タイトル: | 特許公報(B2)_持続性ドラッグデリバリーシステム |
出願番号: | 2011527664 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 9/48,A61K 47/42,A61K 47/34,A61K 45/00,A61P 27/02,A61P 9/10,A61P 27/06 |
阿部 俊明 永井 展裕 梶 弘和 川島 丈明 西澤 松彦 西田 幸二 JP 5641483 特許公報(B2) 20141107 2011527664 20100810 持続性ドラッグデリバリーシステム 国立大学法人東北大学 504157024 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 阿部 俊明 永井 展裕 梶 弘和 川島 丈明 西澤 松彦 西田 幸二 JP 2009189462 20090818 20141217 A61K 9/48 20060101AFI20141127BHJP A61K 47/42 20060101ALI20141127BHJP A61K 47/34 20060101ALI20141127BHJP A61K 45/00 20060101ALI20141127BHJP A61P 27/02 20060101ALI20141127BHJP A61P 9/10 20060101ALI20141127BHJP A61P 27/06 20060101ALI20141127BHJP JPA61K9/48A61K47/42A61K47/34A61K45/00A61P27/02A61P9/10A61P27/06 A61K 9/00 A61K 47/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2005−502426(JP,A) 13 JP2010063793 20100810 WO2011021594 20110224 43 20130809 清野 千秋 本発明は、長期間に渡って一定の持続速度で薬剤を送達するためのドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する。具体的には、眼の障害または疾患を有する哺乳動物の眼を治療するためのDDSおよび方法に関する。より具体的には、眼球内に薬物を持続的に投与するためのインプラントおよび方法に関する。本明細書に記載したインプラントおよび方法を使用することによって、所望の治療部位、具体的には、眼球内に薬物を持続的に投与することができる。 より安全に効果的に薬物化学療法を行う手段として、“必要最小限の薬物を、必要な場所に、必要なときに供給する”という概念のドラッグデリバリーシステム(DDS)が考案されている。DDS製剤として、狭心症薬のニトログリセリンや高血圧症薬のクロニジンの皮膚からの吸収を制御する経皮型DDSや、浸透圧を利用した経口型DDSが実用化されている。 眼疾患に対しては、薬物の点眼投与によって治療するのが一般的である。しかしこの方法では網膜あるいは硝子体へ薬物がほとんど移行しない薬物がある。また、静脈投与など全身投与を試みても、血液房水柵(blood−aqueous barrier)や血液網膜関門(blood−retinal barrier)のため有効濃度になるほど治療部位に移行しなかったり、全身の副作用を考慮する必要がある。硝子体に直接薬物を注入する方法も最近試みられているが、薬物は注入後即座に分散し、代謝を受け目的部位に移行する薬物は数%以下である。そのため、高濃度の薬物を注入する方法も考えられるが、正常眼内組織への副作用が生じる危険性がある。また、別の方法として頻回投与があるが、これは感染の危険性や手技の煩わしさを考えると実際的ではない。 この問題を解決するために、安全に薬物をゆっくり眼内に放出させる眼内治療用DDSが考案されている。眼内治療DDS、インプラント 例えば非生分解性DDSとして、ガンシクロビルを眼内に送達する外科用インプラントVitrasert(Bausch & Lomb社)がある。これは薬物リザーバータイプのインプラントを外科的に硝子体内に移植するものである。約3年の徐放期間を示す。しかし、移植したインプラントを取り除くための再手術を必要としたり、副作用が生じた場合に対応まで時間がかかったりする場合があり、感染症の危険性や患者への身体的負担が大きいことが問題である。また、徐放された薬剤は硝子体内で分散し代謝を受けるため、治癒レベルの薬剤濃度が標的部位に到達するかどうか疑問である。 例えば眼内治療DDSとして、「生体分解性強膜プラグ」が開示されている(特許文献1を参照)。これはポリ乳酸をプラグ状に加工し、強膜に穿刺して留置するDDSである。硝子体手術によって形成された開口部をふさぐために使用する金属性強膜プラグを生分解性ポリマーで作成しかつ薬剤を内包しておくことによって、ポリマーの分解とともに薬剤が硝子体内に徐放され、開口部も治癒によってふさがることを特徴とする。しかし、前述のインプラントと同様に薬物は硝子体に分散するため、治癒レベルの薬剤が標的部位に到達するかどうかは疑問である。さらに硝子体手術による感染症の危険、身体的負担がある。 例えば眼内治療DDSとして、薬物コーティングされた芯状のポリカプロラクトンを網膜下に直接移植するインプラントが開示されている(特許文献2を参照)。網膜下への直接移植は硝子体手術を必要とする。また、脆弱な網膜組織内にインプラントを埋め込むためには相当の手技を術者に要求される。また、感染症や網膜を傷つける可能性が高く高侵襲的なインプラントであり現実的ではない。 例えば眼内治療DDSとして、「眼部送達のためのポリマー送達処方」が開示されている(特許文献3を参照)。これは薬剤を内包したラクチド/グリコリド・コポリマーからなるミクロスフィアを、キャリア溶媒としてポリエチレングリコールを用いて硝子体内、結膜下に注入する方法である。しかしこのような流動性のあるDDSキャリアを移植しても、標的部位周辺に容易に分散し薬物の局所的効果は薄まることが問題である。 以上のように、硝子体内に移植するタイプのこれらのインプラントは、手術に伴う感染症の危険性や患者への身体的・経済的負担を伴う。さらに術者にも高度な技術が要求される。また、一度移植したインプラントを不要なときに除去や交換ができない場合がある。さらに、硝子体に分散した薬物は代謝を受け、かつ内境界膜(ILM)、外境界膜(OLM)、血液網膜関門による物質透過制御を受けるため、網膜および脈絡膜へ到達する薬物は数%以下と推定され、治療効果が小さい場合がある。 このような課題を解決するために、強膜側移植による硝子体手術を必要としない低侵襲的な経強膜DDSが考案されている。眼周囲からの薬物送達によって前述のILM、OLM、血液網膜関門を迂回することができれば、硝子体内徐放と比較して網膜への薬物濃度が増加する可能性と、後眼部組織への局所送達が可能となり、全身投与の副作用の最小限化が可能となる。また、強膜は水溶性物質が透過しやすく、タンパク質分解酵素やタンパク質の結合・吸着が少なく、細胞密度も低いため、薬物が代謝を受けずに透過しやすい。例えば、アルブミンを脈絡膜上に眼内注射すると強膜を通して眼外へ排出されることが知られている(非特許文献1を参照)。以下に経強膜DDSの例を挙げる。1.経強膜DDS 例えば経強膜DDSとして、「網膜と脈絡膜への経強膜徐放性薬剤標的送達」が開示されている(特許文献4を参照)。これは機械式の浸透圧ポンプ(ALZET,ALZA,Palo Alto,CA)をDDSとして利用している。浸透圧ポンプは肩甲骨間の皮下に埋入され、そこから伸びたホースを介して経強膜的に薬剤が送達される形態であるが、装置が煩雑で移植部位が肩甲骨と強膜の2箇所となり侵襲的であり現実的ではない。 例えば経強膜DDSとして、「ゲル状組成物を用いた後眼部組織への非侵襲性ドラッグデリバリーシステム」が開示されている(特許文献5を参照)。これは薬物と粘膜付着性物質からなるゲル状組成物を眼表面に投与することによって、後眼部組織に局所的に薬物を投与するDDSである。しかしながらこのゲル状組成物は水溶性の高分子成分からなるため、投与後に投与部位周囲に容易に分散し局所的な効果が薄れることが予想され、さらに不要になったときにゲル状組成物を全て回収できないという課題がある。 例えば経強膜DDSとして、「眼科薬物供給装置」が開示されている(特許文献6を参照)。これは、眼内で安定に配置されかつ快適であり、長期間薬剤を供給できる体積と質量をもつ眼科装置の提供を目的としている。強膜上にフィットするように曲面とテーパーを有したシリコーンエラストマーからなる装置である。幅10−25mm、高さ5−12mm、厚さ1−3mmと装置自体が大きい。薬剤の徐放性については開示されていない。また、前眼表面への挿入を意図しており、後眼部組織への薬剤徐放を意図したものではない。 例えば経強膜DDSとして、「経強膜送達」が開示されている(特許文献7を参照)。これはラパマイシンの後眼部組織への送達を目的としたDDSである。送達システムとして、ミクロスフィア・ナノ粒子の強膜下注入、不浸透性の裏打ちを有する薄層膜の生分解性ポリマーの強膜表面移植および外科的に形成した強膜ポケット内への移植、薬物の固体コアの強膜ポケット内移植、シリコーントラック送達システムの直筋腱(recti tendon)への挿入が開示されている。挿入方法として特別に設計された注入器・挿入器を使い、DDSを固定するために縫合糸の使用やDDS自体に微小な針を取り付けて動きを抑制する方法が開示されている。ヒトドナー強膜をチャンバーに設置したin vitro強膜モデルを作成して、ラパマイシンの浸透性を評価し、有効濃度のラパマイシンが透過することを示しているが、徐放期間は明示されていない。 以上のように、これまで開示されている経強膜DDSは、システムが複雑であったり、流動性があったり、サイズが大きく移植後の異物感があったり、徐放期間が短い、という課題があった。 一方、従来より、DDSの基材としてコラーゲンとポリエチレングリコール(PEG)が用いられていた。コラーゲンは生体由来のタンパク質であり、生体内では細胞外マトリックスとして機能し、細胞の増殖や分化を調節している。このような生物学的性質から、組織工学や再生医療におけるバイオマテリアルとして利用されている。最近ではインジェクタブルフィラー、止血剤、人工皮膚などへ臨床応用されている。PEGは無毒で生体との相互作用が小さい生体適合性の合成高分子である。化粧品の乳化剤などを始め、タンパク質医薬品のPEG化による生体内安定化など医療分野でも臨床応用されている。以下にコラーゲンとPEGを用いた眼治療用材料の例を挙げる。2.コラーゲンDDS 例えばコラーゲンを利用した眼治療用材料として、「眼治療用懸濁液」が開示されている(特許文献8を参照)。これは眼表面の乾燥を予防するための人工涙液の提供を目的としたもので、0.5mm径の生分解性粒子(コラーゲン、ゼラチン等)、眼用薬剤、脂質状物質の混合物からなるが、眼表面の治療であり、眼内治療を目的としたDDSではない。 例えばコラーゲンを利用した眼治療用材料として、「コラーゲンベースの注入可能な薬剤送達製剤およびその使用」が開示されている(特許文献9を参照)。これは皮下注入型の薬剤送達担体の提供を目的としたもので、アテロコラーゲン、薬剤、架橋剤の混合物を皮下注入後にin situで架橋させて固化させたDDSである。対象疾患は記述されていない。しかしin situの架橋は、未反応の架橋剤が生体組織へ炎症反応を惹起する可能性があり好ましくない。 例えばコラーゲンを利用した眼治療用材料として、「コラーゲンを基材とした、光学的に透明な紫外線吸収生体適合性ポリマー材料およびその製造方法」が開示されている(特許文献10を参照)。これは眼内レンズおよびコンタクトレンズの製造を目的としたもので、透明性と紫外線吸収性を得るために親水性または疎水性のアクリルモノマーおよびアリルモノマーをコラーゲンとグラフト重合している。コラーゲンとPEGとの複合物からなる材料が例示されているが、薬剤の充填は実施されておらず、眼内治療を目的としたものではない。 例えばコラーゲンを利用したDDSとして、「コラーゲンゲルおよびその製造方法」が開示されている(特許文献11)。これはコラーゲンの線維化途上に架橋剤を混ぜて、線維化と架橋を同時に起こしたコラーゲンゲルの作製方法を示している。コラーゲンゲル中の溶媒を除去して得られた乾燥コラーゲンシートを使ったDDSが開示されているが、実施例がなく、徐放性や用途については不明である。 以上のように、コラーゲンを利用した眼治療用材料において、後眼部組織への薬物送達を目的とした経強膜DDSは開示されていない。3.PEG化DDS 例えばPEGを利用した眼治療用材料として、「薬物−ポリエチレングリコール結合体を含有する眼組織内注入剤」が開示されている(特許文献12を参照)。PEGと複合化された薬物は見かけの分子量が大きくなるため、眼内に直接注入しても全身循環に移行しないことを利用したもので、PEGによる薬物の眼内安定化を目的としたものである。しかし、眼内注入された薬物が標的部位へ移行するかどうかは薬物の分散次第であり、前述の通りILM、OLM、血液網膜関門による透過阻害を受けるため後眼部組織への薬物到達率は数%以下であり、治療効果が小さいことが課題である。 例えばPEGを利用した眼治療用材料として、「高分子ミセルを用いた眼科用ドラッグデリバリーシステム」が開示されている(特許文献13を参照)。これは、光線力学療法(PDT)に用いる光感受性物質を、PEGを外殻、ポリアスパラギン酸(Asp)を内殻とするミセルに内包し、PDTに用いる方法である。この方法を用いると、光感受性物質を血管新生を起こした後眼部組織に効果的に送達することができ、低いレーザー照射量で血管新生を閉塞することができる。しかしながら、病態によっては反復継続してレーザー照射をする必要があり、レーザー照射による眼組織への副作用が課題となる。 以上のように、PEGを利用した眼治療用材料において、後眼部組織への薬物送達を目的とした経強膜DDSは開示されていない。特開平6−312943号公報特表2008−535847号公報特表2008−520547号公報特表2002−534139号公報特開2007−56014号公報特表2007−503265号公報特表2007−505932号公報特開平4−1124号公報特開平8−34747号公報特表2002−528043号公報特許第4064435号公報特開2003−171315号公報特開2005−8614号公報Arch.Opthalmol.74,248−52,1995 DDSは“必要最小限の薬物を、必要な場所に、必要なときに供給する”ことを目的としたものだが、DDSの形状・大きさの不適合によって移植部位が限定され、その結果必要以外の場所に薬物が到達して副作用を起こしたりする課題があった。また、DDS基材由来の炎症反応を伴う場合があった。さらに従来のDDSは初期バーストを起こして、必要以上の薬物を初期に放出したり、徐放期間が十分でないものがあった。 眼疾患治療DDSにおいては、DDSキャリアおよび薬物を外科的に硝子体から網膜下へ投与・移植する方法が開示されているが、この方法は患者への身体的・経済的負担が大きく、感染症の危険性も大きく、また手術者にも高度な手技が要求されることがある。また、このように投与されたDDSキャリアはほとんどの場合、不要になったときや副作用が生じたときに除去することが困難な場合がある。これを解決する方法として経強膜DDSがいくつか開示されているが、システムが複雑であったり、流動性があったり、サイズが大きく移植後の異物感があったり、徐放期間が短い、という問題があった。 本発明は、上記の問題点を解決するためのDDSであって、特に眼病治療への適用においては眼内へ安全かつ簡便に移植でき、初期バーストを伴わずに長期にわたって薬物を眼内へ送達し得るDDSの提供を目的とする。さらに、眼以外の臓器・組織においても応用可能な汎用性の高い長期徐放型DDSの提供を目的とする。 上記のように、これまで開示されているDDSは生体親和性や形状が不適切であったり、初期バーストを起こして安定した薬物徐放を達成できなかったり、徐放期間が短いという課題があった。特に眼内治療用DDSにおいては、システムが複雑であったり、流動性があったり、サイズが大きく移植後の異物感があったり、徐放期間が短い、という問題があった。 本発明者らは、これらの課題を解決するために、組織への損傷なしに脈絡膜と網膜へ治療レベルの濃度の薬物を長期間1方向性に送達することができるコンパクトサイズの段階徐放型経強膜DDSの開発を目指し、鋭意検討を行った。 本発明者らは、DDSの基材としてコラーゲンとPEGを用いた。本発明者らは、強膜(ここでいう強膜とは、脈絡膜の上から結膜の下までの範囲、すなわち、強膜下、強膜内、強膜上、結膜下、脈絡膜上、を言う)に挿入しやすいように、厚み1mm以下、面積1cm2以下の薬物リザーバー型カプセルを開発した。カプセルはPEGから作製した箱型リザーバーに多孔性PEGシートで蓋をして作製した。多孔性PEGシートはコラーゲン微粒子をポロゲン(多孔の鋳型)にしてコラゲナーゼ消化によって多孔質化して作製した。コラーゲン微粒子の混合量を変えることによって多孔密度を変えることができる。その結果、カプセル内の薬物の透過性・徐放性を容易に制御することができることがわかった。さらに、カプセル内の薬物の充填方法を、一般的な水溶液から、薬物をコラーゲンに含浸したもの(コラーゲンの形状はゲルであっても微粒子であってもよい)、およびそのコラーゲンをPEGで包みペレット化したものを充填すると、徐放性をより遅くすることができることがわかった。これはすなわち、カプセル内部でコラーゲンからの薬物徐放が起こり、さらに多孔性PEGシートを介して薬物が徐放される2段階徐放型の新しいDDS概念である。カプセル内の薬物の充填方法と多孔性PEGシートの孔密度の組み合わせによって、5年間以上の徐放期間を得ることができた。さらに、微細加工技術によってカプセル内を区画化することによって、数種類の薬物を充填可能であり、かつ充填形状を変えることで数種類の薬物を異なる速度で徐放できることがわかった。また、動物実験により強膜上に移植したデバイスから薬物が眼内に持続的に徐放されていることがわかった。 すなわち、従来技術よりも長期間薬物を徐放でき、強膜に挿入しやく、数種類の薬物を異なる速度で徐放できる経強膜DDSの開発に至り、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は以下のとおりである。[1] インプラントを体内に移植することを特徴とする持続的ドラッグデリバリーシステムであって、インプラントが、治療用薬物、治療用薬物含浸コラーゲンまたは治療用薬物含浸コラーゲンを内包したポリエチレングリコール(PEG)ペレットを内部に含む箱状のPEGに多孔性PEGシートで蓋をし、多孔性PEGシートを通して内部の薬物が徐放される構造を有するPEGカプセルである、持続的ドラッグデリバリーシステム。[2] 治療用薬物含浸コラーゲン、または治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットが箱状のPEG内部に含まれる段階的徐放ドラッグデリバリーシステムである、[1]の持続的ドラッグデリバリーシステム。[3] 治療用薬物が溶液、粉末状の粒子またはそれらの混合物である、[1]または[2]の持続的ドラッグデリバリーシステム。[4] 治療用薬物含浸コラーゲンがコラーゲンゲルまたはコラーゲン微粒子である、[1]〜[3]のいずれかの持続的ドラッグデリバリーシステム。[5] 治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットが、薬物含浸コラーゲン、光硬化性ポリエチレングリコールおよび光重合開始剤を混合しUV光により硬化させ作製される、[1]〜[4]のいずれかの持続的ドラッグデリバリーシステム。[6] 箱状PEGが光硬化性ポリエチレングリコールおよび光重合開始剤を混合しUV光により硬化させ作製される、[1]〜[5]のいずれかの持続的ドラッグデリバリーシステム。[7] 多孔性PEGシートが、光硬化性ポリエチレングリコール溶液、コラーゲン微粒子および光重合開始剤を混合し、UV光を照射し硬化させたのち、コラーゲン微粒子を消化することにより作製される、[1]〜[6]のいずれかの持続的ドラッグデリバリーシステム。[8] 光硬化性ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)およびポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)からなる群から選択される、[5]〜[7]のいずれかの持続的ドラッグデリバリーシステム。[9] 眼病治療用薬物を持続的に投与するためのインプラントを脈絡膜より上で結膜より下の部分すなわち強膜下、強膜内、強膜上、結膜下または脈絡膜上である強膜に移植することを特徴とする眼病治療用持続的ドラッグデリバリーシステムである、[1]〜[8]のいずれかの持続的ドラッグデリバリーシステム。[10] 眼病が遺伝子および環境因子を含む多因子が関与する疾患、網膜血管病変、または脈絡膜・網膜・硝子体に炎症や障害が及ぶ疾患である、[9]の持続的ドラッグデリバリーシステム。[11] 遺伝子および環境因子を含む多因子が関与する疾患が、網膜色素変性、加齢黄斑変性および緑内障からなる群から選択され、網膜血管病変が網膜動脈閉塞症、網膜静脈分岐閉塞症および糖尿病網膜症からなる群から選択され、脈絡膜・網膜・硝子体に炎症や障害が及ぶ疾患がぶどう膜炎である、[10]の持続的ドラッグデリバリーシステム。[12] 治療用薬物が血管新生を抑制する薬物、神経細胞の成長を促進する薬物、神経細胞を保護する薬物、ステロイド剤、緑内障治療薬、抗炎症剤、抗真菌剤および抗癌剤からなる群から選択される、[1]〜[11]のいずれかの持続的ドラッグデリバリーシステム。[13] 治療用薬物、治療用薬物含浸コラーゲンまたは治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットを内部に含む箱状のPEGに多孔性PEGシートで蓋をし、多孔性PEGシートを通して内部の薬物が徐放される構造を有するPEGカプセルである、薬物徐放性インプラント。[14] 治療用薬物含浸コラーゲン、治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットが箱状のPEG内部に含まれる段階的徐放性インプラントである、[13]の薬物徐放性インプラント。[15] 含浸される治療用薬物が溶液、粉末状の粒子またはそれらの混合物である、[13]または[14]の薬物徐放性インプラント。[16] 治療用薬物含浸コラーゲンがコラーゲンゲルまたはコラーゲン微粒子である、[13]〜[15]のいずれかの薬物徐放性インプラント。[17] 治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットが、薬物含浸コラーゲン、光硬化性ポリエチレングリコールおよび光重合開始剤を混合しUV光により硬化させ作製される、[13]〜[16]のいずれかの薬物徐放性インプラント。[18] 箱状PEGが光硬化性ポリエチレングリコールおよび光重合開始剤を混合しUV光により硬化させ作製される、[13]〜[17]のいずれかの薬物徐放性インプラント。[19] 多孔性PEGシートが、光硬化性ポリエチレングリコール溶液、コラーゲン微粒子および光重合開始剤を混合し、UV光を照射し硬化させたのち、コラーゲン微粒子を消化することにより作製される、[13]〜[18]のいずれかの薬物徐放性インプラント。[20] 光硬化性ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)およびポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)からなる群から選択される、[17]〜[19]のいずれかの薬物徐放性インプラント。[21] 眼病治療用であり、脈絡膜より上で結膜より下の部分すなわち強膜下、強膜内、強膜上、結膜下または脈絡膜上である強膜に移植される、[13]〜[20]のいずれかの薬物徐放性インプラント。[22] 眼病が遺伝子および環境因子を含む多因子が関与する疾患、網膜血管病変、または脈絡膜・網膜・硝子体に炎症や障害が及ぶ疾患である、[21]の薬物徐放性インプラント。[23] 遺伝子および環境因子を含む多因子が関与する疾患が、網膜色素変性、加齢黄斑変性および緑内障からなる群から選択され、網膜血管病変が網膜動脈閉塞症、網膜静脈分岐閉塞症および糖尿病網膜症からなる群から選択され、脈絡膜・網膜・硝子体に炎症や障害が及ぶ疾患がぶどう膜炎である、[22]の薬物徐放性インプラント。[24] 血管新生を抑制する薬物、神経細胞の成長を促進する薬物、血管新生を促進する薬物、ステロイド剤、緑内障治療薬、抗炎症剤、抗真菌剤および抗癌剤からなる群から選択される、[14]〜[23]のいずれかの薬物徐放性インプラント。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2009−189462号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。 図1は、多孔性PEGシートの作製法の概要を示す図である。 図2は、カプセル内に薬物溶液、薬物含浸コラーゲンゲル、薬物含浸コラーゲン微粒子、薬物含浸コラーゲンPEGペレットを充填したPEGカプセルの模式図である。 図3は、DDSの強膜への移植を表す図である。 図4は、コラーゲン微粒子(Coll粒子)の顕微鏡像を示す写真である。 図5は、多孔性PEGシートの電子顕微鏡写真を示す写真である。 図6は、多孔性PEGシートを作製するときのColl粒子濃度と多孔性PEGシートの孔密度の関係を示す図である。 図7は、多孔性PEGシートの物質透過性を評価する方法の概要を示す図である。 図8は、多孔性PEGシートにおける孔密度と物質透過性の関係を示す図である。 図9は、徐放性評価の方法の概要を示す図である。 図10は、Coll−FD40(FITC−Dextran 40kDa 含浸 Coll粒子)およびPEGDM/Coll−FD40(FITC−Dextran 40kDa 含浸 Coll粒子含有PEGペレット)の徐放性を示す図である。 図11は、FD40溶液、Coll−FD40(FITC−Dextran 40kDa 含浸Coll粒子)およびPEGDM/Coll−FD40(FITC−Dextran 40kDa 含浸 Coll粒子含有PEGペレット)の徐放担体形状の違いによる徐放性の差を示す図である。 図12は、1段階徐放DDS(Coll−FD40およびPEGDM/Col−FD40)と2段階徐放DDS(PEGDM/Coll−FD40+多孔性PEGDMシート)の徐放性の比較を示す図である。 図13A−1は、アレイ化したPEGカプセルの構造を示す写真である。 図13A−2は、アレイ化したPEGカプセルの構造を示す図であり、上から見た図と横から見た図を示す。 図13A−3は、複数の区画を有するPEGカプセルの構造を示す写真である(その1)。 図13A−4は、複数の区画を有するPEGカプセルの構造を示す写真である(その2)。 図13B−1は、単独のPEGカプセルの構造を示す写真である。 図13B−2は、単独のPEGカプセルの構造を示す図であり、上から見た図と横から見た図を示す。 図14Aは、PEG箱と多孔性PEGシート(PEG蓋)との接合部分の顕微鏡像を示す写真である。 図14Bは、PEG箱と多孔性PEGシート(PEG蓋)との接合部分を示す図である。 図15Aは、PEG箱に充填したPEGDM/Coll−FD40(FITC−Dextran 40kDa 含浸 Coll粒子含有PEGDMペレット)からの徐放を示す図である(1回目)。 図15Bは、PEG箱に充填したPEGDM/Coll−FD40(FITC−Dextran 40kDa 含浸 Coll粒子含有PEGDMペレット)からの徐放を示す図である(2回目)。 図16は、PEGDMとTEGDMを様々な比率で混合したシートからのフルオレセインナトリウム溶液の徐放を示す図である 図17は、PEGカプセルの形状を示す図である。図17Aは、PEGシートとPEG箱を組合せたものを示し、図17Bは箱型に作製したPEGシートとPEG箱を組合せたものを示す。 図18は、移植時に強膜上に縫合で固定できるようにデザインしたPEG箱を示す図である。図18Aは縫合用の穴を有しているPEG箱を示し、図18Bは十字で縫合できるように箱の角を除去したPEG箱を示す。 図19は、フルオレセインを含むPEGペレットを充填したPEGカプセル(図19A)およびそれをウサギ強膜に移植した直後の状態を示す(図19B)写真である。図19AのPEGカプセルを図19Bの矢印部分に移植した。 図20は、PEGカプセルを移植した後のウサギの前房水を回収して蛍光強度を測定した結果を示す図である。 図21は、蛍光眼底カメラを用いて、移植したPEGカプセル周辺の蛍光分布を撮影した写真である。図21Aは蛍光を撮影するまえの可視写真であり、図21BからEは、それぞれ移植1週間、2週間、3週間および5週間後の蛍光写真である。図21BからEにおいて、白い部分が蛍光を示している。 図22は、フルオレセインおよびFD40を含むPEGカプセルを移植後3日目のウサギ眼の網膜周辺の組織写真である。図22Aはフルオレセインの分布を示す、図22BはFD40の分布を示している。図中、SCは強膜、RPは網膜色素上皮、REは網膜を示す。 図23は、BDNFを含むPEGカプセルからのBDNFの徐放を示す図である。 図24は、1ヶ月移植していたPEGカプセルの表面構造のSEMの撮影像を示す写真である。図24AはPEG箱側を、図24Bは多孔性PEGシート面を示す。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の持続性DDSに用いる治療用薬物リザーバーカプセルは、PEGでできた箱型のリザーバーと多孔性PEGシートからなり、箱型のリザーバーがシート状または箱型の多孔性PEGシートの蓋で閉じられたカプセル構造を有する。 箱型のリザーバー中には、治療用薬物が含浸したコラーゲンや、この薬物含浸コラーゲンがPEG中に内包されペレット化したものが含まれる。ここでいうコラーゲンの形状はゲルであっても微粒子であってもよい。また、薬物を溶液や粉末の状態あるいはそれらの混合物の状態で入れてもよく、用途に合わせて様々な形状で薬物を充填できる。薬物含浸コラーゲンは、薬物包埋コラーゲンまたは薬物を含むコラーゲンともいう。 該カプセルに含まれる治療用薬物は、該カプセルの多孔性PEGシートからなる部分を通って外部に徐放される。薬物含浸コラーゲンゲルの調製方法 コラーゲンはあらゆる型のコラーゲンを用いることができ、例えばI型〜VIII型のコラーゲンを用いることができる。コラーゲンの由来も限定されず、哺乳類、鳥類、魚類等の由来のコラーゲンを用いることができる。またリコンビナントのヒトコラーゲンも用いることができる。例えば、工業的な利用という観点から、収量の多い1型コラーゲンあるいはそれを主成分とするコラーゲンが好ましい。本発明に用いられるコラーゲンは、分子構造について特に限定されるものではない。線維化能を有するものや有さないものも使用できる。コラーゲン分子の両末端には非らせん領域のテロペプチドを有し抗原性を有するという報告がある。用途によっては除去されるべき場合があるが、テロペプチドが除去されていても除去されていなくてもよい。 また本発明で用いるコラーゲンはその変性について特に限定されるものではない。一度変性させたコラーゲンでも、部分的にコラーゲンらせん構造を回復することが知られている。らせん率は旋光度計で測定した比旋光度より求められるが、そのらせん率は特に限定されることはない。 コラーゲンは主に酸性水溶液で抽出される酸可溶化コラーゲンと、アルカリ水溶液で抽出されるアルカリ可溶化コラーゲンに分けられる。特に限定されないが、コラーゲン酸性水溶液の方が好ましい。 コラーゲン溶液の溶媒としては、酸性溶媒の場合、最終用途から見て、安全で工業用として広く使用されている水、あるいは塩酸、酢酸、クエン酸、フマル酸等の水溶液が好ましい。中性からアルカリ性の場合は、上記と同様の理由から、水、あるいはリン酸塩、酢酸塩、Tris等の水溶液が好ましい。 コラーゲンゲルを作る方法はコラーゲンが流動性を失ってゲル化するような処理方法であれば特に限定されないが、本発明では、コラーゲン溶液に対して架橋剤を含む溶媒を混ぜる方法と、コラーゲンの線維化を惹起する溶媒を混ぜる方法を使うのが好ましい。コラーゲン溶液に架橋剤を入れるとコラーゲン分子同士が架橋されてコラーゲン溶液はゲル化する。また、コラーゲン溶液に緩衝能を有するバッファーを混ぜてpHを中性付近にすると、コラーゲン分子が自己組織化してコラーゲン線維を形成し、ハイドロゲルを形成する。コラーゲンがゲル化するときに薬物を混ぜておくことで薬物含浸コラーゲンゲルを作ることができる。このとき、薬物は粉末でもよいし溶液でもよい。溶液の場合、ゲル化に使う溶媒に溶解しておくと良い。 コラーゲンゲルのコラーゲン濃度は特に限定されず、0.001%(w/v)から50%(w/v)の範囲で作製することができる。コラーゲン濃度が高いほど溶媒の拡散速度が遅くなるため、薬物の徐放も遅くなる。 コラーゲンのゲル化に使うバッファーは、コラーゲンの線維化を惹起する溶媒であれば特に限定されない。しかし、医療用材料を最終用途として考慮すると、細胞毒性が無いかあるいは低く、工業用として広く使用されているリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、Tris等の緩衝能を有する塩水溶液を用いることが好ましい。コラーゲンの線維化に適するpHは、コラーゲンの種類によって変化するが、pH5〜9の範囲である場合が多く、その範囲で高い緩衝能を有するリン酸塩が特に好ましく用いられる。 コラーゲンを線維化するときの温度は、使用されるコラーゲンの変性温度より低い温度で行えばよい。変性温度より高い温度で行うとコラーゲンが変性して線維化を起こさない場合がある。特にウシやブタなどの哺乳類由来のコラーゲンは37℃前後で線維化を起こしやすく、20℃より低い温度では線維化を起こしにくい。従って、薬物を均一にコラーゲンゲルに含浸するためには、20℃以下で薬物を混ぜてから、37℃のインキュベーターに入れてゲル化させるとよい。 コラーゲン溶液の架橋に使う架橋剤は、タンパク質を架橋でき、水溶性を有するものであれば特に限定されない。中でも、アルデヒド系、カルボジイミド系、エポキシド系およびイミダゾール系架橋剤が経済性、安全性、および操作性の観点から好ましく用いられる。特に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド・スルホン酸塩などの水溶性カルボジイミドを使用するのが好ましい。 架橋剤の濃度は特に限定されるものではない。架橋剤濃度によってコラーゲンの生分解性速度や徐放速度が変化する場合があるため、用途に応じて濃度を決定すればよい。終濃度として、0.01mM〜1Mの範囲であることが好ましい。薬物含浸コラーゲン微粒子の調製方法 薬物含浸コラーゲン微粒子(コラーゲン微粒子をColl粒子と呼ぶ場合がある)とは、粒子状のコラーゲン中に薬物が含浸されたものである。薬物含浸コラーゲン微粒子は、コラーゲン溶液中に薬物を添加し、乳化し薬物を内部に含む油中水型エマルジョンを形成させ、該エマルジョン中の球状コラーゲンを架橋し、架橋型コラーゲン微粒子を調製し、該架橋型コラーゲン微粒子を薬物含浸コラーゲン微粒子として用いる。あるいは薬物の添加を除いた以外は同様の方法でコラーゲン微粒子を作製した後に、薬物溶液にコラーゲン微粒子を含浸して作製することもできる。薬物の含浸効率が良いのは、コラーゲン微粒子を作製した後に薬物溶液に含浸する架橋後含浸である。 乳化時のpHは特に限定されず、使われるコラーゲン原料の製造方法に応じて変わる。コラーゲンは主に酸性水溶液で抽出される酸可溶化コラーゲンと、アルカリ水溶液で抽出されるアルカリ可溶化コラーゲンに分けられる。本発明に用いられるコラーゲン溶液が酸可溶化コラーゲンの場合、乳化時のpHは2〜6が好ましい。pH2以下の場合、コラーゲン分子が加水分解を受ける場合があり好ましくない。一方、本発明で用いられるコラーゲンがアルカリ可溶化コラーゲンの場合、pHは5.5〜10であることが好ましい。pHが5.5より低い場合、コラーゲンが十分に可溶化されない場合がある。pH10より高い場合はコラーゲン分子が加水分解を受ける場合があり好ましくない。 乳化時のコラーゲン溶液の濃度としては、コラーゲン溶解性、溶液の粘性という観点から0.01〜10%(w/v)の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.5〜2%(w/v)である。 乳化の際、治療用薬物およびコラーゲンを含む溶液に油性液状有機化合物および乳化剤を添加して混合すればよい。油性液状有機化合物(いわゆる油)としては、一般に水と混じらない可燃性の物質であり、植物性、動物性、あるいは鉱物性のものがあるが、本発明においては特に限定されず、流動パラフィン、木ロウ、密ロウ、米ぬかロウ、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、カルバナワックス等を用いることができ、この中でも流動パラフィンが好ましい。乳化剤は、いわゆる界面活性剤のことを言い、両親媒性分子であれば特に限定されず、アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤、両面界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を用いることができる。本発明においては、ソルビタンエステル類、ポリソルベート類等の界面活性剤を用いることができ、好適にはソルビタンモノラウレート(Span20)を用いればよい。 乳化によりできたコラーゲン微粒子を架橋剤を用いて架橋させる。架橋剤としてはタンパク質を架橋でき、水溶性を有するものであれば特に限定されない。中でも、アルデヒド系、カルボジイミド系、エポキシド系およびイミダゾール系架橋剤が経済性、安全性、および操作性の観点から好ましく用いられる。特に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド・スルホン酸塩などの水溶性カルボジイミドを使用するのが好ましい。 架橋剤の濃度は特に限定されるものではない。架橋剤濃度によってコラーゲンの生分解性速度や徐放速度が変化する場合があるため、用途に応じて濃度を決定すればよい。終濃度として、0.01mM〜1Mの範囲であることが好ましい。 乳化時にはコラーゲンの線維化を惹起する溶媒を混ぜておいてもよい。例えば、工業用として利用されているリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、Tris等の緩衝能を有する塩水溶液をあらかじめ混ぜておいても良い。 乳化時の温度は使用されるコラーゲン原料の変性温度に応じて変わる。例えば、ウシやブタのコラーゲンは変性温度が37〜40℃であるため、それ以下の温度で乳化するのが好ましい。 薬物含浸コラーゲン微粒子の平均粒径は0.01〜200μm、好ましくは5〜10μmである。 コラーゲン微粒子は後記の実施例に記載の方法により製造することができる。 水性溶媒にコラーゲンを溶解したものを用いて油中水滴エマルション(Water in Oil Emulsion:W/Oエマルション)を調製し、これを架橋して作製した微粒子を薬剤等の生分解性担体として利用しようとする試みもなされている。例えば、特開2006−291198号公報では、酸性の水性溶媒によるコラーゲン溶液を用いて油中でエマルションを調製し、これをコラーゲン小球体として回収した後に架橋を施した架橋型コラーゲン小球体とその製造方法が開示されている。また、特表平8−502922号公報では、ほぼ均質な溶液を調製し、連続相においてエマルションを形成し、これを微粒子として回収・洗浄した後に架橋したマイクロカプセルとその製造方法が開示されている。 これらの方法は、W/Oエマルションを回収した後に架橋することにより架橋型コラーゲン小球体やマイクロカプセルを作製しており、本発明のような連続相においてW/Oエマルションを架橋したものではない。また、これら架橋型コラーゲン小球体やマイクロカプセルの徐放性については何ら示されていない。 乳化時のコラーゲンは、1〜50%(w/v)、好ましくは10〜20%(w/v)、油性液状有機化合物は50〜99%(w/v)、好ましくは80〜90%(w/v)、乳化剤は0.01〜10%(w/v)、好ましくは0.1〜2%(w/v)、の濃度で用いればよい。また、治療用薬物の添加量は、眼病の種類、薬物の種類に応じて適宜決定すればよい。PEGペレット 上記の方法で作製した薬物含浸コラーゲン(コラーゲンゲルでもコラーゲン微粒子でもよい)をPEGに内包させ、薬物含浸コラーゲンを含むPEGペレットを作製する。薬物含浸コラーゲンを包埋するPEGペレットは、薬物含浸コラーゲン、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)および光重合開始剤を混合し、鋳型となる容器に入れUV光を照射し硬化させればよい。光硬化性のPEGであれば、PEGDMの代わりに、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)等を使用することができる。本発明においては、このような光硬化性のPEGをPEGという場合があり、PEGペレット、多孔性PEGシート、PEG箱のように表現する。 また、PEGDMの分子量は特に限定されない。ここでいうPEGDMはエチレングリコールモノマーが2個以上重合したポリマーであり、モノマーが3つのトリエチレングリコールジメタクレート(TEGDM)やモノマーが4つのテトラエチレングリコールジメタクリレートのような低分子量PEGDMも含まれる。また、分子量の異なるPEGDMを混ぜたものを使用してもよい。すなわち、薬物の透過性、特に1kDa以下の低分子薬物の透過性は、コラーゲン微粒子だけでなく、PEGDMシート中のPEGDMの分子量によっても制御することができる。たとえば、モノマーが低分子ほど後記のPEGシートからの薬物透過性が抑制される。すなわち、TEGDM(Fw=286.33)とPEGDM(Mn=750)を100:0で混ぜれば薬物透過性はほとんど生じない。逆に0:100で混ぜれば低分子薬物は透過しやすくなる(図16)。 光重合開始剤は、使用する光源の波長により、公知の光重合開始剤を適宣選択して使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン(2−フェニル−2−ヒドロキシアセトフェノン)、ベンゾインアルキルエーテル等を挙げることができる。 この際、例えば、0.1〜10mg/ml、好ましくは1mg/mlのPEGDM、1〜100μg/ml、好ましくは10μg/mlの光重合開始剤の溶液を調製し、該溶液と上記薬物含浸コラーゲン微粒子を容積比1:1で混合すればよい。UV光の強度は、1〜20mW/cm2であり、照射は1〜5分行なえばよい。多孔性PEGシート 多孔性PEGシートは、薬物が透過し得る孔を有するシート状のPEGである。多孔性PEGシートは、薬物を含まないコラーゲン微粒子を多孔の鋳型(ポロゲン)として用い、PEGDM溶液、コラーゲン微粒子および光重合開始剤を混合し、UV光を照射し硬化させたのち、コラーゲン微粒子をコラゲナーゼ等のタンパク質分解酵素や加熱によるコラーゲン変性処理よって消化することにより製造することができる。また、コラーゲン微粒子自体に薬物透過性があるため必ずしも酵素による消化や変性処理を行う必要はない。用いるPEGDMの平均分子量は、高分子薬物の透過制御をする場合は300〜6000、好ましくは500〜1000である。また、低分子薬物の透過制御をする場合は50〜6000、好ましくは100〜1000である。ポロゲンとして用いるコラーゲン微粒子の平均粒径は、用いる薬物の分子量の大きさに応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.01〜200μmである。光重合開始剤は上述のものを用いればよい。PEGDM溶液とコラーゲン微粒子を混合するとき、例えば、0.1〜10mg/ml、好ましくは1mg/mlのPEGDM、1〜100μg/ml、好ましくは10μg/mlの光重合開始剤の溶液を調製し、該溶液とコラーゲン微粒子を容積比1:1で混合すればよい。この際、コラーゲン微粒子の濃度を高くするほど、微粒子密度が大きくなり、多孔性PEGシートの孔密度も大きくなる。好ましい多孔性PEGシート状の孔サイズは、0.01〜200μmであり、孔の密度は10〜2000個/cm2である。混合液をよく攪拌し、コラーゲン粒子を均一に分散させた後に、UV光を照射することにより、PEGDMが硬化する。その後PEGDMをコラゲナーゼ溶液に浸漬して、コラーゲン粒子を消化すればよい。また、PEGDMを50℃以上の溶媒に浸漬してコラーゲンを変性処理してもよい。この際用いるコラゲナーゼの濃度は、限定されないが、例えば1〜1000U/ml程度である。また、加熱の温度はコラーゲンが変性する温度であれば特に限定されないが、40〜60℃程度である。 この際、シート状に成型するためには、薄膜を形成するための鋳型となる容器に入れて製造すればよい。多孔性PEGシートの厚さは、100〜1000μmである。 また、多孔性PEGシートを箱型の形状に作製してもよい。例えば、箱の底面の厚みが100〜1000μmとなるように箱を作製し、そこに薬物を入れてから、以下に説明するPEG箱と組合せてもよい(図17)。本発明において、箱型の形状の多孔性PEGシートも多孔性PEGシートという。シート状の多孔性PEGシートも箱型形状の多孔性PEGシートもPEG箱に対して蓋として機能する。また、多孔性PEGシートで作製した箱を徐放箱ということがある。 多孔性PEGシートの作製法の概要を図1に示す。 また、多孔性PEGシートは塩を用いた公知のソルトリーチング法によっても作製することができる(特表2002−541925)。ソルトリーチング法においては、PEGDMをUV照射により硬化させるときに塩化ナトリウム粒子(NaCl)を混合し、硬化させた後、NaClを浸出除去すればよい。また、マイクロバブルを孔の鋳型に使うことも出来る。例えば、シラス多孔質ガラス膜(SPG膜、SPGテクノ株式会社)を用いてエアーバブリングした溶媒(例えば水)をPEGと混ぜてからUV硬化させると、気泡が孔となり、PEGを多孔化することができる。このとき、SPG膜のポアサイズを変えることで、気泡のサイズ、すなわち孔のサイズを変えることができる。PEG箱 PEG箱またはPEG容器は、上記の薬物含浸したコラーゲン(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子)、薬物含浸したコラーゲンのPEGペレット、および薬物溶液を納めるための箱状に加工したPEGである。ここで、箱型とは内部に物を納めることが可能な形をいい、底面と側面からなる。箱の鋳型を作製し、該鋳型中でPEGDMと光重合開始剤を混合し、UV光を照射し、硬化させ、鋳型から抜き去ることにより箱型のPEG箱を作製することができる。ここで、PEG箱とはPEGでできた構造物であって、内部に薬物含浸したコラーゲン(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子)、薬物含浸したコラーゲンのPEGペレット、薬物溶液を納めるための凹部があり、その凹部を上記の多孔性PEGシートで覆うことができる構造を有するものをいい、形状は通常略立方体であるが、これには限定されず、略円盤状、略球状、略円筒状等の形状のものも包含する。また、薬物を一方向性に徐放するためには、このPEG箱は薬物を全く透過させないものが好ましく、そのためには低分子量PEGDMであるTEGDMを用いてPEG箱を作ることが好ましい。TEGDMは低分子薬物を全く透過させないことが分かっている(図16)。PEGカプセル 上記のPEGでできたPEG箱中に、薬物含浸したコラーゲン(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子)、薬物含浸したコラーゲンのPEGペレット、薬物溶液を配置して充填し、箱の開口部を覆うように上記の多孔性PEGシートを蓋として載せ、UV光を照射すると、光硬化により、PEG箱に多孔性PEGシートでできた蓋が接着され、PEGでできた箱型のカプセル中に薬物含浸したコラーゲン(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子)、薬物含浸したコラーゲンのPEGペレット、薬物溶液が納められたPEGカプセルが完成する。該PEGカプセルにおいて、多孔性PEGシートでできた蓋部分に孔を有し、その孔を通して内部の薬物が徐々に放出される。すなわち、箱状のカプセルの一つの面を通して一方向性に内部の薬物が徐放される。ここで、カプセルという語は、薬物含浸したコラーゲン(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子)、薬物含浸したコラーゲンのPEGペレット、薬物溶液がPEG箱と多孔性PEGシート(蓋)により封入されていることを示すために用いられており、カプセルという語により、形状等の構造が限定されるものではない。本発明のPEGカプセルは、薬物含浸したコラーゲン(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子)、薬物含浸したコラーゲンのPEGペレット、薬物溶液を内部に含む、PEGでできた箱型のカプセルであって、カプセルの蓋に部分的に薬物透過性の孔を有する。 本発明のDDSにおいては、薬物を含浸させたコラーゲン(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子)自体が徐放性を有し、コラーゲンから薬物が徐放される。また薬物を含浸させたコラーゲンがPEG中に内包されたPEGペレットにおいては、コラーゲンと体液との接触が抑えられるため、コラーゲン中の薬物の分散がさらに抑制され、徐放期間を長期化することができる。さらに、薬物含浸コラーゲンやそれをPEG中に内包したPEGペレットをPEGカプセル中に充填することにより、薬物は最初にコラーゲンまたはPEGペレットからPEGカプセル中に徐放され、次いでPEGカプセル中から多孔性PEGシート部分を介して外部に徐放される。すなわち、本発明のDDSは2段階の徐放が起こる段階的徐放システムである。従って、本発明のDDSは、初期バーストを抑制した長期徐放を可能とする薬物リザーバー型DDSである。例えば、薬物をコラーゲン微粒子に含浸させることにより徐放速度を1/5〜1/20程度に低下させることができ、さらにコラーゲン微粒子をPEGペレット化することにより、徐放速度をさらに1/2程度低下させることができる。徐放速度は後記の実施例の方法で測定することができる。 PEGカプセルの大きさは自由に設計することができるが、強膜に移植することを考慮すると、好ましくは厚さ1mm以下、最大幅は5mm以下、最も広い面の投影面積は1cm2以下である。 本発明のPEGカプセルの模式図を図2および図17に示す。図2および図17Aは、PEG箱を多孔性PEGシートでできた蓋で覆ったものを示し、図17Bは、PEG箱を箱型の多孔性PEGシートでできた蓋で覆ったものを示す。図17AおよびBに示すように、PEG箱と多孔性PEGシートはPEGDMを糊として用い接着される。 なお、PEG箱や箱型の多孔性PEGシートを作製する際、PEG箱や箱型の多孔性PEGシート中に複数の区画を設けることも可能である。例えば、複数の区画がアレイ上に並んだPEGカプセルシートとして作製することができる(図13A−1および13A−2)。また、PEG箱や多孔性PEGシートを区画を画定できるように製造してもよい。例えば図13A−3および13A−4には、区画数が2、3および4のものが示されている。図13A−3および13A−4において、箱型の多孔性PEGシートとPEG箱が示されている。PEGカプセル内を区画化することにより、1つのカプセル中に複数の薬物を充填することができ、複数の薬物を徐放するDDSを作製することができる。またこれはコラーゲンに薬剤を内包させるときに目的の薬剤を別々に内包しPEG箱に挿入することでも可能になる。さらに、この際、各薬物の充填形状、例えば、コラーゲンへの含浸のさせ方(コラーゲンゲルやコラーゲン微粒子など)やPEGペレットへの含ませ方を変えることにより、複数の薬物の個々の徐放速度を制御することができ、複数の薬物を異なる速度で放出することが可能になる。 本発明の対象疾患は特に限定されないが、体内に持続的な薬物投与が望まれる疾患、特に局所的に持続的な投与が望まれる疾患が挙げられる。このような疾患として、癌、炎症性疾患、変性疾患等が挙げられる。例えば、眼病が挙げられ、眼病として例えば、遺伝子や環境因子などの多因子が関与する網膜色素変性、加齢黄斑変性、緑内障などと、網膜動脈閉塞症、網膜静脈分岐閉塞症、糖尿病網膜症などの網膜血管病変、さらにぶどう膜炎などの脈絡膜・網膜・硝子体に炎症や障害が及ぶ疾患が挙げられる。網膜色素変性症は、網膜神経細胞が原因不明に進行性に障害される疾患であり、難病(特定疾患)に指定されている。網膜色素変性症は、進行性に視細胞が変性する眼病であり、さまざまな遺伝子異常、炎症、免疫反応などによって視細胞がアポトーシス(細胞死)などを起こす。加齢黄斑変性は、加齢に伴って黄斑部に新生血管などが出現する眼病であり、網膜外側の脈絡膜から新生血管が発生し、血液が漏れ出し、網膜が障害される特定疾患である。緑内障は特徴的な視神経乳頭変化と視野異常を呈する進行性の病気である。かつては眼圧が高いことが原因と考えられていたが、眼圧が正常範囲であっても緑内障に罹患している患者が多いことが確認され、視神経乳頭の脆弱性も緑内障の原因として考えられている。しかし眼圧は緑内障進行の最大のリスクファクターであり、緑内障治療の基本は薬物によって眼圧を下げることで視野障害の進行を止めるという方法がとられる。最近日本では失明原因の1位となっている。その他、治療に抵抗性の網膜動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、糖尿病網膜症、ぶどう膜炎等も対象となる。 本発明のDDSにおいて、上記眼病等の疾患の治療のために用いられる薬物として、血管新生を抑制する薬物、神経細胞の成長を促進する薬物、神経細胞を保護する薬物、ステロイド剤、緑内障治療薬、抗炎症剤、抗真菌剤、抗癌剤等が挙げられる。さらに、血管新生抑制剤としてはバソヒビンなど、神経細胞成長促進剤としては、BDNF(Brain−derived neurotrophic factor)など、ステロイド剤としては、ベタメサゾン、ハイドロコルチゾンなどが挙げられる。緑内障治療薬としては、主に眼圧下降を主眼とした薬物である、プロスタグランジン関連薬(ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ウノプロストンなど)、交感神経遮断薬(マレイン酸チモロール、ゲル化チモロール、塩酸カルテオロール、塩酸ベタキソロール、塩酸レボブノロール、ニプラジロール、塩酸ブナゾシンなど)、炭酸脱水酵素阻害薬(ドルゾラミド塩酸塩、ブリンゾラミドなど)などが挙げられる。 本発明のDDSとしての薬物を含むPEGカプセルは、体内にインプラントとして挿入する。挿入は疾患部位の近傍が好ましい。例えば、眼病治療用DDSの場合、強膜にインプラントとして挿入する。ここでいう強膜とは、脈絡膜より上で結膜より下の部分、すなわち、強膜下、強膜内、強膜上、結膜下、脈絡膜上をいう。移植には硝子体手術を必要とせず、安全かつ簡便に移植することができる。すなわち、本発明のDDSは、非侵襲性のDDSである。具体的には、眼の外側の強膜にPEGカプセルを移植すればよい(図3)。この際、薬物が放出される多孔性PEGシートからなる蓋部分を眼球側に接触するように移植する。PEGカプセルには、PEGカプセルを体内に固定するための手段が設けられていてもよい。固定は、例えば手術用縫合糸等の糸で生体に接触した状態で固定すればよく、PEGカプセルに糸をくくり付けるための穴や凹部もしくは凸部を設ければよい。このようなPEGカプセルを図18に例示する。図18Aに例示するPEGカプセルには強膜に固定するための縫合用の穴があり、ここに糸を通して強膜に縫合することによってカプセルを固定することができる。図18Bに例示するPEGカプセルはカプセルの角を除去した凹部を有し、凹部を糸で十字に縛って固定することができる。このように移植することにより、多孔性PEGシートの孔から放出された薬物は他の部分に拡散することなく、強膜を通して眼内部に到達する。図19はウサギ眼の強膜に移植した様子を示す。図20は眼内薬物移行性を前房水中の蛍光色素強度によって測定した結果である。1ヶ月以上持続的に非移植眼よりも優位に高い蛍光強度を示しており、眼内に薬物が持続的に移行していることが示されている。1ヶ月後においても、強膜上のデバイス中には蛍光色素が十分に残っており、数か月以上の持続的徐放が可能である(図21)。すなわち、本発明のDDSは、経強膜DDSである。 カプセルからは薬物が長期間にわたって徐放され、持続的に疾患部位に薬物を局所的に投与することができる。さらに、本発明のPEGカプセルは除去も容易であり、治療が不要になった場合や副作用が生じた場合には、手術をすることなく取り外すことができる。すなわち、本発明のDDSは脱着容易なDDSである。 薬物の投与量、投与期間は、PEGカプセル中に含ませる薬物の量、コラーゲン微粒子やコラーゲンゲルを形成するコラーゲンの量や架橋度、PEGペレットを形成するPEGの量や架橋度、多孔性PEGシート状の孔の密度、多孔性PEGシート中のPEGDMの分子量、PEGカプセルの形状等により制御することができる。特に、多孔性PEGシートの孔密度を調節することにより、多孔性PEGシートからの物質透過性を制御することにより、投与量、投与期間を制御することが可能になる。また、眼病の種類や重篤度に応じて、投与量、投与期間を適宜設定すればよい。 例えば、本発明のDDSを用いることにより、0.01〜100mgの薬物が少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月、さらに好ましくは少なくとも1年、さらに好ましくは少なくとも2年、さらに好ましくは少なくとも3年、さらに好ましくは少なくとも4年、さらに好ましくは少なくとも5年にわたって投与される。 本発明は、本発明の薬物徐放性インプラントや該インプラントを体内に移植することを特徴とする持続的ドラッグデリバリーシステムを用いて生体内で治療用薬物を徐放させることにより、患者に投与して、眼病等の疾患を治療する方法をも包含する。 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。1.FITC−Dextran 40kDa(FD40)を含浸したコラーゲン微粒子の作成 以下の作業はすべて室温で行った。1%コラーゲン水溶液(日本ハム、豚皮由来)10mlを100mlビーカーに入れた。流動パラフィン(WAKO)50mlを加えて、攪拌機(アズワン、High Power Mixer、P−2)を用いて600rpmで5分攪拌した。5%Span20 in 流動パラフィンを3ml加えてさらに600rpmで5分攪拌した。20mg/mlのFD40水溶液を1ml加えて600rpmで5分攪拌した。1%の水溶性カルボジイミド(WAKO、WSC)水溶液を1ml加えて600rpmで60分攪拌した。50%エタノール(WAKO)を50ml加えて600rpmで5分攪拌した。混合物を3500rpmで5分遠心した。上清を捨てて、新しい50%エタノールを30ml加えて30秒間ボルテックスした。この遠心と50%エタノール添加の作業を2回繰り返した。遠心後のコラーゲン微粒子(Coll粒子)ペレットにPhosphate buffered saline(PBS)を30ml加えて30秒間ボルテックスした。混合物を3500rpmで5分遠心した。上清を捨てて、新しいPBSを30ml加えて30秒間ボルテックスした。混合物を3500rpmで5分遠心した。この遠心とPBS添加の作業を2回繰り返した。遠心後のペレットを以下の作業で使うFD40含浸Coll粒子(Coll−FD40)とした。Coll−FD40の平均粒径は8.7μmであった(図4)。以下で説明する多孔性ポリエチレングリコールジメタクリレート(Poly(ethyleneglycol)dimethacrylate(PEGDM))シート作成におけるColl粒子はFD−40を含浸しないものを用いた。これは上述の作業で、20mg/mlのFD40水溶液を加える作業を省いた以外は全て同じ方法で行った。このColl粒子の平均粒径はColl−FD40と同じ8〜10μmであった。2.Coll−FD40を内包したPEGDMペレットの作製 上述のColl−FD40をPEGDM(Aldrich、Mn=875)内に埋包したPEGDM/Coll−FD40ペレットの作製を行った。まず1mg/ml PEGDM、10μg/ml 2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン(2−Hydroxy−2−methyl−propiophenone)のPEGDM水溶液を調製した。次にこのPEGDM水溶液とColl−FD40を体積比1:1で混合した。この混合物を鋳型に流し込みUV光を照射することでPEGDMを硬化させて、ペレット(PEGDM/Coll−FD40)を得た。3.多孔性PEGDMシートの作製 Coll粒子をポロゲン(多孔化用の鋳型)に用いて多孔性PEGDMシートの作製を行った。まずNC工作機械を使用して、内寸が50mm×50mm×0.3mmの薄膜用鋳型を作製した。1mg/ml PEGDM、10μg/ml 2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンのPEGDM水溶液に、Coll粒子を100、200、300、400、500、1000mg/mlで混合した。各混合物を薄膜用鋳型に注ぎ、上部にスライドガラスで蓋をし、UV光(11.85mW/cm2)を90秒間照射してPEGDMを硬化させた。その後、鋳型より抜き取ることでPEGDM薄膜を得た。さらに、このPEGDM薄膜を50U/mlのコラゲナーゼ in PBSに48時間浸漬してColl粒子を酵素分解し、多孔性PEGDMシートを得た。各Coll粒子濃度の電子顕微鏡写真を図5に示す。Coll粒子部分がポアとなっていることがわかった。また、写真から孔密度を測定した結果、Coll粒子量と孔密度が相関関係にあることがわかった(図6)。4.多孔性PEGDMシートの物質透過性 薬物のほとんどは40kDa以下であるため(ステロイド 0.3kDa、BDNF 27kDa、VEGF 38kDa、Vasohibin 32kDa)、FD40をモデルドラッグとして用いて多孔性PEGDMシートの物質透過性を評価した。セルカルチャーインサート(クラボウ、インターセルTP、以下インサートと呼ぶ場合がある)の底面についているメンブレンを剥がし、上述の方法で作製した多孔性PEGDMシートを接着剤(アロンアルファ)を用いて貼り付けた。このインサートを24ウェルセルカルチャープレート(グライナ)に配置し、インサート内に5mg/mlのFD40水溶液を0.1ml入れた。さらに下部のウェルにPBSを0.4ml入れて、37℃でインキュベートを行った。 多孔性PEGDMシートを透過したFD40の量を下部ウェルのPBSの蛍光強度を測定することによって推測した。多孔性PEGDMシートの物質透過性を評価する方法の概要を図7に示す。所定時間インキュベート後、下部ウェルからPBSを0.1mlサンプリングしてブラックタイプの96ウェルマルチプレート(SUMILON)に移動した。PBS中のFD40を蛍光プレートリーダー(アセント、フルオロスキャン、ex.485nm/em.538nm)で測定した。サンプリング後は下部ウェルのPBSをアスピレートして除去し、新しいPBSを0.4ml加えて再インキュベーションした。インキュベート中はウェル内のPBSおよびFD40が蒸発しないように、プレートの淵をビニールテープで隙間なくシーリングした。サンプルの蛍光測定値はあらかじめ作成しておいたFD40の検量線(1000μg/mlのFD40水溶液の1/2希釈系列を蛍光強度測定したもの)から、FD40濃度(μg/ml)に換算した。また、グラフはFD40の積算値として示した(cumulative release)。徐放性グラフを図8に示す。Coll粒子の濃度(孔密度)依存的に、FD40透過性が変化した。これはColl粒子の濃度を変えることによって、多孔性PEGDMシートからの物質透過性(徐放性)を制御できることを示している。また、500mg/ml(1197個/mm2)以下の多孔性PEGDMシートでは初期バーストが抑制されていた。5.Coll−FD40およびPEGDM/Coll−FD40のFD40徐放性 Coll−FD40およびPEGDM/Coll−FD40からのFD40の徐放性を評価した。未処理のセルカルチャーインサートにFD40溶液(5mg/ml)を100μl入れたもの、Coll−FD40を100mg入れたもの、およびPEGDM/Coll−FD40を100mg入れたものを準備した。なお、PEGDM/Coll−FD40中のColl−FD40量と同等になるように、Coll−FD40は水で2倍希釈してから使用した。インサートのポアは0.45μmであり、FD40の透過性に全く影響はない。これらのインサートを24ウェルセルカルチャープレート(グライナ)に配置し、下部ウェルにPBSを0.4ml入れて、37℃でインキュベートを行った。所定時間後、下部ウェルからPBSをサンプリングし、上述の通り蛍光強度を測定して透過したFD40量を推定した。図9に徐放性評価の方法の概要を示す。徐放グラフを図10に示した。FD40溶液は試験直後に全てが透過したためグラフには載せていない。一方、FD40をColl粒子に含浸することによって徐放を抑制した長期間の徐放性を示すことがわかった。さらにColl粒子をPEGDMとペレット化することによってさらに徐放速度を抑制できることがわかった。6.多孔性PEGDMシートを介したColl−FD40およびPEGDM/Coll−FD40のFD40徐放性 上述の多孔性PEGDMシートを貼り付けたインサートをPEGDMカプセル内と仮定して、インサートからのFD40徐放性を評価した。インサート内にColl−FD40およびPEGDM/Coll−FD40を入れて、徐放性の比較を行った。 上述の多孔性PEGDMシート(1000mg/ml)貼付インサート上にColl−FD40を100mg入れたもの、およびPEGDM/Coll−FD40ペレット(100μl)を入れたものを準備した。このとき、PEGDM/Coll−FD40中のColl−FD40量と同等になるように、Coll−FD40は水で2倍希釈してから使用した。これらのインサートを24ウェルセルカルチャープレート(グライナ)に配置し、下部ウェルにPBSを0.4ml入れて、37℃でインキュベートを行った。所定時間後、下部ウェルからPBSをサンプリングし、上述の通り蛍光強度を測定して透過したFD40量を推定した。徐放グラフを図11に示した。図11から、FD40をColl粒子に含浸することによって徐放速度を約1/10に抑制できることがわかった。さらにColl粒子をPEGDMとペレット化することによってさらに徐放速度を約1/2に抑制できることがわかった。以上より、PEGDM/Coll−FD40ペレットは初期バーストが抑制したリニアな徐放特性を長期間示すことがわかった。この結果は、カプセル内に充填する担体の形状を変えることで(溶液、粒子、PEGDMペレット)、徐放特性を制御できることを示している。 本発明ではColl−FD40およびPEGDM/Coll−FD40ペレットを1段階徐放DDSと見なし、2段階徐放DDSである多孔性PEGDMシートを介したPEGDM/Coll−FD40ペレットからの薬物徐放(多孔性PEGDMシート;0、100、500mg/ml)との比較結果を図12に示す。図12より、PEGDMペレット化と多孔性PEGDMシートを組み合わせることで、初期バーストを抑制したリニアな徐放を長期間(推定値で5.43年:100mg/ml、1.98年:500mg/ml)に渡って達成できることがわかった。7.多孔性PEGDMシートを有するPEGDMカプセルの作製 前述の薄膜用鋳型の作製と同様に、NC工作機械を用いて、格子状に配置した箱(1ウェルの内寸:5.0mm×5.0mm×0.4mm)の鋳型を作製した(図13A−1および13A−2)。この鋳型に1mg/ml PEGDM、10μg/ml 2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンのPEGDM水溶液を流しこんだ。鋳型にスライドガラスで蓋をし、UV光(11.85mW/cm2)を2分間照射しPEGDMを硬化させた。その後、鋳型より抜き取ることでPEGDM箱を得た。このPEGDM箱内に、PEGDM/Coll−FD40を配置し、前述した多孔性PEGDMシート(500mg/ml)で蓋をし、UV光を照射することで多孔性PEGDMシートおよびPEGDM箱を接着させた。その後、アレイ化した各ウェルを任意の個数切り離すことで、PEGDMカプセルを作製した(図13A−1および13A−2ならびにB)。図13A−1および13A−2はアレイ化したPEG箱の図であり、図13B−1および13B−2は単独のPEG箱の図である。図14Aおよび14Bの電子顕微鏡(SEM)画像から蓋と箱が隙間なく接合されていることを確認した。 さらに、作製したPEGDM箱型カプセルからのFD40の徐放特性の確認を行った。作製したPEGDMカプセルをシャーレ内に配置しPBSを1ml入れ37℃で静置した。各時間にシャーレからサンプリングしたPBSを蛍光プレートリーダー(アセント、フルオロスキャン、ex.485nm/em.538nm)を用いて測定し、PEGDMカプセルからの徐放特性を評価した。図15AおよびBに2回の結果のそれぞれを示した。いずれの結果も、徐放量がセルカルチャーインサート試験の結果(図12のPEGDM/Coll−FD40+多孔性PEGDMシート(500mg/ml))とほぼ同一の徐放量と徐放特性を示したことから、PEGDMカプセルが機能することが示された。カプセル内をColl−FD40やFD40溶液に変更した場合も、図11や図12と同様の徐放特性を示すことが予想される。 また、BDNFを充填したカプセルからの徐放性を測定した。ヒトリコンビナントBDNF(rhBDNF、和光純薬)をコラーゲン微粒子に20μg/mlになるように含浸し、0、100、300、500mg/mlのコラーゲン微粒子を混ぜた多孔性PEGシートでカプセル化したときの徐放特性を図23に示す。多孔性PEGシート中のコラーゲン微粒子濃度依存的に徐放性が制御できることがわかった。また、6週間にわたって初期バーストを伴わずにゼロ次徐放することがわかった。8.PEGDMの分子量を変えたときの多孔性PEGDMシートの低分子薬物徐放性 PEGDM(Mn750)とTEGDM(Mw286.3)の混合比を変えたシートを作成し、低分子薬物の徐放性を評価した。コラーゲン微粒子は混ぜたものと混ぜていないものを評価した。低分子薬物はモデルとしてフルオレセインナトリウム(FA、臨床で使われる蛍光造影剤)を用いた。PEGDM:TEGDM=100:0、95:5、90:10、80:20、50:50、0:100の6パターンでPEGシートを作製しFAをカプセル化し、PBSに浸漬して定期的に蛍光強度を測定した。結果を図16に示す。TEGDM混合比が増加するほどFAの徐放性が抑制された。この徐放特性はコラーゲン微粒子の有無に関係なかった。すなわち、低分子薬物の徐放制御にはPEGDMの低分子化が効果的であることがわかった。9.ウサギ眼への移植 FAのPEGペレットを充填したカプセル(多孔性PEGシートのコラーゲン微粒子濃度:500mg/ml)をウサギ眼の強膜に移植した。片眼は移植なしのコントロールとした。結膜に5mm程度の切開を作ってそこから角膜輪部2〜15mmの部位にカプセルを移植した。カプセルを縫合して固定した。最後に結膜を縫合して移植を終了した。1週間おきに前房水を100μl回収し、蛍光プレートリーダーで蛍光強度を測定した。また、蛍光カメラで強膜に移植したデバイス中の蛍光色素や徐放された色素の分布を撮影した。その結果、1ヶ月以上に渡って有意にカプセル移植群は高い前房水の蛍光強度を示した(図20)。これは眼内の硝子体に薬物が移行しその一部が前房に移行したものと考えられるため、眼内に薬物が移行していることを示唆するデータである。また蛍光カメラでは、デバイス内と周囲に蛍光が確認され、移植部位に局所的にかつ持続的に薬物が徐放されていることが示唆された(図21)。さらに、移植3日後の組織を評価した結果、FA、FD40ともに強膜(SC)と網膜下(RP)に強い蛍光が観察され、薬物が網膜へ届いていることがわかった(図22)。図22において、細胞核(青色の蛍光)とモデルドラッグ(緑色の蛍光)の蛍光が観察される。図22中、*印はPEGカプセルがあった位置を示す。また、RP(網膜色素上皮)とSC(強膜)付近の白い帯状の部分がモデルドラッグの緑色蛍光(FA)を示し、RE(網膜)及びRPとSCの間の白い点状の部分が細胞核の青色蛍光(DAPI)を示す。図22はモデルドラッグがRPまで達していることを示している。ドラッグがRPまで到達するとREにドラッグが供給される。RPはバリア機能が高いためここで色素が止まり濃縮されている。10.移植後のカプセルの構造評価 1ヶ月移植したカプセルを取り出してSEMによる構造評価を行った。カプセルは強膜から容易に取り外して出来た。パラホルムアルデヒド固定、オスミウム固定、エタノール脱水、臨界点乾燥、オスミウムコートによってSEMサンプルを調製し、SEM観察を行った(5kV)。写真を図24に示す。PEG箱表面はほとんど生分解が起こっておらず、生体との反応も弱く、生体適合性が高いことが示された(図24A)。また、移植にはコラーゲン微粒子を消化しないで残しておいた多孔性PEGDMシートでカプセル化したものを使用したが、コラーゲン微粒子も分解せずに残っており(図24B)、炎症性細胞の浸潤はほとんどなく、生体適合性が良好であった。非分解型の本カプセルDDSは長期に渡って徐放性能を維持できると考えられる。 本実施例より、本発明は以下の特徴を有することがわかった。(1) カプセルの多孔性PEGシートの孔密度および内包薬物の充填形状を変更することによって、徐放特性を変更可能(2) 初期バーストを抑制したリニアな徐放を長期間に渡って行える(3) カプセル内を区切ることによって、数種類の薬物を装填でき、かつそれらの充填形状を変えることによって徐放特性を変えることができる。すなわち、一度に異なる速度で複数の薬物を徐放できる。(4) コンパクトサイズの経強膜DDSであるため、異物感がない(5) 生体反応の弱いPEGを用いるため、炎症反応、線維化などの反応が起こらず、長期間生体内で機能する(6) 不要なときに除去・交換が可能である 本発明のDDSは、箱状のPEG内部に薬物を入れて多孔性PEGシートで蓋をした、該箱状のPEGをインプラントとして、疾患部位に移植する。薬物は箱状のPEGから多孔性PEGシートを介して徐放されるので、持続的に薬物を投与することができる。さらに、薬物を含浸したコラーゲン(ここで言うコラーゲンはコラーゲンゲルであってもコラーゲン微粒子であってもよい)、またはそれを光硬化性ポリエチレングリコール(PEG)に包埋したペレットを箱状のPEG内部に入れることにより、薬物はコラーゲンから箱状のPEG内部に徐放され、さらに多孔性PEGシートからPEG箱外に徐放されるので、薬物が初期バーストを伴わずに長期間に亘って徐放される。すなわち、本発明のDDSは、薬物の段階徐放を可能にする。コラーゲンは元々徐放基材として用いられているが、本発明のDDSによれば、PEGによってコラーゲンと溶媒との接触が抑えられるため薬物の溶媒への分散が抑制されて、徐放期間を長期化することが可能になる。また、コラーゲンはPEG内に把持されているので外へ分散・漏出することがなく、不要なときにPEGとともに除去することができる。すなわち強膜に移植した場合、外来通院中の処置で簡便に除去することができる。本発明のDDSにおいては、コラーゲンがカプセル中に閉鎖された状態で存在するが、該コラーゲンが生体に対して露出している場合、コラーゲンに細胞が接着し、線維形成、カプセル化、癒着等の生体反応が起こり得る。本発明のDDSにおいては、コラーゲンがPEG中に存在するため、コラーゲンが細胞と接触することがないので、生体反応が生じない。また、PEGは生体反応が弱い基材であり、PEGが生体反応を起こすこともない。 さらに、一方向にのみ徐放するこのDDSを治療部位の強膜側にパッチすることによって薬物が眼球内へ徐放され、変性網膜や緑内障を保護することができる。 本発明のDDSは、体内に持続的な薬物投与が望まれる疾患、特に局所的な持続的な投与が望まれる疾患に対して有効な長期徐放型のDDSであり、特に眼病等の疾患治療のための薬物を眼内等の疾患部位に持続的に送達するためのシステムであり、その徐放性により疾患部位への長期間に亘る薬物投与を可能にする。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 治療用薬物、治療用薬物含浸コラーゲンまたは治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットを内部に含む箱状のPEGに多孔性PEGシートで蓋をし、多孔性PEGシートを通して内部の薬物が徐放される構造を有するPEGカプセルである、薬物徐放性インプラント。 治療用薬物含浸コラーゲン、治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットが箱状のPEG内部に含まれる段階的徐放性インプラントである、請求項1記載の薬物徐放性インプラント。 含浸される治療用薬物が溶液、粉末状の粒子またはそれらの混合物である、請求項1または2に記載の薬物徐放性インプラント。 治療用薬物含浸コラーゲンがコラーゲンゲルまたはコラーゲン微粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。 治療用薬物含浸コラーゲンを包埋したPEGペレットが、薬物含浸コラーゲン、光硬化性ポリエチレングリコールおよび光重合開始剤を混合しUV光により硬化させ作製される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。 箱状PEGが光硬化性ポリエチレングリコールおよび光重合開始剤を混合しUV光により硬化させ作製される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。 多孔性PEGシートが、光硬化性ポリエチレングリコール溶液、コラーゲン微粒子および光重合開始剤を混合し、UV光を照射し硬化させたのち、コラーゲン微粒子を消化することにより作製される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。 光硬化性ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)およびポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)からなる群から選択される、請求項5〜7のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。 多孔性PEGシートが、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)とトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDM)を混合して作製される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。 眼病治療用であり、脈絡膜より上で結膜より下の部分すなわち強膜下、強膜内、強膜上、結膜下または脈絡膜上である強膜に移植される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。 眼病が遺伝子および環境因子を含む多因子が関与する疾患、網膜血管病変、または脈絡膜・網膜・硝子体に炎症や障害が及ぶ疾患である、請求項10記載の薬物徐放性インプラント。 遺伝子および環境因子を含む多因子が関与する疾患が、網膜色素変性、加齢黄斑変性および緑内障からなる群から選択され、網膜血管病変が網膜動脈閉塞症、網膜静脈分岐閉塞症および糖尿病網膜症からなる群から選択され、脈絡膜・網膜・硝子体に炎症や障害が及ぶ疾患がぶどう膜炎である、請求項11記載の薬物徐放性インプラント。 治療用薬物が血管新生を抑制する薬物、神経細胞の成長を促進する薬物、血管新生を促進する薬物、ステロイド剤、緑内障治療薬、抗炎症剤、抗真菌剤および抗癌剤からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬物徐放性インプラント。