タイトル: | 特許公報(B2)_非アルコール性脂肪肝炎関連マーカー |
出願番号: | 2011536192 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 33/576,G01N 33/68,G01N 33/53,C12Q 1/44 |
佐藤 歩美 原田 剛 矢野 崇 若林 陽子 JP 5758298 特許公報(B2) 20150612 2011536192 20101015 非アルコール性脂肪肝炎関連マーカー 持田製薬株式会社 000181147 小野 誠 100114188 坪倉 道明 100124855 佐藤 歩美 原田 剛 矢野 崇 若林 陽子 JP 2009239570 20091016 20150805 G01N 33/576 20060101AFI20150716BHJP G01N 33/68 20060101ALI20150716BHJP G01N 33/53 20060101ALI20150716BHJP C12Q 1/44 20060101ALI20150716BHJP JPG01N33/576 ZG01N33/68G01N33/53 DC12Q1/44 G01N 33/576 C12Q 1/44 G01N 33/53 G01N 33/68 特開2007−315752(JP,A) 国際公開第2008/075788(WO,A1) 特開2000−102399(JP,A) 特開2009−120607(JP,A) 国際公開第2009/028457(WO,A1) 国際公開第2009/090882(WO,A1) 国際公開第2009/151125(WO,A1) Schmilovitz-Weiss,H.,Role of circulating soluble CD40 as an apoptotic marker in liver disease,Apoptosis,2004年,9,205-210 Jin,H.,Telmisartan prevents hepatic fibrosis and enzyme-altered lesions in liver cirrhosis rat induced by a choline-deficient L-amino acid-defined diet,Biochem Biophys Res Commun.,2007年,364/4,801-807 12 JP2010068168 20101015 WO2011046204 20110421 27 20130919 伊藤 裕美 本発明は、脂肪性肝疾患、特に、非アルコール性脂肪性肝疾患、あるいは非アルコール性脂肪肝炎の検出、重篤度の指標となるマーカーを用いた疾患の検出、重篤度・治療効果の評価のための方法に関する。さらに、これらのマーカーを用いた評価を含む非アルコール性脂肪肝炎の治療方法、さらにまた、これらのマーカーにより評価を行うためのキットに関する。 ウィルス性肝疾患、自己免疫疾患性肝疾患、ヘマクロトーシスやWilson病等の代謝性肝疾患などを除外して、飲酒歴のない人に発生する単純脂肪肝から脂肪性肝炎、線維症、肝硬変までの肝障害を含む疾患群は、一括して非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:以下、NAFLDと記す)と定義される。NAFLDは、さらに、肝生検(病理所見)により、一般に予後良好と考えられている単純性脂肪肝と、予後不良な非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:以下、NASHと記す)とに分類され、NASHは、NAFLDの重症型と考えられている。肝生検によりNASHと判定される炎症、脂肪化、線維化ないし肝硬変、肝癌の病態は、他因と同じであり、アルコール性肝障害、ウィルス性肝炎や薬剤性肝障害の否定できる肝炎の多くがNASHの病態であろうと推定される。米国では、人口の20%がNAFLD、3%がNASHであるとされる。日本でも一般診療においても比較的頻繁に遭遇する疾患であり、検診受診者におけるNAFLDの頻度は8%であり、NASHの頻度は少なくとも成人の0.5〜1%と推定される。日本では、BMI≧25の成人肥満者が、男性で1300万人、女性で1000万人いることから、国内のNAFLDは500〜600万人、NASHは約30〜50万人と推定される。また、NAFLDでのメタボリックシンドローム診断基準に基づく、脂質代謝異常の合併頻度は約50%、高血圧の合併頻度は約30%、高血糖の合併頻度は約30%、メタボリックシンドロームの合併頻度は約40%であり、生活習慣病の増加に伴い、今後、NASHの症例数の増加ならびに低年層への拡大が予想される。さらに肝炎を経て一部は星状細胞活性化による肝硬変、あるいは肝癌への進行が臨床的な問題である。現在のところ、NASHの確定診断には肝生検組織診断が必要とされ、疾患治癒の判定においても同様に肝生検が必要と考えられている。肝生検には、患者の身体的負担、医療従事者の負担が大きいという問題があり、侵襲を伴う肝生検に代わって、NAFLD、NASHの診断、病態の評価に有用な特徴的な血液マーカーの確定が求められている。また、種々の病態改善を目指したNASHの治療方法が試みられ、その有効性が報告されているが、確立した治療法がないのが現状である(非特許文献1参照)。 従来、NASHの検出に用いられる血液検査指標としては、例えば、アスパルテートアミノトランスフェレース(以下、ASTとも記す)、アラニンアミノトランスフェレース(以下、ALTとも記す)、AST/ALT比、血清フェリチン、血清チオレドキシン、HOMA−IR、血小板数、TNFα、アディポネクチン、レプチン、高感度CRP、ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S、プロコラーゲンIIIポリペプチド、CK18フラグメントなどが挙げられる。 その他にも、NASH患者では、単純脂肪肝の患者と比較して、TNFα、CCL2/MCP−1が上昇したことが報告されている(非特許文献2参照)。 また、NASHモデル動物に対して、テルミサルタン(非特許文献3参照)、あるいは、オルメサルタン(非特許文献4参照)が投薬されたところ、肝臓線維化が抑制されるとともに、それぞれ、肝組織のTIMP1、TIMP2のmRNA発現が低下した(非特許文献3参照)、肝臓のalpha 1[I]procollagenの遺伝子発現が低下した(非特許文献4参照)ことが報告されている。 脂肪性肝炎、肝臓の癌形成のモデルとしての肝細胞特異的Pten欠損マウスの肝臓細胞における遺伝子解析により、adipsin、adiponectinなどの発現が誘導されたことが報告されている(非特許文献5参照)。 また、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤をNASH、NAFLDに用いる提案がある(特許文献1参照)。 Tanakaらは、高純度イコサペント酸エチル(以下、EPA−Eとも記す)の12ヶ月間投与によるNASH改善の検討において、EPA−E投与観察期間後の肝生検とともに、AST、ALT酵素観察、TNFα、sTNF−R1およびsTNF−R2などの炎症性サイトカイン、チオレドキシンなどの酸化ストレスマーカーによる評価を示す(非特許文献6参照)。国際公開2007/016390号パンフレット日本肝臓学会編、「NASH・NAFLDの診察ガイド」、文光堂出版、2006年8月22日J. Hepatol. 2006 Jun;44(6):1167−74Biochem Biophys Res Commun. 2007 Dec 28;364(4):801-7.Eur J Pharmacol. 2008 Jul 7;588(2-3):316-24.Hepatology October 2004 428A 609Journal of Clinical Gastroenterology、2008年、第42巻、第4号、413−418 本発明は、NASHの検出、重篤度の評価に有用なマーカーを提供することを目的とする。本発明は、NASH治療薬、特にEPA−Eを有効成分として含有する医薬組成物による治療効果の評価に有用なマーカーを提供することを目的とする。本発明は、該マーカーを用いる、被験者におけるNASHの検出、重篤度の評価のための方法、さらには治療効果の評価のための方法を提供することを目的とする。本発明は、本発明のマーカーを用いてNASHの検出又は評価された被験者を対象とするNASH治療方法を提供することを目的とする。本発明は、NASHの検出、重篤度の評価に有用なマーカーの測定キットを提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、特定の生体内因子の量又は活性が健常者とNASH患者とで異なることを見出した。これら因子は、タンパク質の量または活性として公知の測定方法で測定可能であるが、これまで、NASHマーカーとして使用された報告はない。そして、NASH患者における該特定の因子の量または活性値は、公知の肝機能障害の指標であるAST値と相関する傾向があることを確認でき、これら因子は、NASHの新規な検出、重篤度・治療効果の評価に有用なマーカーになり得ることを見出し、本発明を完成した。 またさらに、実施例として後述するマウスにおける遺伝子解析により、EPA−EのNASH・NAFLD抑制効果を示すものとして選抜される第2因子をマーカーとして提供する。第2因子は、高脂肪・高ショ糖食により重篤な脂肪肝を呈するマウスの肝臓で発現が変動し、かつ、EPA−E投与によりその発現が抑制された遺伝子群から選抜された因子である。これら第2因子群中には、従来NASHマーカーと考えられている因子も含まれており、第2因子群はNASHマーカーとしても有用と考えられる。第2因子群は上記NASHマーカーの因子に付加的に使用することもできる。特に、これら第2因子は、EPA−Eの効果との関連が確認されたことから、イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群(以下、EPA類と総称することもある)によるNASH治療効果を評価できるマーカーとしての有用性が考えられる。 したがって、本発明は、本発明のマーカーを用いたNASH検出方法、重篤度・治療効果の評価のための方法を提供する。また、本発明のマーカーを用いてNASHの検出又は評価された被験者にNASH治療薬を投薬する治療方法、あるいは本発明のマーカーによる治療効果の評価のための方法を含むNASH治療方法を新規な治療方法として提供することができる。ここでのNASH治療薬は、好ましくはEPA類である。特に第2因子は、EPA−Eの効果との関連が確認されたことから、NASH及び/又はNAFLDの被験者の中から、EPA類の投薬による治療が適する被験者を選択するための指標、あるいは、個々の被験者において、NASH治療方法の中からEPA類の投薬による治療を選択するための指標とすることができる。 このような本発明の態様例を以下に示す。(1)IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIAおよびsPLA2活性からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして用いるNASHの検出又は重篤度の評価のための方法。 上記IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1またはsPLA2groupIIAは、好ましくは抗原の形態である。(1)の方法は、好ましくはNASHの検出方法である。(2)A)被験者の生体試料における、上記(1)の因子を測定する工程を含む、(1)の方法。(3)A)被験者の生体試料における、前記因子の量および/または活性値を測定する工程、およびB)上記A)で測定した値を、カットオフ値と比較する工程、を含む上記(1)または(2)に記載の方法。(4)上記B)において、被験者における測定値がカットオフ値と比較して陽性のときに被験者におけるNASHの存在が示唆されるとする、NASHの検出方法である上記(3)に記載の方法。(5)被験者の生体試料における、IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、IL−3レセプター、 alpha chain、lymphocyte antigen 6 complex、 locus D、COL1a1、TNFRスーパーファミリー、メンバー19(TAJ)、TNFAIP6、VLDLR、EarAファミリー、 メンバー1,2,3,12、INSL5、TGFβ2、HAMP、リパーゼHおよびCYP7B1からなる第2因子群より選ばれる1以上をマーカーとして測定する工程を含む、NASHの検出又は重篤度の評価のための方法。 上記因子は、好ましくは抗原の形態である。(6)被験者の生体試料における、上記(5)の第2の因子群より選ばれる1以上をさらにマーカーとして用いる上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。(7)上記第2の因子群が、IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、MMP12、MMP13、トレハラーゼ、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、HAMPおよびリパーゼHからなる上記(5)または(6)に記載の方法。(8)被験者の生体試料における、IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIA、sPLA2活性、及び第2因子群からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして、一定期間以上の間を空けて少なくとも2回測定し、測定値を比較する工程を含む、NASH治療効果の評価のための方法。(9)次の工程を含む、NASH治療効果の評価のための方法。A)被験者の生体試料における、IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIA、sPLA2活性、及び第2因子群からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして測定する工程B)非アルコール性脂肪肝炎の治療を行う工程C)前記A)の測定時から一定期間以上経過した後、被験者の生体試料における前記A)で用いた同一因子を測定する工程D)前記A)とC)で得られた測定値を比較する工程(10)さらに、NASH治療のためにNASH治療薬が投薬される、該NASH治療薬の治療効果の評価のための(8)または(9)に記載の方法。(11)前記NASH治療薬がEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物であり、少なくとも第2因子群より選ばれる1以上がマーカーとして用いられる(10)に記載の方法。(12)次の工程を含むNASHの治療方法。1)(1)〜(7)のいずれかの方法によりNASHの検出又は重篤度の評価のための方法が行われる工程2)前記1)で検出又は評価された被験者に対して、NASHの治療を行う工程(13)さらに次の工程を含む(12)に記載の治療方法。3)前記(8)又は(9)のNASH治療効果の評価のための方法が行われる工程(14)さらに次の工程を含む(13)に記載の治療方法。4)治療効果の評価に基づいて被験者の治療方法が決定される工程(15)上記NASHの治療がEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物の投薬である(12)〜(14)のいずれかに記載の治療方法。(16)前記NASH治療効果の評価のための方法が、少なくとも第2因子群より選ばれる1以上をマーカーとして用いて行われる(15)に記載の治療方法。(17)被験者の生体試料における、IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIA、sPLA2活性からなる群より選ばれる1以上の因子により非アルコール性脂肪肝炎の存在が示唆された被験者に対して、有効量のNASH治療薬を投与することを含む、非アルコール性脂肪肝炎の治療方法。(18)前記NASH治療薬がEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物である(17)に記載の方法。(19)さらに、その他の検査指標からなる群から1以上が検出又は評価に用いられる、(1)〜(18)に記載の方法。(20)被験者の生体試料における、IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIA、sPLA2活性、及び第2因子群からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして、EPA類によるNASH治療を選択する方法。(21)(20)によりEPA類によるNASH治療が選択された被験者に対して、EPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物が投薬されるNASH治療方法。(22)被験者の生体試料における、IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIA、sPLA2活性、及び第2因子群からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして、NASH及び/又はNAFLDの被験者の中からEPA類によるNASH治療が適する被験者を選択する方法。(23)(22)により選択された被験者に対して、EPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物が投薬されるNASH治療方法。(24)IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2groupIIA、IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、IL−3レセプター、 alpha chain、lymphocyte antigen 6 complex、 locus D、COL1a1、TNFRスーパーファミリー、メンバー19(TAJ)、TNFAIP6、VLDLR、EarAファミリー, メンバー1,2,3,12、INSL5、TGFβ2、HAMP、リパーゼHおよびCYP7B1からなる群より選ばれる1以上に対する抗体又は抗体フラグメント、及び/又は、sPLA2活性測定用基質を含む、NASHの検出又は重篤度・治療効果の評価のための測定キット。(25)IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIAおよびsPLA2活性からなる群より選ばれる1以上の因子よりなるNASHの検出又は重篤度の評価のためのマーカー。(26)IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、IL−3レセプター、 alpha chain、lymphocyte antigen 6 complex、 locus D、COL1a1、TNFRスーパーファミリー、メンバー19(TAJ)、TNFAIP6、VLDLR、EarAファミリー、 メンバー1,2,3,12、INSL5、TGFβ2、HAMP、リパーゼHおよびCYP7B1からなる第2因子群より選ばれる1以上よりなるNASHの検出又は重篤度の評価のためのマーカー。(27)NASHの検出又は重篤度の評価のためのマーカーに使用するための、IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2group IIAおよびsPLA2活性からなる群より選ばれる1以上の因子。(28)NASHの検出又は重篤度の評価のためのマーカーに使用するための、IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、IL−3レセプター、 alpha chain、lymphocyte antigen 6 complex、 locus D、COL1a1、TNFRスーパーファミリー、メンバー19(TAJ)、TNFAIP6、VLDLR、EarAファミリー、 メンバー1,2,3,12、INSL5、TGFβ2、HAMP、リパーゼHおよびCYP7B1からなる第2因子群より選ばれる1以上の物質。 本発明により、NASHの検出・診断、重篤度・治療効果の評価に有用な指標が提供されるため、簡便に、NASHに罹患している可能性のある被験者を検出することができ、また、NASH、NAFLDの重篤度や、治療効果を評価することが可能になる。 特に、EPA類によるNASH治療を行う場合に、簡便に、その治療効果を評価することが可能になる。生検を行う必要がないため、患者の負担、及び、医療従事者の負担も軽減することができる。NASH患者の血漿におけるIL−1ra値とAST値との相関図である。NASH患者の血漿におけるsCD40値とAST値との相関図である。NASH患者の血漿におけるHMGB1値とAST値との相関図である。NASH患者の血漿におけるsPLA2groupIIA値とAST値との相関図である。NASH患者の血漿におけるsPLA2活性値とAST値との相関図である。 以下、本発明をより具体的に説明する。1.マーカー 本発明に係るマーカーは、生体試料中の因子として測定することができれば、遺伝子、タンパク質、活性のいずれであってもよいが、好ましくは、血中で簡便に測定できる因子であり、タンパク質であることが望ましく、抗体で測定可能な抗原であることがより望ましい。<第1因子群> 本発明では、IL−1レセプターアンタゴニスト、sCD40、HMGB1、sPLA2groupIIAおよびsPLA2活性をNASHマーカーとして提供する。説明の便宜上、これら因子群より選ばれる1つ以上の因子を第1因子または第1マーカーと称することもある。第1因子は、生体試料を検体として公知の測定キットを用いて検出しうる因子である。NASHマーカーとしてはこれらの生物活性のあるタンパク質として検出してもよいが、好ましくは抗原として測定できればよい。そして、それらはNASHマーカーとして使用された報告はない。NASHの診断・検出、重篤度・治療効果の評価のための新規なマーカーである。以下に、具体的に説明する。なお、本明細書において、診断・検出、重篤度・治療効果の評価を単に評価と記載することがある。IL−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra):Interleukin-1 receptor antagonist IL−1は、TNFαと並び、代表的な炎症性サイトカインである。IL−1raは、内因性の抗炎症サイトカインであり、IL−1受容体に対し、IL−1と競合拮抗することにより、IL−1のアゴニスト活性を阻害する。 これまで、IL−1ra欠損マウスは、IL−1シグナル伝達が過剰となり、動脈硬化食を投与すると、NASH類似の肝組織像と高コレステロール血症を呈するとの報告がなされている(日本臨床64巻6号(2006−6)1063−1070頁)。この報告から、NASH患者では、体内のIL−1raが低下していることが予測された。 今回、我々は、NASH患者と健常者において、血漿中のIL−1ra濃度を比較したところ、予想に反して、NASH患者の血漿中のIL−1ra濃度は、健常者と比較して有意に上昇していた。このように、本発明において、IL−1raのNASHマーカーとしての有用性が示された。solubleCD40(sCD40) CD40は、TNFレセプタースーパーファミリーの50kDaの膜結合糖タンパクである。多くの細胞に発現していて、免疫反応とアポトーシスの制御に重要な役割を果たす。 これまでに、肝臓疾患をもつ被験者の血清中の平均sCD40レベルは112.9であり、健常者の24.2と比較して高かったことが報告されている。この報告における肝臓疾患とは、ウイルス性肝炎59例、胆汁鬱滞性肝炎20例、AIH(自己免疫性肝炎)7例、アルコール性肝炎7例、特発性肝疾患7例、劇症肝炎4例、肝細胞癌7例、サルコイドーシス2例、ウィルソン病1例であった。疾患別にsCD40濃度を比較すると、一般的に、NASHに病態が近いといわれているアルコール性肝疾患のsCD40レベルは12.6であり、健常者以下の値を示した(apoptosis2004;9:205−210)。この報告から、NASH患者のsCD40レベルは、健常者と比較しても同等かそれ以下であることが予想された。 また、FaO細胞(肝臓癌細胞)を24時間脂質エマルジョンに暴露した細胞死は、アポトーシスではなく、ネクローシスであったとの文献も存在していた(Nutrition25(2009)200−208)。 今回、我々は、NASH患者と健常者において、血漿中のsCD40濃度を比較したところ、予想に反して、NASH患者の血漿中のsCD40濃度は、健常者と比較して有意に上昇していた。sCD40のNASHマーカーとしての有用性が示された。HMGB1(High mobility group box1) HMGB1は、分子量30kDaのタンパク質であり、様々な細胞で発現している。HMGB1は、DNAと結合し安定化させる作用、サイトカインとしての作用をもち、細胞ネクローシスのマーカーともいわれている。 これまでに、一定時間脂質エマルジョンに暴露したFaO細胞(肝臓癌細胞)をビトロの脂肪肝モデルとして使用して、HMGB1を評価した報告がある。 FaO細胞(肝臓癌細胞)を脂質エマルジョンに6時間暴露したところ、細胞内のROS産生が顕著に増加した。HMGB1はネクローシス細胞死のマーカーとして使用された。FaO細胞を脂質エマルジョンに24時間暴露したところ、HMGB1の低下が観察された。カスパーゼ3活性は、アポトーシス細胞死のマーカーとして使用された。24時間の暴露によってカスパーゼ3活性は変化せず、肝臓細胞死はネクローシスであったとされている(Nutrition25(2009)200−208)。 今回、我々は、NASH患者と健常者において、血漿中のHMGB1濃度を測定したところ、NASH患者の血漿中のHMGB1濃度は、健常者と比較して有意に上昇していた。今回初めて、被験者の血漿中のHMGB1が、NASHマーカーとして使用できることが示された。sPLA2(secretory phospholipase A2)groupIIA:type2A、typeIIA ホスフォリパーゼA2(PLA2s)は、ホスフォグリセリドの2位の位置でエステル結合を加水分解し、遊離脂肪酸とリゾリン脂質を遊離させる、スーパーファミリーを形成する酵素である。sPLA2は分泌型の酵素であり、分子量やCa2+依存性などにより、GroupIA、IB、IIA、IIB、IIC-III、V、VII、IXなどのサブタイプに分類される。sPLA2groupIIAは、ヒト滑液、血小板に存在が確認され、炎症への関与が示唆されている(Dennis E.A.ら、Trends Biochem.Sci.22,1−2(1997))。 ヒトsPLA2groupII遺伝子を発現させたトランスジェニックマウスに関し、sPLA2groupIIAと高コレステロール血症との関連を示唆する報告がある。ヒトsPLA2groupIIトランスジェニックマウスと非トランスジェニックマウス(n=10)に、1%コレステロールリッチな食餌を13週間摂食させた。sPLA2groupIIトランスジェニックマウスは、非トランスジェニックのコントロールと比較して、血漿コレステロールレベルが低下し、肝臓組織では遊離およびエステル化コレステロール濃度が上昇したが、トリグリセライド濃度は変化しなかったことが示された。この結果から、この文献の著者らは、「sPLA2groupIIAの過剰発現は、コレステロールの肝臓への輸送を増加させることが示唆される。このメカニズムは、炎症性疾患をもつ患者においてみられる高コレステロール血症の進展に寄与しているかもしれない」と考察し、上記sPLA2groupIIAと高コレステロール血症との関連を示唆している(Inflammation Vol.28 No.2(2004))。 しかし、これまで、sPLA2groupIIA について、NASHとの関連は知られておらず、ヒトNASH患者の血漿でsPLA2groupIIA濃度がどのような動きをするのか予測もされていなかった。 今回、我々は、NASH患者と健常者において、血漿中のsPLA2groupIIA濃度を測定したところ、NASH患者の血漿中のsPLA2groupIIA濃度は、健常者と比較して有意に上昇していた。今回初めて、被験者の血漿中のsPLA2groupIIAが、NASHマーカーとして使用できることが示された。sPLA2活性 分泌型ホスフォリパーゼA2(sPLA2s)には、いくつかのサブタイプが存在することは前記のとおりであるが、我々は、血漿中のsPLA2全体の活性を測定した。 sPLA2は、アテローム性プラークにおいて発現が上昇していて、LDLを加水分解することによるリゾリン脂質のような炎症性の脂質の産生を促進することが示唆されている。このように、sPLA2は、アテローム性動脈硬化、炎症などとの関連が示唆されている(Biochim Biophys Acta.2006 Nov;1761(11):1309−16.Oestvang Jら)。 また、前記文献(Inflammation,Vol.28No.2(2004))では、sPLA2groupIIを高発現させたトランスジェニックマウスでは、血漿中のsPLA2活性が上昇したことが示されている。 これまで、sPLA2活性とNASHとの関連をみた報告はない。しかし、sPLA2活性に関するこれまでの報告から予測するとすれば、NASH患者において、TNFαなど炎症性の指標の上昇が報告されているから、sPLA2活性も上昇することが予測された。 今回、血漿中のsPLA2活性を、NASH患者と健常者とで比較したところ、予想外にも、NASH患者の血漿中のsPLA2活性は、健常者と比較して有意に低下していた。 本発明において、初めて、sPLA2活性が、NASHマーカーとして使用できることが示された。<第2因子群> 本発明に係る第2因子群のマーカーは以下の方法により選抜された因子群である。すなわち、(1)マウスに高脂肪・高ショ糖食+5%パルミチン酸エチルを20週間摂食させたところ、重篤な脂肪肝を呈した(HF−HS群)。一方、別のマウスに高脂肪・高ショ糖食+5%EPA−Eを同様に摂食させたところ、脂肪肝は誘発されなかった(EPA群)。(2)次に、通常食を与えたコントロール群、HF−HS群、及びEPA群の3群で、肝臓の遺伝子発現を比較した。コントロール群と比較して、HF−HS群で変動の見られた遺伝子で、かつ、HF−HS群と比較してEPA群で変動の見られた遺伝子を抽出した。(3)さらに、この遺伝子の中から、対応するタンパク質が血中に分泌する可能性のある因子、かつ、NASHと関連する可能性のある因子を抽出した。 具体的には実施例2として後述するが、上記(2)における、各群間の遺伝子の比較の条件に基づいて以下の2つのグループ(A)および(B)として選択される。(A):HF−HS群/コントロール群≧2かつEPA群/HF−HS群≦0.5。(B):HF−HS群/コントロール群≦0.5かつEPA群/HF−HS群≧2。 また、上記(3)におけるNASHと関連する可能性のあるとは、脂質代謝に関連する、炎症に関連する、SREBPトランスジェニックマウスの肝臓で発現が上昇する、のいずれかであればよい。 (A)グループは、脂肪肝を呈するマウスの肝臓で発現が上昇し、EPA−E投与により発現が抑制された遺伝子をもとに抽出されたマーカーであるから、NAFLDにおいて生体試料中含量好ましくは血漿中含量が上昇し、EPA類の投薬治療によりその含量は低下する。 (B)グループは、脂肪肝を呈するマウスの肝臓で発現が低下し、EPA−E投与により発現が上昇する遺伝子をもとに抽出されたマーカーであるから、NAFLDにおいて生体試料中含量好ましくは血漿中含量が低下し、EPA類の投薬治療によりその含量は上昇する。 これらの因子は、NASHの前段階、すなわち、脂肪肝の状態(NAFLD)で発現が変動する因子であり、NASHの予備群の検出、診断、重篤度の評価に有用である。 本発明においてNAFLDとは、NASHも含む非アルコール性脂肪性肝疾患の意味で用いられるが、特にNASHには至っていないNASHの前段階としての脂肪肝を呈する病態との意味に用いられることがある。 また、これらの因子は、マウスモデルにおいてEPA−E投与により脂肪肝の抑制とともに発現が変動した因子でもあることから、EPA類の投薬治療によるNASH治療効果を評価する指標としても有用である。また、これらの因子は、NASH及び/又はNAFLDの被験者の中から、EPA類の投薬による治療が適する被験者を選択するための指標、EPA類の投薬対象となる被験者を選択するための指標、あるいは、個々の被験者において、NASH治療方法の中からEPA類の投薬による治療を選択するための指標とすることができる。 (A)グループとして選抜される因子としては、IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、IL−3レセプター, alpha chain、lymphocyte antigen 6 complex、 locus D、COL1a1、TNFRスーパーファミリー、メンバー19(TAJ)、TNFAIP6、VLDLRおよびEarAファミリー、 メンバー1,2,3,12が挙げられる。 (B)グループとして選抜される因子としては、INSL5、TGFβ2、HAMP、リパーゼHおよびCYP7B1が挙げられる。 これら因子を以下に説明する。IL−2:interleukin(インターロイキン)2 IL−2はサイトカインのひとつであり、細胞性免疫に関与する。 IL−2は、T細胞の増殖及び活性化、B細胞の増殖と抗体産生能の亢進、単球・マクロファージの活性化、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の増殖・活性化、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK細胞)の誘導などの活性をもつ。 また、IL−2は制御性T細胞(Regulatory T Cell、Treg)の維持に必要であると考えられている。 10日間高フルクトース食を負荷して脂肪肝を誘発させたラットで、血中のIL−2レベルが上昇したことが報告されている(Clin Biochem. 2005 Jun;38(6):540-7)。アポリポタンパクA-IV:ApolipoproteinA-IV アポリポタンパクA-IVは、カイロミクロンと高密度リポタンパクの構成要素である。ストレプトゾトシン誘発のI型糖尿病モデルのマウス、及び、II型糖尿病モデルのob/obマウスにおいて、コントロールと比較して、肝臓のアポリポタンパクA-IVのmRNAレベルと、血清タンパクレベルの上昇が報告されている(J Lipid Res. 2006 Nov;47(11):2503-14)。アポリポタンパクC-II:ApolipoproteinC-II アポリポタンパクC-IIは、カイロミクロン、VLDL中のトリグリセリドを加水分解する酵素であるリポタンパクリパーゼの活性発現に不可欠のアポタンパクである。 アポリポタンパクC-IIは、高脂血症のIIb、III、IV、V型において上昇が認められる(日本臨床 Vol.62, Suppl.12 2004)。CCL2:chemokine (C-C motif) ligand 2 CCL2は、サイトカイン遺伝子の1つであり、免疫調節と炎症に関わる。 NAFLDにおける全身性炎症の役割を明らかにするために、22例の単純脂肪肝と25例のNASHの血清サンプルのCRP、TNFα、IL−6、CCL2/MCP−1、CCL19、CCL21などを測定したところ、健常者と比較して、NAFLD患者では、IL−6、CCL2/MCP−1、CCL19が増加していた。そして、NASH患者では、単純脂肪肝の患者と比較して、TNFα、CCL2/MCP−1が上昇したことが報告されている(Haukeland et al. J Hepatol. 2006 Jun;44(6):1167-74)。トロンボスポンジン1(Thrombospondin 1):TSP1 この遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞どうし、ならびに細胞−基質間の相互作用を仲介する接着糖タンパク質であり、血小板凝集、血管新生、腫瘍形成などにおいて働くことが知られている。 86例の非糖尿病の被験者の皮下脂肪と、14例の手術を受けた患者及び、メトホルミン又はピオグリタゾンを10週間服用している38例の耐糖能異常の被験者の内臓脂肪と皮下脂肪のTSPmRNAが測定され、TSP1mRNAは肥満(BMI)、脂肪細胞の炎症、インスリン抵抗性に関連するとの報告がある(Varma et al. Diabetes. 2008 Feb;57(2):432-9、Epub 2007 Dec 5.)。 これまで、NASH、NAFLD患者の血中トロンボスポンジン1が測定された例はなかったが、今回、NAFLD患者の血漿でトロンボスポンジン1(タンパク)が上昇することが確認され、血中で測定可能なマーカーであることが示された。IL−3レセプター(Interleukin-3 receptor)alpha chain IL−3レセプターは、IL−3に高親和性のレセプターであり、造血前駆細胞、骨髄前駆細胞、好酸球、好塩基球に見られる。 IL−3レセプターは、IL−3レセプターアルファサブユニットとサイトカインレセプター共通ベータサブユニットの2量体により形成される。lymphocyte antigen 6 comlex、 locus D ケラチノサイトに発現することが知られている。MMP12,13:atrix metallopeptidase 12,atrix metallopeptidase 13 MMPは細胞外基質を分解する酵素である。MMP12は主にマクロファージから分泌され、各種炎症性疾患と関連があると考えられている。MMP13は骨格組織における細胞外基質の分解に関与する。マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤をNASH、NAFLDに用いる提案がなされている(特許文献1参照)。トレハラーゼ(trehalase)(brush-border membrane glycoprotein) この遺伝子は、ジサッカライドのトレハロースを加水分解する酵素トレハラーゼをコードする。 トレハラーゼは、ジサッカライドのトレハロースを加水分解してグルコースを産生する酵素である。自然界に広く存在し、ヒト血漿中と同様に様々なヒト組織にも見られる。基質であるトレハロースの合成と分解は、炭水化物輸送メカニズムに関連すると考えられている。TIMP1:tissue inhibitor of metalloproteinase 1 コリン欠乏、L−アミノ酸欠乏(CDAA)食8週間投与により誘導されたラットNASHモデルでは、肝線維化が見られたが、その後、アンギオテンシンIIタイプ1レセプターアンタゴニストのテルミサルタンを10週間投与することにより、TIMP1、2のmRNA発現が低下し、肝線維化が抑制されたことが報告されている(Biochem Biophys Res Commun. 2007 Dec 28;364(4):801-7)。COL1a1:procollagen type I、alpha 1 糖尿病モデルラットにメチオニン・コリン欠乏食を与えた脂肪性肝炎モデルにおいて、アンギオテンシンIIタイプ1レセプターブロッカーのオルメサルタンは、肝線維化、星細胞の活性、線維化遺伝子(TGF−β、alpha1[I]procollagenなど)の発現を抑制したことが報告されている(Eur J Pharmacol. 2008 Jul 7;588(2-3):316-24)。補体D因子:complement factor D(adipsin) 補体D因子は、脂肪細胞から血中に分泌される、補体活性化の開始に必須のセリンプロテアーゼである。血清補体D因子濃度は、腎臓における異化を介して制御されていて、腎臓疾患をもつ患者では、補体D因子レベルの上昇がみられる。 肝細胞特異的Pten欠損マウスは、脂肪性肝炎、肝臓の癌形成が起こり、肝臓細胞におけるRT−PCT解析から、脂肪細胞特異的遺伝子(adipsin,adiponectinなど)の発現が誘導されたことが報告されている(Watanabe et al.,Hepatology October 2004 428A 609)。 今回、我々は、初めて、NAFLD患者の血漿において補体D因子が上昇することを確認した。補体D因子は、血中で測定可能なマーカーとなりうることが示された。TNFR(tumor necrosis factor receptor)スーパーファミリー、メンバー19(TAJ) 腫瘍壊死因子レセプター(Tumor necrosis factor receptor)スーパーファミリーのメンバーは、タイプI型の膜タンパクであり、細胞外ドメインにおいて相同性が高い。TNFAIP(Tumor necrosis factor alpha induced protein)6 TNFAIP6タンパクは、277アミノ酸からなる切断シグナルペプチドである。 その発現は、線維芽細胞、末梢血単核細胞、滑膜細胞、軟骨細胞において、TNFα、IL−1、リポポリサッカライドにより活性化される。VLDLR:Very low density lipoprotein receptor VLDLRは、5つのドメインからなり、27残基のシグナルペプチドをもつ、846アミノ酸のタンパク質である。VLDLRの遺伝子は、心臓、筋肉、脂肪組織で発現していて、脂肪酸代謝で活性化される。リポタンパクリパーゼ(Lipoprotein lipase) リポタンパクリパーゼは、主に、カイロミクロン、VLDLに含まれるトリグリセリドをグリセリールと脂肪酸に加水分解する酵素である。Ear(Eosinophil associated ribonuclease)Aファミリー、メンバー1,2,3,12 リボヌクレアーゼ(RNAse)ファミリーのメンバーである。INSL5:Insulin like 5 INSL5は、インスリン遺伝子のスーパーファミリーのホルモンであり、135アミノ酸のタンパク質と推定されていて、細胞の成長、代謝、組織特異的機能を調節する。このファミリーメンバーは、シグナルペプチドにより特徴づけられる。TGFβ2:Transforming growth factor beta 2 Transforming growth factor beta(TGF−β)は、多くの細胞において、増殖、細胞の分化、その他の機能をコントロールする。免疫、癌、心疾患、糖尿病などにおいて役割を果たす。TGF−βは正常の上皮細胞や腫瘍形成の早期のステージにおいて、抗増殖因子として働く。いくつかの細胞は、TGF−βを分泌し、TGF−βに対するレセプターを持っている。TGF−βは、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3という3つのアイソフォームが存在する分泌タンパクである。HAMP:Hepcidin antimicrobial peptide 1 HAMPは、肝臓に発現する、抗バクテリア、抗真菌性のタンパクであり、鉄代謝におけるシグナル分子でもある。HAMPは血中を循環し、体内における鉄の供給が過剰になったときに、小腸での鉄吸収を阻害する。リパーゼH:Lipase member H(LIPH) リパーゼHは、トリグリセリドのリパーゼファミリーのメンバーであり、451アミノ酸からなるタンパク質である。リパーゼHタンパクは、約63kDaの分子量をもつ分泌タンパクである。他のメンバーと同様に、リパーゼHは脂質とエネルギー代謝に関連することが示唆されている。CYP7B1:Cytochrome P450 family 7 subfamily b polypeptide 1 コレステロールからの胆汁酸の合成は、cholesterol 7-alpha-hydroxylase(CYP7A1)が関与する中性の経路と、ミクロソームオキシステロール7-alpha-hydroxylase (CYP7B1)が関与する酸性の経路の、2つの経路を介して起こる。 CYP7B1ノックアウトマウスでは、血清と組織において、2つのオキシステロール、25-hydroxycholesterol と27-hydroxycholesterolレベルが上昇したことが知られている。 第2因子群のうち、NASHの検出・診断、重篤度・治療効果の評価のために好ましく用いられるマーカーとしては、測定の簡便性の点から、IL−2、アポリポタンパクA-IV、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、アポリポタンパクC-II、リポタンパクリパーゼ、HAMP、リパーゼHが挙げられる。これらのマーカーは、特にEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分とする医薬組成物によるNASH治療効果の評価に有用である。これらの中でも、アポリポタンパクA-IV、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、補体D因子、アポリポタンパクC-II、リパーゼHが特に好ましく、とりわけ好ましくは、トロンボスポンジン1、補体D因子である。生体試料 本発明における生体試料とは、被験者から採取された、血液、血漿、血清、尿、体液、組織などをいうが、特に限定されない。好ましくは、血液、血漿、血清である。被験者からの生体試料の採取は、公知の方法に従って行う。マーカーの測定方法 本発明のマーカーとなる因子がタンパク質である場合の「量」の測定は、特に限定されないが、例えば、血液試料中におけるマーカーの絶対量や濃度を測定することができる。 本発明においては、対応する抗体が認識する抗原をマーカーとすることができる。本発明のマーカーは、対応する抗体が認識して測定できる抗原である限り、対象となるマーカーのアミノ酸配列の部分配列、つまりマーカータンパク質の一部であってもよく、その立体構造の変化、糖鎖もしくは脂質等の付加されたものであってもよい。 具体的な測定方法は、特に限定されないが、免疫学的測定法を用いることが好ましい。競合法、非競合法(サンドイッチ法)のいずれを用いてもよく、例えば、酵素免疫分析(ELISA)、EIA法、放射免疫分析(RIA)、蛍光免疫分析(FIA)、発光免疫分析(LIA)などが用いられる。凝集法、ウエスタンブロッティング法、プロテインチップを用いた方法などを用いてもよい。その他、プロテオミクス手法等により測定されてもよいが、これらに限定されない。また、市販の測定キットを使用して測定してもよい。 本発明のマーカーとしてタンパク質を用いる場合は、「活性」を測定することにより評価されてもよい。本発明のマーカーの「活性」の測定方法は、特に限定されないが、例えば、マーカーとするタンパク質と、該タンパク質の基質とを一定時間反応させて、生成された物質又は二次的に生成された物質を定量することによりタンパク質の活性をみる方法が挙げられる。マーカーの測定に用いられる抗体 タンパク質の検出に用いられる抗体は、該タンパク質に特異的結合性を有する限り、その種類や由来などは特に限定されない。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を使用できるが、好ましくはモノクローナル抗体である。抗体の作製 抗体の作製方法は、特に限定されないが、目的とするタンパク質またはその部分配列ペプチドで動物を免疫して、モノクローナル抗体、又はポリクローナル抗体を作製することができる。モノクローナル抗体を作製する場合、例えば、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と細胞融合させることで自律増殖能を持ったハイブリドーマを作成し、目的の特異性をもった抗体を産生しているクローンのみをスクリーニングする。この細胞を培養し、分泌する抗体を精製することによって得られる。ポリクローナル抗体を作製する場合は、動物の血清として回収し、精製して得ることができる。その他、ファージディスプレイ法などが用いられてもよい。マーカー遺伝子の測定方法 本発明のマーカーが遺伝子である場合、遺伝子はcDNA等のDNA、及びmRNA等のRNAであってもよい。遺伝子発現量の測定方法は、特に限定されないが、マイクロアレイ、リアルタイムPCR、サザンブロット法、ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーション法、ドットプロット法などが挙げられる。この場合の生体試料は組織、特に肝組織が好ましい。2.NASHの検出、重篤度・治療効果の評価のための方法 本発明において、NASHの検出・診断、重篤度・治療効果の評価を単に「評価」と称することがある。本発明のNASHの評価のための方法は、医師がNASHの診断を、あるいは重篤度・治療効果の評価を行う場合に、医師の判断のための指標を提供するための方法である。 本発明のNASHの検出、重篤度・治療効果の評価のための方法は、少なくとも上記第1因子をマーカーとして用いる。<NASH検出方法> 本発明の被験者におけるNASHの検出方法は、A)被験者の生体試料における、1以上の第1因子の量及び/又は活性を測定する工程を含む方法である。この方法は、1以上の第2因子の量及び/又は活性を測定する工程をさらに含んでもよい。B)目的とするマーカーについて、事前に疾患の陽性と陰性の境界値であるカットオフ値を決定し、上記A)の被験者の測定値とカットオフ値とを比較する工程をさらに含むことが望ましい。この場合、被験者の測定値がカットオフ値と比較して陽性のときに被験者におけるNASHの存在が示唆される。 本発明において、カットオフ値の決定方法は、特に限定されないが、例えば、健常者の平均値±2SD(標準偏差)、あるいは健常者の平均値±1SD、健常者の平均値±3SD、健常者の平均値をカットオフ値として用いてもよい。好ましくは健常者の平均値±2SDである。 本発明の実施例1に記載の第1因子を用いる一例を示すと、カットオフ値の決定方法として平均値+2SDを用いるとすると、IL−1raの場合、カットオフ値は652(pg/mL)となり、このとき、感度は100%、特異度は100%となる。同様に、カットオフ値の決定方法として平均値+2SDを用いると、sCD40のカットオフ値は17.2(pg/mL)、感度は100%、特異度は90%である。HMGB1のカットオフ値は3.4(ng/mL)、感度は86%、特異度は100%と計算できる。 また、例えば、Roc曲線を用いてカットオフ値を決定してもよい。Roc曲線を用いる方法の一例を示すと、健常者とNASH患者の生体試料における目的とするマーカーを測定して、各測定値における感度(陽性率)、特異度、偽陽性率(1−特異度)を求めて、X軸に偽陽性率(1−特異度)、Y軸に感度(陽性率)をプロットしてRoc曲線を作成する。このとき、感度と特異度の優れた理想的なマーカーのRoc曲線は、左上隅に近づくため、左上隅との距離が最小となる点をカットオフ値とすることができる。また、Youden indexを用いた方法によりカットオフ値を決定してもよい。 カットオフ値を用いてNASHを検出する場合、NASHの定義やマーカーの測定方法によって、カットオフ値が変わってくる。従って、目的とするマーカーについて、健常者、NASH患者の測定値を事前に確認して、カットオフ値を決めて、それに従って検出することが好ましい。本発明の実施例に従って、被験者の血漿を用いてマーカーの測定を行う場合には、本発明の実施例で得られた数値を参考にNASHを検出することができる。<NASH重篤度の評価のための方法> 本発明の被験者におけるNASH重篤度の評価のための方法は、被験者におけるNASHの重篤度を評価するために用いられる方法であり、少なくとも、A)被験者の生体試料における、1以上の第1因子の量及び/又は活性を測定する工程を含む方法である。この方法は、1以上の第2因子の量及び/又は活性を測定する工程をさらに含んでもよい。 前記のNASH検出方法と同様に、事前にカットオフ値を決定し、A)の測定値と、カットオフ値とを比較する工程を含んでもよい。また、被験者の生体試料におけるマーカー(因子)の測定値の経時的変化を比較する工程を含んでもよい。 この方法において、被験者のマーカー測定値が健常者の平均値に近づくほど、NASHが重篤ではないことが示唆される。逆に、被験者のマーカー測定値が健常者の平均値から遠くなるに従い、NASHが重篤である、あるいは、病態の悪化が示唆される。<治療効果の評価のための方法> 本発明の被験者におけるNASH治療効果の評価のための方法は、NASHである被験者に治療を行った場合の治療効果の評価に用いられる方法であり、少なくとも、被験者の生体試料における、第1因子群および第2因子群からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして、一定期間以上の間を空けて少なくとも2回測定し、測定値を比較する工程を含む。 この方法は、少なくとも第1因子群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして用いることが望ましい。マーカーの測定が一定期間以上の間を空けて複数回行われ、マーカー測定値の経時的変化を比較する工程を含む態様も望ましい。前記と同様に、被験者のマーカー測定値をカットオフ値と比較する工程を含んでもよい。 本発明におけるNASH治療とは、NASH治療薬の投薬、運動療法、食事療法、その他NASH治療を目的として行われる瀉血、外科的治療等の治療方法を含む。本発明においてNASH治療が行われる期間をNASH治療期という。 この治療効果の評価のための方法において、被験者のマーカー測定値が健常者の平均値に近づくように変動すれば、NASH治療効果が得られていることが示唆される。逆に、被験者のマーカー測定値が健常者の平均値から遠くなるように変動すれば、治療効果が得られていないことが示唆される。 本発明の治療効果の評価のための方法は、NASH治療が一定期間以上行われ、前記マーカーの測定がNASH治療期に一定期間以上の間を空けて行われることが望ましい。本発明において一定期間とは特に限定されないが、好ましくは1週間、より好ましくは1ヶ月、3ヶ月、6カ月、1年であり、1年以上の期間であってもよい。例えば、3ヶ月毎に定期的に被験者の生体試料におけるマーカー(因子)が測定される態様も望ましい。 NASH治療のためにNASH治療薬が投薬され、該NASH治療薬の治療効果の評価を行う場合、NASH治療薬は後述のNASH治療方法において述べるとおりであり、特に限定されないが、好ましくはEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物である。 NASH治療薬としてEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物を用いる場合、NASH治療効果の評価のための方法は、第2因子のマーカーが用いられることが望ましい。 すなわち、この発明の態様は、a)被験者の生体試料における第2因子群から選択される1以上の測定値の第1の決定を得る工程b)EPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物を投薬する工程c)被験者の生体試料におけるa)で測定値を得た因子の測定値の第2の決定を得る工程d)被験者の第1の決定と第2の決定を比較して、被験者の状態を評価する工程を含む、被験者における、EPA類の少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物によるNASH治療効果の評価のための方法である。<マーカーを複数組み合わせた評価> 本発明に係るマーカーは、単独で用いられてもよいが、複数のマーカーを組み合わせて用いて、NASHの検出、評価の精度を高めることも可能である。このマーカーは、通常、少なくとも第1の因子を含む。 例えば、NASHの検出において本発明の2種のマーカーを用いる場合、2種のマーカーがどちらも陽性であるときに被験者におけるNASHの存在を示唆してもよい。いずれか一方のみが陽性の場合には、例えば、本発明の他のマーカーを測定したり、その他の診断方法と組み合わせてNASHの存在を示唆してもよい。 本発明のマーカーの組み合わせの好ましい態様は、特に限定されないが、NASHの検出、重篤度・治療効果の評価のために用いられるマーカーとして、IL−1レセプターアンタゴニストが含まれていることが望ましく、また、アポトーシスに関連するといわれるsCD40とネクローシスに関連するといわれるHMGB1とを組み合わせることも好ましい。sCD40とHMGB1はASTと相関する傾向が得られたことから、重篤度・治療効果の評価のために用いられる態様も好ましい。 本発明のマーカーは、従来、NASH診断や評価に用いられている検査、血液検査マーカーや、画像による検査(超音波、CT、MRIなど)、治療効果の指標などと組み合わせて使用されてもよい。本発明においてこれらを併せて、その他の検査指標という。 診断手法と組み合わせて使用されてもよい。複数の診断方法を組み合わせることにより、検出、評価の精度を高めることも可能である。 従来、NASHの検出や評価に用いられる指標としては、例えば、血清脂質データ(TG、LDL、HDL、TC、VLDL、EPA濃度、EPA/アラキドン酸(AA)比など)、遊離脂肪酸、肥満、AST、ALT、AST/ALT比、血清フェリチン、血清チオレドキシン、malondialdehyde、4-hydroxynonenal、 nitric oxide、HOMA−IR、血小板数、TNFα、アディポネクチン、レプチン、高感度CRP、ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S、プロコラーゲンIIIポリペプチド、CK18フラグメント、病理所見(脂肪肝:steatosis、肝細胞風船様腫大:hepatocellular ballooning、実質炎症:lobular inflammation、小葉内の炎症:ballooning inflammation、肝細胞膨化:ballooning degeneration、肝線維化:fibrosis、マロリー体形成:Mallory body)、NASスコア(Kleinerらの文献:Hepatology2005;41:1313−1321),Fas(Gastroenterology.2003;125(2)437−43),HbA1c,空腹時血糖、体重、腹囲などが挙げられるが、これらに限定されない。 例えば、本発明のマーカーであるsCD40、HMGB1及び補体D因子とその他の検査指標であるNASスコア及びALTとを組み合わせて評価することも望ましい。また、例えば、本発明のマーカーであるHMGB1とその他の検査指標であるFasを組み合わせて評価されることも望ましい。 NASHの治療効果の指標として、血中や肝臓の脂肪酸含量や脂肪酸組成比も好ましく用いられる。脂肪酸は、例えば、脂肪酸24分画の公知の手法により測定でき、全脂肪酸中のモル%で算出することができる。脂肪酸組成比とは、例えば、オレイン酸(OA)/ステアリン酸(SA)比、ステアリン酸(SA)/パルミチン酸(PA)比、オレイン酸(OA)/パルミチン酸(PA)比などが使用できるが、特にこれらに限定されない(WO2009/151125参照)。3.治療方法 本発明では、上記NASHの検出及び/又は重篤度の評価のための方法で評価された被験者に対して、NASH治療を行う、NASH治療方法を提供する。本発明においてNASH治療は、好ましくは、NASH治療薬、さらに好ましくはEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物の投薬である。さらに、本発明のマーカーを用いてNASH治療薬の治療効果の評価を行いながら、NASH治療を行う方法を含む。<NASH治療薬> 本発明の治療方法において用いられるNASH治療薬は、NASHの病態を治療、軽減、緩和するために使用される薬物であれば特に限定されないが、次に述べるEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物の他、例えば、チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン、ロシグリタゾンなど)、ビグアナイド薬(メトホルミンなど)、αグルコシダーゼ阻害剤、スルホニルウレア剤、ナテグリニド、DPP−4阻害剤(シタグリプチン、アログリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチンなど)、GLP−1受容体作動薬(リラグルチド、エキセナチド、タスポグルタイドなど)、PDE−4阻害剤、フィブラート系薬剤(ベザフィブラートなど)、HMG−CoA還元酵素阻害剤(プラバスタチン、アトルバスタチンなど)、プロブコール、アンギオテンシンII-1型受容体拮抗薬(ARB:ロサルタンなど)、ウルソデオキシコール酸、タウリン、ポリエンホスファチジルコリン、抗酸化剤(ビタミンE、ビタミンC、ニコチン酸トコフェロール、N−アセチルシステインなど)、抗TNF治療(抗TNFα抗体など)、ペントキシフィリン、S−アデノシルメチオニン、Milk Thistle,プロバイオティクスなどが挙げられる。NASH治療薬は、治療上有効量が投薬される。これらの薬物は、EPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物と併用して投薬されることも可能であり、併用により優れた治療効果が発揮される。糖尿病をもつNASH患者は、特に、EPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物と抗糖尿病薬(例えば、ピオグリタゾン、スルホニルウレア剤、DPP−4阻害剤など)が併用されることが望ましい。被験者が服用している薬剤(例えば、血圧低下剤、高脂血症剤、抗血栓剤など)は継続されることが望ましい。例えば、抗血栓薬のワーファリンやクロピドグレルがEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物と併用投与されてもよい。<EPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物> 本発明に用いられるEPA類は、市販品の他、魚油やEPA産生菌およびその培養液を公知の方法、例えば連続式蒸留法、尿素付加法、液体クロマトグラフィー法、超臨界流体クロマトグラフィー法等あるいはこれらの組み合わせで精製して得ることができ、必要によりエステル化処理してエチルエステル等のアルキルエステルやグリセリド等のエステルとすることができる。また、ナトリウム塩、カリウム塩等の無機塩基またはベンジルアミン塩、ジエチルアミン塩等の有機塩基あるいはアルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸との塩とすることができる。 本発明においてEPA類は、特に断らない限りは、EPAの遊離体のほか上記のような塩およびエステルも含む。ヒトあるいは動物に投与する場合は、製薬学上許容しうるものが好ましい。これらのうちでも、EPAはEPA−Eのエステル形態での使用が好ましい。 本発明に用いられるEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物は、EPA類の純品を使用できることはもちろん、EPA類とともに他の脂肪酸を有効成分として含有してもよい。これらの脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサモノエン酸、アラキドン酸、イコサテトラエン酸、イコサトリエン酸、イコサモノエン酸オクタデカテトラエン酸、α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸、ヘキサデカトラエン酸、ヘキサデカトリエン酸およびヘキサデカジエン酸等の不飽和脂肪酸あるいはベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸およびミリスチン酸等の飽和脂肪酸等が例示される。また、上述の例の脂肪酸は遊離体のほか、それらのナトリウム塩等の無機塩基との塩またはベンジルアミン塩等の有機塩基との塩、さらにはそれらのエチルエステル等のアルキルエステルまたはグリセリド等のエステル体であってもよい。 本発明のEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物において、有効成分としてEPA類以外の脂肪酸を含む場合には、EPA類を全脂肪酸中、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、とりわけ好ましくは96.5質量%以上の量で含有することが望ましい。アラキドン酸含量は少ないことが望まれる。 また、例えば、EPA−E及びDHA−Eを用いる場合、EPA−E/DHA−Eの組成比及び全脂肪酸中のEPA−E+DHA−Eの含量比は特に問わないが、好ましい組成比として、EPA−E/DHA−Eは、0.8以上であることが好ましく、更に好ましくは、1.0以上、より好ましくは、1.2以上である。EPA−E+DHA−Eは高純度のもの、例えば、全脂肪酸及びその誘導体中のEPA−E+DHA−E含量比が40質量%以上のものが好ましく、55質量%以上のものがさらに好ましく、84質量%以上のものがさらに好ましく、96.5質量%以上のものが更に好ましい。他の長鎖飽和脂肪酸含量は少ないことが好ましく、長鎖不飽和脂肪酸でもω6系、特にアラキドン酸含量は少ないことが望まれ、2質量%未満が好ましく、1質量%未満がさらに好ましい。 本発明のEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物は、例えば賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、香味剤、滅菌水、植物油、無害性有機溶媒、無害性溶解補助剤(例えばグリセリン、プロピレングリコール)、乳化剤、懸濁化剤(例えばツイーン80、アラビアゴム溶液)、等張化剤、pH調整剤、安定化剤、無痛化剤などを必要に応じて使用することができる。 特にEPA類は高度に不飽和であるため、上記の製剤は、抗酸化剤をEPA類の酸化を抑制する有効量で含有させることが望ましい。抗酸化剤としては、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、プロピルガレート、没食子酸、医薬として許容されうるキノンおよびα−トコフェロールを使用することができる。 製剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、経口用液体製剤、坐剤、シロップ剤、吸入剤、点眼剤、軟膏、注射剤(乳濁性、懸濁性、非水性)、あるいは用時乳濁または懸濁して用いる固形注射剤の形態などが挙げられる。 なおEPA−E含有軟カプセル剤であれば、副作用の発現が少なく、安全な閉塞性動脈硬化症および高脂血症治療薬としてエパデールおよびエパデールS(いずれも持田製薬社製)の商品名で国内で市販されている高純度EPA−E含有軟カプセル剤の市販品を使用することができる。また、EPA−EとDHA−Eの混合物は、たとえば、米国で高TG血症治療薬として市販されているロバザ(Lovaza:グラクソ・スミス・クライン:EPA−E約46.5質量%、DHA−E約37.5質量%含有する軟カプセル剤)を使用することもできる。 本発明のEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物の投与量は、対象となる作用を現すのに十分な量とされるが、その剤形、投与方法、1日当たりの投与回数、症状の程度、体重、年齢等によって適宜増減することができる。 経口投与する場合には、EPAとして0.1〜9g/日、好ましくは0.5〜6g/日、さらに好ましくは1〜3g/日を3回に分けて投与するが、必要に応じて全量を1回あるいは数回に分けて投与してもよい。また、例えば、EPA−E及び/又はDHA−Eとして0.1〜10g/日、好ましくは0.3〜6g/日、より好ましくは0.6〜4g/日、さらに好ましくは0.9〜2.7g/日、あるいは0.9〜1.8g/日で投与されてもよい。<本発明の治療効果の評価のための方法を含むNASH治療方法> 本発明のNASH治療方法は、前記の治療効果を評価するための方法をNASH治療方法の中にとり入れることも望ましい。すなわち、本発明の別の態様として、被験者の生体試料における、第1因子群および第2因子群からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして、一定期間以上の間を空けて少なくとも2回測定し、測定値を比較してNASH治療効果を評価することを含むNASH治療方法を提供する。この治療方法は、治療効果の評価に基づいて被験者の治療方法が決定される工程をさらに含んでもよい。例えば、NASH治療薬による治療効果が得られていない、あるいは十分でないと評価された被験者に対して、同治療薬の用量を増加する、他の治療方法・治療薬を追加する、又は他の治療方法・治療薬に切り替える等を行ってもよい。また、NASH治療薬による治療効果が得られていると評価された被験者に対しては、そのまま投薬を継続することが望ましい。 本発明のNASH治療方法において、特に好ましい治療薬はEPA類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物であり、この場合、治療効果の評価には第2因子のマーカーが用いられることが好ましい。<本発明のマーカーによる治療方法の選択を含むNASH治療方法> 本発明のNASH治療方法は、被験者の生体試料の、本発明のマーカーである第1因子群および第2因子群からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして測定し、測定値の評価からEPA類によるNASH治療方法を選択し、該被験者にEPA類を含有する医薬組成物を投薬するNASHを治療する方法である。特に第2因子群の因子は、EPA−Eの効果との関連が確認できたことから、第2因子群の異常の度合いが大きい被験者はEPA類による治療効果を得やすいことが示唆される。 EPA類による治療を選択するのに用いられるマーカーとして望ましいのは、第2因子群からなる群より選ばれるマーカーであり、さらに望ましくは、トロンボスポンジン1、補体D因子である。また、sCD40、HMGB1もEPA類による治療を選択するのに用いられるマーカーとして望ましい。その他の検査指標も併せて用いられてもよい。 例えば、被験者の、第2因子群の因子である補体D因子が測定され、事前に定めた基準値と比較して高い被験者はEPA類を含有する医薬組成物による治療が行われることが望ましい。また、例えば、被験者の、補体D因子、sCD40及びHMGB1が測定され、事前に定めた基準値と比較して高い被験者はEPA類を含有する医薬組成物による治療が行われることが望ましい。ここでの基準値の決定方法は、特に限定されないが、医療従事者が、健常者、NAFLD患者及びNASH患者における因子の平均値をもとに決定することができる。さらに、その他の検査指標(例えば、NASスコア、ALT値、EPA/AA比など)と組み合わせて治療方法が決定されてもよい。 この方法は、いいかえると、本発明のマーカーによりNASH及び/又はNAFLDの被験者の中からEPA類の投薬による治療が適する被験者を選択し、該被験者にEPA類を含有する医薬組成物を投薬するNASHを治療する方法である。4.キット 本発明において、NASHの検出、重篤度・治療効果の評価のための方法に用いられる、被験者の生体試料中の第1因子および第2因子からなる群から選択される1つ以上、好ましくは第1因子群から選択される1つ以上の量及び/又は活性を測定するキットを提供する。 本発明のマーカーとしてこれらのタンパク質を用いる場合の測定キットは、該マーカーを測定する手段を備えていればよく、特に限定されないが、好ましくは、該マーカーに対する抗体を含むことが望ましい。該タンパク質に対する抗体は、抗体フラグメントであってもよく、標識された抗体を含むことが望ましい。サンドイッチ法による測定キットが望ましい。 本発明のマーカーのタンパク質の活性を指標として測定する場合の測定キットは、該タンパク質に特異的な基質を含む。本発明のマーカーとして、sPLA2活性を測定する場合、sPLA2活性測定用基質は、特に限定されないが、PLA2がリン脂質をsn−2の位置で加水分解する酵素であるため、基質にはリン脂質を含むことが好ましい。例えば、Diheptanoyl Thio‐phosphatydylcholineなどが挙げられるが、これに限定されない。 本発明の測定キットは、該タンパク質の標準品や発色試薬を含むことも望ましい。 次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。(実施例1)ヒトNASH患者の確認試験 肝生検によりNASHと診断されたヒトNASH患者の血漿(7検体)、健常者の血漿(10検体)の、IL−1ra、sCD40、HMGB1、sPLA2groupIIAの抗原量としての各濃度、及び、sPLA2活性を測定し、比較した。 測定には市販の測定キット、IL−1ra(カタログ番号:DRA00B/R&D Systems Inc.:US)、sCD40(KT−003/KAMIYA BIOMEDICAL COMPANY:Seattle WA)、HMGB1(326054329/Shino-Test Corporation:Japan)、sPLA2groupIIA(585000/Cayman Chemical Company:US)、sPLA2活性(765001/Cayman Chemical Company:US)を用いて行った。 すなわち、IL−1raは、(1)抗IL−1raモノクローナル抗体が固定化されたマイクロプレートに検体を加えて反応させ、その後、(2)標識したポリクローナル抗体を加えて反応させて測定した。上記と同様に、sCD40は(1)抗sCD40モノクローナル抗体、(2)標識したポリクローナル抗体を、HMGB1は(1)抗HMGB1ポリクローナル抗体、(2)標識した抗HMGB1、2モノクローナル抗体を用いて測定した。sPLA2groupIIAは(1)に抗sPLA2groupIIAモノクローナル抗体を用い、sPLA2分子の異なるエピトープに選択的に結合するアセチルコリンエステラーゼ:Fab'複合体を加えて、検体を加えて反応させて測定した。sPLA2活性は、基質としてDiheptanoyl Thio‐phosphatydylcholineが用いられ、検体と反応させて遊離したthiolsをDTNBにより検出した。 測定結果を表1に示す。測定結果は、平均値(mean)±標準偏差(SD)で示す。有意差の検定には、Wilcoxon検定を用いた。Wilcoxon検定(健常者vs NASH患者)は、+(p<0.05)、++(p<0.01)で示す。 NASH患者の血漿中のIL−1ra、sCD40、HMGB1、sPLA2groupIIAの各濃度は、健常者と比較して有意に上昇していた。一方、NASH患者の血漿におけるsPLA2活性は、健常者と比較して有意に低下した。今回、NASH患者の血漿において、sPLA2groupIIA濃度は上昇し、sPLA2活性は低下がみられた理由は明らかではないが、sPLA2活性は、sPLA2groupIIAだけではなく、sPLA2全体の活性を測定したためにこのような結果が得られたのかもしれない。また、あるいは、NASH患者では、sPLA2groupIIA抗体により測定されるが、活性をもたないsPLA2groupIIAが増加した可能性も考えられる。 また、NASH患者における各患者の上記各因子の値とAST値との相関を、図1(IL−1ra)、図2(sCD40)、図3(HMGB1)、図4(sPLA2groupIIA)、図5(sPLA2活性)に示す。いずれの因子においても、AST値と相関する傾向が見られたが、特に、HMGB1、sCD40でよりその傾向が高かった。 以上より、上記各因子は、NASHを検出、重篤度を評価するマーカー、及び/又は、薬剤によるNASH治療効果を判定するマーカーとして使用できることが示唆された。(実施例2)第2マーカー候補の抽出 B6マウス(10週齢)を、コントロール群(I)、HF−HS群(II)、EPA群(III)に分け(n=7−10)、以下の飼料の自由摂食により20週飼育した。I群:通常食(魚粉抜きF1)(フナバシファーム社製)II群:高脂肪/高ショ糖食(Harlan Laboratories)+5%パルミチン酸エチル(和光純薬)III群:高脂肪/高ショ糖食(Harlan Laboratories)+5%EPA−E(日本水産) 20週間の飼育の後、II群では脂肪肝を認めたが、I群及びIII群では脂肪肝を認めなかった。 各群のマウスの肝臓を摘出し、ホモジネートよりRNAを抽出して、肝臓の遺伝子マイクロアレイ解析を行い、以下のとおり遺伝子選抜を行った。(1)II群/I群の発現比が2倍以上、かつ、III群/II群の発現比が1/2以下の遺伝子をピックアップする。(2)II群/I群の発現比が1/2以下、かつ、III群/II群の発現比が2倍以上の遺伝子をピックアップする。(3)I、II、III群のいずれにおいても、意味のある発現をしていない遺伝子をピックアップする。(4)(1)から(3)を除いた遺伝子をピックアップする。(5)(2)から(3)を除いた遺伝子をピックアップする。(6)第2マーカー(A)候補の抽出 上記(4)の遺伝子の中から、タンパクが血中に分泌される可能性のある因子をピックアップし、さらにこの中から、脂質代謝に関連する、炎症に関連する、SREBPトランスジェニックマウスの肝臓で発現が上昇する、のうちのいずれかを満たす遺伝子をピックアップした。得られた遺伝子群(第2因子(A)群)を表2に示す。(7)第2マーカー(B)候補の抽出 上記(5)の遺伝子について、(6)と同様の手順で遺伝子を選抜した。得られた遺伝子群(第2因子(B)群)を表3に示す。(実施例3)第2因子を用いるヒトNAFLD患者の確認試験 表2、3に記載の因子について、ヒトNAFLD患者、健常者の血漿中の各濃度を測定する。測定には、市販の測定キットを用いるか、対応する抗体を用いることにより測定可能である。対応する抗体が入手できない場合には、前記のとおり作製することができる。 (A)群(表2)中のThrombospondin (トロンボスポンジン)1とcomplement factor D(補体D因子)について、ヒトNAFLD患者(肝生検によりNASHと診断されたヒトNASH患者は除外した)の血漿(3検体)、及び、健常者の血漿(10検体)中の各濃度を測定した。 測定には市販の測定キット、Thrombospondin1(カタログ番号:DTSP10/R&DSystems Inc.:US)、complement factor D(DFD00/R&D Systems Inc.:US)を用いた。 トロンボスポンジン1は、(1)抗トロンボスポンジン1モノクローナル抗体を結合させたマイクロプレートに検体を加えて反応させ、その後、(2)標識した抗トロンボスポンジン1ポリクローナル抗体を加えて反応させて測定した。同様に、補体D因子は、(1)に抗補体D因子モノクローナル抗体、(2)に標識した抗補体D因子ポリクローナル抗体を用いて測定した。 測定結果を表4に示す。測定結果は、平均値(mean)±標準偏差(SD)で示す。有意差の検定には、Wilcoxon検定を用いた。Wilcoxon検定(健常者vs NAFLD患者)は、+(p<0.05)、++(p<0.01)で示す。 NAFLD患者の血漿中のトロンボスポンジン1濃度、及び補体D因子濃度は、健常者と比較して有意に上昇していた。 表2中の因子は、脂肪肝を示すマウスの肝臓で遺伝子発現が上昇する因子であるが、ヒトNAFLD患者の血漿においても健常者と比較して、これらに対応するタンパク濃度が上昇する可能性が高く、血中で測定可能なNAFLDのマーカーとなる可能性が示された。(試験例1) NASH検出のための方法、治療効果の評価のための方法、及び治療方法 NASHである可能性のある被験者30例の血漿を採取し、IL−1ra、sCD40、HMGB1を測定し、それぞれの因子について予め定めたカットオフ値と比較する。カットオフ値は試験前に医療従事者により適宜設定されうる。今回のカットオフ値は、IL−1raは652(pg/mL)、sCD40は17.2(pg/mL)、HMGB1は3.4(ng/mL)と定める。 被験者の肝生検を行い、組織学的所見の重症度からNASスコア(NAFLD activity score)を決定する。NASスコアは、steatosis:脂肪変性(0−3),lobular inflammation:小葉の炎症(0−3),balooning:バルーニング(0−2)の、0〜8の幅でスコア化する。NASスコアが5以上であればNASHである可能性が高い。(Kleinerらの文献:Hepatology2005;41:1313−1321)。 肝臓の線維化の重症度もスコア化する。これらの組織学的所見からNASHと診断する。 組織学的所見からNASHと診断された被験者は、IL−1ra、sCD40、HMGB1の値がカットオフ値を超えており、IL−1ra、sCD40、HMGB1の測定により簡易にNASHを検出できる。 IL−1ra、sCD40、HMGB1は、次のその他の検査指標のいくつかと組み合わせて評価されたとき、さらに精度が高まる。その他の検査指標としては、腹部超音波検査、CT検査、血清脂質データ(TG,HDL,LDL,TC,VLDLなど)、遊離脂肪酸、血清24分画、血中脂肪酸比(OA/SA比、EPA/AA比など),空腹時血糖、食後血糖、HbA1c、AST,ALT,ALP,GGT,ビリルビン、アルブミン、フェリチン、チオレドキシン、HOMA−IR,血小板数、TNFα、sTNF−R1,sTNF−R2,CTGF,アディポネクチン、レプチン、高感度CRP、ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S,プロコラーゲンIIIポリペプチド、CK18フラグメント、Fasなどが用いられ得る。 本発明のマーカーが測定され、NASHの検出のための方法を経た被験者に対して、EPA類を有効成分として含有する医薬組成物として、高純度EPA−E含有製剤であるエパデールS(持田製薬(株)製)を2700mg/日、12ヶ月投薬する。 糖尿病をもつ被験者には抗糖尿病薬(チアゾリジン誘導体、ビグアナイド薬、αグルコシダーゼ阻害剤、スルホニルウレア剤、ナテグリニド、DPP−4阻害剤、GLP−1アナログなど)が併用投薬される。 投薬開始前、投薬後1ヵ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月に、本発明のマーカーであるIL−1ra、sCD40、HMGB1、トロンボスポンジン1、TIMP1,MMP12,13,補体D因子を測定する。併せて、その他の検査指標も測定する。 投薬終了時に、再び被験者の肝生検を実施して、NASスコア及び線維化レベルを評価する。 被験者のIL−1ra値は、投薬開始前はカットオフ値より高値を示すが、EPA−E製剤の投薬後1ヵ月、3ヶ月、6ヶ月の経過に伴い、NASスコアの低下に連動して低下する。sCD40、HMGB1、トロンボスポンジン1、TIMP1,MMP12,13,補体D因子も同様に、EPA−E製剤の投薬に伴い低下する。 本発明のマーカー値がNASH治療薬の投薬に伴い低下した(及び/又は健常者の値に近づく変動を示した)被験者はNASH治療効果が得られていると評価できる。トロンボスポンジン1、TIMP1,MMP12,13,補体D因子の変動は、特にEPA−E製剤による治療効果と高い相関が得られる。 上記のその他の検査指標も、投薬開始前と投薬後経時的に併せて測定して、治療効果の評価に用いることができる。 投薬開始前のNASスコアが6以上の被験者は、投薬開始前のNASスコアが4以下の被験者と比較して、EPA−E製剤の投薬により、NASスコアの低下がより大きい傾向(例えば、3低下する)を示し、EPA−E製剤により高い治療効果を得られる。 この傾向は、IL−1ra、sCD40、HMGB1、トロンボスポンジン1、TIMP1,MMP12,13,補体D因子のマーカーでも同様であり、被験者のマーカー値と事前に定めた基準値(例えば、NASH被験者の平均値)と比較して高い被験者は、マーカー値の低下が大きく、EPA−E製剤により高い治療効果を得られる。このように、これらのマーカーによりEPA−E製剤による治療が適する被験者を選択することができる。 すなわち、EPA−E製剤は、NASスコアが6以上の被験者のためのNASH治療薬としてより好ましい。また、EPA−E製剤は、IL−1ra、sCD40、HMGB1、トロンボスポンジン1、TIMP1,MMP12,13,補体D因子のマーカーの異常の程度の大きい被験者のためのNASH治療薬としてより好ましい。 被験者の生体試料における、sCD40、HMGB1、sPLA2groupIIAおよびsPLA2活性からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎の検出を補助するための方法。 A)被験者の生体試料における請求項1に記載の因子の量および/または活性値を測定する工程、および B)前記A)で測定した値を、疾患の陽性と陰性の境界値であるカットオフ値と比較する工程を含む請求項1に記載の方法。 下記の項目の少なくとも1つを満たした場合に、被験者が非アルコール性脂肪肝炎であるとされる、請求項1または2に記載の方法: 被験者のsCD40測定値が健常者の平均値+2標準偏差以上である; 被験者のHMGB1測定値が健常者の平均値+2標準偏差以上である; 被験者のsPLA2groupIIA測定値が健常者の平均値+2標準偏差以上である;または 被験者のsPLA2活性の測定値が健常者の平均値−2標準偏差以下である。 下記の項目の少なくとも1つを満たした場合に、被験者が非アルコール性脂肪肝炎であるとされる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法: 被験者のsCD40測定値が17.2pg/mL以上である; 被験者のHMGB1測定値が3.4ng/mL以上である; 被験者のsPLA2groupIIA測定値が7982pg/mL以上である;または 被験者のsPLA2活性の測定値が4.0nmol/min/mL以下である。 sCD40とHMGB1とを組み合わせて用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。 sPLA2groupIIAとsPLA2活性とを組み合わせて用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。 被験者の生体試料における、IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、IL−3レセプターのalpha chain、lymphocyte antigen 6 complexのlocus D、COL1a1、TNFRスーパーファミリーのメンバー19(TAJ)、TNFAIP6、VLDLR、EarAファミリーのメンバー1、2、3または12、INSL5、TGFβ2、HAMP、リパーゼHおよびCYP7B1からなる第2の因子群より選ばれる1以上をさらにマーカーとして測定する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。 被験者の生体試料が血液、血漿および血清からなる群より選ばれる1以上である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。 sCD40、HMGB1およびsPLA2groupIIAからなる群より選ばれる1以上に対する抗体又は抗体フラグメント、および/または、sPLA2活性測定用基質を含む、非アルコール性脂肪肝炎の検出測定キット。 sCD40に対する抗体又は抗体フラグメントとHMGB1対する抗体又は抗体フラグメントとを含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。 sPLA2groupIIAに対する抗体又は抗体フラグメントとsPLA2活性測定用基質とを含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。 IL−2、アポリポタンパクA-IV、アポリポタンパクC-II、CCL2、トロンボスポンジン1、トレハラーゼ、MMP12、MMP13、TIMP1、補体D因子、リポタンパクリパーゼ、IL−3レセプターのalpha chain、lymphocyte antigen 6 complexのlocus D、COL1a1、TNFRスーパーファミリーのメンバー19(TAJ)、TNFAIP6、VLDLR、EarAファミリーのメンバー1、2、3または12、INSL5、TGFβ2、HAMP、リパーゼHおよびCYP7B1からなる第2の因子群より選ばれる1以上に対する抗体又は抗体フラグメントをさらに含む、請求項9ないし11のいずれか1項に記載のキット。