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タイトル:特許公報(B2)_水溶性ポリマー組成物、皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物、及び皮膚貼付剤
出願番号:2011524739
年次:2015
IPC分類:C08L 33/02,C08K 5/09,A61K 47/32,A61K 9/70,C08K 3/24,C08K 3/00


特許情報キャッシュ

三浦 一幸 JP 5832289 特許公報(B2) 20151106 2011524739 20100721 水溶性ポリマー組成物、皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物、及び皮膚貼付剤 住友精化株式会社 000195661 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 三浦 一幸 JP 2009177281 20090730 20151216 C08L 33/02 20060101AFI20151126BHJP C08K 5/09 20060101ALI20151126BHJP A61K 47/32 20060101ALI20151126BHJP A61K 9/70 20060101ALI20151126BHJP C08K 3/24 20060101ALI20151126BHJP C08K 3/00 20060101ALI20151126BHJP JPC08L33/02C08K5/09A61K47/32A61K9/70 405C08K3/24C08K3/00 C08L 1/00 − 101/16 A61K 9/00 − 9/72 JSTPlus(JDreamIII) CA/REGISTRY(STN) 特公平08−000774(JP,B2) 国際公開第2009/075204(WO,A1) 特開2009−161618(JP,A) 特開2000−318096(JP,A) 国際公開第2007/126067(WO,A1) 特開平02−311549(JP,A) 特開2007−119552(JP,A) 特開平03−188149(JP,A) 2 JP2010062220 20100721 WO2011013546 20110203 15 20130621 松元 洋 本発明は、水溶性ポリマー組成物、皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物、これらの製造方法、及び該膏体層形成用組成物を用いた皮膚貼付剤に関する。 パップ剤、冷却シート等の皮膚貼付剤は、水溶性ポリマーを含む組成物に各種の薬剤や水等を配合してゲル状とした膏体を不織布等の支持体上に塗布し、該組成物を硬化熟成することによって該支持体上に膏体層を形成したものである。この様な組成物に配合される水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩等のポリ(メタ)アクリル酸ポリマーが用いられている。 皮膚貼付剤に用いられる水溶性ポリマーを含む膏体層の形成用組成物は、肌等への接着性、曲部への貼付のための伸縮性等の特性が求められるが、更に、皮膚貼付剤の製造工程における各種特性も求められている。 パップ剤や冷却シート等の一般的な製造方法としては、一般に、水溶性ポリマーを含む組成物に各種添加成分を混合してゲル状の膏体として、これを不織布等の支持体上に塗工し、ポリエチレンフィルム等のライナーで表面を覆った後、裁断、パッキングして、パック内で該組成物を硬化熟成させて、膏体層を形成する方法が採られている。 この様な方法では、該水溶性ポリマー組成物を用いてゲル状の膏体を得る際に、該水溶性ポリマー組成物に架橋剤としてアルミニウム等の多価金属化合物が添加されるが、水溶性ポリマーと多価金属化合物とが反応し易く硬化速度が速すぎると、支持体への塗工時にゲル化が進行して支持体に塗工しにくいという問題がある。そこで、水溶性ポリマーと多価金属化合物との反応速度を調節する目的で、多価金属化合物と同時にゲル化速度遅延剤としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を添加する方法が採用されている(特許文献1参照)。特開平03−188149号公報 しかしながら、特許文献1に記載の多価金属化合物とゲル化速度遅延剤を同時に配合する方法では、ゲルの硬化速度の制御が難しく、適度の硬化速度とすることは困難であり、添加成分の混合作業や支持体への塗工作業に支障を来すことがある。 本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、パップ剤、冷却シート等の皮膚貼付剤の膏体層を形成するために使用できる組成物であって、ゲル化速度の制御が容易で支持体に塗工し易い水溶性ポリマーを含む組成物、及び該組成物を用いて得られる皮膚貼付剤を提供することである。 本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩と共にゲル化速度遅延剤を含む水溶性ポリマー組成物に、架橋剤として多価金属化合物を添加し、これを皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物として用いる場合には、多価金属化合物が添加された組成物をゲル状の膏体とする際に、ゲル化速度の制御が容易であり、ゲル状の膏体の硬化が進行するまでの誘導期を適度に設定することができ、その結果、該組成物への添加成分の混合作業や支持体への膏体の塗工作業が容易となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、下記の水溶性ポリマー組成物、皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物、これらの製造方法、及び該膏体層形成用組成物を用いた皮膚貼付剤を提供するものである。項1. 水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー及びゲル化速度遅延剤を含有する水溶性ポリマー組成物。項2. (メタ)アクリル酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリル酸化合物を重合することによって水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの含水ゲルを得た後、得られた含水ゲルの乾燥前又は乾燥中にゲル化速度遅延剤を添加して、乾燥することにより得られる上記項1に記載の水溶性ポリマー組成物。項3. ゲル化速度遅延剤の添加量が、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーを得るために使用した(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して0.1〜10質量部である上記項1又は2に記載の水溶性ポリマー組成物。項4. 上記項1〜3のいずれかに記載の水溶性ポリマー組成物及び多価金属化合物を含有する皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物。項5. 多価金属化合物の量が、水溶性ポリマー組成物100質量部に対して、0.01〜20質量部である上記項4に記載の膏体層形成用組成物。項6. 上記項4又は5に記載の膏体層形成用組成物から形成された膏体層を有する皮膚貼付剤。項7. パップ剤又は冷却シートである上記項6に記載の皮膚貼付剤。項8. (メタ)アクリル酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリル酸化合物を重合して含水ゲルを得た後、該含水ゲルの乾燥前又は乾燥中にゲル化速度遅延剤を添加して乾燥することを特徴とする水溶液ポリマー組成物の製造方法。項9. 上記項8の方法によって得られる水溶性ポリマー組成物に、多価金属化合物を添加する工程を含む皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物の製造方法。 以下、本発明の水溶性ポリマー組成物、及び該組成物を用いる皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物について具体的に説明する。 (I)水溶性ポリマー組成物 本発明の水溶性ポリマー組成物は、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤を有効成分として含有するものである。以下、該組成物に含まれる水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤について説明する。 (1)水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー本発明で用いる水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリル酸化合物をモノマー成分として用い、これを重合して得られるものであれば特に限定はない。重合方法としては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸化合物の代表的な重合方法である逆相懸濁重合法、水溶液重合法等が挙げられる。特に、モノマー成分を重合する際に、極度な低分子量体や極度な高分子量体が生成しないように重合度をコントロールしたものが好ましい。尚、本願明細書では、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を意味するものである。 以下、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの製造方法の例として、逆相懸濁重合法と水溶液重合法について、具体的に説明する。 (i)逆相懸濁重合法: 逆相懸濁重合法では、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリル酸化合物をモノマー成分として、ラジカル重合開始剤を用いて、界面活性剤及び高分子分散剤からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分を含む石油系炭化水素溶媒中において、油中水滴型逆相懸濁重合を行えばよい。なお、逆相懸濁重合法においては、逆相懸濁重合によって得られた水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーのスラリーに、(メタ)アクリル酸化合物をさらに添加し、2段以上の多段で重合を行うこともできる。 モノマー成分とする(メタ)アクリル酸化合物は、通常、水溶液の状態で用いればよい。水溶液中の(メタ)アクリル酸化合物の濃度は、重合反応を速やかに行うために、15質量%〜飽和濃度であることが好ましい。 本発明では、得られるポリ(メタ)アクリル酸ポリマーに適度な水溶性を付与させるために、モノマー成分としての(メタ)アクリル酸化合物としては、(メタ)アクリル酸塩を単独で用いるか、或いは、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリル酸の混合物を用いることが好ましい。例えば、水溶液中において、(メタ)アクリル酸の一部又は全部を塩基で中和して、(メタ)アクリル酸塩を含む水溶液を調製し、該水溶液中で重合反応を進行させることによって、適度な水溶性を有するポリ(メタ)アクリル酸ポリマーを得ることができる。この際、(メタ)アクリル酸の中和度は、5〜100モル%程度とするが好ましく、得られる水溶液ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの水への溶解性を良好にするためには、20〜100モル%程度とすることがより好ましい。 (メタ)アクリル酸塩の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸塩の中では、(メタ)アクリル酸ナトリウム及び(メタ)アクリル酸カリウムが好ましく、(メタ)アクリル酸ナトリウムが特に好ましい。このような(メタ)アクリル酸塩を調製するためには、例えば、塩基として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を用いることができる。 ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのラジカル重合開始剤の中では、工業的に入手が容易で、保存安定性が良好であることから、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩等が好適である。 ラジカル重合開始剤の使用量は、重合反応の時間を短縮し、且つ急激な重合反応を防ぎ、重合度をコントロールし易くするために、(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して0.015〜0.15質量部程度であることが好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合反応時間が長くなるおそれがある。また、ラジカル重合開始剤の使用量が多すぎる場合には、重合反応速度が速く、急激な反応となり、重合反応を制御できなくなるおそれがある。 なお、前記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸第一鉄等の亜硫酸塩;D−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤を併用して、レドックス重合開始剤として用いることができる。 上記した方法でポリ(メタ)アクリル酸ポリマーを製造する際には、極度な低分子量体や極度な高分子量体が生成しないように、重合度を適切にコントロールするために、水溶性連鎖移動剤を添加することが好ましい。水溶性連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩化合物、亜リン酸化合物、チオール化合物、第2級アルコール化合物、アミン化合物等が挙げられる。これらの水溶性連鎖移動剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの水溶性連鎖移動剤の中では、無臭であり、衛生面及び安全性が良好であることから、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等の次亜リン酸塩化合物が好適に用いられる。 水溶性連鎖移動剤の使用量は、重合度を適切にコントロールするために、(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して0.001〜2質量部程度であることが好ましく、0.001〜1.7質量部程度であることがより好ましい。水溶性連鎖移動剤の使用量が少なすぎる場合には、水溶性連鎖移動剤を使用する効果が発揮されないおそれがある。また、水溶性連鎖移動剤の使用量が多すぎると、低分子量体の割合が増えて、膏体層形成用組成物を調製した際にゲルの硬化速度が遅くなる傾向にあり、更に、該組成物を用いてパップ剤等を製造した際、得られるパップ剤等のゲル中に含まれる塩濃度が増加するため、ゲルの接着性が悪くなるおそれがある。 (メタ)アクリル酸化合物を重合する際に用いられる界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの界面活性剤の中では、(メタ)アクリル酸化合物を含む水溶液の分散安定性が良好であることから、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルが好適に用いられる。 (メタ)アクリル酸化合物を重合する際に用いられる高分子分散剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・無水マレイン酸共重合体、ブタジエン・無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等を用いることができる。これらの高分子分散剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中では、(メタ)アクリル酸化合物を含む水溶液の分散安定性が良好であることから、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体等が好適に用いられる。 界面活性剤と高分子分散剤は、両者を併用してもよく、いずれか一方を用いてもよい。これらの成分の使用量は、(メタ)アクリル酸化合物を含む水溶液の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得るために、(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して、界面活性剤及び高分子分散剤の合計量として、0.1〜5質量部程度が好ましく、0.2〜3質量部程度がより好ましい。これらの成分の使用量が少なすぎる場合には、(メタ)アクリル酸化合物の分散性が悪くなり、重合異常が起こるおそれがある。また、これらの成分の使用量が多すぎる場合には、使用量に見合う分散効果が得られないおそれがある。 石油系炭化水素溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を用いることができる。これらの石油系炭化水素溶媒は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの石油系炭化水素溶媒の中では、工業的に入手が容易で、品質が安定し、かつ安価であることから、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等が好適に用いられる。 石油系炭化水素溶媒の使用量は、重合熱を除去し、重合温度を制御し易くするために、通常、(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して、50〜600質量部程度とすることが好ましく、80〜550質量部程度とすることがより好ましい。 重合反応の際の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、生産性を高めるとともに、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行うために、20〜110℃程度であることが好ましい。特に、重合温度制御が容易で、重合度をコントロールし易い点で、40〜90℃程度がより好ましい。反応温度が低すぎると、重合速度が遅く、重合時間が長くなるので、経済的に好ましくない。一方、反応温度が高すぎる場合には、重合熱を除去することが難しくなるので、円滑に反応を行うことが困難となるおそれがある。 かくして重合反応終了後、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの含水ゲルが分散したスラリーが得られる。このスラリーを、例えば、80〜200℃程度で加熱して水分や石油系炭化水素溶媒を除去し、乾燥させることにより、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーを得ることができる。 (ii)水溶液重合法 次に、実施形態の他の一例として、水溶液重合法について説明する。水溶液重合法においては、例えば、(メタ)アクリル酸化合物をモノマー成分として用い、ラジカル重合開始剤を用いて、常法に従って水溶液重合を行えばよい。 なお、水溶液重合法においては、(メタ)アクリル酸化合物、ラジカル重合開始剤、その他の任意の添加剤等の種類及び使用量等は、前記逆相懸濁重合法で記載したのと同様である。 また、水溶液重合法においては、重合反応の際の反応温度、反応時間等についても、前記逆相懸濁重合法で記載したのと同様である。 かくして重合反応終了後、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの含水ゲルが得られる。この含水ゲルを、例えば、80〜200℃で加熱して水分を除去し、乾燥させることにより、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーが得られる。 (2)ゲル化速度遅延剤 本発明では、ゲル化速度遅延剤としては、金属イオンに対してキレート化能又は配位能を持つ化合物を用いることができる。このようなゲル化速度遅延剤としては、特に限定的ではなく、ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーのゲル化速度遅延剤として公知の化合物を用いることができ、具体例として、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、酢酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸;これらの有機酸の塩;ホウ酸、炭酸等の無機酸;ホウ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機酸塩等を挙げることができる。有機酸塩及び無機酸塩の種類については、水溶性塩であればよく、特に限定はないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を例示できる。 これらのゲル化速度遅延剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのゲル化速度遅延剤の中では、無臭であり、衛生面及び安全性が良好であることから、エチレンジアミン四酢酸、その塩等が好適に用いられる。 ゲル化速度遅延剤の添加量は、適度なゲル硬化の誘導期を発現させるために、モノマー成分として使用した(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して0.1〜10質量部程度であることが好ましい。ゲル化速度遅延剤の添加量が少なすぎる場合には、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーを含有する組成物を用いてパップ剤等を製造する際に、該組成物に配合する添加剤成分を十分に混練りするための充分な誘導期を発現させることが出来ないおそれがある。また、ゲル化速度遅延剤の添加量が多すぎると、該組成物に架橋剤として多価金属化合物を添加してゲル状の膏体とする際に、多価金属イオンへのマスキング作用が強くなりすぎてゲル化反応が阻害され易く、ゲル化時間が長くなって効率的でなく、更に、形成される膏体層の最終強度が低くなるおそれがある。 (3)水溶性ポリマー組成物の調製方法 本発明の水溶性ポリマー組成物は、上記した水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤を有効成分として含有するものである。この様に予め水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤を含有する組成物とすることによって、水溶性ポリマーとゲル化速度遅延剤とが均一性よく存在することになり、架橋剤として用いる多価金属化合物と反応させた際に、硬化速度をコントロールしやすくなる。このため、多価金属化合物を添加してゲル化を進行させて皮膚貼付剤の膏体層を形成する際に、ゲル状態の組成物の硬化反応の開始までに適度の誘導期を発現させることができ、その結果、添加剤成分を均一に混合でき、支持体に対する塗工作業も容易となる。 水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤の混合方法については、特に限定的ではなく、両者をできるだけ均一に混合できる方法であればよい。 例えば、前述したポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの重合工程において、ゲル化速度遅延剤存在下に(メタ)アクリル酸化合物を重合させる方法;(メタ)アクリル酸化合物を重合させてポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの含水ゲルを得た後、該含水ゲルの乾燥前または乾燥中にゲル化速度遅延剤を添加する方法等により、水溶性ポリアクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤を混合すればよい。特に、ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの重合反応を円滑に行うために、(メタ)アクリル酸化合物を重合して含水ゲルを得た後、得られた含水ゲルにゲル化速度遅延剤を添加し、その後乾燥する方法、又は該含水ゲルの乾燥中にゲル化速度遅延剤を添加する方法によって、本発明の水溶性ポリマー組成物を製造することが好ましい。 (II)皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物 上記した水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤を含有する水溶性ポリマー組成物に、更に、架橋剤として多価金属化合物を添加した組成物は、徐々にゲル化が進行する性質を有するものである。このような組成物は、皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物として使用することができ、例えば、多価金属化合物を添加してゲル状としたものを皮膚貼付剤用の支持体に塗工して硬化熟成することによって、皮膚貼付剤の膏体層を形成することができる。 膏体層形成用組成物に配合する多価金属化合物は、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーに対して架橋剤として機能するものであり、例えば、2〜6価の金属イオンと、塩化物イオン、硫酸イオン、ケイ酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンとの塩を用いることができる。多価金属イオンの具体例としては、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン等が挙げられる。多価金属化合物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムグリシネード、水酸化カルシウム、硫酸第2鉄等が挙げられる。なお、多価金属化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 多価金属化合物の添加量は、多価金属化合物を添加した組成物から形成されるゲル状膏体を支持体に塗工し、硬化熟成して膏体層とした際に、良好な保形性とするために、前記水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー100質量部に対して0.01質量部程度以上とすることが好ましく、0.05質量部程度以上とすることがより好ましく、0.1質量部程度以上とすることがさらに好ましい。また、多価金属化合物の添加量の上限は、形成される膏体層の伸縮性や粘着性を良好にするために、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー100質量部に対して20質量部程度以下とすることが好ましく、15質量部程度以下とすることがより好ましく、10質量部程度以下とすることがさらに好ましい。 本発明の皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物には、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー組成物と多価金属化合物以外に、更に、多価アルコール、pH調整剤等を添加してもよい。 これらの内で、多価アルコールは、保水剤として機能するものである。多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、ブチレングリコール等が挙げられ、これらの多価アルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 多価アルコールの使用量は、多価アルコール、水、その他の任意の添加成分等を加えた膏体層形成用組成物の全体を基準として50質量%以下であることが好ましい。50質量%を超える場合、ゲル状となった膏体を支持体に塗工し、硬化熟成して膏体層とする際に、硬化速度が遅くなるおそれがある。 pH調整剤は、多価金属化合物から金属イオン溶出を促すと共に、膏体層形成用組成物自体のpHコントロール剤として機能する。pH調整剤の具体例としては、酒石酸、乳酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。なお、pH調整剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。pH調整剤の使用量については、水、多価アルコール、その他の任意の添加成分等を加えて膏体層形成用組成物を形成した際に、該組成物のpHが3〜7程度となる量とすることが好ましい。 本発明の膏体層形成用組成物は、上記した各成分を含むものであり、通常、水を加えて分散液として用いられる。該組成物の具体的な調製方法については特に限定はないが、例えば、ゲル化速度遅延剤を含有する水溶性ポリマー組成物と多価金属化合物に、必要に応じて多価アルコールを加え、これらの成分を混合して分散液を調製し、この分散液とは別に、pH調整剤及び水を混合した水溶液を調製した後、前記分散液と水溶液を混合することによって製造することができる。 水の使用量については、特に限定的ではないが、水、多価アルコール、その他の任意の添加成分等を加えた膏体層形成用組成物の全体を基準として50質量%以上であることが好ましい。50質量%未満の場合、ゲル状となった膏体を支持体に塗工する際塗工しにくくなるおそれや、硬化熟成して膏体層とする際に、硬化速度をコントロールしにくくなるおそれがある。 (III)皮膚貼付剤 上記した水溶性ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーとゲル化速度遅延剤を含有する水溶性ポリマー組成物に架橋剤として多価金属化合物を添加し、更に、必要に応じて任意の添加成分を加えた組成物からゲル状の膏体を形成し、これを不織布などの支持体に塗工し、硬化熟成して膏体層を形成することによって、皮膚貼付剤を得ることができる。皮膚貼付剤の具体例としては、パップ剤、冷却シート等を挙げることができる。 皮膚貼付剤の製造方法としては、特に限定されず、例えば、本発明の水溶性ポリマー組成物に、多価金属化合物と任意の添加剤を添加した組成物から形成されるゲル状の組成物を、不織布等の支持体に塗工し、ポリエチレンフィルム等のライナーで表面を覆った後、必要により適度な大きさに裁断し、パッキングしてパック内で硬化熟成する方法等が挙げられる。 添加剤は、皮膚貼付剤の使用目的に応じて、公知の成分から適宜選択すればよく、例えば、パップ剤の場合、サリチル酸メチル、L−メントール、D,L−カンフル、酢酸トコフェロール等を用いることができる。また、冷却シートの場合、パラベン、色素、香料等を用いることができる。これらの添加剤の量については、通常の膏体層における添加量と同様とすればよい。 支持体として用いる不織布としては、例えば、ポリエステル製の不織布等が挙げられる。このような不織布は、一般に市販されており、例えば、貼付薬用基布(日本バイリーン株式会社の製品)等が挙げられる。 本発明の水溶性ポリマー組成物に多価金属化合物を添加して得られる組成物は、ゲルの硬化開始までに適度の誘導期を有するものとなる。このため、該組成物に添加成分を混合してゲル状の膏体とする際に、添加成分をムラ無く均一に混ぜ合わせることが出来る。また、ゲル状の膏体を支持体に塗工する際に、支持体にゲル状の膏体を塗工することが容易である。 以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。 実施例1[水溶性ポリマー組成物の調製] 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管並びに撹拌機及び撹拌羽根を備えた1000ml容の5つ口円筒型丸底フラスコを準備した。このフラスコに、n−ヘプタン340gを入れ、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g及び無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しながら80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。 一方、500ml容の三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、外部より冷却しながら、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液68.1g(0.51モル)を滴下して50モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩の2.0質量%水溶液1.15g、次亜リン酸ナトリウム1水和物の1.0質量%水溶液0.92g、及びイオン交換水51.6gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。 この単量体水溶液の全量を、前記円筒型丸底フラスコに添加した。フラスコを60℃の水浴に浸漬して58℃まで昇温し、系内を窒素置換して重合反応を行った。30分後にピーク温度79℃に達し、そこから0.5時間、60℃の水浴に浸漬させた状態を保持し、反応を継続させた。0.5時間後の内液温度は59℃であった。 重合終了後、水溶性ポリアクリル酸ポリマーの含水ゲルを含むスラリーに、3質量%のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液30gを添加した。0.5時間攪拌を行なった後、125℃の油浴で前記スラリーを昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら138gの水を系外へ除去した。さらに、系内のn−ヘプタンを蒸留により除去して、乾燥させることにより、水溶性ポリマー組成物90.1gを得た。 [膏体層形成用組成物の調製] 蒸留水86.55質量部に、酒石酸0.25質量部を添加し、溶解させ、これをA液とした。 次に、500ml容のビーカーに、グリセリン4質量部及びプロピレングリコール4質量部からなる混合溶媒を添加し、乾燥水酸化アルミニウムゲル(協和化学工業株式会社製、型番:S−100、酸反応性:0.1N−HCl=180秒)0.2質量部を添加し、分散させ、これをB液とした。 翼径75mmのピッチドパドルを用いて、前記B液を100rpmで撹拌しながら、前記水溶性ポリマー組成物5質量部を2秒間で添加し、3秒間攪拌を継続した後、前記A液全量を2秒間で添加した。その後、15秒間攪拌した後、攪拌を停止し、膏体層形成用組成物を作製した。 実施例2 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管並びに撹拌機及び撹拌羽根を備えた1000ml容の5つ口円筒型丸底フラスコを準備した。このフラスコに、n−ヘプタン340gを入れ、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g及び無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しながら80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。 一方、500ml容の三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、外部より冷却しながら、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液68.1g(0.51モル)を滴下して50モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩の2.0質量%水溶液1.15g、次亜リン酸ナトリウム1水和物の1.0質量%水溶液0.92g、及びイオン交換水51.6gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。 この単量体水溶液の全量を、前記円筒型丸底フラスコに添加した。フラスコを60℃の水浴に浸漬して58℃まで昇温し、系内を窒素置換して重合反応を行った。30分後にピーク温度79℃に達し、そこから1時間、55℃の水浴に浸漬させた状態を保持し、反応を継続させた。1時間後の内液温度は53℃であった。 重合終了後、水溶性ポリアクリル酸ポリマーの含水ゲルを含むスラリーに、10質量%のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液80gを添加した。0.5時間攪拌を行なった後、125℃の油浴で前記スラリーを昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら181gの水を系外へ除去した。さらに、系内のn−ヘプタンを蒸留により除去して、乾燥させることにより、水溶性ポリアクリル酸ポリマー組成物97.7gを得た。 得られた水溶性アクリル酸ポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の方法にて膏体層形成用組成物を作製した。 実施例3 300ml容の三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液27g(0.3モル)を入れ、外部より冷却しながら、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液20g(0.15モル)を滴下して50モル%の中和を行った後、イオン交換水22.6gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管並びに撹拌機及び撹拌羽根を備えた500ml容の5つ口円筒型丸底フラスコに、前記単量体水溶液の全量を入れた。系内を窒素置換した後、フラスコを60℃の水浴に浸漬して58℃まで昇温した。3質量%のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液30gを加え、0.5時間攪拌した後、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩の2.0質量%水溶液0.54g、及び次亜リン酸ナトリウム1水和物の1.0質量%水溶液0.72gを加えて重合反応を行った。1分後から系内が増粘し、2分後に撹拌を停止させた。4分後にピーク温度75℃に達し、そこから3時間、60℃の水浴に浸漬させた状態を保持し、反応を継続させた。3時間後の内液温度は58℃であった。 重合終了後、一体化した水溶性アクリル酸ポリマーの含水ゲルを120℃で2時間乾燥させた後に、粉砕し、110℃で2時間乾燥させることにより、水溶性ポリアクリル酸ポリマー組成物24.4gを得た。 得られた水溶性ポリアクリル酸ポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の方法にて膏体層形成用組成物を作製した。 実施例4 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管並びに撹拌機及び撹拌羽根を備えた1000ml容の5つ口円筒型丸底フラスコを準備した。このフラスコに、n−ヘプタン340gを入れ、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g及び無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しながら80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。 一方、500ml容の三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、外部より冷却しながら、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液68.1g(0.51モル)を滴下して50モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩の2.0質量%水溶液1.15g、次亜リン酸ナトリウム1水和物の1.0質量%水溶液0.92g、及びイオン交換水51.6gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。 この単量体水溶液の全量を、前記円筒型丸底フラスコに添加した。フラスコを60℃の水浴に浸漬して58℃まで昇温し、系内を窒素置換して重合反応を行った。30分後にピーク温度79℃に達し、そこから0.5時間、60℃の水浴に浸漬させた状態を保持し、反応を継続させた。0.5時間後の内液温度は59℃であった。 重合終了後、水溶性ポリアクリル酸ポリマーの含水ゲルを含むスラリーに、10質量%のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液100gを添加した。0.5時間攪拌を行なった後、125℃の油浴で前記スラリーを昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら199gの水を系外へ除去した。さらに、系内のn−ヘプタンを蒸留により除去して、乾燥させることにより、水溶性ポリアクリル酸ポリマー組成物99.4gを得た。 得られた水溶性ポリアクリル酸ポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の方法にて膏体層形成用組成物を作製した。 比較例1 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管並びに撹拌機及び撹拌羽根を備えた1000ml容の5つ口円筒型丸底フラスコを準備した。このフラスコに、n−ヘプタン340gを入れ、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g及び無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しながら80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。 一方、500ml容の三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、外部より冷却しながら、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液68.1g(0.51モル)を滴下して50モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩の2.0質量%水溶液1.15g、次亜リン酸ナトリウム1水和物の1.0質量%水溶液0.92g、及びイオン交換水51.6gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。 この単量体水溶液の全量を、前記円筒型丸底フラスコに添加した。フラスコを60℃の水浴に浸漬して58℃まで昇温し、系内を窒素置換して重合反応を行った。30分後にピーク温度79℃に達し、そこから0.5時間、60℃の水浴に浸漬させた状態を保持し、反応を継続させた。0.5時間後の内液温度は59℃であった。 重合終了後、125℃の油浴で水溶性アクリル酸ポリマーの含水ゲルを含むスラリーを昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら108gの水を系外へ除去した。さらに、系内のn−ヘプタンを蒸留により除去して、乾燥させることにより、水溶性ポリアクリル酸ポリマー89.1gを得た。 得られた水溶性ポリアクリル酸ポリマーを用いて、実施例1と同様の方法にて膏体層形成用組成物を作製した。 比較例2 比較例1で得られた水溶性ポリアクリル酸ポリマーを用いてゲル化基剤を調製する際に、水溶性ポリアクリル酸ポリマー5質量部と同時にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.2質量部を添加した以外は、実施例1と同様の方法にて膏体層形成用組成物を作製した。 実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた膏体層形成用組成物について、以下に示す方法により、ゲル強度を評価した。評価結果を表1に示す。 [ゲルの熟成] 調製した膏体層形成用組成物95〜100gをポリエチレン製容器(アズワン株式会社製、商品名:タイトボーイTB−2)に移し、25℃、相対湿度60%に調整した恒温恒湿器(エスペック株式会社製、商品名:LHU−113型)に入れ、所定時間熟成させた(1,2,3,6,9,12,15,18,24,30,36,48時間)。 [ゲル強度] 調製直後及び所定時間熟成後の膏体層形成用組成物について、カードメーター(アイテクノエンジニアリング社製、商品名:カードメーターMAX、型式:ME−303)を用いて、ゲル強度を測定した。なお、測定条件は、荷重:100g、感圧軸径:16mm、スピード:7秒/インチ、測定モード:ネンチュウである。 実施例5[パップ剤の作製] 実施例1において調製した膏体層形成用組成物を用いて、ポリエステル製の不織布(日本バイリーン株式会社製、商品名:貼付薬用基布)の片面に5mm厚で延伸塗布し、引き続き、ゲルの上をナイロンフィルムで覆い、100mm×50mmの大きさに裁断して、パップ剤を作製した。 実施例6〜8及び比較例3〜4 表1に示す実施例2〜4及び比較例1〜2で得られた膏体層形成用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして、パップ剤をそれぞれ作製した。 実施例5〜8及び比較例3〜4で得られたパップ剤中のゲルの外観について、以下に示す方法により評価した。評価結果を表1に示す。[ゲルの状態] パップ剤を製造の際、膏体層形成用組成物を塗工直後のゲルの状態について、目視にて、ままこ(継粉)の有無を確認した。 ○:ままこなし ×:ままこあり 表1より、実施例1〜4の水溶性ポリアクリル酸ポリマー組成物は、膏体層形成用組成物の調製後、3時間以上、200N/m2以下の低ゲル強度状態を保持するものであり、ゲルの硬化開始まで適度の誘導期を有することが判る。 また、実施例5〜8の本発明のパップ剤を製造する際、膏体層形成用組成物にままこが発生しないため、得られるパップ剤の外観性に優れていることがわかる。(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリル酸化合物を重合して含水ゲルを得た後、該含水ゲルの乾燥前又は乾燥中にゲル化速度遅延剤を添加して乾燥することを特徴とする水溶性ポリマー組成物の製造方法であって、該ゲル化速度遅延剤の添加量が、該(メタ)アクリル酸化合物 100質量部に対して0.1〜10質量部である、水溶性ポリマー組成物の製造方法。請求項1の方法によって得られる水溶性ポリマー組成物に、2〜6価の金属イオンを含む多価金属化合物を添加する工程を含む皮膚貼付剤の膏体層形成用組成物の製造方法。


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