る装置で本発明を実現する実施例である。5個の誘電体共振器1a〜1eを配置し、図8のブロック図で示す信号処理回路を用いて、図9に示すタイムチャートに基づいて信号を処理して共振周波数と共振ピークレベルを測定する。 マイクロ波発振手段の一つであるマイクロ波スイーパ発振器21から出た信号を、アイソレータ22a〜22eを介して誘電体共振器1a〜1eに分配している。各共振器1a〜1eからの出力はそれぞれの検波ダイオード23a〜23eで電圧に変換され、それぞれの増幅及びA/D変換回路部24a〜24eを通ってそれぞれのピーク検出及び平均化処理回路部25a〜25eに入る。 共振周波数の測定は次のように行われる。図9に示したようにマイクロ波スイーパ発振器21が周波数を掃引する。例えば周波数を、4ギガヘルツを中心に10msecで250MHz掃引することによって連続的に周波数が上げられる。その周波数掃引により、ピーク検出及び平均化処理回路部25a〜25eではマイクロ波透過強度から共振カーブが得られる。ピーク検出及び平均化処理回路部25a〜25eはそのスイープ信号21sからスタートパルス部分を検知して共振レベルがピークに達するまでの時間を測定し、その時間から比例計算によって共振周波数を求める。 この方法では、掃引開始タイミングをスイープ信号の立ち上がりであるスタートパルス部分によって検知できるため、そこからピークレベルに達するまでの時間を計測し、10msecで250MHzの掃引速度から計算して共振周波数が測定される。これを、例えば50msecの周期で繰り返し、20回平均で1つの共振周波数としている。このように1回の掃引時間は10msecと非常に短く、高速で信号を増幅し、デジタル処理を行っているわけである。 図10に図9に示した回路中の一つの誘電体共振器についての検出系の回路をさらに詳細に示した。他の誘電体共振器についての検出系の回路も同じである。先に説明した増幅及びA/D変換回路部24aは、一例としては増幅回路31とA/Dコンバータ部LSI32からなる。増幅及びA/D変換回路部24aからのデジタル出力はピーク検出及び平均値化処理回路部25aに入る。ピーク検出及び平均化処理回路部25aは、一例としてはピーク検出LSIと平均化処理LSIからなる。ピーク検出LSIは正確に言えば共振ピークレベル検出回路ももっている。このLSIにおいて共振ピーク検出として共振周波数と共振ピークレベルの両方を検出し、平均化処理LSIではスイープ毎に得られる共振周波数と共振ピークレベルの平均化処理を行っている。 ピーク検出及び平均化処理回路部25a〜25eの後段にはマイクロコンピュータ26が接続され、各誘電体共振器検出系からの信号がマイクロコンピュータ26に入力される。マイクロコンピュータ26はピーク検出及び平均化処理回路部25a〜25eからの共振周波数と共振ピークレベルをまとめて後段のパーソナルコンピュータ27に送信する。マイクロコンピュータ26はまた、各増幅及びA/D変換回路部24a〜24e、ピーク検出及び平均化処理回路部25a〜25eを誘電体共振器系毎に制御して動作させるための制御機能ももっている。 パーソナルコンピュータ27はマイクロコンピュータ26からの出力を演算して坪量と水分量を求めてデータとして表示したり記憶したりするデータ処理装置106の機能を果たす。 ここで、図10において、増幅及びA/D変換回路部24aにおいて増幅後の出力にはノイズによるリップルが含まれているため、増幅回路31ではコンデンサC1と抵抗R2から構成されるRC回路をフィードバックラインに挿入し、リップル電圧を吸収軽減し、変動の少ない直流電圧を得ている。 パーソナルコンピュータ27により実現されるデータ処理装置の機能は図1に示されたものである。 矩形誘電体共振器を5個用いた場合についてさらに具体的に説明する。 図11にΔfrを計算する手順を示す。 ブランクの共振周波数を各誘電体共振器について求め、それぞれ、f01、f02、f03、f04、f05とする。 サンプルの共振周波数を各誘電体共振器についてもとめ、それぞれ、fs1、fs2、fs3、fs4、fs5とする。 各誘電体共振器について、共振周波数シフト量Δfを計算し、それぞれ、Δf1、Δf2、Δf3、Δf4、Δf5とする。ただし、 Δf1=f01−fs1 Δf2=f02−fs2 Δf3=f03−fs3 Δf4=f04−fs4 Δf5=f05−fs5 5点のΔfを極座標に表示し、楕円近似をし、楕円の面積Sを計算する。楕円の面積を同じ面積の円の半径rを求め、それを換算シフト量Δfrとする。 Δfr=(S/π)1/2 このΔfrが誘電率異方性をキャンセルした共振周波数シフト量である。 ピークレベルについては誘電率ほどの異方性はないので、サンプルの有無における1つの誘電体共振器についてのピークレベル変化量をΔPとして採用してもよく、5つの誘電体共振器についてのピークレベル変化量の平均値をΔPとして採用してもよい。そのようなΔPを採用してもそれほどの誤差は生じない。しかし、さらに異方性をキャンセルしようとすれば、誘電率の異方性をキャンセルしたのと同じように行うことができる。その場合の手順を図12に示す。 各誘電体共振器についてブランクの共振周波数位置でのピークレベルP01〜P05を測定する。各共振器についてサンプルがあるときの共振周波数位置でのピークレベルPS1〜PS5を測定する。各共振器についてピークレベル変化量ΔP1〜ΔP5を求める。ΔP1〜ΔP5を極座標上に表示し、楕円近似処理により楕円の面積を求める。その楕円の面積と同面積の円の半径を求め、その円の半径をそのサンプルの誘電的異方性をキャンセルした換算ピークレベル変化量ΔPrとする。 定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定する方法はすでに述べたが、その手順を図13に改めて示す。 坪量又は水分量の異なる複数の標準サンプルについて、マイクロ波共振器を用いた測定装置により共振周波数シフト量Δfとピークレベル変化量ΔPを測定し、BM計により絶乾坪量(BD)と水分量(WT)を測定する。 次に、得られたBM計による絶乾坪量(BD)をV1/β(βは予め設定された定数)とし、水分量(WT)をV2/γ(γは予め設定された定数)とし、得られたΔfとΔPを用い、(1),(2)式の関係又は(3),(4)式の関係においてKf及びKpの分散値が所定値より小さくなるときのε’1、ε’2、ε”1及びε”2を求める。 この実施例において、絶乾坪量及び水分量、さらに風乾坪量及び水分率まで求める動作を図14に示す。 定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定するための標準サンプルを測定したマイクロ波共振器を用い、サンプルがないときのマイクロ波共振器における共振周波数と共振ピークレベルを測定しておく。その同じマイクロ波共振器によりサンプルを配置して共振周波数と共振ピークレベルを測定する(ステップS1)。 サンプル有無に関する共振周波数シフト量Δfrと共振ピークレベル変化量ΔPを求める(ステップS2)。 メモリの定数記憶部114から定数Kf,Kp,ε’1,ε’2,ε”1及びε”2を取り込み、上記(3)、(4)式を用いて、V1及びV2を算出する(ステップS3,S4)。 定数記憶部114から定数β,γを取り込み、上記(5)、(6)式を用いて、絶乾坪量及び水分量を算出する(ステップS5,S6)。 さらに上記(7)、(8)式を用いて風乾坪量及び水分率を算出する(ステップS7)。(測定例1) 実際の抄紙機において、強制的に水分率を2.7%から5.8%に変化させたときの上記実施例によるV1(絶乾坪量に該当する。)とV2(水分量に該当する。)の算出結果を図15と図16に示す。絶乾坪量はほぼ一定となり、水分量だけが増加している結果となっている。このことから、この実施例によれば、マイクロ波共振器を用いても水分の影響を除去して坪量を測定することができることがわかる。(測定例2) 逆に、実際の抄紙機上において、サンプルの水分率をほぼ一定(実測値で3.0→2.9%)とし、坪量を変化(実測坪量59.10→72.64g/m2)させた。このときの上記実施例による測定結果を図17と図18に示す。この場合もサンプルの変化を忠実に反映している。 本発明は、紙、不織布、フィルムをはじめとするシート状物質の坪量と水分量を測定するのに利用することができる。 1,1a〜1e 誘電体共振器 2a,2b アンテナ 6 エバネセント波 8 サンプル 27 パーソナルコンピュータ 100 マイクロ波共振器 102 マイクロ波用励振装置 104 検出装置 106 データ処理装置 108 Δf・ΔP算出部 110 BM計 112 第1定数決定手段 114 定数記憶部 116 V1・V2算出部 120 絶乾坪量・水分量算出部 122 風乾坪量・水分率算出部 マイクロ波共振器を用い、以下のステップS1からS6によって紙シートからなるサンプルの坪量及び水分量を算出する坪量・水分量測定方法。(ステップS1) サンプルがないときのマイクロ波共振器における共振周波数と共振ピークレベルを求めるステップ。(ステップS2) サンプルを測定したときの前記マイクロ波共振器における共振周波数と共振ピークレベルを求めるステップ。(ステップS3) ステップ1で求めた共振周波数からステップ2で求めた共振周波数との差として共振周波数シフト量Δfを求めるステップ。(ステップS4) ステップS1で求めた共振ピークレベルからステップS2で求めた共振ピークレベルとの差としてピークレベル変化量ΔPを求めるステップ。(ステップS5) 以下の式を用いて、V1及びV2を求めるステップ。V1=(Δf・ε”2/Kf−ΔP・ε’2/Kp)/(ε’1・ε”2−ε”1・ε’2)(3)V2=(Δf・ε”1/Kf−ΔP・ε’1/Kp)/(ε”1・ε’2−ε’1・ε”2)(4)(ステップS6) 以下の式を用いて、絶乾坪量及び水分量を求めるステップ。 絶乾坪量=β・V1 (5) 水分量=γ・V2 (6)ここで、 V1:ある一定条件における絶乾の紙の体積、 V2:ある一定条件における水の体積、 Kf:ディメンジョンを合わせるための比例定数、 Kp:ディメンジョンを合わせるための比例定数、 ε’1:絶乾の紙の誘電率−1、 ε’2:水の誘電率、 ε”1:絶乾の紙の誘電損失率、 ε”2:水の誘電損失率、 β,γ:比例定数であり、定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2は以下のステップA及びBにより決定されたものであり、定数β,γは予め定められたものである。 (ステップA)坪量又は水分量の異なる複数の標準サンプルについて、前記マイクロ波共振器を用いた測定装置により前記ステップ1から4により共振周波数シフト量Δfとピークレベル変化量ΔPを測定する。 (ステップB)前記標準サンプルについて別途求められた絶乾坪量(BD)と水分量(WT)を用いて、V1=BD/β、V2=WT/γとし、ステップAで得られたΔfとΔPを用い、上記(3),(4)式の関係においてKf及びKpの分散値が所定値より小さくなるときのε’1、ε’2、ε”1及びε”2を求める。 さらに、以下の式を用いて、風乾坪量及び水分率まで求める請求項1に記載の坪量・水分量測定方法。 風乾坪量=絶乾坪量+水分量 水分率=水分量×100/風乾坪量 前記マイクロ波共振器としてサンプルの一面側のみに配置された複数個の矩形誘電体共振器を、それらの共振器の長辺方向がそれぞれ異なる方向(θ)を向くように同一平面上に配置し、 前記方向(θ)を角度θとしそれらの共振器の共振周波数シフト量Δf1〜Δfnをrとして、角度をθ、原点からの距離をrとする極座標(r,θ)上にプロットし、楕円近似処理により楕円を描き、その楕円の面積と同面積の円の半径Δfrを求めて、そのΔfrを請求項1中のΔfとし、 それらの共振器のピークレベル変化量ΔP1〜ΔPnを求め、次の(A)から(C)のいずれかのΔPrを請求項1中のΔPとする請求項1又は2に記載の坪量・水分量測定方法。(A)ΔP1〜ΔPnのいずれかからなるΔPr。(B)ΔP1〜ΔPnの平均値からなるΔPr。(C)前記方向(θ)を角度θとしΔP1〜ΔPnをrとして、角度をθ、原点からの距離をrとする極座標(r,θ)上にプロットし、楕円近似処理により楕円を描き、その楕円の面積と同面積の円の半径として求めたΔPr。 マイクロ波共振器(100)と、 前記共振器に電界ベクトルを発生させるマイクロ波用励振装置(102)と、 前記共振器(100)による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する検出装置(104)と、 前記検出装置(104)からサンプルがない状態とサンプルがある状態での前記マイクロ波共振器(100)の共振周波数とその共振周波数位置でのピークレベルを取り込み、サンプルの坪量と水分量を算出するデータ処理装置(106)とを備えており、 前記データ処理装置(106)は 前記検出装置(104)から取り込んだ前記共振周波数と前記ピークレベルからそれぞれ共振周波数シフト量Δfとピークレベル変化量ΔPを算出するΔf・ΔP算出部(108)と、 坪量又は水分量の異なる複数の標準サンプルを前記マイクロ波共振器(100)により測定したときに前記Δf・ΔP算出部(108)から得られるΔf及びΔPを用い、それらの標準サンプルを別途測定して得られる絶乾坪量をV1/βとし水分量をV2/γとして、請求項1中の(3),(4)式の関係においてKf及びKpの分散値が所定値より小さくなるときのε’1、ε’2、ε”1及びε”2を求めて各定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2を決定する第1定数決定手段(112)と、 前記第1定数決定手段(112)により決定された定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2、並びに比例定数β及びγを記憶した定数記憶部(114)と、 前記定数記憶部(112)に記憶された定数Kf、Kp、ε’1、ε’2、ε”1及びε”2と、前記マイクロ波共振器(100)によりサンプルを測定したときに前記Δf・ΔP算出部(108)から得られるΔf及びΔPとを用い、請求項1中の(3),(4)式に基づいてV1とV2を算出するV1・V2算出部(116)と、 前記マイクロ波共振器(100)によりサンプルを測定したときに前記V1・V2算出部(116)から得られるV1及びV2と前記定数記憶部(114)に記憶されている比例定数β及びγとから請求項1中の(5),(6)式に基づいて絶乾坪量と水分量を算出する絶乾坪量・水分量算出部(120)と、を備えている坪量・水分量測定装置。 前記絶乾坪量・水分量算出部(120)で得られた絶乾坪量と水分量から請求項2中に記載された式に基づいて風乾坪量と水分率を算出する風乾坪量・水分率算出部(122)をさらに備えている請求項4に記載の坪量・水分量測定装置。 前記マイクロ波共振器はサンプルの一面側のみに配置される複数個の矩形誘電体共振器であって、それらの共振器の長辺方向がそれぞれ異なる方向(θ)を向くように同一平面上に配置されたものであり、 前記Δf・ΔP算出部(108)は請求項3に記載されたΔfrとΔPrを算出するものであり、 前記絶乾坪量・水分量算出部(120)は前記Δf・ΔP算出部(108)により算出されたΔfrとΔPrを用いて演算を行うものである請求項4又は5に記載の坪量・水分量測定装置。