タイトル: | 特許公報(B1)_血清または血漿分離用組成物及び血液検査用容器 |
出願番号: | 2011512776 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 33/48,C08K 3/00,C08L 71/02,G01N 1/10 |
安楽 秀雄 丹生谷 雅敏 JP 4750911 特許公報(B1) 20110527 2011512776 20110125 血清または血漿分離用組成物及び血液検査用容器 積水メディカル株式会社 390037327 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所 110001232 安楽 秀雄 丹生谷 雅敏 JP 2010043140 20100226 20110817 G01N 33/48 20060101AFI20110728BHJP C08K 3/00 20060101ALI20110728BHJP C08L 71/02 20060101ALI20110728BHJP G01N 1/10 20060101ALI20110728BHJP JPG01N33/48 DG01N33/48 HC08K3/00C08L71/02G01N1/10 NG01N1/10 V G01N 33/48-98 C08K 3/00 C08L 71/02 G01N 1/10 CA(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2002−365281(JP,A) 特開2003−294731(JP,A) 国際公開第2007/029525(WO,A1) 特開平1−295163(JP,A) 5 JP2011051300 20110125 38 20110322 白形 由美子 本発明は、血液から血清または血漿を分離するのに用いられる組成物及び血液検査用容器に関し、より詳細には、血液成分の比重差を利用することにより血液から血清または血漿を分離するための、血清または血漿分離用組成物及び血液検査用容器に関する。 血液成分の比重差を利用して遠心分離により血液から血清または血漿を分離する方法が広く用いられている。分離を速やかに行うために、従来より、様々な血清または血漿分離用組成物が提案されている。 上記血清または血漿分離用組成物としては、チクソトロピー性を有する組成物が用いられている。チクソトロピー性を有するので、検査用容器に収容された血清または血漿分離用組成物が、輸送や保管時に流れることを防止できる。また、採血後、遠心分離により血清または血漿分離用組成物からなる隔壁が形成されるが、該隔壁より上層の血清や血漿を別の容器に採取する際、あるいは輸送や保管時に、該隔壁が崩れ難い。 下記の特許文献1には、液状樹脂成分に、比重調整及びチクソトロピー性付与の目的で、無機微粉末を分散させた分離用組成物が開示されている。ここでは、無機微粉末として、シリカ、ベントナイトのような二酸化ケイ素系無機粉末、二酸化チタン系無機粉末などが用いられている。また、特許文献1の従来技術の項では、上記液状樹脂成分としては、シリコーンオイル、α−オレフィン−マレイン酸ジエステル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル系共重合体などの、それ自体が液状である液状樹脂が開示されている。 分離用組成物においては、無機粉末濃度を高くしなければ、充分な初期降伏値を得ることができない。もっとも、無機粉末を高濃度に配合すると、無機粉末同士の水素結合によりネットワークが経時的に増強されるために、降伏値が増大し、通常の遠心分離力では流動性を示さなくなる。加えて、このネットワーク密度が経時によりさらに高まると、無機粉末が相対的に高濃度で存在する島状部分(island-domain)と、無機粉末が希薄な海状部分(sea-domain)とに相分離(phase separation)を生じることがある。相分離が生じると、島状部分の降伏値がさらに高くなって、分離用組成物の他の成分と再融合し難くなるため、遠心分離による流動中に千切れて、血液中に油滴として漂ったり、千切れた海状部分が油膜となり血液に浮くおそれがある。油滴や油膜が生じると、測定装置を汚染し、誤った測定値を与えるおそれがある。 上記のような問題を解決するために、下記の特許文献1や2では、チクソトロピー性増強剤として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体やシリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤などの有機化合物が配合されている。それによって、無機粉末の濃度を低め、かつチクソトロピー性を長期に渡り安定化することができる。 もっとも、上記有機系のチクソトロピー性増強剤のほとんどは水溶性を示すので、血液中にチクソトロピー性増強剤が溶出するという問題がある。その結果、血液細胞膜に障害を与え、血液細胞成分が漏出して検査値に悪影響を及ぼすことがある。また、血中水分の分離用組成物中への吸収が促進され、分離用組成物が白濁するおそれがある。特開平10−10122号公報USP4,083,784 上記有機系のチクソトロピー性増強剤を用いずに、かつ無機微粉末の濃度を低くして充分なチクソトロピー性を得るためには、表面水酸基濃度の低い疎水性無機微粉末よりも、表面水酸基濃度が高く、強力なチクソトロピー性付与作用を有する親水性無機微粉末を多用する方法が考えられる。 しかしながら、親水性無機微粉末の割合を高めると、遠心分離により血漿と血球成分との間に形成された分離用組成物からなる隔壁中に、血漿や血球が薄膜状に挟み込まれたまま残存し、あたかも隔壁に亀裂が生じたかのような外観を呈することがわかった。 このような現象は、血液凝固後に遠心分離する場合、すなわち血清と血餅とを分離する場合にはほとんどみられない。これに対して、抗凝固剤を用い、血液を凝固させずに遠心分離する場合、すなわち血漿と血球成分とを分離する場合には上記現象が極めて高頻度に生じる。 これは、血漿と血球成分とを分離する場合には、分離用組成物のチクソトロピー性が強すぎると、遠心分離時に、細かく分かれた分離用組成物塊が隔壁形成位置まで移動して再び融合一体化する前に、流動性が消失する為、亀裂が生じたかのような外観を呈すると考えられる。このような場合、亀裂部分を経由して、隔壁下方の血球からの漏出成分が、隔壁上方の血漿中に移行するおそれがある。加えて、親水性微粉末の含有割合を高くすると、血液中の水分が分離用組成物に吸収されやすくなる。そのため、分離用組成物の白濁が生じるおそれがある。 本発明の目的は、無機粉末の濃度を低めても初期のチクソトロピー性の不足を補うことができ、かつ遠心分離により形成される隔壁に亀裂等が生じ難い、血清または血漿分離用組成物、並びに該血清または血漿分離用組成物を収容してなる血液検査用容器を提供することにある。 本願発明者らは、隔壁形成性を有する液状樹脂成分と、親水性無機粉末及び疎水性無機粉末と、チクソトロピー性増強剤としての有機化合物とを用いた血清または血漿分離用組成物において、上記課題を達成すべく鋭意検討した。その結果、チクソトロピー性増強剤として公知のプロピレングリコールのような低分子量アルキレングリコールは、無機粉末のチクソトロピー性付与力を増強するのみで、遠心分離後の亀裂様外観を一層増大させるのに対し、驚くべきことに、数平均分子量を500以上100000以下とすることにより、また、0.2重量%以上、5重量%以下の濃度で配合することにより、チクソトロピー性増強力を保持したまま、亀裂様外観を解消することができることを見出し、本発明を完成させるにいたった。 すなわち、本発明の第1の態様によれば、隔壁形成性を有する液状樹脂成分と、親水性無機粉末と、疎水性無機粉末と、チクソトロピー性増強剤としての有機化合物とからなる血清または血漿分離用組成物において、前記有機化合物が、1)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる1種の単量体の単独重合体と、2)炭素数が2〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のランダム共重合体、交互共重合体、または周期的共重合体と、3)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のブロック共重合体と、4)上記1)〜3)から選ばれる少なくとも1種の重合体よりなるグラフト共重合体とからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体からなり、且つ、数平均分子量が500以上100000以下であるポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体であって、該ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の含有割合が全体の0.2重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする、血清または血漿分離用組成物が提供される。 また、本発明の第2の態様によれば、前記第1の態様に更に水が配合された、血清または血漿分離用組成物が提供される。 また、本発明に係る血清または血漿分離用組成物では、上記親水性無機粉末として、好ましくは親水性シリカが、上記疎水性無機粉末として好ましくは疎水性シリカが用いられる。 また、本発明によれば、容器本体と、容器本体内に収容されており、かつ本発明に従って構成された上記血清または血漿分離用組成物を収容してなる血液検査用容器が提供される。 以下、本発明の詳細を説明する。 (液状樹脂成分) 本発明の血清または血漿分離用組成物における液状樹脂成分とは、5℃以上で液状であり、隔壁形成性を発現するために必要な流動性と比重を有する限り、特に限定されるものではない。ここに言う流動性とは、コーンプレート型ローターを装着したBROOKFIELD型回転粘度計における25℃の粘度(せん断速度=1sec−1)が500Pa・s以下であることを意味する。また、ここに言う比重は、25℃の水の密度に対する25℃の液状樹脂成分の密度比であって、0.9〜1.1、好ましくは1.02〜1.07であることを意味する。このような液状樹脂成分としては、シリコーン樹脂、α−オレフィン−フマル酸ジエステル共重合体系、アクリル系樹脂、ポリエステル、セバシン酸と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールと1,2−プロパンジオールとの共重合体系、ポリエーテルポリウレタン、もしくはポリエーテルエステル等の液状樹脂が挙げられる。また、ポリ−α−ピネンポリマーと塩素化炭化水素との液状混合物、塩素化ポリブテンとエポキシ化動植物油等の液状化合物との液状混合物、三弗化塩化エチレンやベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体等とポリオキシアルキレングリコール等との液状混合物、あるいは、石油類のスチームクラッキングにより得られる、C5留分(シクロペンタジエン、イソプレン、ピペリレン、2−メチルブテン−1、2−メチルブテン−2等を含む)の単独または共重合物、C9留分(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、クマロン等を含む)の単独または共重合物、前記C5留分とC9留分の共重合物等の未水添、部分水添、または完全水添物からなる、石油樹脂(石油系炭化水素樹脂とも言う)あるいはDCPD樹脂(シクロペンタジエン系石油樹脂とも言う)等とベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体(例えばフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル)等との液状混合物等の、液体同士あるいは固体と液体を混合して得られる溶液なども用いることができる。 (無機粉末) 本発明では、親水性無機粉末と、疎水性無機粉末とが併用される。このような無機粉末は、表面が親水性または疎水性であれば特に限定されるものではない。無機粉末の例としては、公知の気相法(乾式法とも言う)あるいは沈降法で製造されるシリカ、または、ベントナイト、スメクタイト等からなる粘土鉱物等の二酸化ケイ素系、あるいは二酸化チタン系、アルミナ系等の微粉末が挙げられる。 しかし、二酸化チタン系無機粉末は、結晶構造がアナターゼ型であると光触媒活性が強いために、液状樹脂成分等の有機物を分解する恐れがあるので、ルチル型結晶構造をもつものが好ましい。また、アルミナ系無機粉末は、血液中には極微量しか含まれないアルミニウムの検査値に悪影響を及ぼすおそれがあるので、アルミニウムを測定しない用途に制限される。従って、シリカまたは、ベントナイトもしくはスメクタイト等の粘土鉱物等の二酸化ケイ素系粉末がより好ましい。 前記の無機粉末は一般に表面に水酸基を有し、親水性であるが、表面を処理することにより疎水性の無機粉末を得ることができる。無機粉末の表面が親水性であるか疎水性であるかは、水/アルコール混合溶媒への分散状態により決定されるのが一般的である。無機粉末が純粋な水に分散可能であれば、該無機粉末は親水性とされ、その場合、粉末表面の水酸基がそのまま残存している。 一方、無機粉末が水とアルコールとの混合溶媒でなければ分散され得ない場合、該無機粉末を疎水性とする。 アルコールとしては、メタノールあるいはエタノール等が用いられるが、疎水性無機粉末としては、アルコール濃度が、25容量%以上の混合溶媒に分散する程度の疎水性を有するものが使いやすい。 ちなみに、疎水性無機粉末としては、親水性無機粉末の表面の水酸基の一部をジメチルシリル基、トリメチルシリル基、オクチルシリル基等のアルキルシリル基やシリコーンオイル等で封鎖処理したものが一般的に入手可能である。 親水性無機粉末と疎水性無機粉末との使用割合は、親水性無機粉末/疎水性無機粉末比が、重量比で0.2〜1.0の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.9の範囲にあることがより好ましく、0.3〜0.8の範囲にあることが、より一層好ましい。 親水性無機粉末及び疎水性無機粉末を、この範囲内で使用することにより、分離用組成物中における無機粉末の合計濃度を3重量%以下に抑えることができるので、初期チクソトロピー性を長期に渡って安定に維持することができる。 親水性無機粉末/疎水性無機粉末比(重量比)が、0.2未満であると、親水性無機粉末によるチクソトロピー性付与力が弱まる。従って、無機粉末の合計濃度を3重量%以上とすることが必要となり、初期チクソトロピー性を長期に渡って安定に維持することが難しくなる。 また、親水性無機粉末/疎水性無機粉末比(重量比)が、1.0より大であると、無機粉末の合計濃度を3重量%以下に抑えることができ、初期チクソトロピー性を長期に渡って安定に維持することが一層容易である。しかしながら、親水性無機粉末による血液中の水分の吸収が起こりやすくなり、分離用組成物が白濁するおそれがある。 また、上記親水性無機粉末及び疎水性無機粉末は、微粉末であることが好ましい。このような微粉末とは、平均1次粒径(直径)が10μm以下、またはBET比表面積が30m2/g以上の範囲にあるものをいうものとする。微粉末である場合、比表面積を大きくすることができ、チクソトロピー性を効果的に付与することができる。なお、BET比表面積とは、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。吸着させる分子としては、窒素分子やアルゴン分子等が使われる。 従って、上記の種々の点を考慮すると、本発明においては、無機粉末として二酸化ケイ素系微粉末を用いることが望ましい。二酸化ケイ素系微粉末の内、親水性のものとしては、親水性シリカが好適に用いられる。親水性シリカとしては、アエロジル(登録商標)130、200、300、OX50等のアエロジル親水性グレード(日本アエロジル社製)、レオロシール(登録商標)QS−10、QS−20、QS−30等の親水性レオロシール(トクヤマ社製)、WACKER HDK S13、N20,T30等のWACKER HDK(登録商標)の親水グレード(旭化成ワッカーシリコーン社製)等の気相法親水性シリカが挙げられる。 また、疎水性の二酸化ケイ素系無機粉末としては、疎水性シリカが好適に用いられる。このような疎水性シリカとしては、アエロジルR972、R974、R805、R812等のアエロジル疎水性グレード(日本アエロジル社製)、レオロシールMT−10、DM−30S、HM−30S、KS−20S、PM−20等の疎水性レオロシール(トクヤマ社製)、WACKER HDK H15、H18、H30等のWACKER HDKの疎水性グレード(旭化成ワッカーシリコーン社製)等の気相法疎水性シリカが、入手しやすく使いやすい。 (ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体)本発明に用いるポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体は、1)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる1種の単量体の単独重合体と、2)炭素数が2〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のランダム共重合体、交互共重合体、または周期的共重合体と、3)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のブロック共重合体と、4)上記1)〜3)から選ばれる少なくとも1種の重合体よりなるグラフト共重合体とからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体及び/またはその誘導体である。 本発明に用いるポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体は、1種のみを用いてもよく、2種以上用いてもよい。例えば、単独重合体からなるポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。同様に、ランダム共重合体やブロック共重合体等からなるポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、それら各種のポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体を種々の組み合わせで併用してもよい。 周期的共重合体においては、炭素数2のエチレングリコール単量体からなる全分子鎖長の20%を超える長さのブロック共重合領域が分子内に含まれると、水溶性が増大するために好ましくない。 また、出発物質となったアルコール類の官能基数に由来する水酸基数に応じて、あるいは該水酸基のアルキル基等による封鎖処理の有無等により、1あるいは1より大なる数の水酸基を有するポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体のいずれもが用いられるが、水溶性を低めるために、1分子あたりの水酸基数は3個以下であることがより好ましい。 ポリアルキレングリコールの誘導体としては、分子内に、前記水酸基の封鎖目的あるいは封鎖目的以外に導入されたアルキレン、アルケン、アルキンや、芳香環、ジメチルシロキサン等の疎水性残基を含んでいるものが挙げられる。 また、ポリアルキレングリコールの誘導体としては、前記水酸基に代えて、あるいは追加的に、カルボニル基、アミノ基やチオール基等の水素結合性極性基を含んでいても良いが、この場合でも、水溶性を低めるために、1分子あたりの極性基数は3個以下であることがより好ましい。 ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の数平均分子量が500よりも小さいと、形成された隔壁における亀裂抑制効果が著しく低くなる。従って、数平均分子量は500以上であることが必要である。また、ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の数平均分子量が大きすぎると、チクソトロピー性増強効果が弱くなるため、数平均分子量は100000以下であることが好ましい。 さらに好ましい態様としては、2個以上の水酸基を有するポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体については、数平均分子量が3000以上であることが水溶性を一層低減し、血液検査値への悪影響を回避するためにより好ましい。1個の水酸基を有するポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体については、数平均分子量は1500以上であることが、同じ理由により、より好ましい。 ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の使用濃度は、血清または血漿分離用組成物全体の5重量%以下の濃度であることが必要である。5重量%を超えると、チクソトロピー性増強力が大きく損なわれ、無機粉末の濃度を3重量%以下に抑制することが難しくなる。好ましくは、3重量%以下であり、より好ましくは2重量%以下である。 他方、ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の使用濃度の下限については、隔壁における亀裂をより確実に抑制するには、0.2重量%以上が好ましく、0.4重量%以上がより好ましく、0.6重量%以上で用いることが、より一層、好ましい。 本発明で用いる、数平均分子量が500以上100000以下で、エチレングリコールブロックを含まないポリアルキレングリコールの具体例としては、1より大なる数の末端水酸基を有するものとして、ユニオール(登録商標)PB−700、PB−1000、PB−2000、D−700、D−1200、D−4000、TG−1000、TG−3000,TG−4000、HS−1600D等のユニオールシリーズ(日油社製)、ポリセリン(登録商標)DCB−1000、DCB−2000、DCB−4000、DC−1100、DC−1800E、DC−3000E等のポリセリンシリーズ(日油社製)、ユニルーブ(登録商標)DGP−700等のユニルーブシリーズ(日油社製)やプレミノールS3003、S3006、S3011、S4001、S4006、S4011、S4015等のプレミノールシリーズ(旭硝子社製)が挙げられる。 他方、ポリアルキレングリコールの誘導体の具体例としては、1個の末端水酸基を有するものとして、ユニルーブMB−7、MB−14、MB−38、MB−700等のユニルーブシリーズ(日油社製)、ニューポールLB−285、LB−625、LB−3000、LB−1800X等のニューポールシリーズ(三洋化成社製)やプレミノールS1004F、S1005等のプレミノールシリーズ(旭硝子社製)が挙げられる。 また、分子内に芳香環を有するものとして、ユニオールDB−530、ユニルーブ50DB−22等(日油社製)が、分子内にアリル基を有するものとして、ユニセーフTMPKA−5014(日油社製)が挙げられる。 (水) 本発明の第2の態様により提供される血清または血漿分離用組成物では、上記隔壁形成性を有する液状樹脂成分、親水性無機粉末、疎水性無機粉末及びポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体に、さらに水が配合されている。 水は、無機粉末の表面の水酸基に配位して、隣接する無機粉末同士の水酸基との水素結合のネットワーク形成を促進するチクソトロピー性増強剤として作用する。従って、無機粉末の合計濃度をさらに低減することができる。 水としては、蒸留水やイオン交換水等の脱イオン水を、適宜、用いればよく、無機粉末の表面の水酸基1個に水分子1個が配位するのに必要な濃度以上で用いるのが好ましい。 無機粉末として好適な二酸化ケイ素系微粉末を例として、かかる濃度の試算例を以下に示す。 親水性二酸化ケイ素微粉末の表面の水酸基濃度については、「藤 正督、「粒子表面の機能化」、表面科学,Vol.24,No.10,p.625-634,2003のTable 2」によれば、約3個/nm2であり、「旭硝子(株)Kyon Hun Minら、「多孔質シリカゲルの表面及び内部水酸基密度」、日本核磁気共鳴学会(2008)、第47回NMR討論会」によれば、約6μmol/m2である。 いま、比表面積が200m2/gの親水性二酸化ケイ素微粉末が、分離用組成物中、1重量%の濃度で配合された場合の水酸基配位に必要な水濃度について試算してみると、いずれの出典に基づいても、約0.02重量%となる。 従って、かかる比表面積を有する親水性二酸化ケイ素微粉末1重量%あたりでは、0.02重量%以上の濃度で水を配合することが好ましい。 0.02重量%以下になると、前記水素結合のネットワーク形成を促進するチクソトロピー性増強剤としての作用が弱まる。そのため、二酸化ケイ素微粉末の配合濃度を一層低め難いことがある。 一方、水の上限濃度は、前記液状樹脂成分の25℃における水の飽和濃度以下とすることが好ましい。その場合には、分離用組成物を0℃以下の低温に放置しても、配合した水が析出して白濁するおそれが少ない。 (製造方法) 本願の第1の態様により提供される血清または血漿分離用組成物の製造方法は特に限定されない。上記液状樹脂成分と、親水性無機粉末と、疎水性無機粉末と、ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体とを配合し、混合すればよい。混合方法は、特に限定されることはなく、プラネタリーミキサー、ロールミル、ホモジナイザー等の公知の混練方法を用いればよい。 なお、第2の態様では、第1の態様に、さらに水が配合されるが、少なくとも水を配合する際には、30℃以上の温度で液状樹脂成分に配合、混合溶解させることが好ましい。また、少なくとも、親水性無機粉末と水とを同時に配合するのは避けることが好ましい。すなわち、水と親水性無機粉末とを同時に液状樹脂成分に配合しようとすると、親水性無機粉末同士が水を介して強い凝集を引き起こし、液状樹脂成分中への分散が困難になるおそれがある。 従って、液状成分に少なくとも親水性無機粉末を分散させた後に水を配合するか、液状成分に水を配合、混合溶解させた後に、残余の成分を配合することが好ましい。 (血液検査用容器) 本発明の血清または血漿分離用組成物を収容する検査用容器の形状は、特に制限されることはなく、公知の、一端に開口部を有する有低管状容器を用いればよい。 容器の材質についても、特に制限されることはなく、公知の、ガラスや、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂等を用いればよい。 本発明に係る血清または血漿分離用組成物を用いて血清または血漿を血液から分離するに際しては、例えば上記血液検査用容器の底部あるいは側壁に、血清または血漿分離用組成物を収容し、しかる後、検体としての血液を容器内に採取する。 そして、遠心分離装置により遠心分離を行うと、血液中の細胞成分が下方に沈降し、上澄みとして血清または血漿が得られる。血清または血漿分離用組成物は、これらの中間層に位置して、両者を隔離する隔壁を形成する。 なお、血漿を分離するには、ヘパリンやエチレンジアミン四酢酸等のアルカリ金属塩のような抗凝固剤を、予め、血液及び/または血液検査用容器内に添加、あるいは容器内壁面に塗布しておけばよい。 また、血清を分離するには、抗凝固剤を用いることなく、血液検査用容器に血液を採取し、上記凝固させた後に、遠心分離を行えばよい。なお、血液の凝固を促進させる必要がある場合は、シリカ、またはベントナイト、スメクタイト等からなる粘土鉱物等の微粉末、あるいはトロンビン等の血液の凝固を促進させる物質を、予め、血液及び/または血液検査用容器内に添加、あるいは容器内壁面に塗布しておけばよい。 本発明の第1の態様により提供される血清または血漿分離用組成物では、上記液状樹脂成分、親水性無機粉末及び疎水性無機粉末に加えて、上記特定のポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体が全体の0.2重量%以上5重量%以下の濃度で配合されているため、無機粉末の合計濃度を例えば3重量%以下程度と低くしたとしても、前記組成物を収容した検査用容器を長時間横倒しにしても流れない程度に、初期チクソトロピー性を充分な大きさとすることができる。 そのため、無機粉末同士の水素結合のネットワーク密度の増大による経時的な降伏値の増大が起こり難い。よって、初期チクソトロピー性の経時による安定性を高めることができ、通常の遠心分離により確実に流動性を示す。 また、抗凝固剤を用いて血漿分離する際に用いられたとしても血漿層と血球層との間に形成された分離剤からなる隔壁に亀裂が生じ難い。そのため、血球からの漏洩成分の血漿中への混入が生じ難い。さらに、血液中に油滴が漂ったり、血液面に油膜が浮くこともない。従って、分析装置の汚染が生じ難く、誤った測定値を与え難い。 本発明の第2の態様により提供される血清または血漿分離用組成物では、液状樹脂成分と親水性無機粉末と、疎水性無機粉末と水とに加えて、上記特定のポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体が全体の0.2重量%以上5重量%以下の濃度で配合されているため、第1の態様により提供される血清または血漿分離用組成物と同じく、無機粉末の濃度を例えば3重量%以下程度と低めても、第1の態様と同様に充分な初期チクソトロピー性を得ることができる。加えて、長期間に渡り初期チクソトロピー性を安定に維持することができ、分離剤からなる隔壁に亀裂が生じ難く、血液中に油滴が漂ったり、血液面に油膜が浮いたりし難い。 なお、本明細書において、「充分な初期チクソトロピー性」とは、前記回転粘度計で、25℃における降伏値(せん断速度=1sec−1及び2sec−1)の下限が18Pa以上、好ましくは20Pa以上であり、上限が50Pa以下、好ましくは40Pa以下である。 また、本発明に係る検査用容器は、上記第1,第2の態様により提供される血清または血漿分離用組成物を収容しているので、血液検査用容器の保管や輸送中に、血清または血漿分離用組成物が流れ難い。よって、血液検査用容器内に収容された血液抗凝固剤、血液凝固促進剤または解糖阻止剤などの他の薬剤の汚染を防止することができる。加えて、遠心分離後に、分離用組成物からなる隔壁が崩れ難いので、一旦分離した血清や血漿と、血球成分とが再び混じり合うこともない。従って、血清や血漿中の各成分を高精度に測定することが可能となる。 以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 実施例及び比較例において用いた物質は以下の通りである。 (液状樹脂成分として使用した物質) (無機粉末として使用した物質) (ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体として使用した物質) (検査容器内壁面に塗布した血液抗凝固剤として使用した物質) (実施例1) 液状樹脂成分として、シクロペンタジエン系オリゴマー(エクソンモービル社製、商品名:ESCOREZ5690)と、トリメリット酸エステル(大日本インキ化学工業社製、商品名:モノサイザーW700)とを130℃で溶解し、液状樹脂成分を調製した。この液状樹脂成分に、ポリアルキレングリコールとして、ポリプロピレングリコール(日油社製、商品名:ユニオールD700)を溶解させ、約30℃まで冷却した。次に、無機粉末として、親水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200CF)及び疎水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジルR974)を、プラネタリーミキサーで前記液状樹脂成分を攪拌しつつ、分散させた。このようにして、実施例1の血清または血漿分離用組成物を得た。なお、各成分の配合割合は、下記の表5に示すとおりである。 (実施例2〜4及び比較例1〜4) 各成分の配合割合を表5に示したように変更したことを除いては、実施例1と同様にして、血清または血漿分離用組成物を得た。 (分離用組成物を収容した血液検査用容器の作成) 10mL容量のポリエチレンテレフタレート製試験管(直径16mm×長さ100mm)10本に、上記分離用組成物を約1.2gずつ収容し、10本の血液検査用容器を作製した。 また、7mL容量のポリエチレンテレフタレート製試験管(直径13mm×長さ100mm)10本に、上記分離用組成物を約0.9gずつ収容した後、試験管内壁面に3000IU/mLのヘパリンリチウム水溶液を約18mg/本の割合で噴霧し、乾燥して10本の血液検査用容器を作製した。 (評価方法) 1)各分離用組成物の25℃における比重を浮沈法により測定した。 2)各分離用組成物毎に作製した10本の10mL容量の血液検査用容器及び10本の7mL容量の血液検査用容器をそれぞれ2グループに分け、ひとつのグループは、約25℃の室温で横倒し状態で1週間保存し、残りのグループは、約25℃の室温で横倒し状態で6ヶ月間保存した。これらの保存品について、粘物性、耐流れ性及び血液分離性を以下のようにして評価した。 2−1)粘物性 7mL容量の血液検査用容器1本から、約0.5gの分離用組成物をできるだけ捏ね回さないように回収し、コーンプレート型ローターを装着したBROOKFIELD回転粘度計で、25℃における粘度(せん断速度=1sec−1)及び降伏値(せん断速度=1sec−1及び2sec−1)を測定した。 2−2)耐流れ性 10mL容量の血液検査用容器5本を上端が45度斜め下向きになるように、60℃で24時間保持し、分離用組成物の最初の液面位置から流れた先端までの距離を測定し、平均値を求めた。また、液状成分の染み出しの有無を相分離の有無として評価した。 2−3)血液分離性 7mL容量の血液検査用容器4本に、ボランティアの人新鮮血を3mL/本の割合で採取し、転倒混和した後、20℃で1700G×5分の条件で遠心分離した。 その後、遠心分離により形成された分離剤からなる隔壁による血漿と血球成分との分離状態、溶血の有無、油状浮遊物及び油膜の有無を目視により観察した。 なお、分離状態については、隔壁形成位置に移動した分離用組成物の移動度を下記の表6に示す三段階に、また、隔壁に生じた亀裂様外観の程度を下記の表7に示す三段階のスコアで評価した。 (評価結果) 実施例1〜4及び比較例1〜4の評価結果を表8〜10にまとめた。 シリカの経時的凝集による降伏値の増大を抑制すべく、実施例1〜4及び比較例2〜4で、親水性及び疎水性シリカの合計配合率を2.7重量%に低減し、親水性無機粉末/疎水性無機粉末比を0.6とした。他方、種々の数平均分子量のポリアルキレングリコールを0.8重量%の割合で配合した。ただし、比較例1のみは、ポリアルキレングリコールを配合せず、不足するチクソトロピー性を補うために、親水性及び疎水性シリカの合計配合率を3.5重量%に増量し、親水性無機粉末/疎水性無機粉末比を0.6とした。 実施例1〜4及び比較例1〜4の全てで、充分なチクソトロピー性と耐流れ性を示した。もっとも、比較例1では、親水性及び疎水性シリカの合計配合率が3重量%を超えていたために、25℃保存中の粘物性の増大が他を大きく上回った。また、比較例2、3では、相分離現象が認められた。 一方、人新鮮血を用いた血液評価では、ポリアルキレングリコールの数平均分子量が500未満であった比較例2〜4と、ポリアルキレングリコールを配合しなかったが、親水性シリカ及び疎水性シリカの合計配合率が3重量%を超えていた比較例1では、遠心分離後の隔壁に亀裂様外観が発生した。これに対して、数平均分子量700以上のポリプロピレングリコールを配合した実施例1〜4では、亀裂様外観が認められなかった。 さらに、比較例1では、経時的に分離用組成物の流動性が低下した。 以上のことから、実施例1〜4の血清または血漿分離用組成物では、無機微粉末同士の水素結合のネットワーク密度の増大に伴なう経時的な降伏値の増大が起こり難く、長期に渡って、初期チクソトロピー性を安定に維持することができることが分かった。また、経時により通常の遠心分離強度では、流動性を示さなくなってしまうという問題を生じることがないことが分かった。 さらに、実施例1〜4の分離用組成物を血漿分離用組成物として抗凝固血の分離に使用した場合でも、血漿層と血球層の間に形成された分離隔壁が亀裂様外観を呈することがないために、血球からの漏出成分が隔壁中を拡散移行して、血漿中に混入するおそれもないことが分かった。さらに、無機微粉末同士の再凝集に起因して、遠心分離中に遊離した組成物成分が、血液中に油滴状に漂ったり、血液面に油膜状に浮いたりするようなこともないため、分析装置の反応セルや電解質測定用電極表面に付着して、これらを汚損し、誤った測定値を与える等の厄介な問題を生じさせることもないことが分かった。 次に実施例5〜8及び比較例5〜7について述べる。 (実施例5) 液状樹脂成分として、シクロペンタジエン系オリゴマー(エクソンモービル社製、商品名:ESCOREZ5690)と、トリメリット酸エステル(大日本インキ化学工業社製、商品名:モノサイザーW700)とを130℃で溶解し、液状樹脂成分を調製した。この液状樹脂成分に、ポリアルキレングリコールとして、ポリプロピレングリコール(日油社製、商品名:ユニオールD4000)を溶解させ、約30℃まで冷却した。次に、無機粉末として、親水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200CF)及び疎水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジルR974)を、プラネタリーミキサーで前記液状樹脂成分を攪拌しつつ、分散させた。このようにして、実施例5の血清または血漿分離用組成物を得た。なお、各成分の配合割合は、下記の表11に示すとおりである。 (実施例6〜8及び比較例5〜7) 各成分の配合割合を表11に示したように変更したことを除いては、実施例5と同様にして、血清または血漿分離用組成物を得た。 分離用組成物を収容した血液検査用容器の作成、評価方法は、実施例1に準拠した。ただし、評価は、血液検査容器の作成後、約25℃の室温で横倒し状態で1週間保存したものについて行った。 (評価結果) 実施例5〜8及び比較例5〜7の評価結果を表12にまとめた。 シリカの経時的凝集による降伏値の増大を抑制すべく、実施例5〜8及び比較例5〜7で、親水性及び疎水性シリカの合計配合率を2.7重量%に低減し、親水性無機粉末/疎水性無機粉末比を0.6とした。他方、数平均分子量4000のポリアルキレングリコールを種々の重量%の割合で配合した。 実施例5〜8のすべてで充分なチクソトロピー性と耐流れ性を示したが、比較例5〜7の内、比較例6、7で、チクソトロピー性と耐流れ性が不足していた。また、比較例6〜7では、相分離現象が認められた。 一方、人新鮮血を用いた血液評価では、ポリアルキレングリコールの重量%が0.3%以上であった実施例5〜8と比較例6〜7では、遠心分離後の隔壁に亀裂様外観を呈することはなかったが、比較例5では、亀裂様外観が見られた。 一方、隔壁形成部位への移動度、溶血、油状浮遊物や油膜の有無については、実施例5〜8と比較例5〜7のすべてで問題がなかった。 以上のことから、実施例5〜8の血清または血漿分離用組成物では、充分なチクソトロピー性と耐流れ性を保持しつつ、遠心分離後の隔壁に亀裂様外観を呈することもないことが分かった。 次に実施例9〜12及び比較例8〜10について述べる。 (実施例9) 液状樹脂成分として、シクロペンタジエン系オリゴマー(エクソンモービル社製、商品名:ESCOREZ5690)と、トリメリット酸エステル(大日本インキ化学工業社製、商品名:モノサイザーW700)とを130℃で溶解し、液状樹脂成分を調製した。この液状樹脂成分に、ポリアルキレングリコールとして、ポリプロピレングリコール(日油社製、商品名:ユニオールD4000)を溶解させ、約30℃まで冷却した。次に、無機粉末として、親水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200CF)及び疎水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジルR974)を、プラネタリーミキサーで前記液状樹脂成分を攪拌しつつ、分散させた。このようにして、実施例9の血清または血漿分離用組成物を得た。なお、各成分の配合割合は、下記の表13に示すとおりである。 (実施例10〜12及び比較例8〜10) 各成分の配合割合を表13に示したように変更したことを除いては、実施例9と同様にして、血清または血漿分離用組成物を得た。 分離用組成物を収容した血液検査用容器の作成、評価方法は、実施例1に準拠した。ただし、評価は、血液検査容器の作成後、約25℃の室温で横倒し状態で1週間保存したものについて行った。 なお、隔壁の白濁については、採血後の採血管を4℃冷蔵1カ月後に白濁の有無を目視観察した。 (評価結果) 実施例9〜12及び比較例8〜10の評価結果を表14にまとめた。 シリカの経時的凝集による降伏値の増大を抑制すべく、実施例9〜12及び比較例8〜10で、親水性及び疎水性シリカの合計配合率を2.7重量%に低減し、親水性無機粉末/疎水性無機粉末比を種々の値に設定した。また、数平均分子量4000のポリアルキレングリコールを0.8重量%の割合で配合した。 実施例9〜12、比較例9〜10のすべてで充分なチクソトロピー性と耐流れ性を示したが、比較例8では、チクソトロピー性と耐流れ性が不足していたとともに、相分離現象が認められた。 一方、人新鮮血を用いた血液評価では、実施例9〜12、比較例8〜10のすべてで、遠心分離後の隔壁に亀裂様外観を呈することがなく、隔壁形成部位への移動度、溶血、油状浮遊物や油膜の有無についても問題がなかった。 しかしながら、比較例9〜10においては、4℃冷蔵1カ月後の隔壁に白濁が生じていた。 以上のことから、実施例9〜12の血清または血漿分離用組成物では、充分なチクソトロピー性と耐流れ性を保持しつつ、採血後の採血管を4℃1カ月保存しても、隔壁の白濁を呈することがないことが分かった。 次に実施例13〜19について述べる。 実施例において用いた物質は以下の通りである。 (液状樹脂成分として使用した物質) (ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体として使用した物質) (実施例13) 液状樹脂成分として、シクロペンタジエン系オリゴマー(エクソンモービル社製、商品名:ESCOREZ5690、ESCOREZ5380)と、トリメリット酸エステル(J−PLUS社製、商品名:TOTM NB)とを130℃で溶解し、液状樹脂成分を調製した。この液状樹脂成分に、ポリアルキレングリコールとして、ポリプロピレングリコール(旭硝子社製、商品名:PREMINOL S3011)を溶解させ、約30℃まで冷却した。次に、無機粉末として、親水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200CF)及び疎水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジルR974)を、プラネタリーミキサーで前記液状樹脂成分を攪拌しつつ、分散させた。このようにして、実施例13の血清または血漿分離用組成物を得た。なお、各成分の配合割合は、下記の表17に示すとおりである。 (実施例14〜19) 各成分の配合割合を表17に示したように変更したことを除いては、実施例13と同様にして、血清または血漿分離用組成物を得た。 分離用組成物を収容した血液検査用容器の作成、評価方法は、実施例1に準拠した。 なお、隔壁の白濁については、採血後の採血管を4℃冷蔵1カ月後に白濁の有無を目視観察した。 (評価結果) 実施例13〜19の評価結果を表18〜20にまとめた。 シリカの経時的凝集による降伏値の増大を抑制すべく、実施例13〜19で、親水性及び疎水性シリカの合計配合率を2.7重量%に低減し、親水性無機粉末/疎水性無機粉末比を0.4ないしは0.7に設定した。また、数平均分子量10500のポリアルキレングリコールを0.8重量%の割合で配合した。さらに実施例14〜19では、精製水を0.1重量%の割合で配合した。 実施例13〜19のすべてで充分なチクソトロピー性と耐流れ性を示した。 また、人新鮮血を用いた血液評価では、実施例13〜19のすべてで、遠心分離後の隔壁に亀裂様外観を呈することがなく、隔壁形成部位への移動度、溶血、油状浮遊物や油膜の有無、さらに血液検体の冷蔵保存中の白濁の有無についても問題がなかった。 以上のことから、実施例13〜19の血清または血漿分離用組成物では、液状樹脂成分の違いによらず、充分なチクソトロピー性と耐流れ性を保持しつつ、且つ、遠心分離後の隔壁に亀裂様外観を呈することがなく、隔壁形成部位への移動度、溶血、油状浮遊物や油膜の有無、採血後の採血管の4℃1カ月保存でも、隔壁の白濁も呈することがないことが分かった。 隔壁形成性を有する液状樹脂成分と、 親水性無機粉末と、 疎水性無機粉末と、 チクソトロピー性増強剤としての有機化合物とからなる血清または血漿分離用組成物において、前記有機化合物が、 1)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる1種の単量体の単独重合体と、 2)炭素数が2〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のランダム共重合体、交互共重合体、または周期的共重合体と、 3)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のブロック共重合体と、 4)上記1)〜3)から選ばれる少なくとも1種の重合体よりなるグラフト共重合体とからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体からなり、 且つ、数平均分子量が500以上100000以下であるポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体であって、該ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の含有割合が全体の0.2重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする、血清または血漿分離用組成物。 更に水を含むことを特徴とする、請求項1記載の血清または血漿分離用組成物。 疎水性無機粉末の重量%に対する親水性無機粉末の重量%比が0.2以上、1.0以下である、請求項1または2に記載の血清または血漿分離用組成物。 前記親水性無機粉末が、親水性シリカであり、前記疎水性無機粉末が疎水性シリカである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血清または血漿分離用組成物。 容器本体と、容器本体内に収容されており、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血清または血漿分離用組成物とを備える、血液検査用容器。 無機粉末の濃度を低めた場合の初期チクソトロピー性不足を補うことができ、かつ遠心分離後の分離用組成物からなる隔壁に亀裂が生じ難い、血清または血漿分離用組成物を提供する。 隔壁形成性を有する液状樹脂成分と、親水性無機粉末と、疎水性無機粉末と、チクソトロピー性増強剤としての有機化合物とからなる血清または血漿分離用組成物において、前記有機化合物が、1)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる1種の単量体の単独重合体と、2)炭素数が2〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のランダム共重合体、交互共重合体、または周期的共重合体と、3)炭素数が3〜5のアルキレンオキサイド単量体から選ばれる2種以上の単量体のブロック共重合体と、4)上記1)〜3)から選ばれる少なくとも1種の重合体よりなるグラフト共重合体とからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体からなり、且つ、数平均分子量が500以上100000以下であるポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体であって、該ポリアルキレングリコール及び/またはその誘導体の含有割合が全体の0.2重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする、血清または血漿分離用組成物。【選択図】なし