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タイトル:特許公報(B2)_高分子アディポネクチン分析のための新規モノクローナル抗体とその利用
出願番号:2011512352
年次:2015
IPC分類:C07K 16/26,C12P 21/08,G01N 33/53,G01N 33/577,G01N 33/543,G01N 33/545


特許情報キャッシュ

赤松 優 葛城 粛典 大西 英晃 阿部 ミドリ 波多間 徹 西村 文子 大口 未央 JP 5824359 特許公報(B2) 20151016 2011512352 20100506 高分子アディポネクチン分析のための新規モノクローナル抗体とその利用 株式会社LSIメディエンス 591122956 大塚製薬株式会社 000206956 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 赤松 優 葛城 粛典 大西 英晃 阿部 ミドリ 波多間 徹 西村 文子 大口 未央 JP 2009112624 20090507 20151125 C07K 16/26 20060101AFI20151105BHJP C12P 21/08 20060101ALI20151105BHJP G01N 33/53 20060101ALI20151105BHJP G01N 33/577 20060101ALI20151105BHJP G01N 33/543 20060101ALI20151105BHJP G01N 33/545 20060101ALI20151105BHJP JPC07K16/26C12P21/08G01N33/53 DG01N33/577 BG01N33/543 581AG01N33/545 B C07K 国際公開第2004/086040(WO,A1) 国際公開第2009/078151(WO,A1) J. Lipid Res.,2006年,Vol.47,p.1572-1582 20th IUBMB International Congressof Biochemistry and Molecular Biology and 11th FAOBMB Congress,2006年,p.A11593#3P-B-050 J. Immunol. Methods,2008年,Vol.333,p139-146 Clinica Chimica Acta,2006年,vol.371,p163-168 6 IPOD FERM BP-11106 JP2010057747 20100506 WO2010128657 20101111 14 20130212 小石 真弓 本発明は、新規な高分子アディポネクチン特異的モノクローナル抗体、及びそれを用いる高分子アディポネクチンの選択的分析(特に測定)方法に関する。 アディポネクチンは、脂肪細胞において特異的に発現される分泌タンパク質であり、抗動脈硬化作用、インスリン抵抗性改善作用が報告されている。近年では、癌、炎症、メタボリックシンドロームとの関与も示されており生体の防御因子として作用すると考えられている。ヒトアディポネクチンは、244個のアミノ酸残基から形成され、単量体での分子量は約28kDaであることが知られている。一方、血液中におけるアディポネクチンは、3量体(LMW:Low molecular weight)を基本骨格とし、それの重合した6量体(MMW:Middle molecular weight)、そして、さらにそれらが複数重合した多量体(HMW:High molecular weight)として存在していることが確認されている。 これらのアディポネクチンの各分子量体は、有する生理活性も異なっている。例えば、C2C12細胞株におけるNF−κBの活性化能は、HMWおよびMMWでは観察されるが、LMWでは観察されないことが報告されている。また、アディポネクチン分泌に変異を有するヒトが、HMWアディポネクチンを形成出来ず低アディポネクチン血症及び糖尿病を発症すること、冠動脈疾患患者では、健常者に比し多量体アディポネクチンの存在比が低下することが報告されている。さらに、ダイエットの前後で血液中濃度が変動するのは、HMWであることも報告されている。したがって、HMWアディポネクチンのみを検出することが、アディポネクチンの研究及び種々の疾患の研究においては重要である。 通常、タンパク質分子は、そのタンパク質を抗原として特異的に認識するモノクローナル抗体により単離することができる。しかし、抗原が、アディポネクチンのように同一の単量体からなる種々の形態の多量体が混在するものである場合、特定サイズの分子のみに特異的な抗体を見つけることは困難である。抗体は抗原の一次アミノ酸配列を認識する場合が多いので、抗原が多量体の場合、抗体は一般的に、それを構成する単量体の一次アミノ酸配列を認識する。一方、アディポネクチンは、同一の単量体からなるので、アディポネクチン単量体を認識する抗体は、同時にあらゆる形態のアディポネクチン多量体を認識することとなる。また、たとえモノクローナル抗体が立体構造を認識する場合でも、HMWアディポネクチンのように基本骨格が多数重合する分子では、他の分子との交差は避けがたい。 したがって、一般的な抗体を利用する場合、特定サイズのアディポネクチン分子のみを検出することは困難である。 特定分子サイズのアディポネクチンを定量するには、従来、ゲル濾過等の前処理により分子量ごとに分画し、各ピークを検出する方法や、特定のプロテアーゼにより特定分子を消化後検出する方法が一般的であった。また、ゲル濾過やプロテアーゼ等の前処理を要しないELISA技術も開発されているが、MMWへの交差が見られ、HMW特異的とは言い難い。したがって、簡易な前処理法で、又は前処理なしに、特定分子サイズのアディポネクチンのみを検出できる手法が求められている。 公知の特定分子サイズのアディポネクチンの測定法としては、上記のようなゲル濾過法以外に、以下の2種の方法が知られている。(1)LMWおよびMMWを分解する酵素による前処理を行い、酵素分解されずに残ったアディポネクチンを測定することによって、HMWだけを検出する方法(特許文献1)。(2)アディポネクチン単量体には反応しないが、3量体及び/又はそれが凝集した構造を有する高分子アディポネクチンを認識する抗体を用い、当該高分子アディポネクチン抗原だけを検出する方法(特許文献2)。 しかしながら、酵素による前処理の場合、数十分の酵素処理時間が必要であり、且つ至適時間を超える長時間のインキュベートを行った場合、混在するプロテアーゼにより標的分子自体が分解される危惧があるため、インキュベートの時間を厳密に規定する必要がある。さらに、酵素による処理は、標的抗原のタイプに応じて至適な種類の分解酵素を選択する必要があるため、汎用性のある方法とはいい難い。 一方、公知の高分子アディポネクチンを認識する抗体を利用する場合でも、高分子体(HMW)とともに他の多量体構造(LMWやMMW)も一緒に認識されてしまうため、純粋にHMWのみを検出できる方法とは言い難い。HMWアディポネクチンのみを特異的に認識する抗体は、これまで知られていない。国際公開第WO2005/038457号パンフレット特許第3624216号明細書 従来の前処理不要型のHMW検出用ELISAには、MMWを大量に含有する検体においてMMWに交差性を示す問題点が存在するため真にHMW特異的な測定が困難であること、更にELISAではHMW選択制が強い抗体であっても、ラテックス標識することによりHMW選択性を失うものがあり、ラテックスにより簡易にHMWアディポネクチンを測定することは極めて困難であった。そこで本発明の課題は、MMWアディポネクチンに交差性を示さず、HMWアディポネクチンのみを選択的に検出若しくは定量するためのモノクローナル抗体および、簡便で、高精度且つ汎用性の高い高分子アディポネクチン分析用試薬を提供することにある。 本発明者らは、より簡便にHMWアディポネクチンのみを選択的に検出若しくは定量できる高分子アディポネクチン分析用ラテックス試薬の構築および、それに用いるモノクローナル抗体のスクリーニングを実施した。その結果、サンドイッチELISA系にて比較的HMW特異性の強い抗体でも、ラテックス試薬として評価した場合には全くHMW特異性を示さないことが確認されたため、ヒト血液中アディポネクチンのHMW画分だけを用いて新たにモノクローナル抗体を作製した。本モノクローナル抗体は、他の大腸菌組替アディポネクチンにより作製したモノクローナル抗体に比し、ウエスタンブロッティング解析では同等の反応性を有していても、サンドイッチELISA系で評価すると極めてHMW特異性が強いことを見出した。更には、これを用いたアディポネクチン分析用ラテックス試薬を構築した結果、本試薬はMMWに交差性を示さずにHMWアディポネクチンを選択的に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、[1]高分子アディポネクチンと特異的に反応することを特徴とするモノクローナル抗体、[2]高分子アディポネクチンを抗原として用いることを特徴とする、[1]のモノクローナル抗体の製造方法、[3][1]のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、高分子アディポネクチンの免疫学的分析方法、[4]ラテックス凝集法である、[3]の免疫学的分析方法、[5][1]のモノクローナル抗体を含む、高分子アディポネクチンの免疫学的分析用試薬、[6][1]のモノクローナル抗体を担持させたラテックス粒子を含む、[5]の免疫学的分析用試薬に関する。 本発明の新規モノクローナル抗体によれば、より簡便に、且つ、正確に、高分子(HMW)アディポネクチンのみを選択的に分析(検出若しくは定量)できる高分子アディポネクチン分析用試薬(特にはラテックス試薬)及び分析方法を提供することができる。公知モノクローナル抗体を用いる各種ELISAキットを用いて、ヒト血清(MMW低値検体)のゲル濾過画分中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。図1と同じELISAキットを用いて、ヒト血清(MMW高値検体)のゲル濾過画分中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。公知モノクローナル抗体ANOC9121を用いて作製したラテックス試薬により、ヒト血清のゲル濾過画分中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。図1と同じELISAキットに加え、本発明のELISAキットを用いて、ヒト血清(MMW低値検体)のゲル濾過画分中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。図4と同じELISAキットを用いて、ヒト血清(MMW高値検体)のゲル濾過画分中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。本発明のモノクローナル抗体Clone8Dを用いて作製した、本発明のラテックス試薬により、ヒト血清のゲル濾過画分中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。 本発明のモノクローナル抗体は、高分子アディポネクチンと特異的に反応する。本明細書において、「高分子アディポネクチンと特異的に反応する」とは、高分子アディポネクチンと反応するが、3量体アディポネクチンと反応せず、6量体アディポネクチンと実質的に反応しないことを意味する。なお、本明細書では、高分子アディポネクチン、6量体アディポネクチン、3量体アディポネクチンを、それぞれ、HMWアディポネクチン、MMWアディポネクチン、LMWアディポネクチン(または、単に、HMW、MMW、LMW)と称することがある。 また、本明細書において、「高分子アディポネクチン」とは、LMW及び/又はMMWの重合体を基本骨格とした多量体であって、非変性下で分画するときに約440kDa以上に分画され(すなわち、HMWとMMWとの境界が約440kDa)、670kDa近辺にピークを有する前記多量体を意味する。 なお、前記分子量は、後述の比較例および実施例で実施したゲル濾過により決定される値であり、そのゲル濾過条件は以下のとおりである。カラム:Superdex 200 prep grade(GE ヘルスケア バイオサイエンス)移動層(溶媒):D−PBS送液速度:1mL/min分子量マーカー: (1)ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin):67,000(Da)(2)アルドース(Aldolase):158,000(3)カタラーゼ(Catalase):232,000(4)フェリチン(Ferritin):440,000(5)チログロブリン(Thyroglobulin):669,000(6)ブルーデキストラン2000(Blue Dextran 2000):2,000,000 本明細書において、「6量体アディポネクチン(MMW)と実質的に反応しない」とは、ヒト血清を非変性下で分画するときに、400KDa近辺にピークを有し、約250〜440kDaに溶出する分子に反応性を示さない事を言う。 本発明のHMWアディポネクチン特異的抗体の作製法としては、免疫原として生体から直接採取され、HMWに分画されたアディポネクチンを使用すること以外、従来のモノクローナル抗体の作製法に準じて行うことができる。 免疫原として使用する生体試料は、HMWアディポネクチンを含有する可能性のある生物学的液体である限り、特に限定されるものではないが、例えば、生体から直接採取することにより得られる生体液[例えば、血液(すなわち、全血)、血清、血漿、尿、髄液、又は分泌液など]、あるいは、生体から採取した生体材料(例えば、臓器、組織、又は細胞など)を処理して得られる生体材料由来液(例えば、臓器、組織、若しくは細胞の各種抽出液、又は組織若しくは細胞の各種培養液など)などを挙げることができる。 免疫原としてのHMWアディポネクチン画分は、上記生体試料を用いて、HMWアディポネクチンを含む様々な分子量のアディポネクチンを分取した後、ゲルろ過クロマトグラフィーによって、HMWを分取することによって調製できる。HMWアディポネクチンを含む様々な分子量のアディポネクチンの採取には、HMWアディポネクチンを認識する抗体を固定したアフィニティークロマトグラフィーを使用することができる。固定化する抗体は、少なくともHMWアディポネクチンを認識できる抗体であれば良く、MMWやLMWアディポネクチンも認識しても良い。アフィニティークロマトグラフィーやゲルろ過クロマトグラフィーの具体的な方法は、使用する抗体や生体試料の量などに合わせて適宜実施することができる。また、ゲルろ過クロマトグラフィーにより分取した後、アフィニティークロマトグラフィーにより分取しても良い。 このように作製したHMWアディポネクチンモノクローナル抗体は、免疫グロブリン分子自体のほか、抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2又はFv等、公知の方法に従って調製し、HMWアディポネクチンの選択的測定法に使用することができる。 本発明により分析可能な被検試料は、HMWアディポネクチンを含有する可能性のある生物学的液体である限り、特に限定されるものではないが、例えば、生体から直接採取することにより得られる生体液[例えば、血液(すなわち、全血)、血清、血漿、尿、髄液、又は分泌液など]、あるいは、生体から採取した生体材料(例えば、臓器、組織、又は細胞など)を処理して得られる生体材料由来液(例えば、臓器、組織、若しくは細胞の各種抽出液、又は組織若しくは細胞の各種培養液など)などを挙げることができる。 HMWアディポネクチンは、例えば、正常ヒト血中には、数μg/mL〜数十μg/mLの濃度で存在する。あるいは、予備実験等により処理液(例えば、抽出用溶液又は培養用溶液)の量を適宜選択することにより、得られる生体材料由来液中のHMWアディポネクチン濃度を数μg/mL〜数十μg/mLとすることができる。 このように、本発明により分析可能な生物学的液体(特に血液)は、HMWアディポネクチンを数μg/mL〜数十μg/mLの濃度で含むが、本発明のHMWアディポネクチン分析用試薬により、前希釈することなく、分析することができる。 本発明のHMWアディポネクチン分析法としては、公知の免疫学的測定方法を使用することができる。免疫学的測定方法としては、ELISA法やRIA法、免疫凝集法やイムノクロマト法などが挙げられる。ラテックスを使用した免疫凝集法について、より具体的に記載する。 本発明で用いるラテックス粒子としては、公知のラテックス粒子、例えば、ポリスチレン、又はスチレンースチレンスルホン酸塩共重合体等からなるラテックス粒子を挙げることができる。HMWアディポネクチンに対する特異的抗体を担持するラテックスの平均粒径は、例えば、被検試料である生物学的液体の種類、HMWアディポネクチンの含有濃度、又は測定機器などに応じて、通常、0.05〜1.0μmの範囲で適宣選択することができる。 例えば、血中HMWアディポネクチンを分析する場合には、正常ヒト検体中に数μg〜数十μg/mLと高濃度にHMWアディポネクチンが存在することから、前記ラテックス粒径を適宜選択することにより、血中HMWアディポネクチンの測定系の測定範囲が保証可能となる。例えば、粒径が0.1μm以下では、臨床的意義の高い5μg/mL以下の測定正確性が保証されないことがあり、粒径が0.5μm以上では、正常高値検体の測定ができなくなることがある。従って、血中HMWアディポネクチンの測定系としては、平均粒径0.1〜0.5μmのラテックス粒子が好ましい。 本発明のHMWアディポネクチン分析用ラテックス試薬は、HMWアディポネクチンに対する特異的なモノクローナル抗体を担持したラテックス粒子懸濁液を含む限り、その形態は特に限定されるものではないが、例えば、HMWアディポネクチン特異的抗体を感作したラテックス粒子と緩衝液との両方を含む1液系の試薬;あるいは、緩衝液である第1試薬と、HMWアディポネクチン特異的抗体を感作したラテックス粒子を含む第2試薬とで構成される2液系の試薬など、種々の形態であることができる。 本発明のHMWアディポネクチン分析方法は、アディポネクチンを含む可能性のある生物学的液体を取得した後、取得した前記生物学的液体に対して前希釈及び/又は前処理することなく、取得した状態のままで、あるいは、所望により適当な処理を実施した後、本発明のHMWアディポネクチンに対する特異的抗体を担持したラテックス粒子懸濁液(好ましくは、本発明のHMWアディポネクチン分析用ラテックス試薬)と接触させることができる。 例えば、本発明方法の好適態様の1つである、自動分析測定装置を用いるHMWアディポネクチン分析方法は、(1)アディポネクチンを含む可能性のある生物学的液体を取得する工程、及び(2)前記工程で取得した生物学的液体を、前記工程で取得した状態のままで、あるいは、適当な前希釈及び/又は前処理を実施した後、自動分析測定装置内において、HMWアディポネクチンに対する特異的抗体を担持したラテックス粒子懸濁液と接触させ、ラテックス粒子の凝集度合いを光学的に分析する工程を含む。 各種生物学的液体、例えば、血液中のHMWアディポネクチン測定は、従来の測定方法であるラジオイムノアッセイ又はエンザイムイムノアッセイを用いた場合には、例えば、500〜5000倍に検体を希釈するステップを必要としている。それに対して、本発明のHMWアディポネクチン分析方法では、例えば、ラテックス粒子の粒径を適宜選択する(例えば、血中HMWアディポネクチンの場合には、0.1〜0.5μmの粒径が好ましい)ことにより、検体の前希釈や前処理を必要とせず、原液を試料としてラテックス凝集反応を実施することが可能である。 本発明のHMWアディポネクチン分析方法においては、HMWアディポネクチンに対する特異的抗体を担持したラテックス粒子(例えば、本発明のHMWアディポネクチン分析用ラテックス試薬)を用いて凝集反応を行い、生じた凝集の度合い(凝集度)を光学的に分析(特には測定)することにより、生物学的液体中(例えば、血中)のHMWアディポネクチンの量を分析(特には測定)することができる。ラテックス粒子の凝集度を光学的に分析する具体的方法においては、例えば、目視的に観察するか、あるいは、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を測定する光学機器を用いて測定を行うことができる。好ましい測定波長は300〜800nmである。測定方法は、公知の方法に従い、用いるラテックス粒子の大きさ(平均粒径)若しくは濃度の選択、又は反応時間の設定により、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度の増加又は減少を測定することにより行うことができる。また、これらの方法を併用することも可能である。 一般的に、ラテックス凝集反応の測定系に存在させるHMWアディポネクチンに対する特異的抗体感作ラテックスの濃度は、例えば、共存する塩、タンパク質、又は糖類等の添加物の濃度によって適宜選択することができる。一般には、反応系の最終液量の濃度として、HMWアディポネクチンに対する特異的抗体感作ラテックスが好ましくは0.05〜10mg/mL、より好ましくは0.1〜2mg/mLになるように、調製することができる。HMWアディポネクチンに対する特異的抗体感作ラテックスの濃度が低すぎると、凝集反応の低濃度測定が充分でなくなることがあり、高すぎると、凝集反応の高濃度測定が充分でなくなり、再現性が悪くなることがある。 本発明においては、HMWアディポネクチンに対する特異的抗体感作ラテックスの凝集反応に影響を与える他の因子を調節することによって、ラテックス粒子凝集反応を更に精密に測定し、低濃度域及び高濃度域の定量可能範囲を更に拡張させることができる。ラテックス凝集反応に影響を与える他の因子としては、例えば、ラテックス粒子の濃度、ラテックス粒子上の抗体感作量、又はラテックス粒子の粒径等を挙げることができる。 本発明のHMWアディポネクチン分析方法におけるラテックス凝集反応の条件は、通常の条件と同様であってよく、反応媒体としては、各種生物学的液体中のHMWアディポネクチン分析に応じた各種緩衝液が適宜選択することができる。血中HMWアディポネクチンを分析する場合には、この緩衝液は、血中HMWアディポネクチンを失活させることがなく、しかも、ラテックス凝集反応を阻害しないようなイオン強度やpHを有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、グッド緩衝液、グリシン緩衝液、又はトリス緩衝液などが使用可能である。反応のpHは、5〜10、特に6〜8が好ましい。反応温度は0〜50℃、特に20〜40℃が好ましい。反応時間は適宜決定することができる。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。《比較例1》公知のモノクローナル抗体 本発明のモノクローナル抗体との比較のために、公知モノクローナル抗体として、大腸菌組み替えアディポネクチン抗原をマウスに感作して作製した2種のモノクローナル抗体ANOC9121、Clone5Aを使用した。両モノクローナル抗体のヒト血中アディポネクチンへの反応性を表1にまとめた。両抗体共に非還元下のウエスタンブロッティングでは血中のMMW,HMWを同等に検出可能である。しかしながら、同一抗体同士のサンドイッチELISAではClone5Aは血液中の全ての分子を認識するが、ANOC9121同士のサンドイッチELISAではMMWへの弱い交差が見られた。公知モノクローナル抗体における問題点−1:MMWへの交差反応性 先に作製したANOC9121同士のサンドイッチELISAキットおよび、前処理を必要としない市販の高分子アディポネクチンELISAキット(富士レビオ)を用いて、二種類のヒト血清のゲル濾過画分を測定した。また、総アディポネクチンの測定はヒトアディポネクチンELISAキット(大塚製薬株式会社)を使用した。 本明細書の比較例および実施例で実施したゲル濾過は、特に断らない限り、以下の条件で実施した。カラム:Superdex 200 prep grade(GE ヘルスケア バイオサイエンス)移動層(溶媒):D−PBS送液速度:1mL/min分子量マーカー:(1)ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin):67,000(Da)(2)アルドース(Aldolase):158,000(3)カタラーゼ(Catalase):232,000(4)フェリチン(Ferritin):440,000(5)チログロブリン(Thyroglobulin):669,000(6)ブルーデキストラン2000(Blue Dextran 2000):2,000,000 MMWの含有比が高くない血清サンプルを用いた場合の結果を図1に、MMWの含有比が高い血清サンプルを用いた場合の結果を図2に、それぞれ示す。図1及び図2において、AはANOC9121を用いたサンドイッチELISAの結果を、Bは市販の高分子アディポネクチンELISAキット(富士レビオ)の結果を、Cは総アディポネクチン測定用のヒトアディポネクチンELISAキット(大塚製薬株式会社)の結果を示す。 その結果、図1に示すようにMMWの高くないサンプルでは、ANOC9121 ELISAキット、市販の高分子アディポネクチンELISAキット共に高分子(H)の特異測定が可能であった。一方、図2に示すようなMMW高値サンプルでは、MMWへの交差反応性が両キット共に確認されるため、HMW特異測定は困難となる。 なお、上記のゲル濾過条件において、HMW画分、MMW画分、及びLMW画分は、それぞれ、分子量が、>約440kDa、約250〜440kDa、<約250kDaの画分である。《比較例2》公知モノクローナル抗体における問題点−2:ラテック試薬化の問題 ELISAにてMMW反応性を有するものの、HMW特異性の高いANOC9121モノクローナル抗体を用いてラテックス試薬の調製を試みた。(1)ANOC9121モノクローナル抗体感作ラテックス試薬の調製 ANOC9121モノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度で0.01mol/Lトリス緩衝液(pH8.0)に溶解した液9mLに、平均粒径0.2μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%)1mLを添加し、室温にて60分間攪拌した。次いで、この液に、ウシ血清アルブミンを0.5重量%含有するトリス緩衝液(pH8.0)を添加し、室温にて60分間攪拌した後、この混合液を20000rpmで遠心分離した。得られた沈殿物にトリス緩衝液(pH8.0)10mLを添加し、ラテックスを懸濁させ、ANOC9121モノクローナル抗体感作ラテックス液を調製した。(2)緩衝液の調製 0.5%(重量%)濃度でウシ血清アルブミンを含有する0.1mol/Lトリス緩衝液(pH8.0)に、0.9%(重量%)濃度の塩化ナトリウムを添加して緩衝液とした。(3)HMWアディポネクチン分析用ラテックス試薬 本比較例で使用するヒトアディポネクチン抗原測定試薬は、(2)で調製した緩衝液からなる第1試薬と、(1)で調製したANOC9121モノクローナル抗体感作ラテックスからなる第2試薬とからなる2液系の試薬として構成した。アディポネクチンの測定(1)アディポネクチン分画の測定 ヒト血清中のアディポネクチン分画(MMW低値サンプル)35μLに、アディポネクチン測定用試薬の調製(2)で調製した緩衝液90μLを混合し、37℃で適時保持した後、アディポネクチン測定用試薬の調製(1)で調製したANOC9121モノクローナル抗体感作ラテックス液90μLを添加攪拌し、この後、5分後の波長570nmでの吸光度を測定した。この間の吸光度の変化量を吸光度変化量(ΔAbs)とした。標準アディポネクチン抗原液から得られるΔAbsとその抗原濃度とから検量線を作成した。その検量線を用いて、被検サンプルのΔAbsからアディポネクチン値を計算した。測定は、日立自動分析装置7170型を用いて行った。 この際、市販のヒトアディポネクチン ラテックスキット(三菱化学ヤトロン)を使用して、総アディポネクチンの測定も同時に行った。測定して得られた吸光度について、2試薬間のピークを比較するため、109番目のフラクション吸光度が一致するように、ANOC9121抗体感作ラテックス試薬での測定吸光度を補正した。 図3に、このようにして作製されたANOC9121を用いたHMWアディポネクチン分析用ラテックス試薬を用いてヒト血清中のアディポネクチン分画を評価した結果(図3のE)に示す。 既に市販している総アディポネクチン分析用ラテックス試薬の結果(図3のD)と比較すると、ANOC9121を用いたアディポネクチン分析用ラテックス試薬は、LMWに相当する分画に反応性を示さなかったものの、HMW、MMW共に総アディポネクチン分析用ラテックス試薬と同等に検出することが明らかとなり、MMW低値サンプルでもMMWを検出してしまい、ELISAの性能を再現することはできなかった。 ELISAの結果がラテックス試薬に反映されなかった理由として、一次抗体と反応させ、次いで二次抗体と反応させるELISAに比し、ラテックス試薬では同時に凝集が開始する等の反応原理の違いに起因する事が考えられるが、HMWに対する特異性や親和性の低さも原因と成りうると考える。《実施例1》(1)免疫原の調製および新規モノクローナル抗体の作製 既に試行した大腸菌組み替えアディポネクチンによる抗体作製では、HMW特異性の高いモノクローナル抗体の作製は困難と判断し、ヒト血液中アディポネクチンからHMW画分だけを抽出しモノクローナル抗体の作製を行った。ヒト血液中総アディポネクチンの精製には、前述のANOC9121結合カラムを用いた。同カラムは、3〜10mg/mLの精製ANOC9121をCNBr−活性化セファロース4Bの4gとカップリングする事で作製し、リン酸緩衝液で洗浄後の同カラムに5〜20mLのヒト血清をアプライした。リン酸緩衝液で余分な血清成分を洗浄除去後、溶出液にてヒト血液中アディポネクチンを溶出した。溶出液としては数mol/L尿素等の蛋白変性剤や、カオトロピックイオン、また数mol/Lの塩化ナトリウム溶液が使用可能であるが、本実施例では6mol/L尿素を使用した。更に、溶出されたアディポネクチンは、ゲル濾過精製により、HMW画分のうち、HMWのピークよりも高分子量側だけを回収することで、ヒト血中アディポネクチンのHMWを精製した。 精製されたヒト血中HMWアディポネクチンは、フロイント完全アジュバンド若しくはフロイント不完全アジュバンドと共に、マウスBalb/Cに1〜10μg/個体を隔週で数回程度免疫した。マウスより脾臓を摘出後、定法に従いマウスミエローマ細胞株P3U1とポリエチレングリコール法を用いて融合させ、ハイブリドーマを作製した。 作製されたハイブリドーマから、より天然(Native)型のアディポネクチンに特異性の高いモノクローナル抗体をスクリーニングするため、全く変性の起きていないアディポネクチンとして血液中のアディポネクチンを利用した。詳細には、Fc部分を消化したANOC9121 F(ab’)2を作製し、ANOC9121 F(ab’)2固相プレートを作製した。本F(ab’)2プレートに、適宜希釈したヒト血清を反応させ、続いてハイブリドーマの培養上清を反応させた。更にホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)標識した抗マウスIgG Fc抗体を添加しインキュベートした後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンの発色の強度を測定することにより、天然型のアディポネクチンに特異性、親和性共に高いモノクローナル抗体clone8Dを産生するマウス−マウスハイブリドーマClone8Dをスクリーニングした。(2)新規に作製したモノクローナル抗体のウエスタンブロッティングによる評価 血液中より精製したHMWアディポネクチン画分を用いて作製した、抗ヒトアディポネクチンモノクローナル抗体Clone8Dを用いてヒト血中のアディポネクチン分子を、ウエスタンブロッティングにより解析した。サンプルとして、非還元非加熱条件下および2−メルカプトエタノールによる還元条件下でヒト血液を電気泳動し、これに前述のANOC9121、Clone5A、およびClone8Dの3種類の抗体を反応させ、染色した。ヒト血中アディポネクチンは、非還元非加熱条件下では、HMWやMMW、LMW等の多様な形態で存在する一方、還元条件下では、3量体以上の形態が消失し、単量体である約28,000Daの形態若しくは2量体相当の分子として存在する。モノクローナル抗体ANOC9121は、非還元非加熱条件下および還元下において、これら全ての分子量体を認識した。一方モノクローナル抗体Clone5Aおよび今回ヒト血中アディポネクチンを用いて作製したClone8Dは、還元変性された単量体を認識しないが、非還元非加熱条件下の高分子量体を認識する事が示されたが、ウエスタンブロッティングで評価する限りでは高分子量体への反応性は3者の間に大きな差異は見られなかった。《実施例2》新規に作製したモノクローナル抗体のELISAによる評価 Clone8Dを用いたサンドイッチELISAを構築し、HMW特異性を従来のサンドイッチELISAと比較した。詳しくは、リン酸緩衝液に5〜10μg/mL濃度で希釈したClone8Dを、市販96穴ELISAプレートに添加し一晩固相化反応を行った。続いて、0.1〜1%のウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝液にてブロッキング操作を行った。この抗体固相プレートに、Superdex200カラム(GEヘルスケア)を用いてHPLC分画したヒト血清を反応させ、洗浄後ビオチン標識したClone8Dを反応させた。更にHRP結合ストレプトアビジンを添加し、インキュベートした後、過剰量のHRP結合ストレプトアビジンを洗浄した。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンの添加により得られる発色の強度を測定することにより、各画分のアディポネクチン量を決定した。 更に、同一画分を、比較例1で使用した、ANOC9121同士のサンドイッチELISAキット、前処理を必要としない市販の高分子アディポネクチンELISAキット(富士レビオ)で測定しMMWへの交差性を確認した。また、総アディポネクチンの測定にはヒトアディポネクチンELISAキット(大塚製薬株式会社)を使用した。その結果を図4及び図5に示す。Clone8Dを用いたサンドイッチELISA(図4及び図5のF)は他の測定法に比し、図4に示すようなMMW低値の検体だけでなく、図5に示すようなMMWを大量に含有する検体においてもMMWへの交差性を示さずHMW特異的な測定が可能であった。《実施例3》新規モノクローナル抗体を用いた高分子アディポネクチン分析用ラテックス試薬の調製(1)Clone8Dモノクローナル抗体感作ラテックス試薬の調製 Clone8Dモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度で0.01mol/Lトリス緩衝液(pH8.0)に溶解した液9mLに、平均粒径0.2μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%)1mLを添加し、室温にて60分間攪拌した。次いで、この液に、ウシ血清アルブミンを0.5重量%含有するトリス緩衝液(pH8.0)を添加し、室温にて60分間攪拌した後、この混合液を20000rpmで遠心分離した。得られた沈殿物にトリス緩衝液(pH8.0)10mLを添加し、ラテックスを懸濁させ、Clone8Dモノクローナル抗体感作ラテックス液を調製した。(2)緩衝液の調製 0.5%(重量%)濃度でウシ血清アルブミンを含有する0.1mol/Lトリス緩衝液(pH8.0)に、0.9%(重量%)濃度の塩化ナトリウムを添加して緩衝液とした。(3)HMWアディポネクチン分析用ラテックス試薬 本実施例で使用するヒトアディポネクチン抗原測定試薬は、(2)で調製した緩衝液からなる第1試薬と、(1)で調製したClone8Dモノクローナル抗体感作ラテックスからなる第2試薬とからなる2液系の試薬として構成した。アディポネクチンの測定(1)アディポネクチン分画の測定 ヒト血清中のアディポネクチン分画35μLに、アディポネクチン測定用試薬の調製(2)で調製した緩衝液90μLを混合し、37℃で適時保持した後、アディポネクチン測定用試薬の調製(1)で調製したClone8Dモノクローナル抗体感作ラテックス液90μLを添加攪拌し、この後、5分後の波長570nmでの吸光度を測定した。この間の吸光度の変化量を吸光度変化量(ΔAbs)とした。標準アディポネクチン抗原液から得られるΔAbsとその抗原濃度とから検量線を作成した。その検量線を用いて、被検サンプルのΔAbsからアディポネクチン値を計算した。測定は、日立自動分析装置7170型を用いて行った。 この際、市販のヒトアディポネクチン ラテックスキット(三菱化学ヤトロン)を使用して、総アディポネクチンの測定も同時に行った。測定して得られた吸光度について、2試薬のピークを比較するため、109番目のフラクション吸光度が一致するように、Clone8D抗体感作ラテックス試薬での測定吸光度を補正した。 結果を図6に示す。図6において、Dは市販のヒトアディポネクチン ラテックスキット(三菱化学ヤトロン)の結果を、Gは本発明のClone8D抗体感作ラテックス試薬の結果を示す。本試薬を用いてヒト血清アディポネクチンのゲル濾過画分を測定した結果、HMW特異的なラテックス凝集反応を確認できた。 本発明のモノクローナル抗体は、アディポネクチンの分析の用途に用いることができる。 以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。 マウス−マウスハイブリドーマClone8Dは、国際寄託当局としての独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、平成21年(2009年)3月5日に寄託(受領番号FERM BP−11106)されている。 受託番号がFERM BP−11106であるハイブリドーマより産生される、高分子アディポネクチンに対するモノクローナル抗体。 高分子アディポネクチンを抗原として用いることを特徴とする、請求項1に記載のモノクローナル抗体の製造方法。 請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、高分子アディポネクチンの免疫学的分析方法。 ラテックス凝集法である、請求項3に記載の免疫学的分析方法。 請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む、高分子アディポネクチンの免疫学的分析用試薬。 請求項1に記載のモノクローナル抗体を担持させたラテックス粒子を含む、請求項5に記載の免疫学的分析用試薬。


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