タイトル: | 特許公報(B2)_ビニルエーテルの製造方法 |
出願番号: | 2011516091 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07C 41/08,C07C 43/18,C07C 43/04,C07B 61/00 |
柿沼 眞一 三田 真哉 室谷 昌宏 JP 5734182 特許公報(B2) 20150424 2011516091 20100528 ビニルエーテルの製造方法 日本カーバイド工業株式会社 000004592 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 小林 良博 100102990 出野 知 100128495 蛯谷 厚志 100093665 柿沼 眞一 三田 真哉 室谷 昌宏 JP 2009129969 20090529 20150617 C07C 41/08 20060101AFI20150528BHJP C07C 43/18 20060101ALI20150528BHJP C07C 43/04 20060101ALI20150528BHJP C07B 61/00 20060101ALN20150528BHJP JPC07C41/08C07C43/18 CC07C43/18 AC07C43/04 AC07B61/00 300 C07C 41/08 C07C 43/04 C07C 43/18 C07B 61/00 CAplus/REGISTRY(STN) 英国特許出願公告第00616197(GB,A) 特公昭35−000318(JP,B1) 特表2003−530375(JP,A) 特開2005−187703(JP,A) 特開平10−182536(JP,A) 特開平04−198144(JP,A) 特開2003−286216(JP,A) 特開2008−137974(JP,A) 特開昭48−010013(JP,A) 特開平10−279513(JP,A) Journal of Organic Chemistry,1959年,24,P1752-1755 8 JP2010059488 20100528 WO2010137742 20101202 21 20130306 増永 淳司 本発明は、塩基の存在下に、反応性の低い第3級アルコールをアセチレンと反応させて、ビニルエーテルを製造する方法に関する。 ビニルエーテルは、塗料用樹脂、接着剤、粘着剤、印刷インキ、レジスト樹脂等のモノマー成分として用いられ、合成樹脂等に様々な特性を付与する事が出来る他、医薬、農薬等の中間体にも利用され工業上重要な化合物である。例えば、本発明により製造される化合物の一つである1−アダマンチルビニルエーテルや1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルは、短光波長光における透明性、ドライエッチング耐性に優れるため、ArFエキシマレーザー等の短波長光を光源とするレジスト用途での、或いは電子線リソグラフィーに好適なレジスト組成物としての使用が期待される。 ビニルエーテルは、従来、アルカリ金属触媒の存在下に、アルコールとアセチレンとを120〜200℃の高温下で反応させるレッペ反応により製造される。前記レッペ反応は、原料アルコールが第1級及び第2級アルコールのように反応性に富む場合には、速やかに進行しビニルエーテル製造の有効な手段となる。しかしながら、第3級アルコールのように反応性の低いアルコールに対しては、アルコールの転化が十分でなく、さらにビニル化の進行が不完全であるという問題があった(非特許文献1,2)。 また、アルコールとアセチレンの反応を所謂超塩基性媒体中で行う方法が報告されている。例えば、アルカリ金属水酸化物を触媒として反応を非プロトン性極性溶媒中で行い、効率的にビニルエーテルを製造する方法が報告されている(非特許文献3)。しかし、この方法は、第1級及び第2級アルコールでは、反応が速く、アルコールの転化率、ビニルエーテルの生成率ともに良好な結果が得られるものの、第3級アルコールのビニル化の場合には収率が低いという問題がある。 さらに、超塩基性媒体中でアルコールをアセチレンと反応させる方法の改良法も報告されている。すなわち、反応系中で無水水酸化セシウムを生成させて触媒として用いることで反応を加速する方法が報告されている(非特許文献4)。しかしながら、この方法においても、アセチレン初期圧16気圧にて反応させた場合、第3級アルコールであるt−ブタノールの転化率は25%、ビニルエーテルの収率は8%と不十分なものである。尚、アセチレン圧を大気圧下で反応させた場合には、痕跡量のt−ブチルビニルエーテルも検出されなかったことも記載されている。 また、第3級アルコールである1−アダマンタノール及びトリ(n−プロピル)カルビノールを、トルエン溶媒中で金属カリウムと作用させて触媒を調製した後、18kg/cm2のアセチレン初期圧にてビニル化する方法が報告されている(非特許文献5)。しかしながら、この方法においても、高いアセチレン圧にて反応させているにもかかわらず、収率は67〜40%と低く十分な方法とはいえない。 さらに、比較的入手し易いアルキルビニルエーテルを用いて、アルコールを金属触媒の存在下にエーテル交換反応させ、目的とするビニルエーテルを得る方法が知られている。例えば、空気中で安定なパラジウム触媒の存在下に、n−ブチルビニルエーテルと第3級アルコールであるt−ブタノール及び1−アダマンタノールを反応させる方法が報告されている(非特許文献6)。しかし、この方法では、収率が72〜61%と低く、平衡化に32〜48時間と長時間を要し、更にアルコールに対して20倍量のアルキルビニルエーテルを使用するなど生産性が低いという問題があった。 上述のように、従来のビニルエーテルの製造方法において、アルコールのビニル化が不十分な場合、ビニルエーテルとアルコールとは類似した構造を有するため、蒸留での分離は効率の良いものでない。そのため、高純度ビニルエーテルの製造は、精製工程での負荷が高くなり、収率も低下するため、製造コストが高くなるという問題があった。 この解決策として、反応性の低いアルコールを効率的にビニル化する方法が提案されている。特許文献1には、液相中、塩基性アルカリ金属化合物及び1,4−ジエトキシブタン又は1,4−ジビニロキシブタン等の共触媒の存在下に、アルコールをアセチレン類と反応させる方法が開示されている。しかし、この方法で短時間にアルコールを十分に転化させるには、その実施例に開示されているように約20kg/cm2(絶対圧)と高いアセチレン圧力を必要とする。アセチレンは、2kg/cm2(ゲージ圧)を越える圧力下では非常に不安定であり、自己分解爆発を起こし易く、高圧になるほどその危険性は高く、上記方法は安全上好ましくない。また特許文献1には、原料としてフェノールを用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒中でフェニルビニルエーテルを合成することは記載されているものの、原料として第3級の固体アルコールを用いる場合は何ら記載されていない。 その他の方法として、ビニルエステル化合物とアルコールを金属触媒の存在下に反応させて、対応するビニルエーテルを得る方法が知られている。例えば、遷移金属触媒としてイリジウム化合物を使用し、トルエン溶媒中、炭酸ナトリウムの存在下に、酢酸ビニルと1−アダマンタノールをエステル交換反応させて目的物を得る方法が開示されている(特許文献2)。この方法では、1−アダマンタノールの転化率は93%に達し、目的物の収率も91%と高い。しかしながら、未転化のアルコールの他に1%程度の不要な副生物を生じ、高純度の製品を得るには十分な方法とはいえない。さらに、高価なイリジウム触媒を使用し、反応系が希薄であり生産性が低いなど、尚解決すべき課題があった。Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.,Vol.2,No.4,1963,293−296.J.Org.Chem.,Vol.24,1959,1752−1755Z.Chem.Bd.26,1986,Heft2,41−49.Russian Journal of Organic Chemistry,Vol.41,No.5,2005,656−660.Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,1973,11(5),1043−1051.J.Org.Chem.,Vol.68,2003,5225−5227.特許公表2003−530375特開2003−73321 上述のとおり、これまで報告されたビニルエーテルの合成方法では、第3級アルコールを、低アセチレン圧下で、高い転化率でビニル化することはできない。従って、反応性の低い第3級アルコールを安全かつ工業的にビニル化してビニルエーテルを製造する方法が求められている。なお本発明に係る1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルは、従来報告例がなく、新規化合物であると考えられる。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、溶媒として環状尿素化合物もしくはグライム系化合物またはこれらの混合物を用い、塩基の存在下に、アセチレンと第3級アルコールとを反応させることによって、第3級アルコールを安全かつ工業的にビニル化する製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、塩基の存在下に、アセチレンと第3級アルコールとから下記式(1)で示されるビニルエーテルを製造する方法であって前記第3級アルコールが下記式(2)で示されるアルコールであり、下記式(3)で示される環状尿素化合物或いは下記式(4)で示されるグライム系化合物またはこれらの混合物を溶媒として用いて反応させることを特徴とするビニルエーテルの製造方法を提供するものである。 上記式(1)〜(4)において、R1〜R3は、独立に、上記式(5)で示される炭素数1以上の炭化水素基[ここで、Xは炭素原子であり、VおよびWは、独立に、水素または置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、VまたはWのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)であり、Yは水素もしくは置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、YのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)、または第3級水酸基、アルコキシ基、アルキルチオ基から選択される1種である]を示し、R1〜R3の2以上が縮合して環を形成しても良く(但し、R1〜R3の2以上が縮合して芳香族環を形成する場合を除く)、また、R4〜R9は、独立に、水素若しくは炭素数1以上のアルキル基又は−(CH2CH2O)mR10を示し、R10、R11は、独立に、水素又はC1〜C4の飽和若しくは不飽和炭化水素基を示し、lおよびmは、独立に、1以上の整数であり、nは1〜4の整数である。 本発明によれば、反応性の低い第3級アルコールを、低アセチレン圧下で短時間かつ効率的にビニル化して、高純度のビニルエーテルを製造することができる。 図1は実施例11で合成した1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの1H−NMRチャートである。 図2は実施例11で合成した1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの13C−NMRチャートである。 以下本発明について詳細に説明する。 本発明は、塩基の存在下に、アセチレンと第3級アルコールとから下記式(1)で示されるビニルエーテルを製造する方法であって、前記第3級アルコールが下記式(2)で示されるアルコールであり、溶媒として、下記式(3)で示される環状尿素化合物もしくは下記式(4)で示されるグライム系化合物またはこれらの混合物を用いて反応させ、ビニルエーテルを製造する方法を提供するものである。 上記式(1)〜(4)において、R1〜R3は、独立に、上記式(5)で示される炭素数1以上の炭化水素基[ここで、Xは炭素原子であり、VおよびWは、独立に、水素または置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、VまたはWのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)であり、Yは水素もしくは置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、YのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)、または第3級水酸基、アルコキシ基、アルキルチオ基から選択される1種である]を示し、R1〜R3の2以上が縮合して環を形成しても良く(但し、R1〜R3の2以上が縮合して芳香族環を形成する場合を除く)、また、R4〜R9は、独立に、水素若しくは炭素数1以上のアルキル基又は−(CH2CH2O)mR10であり、R10及びR11は、独立に、水素又はC1〜C4の飽和若しくは不飽和炭化水素基を示し、lおよびmは、独立に、1以上の整数であり、nは1〜4の整数である。 本発明に用いる第3級アルコールは、反応条件下、分子内でアセタール環を優先的に形成しないものが好ましい。本発明で用いる第3級アルコールが分子内に2以上の水酸基を有する場合、反応が進行して2以上の水酸基の一つがビニル化されると、このビニル基と他の水酸基が分子内で環化しアセタール環を形成する場合がある。この副反応である分子内環化反応が優先すると、目的物が得られない場合があり好ましくない。従って、本発明で用いる前記式(2)で示す第3級アルコールにおいて、R1〜R3は、独立に、上記式(5)で示される炭素数1以上の炭化水素基[ここで、Xは炭素原子であり、VおよびWは、独立に、水素または置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、VまたはWのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)であり、Yは、水素もしくは置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、YのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)、または第3級水酸基、アルコキシ基、アルキルチオ基から選択される1種である]を示し、R1〜R3の2以上が縮合して環を形成しても良い(但し、R1〜R3の2以上が縮合して芳香族環を形成する場合を除く)。 本発明の各式における前述の各置換基は、反応系中で不活性であるか反応を阻害しない構造であれば良く、例えばアルコキシ基、アルキルスルファニル基、水酸基などを挙げることができる。好ましいR1、R2、R3としては、置換又は非置換のアルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、特に非置換のアルキル基、シクロアルキル基が好ましい。 本発明におけるアルコールの具体例としては、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3−エチル−3−ペンタノール、9−オクチル−9−ヘプタデカノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3,3,4−トリメチル−1,4−ペンタンジオール、1−メチルシクロヘキサノール、1,1,1−トリシクロヘキシルメタノール、1−アダマンタノール、アダマンタン−1,3−ジオール、2−メチル−2−アダマンタノール、2−(1−アダマンチル)プロパン−2−オール、テルピネン−4−オール、α−テルピネオール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、リナロール、ゲラニルリナロール、イソフィトール、ジヒドロミルセノール、25−ヒドロキシビタミン D2、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−フェニルペンタン−2−オール、1,1−ジフェニルエタノール、1,1,1−トリフェニルメタノール、1−シクロプロピル−1,1−ジフェニルメタノール、1−フェニル−1−シクロヘキサノール、1,1−ジシクロプロピル−1−フェニルメタノール、ビス−(4−ヒドロキシ−1−ナフチル)フェニルメタノール、9−フェニル−9−フルオレノールなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。 本発明の製造方法における塩基としては、特に制限するものではないが、アルカリ金属化合物を用いることができる。アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、これら水酸化物とアルコールを反応して得られるアルコラートなどが挙げられる。特に好ましい塩基としては、水酸化カリウム、t−ブトキシカリウムが挙げられる。塩基の使用量についての制限は特にないが、通常アルコールに対して1〜200モル%程度使用し、5〜100モル%使用することが好ましく、10〜60モル%使用することが更に好ましい。 本発明の製造方法におけるアセチレンの圧力には、特に制限はないが、安全上の観点から2kg/cm2(ゲージ圧)以下が好ましく、更に好ましくは大気圧以上、1,8kg/cm2(ゲージ圧)以下である。 本発明の製造方法における反応温度には、特に制限はないが、120〜180℃が好ましく、更に好ましくは140〜160℃である。 本発明の製造方法における反応溶媒としては、下記式(3)で示される環状尿素化合物もしくは下記式(4)で示されるグライム系化合物またはこれらの混合物を用いる。 上記式(3)および(4)において、R4〜R9は、独立に、水素、若しくは炭素数1以上のアルキル基又は−(CH2CH2O)mR10であり、R10及びR11は、独立に、水素又はC1〜C4の飽和若しくは不飽和炭化水素基であり、lおよびmはそれぞれ1以上の整数であり、nは1〜4の整数である。 上記式(3)において、R4及びR9として好ましいものには、鎖状又は分枝のアルキル基、末端がアルキル又はアルケニルであってオキシエチル単位を繰返し単位とする基が挙げられ、特に好ましいものはメチル基である。また、R5〜R8として好ましいものとしては、水素、鎖状又は分枝のアルキル基が挙げられ、特に好ましいものは水素である。 上記式(4)において、R10及びR11として好ましいものには、飽和又は不飽和の炭化水素基、水素が挙げられ、特に好ましいものは、メチル基、エテニル基である。 本発明の製造方法における反応溶媒としては、上記式(3)で示される環状尿素化合物および上記式(4)で示されるグライム系化合物から選択される1種以上を用いることが可能であり、さらに他の非プロトン性極性溶媒や非プロトン性無極性溶媒を併用することもできる。本発明における反応溶媒としては、効率的に反応を進行させる観点から、上記式(3)で示される環状尿素化合物又は上記式(4)で示されるグライム系化合物の含有率が高いことが好ましく、更に好ましくは、上記式(3)で示される環状尿素化合物および上記式(4)で示されるグライム系化合物から選択される1種以上のみからなる溶媒を使用することである。 本発明の製造方法における環状尿素化合物として代表的にものには、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジ−2−オン等が挙げられるが、これらに限定するものではない。本発明における環状尿素化合物としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジ−2−オンを用いることが好ましい。 本発明の製造方法におけるグライム系化合物として代表的なものには、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。 本発明の製造方法において、上記特定の溶媒の存在下に、アルコールと生成したビニルエーテルの合計量は、その他全量に対して、17重量%以上の濃度に保って反応させることが好ましく、更に好ましくは、25〜90重量%の濃度範囲に保って反応させる。固体アルコールを原料に使用する場合、スラリーの状態で反応させることもできるが、アセチレンの吸収速度が低下し生産性が悪化するため、反応温度下において原料のアルコールは溶媒に溶解している状態が好ましい。 本発明の下記式(1)で示されるビニルエーテルの製造方法において、アルコールと生成したビニルエーテルの合計が、その他全量に対して、17重量%未満の濃度であると、アセチレンがアルコールの転化のために有効に消費されず効率的でない場合がある。従って、本発明の下記式(1)で示されるビニルエーテルの製造方法において、反応系内の、原料のアルコールと生成するビニルエーテルの合計が17重量%以上の濃度であるような条件で反応させることが好ましい。特に、本発明の下記式(1)で示されるビニルエーテルの製造方法では、反応系内の、原料の第3級アルコール(2)と生成するビニルエーテルの合計を25〜90重量%の濃度で反応させることが好ましい。 上記式(1)及び(2)において、R1〜R3は、独立に、上記式(5)で示される炭素数1以上の炭化水素基[ここで、Xは炭素原子であり、VおよびWは、独立に、水素または置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、VまたはWのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)であり、Yは、独立に、水素もしくは置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、YのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)、または第3級水酸基、アルコキシ基、アルキルスルファニル基から選択される1種である]であり、R1〜R3の2以上が縮合して環を形成しても良い(但し、R1〜R3の2以上が縮合して芳香族環を形成する場合を除く)。 本発明の製造方法は、連続工程、半連続工程又はバッチ工程のいずれの反応様式でも実施することができる。連続工程では、アルコール、塩基性化合物、溶媒、アセチレンを連続的に供給し、反応混合物を連続的に排出することができる。半連続工程では、アルコール、塩基性化合物、溶媒、アセチレンのうちの一部を連続的に供給し、反応混合物を連続的に排出することができる。バッチ工程では、アルコール、塩基性化合物、溶媒、アセチレンのうち一部は予め全量反応器に装入し、反応終了後に反応混合物を排出することができる。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明を、これら実施例に限定するものでないことはいうまでもない。 実施例1 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン266.8g、1−アダマンタノール159.9g(1.05mol)、純度95重量%の水酸化カリウム6.40g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が121℃を越えてから約1.9時間反応させた。この間、反応容器内温が160℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は97.9%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は97.3%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は28.0リットルであり、理論量に対して120%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは81%であった。 実施例2 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン266.4g、1−アダマンタノール159.7g(1.05mol)、純度98重量%のt−ブトキシカリウム12.4g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が133℃を越えてから約4.5時間反応させた。この間、反応容器内温が145℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は98.1%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は96.8%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は28.7リットルであり、理論量に対して123%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは79%であった。 実施例3 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン266.4g、1−アダマンタノール160.3g(1.05mol)、純度98重量%のt−ブトキシカリウム12.4g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が158℃を越えてから約1.8時間反応させた。この間、反応容器内温が175℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液482.5gを得た。ガスクロ分析の結果、1−アダマンタノールの転化率は99.9%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は97.1%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は31.4リットルであり、理論量に対して135%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは72%であった。 実施例4 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン478.0g、1−アダマンタノール288.4g(1.88mol)、純度98重量%のt−ブトキシカリウム22.4g(0.20mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が155℃を越えてから約8.5時間反応させた。この間、反応容器内温が165℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液874.9gを得た。ガスクロ分析の結果、1−アダマンタノールの転化率は99.8%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は98.3%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は70.5リットルであり、理論量に対して168%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは59%であった。 実施例3及び4で得られた反応液を一つにまとめ、減圧蒸留、再沈殿及び再結晶操作による通常の精製を経て、451.4gの乾燥結晶を得た。NMRによる分析の結果、高純度の1−アダマンチルビニルエーテルであった(ガスグロマトグラフィーによる純度99.7%、収率86.7%)。 得られた1−アダマンチルビニルエーテルのNMR測定結果を示す。 1H−NMR(CDCl3、TMS、400MHz):δppm 1.59−1.83(m,12H),2.18(brs,3H),4.02(dd,1H,J=6.2,0.7Hz),4.42(dd,1H,J=13.7,0.7Hz),6.59(dd,1H,J=13.7,6.2Hz) 13C−NMR(CDCl3、100MHz):δppm 30.6,36.2,41.8,75.3,90.3,145.0 実施例5 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン345.1g、1−アダマンタノール75.0g(0.49mol)、純度95重量%の水酸化カリウム2.89g(0.05mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が137℃を越えてから約3.7時間反応させた。この間、反応容器内温が146℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は56.8%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は55.9%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は13.0リットルであり、理論量に対して119%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは47%であった。 実施例6 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン376.7g、1−アダマンタノール250.5g(1.65mol)、純度95重量%の水酸化カリウム11.1g(0.19mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、昇温しながら反応容器内の雰囲気を窒素ガスからアセチレンガスに切り替え、容器内温が147℃に達してから流速0.3ml/分にて、大気圧下にアセチレンガスを通気した。この時点を起点として、約62時間反応させた。尚この間、反応速度の低下を防ぐために、途中で水酸化カリウム11.8g(0.20mol)を追加し、反応容器内温が160℃を越えないように制御した。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液686.2gを得た。ガスクロ分析の結果、1−アダマンタノールの転化率は97.2%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は97.1%であった。実施例6において、通気したアセチレンの総量は1107Lであったが、所望により、未反応のアセチレンを再び反応槽に循環させる方法をとることで、有効にアセチレンを再利用し正味の消費量を抑制することも出来る。 実施例7 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジ−2−オン265.3g、1−アダマンタノール161.1g(1.06mol)、純度95重量%の水酸化カリウム6.37g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が132℃を越えてから約6.8時間反応させた。この間、反応容器内温が146℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は50.0%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は49.7%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は17.7リットルであり、理論量に対して75%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは66%であった。 実施例8 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、トリエチレングリコールジメチルエーテル266.8g、1−アダマンタノール155.8g(1.02mol)、純度95重量%の水酸化カリウム6.39g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が137℃を越えてから約19.2時間反応させた。この間、反応容器内温が170℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は77.5%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は77.1%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は23.3リットルであり、理論量に対して103%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは75%であった。 実施例9 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、テトラエチレングリコールジメチルエーテル265.5g、1−アダマンタノール160.1g(1.05mol)、純度95重量%の水酸化カリウム6.39g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が137℃を越えてから約13.3時間反応させた。この間、反応容器内温が146℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は37.4%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は36.8%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は13.3リットルであり、理論量に対して57%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは65%であった。 実施例10 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン395.8g、1−アダマンタノール25.1g(0.16mol)、純度95重量%の水酸化カリウム0.98g(0.02mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が137℃を越えてから約4.3時間反応させた。この間、反応容器内温が147℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は27.8%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は27.1%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は3.6リットルであり、理論量に対して98%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは28%であった。 実施例11 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン260.7g、1−メチルシクロヘキサノール80.5g(純度96%、0.68mol)、純度95重量%の水酸化カリウム20.5g(0.35mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が130℃を越えてから約9.4時間反応させた。この間、反応容器内温が145℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−メチルシクロヘキサノールの転化率は30.5%であり、1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの選択率は29.4%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は5.9リットルであり、理論量に対して39%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは76%であった。 実施例11で得られた反応液の一部(反応液全量に対して38.9%)を分取し、反応溶媒を水洗除去後、大気圧下に蒸留し、165℃で留出した留分3.0gを集めた。NMRによる分析の結果、下記式(7)で示される1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルであった。 得られた1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルのNMR測定結果を示す。 1H−NMR(CDCl3、TMS、400MHz):δppm 1.21(s,3H;d),1.24−1.78(m,10H;e,f,g),4.03(dd,1H,J=6.2,0.3Hz;Ha1),4.43(dd,1H,J=13.8,0.4Hz;Ha2),6.44(dd,1H,J=13.7,6.2Hz;Hb) 13C−NMR(CDCl3、100MHz):δppm 21.0(f),24.5(g),24.6(d),35.9(e),75.9(c),89.9(a),144.8(b) 実施例12 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン337.2g、1−メチルシクロヘキサノール13.8g(純度96%、0.12mol)、純度95重量%の水酸化カリウム3.6g(0.06mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が130℃を越えてから約0.9時間反応させた。この間、反応容器内温が145℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−メチルシクロヘキサノールの転化率は8.3%であり、1−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの選択率は8.3%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は1.1リットルであり、理論量に対して42%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは20%であった。 実施例13 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン266.8g、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール160.2g(純度99%、1.08mol)、純度95重量%の水酸化カリウム29.3g(0.50mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が150℃を越えてから約11.7時間反応させた。この間、反応容器内温が161℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールの転化率は62.7%であり、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールモノビニルエーテルの選択率は38.9%、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジビニルエーテルの選択率は4.2%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は34.1リットルであり、理論量に対して70%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは61%であった。 実施例14 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン401.2g、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール45.0g(純度99%、0.30mol)、純度95重量%の水酸化カリウム8.1g(0.14mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が150℃を越えてから約1.7時間反応させた。この間、反応容器内温が161℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールの転化率は59.4%であり、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールモノビニルエーテルの選択率は14.8%、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジビニルエーテルの選択率は2.7%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は10.0リットルであり、理論量に対して73%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは24%であった。 比較例1 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドン266.6g、1−アダマンタノール160.3g(1.05mol)、純度95重量%の水酸化カリウム6.38g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が136℃を越えてから約4.0時間反応させた。この間、反応容器内温が143℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は1.3%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は0.8%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は2.3リットルであり、理論量に対して10%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは8%であった。 比較例2 攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製オートクレーブに、ジメチルスルホキシド267.8g、1−アダマンタノール159.9g(1.05mol)、純度95重量%の水酸化カリウム6.35g(0.11mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が118℃を越えてから約5時間反応させた。この間、反応容器内温が165℃を越えないように制御し、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm2に保った。反応を停止後、残留するアセチレンガスをパージして反応液を採取し、ガスクロ分析を行った結果、1−アダマンタノールの転化率は11.3%であり、1−アダマンチルビニルエーテルの選択率は10.9%であった。吸収されたアセチレンの体積(反応液中への溶解分を含む)は13.8リットルであり、理論量に対して59%であったことから、ビニル化に有効に利用されたアセチレンは18%であった。 上記表1の比較例2の結果から明らかなように、従来のアルコールとアセチレンの反応において、多くの刊行物中に代表的に記載されているジメチルスルホキシドを使用した場合には、消費したアセチレンの量に対して十分なアルコールの転化が得られず、効率的でない。また比較例1の結果より、N−メチル−2−ピロリドンを使用した場合には、同様にアルコールの転化が十分でなく、更に低アセチレン圧下においては有意なアセチレンの吸収を示さない。 一方、本発明のビニルエーテルの製造方法を用いた実施例1〜14では、反応性の低い第3級アルコールを、低アセチレン圧下で、短時間かつ効率的にビニル化することができ、高純度のビニルエーテルを得ることができる。 塩基の存在下に、アセチレンと第3級アルコールとから式(1):で示されるビニルエーテルを製造する方法であって、前記第3級アルコールが式(2):で示されるアルコールであり、溶媒として、式(3):で示される環状尿素化合物1種以上を用いて反応させることを特徴とするビニルエーテルの製造方法: 上記式(1)〜(3)において、R1〜R3は、独立に、式(5):で示される炭素数1以上の炭化水素基[ここで、Xは炭素原子であり、VおよびWは、独立に、水素または置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、VまたはWのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)であり、Yは水素もしくは置換基を有しても良い炭素数が1以上の炭化水素基(但し、YのXに直接結合する炭素が、置換基として、第3級アルコール(2)の水酸基とシス型配置の第1級または第2級水酸基を有する場合を除く)、または第3級水酸基、アルコキシ基、アルキルチオ基から選択される1種である]を示し、R1〜R3の2以上が縮合して環を形成しても良く(但し、R1〜R3の2以上が縮合して芳香族環を形成する場合を除く)、また、R4〜R9は、独立に、水素若しくは炭素数1以上のアルキル基又は−(CH2CH2O)mR10を示し、R10は、水素又はC1〜C4の飽和若しくは不飽和炭化水素基を示し、mは、独立に、1以上の整数であり、nは1〜4の整数である。 前記第3級アルコールが2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1−メチルシクロヘキサノール、1−アダマンタノール、アダマンタン−1,3−ジオールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のビニルエーテルの製造方法。 反応系内の、前記アルコールと生成する前記ビニルエーテルとの濃度の合計量が17重量%以上である請求項1又は2に記載のビニルエーテルの製造方法。 反応系内の、前記第3級アルコールと生成する前記ビニルエーテルとの濃度の合計量が25〜90重量%である請求項1又は2に記載のビニルエーテルの製造方法。 前記環状尿素化合物として、前記式(3)において、R4及びR9が、独立に、アルキル基であり、R5、R6、R7及びR8が、独立に、水素又はアルキル基である環状尿素化合物を用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニルエーテルの製造方法。 前記環状尿素化合物が1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンもしくは1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジ−2−オンまたはこれらの混合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。 前記塩基が水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びt−ブトキシカリウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載のビニルエーテルの製造方法。 下記式(6):で示される1−メチルシクロヘキシルビニルエーテル。