生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_インジゴカルミン製剤
出願番号:2011525913
年次:2014
IPC分類:A61K 49/00


特許情報キャッシュ

梅川 智通 竹田 智治 吉岡 祐 JP 5615821 特許公報(B2) 20140919 2011525913 20100804 インジゴカルミン製剤 ナガセ医薬品株式会社 501123411 マイラン製薬株式会社 508179903 岩谷 龍 100077012 梅川 智通 竹田 智治 吉岡 祐 JP 2009182821 20090805 20141029 A61K 49/00 20060101AFI20141009BHJP JPA61K49/00 A A61K 49/00 A61K 31/404 A61K 41/00 A61K 47/12 A61K 47/20 A61K 47/22 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2008−273900(JP,A) 国際公開第2005/108503(WO,A1) 米国特許第05490994(US,A) 第十四改正日本薬局方解説書,廣川書店,2001年,p. C276-C279,「インジゴカルミン」の項 5 JP2010063188 20100804 WO2011016487 20110210 12 20130228 吉田 佳代子 本発明は、保存安定化されたインジゴカルミン製剤に関する。 インジゴカルミン[化学名:3,3'−ジオキソ−2,2'−ビインドリニデン−5,5'−ジスルホン酸二ナトリウム(Disodium 3, 3'-dioxo[-Δ2, 2'-biindoline]-5, 5'-disulfonate)]は、下記式[I]で示される化合物であり、癌又は腫瘍等の内視鏡検査用薬剤又は腎機能検査用薬剤として有用な化合物である(特許文献1、2及び非特許文献1)。 しかしながら、インジゴカルミンには、熱又は光に弱い、酸化されやすい等の安定性に問題があることから、溶液として内視鏡検査に用いる場合、前記非特許文献1記載の注射剤を希釈して使用されており、用時調製する必要がある(前記特許文献1)。また、インジゴカルミン溶液を調製できたとしても、暫く放置するとインジゴカルミンが析出してしまうことがあり得る。一方、窒素充填により、酸化を抑えることも考えられるが、微量の酸素の残存により、インジゴカルミンが劣化するという問題があった。 そこで、インジゴカルミンを含有する製剤の取扱いの利便性を向上させるため、長時間保存してもインジゴカルミンが析出することなく、用時調製の必要がないレディー・トゥ・ユースな製剤を提供することが望まれていた。特開2008−273900号公報特開2003−171318号公報日本薬局方 インジゴカルミン注射液 腎機能検査薬 「インジゴカルミン注第一」、製造販売元:第一三共の添付文書;2008年6月改訂(第5版) 本発明は、保存安定性が改善されたインジゴカルミン製剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、インジゴカルミン製剤に特定の還元剤を含有させることにより、インジゴカルミンの安定性を顕著に向上させうることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、[1]アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、L−システイン及びタンニン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の還元剤と、インジゴカルミンとを含有することを特徴とする、保存安定化されたインジゴカルミン製剤、[2]還元剤が、アスコルビン酸である前記[1]に記載のインジゴカルミン製剤、[3]水性製剤である前記[1]又は[2]に記載のインジゴカルミン製剤、[4]癌の診断剤である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のインジゴカルミン製剤、[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のインジゴカルミン製剤を使用することを特徴とする癌の診断方法、及び[6]癌の診断剤の製造のための前記[1]〜[3]のいずれかに記載のインジゴカルミン製剤の使用、に関する。 本発明のインジゴカルミン製剤は、保存安定性が顕著に改善され、製剤の変色も抑制され、常温でも経時的に安定に保存可能であるという特長を有する。また、本発明のインジゴカルミン製剤は、用時調製する必要がなく、用時調製時の調製ミスを防止することができる。図1は、試験例1の結果を示す図である。縦軸はインジゴカルミンの含有量(%)を示す。図2は、試験例1の結果を示す写真である。Aは比較例1を示し、Bは実施例1を示し、Cは比較例3を示す。 本発明に用いるインジゴカルミン(以下、IDGと略称することもある。)は、公知の方法により製造することができる。そのようなインジゴカルミンを製造する方法としては、特に限定されないが、例えばインディゴ(Indigo)[化学名:2,2’−ビス(2,3−ジヒドロ−3−オキソインドリリデン)]に対して濃硫酸又は発煙硫酸を用いてスルホン化することによって製造することができる。また、インジゴカルミンは市販品を用いてもよい。本発明のインジゴカルミン製剤におけるインジゴカルミンの含有量は、特に限定されないが、インジゴカルミン製剤全体に対して、0.001〜1重量%程度が好ましく、0.01〜0.4重量%程度がさらに好ましく、0.05〜0.3重量%程度が特に好ましい。 本発明に用いる還元剤としては、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、L−システイン、タンニン酸又はこれらの薬理学的に許容される塩が好ましい例として挙げられ、アスコルビン酸が特に好ましい。還元剤には、亜硫酸又はピロ亜硫酸等を使用した場合、インジゴカルミンを淡黄色に変色させてしまうという問題点があるためである。前記薬理学的に許容される塩は、特に限定されず、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が例として挙げられる。薬理学的に許容される酸付加塩としては、特に限定されず、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が例として挙げられ、薬理学的に許容される金属塩としては、特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が例として挙げられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、特に限定されず、モルホリン、ピペリジン等の付加塩が例として挙げられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、特に限定されず、リジン、グリシン、フェニルアラニン等の付加塩等が例として挙げられる。これらの還元剤は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。本発明のインジゴカルミン製剤における前記還元剤の含有量は、特に限定されないが、インジゴカルミン製剤全体に対して、0.001〜3重量%程度が好ましく、0.005〜1重量%程度がさらに好ましく、0.01〜0.1重量%程度が特に好ましい。還元剤の含有量が低すぎると、インジゴカルミンの安定性が悪く、含有量が高すぎると、インジゴカルミンの暗青色が退色する可能性がある。 本発明のインジゴカルミン製剤を製剤化する場合、その製剤形態を特に限定することなく、医薬品として汎用されている種々の剤型を選択することができ、その剤型としては、例えば、粉剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、錠剤、トローチ剤、チュアブル錠、軟膏剤、水性製剤(ローション状液剤、乳液状液剤、エアゾール状液剤、ドリンク剤、シロップ剤等を含む)、ゲル剤(液晶、マイクロエマルジョン、リポソーム等を含む)、クリーム剤等が挙げられ、水性製剤(ローション状液剤、乳液状液剤、エアゾール状液剤、ドリンク剤、シロップ剤等を含む)、ゲル剤(液晶、マイクロエマルジョン、リポソーム等を含む)が好ましく、さらに水性製剤が特に好ましい。上記の製剤化に際しては、当該分野において任意慣用の公知の方法が利用できる。 本発明のインジゴカルミン製剤の製造において、前記還元剤に、従来から医薬品に使用されている添加剤の1種及び/又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。前記添加剤としては、医薬品に許容されるものであれば特に限定されず、結合剤、崩壊剤、増粘剤、賦形剤、滑沢剤、保存料、キレート剤、pH調整剤等が例として挙げられる。 本発明に用いる結合剤としては、特に限定されず、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、α化デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、アラビアゴム、トラガントガム、ゼラチン等が例として挙げられる。 本発明に用いる崩壊剤としては、特に限定されず、カルメロースカルシウム、部分アルファー化デンプン、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、架橋化ポリビニルピロリドン等が例として挙げられる。 本発明に用いる増粘剤としては、特に限定されず、寒天、キサンタンガム、結晶化セルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシルメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルスターチナトリウム、カラギナン、ファーセレラン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ゼラチン、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガントガム、タラガム、アラビアガム、カラヤガム、デンプン、デンプン誘導体、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、カードラン、アゾトバクタービネランジーガム、プルラン、アラビノガラクタン、デキストラン、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が例として挙げられる。 本発明に用いる賦形剤としては、特に限定されず、乳糖、マンニトール、コーンスターチ、結晶セルロース、デキストリン、シクロデキストリン類等の固形賦形剤、水、蒸留水、メタノール、エタノール等の液体賦形剤が例として挙げられる。 本発明に用いる滑沢剤としては、特に限定されず、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、硬化植物油等が例として挙げられる。 本発明に用いる保存料としては、特に限定されず、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、パラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジウム、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、パラクロルメトキシフェノール又はパラクロルメタクレゾール等が例として挙げられる。 本発明に用いるキレート剤としては、特に限定されず、例えば、エチレンジアミン4酢酸(エデト酸)、エチレンジアミン4酢酸塩(ナトリウム塩(エデト酸ナトリウム:日本薬局方、EDTA−2Na等)、カリウム塩等)、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ポリリン酸、メタリン酸等が挙げられ、エデト酸、エデト酸ナトリウム又はエデト酸カリウムが好ましく、エデト酸ナトリウムが特に好ましい。これらのキレート剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用でき、本発明の水性製剤に配合する割合は、キレート剤の合計量として、特に限定されないが、水性製剤全体に対して0.0005〜0.5重量%程度が好ましく、0.001〜0.3重量%程度がより好ましく、0.01〜0.1重量%程度が特に好ましい。 本発明に用いるpH調整剤としては、特に限定されず、塩酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸、リン酸、硫酸、酒石酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリシン、ヒスチジン、ε−アミノカプロン酸等が例として挙げられる。これらは、いずれも水和物の形態を有していてもよく、例えば、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、リン酸水素ナトリウム水和物(Na2HPO4・12H2O)、リン酸水素ナトリウム二水和物(Na2HPO4・2H2O)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4・H2O)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(NaH2PO4・2H2O)等が挙げられる。これらのうち、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウムが好適に用いられる。本発明のインジゴカルミン製剤は、液剤である場合、pH4〜9程度が好ましく、保存安定性を高める点から、pH6〜8程度がより好ましい。pH調整剤の含有量は、特に限定されないが、水性製剤全体に対して、通常0.01〜1重量%程度、好ましくは0.1〜0.7重量%程度、より好ましくは0.3〜0.6重量%程度である。 本発明のインジゴカルミン製剤は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、浸透圧比0.05〜1程度が好ましく、0.1〜0.8程度がより好ましい。 本発明のインジゴカルミン製剤の製法は、特に限定されるものではなく、インジゴカルミンと、前記還元剤と、必要により添加剤を加え、湿式造粒の常法に従い溶媒を添加して練合、造粒する製法;溶媒中にインジゴカルミンと、前記還元剤と、必要により他の添加剤を溶解又は懸濁させた溶液とする製法;さらに、その溶液を凍結乾燥する製法;噴霧乾燥する製法等、一般的な医薬品の製法が適用される。例えば顆粒剤として製造する場合は、上記した成分に液体溶媒を添加し、ホモミキサー、コロイドミル、三本ロールミル、タービン型内歯付攪拌機、高吐出型プロペラ サタケP36型(佐竹化学機械工業社製)、万能混合撹拌機、押出造粒機等の混合機を用いて均一に混合し、練合することによりインジゴカルミン製剤を製造することができる。水性製剤として製造する場合は、慣用の方法を用いて製造することができ、その方法は特に制限されるものではないが、予め各成分と精製水の一部とを混合して溶解し、残りの水を加えて液量を調製する方法が好ましく挙げられる。また、溶解時には一般の水性液剤の調製法に準じて精製水を加温したり、容器への充填時にヘッドスペースの窒素置換を行ったり、ろ過、滅菌処理を施してもよい。前記液体溶媒としては、特に限定されないが、極性溶媒が好ましく、具体的には、水又はアルコール類(例えば、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール等)等の極性プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性非プロトン性溶媒が好ましい例として挙げられ、20〜90%(w/w)程度エタノールが特に好ましい。また、本発明のインジゴカルミン製剤は、特に必要としないが、所望により製造時に窒素バブリング又は窒素封入を行ってもよい。 本発明のインジゴカルミン製剤は、特に限定されないが、窒素バブリング又は窒素封入を行う場合、酸素バリア性容器に脱酸素剤とともに封入し封緘されていてもよい。酸素バリア性容器としては、酸素透過性が低い密封容器であればよく、例えばアルミ箔製のバッグ、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム製のバッグ、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム/ポリエチレンフィルムラミネートが施されたフィルムからなるバッグ等のいわゆるアルミニウム袋;並びにシリカ蒸着ポリエステル製のバッグ、エチレンビニルアルコール製のバッグ、バリアナイロン製のバッグ、およびポリ塩化ビニリデン製のバッグ等が挙げられる。 本発明のインジゴカルミン製剤は、特に限定されないが、癌の診断剤又は腫瘍等の病変部位の診断剤として好適に用いられる。前記癌又は腫瘍としては、特に限定されないが、例えば、食道癌、胃癌又は大腸癌(例えば、結腸直腸癌等)等が好適に挙げられる。また、本発明のインジゴカルミン製剤を腫瘍性ポリープのみならず、非腫瘍性ポリープに使用してもよい。前記大腸としては、盲腸、結腸、直腸等が挙げられ、結腸としては、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸が挙げられる。また、本発明のインジゴカルミン製剤は、特に限定されないが、内視鏡検査に好適に用いられ、癌又は腫瘍の内視鏡検査に特に好適に使用される。 本発明のインジゴカルミン製剤は、癌の診断剤又は腫瘍等の病変部位の診断剤として用いられる場合、酢酸水溶液を特に必要としないが、酢酸水溶液と組み合わせて用いてもよい。酢酸水溶液と組み合わせて用いる場合、例えば、インジゴカルミン製剤を酢酸水溶液と混合して、混合液を適用部位に散布してもよく、酢酸水溶液を適用部位に散布した後に、本発明のインジゴカルミン製剤を散布してもよい。酢酸水溶液の濃度は、3.0〜5.0w/v%が好適である。 上記用途における本発明のインジゴカルミン製剤の投与方法は、経口投与又は非経口投与であれば、特に限定されないが、例えば、本発明のインジゴカルミン製剤をシリンジに充填し、該シリンジを内視鏡装置に接続し、該内視鏡装置を体内(例えば胃又は大腸等)に挿入し、該内視鏡装置の電子スコープの鉗子口から挿入したチューブから、本発明のインジゴカルミン製剤を診断部位に直接散布することもできる。内視鏡装置を体内に挿入する際に、必要に応じて、局所麻酔剤(例えば、キシロカインゼリー(登録商標)(製品名、アストラゼネカ社製))等を内視鏡装置に塗布していてもよい。 上記用途における本発明のインジゴカルミン製剤の投与量は、投与される人の性別、年齢、健康状態、投与部位等によって異なるので一概には言えず、本発明のインジゴカルミン製剤がその効果を十分に発揮する範囲であれば、特に限定されないが、例えば、インジゴカルミンの含有量を0.15〜0.25重量%程度に調製した製剤20mlが挙げられる。インジゴカルミンが経時的に腸液で薄まり、観察が困難になるのを避けるためである。 また、本発明は、インジゴカルミン製剤を使用する癌の診断方法も提供することができ、有用である。前記診断方法としては、例えば、気泡、便汁、粘液等を洗浄によって病変部位表面から除去する前処理工程、診断部位に本発明のインジゴカルミン製剤を散布する工程、および観察する工程を含む診断方法;気泡、便汁、粘液等を洗浄によって病変部位表面から除去する前処理工程、酢酸水溶液を診断部位に散布した後、診断部位に本発明のインジゴカルミン製剤を散布する工程、および観察する工程を含む診断方法が挙げられる。 前処理工程により、気泡、便汁、粘液等を洗浄せずに、気泡、便汁、粘液等が病変部位に付着したままインジゴカルミン製剤の散布を行うと、かえって病変部位表面の構造が不明瞭になり診断の妨げになる可能性があるためである。洗浄時に水圧が強すぎると、病変部位から出血することもあるため、経口又は非経口で内視鏡装置を体内(例えば胃又は大腸等)に挿入し、通常20mlのシリンジに洗浄液を入れて内視鏡の鉗子口から直接洗浄を行う。また、状況に応じて水浸下で洗浄してもよい。病変部位洗浄に際して、蠕動誘発防止のために、微温湯(37℃〜40℃)を用いることが好ましい。また、病変部位洗浄に際して、泡発生防止のために、胃腸内ガス排除剤を微温湯内に少量混ぜるのが好ましい。前記胃腸内ガス排除剤としては、例えば、ガスコン(登録商標)(製品名、一般名:ジメチコン、主成分:ジメチルポリシロキサン、キッセイ薬品工業社製)等が挙げられる。さらに、除去しにくい付着粘液にはタンパク質分解製剤を用いることが好ましい。前記タンパク質分解製剤としては、例えば、プロナーゼMS(登録商標)(製品名、科研製薬社製)、ガスチーム(登録商標)(製品名、日医工ファーマ社製)等が挙げられる。散布工程では、内視鏡装置の電子スコープの鉗子口から0.15〜0.25重量%程度の高濃度に調製した診断剤20mlを直接散布する態様が好適に挙げられる。インジゴカルミンが経時的に腸液で薄まり、観察が困難になることを避けるために、散布後速やかに、観察することが好ましい。観察工程において、病変部位が50〜80μm程度で拡大が必要である場合等必要に応じて、拡大観察を行ってもよい。拡大観察時の拡大倍率は、特に限定されないが、通常20〜200倍程度、30〜100倍程度が好ましい。 さらに、前記診断方法において、病変部位表層にインジゴカルミンが貯留する場合等必要に応じて、クリスタルバイオレットを用いた染色法を追加してもよい。クリスタルバイオレット(商品名、ピオクタニンブルー(Pyoktanin Blue)、米山薬品工業社製)は、濃く染めすぎると、かえって診断が難しくなるため、通常0.01〜0.08%程度、好ましくは0.02〜0.05%濃度を使用する。染色に際しては、散布チューブを用いて1滴ずつ必要最小限の量を病変部位のみに散布する。インジゴカルミン製剤と同様に、鉗子口から直接散布すると、粘膜が広範囲に染色され、観察時に光量不足になり視野が暗くなってしまうため、鉗子口から直接散布するのは好ましくない。 本発明のインジゴカルミン製剤は、無菌化された溶液の形態で提供するのが好ましい。無菌化の方法としては、ろ過滅菌及びオートクレーブ滅菌等がある。オートクレーブ滅菌は、高圧蒸気滅菌とも言い、所定温度と圧力の飽和水蒸気を作って加熱することによる滅菌方法であり、オートクレーブ処理時の温度は、特に限定されないが、90〜135℃程度が好ましく、110〜130℃程度がより好ましい。オートクレーブ処理時間は、特に限定されないが、1分〜1時間程度が好ましい。例えば、日本薬局方では、115℃で30分、121℃で20分、126℃で15分という滅菌条件が挙げられる。ろ過滅菌は、ろ過装置を用いてろ過し、微生物を除去する方法である。前記ろ過装置としては、ポリビニリデンフロライド,ポリエーテルスルフォン,ナイロン,ニトロセルロース、アセトセルロース等のセルロース誘導体、ポリカーボネート等のプラスチックあるいはテフロン(登録商標)製のメンブランフィルター等を用いたろ過装置等が挙げられ、市販品としては、デュラポア(Durapore)(商品名、ミリポア(Millpore)社)等が挙げられる。フィルターの孔径は0.22μm(あるいはそれ以下、場合により0.45μm)のものが目的に応じて使用できる。滅菌用フィルターは、膜の有効ろ過面積(cm2)当たり、適切な条件下で培養された指標菌Brevundimonas diminuta又はこれより小さな適当な菌10−7個以上をチャレンジして二次側(膜又はフィルターのろ過後の液側)に無菌ろ液の得られるものであれば、特に限定されず使用することができる。 本発明のインジゴカルミン製剤は、インジゴカルミンが分解されることなく、常温で3年以上安定に保存できる。 以下に実施例及び比較例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 [実施例1〜4及び比較例1〜4] 精製水2.5kgにリン酸水素ナトリウム水和物を加えて溶解させた後、インジゴカルミンを徐々に添加しながら、攪拌し、溶解させた溶液を得た。次いで、前記溶液をビーカーに250g分注し、下記表1記載の処方量となるように各添加剤を加え、溶解させた後、0.1mol/Lクエン酸溶液を添加し、pH6.4〜7.4とした。得られた溶液を20mL褐色バイヤル(不二硝子社製)に充填し、ゴム栓打栓・巻き締めを行い、実施例品1〜4及び比較例品2〜4の各試料を製造した。また、上記添加剤を加えずに比較例品1を製造した。なお、本実施例及び比較例では窒素バブリング又は窒素封入は行わずに各試料を製造した。[試験例1] 上記実施例品1〜4及び比較例品1〜4を3つずつ用意し、試料作製後から80℃3日保存して、下記の方法でインジゴカルミンの含有量を測定し、外観の変化、異物の有無及びインジゴカルミンの含有量から、安定性を評価した。外観の変化は、前記条件で保存した後、各試料を目視で退色又は変色を判断した。異物の有無は、前記条件で保存した後、11μmのフィルターで各試料をろ過したときに、目視で確認可能な異物があるか否かで判断した。外観の変化の評価には、各試料の1つを無色透明バイヤルに充填し、冷暗所で保存したものを対照として用いた。インジゴカルミンの含有量の測定結果(3サンプルの平均値)を図1に示す。また、比較例1、3及び実施例1の試料の外観を図2に示す。 [インジゴカルミンの含有量の測定方法] 上記実施例品1〜4及び比較例品1〜4の各試料について、下記条件で調製時と80℃3日保存後のインジゴカルミンの含有量(mg)を算出し、調整時の含有量を100%として、80℃3日保存後のインジゴカルミンの含有量(%)を算出した。 各試料について、インジゴカルミン約20mgに対応する容量を正確に量り、薄めた希塩酸(1→100)を加えて、正確に200mLの溶液を得た。この溶液2.5mLを正確に量り、薄めた希塩酸(1→100)を加えて正確に25mLの溶液を得て、これを試料溶液とした。別に、定量用インジゴカルミン約20mg(別途1g、105℃、2時間で乾燥減量を測定しておく)を正確に量り、薄めた希塩酸(1→100)を加えて正確に25mLの溶液とし、標準溶液とした。 試料溶液及び標準溶液につき、「第十五改正 日本薬局方 一般試験法 紫外可視吸光度測定法」に記載の方法に従い、波長610nmにおける吸光度を自記分光高度計(製品名:UV−2550、島津製作所社製)にて測定した。 測定した吸光度の値から、式(1)を用いてインジゴカルミンの含有量(mg)を算出した。(式中、WSは乾燥物に換算した定量用インジゴカルミンの秤取量を表し、ATは試料溶液の吸光度を表し、ASは標準溶液の吸光度を表す。) 実施例品1〜4及び比較例品1、2、4については、フィルターでろ過したときに、目視で確認できる異物(沈殿物)は見られず、著しい退色又は変色も見られなかった。比較例品3は、目視にて茶色の沈殿物が確認された。また、比較例品1〜4では、インジゴカルミンの含有量が減少し、安定性を有しなかった。この結果から、比較例3では還元剤を含有してもインジゴカルミンが劣化し、変色してしまい、すべての還元剤がインジゴカルミンの安定性を改善できるわけではないことが確認された。さらに、添加剤として没食子酸プロピル又はエデト酸二ナトリウムを添加した場合(比較例品2、4)、インジゴカルミンの溶解度(溶媒:水、25℃)は向上したが、安定性は向上しなかった。これは、インジゴカルミンの溶解度を向上させたとしても、必ずしもインジゴカルミンの安定性は向上しないことを意味している。一方、本発明のインジゴカルミン製剤は、沈殿物も生成せず、変色も起こさず、インジゴカルミンの含有量も十分であることから、顕著に優れた経時的保存安定性を有することが確認された。 本発明によれば、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、L−システイン及びタンニン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の還元剤と、インジゴカルミンとを含有することにより、保存安定性が改善されたインジゴカルミン製剤を提供することができる。 アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、L−システイン及びこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の還元剤と、インジゴカルミンとを含有し、還元剤の含有量がインジゴカルミン製剤全体に対して0.001〜3重量%であることを特徴とする、保存安定化されたインジゴカルミン製剤。 還元剤が、アスコルビン酸である請求項1に記載のインジゴカルミン製剤。 水性製剤である請求項1又は請求項2に記載のインジゴカルミン製剤。 癌の診断剤である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインジゴカルミン製剤。 癌の診断剤の製造のための請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインジゴカルミン製剤の使用。


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