タイトル: | 特許公報(B2)_咳嗽抑制効果を持つ血漿タンパク質 |
出願番号: | 2011525940 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 38/00,A61P 11/14 |
亀井 慎太郎 新留 亜沙美 濱本 高義 前田 浩明 平嶋 正樹 奥田 祥士 梅橋 操子 小川 幸恵 伊牟田 恵 赤池 紀生 高濱 和夫 和田 亮子 JP 5622728 特許公報(B2) 20141003 2011525940 20100805 咳嗽抑制効果を持つ血漿タンパク質 一般財団法人化学及血清療法研究所 000173555 学校法人銀杏学園 熊本保健科学大学 508120938 国立大学法人 熊本大学 504159235 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 山中 伸一郎 100156111 亀井 慎太郎 新留 亜沙美 濱本 高義 前田 浩明 平嶋 正樹 奥田 祥士 梅橋 操子 小川 幸恵 伊牟田 恵 赤池 紀生 高濱 和夫 和田 亮子 JP 2009182945 20090806 20141112 A61K 38/00 20060101AFI20141023BHJP A61P 11/14 20060101ALI20141023BHJP JPA61K37/02A61P11/14 A61K 38/00 A61P 11/00 A61P 11/14 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) PubMed 佐々木 昌博ら,喘息のヘパリン療法,呼吸,1995年,14(5),509-16 2 JP2010063329 20100805 WO2011016534 20110210 9 20130621 安藤 公祐 本発明は、活性化血液凝固第XI因子(以下、FXIaと称することもある)を有効成分として含有する鎮咳用医薬組成物に関する。 咳嗽(一般的に咳と呼ばれる)は異物吸入や気道内の痰の貯留などによって誘発される生体防御反応であるが、感冒や気道炎症など種々の病態においても発生する。咳嗽に伴う体力消耗は激しく、特に老人性の流行性感冒では直接の死因となるケースもある。また、咳嗽の持続は胸痛、尿失禁、睡眠不足、体力消耗等を引き起こし、日常生活に障害をきたすため、QOL低下をもたらす。咳嗽の分類としては、慢性気管支炎による咳嗽、急性上気道炎後の咳嗽、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の内服に伴う咳嗽、胃食道逆流による咳嗽、副鼻腔気管支症候群による咳嗽、咳喘息による咳嗽及びアトピー咳嗽等が知られている。咳嗽は臨床上多様性に富むと同時に、その発生メカニズムは必ずしも十分に解明されたとは言えず、従って有効に作用する鎮咳薬も乏しいと考えられる。 気道の感覚や咳発現などに関与する求心性神経は、有髄のAδ線維と無髄のC線維に大別される。そのうち、Aδ線維は咳反射の求心を担っており、気管喉頭部に多く分布する。Aδ神経の終末受容体にはRARs受容体(rapidly adapting recepter)が存在し、粘液などの機械的刺激に敏感に反応し、最終的に咳中枢を介して咳反射を引き起こすが、ブラジキニンなどの炎症関連メディエーターには殆ど影響を受けない。一方、C線維は下気道の末梢部に存在し、化学物質に対する感受性は高く、機械的刺激には応答しにくいとされる(非特許文献1)。 鎮咳薬として現在用いられる薬剤は、大別すると中枢性鎮咳薬と末梢性鎮咳薬に分けられる。中枢神経性鎮咳薬は、咳中枢を遮断することによって咳反射を抑制し鎮咳作用を発揮する。中枢性鎮咳薬はさらに麻薬性と非麻薬性に分類される。麻薬性の代表的な薬剤がコデイン、リン酸ジヒドロコデインである。麻薬性鎮咳薬は、鎮咳作用は強いが、習慣性をはじめ傾眠、便秘、悪心、嘔吐、頭痛、幻覚等の副作用を有しており、気道に炎症を伴う気管支喘息や閉塞性肺疾患では気管支筋収縮を誘発するため使用できないという問題がある(特許文献1、特許文献2)。非麻薬性鎮咳薬の代表的なものとしては、ノスカピン、塩酸アロクラミド、臭化水素酸デキストロメトルファンがある。非麻薬性鎮咳薬については、耐性、依存性がなく副作用が弱いと言われるが、咳中枢以外への影響は避けられず、めまい、眠気、頭痛などの副作用を生じる。また、鎮咳活性が麻薬性鎮咳薬に比して弱く、心因性咳や百日咳にはほとんど効果がない。 他方、末梢性鎮咳薬は、のど飴類、各種漢方薬、うがい薬、去痰剤、気管支拡張剤が分類される。それらは気管喉頭部や気管分岐部に作用して咳反射を抑えるが、中枢性鎮咳薬と異なり咳の発生を完全に抑えることはできず、その効果は比較的軽度である。その他、ステロイド剤(吸入、経口剤)、抗ヒスタミン剤などが用いられるが、これら薬剤を用いてもなお症状が改善せず慢性化する咳嗽があり、これに効果的な薬剤はほとんどない。近年、C繊維が難治性の慢性咳嗽に関与していることが示唆されている。そのため、医療現場では気管喉頭部と気管分岐部の刺激による咳嗽を抑える鎮咳薬が切望されているが、既存の鎮咳薬では有効ではない(特許文献3)。 FXIは血液凝固カスケードの接触層で機能する血漿タンパク質であり、分子量約8万の1本鎖糖タンパク質が、1個のS−S結合で結合した分子量約16万のホモダイマーで存在する。産生直後の未成熟FXIはシグナル配列が付加されているが、これが切除されて成熟FXIとなる。モノマーは約90個のアミノ酸残基からなる4つのアップルドメインを含むN末端側のH鎖と、プロテアーゼドメインであるL鎖から構成される。FXI単独では異物面に吸着する性質を持たず、高分子キニノーゲン(HMW−K)を介して異物表面上に結合した後、活性化血液凝固第XII因子(以下、FXIIaと称することもある)などによって限定的な水解を受け、FXIaへ活性化される。これまでFXIaの機能は、Ca2+存在下での血液凝固第IX因子(以下、FIXと称することもある)の活性化や、in vitroの特定条件下でのFXII、HMW-K及びプラスミノゲンの分解作用が報告されているが、鎮咳作用を有することの報告はかつてなかった。特開2000-344682号公報特開2003-327529号公報特開2007-099728号公報Physiology and Plasticity of Putative Cough Fibres in the Guinea Pig:Pulm. Pharmacol Ther.: Undem BJ, et al., 2002: 15: p193-198 上記のように、医療現場では気管喉頭部の刺激による咳嗽と気管分岐部の刺激による咳嗽とをともに抑える鎮咳薬が切望されているが、既存の鎮咳薬では気管喉頭部の刺激による咳嗽には有効であるが、気管分岐部の刺激による咳嗽を十分に鎮静化することはできなかった。本発明は気管喉頭部と気管分岐部とのどちらの刺激による咳嗽をも鎮静化することの可能な新規な鎮咳薬を提供するものである。 ヒト血漿中にはアルブミン、免疫グロブリン、フィブリノゲンなど様々な生理活性物質が含まれているが、多くは微量であることもあり、未だ機能不明な物質も多く含まれると考えられる。そこで、本発明者らはヘパリンクロマトグラフィーで吸着、溶出される画分にこれら生理活性物質が濃縮されることに着目し、生産規模のヒト血漿分画工程中のヘパリンクロマトグラフィー吸着画分のうち、アンチトロンビンを除いた廃棄画分を回収した後、ヘパリンクロマトグラフィーで再度展開して8つのフラクションに分けた。そして、それぞれのフラクションを評価材料とし、様々な側面から生理活性を評価した。その評価の一つとして、本発明者らは気管喉頭部刺激(Aδ繊維刺激性)による咳反射と、気管分岐部刺激(C繊維刺激性)による咳反射の両方を評価できる高濱らのモルモット咳嗽モデルを用いて鎮咳効果を評価した(Differential effect of codeine on coughs caused by mechanical stimulation of two different sites in the airway of guinea pigs: Eur. J. Phamacol.: Takahama K. et al., 1997: 329: p93-97)。 その結果、驚くべきことに、特定のフラクションが気管分岐部刺激(Aδ繊維刺激性)による咳反射と気管喉頭部刺激(C繊維刺激性)による咳反射の双方に鎮咳活性を示すことを見いだした。そこで、本発明者らは活性フラクションをリクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーで展開した後、2次元電気泳動とMALDI-TOF MSによってフラクション中の活性物質を同定した。その結果、驚くべきことに、当該活性物質が活性化凝固第XI因子(FXIa)であること、すなわち、FXIaに気管喉頭部刺激(Aδ繊維刺激性)による咳反射と気管分岐部刺激(C繊維刺激性)による咳反射の双方に対して強い鎮咳活性があることを見出し、本願発明を完成するに至った。 従って、本願発明は以下を包含する。[1]有効成分として、活性化血液凝固第XI因子(以下、FXIaと称することもある)を構成する全長のアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列のうち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列、または前記のいずれかのアミノ酸配列の部分配列、もしくは前記アミノ酸配列を一部に含むアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖、および薬理学的に許容しうる担体を含む、咳嗽の予防、治療及び/または症状改善用医薬組成物。[2]上記咳嗽が気管分岐部刺激による咳嗽である上記[1]に記載の医薬組成物。配列、もしくは前記アミノ酸配列を含有するポリペプチド鎖からなる咳嗽の予防、 高濱らの上記報告によると、モルモット咳嗽モデルで、コデインは気管喉頭部刺激による咳反射を10mg/kg(経口)で有意に抑制するが、気管分岐部刺激については20〜50mg/kg投与しないと有意な抑制を示さない。一方、本発明で明らかにしたFXIa(静脈投与)では、0.15〜15μg/mLで29μL/kg投与して、気管喉頭部刺激と気管分岐部刺激の双方に鎮咳効果が確認できた(モルモット体重を約350gとすると、投与量として約4.4〜435ng/kgに相当)。従って、FXIaはコデインの数万から1,000万分の1という、相対的にきわめて微量で気管喉頭部と気管分岐部の双方に鎮咳効果を示した。 咳嗽は一般的に持続期間に応じて、3週間以内の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽(亜急性咳嗽と呼ばれることもある)、8週間以上続く慢性咳嗽に分類される。また、咳嗽は症状に応じて湿性咳嗽または乾性咳嗽に大別される。湿性咳嗽とは、痰や喀血を伴う湿った咳嗽を意味し、乾性咳嗽とは、それらを伴わない乾いた咳嗽を意味する。本発明における「咳嗽」は上記のいずれの咳嗽及び咳嗽を伴う疾患を含みうる。 本願発明において、「慢性咳嗽」とは、難治性咳嗽ともいい、胸部X線写真で異常陰影や喘鳴等の有意な身体所見を示さず8週間以上持続する咳嗽を伴う疾患を意味する。具本例としては、副鼻腔気管支症候群(Sino-Bronchial Syndrome、以下、SBSと称することもある)による咳嗽、後鼻漏による咳嗽、慢性気管支炎による咳嗽、限局性気管支拡張症による咳嗽、気管支喘息による気管支漏に伴う咳嗽、非喘息性好酸球性気管支炎による咳嗽、肺癌(例えば、肺胞上皮癌等)による咳嗽、気管支食道瘻による咳嗽、気管支胆管瘻による咳嗽、アトピー咳嗽(Atopic Cough、以下、ACと称することもある)、咳喘息(Cough Variant Asthma、以下、CVAと称することもある)による咳嗽、ACE阻害薬の内服による咳嗽、胃食道逆流による咳嗽、咽頭アレルギーによる咳嗽、間質性肺炎による咳嗽、肺線維症による咳嗽、心因性咳嗽、気管支結核による咳嗽、急性上気道炎(風邪症候群)後の咳嗽等が例示される。 本願発明において、「急性咳嗽」とは発症後3週間内の咳嗽で、胸部X線や聴診所見で異常を認める例も含まれる。急性咳嗽の原因としては、普通感冒、インフルエンザ、急性気管支炎、急性鼻・副鼻腔疾患、慢性気道疾患の急性増悪などが例示される。 本願発明において、「遷延性咳嗽」とは3週間以上8週間未満で継続する咳嗽で、慢性咳嗽と同様な理由に起因するものである。 本願発明において、「咳嗽を伴う疾患」とは感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、ケイ肺及びケイ肺結核、肺癌、上気道炎(咽頭炎、喉頭炎、鼻カタル)、喘息性気管支炎、気管支喘息、小児喘息、(慢性)肺気腫、塵肺(症)、肺線維症、ケイ肺症、肺化膿症、胸膜炎、扁桃炎、咳嗽じんま疹、百日咳等の各種呼吸器疾患が例示され、気管支造影術時、気管支鏡検査時に伴う咳嗽等が例示される。 本願発明において、慢性咳嗽も湿性咳嗽または乾性咳嗽に大別されるが、湿性咳嗽及び乾性咳嗽の両方を伴う場合もあるので、必ずしも以下に示す分類の限りではない。湿性咳嗽を伴う慢性咳嗽としては、副鼻腔気管支症候群による咳嗽、後鼻漏による咳嗽、慢性気管支炎による咳嗽、限局性気管支拡張症による咳嗽、気管支喘息による気管支漏に伴う咳嗽、非喘息性好酸球性気管支炎による咳嗽、肺癌(例えば、肺胞上皮癌等)による咳嗽、気管支食道瘻による咳嗽気管支胆管瘻による咳嗽等が挙げられる。乾性咳嗽を伴う慢性咳嗽としては、アトピー咳嗽、咳喘息による咳嗽、ACE阻害薬の内服による咳嗽、胃食道逆流による咳嗽、咽頭アレルギーによる咳嗽、間質性肺炎による咳嗽、肺線維症による咳嗽、心因性咳嗽、気管支結核による咳嗽、急性上気道炎後の咳嗽等が挙げられる 本願発明において、「予防」とは咳嗽が発現しても軽度で、短期間で鎮静化する咳嗽にとどめることを意味し、「治療」とは咳嗽の持続期間や咳嗽の頻度を低下させ、さらには咳嗽を消失させることを意味し、「症状改善」とは上記した咳嗽の症状を予防または緩和し、さらには緩下させることを意味する。 本願発明において、「活性化血液凝固第XI因子(FXIa)」は、血液由来のFXIa(以下、nFXIaと称することもある)及び遺伝子組換え技術により得られた組換えFXIa(以下、rFXIaと称することもある)のいずれをも含む。また、当該因子の酵素活性を有するものであれば、FXIaのアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であってもよく、あるいは当該酵素活性を有する最小単位(以下、このように修飾されたFXIaをmFXIaと称することもある)であってもよい。ここで、「1もしくは数個のアミノ酸」とは、1, 2, 3, 4, または5個程度のアミノ酸をいう。従って、本願発明において単にFXIaと称して使用する場合は、nFXIa、rFXIa及びmFXIaを含むものとする。 nFXIaの精製は、タンパク質化学において通常使用される方法、例えば、遠心分離、塩析法、限外濾過法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体クロマト法、ゲルろ過クロマト法、アフィニティークロマト法、疎水クロマト法、ハイドロキシアパタイトクロマト法などを適宜組み合わせることにより達成される。その一例として、文献記載の抗FXIモノクローナル抗体固定化アフィニティークロマト法を用いてFXIを精製した後、活性化血液凝固第XII因子やトロンビンによってFXIをFXIaへ活性化する精製法等が例示される(Characterization of Novel Forms of Coagulation Factor XIa: independence of factor XIa subunits in factor IX activation: J. Biol. Chem.: Smith SB, Verhamme IM, Sun MF, Bock PE, Gailani D.: 2008: 283: p6696-6705)。 FXIaタンパク質の検出は、SDS-PAGE、ゲルろ過などの分子サイズに基づく方法やELISA法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法などの抗原抗体反応に基づく方法により行われる。いずれも外来タンパク質を検出する際の一般的な方法であり、目的に応じて適宜選択すればよい。また、得られたFXIaタンパク質量は、BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce Biotechnology社)、Protein Assay Kit(Bio-RAD社)などのタンパク質測定試薬を用いて測定することができる。 ここで用いる抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。モノクローナル抗体の場合は、免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、Milsteinらの方法(Method Enzymol., 73, 3-46, 1981)に従って、ミエローマ細胞株等と融合し、特異抗原に対する抗体を産生するハイブリドーマを作製することにより得られる。また、ファージディスプレイ技術を利用した抗体作成技術(Phage Display of Peptides and Protein :A Laboratory Manual Edited by Brian K. Kay et al.、Antibody Engineering: A PRACTICAL APPROACH Edited by J. McCAFFERTY et al.、Antibody Engineering second edition edited by Carl A. K. BORREBEACK)により特異的抗原と結合する抗体を作成することもできる。上記のELISAやウェスタンブロットを行なう時には、得られた抗体は、蛍光標識、RI、ビオチン化などの方法により標識される。抗体を標識化するキットは、何れも市販されているのでこれらを利用すればよい。 rFXIaを取得するときは、文献に記載の方法に従えばよい(Expression of human blood coagulation factor XI characterization of the defect in factor XI type III deficiency: Blood: Meijers JC, Davie EW, Chung DW: 1992: 15: p1435-1440)。より具体的には、rFXIaをコードする遺伝子は、市販のcDNAライブラリーを鋳型として、遺伝子配列に併せてデザインされたPCRプライマーを用い、PCR反応で増幅させる。得られたPCR産物はプラスミドベクターに組み込まれ、大腸菌へ導入される。大腸菌のコロニーの中から目的のタンパク質をコードするcDNAを有するクローンを選択する。PCR用プライマーは、DNA合成受託機関(例えばQIAGEN社など)に依頼すれば容易に入手可能である。このとき、5'側にKOZAK配列(Kozak M., J. Mol. Biol., 196, 947, 1987)及び適当な制限酵素切断配列を付加することが望ましい。PCR反応は、市販のAdvantage HF-2 PCR kit(BD Bioscience社)を用い、添付のプロコールに従って行なえばよい。PCRによって得られたDNA断片の塩基配列は、TAクローニングキット(Invitrogen社)などを用いて、クローニングした後、DNAシークエンサー、例えばCEQ2000XL DNA Analysis System(Beckman社)などにより決定することができる。 こうして得られたrFXIa遺伝子に点変異を導入するときは、サイトダイレクティドミュータジェネシス法を使用することが一般的である。実際には、本技術を応用したTakara社のSite-Direction Mutagenesis System(Mutan-Super Express Km、Mutan-Express Km、Mutan-Kなど)、Strantagene社のQuickChange Multi Site-Direction Mutagenesis kitまたはQuickChange XL Multi Site-Direction Mutagenesis kit、及びInvitrogen社のGeneTailor Site-Directed Mutagenesis Systemなどの市販のキットを用い添付のプロトコールに従って行うことができる。 rFXIa遺伝子を適当な発現ベクターに組みこみ、当該発現ベクターで宿主を形質転換することによって、組換えFXIa(rFXIaタンパク質)の発現が行なわれる。宿主としては、外来タンパク質の発現に常用される細菌、酵母、動物細胞、植物細胞及び昆虫細胞などを使用できるが、FXIaの酵素活性を示すものであれば、いずれを使用しても良い。rFXIaタンパク質産生細胞から、これらのタンパク質を精製する際には、上記したタンパク質化学において使用される精製法が用いられる。また、上記の改変体は、化学的手法により行なうこともできる。 こうして得られたFXIaは生理食塩水、緩衝液等で希釈して製剤化し、医薬組成物を得ることもできる。製剤のpHは体液のpHに近い弱酸性〜中性域のpHが望ましく、その下限は5.0〜6.4が望ましく、その上限はpH6.4〜8.0が望ましい。また、凍結乾燥形態等の長期間保存可能な形態で提供することもでき、この場合、使用時に水、生理食塩水、緩衝液等で所望の濃度になるように溶解して使用することができる。本発明の医薬組成物は、通常医薬品に用いられる薬理的に許容される添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤等)、安定化剤または製薬上必要な成分を含有していてもよい。安定化剤としては、グルコース等の単糖類、サッカロース、マルトース等の二糖類、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール、塩化ナトリウム等の中性塩、グリシン等のアミノ酸、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(プルロニック)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(トゥイーン)等の非イオン系界面活性剤、ヒトアルブミン等が例示され、1〜10w/v%程度が添加されていることが好ましい。 本発明の医薬組成物は経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、局所的投与、経直腸的投与、経皮的投与、経鼻的投与、腹膜内投与、経肺投与等により有効量で投与することができ、1回または数回に分けて投与される。その投与量は、症状、年齢、体重などによって異なっても良いが、好ましくは、4.3ng/kg以上であり、さらに好ましくは43ng/kg以上、さらに好ましくは429ng/kg以上である。 経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体形状であることができる。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固型担体を含むことができる。液体の医薬組成物は、通常、液体の担体、例えば水、動物性油、植物性油、鉱物性油、または合成油であることができる。生理食塩水、ブドウ糖もしくは他のサッカリド溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールが含まれる。 静脈、皮膚もしくは皮下注射または苦痛部位への注射の場合は、活性成分が、発熱性因子を含まず、好適なpH、等張性及び安定性を有する、腸管外で受容できる水溶液の形状が好ましい。当業者は、適切な溶液を、例えば等張性の媒体、例えば塩化ナトリウム液、リンゲル液、乳酸加リンゲル液などを用いて、調製することができる。防腐剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤、及び/またはその他の添加剤を必要に応じて含むことができる。 本発明はまた、有効量の、活性化血液凝固第XI因子(以下、FXIaと称することもある)を構成する全長のアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列のうち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列、または前記のいずれかのアミノ酸配列の部分配列、もしくは前記アミノ酸配列を一部に含むアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において咳嗽を予防、治療及び/または症状改善する方法にも関する。 以下、本発明の実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 モルモット鎮咳モデルは、高濱らの方法(Differential effect of codeine on coughs caused by mechanical stimulation of two different sites in the airway of guinea pigs: Eur. J. Phamacol.: Takahama K. et al., 1997: 329: p93-97)によるものを使用した。300〜450gの雄性Hartley系モルモットを軽麻酔下に背位に固定、気管を露出し、輪状軟骨下縁より3.5cmの位置で小穴(0.5mm×0.5mm)を開けた。咳反射は、ウサギ口ひげを用いて気管喉頭部周囲、及び気管分岐部周囲の気道粘膜を刺激して惹起した。呼吸曲線は、腹部にニューモグラフを設置し、これに接続した呼吸流量計(MEP-1100、日本光電社)を介してポリグラフ(RM-6100、日本光電社)上に記録した。刺激は、薬物投与前25分及び10分、薬物投与後5分、20分、35分、50分に気管分岐部へ、またそれぞれ5分後に気管喉頭部へ与えた。評価サンプルはダルベッコPBS(以下D-PBS)に対して透析し、原則として280nmにおける吸光度として1.5AU(absorbance unit)の濃度で、上腕静脈から29μL/kg投与した。鎮咳活性の評価は、薬剤投与後の評価時間中、少なくとも1回、気管分岐部刺激に対する咳反射がまったく発生しなかった個体数で評価した(有効数=咳反射の発生しなかった動物数/総評価動物数)。 血液凝固第XI因子(FXI)、活性化血液凝固第XI因子(FXIa)、ならびに血漿カリクレインを0.15〜15μg/mLで29μL/kg投与して、モルモット鎮咳活性を評価した(上記はHaematologic Technologies Inc.より購入)。その結果、表1に示す通り、極めて微量投与であるにもかかわらずFXIaに強い鎮咳活性を認めたが、その活性前駆体であるFXI、血漿カリクレイン、及び希釈に用いたバッファー(D-PBS+0.1%ヒト血清アルブミン)には鎮咳活性を認めなかった。また、このFXIaの鎮咳活性は、ロット違いの標品でも再現した。(表1)候補タンパク質の精製標品の鎮咳活性評価成績*:総評価動物数のうち、薬剤投与後の評価時間中で少なくとも1回、気管分岐部または気管喉頭部刺激に対する咳反射がまったく発生しなかった個体数を示す。**:Human serum albumin 本発明の咳嗽の予防、治療及び/または症状改善剤は、強力な鎮咳作用を有する。従って、これらの薬剤及びその薬理学的に許容される酸付加塩は、咳をともなうあらゆる疾患、例えば、感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、ケイ肺及びケイ肺結核、肺癌、上気道炎(咽頭炎、喉頭炎、鼻カタル)、喘息性気管支炎、気管支喘息、小児喘息、(慢性)肺気腫、塵肺(症)、肺線維症、ケイ肺症、肺化膿症、胸膜炎、扁桃炎、咳嗽じんま疹、百日咳等の各種呼吸器疾患や、気管支造影術時、気管支鏡検査時に伴う咳嗽等に適用可能な医薬品として期待できる。 有効成分として、活性化血液凝固第XI因子(以下、FXIaと称することもある)を構成する全長のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖、または前記アミノ酸配列のうち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖であってFXIaの酵素活性を有するもの、および薬理学的に許容しうる担体を含む、咳嗽の予防、治療及び/または症状改善用医薬組成物。 上記咳嗽が気管分岐部刺激による咳嗽である請求項1に記載の医薬組成物。