生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_真皮幹細胞の単離方法
出願番号:2011531953
年次:2015
IPC分類:C12N 5/077,C12N 5/0775,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

相馬 勤 山西 治代 JP 5800712 特許公報(B2) 20150904 2011531953 20100915 真皮幹細胞の単離方法 株式会社 資生堂 000001959 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 渡辺 陽一 100117019 中島 勝 100141977 北谷 賢次 100166028 相馬 勤 山西 治代 JP 2009213291 20090915 20151028 C12N 5/077 20100101AFI20151008BHJP C12N 5/0775 20100101ALI20151008BHJP C12N 15/09 20060101ALI20151008BHJP JPC12N5/00 202GC12N5/00 202HC12N15/00 A C12N 5/077 C12N 15/09 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) PubMed CiNii WPIDS(STN) 国際公開第2004/101775(WO,A1) 相馬勤他,真皮における間葉系幹細胞の局在と特性に関する解析,再生医療,(2010, 2月), vol.9, p.239 「O-37-3」 山西治代他,真皮間葉系幹細胞の特性及び局在イメージングに関する検討,日皮会誌,2010年 3月10日,第120巻 第3号 臨時増刊号,p. 655, P2-2 3 JP2010065981 20100915 WO2011034106 20110324 15 20130903 太田 雄三 本発明は、皮膚組織から真皮幹細胞を単離する方法に関する。 幹細胞は、複数の細胞に分化した細胞を産生する多分化能と、細胞分裂によりその細胞と同じ細胞を産生する自己複製能という2つの性質を併せ持つ細胞である。受精卵の初期の発生段階である胚に由来する幹細胞は胚性幹細胞(ES細胞)と称される。ヒトES細胞は再生医療に使用することが期待されているものの、受精卵を利用するという倫理上の問題から新たなヒトES細胞の作成は認められていない。 近年、ES細胞類似の性質を持つ細胞として、人工多能性幹細胞(iPS細胞)にも注目が集まっている。しかしながら、iPS細胞の作成には細胞の癌化、作成効率等の観点で多くの問題がある。一方、特定の組織に分化する能力を有する体性幹細胞は、患者自身の身体の組織、例えば骨髄から得られるため、胚性幹細胞のような倫理上の問題はない。 皮膚では表皮基底層に表皮幹細胞(非特許文献1)が存在することが良く知られており、また毛包のバルジ領域と呼ばれる領域には、毛包上皮幹細胞(非特許文献2)や皮膚色素幹細胞(非特許文献3)が存在することが報告されている。一方、真皮にはコラーゲンを主体とする繊維成分の中に、細長い紡錘形をした線維芽細胞が存在しているが、真皮の線維芽細胞に幹細胞が存在するかは明らかにされていない。また、真皮には脂肪、グリア、軟骨、筋肉など複数の細胞系列に分化する皮膚由来前駆細胞(skin-derived precursors:SKP)が存在すること(非特許文献4)は知られているものの、真皮線維芽細胞とSKPの関連は明らかではない。 線維芽細胞の前駆細胞として骨髄から分離された間葉系幹細胞(非特許文献5)は、間葉系に属するさまざまな細胞(骨細胞、筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)に分化することから、骨や血管、筋の再構築など再生医療への応用が期待されている。最近では、間葉系組織を持つ組織の多くに存在する可能性が明らかになってきており、脂肪や臍帯血、胎盤などからも間葉系幹細胞が単離されている(非特許文献6-8)。しかしながら、真皮における間葉系幹細胞の存在は依然として明らかにされていない。Watt FM, J Dermatol Sci. 28:173-180, 2002Cotsarelis G et al., Cell. 57:201-209, 1989Nishimura EK et al., Nature. 416:854-860, 2002Wong CE al., J Cell Biol. 175:1005-1015, 2006Pittenger MF et al., Science. 284:143-147, 1999Park KW et al., Cell Metab. 8:454-457, 2008Flynn A, et al., Cytotherapy. 9:717-726,2007Igura K et al., Cytotherapy. 6:543-553,2004 骨髄の間葉系幹細胞は非常にわずかであること、臍帯血や胎盤は対象が限定されることから、自己に由来する間葉系幹細胞のソースとしては限界がある。真皮から間葉系幹細胞が単離できれば、皮膚は再生医療や美容医療に使用する間葉系幹細胞の貴重な供給源になりうる。従って、本発明の課題は、真皮から間葉系幹細胞を単離する方法を提供することにある。 本発明者が、真皮に間葉系幹細胞に存在することを明らかにするとともに、効率よく間葉系幹細胞を単離する方法を確立することを目的に検討を行ったところ、幹細胞マーカーに対し陽性の細胞が真皮毛細血管及び血管周囲に存在することが実際に確認された。しかしながら、当該細胞の解離を目的として皮膚組織を酵素処理すると特定の幹細胞マーカーの発現が著しく減少してしまう。本発明者が酵素処理後の当該細胞を浮遊培養したところ、当該幹細胞マーカーの発現が回復するのみならず、接着培養したものと比較して高い分化能を維持していることが明らかとなり、本発明が完成するに至った。 従って、本願は下記の発明を包含する:(1)酵素処理することで皮膚から解離した細胞を浮遊培養し、そして当該培養細胞から幹細胞マーカー陽性細胞を単離することを特徴とする、真皮幹細胞を単離する方法。(2)前記幹細胞マーカー陽性細胞がCD34陽性細胞である、(1)に記載の方法。(3)前記CD34陽性細胞が更にNG2陽性である、(2)に記載の方法。(4)前記浮遊培養が、前記細胞の幹細胞マーカーの発現を回復させるのに十分な時間行われる、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。 理論に拘束されることを意図するものではないが、真皮幹細胞は、ペリサイト様の細胞集団として微小血管部位に存在し、皮膚の損傷時に活性化し、線維芽細胞、筋線維芽細胞に分化して皮膚の再生・修復に寄与していると考えられる。また、加齢や皮膚刺激により費消され、その結果皮膚の機能低下が生じるほか、皮膚再生能の低下、血管の不安定化をもたらし、皮膚老化が生じることも予想される。 本発明の方法によれば、真皮幹細胞を容易に単離することができる。本発明により得られる真皮幹細胞は、皮膚の恒常性・老化等のメカニズム解明への寄与や、当該幹細胞を用いた再生医療への応用が期待される。図1は、本発明の方法に従いヒト真皮から単離された細胞のうち、接着性の高い細胞を間葉系幹細胞培地で培養することで得られた線維芽細胞様の細胞の顕微鏡写真である。図2は、図1に示した線維芽細胞様の細胞が形成したコロニーを表す。図3は、図1に示した線維芽細胞様の細胞が脂肪細胞、骨細胞及び軟骨細胞に分化することを示す。図4は、幹細胞マーカーCD34及びNG2並びに核染色剤Hoechst33258を用いた真皮中の血管部位の組織染色図である。図5は、ヒト真皮からCD34細胞ソーティングすることで得られた細胞画分のコロニー形成能を比較した顕微鏡写真である。図6は、ヒト真皮由来のCD34陽性細胞が脂肪及び骨に分化する真皮間葉系幹細胞であることを示す顕微鏡写真である。図7は、本発明の方法に従い得られた真皮幹細胞における間葉系幹細胞マーカーNANOG、SDF-1α、HGFの遺伝子発現比を示すグラフである。ここで、当該発現比は、接着培養により得られた幹細胞の発現量と比較したものである。 本発明は、酵素処理することで皮膚から解離した細胞を浮遊培養し、そして当該培養細胞から幹細胞マーカー陽性細胞を単離することを特徴とする、真皮幹細胞を単離する方法を提供する。 ここで、上記皮膚由来の細胞は、限定しないが、骨髄から間葉系幹細胞を単離する方法に準じて解離させることができる。例えば、細切れにした皮膚組織を酵素処理することで、皮膚組織から真皮細胞が解離する。当該酵素処理は、トリプシン、コラゲナーゼ等の一般的なタンパク質分解酵素を用いて行うことができる。使用する皮膚組織は、哺乳動物、好ましくはヒト由来のものであるが、これらに限定されない。 かかる酵素処理を受けた細胞では、特定の幹細胞マーカーの発現が低下する。ここで、本明細書で使用する用語「幹細胞マーカー」とは、真皮幹細胞を単離するのに有効な幹細胞マーカーのうち、特に組織から解離させる際の酵素処理によってその発現が低下するもの、例えば細胞表面抗原CD34を指す。造血系幹細胞マーカーとして知られている細胞表面抗原CD34は、後述するとおり、真皮中の血管部位で発現していることが本発明者によって確認されているが、酵素処理直後の細胞はCD34発現量が極端に低下する。従って、酵素処理により得られた皮膚由来細胞をフローサイトメトリーにかけても、幹細胞マーカー陽性の細胞を十分に分離することはできない。また、酵素処理した細胞の幹細胞陽性マーカーの発現は、間葉系幹細胞の一般的な培養方法である接着培養にかけた場合にも著しく低下する。しかしながら、皮膚組織を酵素処理して得られた細胞を所定の期間浮遊培養することで幹細胞マーカーの発現が回復することが明らかとなった。更に、驚くべきことに、浮遊培養を経由して単離された真皮幹細胞は、接着培養によって得られるものと比較して高い分化能を示す。 前記浮遊培養は、低下した幹細胞マーカーの発現が回復するのに十分な時間、例えば4時間、場合によっては数日間、例えば5日間行われる。糖鎖などによる幹細胞マーカーの翻訳後修飾の観点から、浮遊培養は6時間行うことが好ましい。当該浮遊培養には、間葉系幹細胞で使用される培地を用いることができる。使用する培地に血清が含まれていると血清中の接着因子により培養器面への接着が生じるため、無血清培地を使用するのが好ましい。細胞同士の接着を抑制する目的で、培地にメチルセルロースを含めてもよい。培地は浮遊培養用の培養器に含めて使用される。 幹細胞マーカー陽性細胞は、フローサイトメーター、例えばセルソーター等を用いることで単離される。例えば、セルソーターとしてMACS(登録商標)ビーズシステムを用いることができる。用語「幹細胞マーカー陽性細胞」とは、広く、通常体性幹細胞のマーカーとして知られている因子、CD34、CD44、CD105、CD133、CD146、c-kit、p75NTR、integrinα6、integrinβ1などを発現する細胞を意味する。本発明で使用する幹細胞マーカー陽性細胞の例として、CD34陽性細胞が挙げられる。また、血管内皮細胞周囲に存在するペリサイトマーカーであるNG2を用いることで、より正確に真皮幹細胞を単離することができる。従って、本発明において単離される幹細胞マーカー陽性細胞は、CD34/NG2二重陽性細胞であることが好ましい。 単離した幹細胞マーカー陽性細胞は、間葉系幹細胞用の培地で平面培養される。その中から接着性の高い細胞を選択して培養することで、コロニーに増殖する真皮幹細胞が得られる。このようにして得られた真皮幹細胞は、骨細胞、脂肪細胞等、様々な細胞に分化することができる。 次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。実験方法ヒト皮膚組織からの細胞分離 ヒト皮膚組織を10%ウシ胎児血清含有DMEM培地(Invitrogen)中、実体顕微鏡下で脂肪層部分をメスで除去した後、解剖用のハサミを用いて1-2 mm2の皮膚組織片に細切した。次に、得られた組織片を0.1% トリプシンと0.2%コラーゲナーゼを含む10 mlのDMEM培地に50 mlチューブ内で分散させ、恒温振とう機を用いて37℃で3時間振とうして皮膚組織を酵素的に消化した。酵素消化反応の終了後に30mlのDMEM培地を加え、ピペッティングにより細胞を分散させた。遠心分離後にDMEM培地に再懸濁してから細胞を数え、ヒト皮膚由来細胞とした。ヒト皮膚由来細胞の初代培養 ヒト皮膚から解離させた皮膚由来細胞を5 mlの間葉系幹細胞用培地 MesenPro (Invitrogen)に懸濁した後、ノンコートのT-25培養フラスコ(Falcon)に播種してCO2インキュベーターで一晩の培養を行った。次に、培養液を吸引除去して接着した細胞のみを残し、新しいMesenPro培地を5 mlを加えて培養を続けた。2日おきに培地を交換しながら培養を継続し、細胞密度が集密に達した時点で細胞を回収、得られた細胞をヒト真皮由来細胞とした。磁気ビーズを用いたヒト真皮由来細胞のソーティング ヒト皮膚由来細胞を10 mlの浮遊培養培地(DMEM/F-12(3:1) (Invitrogen)、40 ng/ml FGF2(Sigma)、20 ng/ml EGF(R&Dシステムズ)、B27(Invitrogen)、抗菌剤(和光純薬))に懸濁した後、ノンコートのT-25培養フラスコ(Falcon)に播種し、CO2インキュベーターで5日間の浮遊培養を行った。次に、ミルテニーバイオテク社のCD34 MicroBead Kit (Miltenyi Biotec)を用いて細胞のソーティングを行った。操作条件はミルテニーバイオテク社の提示したプロトコールに従った。 まず、浮遊培養したヒト皮膚由来細胞の細胞塊を、先端を丸めたパスツールピペットを使って物理的に分散させた後、細胞懸濁液を孔穴40umのストレイナー(Falcon)に通した。次に、氷冷したMACSバッファー(0.5% BSA、2mM EDTAを含むPBS 、pH7.2)で1回洗浄して細胞数をカウントし、100万個の細胞を300μlのMACSバッファーに再懸濁した。次に、FcRブロッキング試薬を100μl を加えて混和し、さらにCD34マイクロビーズを100μl 添加して再度よく混和してから、冷蔵庫で30分間インキュベートした。5mlのMACSバッファーを用いて洗浄、遠心操作にて細胞を回収後、500ulのMACSバッファーにて再懸濁した。MSカラムをMACSセパレーターの磁場に挿入して500ulのMACSバッファーで洗浄、上記の細胞懸濁液をカラムにアプライした。カラムを500ulのMACSバッファーで3回洗浄、その際に回収された細胞をCD34陰性皮膚由来細胞とした。次にカラムを磁場から外して回収用のチューブに置き、1mlのMACSバッファーをカラムに添加、カラムの上から添付のプランジャーで押し出し、回収された細胞をCD34陽性皮膚由来細胞とした。得られたCD34陽性または陰性の各皮膚来由細胞を、MesenPro培地で培養して得られた細胞をヒトCD34陽性真皮由来細胞、またはヒトCD34陰性真皮由来細胞とした。コロニー形成アッセイ 真皮由来細胞をMesenPro培地で懸濁した後に、6 cmあるいは10 cmシャーレに低濃度で播種し、CO2インキュベーターで2週間の培養を行った。培養終了後にギムザ染色を行い、形成されたコロニーの数を計測した。ギムザは次のように行った。細胞をメタノールで固定した後に軽く風乾させ、水道水で5倍に希釈したギムザ染色液(ナカライテスク)をシャーレに注いで染色、最後に流水で適度な時間の洗浄を行った。ヒト真皮由来細胞の継代培養 ヒト真皮由来細胞の継代培養は、MesenPro培地を用いて1 cm2当たり1000個の割合で播種することで行った。2日おきに培地を交換しながら培養を行い、細胞密度が集密に達した時点で凍結保存および継代培養を行った。分化培養実験 MesenPro培地で継代培養を行った各検体由来のヒト真皮由来細胞について、R&Dシステムズ社のHuman Mesenchymal Stem Cell Functional Identification Kitを用いて脂肪細胞および骨細胞への分化培養を行った。それぞれの真皮由来細胞を10%ウシ胎児血清含有のαMEM培地に懸濁し、脂肪細胞分化の場合は4万個、骨細胞分化の場合は1万8千個を、酸性コラーゲン溶液(Koken)でコートした2穴チャンバースライドに播種した。その後、10%ウシ胎児血清含有のαMEM培地で2日おきに培地を交換しながら培養を行った。 次に、脂肪細胞分化の場合は、細胞が集密に達した時点で、上記のキットに含まれる脂肪細胞分化の添加剤を加えた10%ウシ胎児血清含有αMEM培地培地に変更し、2週間の培養を行った。また、骨細胞分化の場合は、細胞が亜集密に達した時点で、上記のキットに含まれる骨細胞分化の添加剤を加えた10%ウシ胎児血清含有αMEM培地に変更し、2週間の培養を行った。さらに、軟骨細胞への分化については、25万個の真皮由来細胞を15mlのチューブに遠心分離で沈殿させ、1 mlのDMEM/F-12 (Invitrogen)で洗浄後に、上記キットに含まれる軟骨細胞分化の添加剤を加えた0.5 mlのDMEM/F-12培地に変更し、細胞を塊の状態のままで3週間の培養を行った。オイルレッドO染色 脂肪分化培養を行った真皮由来細胞を、4%パラホルムアルデヒド‐リン酸緩衝液により室温で15分間固定した。滅菌蒸留水でリンスした後、室温において60%イソプロパノールで1分間処理した。次に、室温においてオイルレッドO染色液と15分間反応させた。60%イソプロパノールで1分間処理して分別を行い、さらに滅菌蒸留水に馴染ませてから顕微鏡観察を行った。コッサ法染色 骨分化培養を行った真皮由来細胞を、4%パラホルムアルデヒド‐リン酸緩衝液により室温で15分間固定した。滅菌蒸留水で3回洗浄した後、使用直前に調製した5%硝酸銀水溶液を加え、27Wの蛍光灯の下から約10cmにチャンバースライドを静置して全体をアルミ箔で被い、室温で1時間半の反応を行った。反応終了後に滅菌蒸留水で3回洗浄し、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて2分間静置、さらに滅菌蒸留水で3回洗浄してから顕微鏡観察を行った。ヒト皮膚組織染色 ヒト皮膚組織を凍結組織包埋剤OTCコンパウンド(サクラファインテックジャパン)に包埋し、凍結切片作成装置クライオスタット(Leica)にて凍結切片を作製した。室温で風乾した凍結切片を、-20℃で15分間冷却した冷アセトンを用いて室温で15分間固定した。次に、TBSで洗浄後に無血清ブロッキング試薬(DAKO)で30分間ブロッキング処理を行い、3%BSA含有のTBSTで100倍に希釈したマウスAnti-ヒトCD34抗体(ベクトン・ディッキンソン)とウサギAnti-ヒトNG2抗体(ミリポア)と4℃で一晩反応させた。TBSTで15分間を2回、TBSで15分間を1回の計3回の洗浄を行った後、3%BSA含有のTBSTで200倍希釈したAlexa 488標識-anti-rabbit IgG とAlexa 594標識-anti-mouse IgG標識の二次抗体(Invitrogen)と1時間反応させた。反応後の切片をTBSTで15分間を2回、TBSで15分間を1回の計3回洗浄した後、Hoechist 33258で核染色を行ってから、共焦点蛍光顕微鏡 LSM5 PASCAL(Zeiss)を用いて観察した。細胞染色 脂肪細胞分化あるいは骨細胞分化を行った真皮由来細胞をPBSで洗浄した後に、4%PFAで15分間固定した。TBSで洗浄後に0.1% TritonX-100含有のTBS溶液と15分間反応させることで、細胞膜の透過性を高める処理(パーミライゼーション)を行った。また、軟骨細胞分化の場合は、分化実験後の真皮由来細胞の細胞塊の凍結切片を作製して、上記と同様な操作行い染色に使用した。次に、無血清ブロッキング試薬(DAKO)で30分間ブロッキング処理を行った後、3%BSA含有のTBSTで25倍に希釈したAnti-FABP-4抗体(脂肪検出用)、Anti-Osteocalcin抗体(骨検出用)あるいはAnti-Aggrecan抗体(軟骨検出用)と4℃で一晩反応させた。TBSTで15分間を2回、TBSで15分間を1回の計3回の洗浄を行った後、3%BSA含有のTBSTで200倍希釈したAlexa 350(あるいはAlexa 448、Alexa 594)標識の二次抗体(Invitrogen)と1時間反応させた。TBSTで15分間を2回、TBSで15分間を1回の計3回の洗浄を行った後、褪色防止剤を含有するVector Sheered(Vector社)とカバーガラスで封入し、蛍光顕微鏡(Olympus)を用いて観察を行った。定量PCR Isogen(ニッポンジーン)を用い、提供されたプロトコールを用いて真皮由来細胞からtotal RNAを抽出した。精製したtotal RNAの濃度は核酸定量装置Nanodrop(Thermo scientific)により測定した。各真皮由来細胞について同量のtotal RNAを用いて、ランダムプライマー(Invitrogen)と逆転写酵素Superscript III(Invitrogen)により、Invitrogen社のマニュアルに従いcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型に反応試薬LightCycler FastStart DNA Master PLUS SYBR Green (Roche)、反応装置LightCycler(Roche)を用いて定量PCRを行った。組成条件はRocheのプロトコールに従った。また、PCRの条件は、初期変性95℃で10分、変性95℃で10秒、アニール60℃で10秒、伸長72℃で10秒とした。使用したプライマーの配列は以下の通りである。G3PDH:フォワードプライマー:5‘-GCACCGTCAAGGCTGAGAAC-3‘(配列番号1)リバースプライマー:5‘-ATGGTGGTGAAGACGCCAGT-3‘(配列番号2)HGF:フォワードプライマー:5‘-GAGGGAAGGTGACTCTGAATGAG-3‘(配列番号3)リバースプライマー:5‘-AATACCAGGACGATTTGGAATGGCAC-3‘(配列番号4)NANOG:フォワードプライマー:5‘-TGCTTATTCAGGACAGCCCT-3‘(配列番号5)リバースプライマー:5‘-TCTGGTCTTCTGTTTCTTGACT -3‘(配列番号6)SDF1a:フォワードプライマー:5‘-TGSGCTACAGATGCCCATGC-3‘(配列番号7)リバースプライマー:5‘-CCACTTTAGCTTCGGGTCAA-3‘(配列番号8) LightCyclerの附属のソフトウェアを用いて、各遺伝子の発現量を測定した。なお、G3PDHは内部標準として用い、各遺伝子それぞれの定量時において、これを用いて対照群のcDNA量を補正した。結果 脂肪層を取り除いたヒト皮膚組織を酵素で解離させ、24時間までにノンコート培養皿に接着した細胞を間葉系幹細胞培地MesenProで培養したところ、培養開始から1週間の時点において図1に示すような線維芽細胞様の細胞の出現を認めた。次に、この細胞を集密まで増やした後にコロニーアッセイ行ったところ、多数の円形状のコロニーを形成した(図2)。また、2回の継代培養を行って脂肪・骨・軟骨への細胞分化を調べたところ、図3に示す通り分化培養開始の2〜3週間の時点で、それぞれの分化マーカーを発現しており、脂肪・骨・軟骨に分化したことが確認された。以上の結果から、ヒト皮膚に間葉系幹細胞が存在することが明らかになった。 次に、ヒト皮膚における間葉系幹細胞の分布を、組織染色法により明らかにした。まず、造血幹細胞、血管内皮前駆細胞、脂肪由来幹細胞など、前駆細胞や幹細胞のマーカーとして良く知られているCD34のヒト真皮組織での分布を調べたところ、真皮コラーゲン繊維の中に散在する線維芽細胞とは異なる、血管部位に局在していることが分かった(データーは示さない)。次に、血管内皮細胞との区別するために、周皮細胞マーカーNG2と幹細胞マーカーCD34の二重染色を行ったところ、周皮細胞マーカーNG2と幹細胞マーカーCD34に対して二重陽性の細胞が、真皮中の血管部位に存在することが分かった(図4)。これらの細胞集団が、真皮間葉系幹細胞である可能性が考えられた。 NG2/CD34二重陽性の細胞が真皮間葉系幹細胞であること、またこれらのマーカーを用いて真皮間葉系幹細胞を効率よく分離できることを示すため、これらのマーカーによる細胞ソーティングを行った上で、分化能を調べる検討を行った。ここでは、CD34による結果について示す。ヒト皮膚2cm2大の組織を酵素液(0.1%トリプシン/0.2%コラーゲナーゼを含むDMEM培地)中において37℃で3時間処理して細胞を解離させたところ、約10万個の細胞を得ることができた。この細胞を5日間まで浮遊培養を行ってから遠心して回収、先端を火で炙って丸くしたパスツールピペットを用いて物理的に解離させた。得られた細胞(100万個)について、ミルテニーバイオテク社のCD34 MicroBead Kit (Miltenyi Biotec)を用いて細胞ソーティングを行った。得られたCD34陽性または陰性の各細胞画分をMesenPro培地に懸濁した後に、10 cmシャーレ当たり5000個の割合で播種し、CO2インキュベーターで2週間の培養を行った。培養開始から2週間の時点において倒立顕微鏡下で観察したところ、CD34陽性細胞画分は多数の増殖性コロニーを形成していたのに対して、CD34陰性細胞画分についてはわずか数個の分化型コロニーしか認められず、その後に増殖させることもできなかった(図5)。また、浮遊培養を行わず皮膚組織の解離後に直接細胞ソーティングを行った場合は、CD34陽性細胞画分についてもコロニーは認められず、次に、CD34陽性細胞画分をMesenPro培地で2回の継代培養を行って脂肪と骨への分化能を調べたところ、高効率でオイルレッドOに陽性の脂肪細胞あるいはコッサ法に陽性の骨細胞に分化した(図6)。細胞ソーティングで得た真皮間葉系幹細胞は、接着法で得た真皮間葉系幹細胞と比較して、高い分化能を維持していることが明らかになった(表1)。さらに、細胞ソーティングで得た真皮間葉系幹細胞において、間葉系幹細胞で高発現する因子NANOG、SDF-1α、HGFの発現が、接着法で得た真皮間葉系幹細胞より明らかに高いことが分かった(図7)。 酵素処理することで皮膚から解離した細胞を浮遊培養し、そして 当該培養細胞からCD34及びNG2二重陽性の接着性細胞を単離することを特徴とする、真皮幹細胞を単離する方法。 前記浮遊培養が、前記細胞の幹細胞マーカーの発現を回復させるのに十分な時間行われる、請求項1に記載の方法。 前記幹細胞が、間葉系幹細胞である、請求項1又は2に記載の方法。配列表


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