タイトル: | 特許公報(B2)_乳酸菌増殖促進剤 |
出願番号: | 2011536186 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12N 1/20,A23C 9/133 |
杉山 政則 JP 5750785 特許公報(B2) 20150529 2011536186 20101015 乳酸菌増殖促進剤 国立大学法人広島大学 504136568 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 杉山 政則 JP 2009238208 20091015 20150722 C12N 1/20 20060101AFI20150702BHJP A23C 9/133 20060101ALI20150702BHJP JPC12N1/20 AA23C9/133 C12N 1/20 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2008−295352(JP,A) 特開2007−037503(JP,A) 特開2007−282523(JP,A) 国際公開第2004/052112(WO,A1) 特開平01−179646(JP,A) 特開平03−172171(JP,A) 特許第2835548(JP,B2) 特開2009−153419(JP,A) 特表2008−541774(JP,A) 特開平09−163977(JP,A) 特開平05−015366(JP,A) 9 NPMD NITE P-6 NPMD NITE P-7 JP2010068119 20101015 WO2011046194 20110421 13 20130725 田中 耕一郎 本発明は、乳酸菌増殖促進剤、及びこれを用いたはっ酵乳の製造方法に関する。 乳酸菌は、一般的に発酵により乳酸を生産する微生物の総称であり、食品の風味、組織、栄養価の改善又は保存性付与等に重要な役割を果たしている。 従来から、乳酸菌を用いた発酵食品としては、例えばヨーグルト、チーズに代表される哺乳動物の乳を原料としたはっ酵乳製品を始め、各種の漬物・らっきょうに代表される野菜等の植物を原料とした漬物類、さらには味噌、醤油類が知られている。 また、近年、生きた乳酸菌の摂取による腸内菌叢の改善効果又は整腸作用等の様々な乳酸菌の生理的効果が明らかとなり、当該乳酸菌の生理作用を利用した食品、健康食品、医薬品等が研究開発されてきている。 従って、乳酸発酵において、乳酸菌の増殖促進、菌体濃度の増加、発酵時間の短縮等が達成できれば、産業上の利用価値は極めて大きなものと云え、これまでに、乳酸菌増殖促進物質の探索が行われている。例えば、酒粕や酒粕抽出物又は酒粕の酵素分解物(特許文献1〜3参照)、大麦焼酎の蒸留残液(特許文献4参照)、ココアマス(特許文献5)、カルシウム塩(特許文献6)、バターミルク(特許文献7)、シチジン及びチミジン、麦芽汁発酵物(特許文献8)、バナナ抽出物(特許文献9)等に乳酸菌増殖促進作用があることが報告されている。 しかしながら、例えば酒粕には酒独特の臭いがあり、発酵食品の風味に悪影響を及ぼす可能性があるので、使用量を制限するか使用する発酵食品が限定される等の問題があった。 一方、パイナップルの果実は、加工食品や食品のフレーバーとして又は果実乳酸発酵物の発酵原料(特許文献10)として用いられているが、パイナップル属植物の果実に乳酸菌増殖促進作用があることは全く知られていない。特開平3−172171号公報特開平5−15366号公報特許第2835548号公報特開2000−342247号公報特開2006−223244号公報特許第2673333号公報特開2000−102380号公報特開平03−130071号公報特表2009−514519号公報特開2009−153419号公報 本発明は、食品の風味を害することがない乳酸菌増殖促進剤、これを用いたはっ酵乳の製造方法を提供することに関する。 本発明者は、食品に使用可能な植物性素材について探索を重ねた結果、全く意外にも、パイナップル属植物の果実又はその抽出物に、乳酸菌、特に植物乳酸菌に対して優れた増殖促進作用があり、乳酸菌増殖促進剤として有用であることを見出した。 すなわち、本発明は、パイナップル属植物の果実又はその抽出物を有効成分とする乳酸菌増殖促進剤を提供するものである。 また、本発明は、パイナップル属植物の果実又はその抽出物の存在下、乳酸菌を培養することを特徴とする乳酸菌増殖促進方法を提供するものである。 また、本発明は、パイナップル属植物の果実又はその抽出物の存在下、乳酸菌を用いて乳を発酵することを特徴とするはっ酵乳の製造方法を提供するものである。 また、本発明は、前記のはっ酵乳の製造方法にて得られた固形はっ酵乳を提供するものである。 本発明の乳酸菌増殖促進剤を用いれば、乳酸菌、特に植物乳酸菌の増殖を促進することができる。また、本発明によれば、風味のよいはっ酵乳、特に、通常、植物乳酸菌を用いた発酵で製造が困難な固形タイプのはっ酵乳を短時間で効率よく製造することができる。各果汁又は各果汁・酒粕混合物による乳酸菌増殖促進効果を示す。36時間の乳酸発酵後の各はっ酵乳の固化状態を示す。 パイナップル果汁1又はパイナップル果汁1・酒粕(1%)をスターター培地、ラクトバチルス プランタルムSN13T株を種菌としてスターターを調製し、各スターターをそれぞれ、パイナップル果汁1(最終濃度5及び10%(w/v))を含む乳培地〔No.1及び2、No.6及び7〕、パイナップルピューレ状(最終濃度5及び10%(w/v))を含む乳培地〔No.3及び4、No.8及び9〕、又は無添加の乳培地〔No.5及び10〕に接種したもの。 本発明において、「パイナップル属植物」とは、パイナップル科(Bromeliaceae)アナナス(Ananas)属植物又はその類縁植物(例えば、パイナップル科ブロメリア(Bromelica)属植物のブロメリア・ピングイン(Bromelia pinguin、英名pinguin))を意味する。これらのうち、パイナップル(学名:Ananas comosus 英:pineapple)が好ましい。 当該パイナップルとしては、カイエン系、レッドスパニッッシュ系、ブランコ系及びクイーン系等の系統に分類される食用品種のパイナップルが好ましい。 本発明において、パイナップル属植物の果実は、これに摩砕、細断、搾汁、乾燥等の物理的処理を施した果実処理物として用いるのが好ましい。果実処理物としては、具体的には、果汁、ペースト状、果肉スライス、残渣等が挙げられ、乳酸菌増殖促進作用の点から、果汁及びペースト状が好ましい。 ここで、「果汁」とは、果実、好ましくは果肉を搾汁して得られる液汁(100%果汁)、濃縮果汁、濃縮還元果汁、及びこれらを希釈したものを云う。 また、「ペースト状」とは、果実、好ましくは果肉を破砕や摩砕したもの(ピューレ状)、及び更にピューレ状のものを裏ごししたもの(ピューレ)を云う。 また、「残渣」とは、果汁、ペースト状又は果肉スライス等の製造過程の廃棄部分(副産物)に上記物理的処理を施したものを云い、廃棄部分には果実表皮や果肉等が含まれる。 当該果実処理物は、適宜希釈、pH調整、殺菌処理、濃縮、濾過、乾燥又は粉末化したものを用いることができる。 例えば、果実処理物に、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤を添加して、pH4〜8、好ましくはpH5〜6に調整したもの、また、殺菌処理(60〜120℃で30秒〜20分間、90〜105℃で1〜10分間等)を施したものを用いることができる。 また、本発明の乳酸菌増殖促進剤においては、パイナップル属植物の果実を用いる他、乳酸菌増殖促進作用を発揮し得る限りにおいて、当該果実(果実処理物を含む)の各種溶媒抽出物を用いることもできる。 抽出手段としては、特に限定されないが、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等が挙げられる。 抽出溶媒としては、極性溶剤又は非極性溶剤の何れでもよいが、例えば、水;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類(好ましくは炭素数1〜4のアルコール類);プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;酢酸エチル等のエステル類;n−ヘキサン等の炭化水素類;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;超臨界二酸化炭素等が挙げられ、これらを単独又は2種以上混合して使用することができる。 抽出条件は特に限定されるものではなく、例えば、4〜120℃、好ましくは80〜105℃、で、1分〜数日間行うことができ、このとき、pH5〜6で行ってもよい。 パイナップル属植物の果実の抽出物は、不純物や夾雑物等を除去するため、適宜活性炭処理、液体クロマトグラフィー、液液分液、ゲルろ過、蒸留等の分離精製技術を用いてもよい。 パイナップル属植物の果実又はその抽出物を乳酸菌増殖促進剤として適用可能な乳酸菌は、特に限定されず、例えば、ラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ロイコノストック属細菌、ペディオコッカス属細菌、バチルス属細菌、ラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス属細菌、テロラジェノコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム属細菌等が挙げられる。 このうち、穀物、野菜、果物、花、薬用植物等の植物源から分離された植物乳酸菌は、一般的に、畜肉・乳等の動物源から分離された動物乳酸菌に比べて増殖能が低いため、固形タイプのヨーグルトを製造することが困難である。従って、本発明の乳酸菌増殖促進剤は、植物乳酸菌に対して、より有効的に適用できる。 ここで、植物乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillusplantarum)、ラクトバチルス ヒルガルディ(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス カルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)等のラクトバチルス属細菌;ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)等のロイコノストック属細菌;エンテロコッカス ムンディティ、エンテロコッカス アビウム等のエンテロコッカス属細菌;テトラジェノコッカス ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)等のテトラジェノコッカス属細菌;ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)等のペディオコッカス属細菌;バチルス コアギュランス(Bacillus coagulans)等のバチルス属細菌等を挙げることができる。 上記植物乳酸菌としては、より具体的には、ラクトバチルス プランタルムSN13T株(NITE P−7)、ラクトバチルス プランタルムSN26T株(NITE P−8)、ラクトバチルス プランタルムSN35N株(NITE P−6)、ラクトバチルス プランタルムSN35M株(NITE P−5)、ラクトコッカス ラクティス サブスペシース ラクティス SN26N株(NITE P−9)、エンテロコッカス スペシースSN21I株(NITE P−11)、エンテロコッカス ムンヅティSN29N株(NITE P−10)及びエンテロコッカスアビウム(NITE BP−142)、ラクトバチルス プランタルムJCM 1149株、ラクトバチルス プランタルムJCM 8348株、ラクトバチルス プランタルムIFO3070株(JCM 1057株)、ラクトバチルス ヒルガルディNBRC15886、ペディオコッカス・ペントサセウスLP28株等が挙げられる。 このうち、ラクトバチルス プランタルムが好ましく、特にラクトバチルス プランタルムSN13T株(NITE P−7)及びラクトバチルス プランタルムSN35N株(NITE P−6)が好ましい。 後記実施例に示すように、パイナップル属植物の果実又はその抽出物の存在下、乳酸菌を増殖させることによって乳酸発酵が速やかに進行する。従って、パイナップル属植物の果実又はその抽出物は、乳酸菌増殖促進剤として、乳酸発酵を行う際に用いることにより、乳酸菌増殖促進効果を発揮し、各種発酵物を短時間で効率よく製造することが可能となる。 発酵は、パイナップル属植物の果実又はその抽出物の存在下、公知の方法に従って、発酵原料に乳酸菌を接種して行えばよい。例えば、乳等の発酵原料(好ましくは、原料を含む培地1L中、乳(乾燥物換算)0.1〜20%(w/v)含有)に、パイナップル属植物の果実又はその抽出物を、培地1L中、乾燥物換算で、好ましくは0.1〜20%(w/v)、より好ましくは0.1〜10%(w/v)、更に好ましくは0.5〜2(w/v)%になるように添加し、これに乳酸菌を接種して、25〜45℃で10〜80時間培養することにより行うことができる。以下に、はっ酵乳を製造する場合を例に挙げて、説明する。 例えば、ヨーグルト発酵を行う場合、無脂乳固形分の濃度を8.0%(w/v)以上に調整した乳を主原料とする水溶液を、65〜130℃の温度で1秒〜30分の時間、加熱殺菌を行ない、次いで30〜45℃の温度まで冷却して、乳を含む液体培地(以下、「乳培地」とも云う)を調製する。この乳培地に、培地1L中、本発明のパイナップル属植物の果実又はその抽出物を乾燥物換算で0.1〜5%(w/v)になるように添加し、パイナップル属植物の果実又はその抽出物を含む乳培地を調製する。続いて、この培地に、スターターとして調製され、高濃度となっている乳酸菌を、0.1〜6%(w/v)接種する。接種後、30〜45℃の温度で3〜72時間、乳酸菌量が1000万個/mL以上になるまで発酵を行ない、発酵終了後、10℃以下まで冷却したものをヨーグルトとする。 また、例えば、はっ酵乳飲料の場合、乳(水溶液中、1%(w/v)以上含有)又はこれにその他の原料を調合した水溶液を、65〜130℃の温度で1秒〜30分の時間、加熱殺菌を行い、次いで30〜45℃まで冷却する。続いて、これに乳酸菌をスターターとして0.1〜6%(w/v)接種する。接種後、本発明のパイナップル属植物の果実又はその抽出物の存在下、30〜45℃の温度で12〜72時間、発酵を行い、発酵終了後、冷却したものをはっ酵乳飲料とする。はっ酵乳飲料は、そのまま飲料としてもよく、さらに希釈又は殺菌を行ってもよい。このとき、乳等の原料を調合した水溶液1L中、本発明のパイナップル属植物の果実又はその抽出物の含有量は、乾燥物換算で、0.1〜2%(w/v)であるのが好ましい。 上記はっ酵乳の製造に際しては、発酵原料として乳以外に、ゼラチン、寒天、糖類、香料、果肉、窒素源、pH調整剤、他の乳酸菌増殖促進成分等の通常はっ酵乳の製造に使用されている原料を使用することもできる。例えば、蔗糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース等の糖類;ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴等の糖アルコール類;アスパルテーム、アセスルファムカリウム等の高甘味度甘味料;蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム等の増粘剤;クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の酸味料;レモン果汁、オレンジ果汁、キュウイ果汁、ナシ果汁等の果汁類;ビタミン類;カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類;甘草、桂枝、生姜等の生薬;あるいは香草、グルタミン酸ナトリウム、クチナシ色素、シリコーン、リン酸塩等の食品添加物等を使用することが可能である。 発酵原料である、乳としては、動物乳、例えば牛乳、ヤギ乳、めん羊乳等が挙げられ、特に牛乳が好ましい。斯かる乳は、未殺菌乳及び殺菌乳の何れであってもよく、また、これらの乳から調製した濃縮乳もしくは練乳、これらの脱脂乳、部分脱脂乳又これらを乾燥して粉末にした粉乳等であってもよい。 本発明のはっ酵乳の製造において、スターターとして用いる乳酸菌の培養は、特に限定されるものではなく、培地、培養条件等は公知の方法を採用して行えばよいが、上述した本発明のパイナップル属植物の果実又はその抽出物をそのまま、又はこれにpH調整や殺菌処理等をしたもの、更にはこれらに酒粕を添加したものを培地として用いるのが好ましい。 スターター培地1L中のパイナップル属植物の果実又はその抽出物の含有量は、特に限定されないが、乾燥物換算で、0.1〜20%(w/v)、より10〜20%(w/v)であるのが好ましく、これに酒粕を併用する場合には、パイナップル属植物の果実又はその抽出物:酒粕の質量比が、乾燥物換算で、1:0.01〜0.1、より1:0.05〜0.09であるのが好ましい。斯かる条件で培養した乳酸菌をスターターとして用いることにより、発酵促進効果をより向上させることができる。 ここで、「酒粕」として、市販品や酒粕の凍結乾燥品や噴霧乾燥品を用いればよいが、「もろみ」から清酒を搾り取った後の残りかす、すなわち、酵母を大量に培養した酒母に蒸米と麹を加えて、約3週間アルコール発酵を行って、発酵産物である「熟成もろみ」とし、これより清酒を搾った残りかすを用いてもよい。また、酒粕の代わりに米焼酎の粕もしくは米焼酎粕を凍結乾燥や噴霧乾燥処理したものでもよい。 斯くして得られる本発明の乳酸菌増殖促進剤を用いて製造された発酵物(はっ酵乳)は、後記実施例に示すように乳酸発酵が速やかに進行し、すなわち、通常、増殖能がきわめて低く、固形タイプのはっ酵乳を製造することは難しいとされている植物乳酸菌を用いた場合でも、速やかに固形状(固形はっ酵乳)となる。しかも当該はっ酵乳には優れた風味やパイナップル特有の香気が付与され、さらに食感、外観やはっ酵乳の色合いにも優れる。 本発明のはっ酵乳の製造方法によれば、適宜乳酸菌増殖能を調整することができ、プレーンタイプ、ソフトタイプ、ドリンクタイプ、固形(ハード)タイプ、フローズンタイプ等、いずれの形態のはっ酵乳も製造することが可能である。 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。実施例1:各果汁を用いた発酵乳固化試験 <使用する菌> ラクトバチルス プランタルムの一種L. plantarum SN13T株又はL. plantarum SN35N株を用いた。 これらは、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)へ、ラクトバチルスプランタルムSN13T株(NITE P−7)及びラクトバチルス プランタルムSN35N株(NITE P−6)として寄託されているものである(寄託日:平成16(2004)年7月6日)。 <果汁の調製> パイナップル果汁として、沖縄産パイナップル果実由来の果汁(果汁100%:株式会社パイナップルワイナリー製)〔以下、「パイナップル果汁1」と云う〕、又はコスタリカ産パイナップル果実由来の果汁(果汁100%)〔以下、「パイナップル果汁2」と云う〕を用いた。これらは、パイナップル科パイナップル属植物のパイナップルの果実を搾汁した液汁である。何れの果汁も果汁由来の混濁が認められたが、コスタリカ産パイナップル果汁の方が沖縄産パイナップル果汁より、濁っていた。 このとき、パイナップル果汁1又は2(50mL)を凍結乾燥すると、平均8gであった。 パイナップル果汁1又は2にクエン酸Naを添加してpHを5〜6に調整したものを、100〜104℃で5〜10分加熱殺菌して殺菌済パイナップル果汁1又は2(全量中のパイナップル果実の含有量は、乾燥物換算で16%(w/v))とした。 また、オレンジ、キウイ又はナシの果肉についてもパイナップルの果実に準じて、殺菌済オレンジ果汁、殺菌済キウイ果汁、又は殺菌済ナシ果汁を調製した。 <スターターの調製> 無菌下で、スターター培地5mLに、乳酸菌を植菌し、37℃で24時間種培養を行い、スターターを調製した。スターター培地として、上記殺菌済パイナップル果汁1をそのまま用いた。 <乳培地の調製> 脱脂粉乳(PM)13%(w/v)水溶液(pHをクエン酸ナトリウム溶液で5.0〜5.5に調整したもの)を121℃、15分間高圧滅菌し、殺菌済乳培地を調製した。〔はっ酵乳固化試験〕 上記<スターターの調製>に従って、スターター(ラクトバチルス プランタルムSN13T株)を調製した。 上記<果汁の調製>に記載の殺菌済パイナップル果汁1又は2を用い、無菌下で、パイナップル果汁の最終濃度が、培地1L中、0%又は1.0%(w/v)(全量中、パイナップル果実が、乾燥物換算で、0.16%(w/v))になるように乳培地に添加し、パイナップル果汁無添加の乳培地又は1.0%(w/v)パイナップル果汁乳培地を本培養培地として調製した。 調製した各本培養培地1mLを各1.5mL容ポリエチレン製マイクロチューブに入れた。更に、上述の調製したスターター(種菌)が1.0%(w/v)となるように、各マイクロチューブに入れ、マイクロチューブを密閉後、37℃、40時間振とう培養し、はっ酵乳を製造した。 また、殺菌済パイナップル果汁を上記の殺菌済オレンジ果汁、殺菌済キウイ果汁、又は殺菌済ナシ果汁に代えた以外は、上記と同様にして、振とう培養を行い、はっ酵乳を製造した。 各はっ酵乳の固化状況を確認した。 パイナップル果汁1を用いると、はっ酵乳は70%程度固化し、また、パイナップル果汁2を用いると、培養40時間経過後にははっ酵乳が完全固化した。これに対し、キュウイ果汁やナシ果汁を用いるとはっ酵乳は50%程度の固化、オレンジ果汁でははっ酵乳は20%程度の固化にとどまっていた。すなわち、パイナップル果汁を用いれば、乳酸菌の増殖を促進すると共にはっ酵乳を固化させることができることが確認された。 実施例2:パイナップル果汁又は酒粕を用いたはっ酵乳固化試験 <酒粕及び酒粕乳培地の調製> 酒粕として、市販品の酒粕を噴霧乾燥したものを用いた。 酒粕噴霧乾燥品(以下「酒粕SD」とも云う)を最終濃度1.5%(w/v)になるように、上記の乳培地に添加し、酒粕1.5%(w/v)含有の本培養培地を調製した。〔はっ酵乳固化試験〕 スターター培地として上記<果汁の調製>に記載の殺菌済パイナップル果汁1を用い、乳酸菌として上記ラクトバチルス プランタルムSN13T株又はラクトバチルス プランタルムSN35N株を用いて、上記<スターターの調製>に従って、2種のスターターをそれぞれ調製した。 乳培地に上記殺菌済パイナップル果汁2を添加した本培養培地、又は酒粕SDを添加した本培養培地を用い、実施例1の〔はっ酵乳固化試験〕に従って、上記各スターターを種菌として用いて37℃、48時間振とう培養を行い、はっ酵乳を製造し、この固化状態を確認した。 また、コントロールとして、乳培地に何も添加しないものを本培養培地として同様にはっ酵乳を製造した。 表2に示すように、パイナップル果汁を用いると、何れのラクトバチルス プランタルム菌株でも乳酸菌の増殖能が促進され、はっ酵乳が固化された。 従来、植物乳酸菌は、動物乳酸菌に比べて増殖能が低く、植物乳酸菌で固形タイプはっ酵乳を得ることは非常に困難で、ドリンクタイプのはっ酵乳が主流であった。この結果から、植物乳酸菌のように増殖能が低いものであっても、パイナップル果汁を用いれば非常に乳酸菌の増殖能が高まると共に、はっ酵乳が固化できることが確認された。 また、ポジティブコントロールとして、酒粕を乳培地中0.15%(w/v)で用いたが、酒独特の臭いがあり、はっ酵乳の匂いや風味が損なわれていたのに対し、パイナップル果汁を用いた場合には、はっ酵乳に優れた風味やパイナップル特有の香気が付与されるので、商品的価値の高いはっ酵乳を製造することができた。 実施例3:スターター培地としてパイナップル果汁又はパイナップル果汁・酒粕混合物を用いた乳酸菌増殖促進効果試験 <パイナップル果汁・酒粕混合物の調製> 上記酒粕SDを最終濃度1.0%(w/v)になるように、上記殺菌済パイナップル果汁1に添加し、パイナップル果汁1・酒粕混合物を調製した。このとき、パイナップル果汁:酒粕の質量比は、乾燥物換算で16:1であった。〔乳酸菌増殖促進効果試験〕 スターター培地として、上記実施例1に記載の殺菌済パイナップル果汁1又は上記パイナップル果汁1・酒粕混合物をそのままの状態で使用した。 上記実施例1の<スターターの調製>に従って、上記各スターター培地に上記ラクトバチルス プランタルムSN13T株を接種した後、菌を培養し、このときの菌数を測定した。 ラクトバチルス プランタルムSN13T株を、パイナップル果汁1で培養すると、培地1mL当たり150億の乳酸菌数となったことから、パイナップル果実そのものに乳酸菌増殖促進効果があることが確認された。複数回の実験により、培地1mL当たり、20億以上は恒常的に増えることを確認している。また、パイナップル果汁に酒粕を添加したパイナップル果汁1・酒粕混合物で培養すると、チャンピオンデータとしては培地1mL当たり700億の乳酸菌数となったことから、更に酒粕を併用することによって乳酸菌増殖促進効果がより高まることも見出した。すなわち、何れもスターター培地として良好であるが、特にパイナップル果汁・酒粕混合物が好ましいと考えられた。実施例4:スターター培地として各果汁、各果汁・酒粕混合物を用いた乳酸菌増殖促進効果試験<果汁、果汁・酒粕混合物の調製> パイナップル果汁として、濃縮果汁(野村乳業製)を100%果汁に希釈した濃縮還元果汁を用いた。濃縮還元果汁に、炭酸水素ナトリウムを添加してpHを5.7に調整したものを、100℃で8分加熱殺菌して殺菌済パイナップル果汁3とした。 上記酒粕SDを最終濃度1.0%(w/v)になるように、上記殺菌済パイナップル果汁3に添加し、パイナップル果汁3・酒粕混合物を調製した。このとき、パイナップル果汁:酒粕の質量比は、乾燥物換算で16:1であった。 また、人参果汁、リンゴ果汁及びバナナ果汁についてもパイナップル果汁3に準じて、濃縮果汁からそれぞれ殺菌済果汁と、各果汁・酒粕混合物を調製した。〔乳酸菌増殖促進効果試験(1)〕 スターター培地として、上記それぞれの殺菌済果汁又は各果汁・酒粕混合物をそのままの状態で使用した。 上記実施例1の<スターターの調製>に従って、各スターター培地に、あらかじめMRS培地にて培養したラクトバチルス プランタルムSN13T株(L.p.13T)の培養液(これを前前培養液と呼ぶ)を各スターター培地100mLに対して1mL接種した(最終濃度で1(V/v)%)後、37℃で24時間菌を培養した。各スターター培地から1mLを採取し、0.85%Naclで・10倍から1010倍までの希釈系列を作製して希釈後、BCPアガー培地(日水製薬株式会社)に1mL接種して嫌気的条件下で培養後、菌数を測定した。結果を図1に示す。 図1より、パイナップル果実にラクトバチルス プランタルムの増殖促進効果があることが確認された。これに対し、人参果汁、リンゴ果汁及びバナナ果汁では、ラクトバチルス プランタルムに対する増殖促進効果が弱かった。〔乳酸菌増殖促進効果試験(2)〕 スターター培地として、上記殺菌済パイナップル果汁3又はパイナップル果汁3・酒粕混合物をそのままの状態で使用した。各スターター培地にペディオコッカス・ペントサセウスLP28株を接種した以外は、上記乳酸菌増殖促進効果試験(1)と同様にして菌を培養後、菌数を測定した。なお、ペディオコッカス・ペントサセウスLP28株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)へ、NITE P−700として寄託されているものである(寄託日:平成21(2009)年1月27日)。 その結果、ペディオコッカス・ペントサセウスLP28株を、パイナップル果汁3で培養すると、培地1mL当たり22億の乳酸菌数となったことから、パイナップル果実そのものにペディオコッカス・ペントサセウスの増殖促進効果があることが確認された。また、パイナップル果汁に酒粕を添加したパイナップル果汁3・酒粕混合物で培養すると、培地1mL当たり24億の乳酸菌数となったことから、更に酒粕を併用することによって乳酸菌増殖促進効果がより高まることも見出した。実施例5:パイナップル果汁、パイナップルピューレ状又はパイナップル果汁・酒粕含有乳培地を用いた乳酸菌増殖促進効果試験 <ピューレ状の調製> パイナップル果実をミキサーで摩砕したもの(ピューレ状)を得た。このとき、ピューレ状50mLを乾燥すると、8mgであった。 パイナップルピューレ状にクエン酸Naを添加してpHを5〜6に調整したパイナップルピューレ状を、100〜104℃で5〜10分加熱殺菌して殺菌済パイナップルピューレ状(全量中のパイナップル果実の含有量は、乾燥物換算で16%(w/v))とした。〔はっ酵乳固化試験〕 上記実施例3記載の2種のスターター(パイナップル果汁1又はパイナップル果汁1・酒粕混合物をスターター培地として使用)を用いた。 上記実施例1に記載の殺菌済パイナップル果汁1、上記実施例3に記載のパイナップル果汁1・酒粕混合物、上記殺菌済パイナップルピューレ状を、それぞれ乳培地に添加して、本培養培地とした。このとき、各本培養培地の調製法は、実施例1の方法に準じて行い、各本培養培地中のパイナップル果汁の含有量は、培地1L中、0%、5%(w/v)(全量中のパイナップル果実の含有量は、乾燥物換算で0.8%(w/v))、10%(w/v)(全量中のパイナップル果実の含有量は、乾燥物換算で1.6%(w/v))とした。 上記実施例1のはっ酵乳の製造法に従って、上記各スターターを各本培養培地に接種後36時間培養し、はっ酵乳を製造し、この固化状態を確認した。なお、コントロールとして、乳培地のみの本培養培地を用いた。 パイナップル果汁をスターター培地として調製したスターターを、パイナップル果汁1を10%(w/v)で含有する本培養培地に接種し、16時間培養するとはっ酵乳の固化率が100%となった。なお、36時間培養後のはっ酵乳の固化状態を図2に示す。 一方、パイナップル果汁1に酒粕を1%(w/v)添加した混合物をスターター培地とした場合、16時間培養するとはっ酵乳の固化率が100%となった。このとき、本培養培地中の酒粕の含有量は0.01%(w/v)と微量になるので、はっ酵乳の固化は本培養培地に含まれるパイナップル果実によるものと考える。また、このスターターで製造されたはっ酵乳に酒独特の臭いはなく、しかもパイナップル特有の香りや風味が付与されていた。 更に、ピューレ状を5%(w/v)になるように乳培地に添加した場合、16培養すると、はっ酵乳の固化率が100%となったのに対し、パイナップル果汁1を5%(w/v)になるように乳培地に添加した場合、24時間〜36時間で、はっ酵乳の固化率が100%となった(図2参照)。このことから、果汁よりも、食物繊維質を多く含むようなピューレ状の方が、乳酸菌の増殖性を高めると共に、はっ酵乳の固化も良好になると考えた。 また、植物乳酸菌は増殖が遅く、しかも発酵乳を固化することが困難であったが、パイナップルの果汁又はピューレ状を用いれば、植物乳酸菌による乳酸発酵を促進させて16〜24時間で発酵乳を固化させることができたので、発酵時間も短縮することも可能となると考えた。 このようにパイナップル果実には乳酸菌、特に植物乳酸菌の増殖促進作用があるため、パイナップル果実を乳培地に添加し、乳酸発酵をすることによって風味や香りが良好な固形タイプのはっ酵乳を製造することが可能となった。 更に、スターター調製の際、パイナップル果実に酒粕を0.5〜1.5%程度添加したスターター培地を用いた方が、乳酸菌の増殖促進効果がより高くなると共に、これを用いても酒独特の臭いがなく、パイナップルの風味や香りのある固形タイプのはっ酵乳を製造することも可能となった。 パイナップル属植物の果実又はその抽出物を有効成分とする乳発酵用の植物乳酸菌増殖促進剤であって、植物乳酸菌がラクトバチルス プランタルムSN13T株(NITE P−7)又はラクトバチルス プランタルムSN35N株(NITE P−6)である植物乳酸菌増殖促進剤。 パイナップル属植物の果実が、果実処理物である請求項1記載の植物乳酸菌増殖促進剤。 パイナップル属植物の果実又はその抽出物の存在下、ラクトバチルス プランタルムSN13T株(NITE P−7)又はラクトバチルス プランタルムSN35N株(NITE P−6)を用いて乳を発酵することを特徴とするはっ酵乳の製造方法。 パイナップル属植物の果実若しくはその抽出物、又はパイナップル属植物の果実若しくはその抽出物と酒粕の存在下で培養したラクトバチルス プランタルムをスターターとして用いる請求項3記載のはっ酵乳の製造方法。 スターター中のラクトバチルス プランタルムの菌数が培地1mL当たり20億以上である請求項4記載のはっ酵乳の製造方法。 はっ酵乳がドリンクタイプのはっ酵乳である請求項3〜5のいずれか1項記載のはっ酵乳の製造方法。 はっ酵乳が固形タイプのはっ酵乳である請求項3〜5のいずれか1項記載のはっ酵乳の製造方法。 請求項3〜5のいずれか1項記載のはっ酵乳の製造方法にて得られた固形はっ酵乳。 固化率100%の固形はっ酵乳である請求項8記載の固形はっ酵乳。