タイトル: | 公表特許公報(A)_質量分析法による分析のための分子量マーカーとしての組換えフォンビルブラント因子 |
出願番号: | 2011543578 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 27/62,C07K 14/47 |
ケンプトナー, ジャスミン マルヘッティ−デシュマン, マルティナ ミュラー, ローラント イフェンス, アンドレアス タレセク, ペーター シュワルツ, ハンス−ペーター アルマイアー, グエンター JP 2012513602 公表特許公報(A) 20120614 2011543578 20091216 質量分析法による分析のための分子量マーカーとしての組換えフォンビルブラント因子 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド 591013229 BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム 501453189 BAXTER HEALTHCARE S.A. テクニッシュ ユニべルシタット ウィーン 509213990 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 ケンプトナー, ジャスミン マルヘッティ−デシュマン, マルティナ ミュラー, ローラント イフェンス, アンドレアス タレセク, ペーター シュワルツ, ハンス−ペーター アルマイアー, グエンター US 61/140,475 20081223 G01N 27/62 20060101AFI20120518BHJP C07K 14/47 20060101ALN20120518BHJP JPG01N27/62 VG01N27/62 DC07K14/47 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2009068258 20091216 WO2010075132 20100701 19 20110622 2G041 4H045 2G041CA01 2G041DA04 2G041EA01 2G041FA12 2G041GA06 2G041JA07 2G041LA10 4H045BA10 4H045CA42 (関連出願への相互参照) 本出願は、2008年12月23日に出願された米国仮特許出願第61/140,475号の利益を主張し、この出願の開示は、その全体が参照として援用される。 (背景) フォンビルブラント因子(VWF)は、約260kDa(SDSアガロースゲル電気泳動によって決定される1−3)のモノマーの分子質量を有する接着性複合糖タンパク質であり、VWFは、ヒト血漿中で、450kDa〜20000kDa2,4,5の分子質量範囲に及ぶダイマーおよびオリゴマーとして循環している。前駆体ポリペプチドである、プレプロVWFは、内皮細胞6,7および巨核球8において合成され、22アミノ酸残基のシグナルペプチド、741残基のプロペプチドおよび2050残基のポリペプチドからなる9。上記シグナルペプチドのインビボでの除去後、2個のプロVWFユニットは、ジスルフィド結合を介して連結し、成熟VWFマルチマーのための構築ブロックであるダイマーを形成する10,11。血漿放出の前に、上記プロペプチドは切断され、残りの部分は、いくつかの翻訳後修飾、すなわち、グリコシル化9,12−14および硫酸化15を含む。最終成熟VWFは、12個のN−グリカンおよび10個のO−グリカンを有し、これに関して、特定のN−グリカンは、硫酸化によってさらに改変される16。 上記炭水化物部分は、VWFのいくつかの具体的な特性(例えば、生理学的活性、レセプター結合、血漿循環からのクリアランスおよび構造安定性)に寄与する17,18。生合成後、成熟VWFは、血液循環系に放出されるか、もしくはバイベル・パラーデ小体中に保存される19かのいずれかである。ヒト血漿中では、VWFは、止血において二重の目的を果たす。血管損傷の場合には、VWFは、血小板糖タンパク質の接着(例えば、コラーゲンの血管内皮下層への)を媒介する20。さらに、VWFは、血液凝固因子VIII(FVIII)との非共有結合複合体を構築し、血漿からのその急速なクリアランスを回避し、従って、正常なトロンビン生成が、生じ得る21。 VWFに関する遺伝性欠損は、フォンビルブラント病(VWD)を引き起こし、ヒトにおける最も一般的な出血性障害のうちの1つである22。VWDの症状は、異常な血小板機能であり、これは、絶えず鼻血を出す、傷害後の解明されていないひどい出血もしくは長期化の出血、をもたらす。低下したレベルのVWFに起因して、VWDは、FVIII凝固促進活性の低下が一般に付随する。VWF欠損の重篤度に依存して、いくつかの程度のVWDが存在する。軽度VWDを有する患者は、低下したVWF血漿レベルを有し、VWFレベルを一時的に上昇させる、デスモプレシンの投与によって処置される23。より重度のVWD形態に罹患している患者は、ヒト血漿由来濃縮物もしくは寒冷沈降物(FVIIIおよびVWFの両方を含む)で処置されなければならない24,25。しかし、この補充療法には、いくつかの制限が伴う26。ヒト血漿由来VWF濃縮物は、ドナーのプールに依存して、種々のVWFレベルおよびFVIIIレベル、ならびに比率を示す。さらに、単離および精製(製造)プロセスの間のタンパク質分解に起因して、上記血漿由来VWF濃縮物のマルチマー組成は変動し、最高の止血活性を示す高分子質量マルチマーが見いだされ得ない。形質転換細胞の発酵によって生成される組換えVWF(rVWF)の使用は、これら制限を克服し得る27。血漿プロテアーゼの非存在は、rVWF分解を回避し、ウイルス伝播のリスクをほぼ排除する。インビボおよびインビトロでの評価から、rVWFの構造および特性は血漿由来VWFに匹敵することが確認された28(非特許文献1)。 質量分析法を使用する検体(analyte)の分子量決定は、標準物質の利用可能性(すなわち、上記標準物質の既知の質量に対して検体の未知の質量を相関させるために使用され得る、合理的なコストでのバッチ間の既知の正確な分子量および十分に規定された組成の分子)によって制限される。検体が既知の標準物質の質量の範囲のかなり外にある質量を有する場合、相関の正確性は、低下する。今日では、100kDaより大きい分子量を有する検体の質量分析法による分析において使用するための十分に規定されたタンパク質/糖タンパク質標準物質は、限られている。免疫グロブリンタンパク質が使用されてきたが、それらの質量は、適合が約150kDaまでの分子量を有する検体に限られる。従って、例えば、200kDaより大きい質量を有する検体の分子量を決定するために使用され得る分子量標準物質が必要である。Turecek PL, et al. Histochemistry and cell biology 2002; 117: 123 (要旨) 上記検体の質量スペクトルを測定し、これを、既知の分子量の組換えVWF(rVWF)の質量スペクトルに相関させることによって、質量分析法(MS)を使用した検体の分子量を測定するための方法を、本明細書で開示する。上記rVWFの質量スペクトルは、それを直接測定することによって、または以前に調製されたスペクトルを参照することによって、得ることができる。開示される方法で分析される上記検体は、高分子質(MW;用語分子質量は、同義として使用され得る)、例えば、少なくとも200kDaを有するものである。いくつかの実施形態において、上記検体は、少なくとも1000kDaもしくは少なくとも1500kDaのMWを有する。特定の実施形態において、上記検体は、抗体もしくは別の大きなタンパク質(例えば、フィブリノゲンもしくはコラーゲンまたはそれらの誘導体)である。 いくつかの場合において、上記開示される方法は、VWF分子量マーカー中のVWFのモノマー(配列番号1)の数を決定することによって、上記VWF分子量マーカーのMWを計算する工程をさらに包含する。種々の実施形態において、上記サンプルおよび上記VWF分子量マーカーは、MSによって分析する前に脱塩される。図1は、予備精製なしの還元条件下でのrVWFサンプルA、BおよびCのCGEオンザチップ電気泳動図を示す(FU,蛍光単位、s,移動時間の秒数)。図2は、種々の脱塩手順後の還元条件下でのrVWFサンプルAのSDS−PAGE画像を示す。図3は、ジスルフィド結合の還元およびMicroSpinTMデバイスでの脱塩後のrVWFサンプルA、BおよびCのナノES GEMMAスペクトルを示す。図4は、rVWFサンプルA、BおよびCの線形モードで得られた陽イオンMALDI質量スペクトルを示す。Mは、成熟rVWFを示し、Pは、プロrVWFを示す。 (詳細な説明) 本明細書で記載されるように、rVWFのモノマーおよびマルチマーが、高MWの分析のための質量分析法分子量マーカーとして使用される。なぜなら、上記マルチマーrVWFのMWは、その反復するrVWFモノマー(配列番号1)の既知のMWに基づいて容易に計算されるからである。従って、上記VWFマルチマーのMWを知ることにより、それを使用して質量分析法技術の使用を較正する(すなわち、校正物質)ことが可能となり、目的の検体の質量を決定することが可能になる。上記rVWFのMWは、再現可能にグリコシル化されたVWFを生成する供給源から使用される場合、グリコシル化rVWFのタンパク質部分およびグリカン部分を含む。 高分子質量rVWFマルチマー(VWFのモノマー数に基づく)を調製する能力に起因して、rVWFが、高(例えば、200kDaより大きい)分子量を有する検体の、質量分析法による分析のための分子量マーカーとして有用であることを発見した。上記VWFのマルチマーの分子量は、VWFモノマー(配列番号1)の反復ユニット数に基づいて計算される。評価されるべき検体の性質に依存して、rVWFマルチマーは、200kDa〜5,000kDa超までのいずれかにある、上記目的の検体に対して適切なマーカーであるように、適切な質量を有して調製される。例えば、検体が特定の範囲における質量を有すると疑われる場合、モノマーおよび1以上のic形態および/もしくはマルチマー形態のrVWFが調製され、これは、例示であって限定はしないが、上記検体の疑われる(もしくは予測される)質量約10kDa内の質量を提供するように、反復rVWFモノマーの十分な数を有する。次いで、上記検体のスペクトルを、上記rVWFマーカー(複数可)のスペクトルに対して比較して、上記検体の質量を提供する。質量分析法による分析のための標準物質としてrVWFを使用する1つの利益は、使用される上記rVWF標準物質が、わずか1種のマルチマーを含む必要はないことである。上記rVWFモノマーの反復質量ユニットに起因して、種々のマルチマーの混合物ですら有用である。なぜなら、それらの質量は、上記VWFモノマーもしくはダイマーの質量だけ等しく間隔が空くからである。 上記rVWFのモノマー、ダイマーおよびマルチマーは、代表的には、ジスルフィド結合を使用して繋がっている。 VWFは、少なくとも200kDa、少なくとも250kDa、少なくとも300kDa、少なくとも350kDa、少なくとも400kDa、少なくとも450kDa、少なくとも500kDa、少なくとも550kDa、少なくとも600kDa、少なくとも650kDa、少なくとも700kDa、少なくとも750kDa、少なくとも800kDa、少なくとも850kDa、少なくとも900kDa、少なくとも950kDa、少なくとも1000kDa、少なくとも1100kDa、少なくとも1200kDa、少なくとも1250kDa、少なくとも1300kDa、少なくとも1350kDa、少なくとも1400kDa、少なくとも1450kDa、少なくとも1500kDa、もしくは少なくとも2000kDaの分子量を有する検体のための、標準物質(あるいは、本明細書では、分子量マーカーといわれる)として使用することができる。 所望の分子量を有するrVWFの調製は、哺乳動物細胞からの発現によって達成され得、文献中で記載されてきた(Fischer,Thromb Thrombolysis,8(3):197−205,1999、Schwarzら,Semin Thromb Hemost,28(2):215−26,2002、Turecekら,Histochem Cell Biol.,117:123−129,2002、Cytotechnology.30(1−3):1−16,1999)。 ナノES(エレクトロスプレー)気相電気泳動易動度高分子分析器(GEMMA)、特定の種類のイオン移動度分光器、真空マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法(MS)およびさらにキャピラリーゲル電気泳動オンザチップ(CGEオンザチップ)は、検体の分子量を決定するために使用され得る。一般に使用されるアプローチである、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動29およびSDS−アガロースゲル電気泳動30とは対照的に、3種のrVWF調製物の正確な分子サイズ、サンプル不均一性および正確な分子質量の決定を、ナノES GEMMA、MALDI−線形TOF(飛行時間)MS、ならびにCGEオンザチップによって行った。 ナノES GEMMA分析は、コーンジェットモードにおけるナノESプロセスによって、続いて、ポロニウム−210を介する電荷低下によって、複数の荷電した分子イオンを生成することに基づいており、従って、中性および一重に荷電した陽イオンおよび陰イオンを生じる。これらイオンは、ナノ微分型移動度分析装置(nano differential mobility analyzer)(nDMA)を使用して、それらの電気泳動易動度径(EMD)に従ってサイズ分離され、間接的光学検出に基づいて、凝縮式粒子計数機(condensation particle counter)(μCPC)によって検出される31−33。上記EMDの、十分に規定された球状タンパク質の上記分子質量への相関(r=0.998)に基づいて、糖タンパク質の分子質量が、決定され得る34。GEMMA分析は、一般に、Allmaierら,J.Mass.Spec.,36:1038−1052(2001)で議論されている。 rVWFを特徴付けるために使用される第2の方法は、標準検出器付きの線形TOFシステムを適用する陽イオンMALDI MSであった35。一重〜三重に荷電した分子イオンを主に生成し、高い塩および界面活性剤許容度を示し、少量のサンプルを必要とする十分に確立された「ソフト」脱離/イオン化技術 MALDIは、MALDI TOF MSを、インタクトな高い質量のタンパク質の正確な分子質量測定のための望ましい技術にする36。MALDIの考察は、米国特許第7,351,959号(本明細書に参考として援用される)において見いだされ得る。 (化学物質) 酢酸アンモニウム p.a.,酢酸 96%、アセトニトリル p.a. (ACN), メタノール p.a. (MeOH)、ギ酸 98〜100%(FA)および水 p.a.(25℃での導電率≦1μS/cm)を、Merck(Darmstadt,Germany)から購入した。クマシーブリリアントブルーR250(CBB)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および2,4,6 トリヒドロキシアセトフェノン一水和物(THAP)を、Fluka(Buchs,Switzerland)から得た。ドデシル硫酸リチウム(LDS)および1,4−ジチオスレイトール(DTT, 最低99.0%)を、Sigma−Aldrich(Steinheim,Germany)から得た。NuPage LDSサンプル緩衝液(4×)、NuPage トリス−酢酸SDS泳動緩衝液(20×)、HiMark未染色高分子量タンパク質標準物質およびInvitromass高分子量質量較正キットを、Invitrogen(Carlsbad,CA,USA)から購入した。トリフルオロ酢酸(TFA)を、Riedel de Haen(Seelze,Germany)から得た。 (組換えフォンビルブラント因子(rVWF)) 3種の市販されていないrVWF調製物を、Baxter Biosciences(Vienna,Austria)が製造した。サンプルAは、5.25g/L L−グリセリン、5.25g/L L−リジン−ヒドロクロリド、5.25g/L クエン酸三ナトリウム×2H2O、0.62g/L CaCl2×2H2Oおよび2.2g/L NaCl(pH6.8)からなる緩衝系中に溶解した0.67mg/mL rVWFを含んでいた。サンプルBは、0.49mg/mL rVWFを、サンプルCは、0.54mg/mL rVWFを含んでいた;両方のサンプルは、以下の緩衝系(20mM HEPES、150mM NaClおよび0.5% サッカロース(pH7.4)からなる)に溶解した。 (サンプル均質性の評価のためのキャピラリー電気泳動オンザチップ) ナノES GEMMAおよびMALDI TOF MSを介した詳細な特徴付けの前に、上記rVWFサンプルを、CGEオンザチップで調査し、均質性および妥当なタイムスパン(分離時間60秒)内の適切な分子質量の観点から、3種のサンプルの第1の全体像を得た。 CGEオンザチップ実験を、2100 BioanalyzerおよびProtein P200 plus assay(Agilent Technologies,Waldbronn,Germany)を使用して、非商業的な設定で行った。上記機器を作動させ、その得られた結果を積分し、2100 Expertソフトウェアv.B.02.02.SI238の助けを借りて評価した。 全てのチップ(Agilent Technologies,Waldbronn,Germany)を、製造業者の指示に従って調製した。簡潔には、4μLの上記rVWFサンプル溶液を、2μLの提供された変性溶液(0.0052mg/mL DTTを含む)と混合し、95℃で5分間加熱し、最終的に、上記混合物を84μL 水で希釈した。上記最終サンプル溶液(6μL)を、上記CGE−chip上の指定されたサンプルウェルにアプライし、動電学的に注入した。分子質量測定のために、十分に規定されたタンパク質(Agilent Technologiesキット中に提供される)からなるタンパク質ラダーを、同じように処理した。 (塩/界面活性剤除去最適化のためのSDS−PAGE) 還元条件下でのタンパク質サンプルの分析のために、6μL サンプル溶液、3μL NuPage LDSサンプル緩衝液(4×)および3μL 0.1M DTTを混合し、99℃で1分間インキュベートし、室温へと冷却した。得られた混合物(10μL)を、スラブゲルに直接アプライした。分子質量推定のために、HiMarkタンパク質標準物質混合物を、上記ゲルにさらにアプライした。6μL HiMarkタンパク質標準物質、3μL LDSサンプル緩衝液(4×)および3μL 水を含む混合物を、上記ゲルに直接アプライした。3〜8% トリス−酢酸塩、1mm×10ウェル NuPageプレキャストミニゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)に対して、新たに調製したトリス−酢酸塩SDS泳動緩衝液を使用して、電気泳動を行った。定電圧を150Vに設定し、70分後に分離を停止した。分離の直後に、上記ゲルを、固定溶液(45% MeOH、5% 酢酸)中に30分間入れ、その後、クマシー染色溶液(0.1% CBB R250、45% MeOH、9% 酢酸)で45分間染色した。最後に、上記ゲルを、脱色溶液(45% MeOH、9% 酢酸)中に45分間入れ、このタイムフレーム内で、上記ゲルバックグラウンドは、完全に澄み、明瞭なタンパク質バンドが見えるようになった。 (ナノES GEMMA分析のためのサンプル調製法) 多量の塩、添加剤および界面活性剤を含む異なる緩衝液組成に起因して、上記3個のrVWFサンプルを、脱塩/精製し、次に上記ナノES GEMMAデバイスに適用した。3種の異なる脱塩アプローチ(膜遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、および透析)を評価した。これら脱塩/精製手順の間におけるrVWF損失を、SDS−PAGEによってモニターした。 膜遠心分離については、MWカットオフ3000Da(Pall Corporation,Ann Arbor,MI,USA)付きのNanosepTM遠心分離デバイスを使用した。rVWFサンプル溶液(300μL)を、20分間、5000rpmで遠沈させ,その残渣を、20mM 酢酸アンモニウム緩衝液(100μL,pH6.8)で1回洗浄し、20mM 酢酸アンモニウム緩衝液(300μL,pH6.8)中に再懸濁した。 サイズ排除クロマトグラフィーを、MicroSpinTM G−25カラム(GE Healthcare,Little Chalfont,UK)で行った。MicroSpinTMカラムの限界に起因して、上記サンプルを、2つのアルコートに分け、各回、新たなスピンカラムを使用して、2000rpmで2分間にわたって2回、別個に脱塩した。次いで、上記アリコートを、GEMMA分析のために再度合わせた。 rVWF調製物の透析を、MWカットオフ10kDa付きのSlide−A−Lyzer(登録商標)透析カセット(Pierce,Rockford,IL,USA)で行った。rVWF溶液(300μL)を、体積1.5mLに希釈し、透析溶液(20mM 酢酸アンモニウム,pH6.8)中で約24時間透析した。 次いで、2%(w/v) SDSおよび0.15%(w/v) DTTと混合し、99℃で1分間インキュベートすることによって、上記rVWFサンプルを還元して、ジスルフィド結合を壊した。次いで、得られた還元rVWFを、GEMMA分析によって分析した。 (ナノES GEMMA) 上記ナノES GEMMAシステム(TSI 3980)は、ナノES電荷低下ユニット(TSI 3480)、ナノ微分型移動度分析装置(nDMA;TSI 3080)および検出器としての超微細凝縮式粒子計数機(μCPC;TSI 3025A)(全てのパーツは、TSI Inc(Shoreview,MN,USA)製)からなる。複数荷電のイオンを、上記ナノエレクトロスプレーユニットによって生成し、電荷を、ポロニウム−210によって生成した双極性雰囲気(bipolar atmosphere)によって減らして、中性および一重に荷電した種を得た。これら種を、上記nDMAにおける粒子がない空気の流れの中で、それらの電気泳動易動度直径(EMD)に従ってサイズ分離し、上記μCPCで検出した。 rVWFの分子質量決定のために、いくつかの十分に規定された標準物質タンパク質のEMDを決定し、それらの分子質量と相関させた。得られた、EMDと分子質量との間の関係に基づいて、この研究のrVWFとして未知の分子のサイズを、分子質量を提供するために決定した34,37。 上記ナノES源を、2kVスプレー電圧、および0.3L/分 CO2(99.995%,Air Liquide,Schwechat,Austria)に設定した。加圧空気(1L/分で、コンプレッサータイプHobby−Star 200W,AGRE,Garsten−St.Ulrich,Austriaによって生成)を、上記機器に適用した。内径150nmの溶融シリカキャピラリーを使用し、スプレーニードルの先端を、角度75°で配置した。上記ESイオン化を、陽イオンモードで作動させた。全サイズ範囲にわたって10〜20回のスキャン(1スキャンあたり120秒)を、本明細書に提示される各最終ナノES GEMMAスペクトルに対して平均化した。 (MALDI質量分析法のためのサンプル調製) 上記rVWFダイマーおよびマルチマー中のジスルフィド結合を還元するために、VWF溶液(10μL)を、10% LDS(w/v,0.5μL)および1M DTT(1μL)と混合した。得られた混合物を徹底的にボルテックスし、遠沈し、99℃で1分間インキュベートした。その後、サンプルの脱塩/精製を、親水性HPL樹脂(Millipore,Bedford,MA,USA)を含むZipTipTM ペプチドチップで行った。次いで、10μL溶液A(ACN/0.1% FA、9:1,v/v)を、上記サンプル溶液と混合した。上記HPL定常相を湿らすために、10μLの溶液B(ACN、0.1% FA、1:1,v/v)を吸引し、分与して廃棄した。上記樹脂の平衡化を、溶液Aを3回吸引し分与することによって得た。上記サンプル溶液を7回吸引し、分与することによって、上記サンプルを樹脂に結合させた。全ての干渉する塩、添加剤および界面活性剤を除去するために、上記チップを、普通の(plain)溶液Aで10回洗浄した。次いで、上記VWFを、2〜4μL MALDIマトリクス溶液(1mL 0.1% TFA/ACN(1:1,v/v)溶液中に溶解した10mg THAP)で溶出した。MALDI MS分析のために、0.5μLの得られたサンプル/マトリクス溶液を、ステンレス鋼MALDI標的にアプライした。上記Invitromass 高分子量較正キットを使用することによって、外部較正を行った。上記較正キットを、製造業者の指示に従ってアプライした。 (MALDI質量分析法) 全てのMALDI TOF MS実験を、窒素レーザー(λ=337nm)を備えたAXIMA TOF2(Shimadzu Biotech Kratos Analytical,Manchester,UK)で行った。上記機器を、パルス状抽出を使用せずに、陽イオン線形モードで作動させた。各質量スペクトルを、50〜200個の非選択および連続的レーザーショットを平均化することによって獲得した。データ分析の前に、上記質量スペクトルを、Savitsky−Golayアルゴリズムで滑らかにした。 (結果) 上記rVWFサンプルの均質性を、CGEオンザチップを使用して測定した。いかなる特定のサンプル調製なしでかつ短いタイムスパン(60秒稼働時間)内で、rVWFサンプルA、BおよびCのデータ(図1)を得、各サンプルは、2個の異なるrVWF種に対応する2個のピークを有することが明らかになった。それらは、分子質量277kDを有する成熟rVWFおよび分子質量341kDaを有するプロrVWFであると決定された。上記プロrVWFの存在は、上記成熟rVWFへの不完全な酵素切断に起因すると合理的に解釈された。サンプルAの主要成分は、プロrVWFと、いくらかの成熟rVWFであった(図1の上段を参照のこと)。サンプルBおよびCの分析は、成熟rVWFが主要成分で、プロrVWFがわずかであることを示した。 3種の異なる脱塩手順を評価して、塩および界面活性剤を上記rVWFサンプルから除去し、その後GEMMA分析を行った:膜遠心分離(NanosepTM 3K)、サイズ排除クロマトグラフィー(MicroSpinTM G−25)、および透析(Slide−A−Lyzer(登録商標) 10K)。上記脱塩手順後の糖タンパク質回収を、還元条件下のSDS−PAGEでモニターした。図2は、脱塩工程なしのrVWFサンプルA(レーン2)およびMicrospinTM G−25(サイズ排除クロマトグラフィー)カラムで2回脱塩(レーン3)を比較するSDS−PAGEデータを示す。未処理rVWFサンプルAは、約269kDaおよび339kDaにおいて2個のタンパク質バンドを示し、このことは、CGEオンザチップによって達成された上記データを確認する。rVWFサンプルAのサイズ排除クロマトグラフィー(MicroSpinTM G−25)はまた、2個の異なるタンパク質バンドを得、これらは、上記未処理サンプルから得られたタンパク質バンドより僅かに弱かった。rVWFサンプルの透析は、大量のサンプル損失を生じ、このことは、透析膜への非常に接着性のrVWFの吸着が原因である可能性が最も高かった。膜遠心分離(NanosepTM 3K)を使用して上記サンプルを脱塩した場合、検体損失はほとんどなかった。 図3は、種々のrVWF濃度を有する還元型rVWFサンプルA〜CのナノES GEMMAスペクトルを示す。rVWFサンプルAのGEMMAスペクトル(図3,上段)は、分子質量298.8kDaに対応する11.9nm(±1.6%)において強いピークを示すのに対して、rVWFサンプルB(図3,中段)およびC(図3,下段)は、分子質量227kDa(±2.5%)に対応する10.9nmにおいてピークを示す。 上記使用したnDMAの分解能は、上記成熟rVWFおよびプロrVWFについて両方の分子イオンを明らかに分離するには不十分であった。実際に、上記11.8nmでのピークは、10.9nm(サンプルBおよびCから測定)と12.7nm(この値についてのベースは、MALDI TOFデータであった)との間の平均値であった。サンプルBおよびCは、大部分は成熟rVWFであり、ほとんどプロrVWFを含まず、このことは、それらのナノES GEMMAスペクトルによって確認された。上記プロrVWFの濃度は無視できる程度であった。これは、上記CGEオンザチップデータに対応する。 上記rVWFサンプルをまた、MALDI TOF MSによって分析した。塩および界面活性剤へのその許容度に起因して、徹底的なサンプルの脱塩/精製は必要なかった。ジスルフィド結合を還元して、上記rVWFモノマーを得た後、塩および界面活性剤を、ZipTipTM 脱塩アプローチによって除去した。図4は、上記脱塩工程後のrVWFサンプルA〜Cの陽イオンMALDI質量スペクトルを示す。上記MALDI−TOFスペクトルは、rVWFのいくつかのイオン化種を示した:成熟rVWFの[M+H]+(m/z 256100)イオン、[M+2H]2+(m/z 127800)イオンおよび[M+3H]3+(m/z 87600)イオン、ならびにプロrVWFの[P+2H]2+(m/z 174400)イオン、[P+3H]3+(m/z 118100)イオンおよび[P+4H]4+(m/z 87600)イオンを、rVWFサンプルAの上記陽イオン質量スペクトルで検出した(図4,上段を参照のこと)。プロrVWFの一重に荷電した分子イオンは、検出されなかった。 二重に荷電した成熟rVWF(m/z 127800)および三重に荷電したプロrVWF種(m/z 118100)は、低MS分解能に起因して、容易に分解も分離もしない。このことは、2つの最大を有する幅広いシグナルを生じる。m/z値の区別がつかないので(m/z 87000)、三重に荷電した成熟rVWF種および四重に荷電したプロrVWF種の分離は、観察されなかった。主に成熟rVWF(CGEオンザチップ分析によって確認した,図1)および少量のプロrVWFを含むrVWFサンプルBおよびCのMALDI質量スペクトル(図4,中段および下段)は、優れたS/N比をもつ、成熟rVWFの一重に(m/z 249000)、二重に(m/z 125600)および三重に(m/z 85600)荷電した分子イオンを示した。プロrVWF(m/z 169300 サンプルBおよびm/z 167200 サンプルC)の二重に荷電した分子イオンもまた検出されるこれらMALDI質量スペクトルは、少量で検出できた。 表1は、ナノES GEMMA、MALDI TOF MSおよびCGEオンザチップによって得られる分子質量データをまとめる。上記MALDI TOF質量分析計の外部質量較正によって、rVWF種の分子質量決定は、±0.8%の精度で可能であった。実験的分子質量値およびVWFのアミノ酸配列に基づく計算値38,3は、プロrVWFについては、27〜43kDaのΔm内および成熟rVWFについては、30〜34kDaのΔm内であった。これらΔm値は、上記rVWFの炭水化物部分に帰するということができ、このことは、プロrVWFについては8〜12%、および成熟rVWFについては12〜14%のグリコシル化程度を示す。 サンプルAにおける上記成熟rVWFおよびプロrVWFの分離は、上記ナノES GEMMA分析については観察されなかった。低い分離能に起因して、両方の種の混合物を、11.9nm(分子質量298.8kDa(±1.6%)に対応する)で検出した。上記MALDI MSデータから逆解析(Back−calculation)したところ、256.1kDa(成熟rVWF)および349.8kDa(プロrVWF)は、それぞれ、11.3nmおよび12.6nmのEMDを示した。サンプルBおよびCは、ごく少量のプロrVWFを有し、成熟rVWF種のみが、分子質量227.4kDa(±2.5%)に対応するそれらのナノES GEMMA分析において検出された。 外部MS質量較正は、上記rVWFの分子質量についての情報を提供した。これを、報告された値と比較した。報告された値は、成熟rVWFについては約226kDa、およびプロrVWFについては約307kDaであり、MALDI TOF MS値は、成熟rVWFについては256.1kDa(±0.8%)およびプロrVWFについては349.8kDa(±0.8%)であった。30〜34kDa(成熟rVWF)および27〜43kDaの質量差が観察された。このことは、成熟rVWFについては12〜14%およびプロrVWFについては8〜12%のグリコシル化程度を示すrVWFの22個のN−グリカンおよびO−グリカンに関連し得る。rVWFサンプルAのナノES GEMMA分析は、サイズ11.9nmを示し、分子質量298.8kDa(±1.6%)を示した。これは、実際に、上記成熟rVWFおよびプロrVWFの混合物であった。少量のプロrVWFを有するサンプルBおよびCのrVWFのナノES GEMMA分析は、分子質量227.4kDa(±2.5%)(サイズ10.9nmに対応する)を有する上記成熟rVWFの検出をもたらした。 前述は、本発明を記載しかつ例示しているが、以下の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定することを意図しない。本明細書で開示されかつ特許請求された方法の全ては、本開示に鑑みれば、過度の実験なくして行われ得かつ実行され得る。本発明の材料および方法は、具体的な実施形態の観点から記載してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、上記材料および/もしくは方法に、そして本明細書に記載される方法の工程もしくは工程の順序において、バリエーションが適用され得ることは、当業者に明らかである。より具体的には、化学的かつ生理学的に関連する特定の因子が、本明細書に記載される因子の代わりに使用され得る一方で、同じもしくは類似の結果が達成されることは明らかである。 (参考文献)高分子量の検体の分子量を決定するための、MALDI質量スペクトルの外部較正および内部較正のための方法であって、該方法は、 a)既知の分子量の組換えフォンビルブラント因子(rVWF)の質量スペクトルを得る工程; b)質量分析法を介して検体を分析して、質量スペクトルを提供する工程であって、ここで該検体は、少なくとも500kDaの分子量を有する、工程;および c)該検体の該質量スペクトルを、該rVWFの該質量スペクトルに相関させることによって、該検体の該分子量を決定する工程、を包含する、方法。前記検体は、少なくとも1000kDaの分子量を有する、請求項1に記載の方法。前記検体は、少なくとも1500kDaの分子量を有する、請求項2に記載の方法。前記検体は、200kDより大きいタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。前記検体は、免疫グロブリン、フィブリノゲン、フィブロネクチン、もしくは第XIII因子を含む、請求項1に記載の方法。前記質量分析法は、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)もしくはマトリクス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間(MALDI−TOF)を含む、請求項1に記載の方法。前記検体を脱塩した後に分析を行なう工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。前記rVWF中のVWFのモノマー(配列番号1)の数を決定することによって、前記rVWFの分子量を計算する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。前記VWFのモノマーは、ジスルフィド結合によってつながれる、請求項8に記載の方法。 組換えフォンビルブラント因子(rVWF)分子量マーカーと組み合わせて、MALDI質量分析法を使用して、少なくとも150kDaの目的の検体の分子量を決定するための方法が開示される。より具体的には、モノマーrVWFおよびマルチマーrVWFが、150kDaを上回る高分子量を有する検体に適用される質量スペクトルの外部較正および内部較正のために使用される。いくつかの実施形態において、上記検体は、少なくとも1000kDaもしくは少なくとも1500kDaのMWを有する。特定の実施形態において、上記検体は、抗体もしくは別の大きなタンパク質(例えば、フィブリノゲンもしくはコラーゲンまたはそれらの誘導体)である。 配列表