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タイトル:特許公報(B2)_水易溶性ミリシトリン組成物
出願番号:2011506095
年次:2014
IPC分類:A23L 1/30,A61K 31/7048,A61K 47/40,A61P 39/06,A23L 1/03,A23L 2/00


特許情報キャッシュ

栄村 和浩 岡 浩司 田中 久志 JP 5617077 特許公報(B2) 20140926 2011506095 20100324 水易溶性ミリシトリン組成物 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 000175283 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 栄村 和浩 岡 浩司 田中 久志 JP 2009074936 20090325 20141105 A23L 1/30 20060101AFI20141016BHJP A61K 31/7048 20060101ALI20141016BHJP A61K 47/40 20060101ALI20141016BHJP A61P 39/06 20060101ALI20141016BHJP A23L 1/03 20060101ALI20141016BHJP A23L 2/00 20060101ALI20141016BHJP JPA23L1/30 ZA61K31/7048A61K47/40A61P39/06A23L1/03A23L2/00 B A23L 1/30 A23L 1/03 A23L 2/00 A61K 31/7048 A61K 47/40 A61P 39/06 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開昭59−232054(JP,A) 特開平07−010898(JP,A) 特開2003−033164(JP,A) PHYTOCHEMICAL ANALYSIS,1997年,Vol.8,P.173-175 12 JP2010055113 20100324 WO2010110334 20100930 34 20130227 吉岡 沙織 本発明は、水への溶解性がミリシトリンそのものより向上している水易溶性ミリシトリン組成物に関する。また本発明は当該水易溶性ミリシトリン組成物の製造方法に関する。さらに本発明は、ミリシトリンの水溶性を向上させる方法に関する。 また本発明は、上記水易溶性ミリシトリン組成物の各種用途、具体的には退色抑制剤および香味劣化抑制剤としての用途に関する。 ルチンやミリシトリンなどのフラボノール誘導体は、一般に抗酸化作用およびラジカル消去活性がある。このことから、フラボノール誘導体は、酸化防止剤、退色防止剤または香味劣化防止剤などの食品添加物として使用される。また、フラボノール誘導体は、フリーラジカルや活性酸素等が関与する疾病予防に有効であることが報告されている。 しかしながら、一般的に、ルチンを始めとするフラボノール誘導体は水への溶解性が悪く、また水溶液中での安定性が悪いという問題がある。フラボノール誘導体は、酸性水溶液中、あるいは、フラボノール誘導体の溶解性が高くなるアルカリ性水溶液中においても、高濃度液では経時的には不溶物となり沈殿を生じることがある。フラボノール誘導体の溶解安定性が悪いことより、食品としての外観が悪くなり、食品として摂取することが困難となる。 そこで、従来より、この水難溶性のフラボノール誘導体を水溶液中に高濃度で安定に配合する方法が検討されている。例えば、特許文献1には、ルチンをβ−またはγ−シクロデキストリンに包接させる方法が記載されており、この方法によって、ルチンの水溶解性が向上することが記載されている。また、特許文献2には、上記ルチンのシクロデキストリンへの包接を、アルカリ条件で行うことにより、ルチンの低温領域での溶解性が向上することが記載されている。さらに特許文献3には、β−またはγ−シクロデキストリンに包接されたイソフラボン誘導体をアルカリ処理することによって、さらに水溶性が向上することが記載されている。また特許文献4には、水難溶性フラボノイドをアルカリ水溶液中もしくは水と有機溶媒との混合液、または超臨界ないし亜臨界条件化の水性溶媒存在下でβ−シクロデキストリンに包接させた後、酵素処理ヘスペリジンを共存させることで、水溶性を向上させた水溶性フラボノイド組成物を調製することが記載されている。特開昭59−137499号公報特開平06−54664号公報特開2004−238336号公報特開2008−271839号公報 上記のように、ルチン等の水難溶性のフラボノール誘導体をシクロデキストリンで包接化することによって水溶性向上に一定の効果があることが知られている。しかしながら、この包接化方法によって増加する水溶性は、ルチンの場合せいぜい10〜15倍程度であり、さらに水溶性を向上させるための工夫が必要と考えられる。 本発明は、ミリセチンの配糖体である水難溶性ミリシトリンについて、その水溶性を格段に向上させるための方法を提供するとともに、当該水溶性が格段に向上している水易溶性ミリシトリン組成物を提供することを目的とする。さらに当該水易溶性ミリシトリン組成物の各種用途を提供することを目的とする。 本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討したところ、ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で包接化させて得られたミリシトリン組成物の水溶性が、包接前のミリシトリンに比べて、ミリシトリンとして90倍以上にも向上することを見出した。また、この水易溶性ミリシトリン組成物は、ミリシトリンに比べて酸性飲料中での耐光性(分解抵抗性)に優れており、しかもこの組成物を配合した飲料は、酸性〜アルカリ性の別に関わらず、低温〜60℃の条件で保存しても沈殿や濁りなどの不都合を生じることがないこと、つまり、水易溶性ミリシトリン組成物を用いることにより、ミリシトリンの保存安定性に優れた水性食品を調製することができることを確認した。さらに、本発明者らは、この水易溶性ミリシトリン組成物は、ミリシトリンそのものよりも退色抑制作用および香味劣化抑制作用に優れていることを確認した。 本発明は、これらの知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を有するものである。 (I)水易溶性ミリシトリン組成物 (I-1)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で含有する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-2)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを2〜4molの割合で含有する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-3)ミリシトリンがγ−シクロデキストリンの包接体となっていることを特徴とする(I-1)または(I-2)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-4)25℃で40時間の振盪条件下におけるミリシトリンとしての水への溶解度が、ミリシトリンそのものの90倍以上、好ましくは90〜300倍であることを特徴とする(I-1)または(I-3)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-5)25℃で40時間の振盪条件下における水への溶解度が、ミリシトリン換算で10mg/ml以上、好ましくは10〜30mg/mlであることを特徴とする(I-1)または(I-3)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-6)25℃で40時間の振盪条件下におけるミリシトリンの水への溶解度が、ミリシトリン単体の200倍以上、好ましくは200〜300倍であることを特徴とする(I-2)または(I-3)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-7)25℃で40時間の振盪条件下における水への溶解度が、ミリシトリン換算で23mg/ml以上、好ましくは23〜30mg/mlであることを特徴とする(I-2)または(I-3)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-8)退色抑制剤である(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 (I-9)香味劣化抑制剤である(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 (II)水易溶性ミリシトリン組成物の製造方法 (II-1)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molとなる割合で、ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接させることを特徴とする、(I-1),(I-3),(I-4)または(I-5)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物の製造方法。 (II-2)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で含む混合物を、(1)加熱水溶液に溶解する工程、および(2)得られた水溶液を乾燥する工程を有する、(II-1)に記載する製造方法。 (II-3)上記製造方法において、(1)と(2)の工程間に水溶液を清澄化処理する工程を行う、(II-2)に記載する製造方法。 (II-4)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを2〜4molとなる割合で、ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接させることを特徴とする、(I-2),(I-3),(I-6)または(I-7)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物の製造方法。 (II-5)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを2〜4molの割合で含む混合物を、(1)加熱水溶液に溶解する工程、および(2)得られた水溶液を乾燥する工程を有する、(II-4)に記載する製造方法。 (II-6)上記製造方法において、(1)と(2)の工程間に水溶液を清澄化処理する工程を行う、(II-5)に記載する製造方法。 (II-7)上記加熱水溶液の温度が、50℃以上である(II-2)または(II-5)に記載する製造方法。 (III)水易溶性ミリシトリン組成物を含有する可食性組成物 (III-1)(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する水易溶性ミリシトリン組成物を水または含水エタノールに溶解状態で含有する可食性組成物。 (III-2)飲料である(III-1)に記載する可食性組成物。 (III-3)酸性飲料である(III-1)または(III-2)に記載する可食性組成物。 (III-4)(III-1)に記載の可食性組成物を固形化処理して得られる可食性組成物。 (IV)ミリシトリンの水溶性向上方法 (IV-1)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molとなる割合で、ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接し、γ−シクロデキストリン包接物にすることを特徴とする、ミリシトリンの水溶性を向上する方法。 (IV-2)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で含む混合物を、(1)加熱水溶液に溶解する工程、および(2)得られた水溶液を乾燥する工程を有する、(IV-1)に記載する方法。 (IV-3)上記製造方法において、(1)と(2)の工程間に水溶液を清澄化処理する工程を行う、(IV-2)に記載する方法。 (IV-4)25℃の水に対するミリシトリンとしての溶解度を、ミリシトリンそのものの溶解度の90倍以上、好ましくは90〜300倍向上させる方法である、(IV-1)乃至(IV-3)のいずれかに記載する方法。 (IV-5)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを2〜4molとなる割合で、ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接し、γ−シクロデキストリン包接物にすることを特徴とする、ミリシトリンの水溶性向上方法。 (IV-6)ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを2〜4molの割合で含む混合物を、(1)加熱水溶液に溶解する工程、および(2)得られた水溶液を乾燥する工程を有する、(IV-5)に記載するミリシトリンの水溶性向上方法。 (IV-7)上記製造方法において、(1)と(2)の工程間に水溶液を清澄化処理する工程を行う、(IV-6)に記載する方法。 (IV-8)25℃の水に対するミリシトリンとしての溶解度を、ミリシトリンそのものの溶解度の200倍以上、好ましくは200〜300倍向上させる方法である、(IV-5)乃至(IV-7)のいずれかに記載する方法。 (V)退色抑制剤および退色抑制方法 (V-1)(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する水易溶性ミリシトリン組成物を有効成分とする色素の退色抑制剤。 (V-2)退色抑制の対象色素が、天然色素である(V-1)に記載する退色抑制剤。 (V-3)退色抑制の対象色素が、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素、またはクチナシ青色素である(V-1)または(V-2)に記載する退色抑制剤。 (V-4)光照射に対する退色抑制剤である、(V-1)乃至(V-3)のいずれかに記載の退色抑制剤。 (V-5)(V-1)乃至(V-4)のいずれかの退色抑制剤を、色素とともに含有する色素製剤。 (V-6)上記色素が天然色素である(V-5)に記載の色素製剤。 (V-7)上記色素がアントシアニン系色素、フラボノイド系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素、またはクチナシ青色素である(V-6)に記載の色素製剤。 (V-8)(V-1)乃至(V-4)のいずれかの退色抑制剤を含有する、退色が抑制された着色飲食物。 (V-9)色素または色素を含む組成物を、(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する水易溶性ミリシトリン組成物と共存させることを特徴とする、当該色素または色素を含む組成物の退色抑制方法。 (V-10)色素が、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素、またはクチナシ青色素である、(V-9)記載する退色抑制方法。 (VI)香味劣化抑制剤および香味劣化抑制方法 (VI-1)(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する水易溶性ミリシトリン組成物を有効成分とする香味劣化抑制剤。 (VI-2)香味がシトラス系またはミルク系の香味である(VI-1)に記載する香味劣化抑制剤。 (VI-3)(VI-1)または(VI-2)の香味劣化抑制剤を、香味成分とともに含有する付香製品。 (VI-4)香味成分がシトラス系またはミルク系の香味を有するものである(VI-3)に記載する付香製品。 (VI-5)付香製品が飲食物である、(VI-3)または(VI-4)に記載する付香製品。 (VI-6)(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する水易溶性ミリシトリン組成物を、香味成分を含有し香味劣化を受け得る組成物と共存させることからなる該組成物の香味劣化抑制方法。 (VI-7)香味成分がシトラス系またはミルク系の香味を有するものである(VI-6)に記載する香味劣化抑制方法。 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7mol、好ましくは2〜4molの割合で包接化したミリシトリン組成物は、その水溶性が、包接前のミリシトリンに比べて、90倍以上、好ましくは200倍以上も向上させることができる。また、この水易溶性ミリシトリン組成物は、ミリシトリンに比べて酸性飲料中での耐光性(分解抵抗性)に優れており、しかもこの組成物を配合した飲料は、酸性〜アルカリ性の別に関わらず、低温〜60℃の条件で保存しても沈殿や濁りなどの不都合を生じることなく、保存安定性に優れた水性食品を調製することができる。さらに、この水易溶性ミリシトリン組成物は、ミリシトリンそのものよりも退色抑制作用および香味劣化抑制作用に優れている。実験例1において、ミリシトリンそのもの(未包接のミリシトリン)、および、ミリシトリンに対するγ−シクロデキストリンの配合量を変えた各種ミリシトリン組成物を用いて、ミリシトリンの水に対する溶解度を検討した結果を示す。上段の図は、ミリシトリン、および、ミリシトリン組成物を用いてミリシトリンの溶解度(mg/ml)をみたもの、下段の図はミリシトリン組成物を用いた際のミリシトリンの溶解度(mg/ml)を、ミリシトリンそのもの(ミリシトリン:γ−CD=1:0)の溶解度(mg/ml)を1とした場合の相対比(倍)で示したものである。実験例2において、各種フラボノイド(ミリシトリン、クエルセチン、ミリセチン、ルチンおよびナリンギン)に対するγ−シクロデキストリンの配合量を変えて調製した各種フラボノイド組成物の水に対する溶解度の相対比(倍)を、フラボノイドそのもの(フラボノイド:γ―CD=1:0)の溶解度(mg/ml)を1として算出した結果を示す。実験例4において、ミリシトリンそのもの(−◆−、―■―、―▲―)、またはミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接させたもの(―○―、−□−、―△―)を、酸性飲料(pH3,4,5)に添加し、紫外線フェードメーター照射して、ミリシトリンの残存率を検討した結果を示す。 (1)水易溶性ミリシトリン組成物、およびその製造方法 本発明が対象とするミリシトリンは、下式に示すように、ミリセチンの3位にラムノシル基が結合したフラボノール配糖体である。 当該ミリシトリンは、例えばフナコシ株式会社などより、商業的に入手することができる。 シクロデキストリンは、6〜12個のグルコース分子がα−1,4グルコシド結合で環状に連なった王冠状の非還元性マルトオリゴ糖であり、バチルス・マセランス(Bacillus macerans)等を起源とするシクロデキストリン生成酵素をデンプンに作用させることによって製造される。一般的なシクロデキストリンとしては、グルコース分子6個からなるα−シクロデキストリン、7個のグルコース分子からなるβ−シクロデキストリン、及び8個のグルコース分子からなるγ−シクロデキストリンが知られている。本発明のミリシトリン組成物の調製には、γ−シクロデキストリンが好適に用いられ、当該γ−シクロデキストリンの使用に基づいて本発明の所望の効果を発揮することができる。また、溶解度を向上させた分岐型やメチル型のシクロデキストリンや、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンとγ−シクロデキストリンとの混合品を使用することもできる。 本発明のミリシトリン組成物の調製は、ミリシトリンとγ−シクロデキストリンとを混合することによって容易に行うことができる。混合方法としては、下記に説明する混練法、溶解法、および混合粉砕法などの方法を挙げることができるが、好ましくは溶解法である。 (a)混練法 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で混合し、これに水を0.5〜5倍量加え、ペースト状に混練した後、乾燥する。 混練は通常5〜100℃で実施することができるが、加圧容器を利用して100〜160℃でより効率的に処理することも可能である。また混練する時間は、特に制限されないが、約30分〜3時間を挙げることができる。混練には、擂潰機、ボールシール、乳化機等の装置を用いることができる。包接が終了したペーストは、必要に応じて減圧乾燥、ドラム乾燥法等によって乾燥して粉末化してもよい。 (b)溶解法 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で混合し、これを約1〜50質量%となるように水に加熱溶解し、得られた水溶液を乾燥する。 なお、透明な清涼飲料等に使用する場合には、ミリシトリンとγ−シクロデキストリンを水に加熱溶解後に、ろ過等の清澄化処理を行い、得られた水溶液を乾燥することが好ましい。 水への溶解は通常50〜100℃であるが、好ましくは70〜100℃で行うことができる。また、より溶解を容易にする為に、プレートヒーター等による間接加熱処理や、レトルト殺菌等の加圧加熱処理、スチームインジェクション、スチームインフュージョン方式等の蒸気による直接加熱処理を利用し、100℃以上、好ましくは100〜165℃、より好ましくは110〜140℃の条件で処理することもできる。 また水に代えて、25質量%以下のメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールの水溶液を使用することもできる。 得られた水溶液の乾燥方法は、特に制限されないが、通常、噴霧乾燥、減圧乾燥、ドラム缶層、凍結乾燥等の方法が用いられる。 なお、ミリシトリンとγ−シクロデキストリンとの混合は、アルカリ条件下で行うこともでき、これによりミリシトリンの包接量を調節することができる。混合をアルカリ条件におくためには、通常、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、かんすい等の食品添加物として使用されるアルカリの一種または二種以上の混合物を使用する方法を用いることができる。好ましいアルカリ条件としてはpH7〜10、好ましくはpH7〜8である。 アルカリ条件下での包接化は、制限されないが、次のようにして行うことができる:γ−シクロデキストリン1〜3質量部を水5〜10質量部に分散させ、60〜80℃に加熱攪拌して完全に溶解させ、この溶液に所定量のミリシトリンを添加する。この溶液を60〜80℃に維持して緩やかに攪拌しながらアルカリを通常0.5〜5質量%程度になるように添加し、pHを好ましくは7〜10、より好ましくはpH7〜8に調整し、0.1〜2時間攪拌する。次いで、酸を添加してpHを好ましくは4〜6に調整する。このようにして調製されたミリシトリンのγ−シクロデキストリン包接物(ミリシトリン組成物)は、溶液のまま用いても、また凍結乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥、ドラム乾燥などの種々方法で乾燥して粉末化してもよい。 (c)混合粉砕法 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で、固体状態のまま、高速粉砕機などで破砕しながら混合する。 上記包接物(ミリシトリン組成物)の製造にあたって用いられる、ミリシトリンとγ−シクロデキストリンとの混合比率は、混合方法の別に拘わらず、通常、ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリン1〜7molを挙げることができる。好ましくは1〜6mol、より好ましくは1〜5mol、さらに好ましくは2〜5mol、特に好ましくは2〜4molである。 上記(a)〜(c)の方法で得られたミリシトリンのγ−シクロデキストリン包接物(ミリシトリン組成物)は、ミリシトリンそのものと比較して、水に対するミリシトリンとしての溶解度が格段に向上(増大)していることを特徴とする。このミリシトリン組成物の水に対する溶解度(ミリシトリン換算)は、25℃で40時間振盪した条件下で、ミリシトリンそのものの水に対する溶解度の90倍以上、好ましくは100倍以上、より好ましくは150倍以上、さらに好ましくは180倍以上、特に好ましくは200倍以上である。その上限は特に制限されないが、後述する実施例に基づけば300倍程度である。 よって、本発明において「水易溶性ミリシトリン組成物」とは、水に添加して25℃条件下で40時間振盪させた場合に、水へのミリシトリンとしての溶解度が、ミリシトリンそのもの(未包接物)を水に添加して25℃条件下で40時間振盪させた場合に得られる溶解度の90倍以上であるミリシトリン組成物、好ましくは100倍以上であるミリシトリン組成物、より好ましくは150倍以上であるミリシトリン組成物、さらに好ましくは180倍以上、特に好ましくは200倍以上であるミリシトリン組成物である。その上限は特に制限されないが、後述する実験例に基づけば300倍程度である。 また、これをミリシトリンの絶対量で言い換えると、「水易溶性ミリシトリン組成物」とは、水に対するミリシトリンとしての溶解度が、25℃条件下で40時間振盪溶解した場合に、10mg/ml以上であるミリシトリン組成物、好ましくは13mg/ml以上であるミリシトリン組成物、より好ましくは18mg/ml以上であるミリシトリン組成物、さらに好ましくは20mg/ml以上、特に好ましくは23mg/ml以上であるミリシトリン組成物である。その上限は特に制限されないが、後述する実施例に基づけば、30mg/ml程度である。 このような水溶性の向上により、本発明の水易溶性ミリシトリン組成物は、後述するように水溶性の可食性組成物中に多量に且つ安定に溶解することができ、ミリシトリンを高濃度に溶解した可食性組成物を調製することができる。この溶解安定性は、実験例2に示すように、本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を用いることによる特有の効果であり、本発明の水易溶性ミリシトリン組成物によれば、可食性組成物のpH(酸性〜アルカリ性)や温度(例えば低温〜60℃)に影響されず、ミリシトリンを析出させることなく安定に溶解させることができる。また本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を用いると、例えば酸性の水溶性組成物に溶解して保存した場合でも、ミリシトリンの分解が有意に抑制されるという効果がある。これらのことから、本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を用いることにより、ミリシトリンの保存安定性に優れた水溶性の可食性組成物を調製することができる。 また水易溶性ミリシトリン組成物は水溶性が高いため、包接しないで配合したミリシトリン組成物に比べ固形状や粒状、粉末状のままで経口摂取した場合にも口溶けがよく、口腔内でのざらつきが少なく、食べやすいという利点がある。 (2)水易溶性ミリシトリン組成物を含有する可食性組成物 前述のように、本発明のミリシトリン組成物は、水に対する溶解性が向上しているため、水溶性の組成物中に多量に且つ安定に配合できるため、ミリシトリンを高濃度に溶解した可食性組成物を調製することができる。 本発明が対象とする可食性組成物には、前述の本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を溶解した状態で含有する、水に相溶性のある液状または半液状の可食性組成物が含まれる。好ましくは25℃条件下で、ミリシトリンを0.01質量%(0.1mg/ml)以上、好ましくは0.012質量%(0.12mg/ml)以上の割合で溶解してなる組成物である。なお、実験例1に示すように、ミリシトリンそのものの25℃酸性条件下での水への溶解度は0.01153質量%(0.1153mg/ml)が限度である。 本発明の液状または半液状の可食性組成物は、本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を析出することなく、水または含水アルコールに溶解してなる組成物であり、その限りにおいてミリシトリンの含有量は特に制限されないが、たとえば、25℃酸性条件下での水への溶解度の上限は、後述する実験例に基づけば、3質量%(30mg/ml)を挙げることができる。 なお、ここで「25℃条件下」とは、対象とする組成物の温度を制限するものではなく、本発明が対象とする組成物の水への溶解度を評価する上で採用される水の基準温度である。 本発明が対象とする液状または半液状の可食性組成物は、水を100%の溶媒とするものであってもよいし、また25質量%を限度としてエタノールなどのアルコールを溶媒として含有する含水アルコール(好ましくは含水エタノール)であってもよい。 また本発明が対象とする可食性組成物には、上記液状または半液状の可食性組成物を固形化処理して得られる固形形態の可食性組成物も含まれる。固形化処理は、特に制限されず、冷却、冷凍、加熱および乾燥(凍結乾燥、噴霧乾燥を含む)等の定法の固形化手段を用いて行うことができ、斯くして固化してなる可食性組成物がいずれも含まれる。 本発明が対象とする可食性組成物としては、経口医薬品(ドリンク、シロップなど)、医薬部外品(例えば、口内清涼剤など)、健康食品(ドリンク、タブレットなど)、保健機能食品(栄養機能食品、特定保健用食品など)および飲食物を挙げることができる。例えば飲食物としては、制限されないものの、乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、水希釈して飲用する濃縮飲料、コーヒー飲料、しるこ飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、ウーロン茶飲料、ハト麦茶飲料、ソバ茶飲料、韃靼ソバ茶飲料、プーアール茶飲料などの飲料類;カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ラムネ菓子類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類(以上、菓子類);味噌汁、すまし汁、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;こんにゃく、豆腐等の農産加工品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。 本発明の水易溶性ミリシトリン組成物は、水に対する溶解性が格段に向上しているので、水性の透明な可食性組成物に添加し調製する場合に、特に顕著な効果を享受することができる。この場合、対象とする液状または反液状の可食性組成物として、好ましくは透明性が要求されるドリンク、ゼリー状食品、ジャム類、フルーツソースおよび飲料が、また固形形態の可食性組成物として、好ましくは透明性が要求されるハードキャンディー、ゼリー食品、また水や湯に溶解して飲食に供される粉末飲料、固形スープ、粉末スープ等が例示される。その液性(pH)は特に制限されず、例えばpH2〜7、好ましくはpH2.5〜6.5である。 また本発明の水易溶性ミリシトリン組成物は、上記のように水に対する溶解性が格段に向上しているので、水性の可食性組成物に高濃度で添加しても析出しないという利点がある。この効果を好適に享受できる可食性組成物としては、例えばコーティング用のチョコレートや糖衣用のシロップ(糖液)、または飴、冷菓、チョコレート、グミキャンディー、豆腐、こんにゃく、海苔(これらは、製造過程で液状または半液状であるが、冷却や冷凍、加熱や乾燥などによって固形化して固形形態の可食性組成物になる)を例示することができる。 本発明のミリシトリン組成物を上記可食性組成物に添加するために、特別な工程は必要なく、上記飲食物の製造工程の初期において原料とともに添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加するなど、適宜選択することができる。添加方法も特に制限はなく、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布などの通常の方法から、可食性組成物の種類や性状に応じて選択することができる。 (3)ミリシトリンの水溶性向上方法 本発明はまた、ミリシトリンについて、水への溶解性を向上させる方法を提供する。当該方法は、前述するように、ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンが1〜7molとなる割合で、ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接することによって達成することができる。ミリシトリン1molに対するγ−シクロデキストリンの割合として、好ましくは1〜6mol、より好ましくは1〜5mol、さらに好ましくは2〜5mol、特に好ましくは2〜4molである。 ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接する方法としては、上記(1)に記載する水易溶性ミリシトリン組成物の製造方法を同様に挙げることができる。 このようにして得られるミリシトリン組成物は、水に対する溶解性が、包接前のミリシトリンに比して格段に向上している。このミリシトリン組成物の水に対するミリシトリンとしての溶解度は、25℃での40時間振盪条件下で、ミリシトリンそのものの水に対する溶解度の90倍以上、好ましくは100倍以上、より好ましくは150倍以上、さらに好ましくは180倍以上、特に好ましくは200倍以上に向上している。その上限は特に制限されないが、後述する実施例に基づけば300倍程度である。 (4)退色抑制剤および退色抑制方法 (4-1)退色抑制剤 本発明の退色抑制剤は、本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を有効成分として含有することを特徴とする。 本発明の退色抑制剤は、前述する水易溶性ミリシトリン組成物を含有するものであればよく、これだけからなるものであってよいが、当該組成物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。 希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、澱粉類、トレハロース、乳糖、マルトース、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール;アラビアガム、ガティガム、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、ジェランガム、セルロース類等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤、保存料、pH調整剤、安定剤、抗酸化剤などを挙げることができる。 なおここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びL−アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸類;L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル等のアスコルビン酸エステル類;エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;クエン酸やクエン酸イソプロピル等のクエン酸類;二酸化硫黄;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、クローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、酵素分解リンゴ抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、ルチン抽出物(小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物等の各種植物の抽出物;その他、γ−オリザノール、エラグ酸、グアヤク脂、セサモリン、セサモール、メラロイカ精油、単糖アミノ酸複合物、クロロゲン酸、フィチン酸、フェルラ酸、トリトリエノール、ナタネ油抽出物、ドクダミ抽出物、ゴマ油不鹸化物、ヘスペレチン、カテキン、モリン、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリンを挙げることができる。 使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて退色抑制剤を調製する場合は、水易溶性ミリシトリン組成物(乾固物として換算)が、ミリシトリンの量に換算して0.01〜50質量%、好ましくは0.03〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。 本発明の退色抑制剤はその形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。 本発明の退色抑制剤が対象とする色素には、合成色素及び天然色素の別を問わず、広範囲の色素が含まれる。合成色素には、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号等のタール色素;三二酸化鉄や二酸化チタンなどの無機顔料;ノルビキシンNa・K、銅クロロフィル、銅クロロフィリンNa・K等の天然色素誘導体;並びにβ-カロチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビン5‘−リン酸エステルNa等の合成天然色素などの合成着色料が含まれる。 天然色素には、アナトー色素、クチナシ黄色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、マリーゴールド色素、トマト色素及びパプリカ色素等のカロチノイド系色素;赤キャベツ色素、赤ダイコン色素、シソ色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素及びボイセンベリー色素等のアントシアニン系色素;カカオ色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;アカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素;クロロフィリン、クロロフィル及びスピルリナ色素等のポルフィリン系色素;ウコン色素等のジケトン系色素;赤ビート色素等のベタシアニン系色素;紅麹色素等のアザフィロン系色素;その他、紅麹黄色素、カラメル、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、金、銀、アルミニウム系色素が含まれる。本発明の退色抑制剤は、好ましくは天然色素を対象とすることができ、より好ましくは上に掲げる各種の天然色素、特にカロチノイド系色素、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素およびクチナシ青色素などの天然色素を含有するものに広く適用することができ、これらの色素の退色を抑制若しくは防止するのに有用である。 本発明の退色抑制剤が適用される具体的な製品(着色製品)としては、上記色素を含有するものであれば特に制限されないが、例えば色素製剤、飲食物(食品)、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。好ましくは色素製剤及び飲食物(食品)である。これらの製品(着色製品)に対する発明の退色抑制剤の用法については、下記(4-2)において詳述する。 (4-2)退色抑制剤を含む着色製品 本発明は、前述する本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を退色抑制剤として利用した着色製品を提供する。当該着色製品は、上記組成物を含有することによって中に含まれる色素の退色現象、特に光に晒されることにより生じる退色現象が有意に抑制されるという効果を得ることができる。 なお、ここで「着色」とは、製品に人為的に色素を添加して着色した意味のみならず、例えば果汁や野菜汁等のように飲食物等の製品材料に本来含まれる色素に由来して着色しているものまでも広く包含する趣旨で用いられる。また、ここでいう「着色製品」には色素、特に前述した天然色素により着色している各種の製品、具体的には色素製剤、色素を含む着色飲食物、色素を含む着色化粧品、色素を含む着色医薬品、色素を含む着色医薬部外品及び色素を含む着色飼料が包含される。 本発明が対象とする色素製剤としては、本発明の水易溶性ミリシトリン組成物に加えて、前述した合成色素または天然色素を1種又は2種以上を含むものを挙げることができる。好ましくは、上記に掲げた天然色素を1種又は2種以上含む色素製剤である。好ましくはカロチノイド系色素、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素およびクチナシ青色素に属する各種の色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素を含む色素製剤である。 当該色素製剤に配合される水易溶性ミリシトリン組成物の割合は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、色素製剤中にミリシトリンの量に換算して、少なくとも0.03質量%、好ましくは0.03〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の割合で含まれることを挙げることができる。 本発明の色素製剤には、少なくとも色素及び前述した水易溶性ミリシトリン組成物が含まれていればよいが、必要に応じてさらに抗酸化剤、キレート剤、香料又は香辛料抽出物、防腐剤、保存料、pH調整剤、安定剤を含んでいても良い。 本発明の色素製剤は、製造の任意の工程で水易溶性ミリシトリン組成物を配合することを除けば、各種色素製剤の慣用方法に従って製造することができる。水易溶性ミリシトリン組成物の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、色素製剤の製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光に晒す前に各種の材料とともに配合することが望ましい。 本発明が対象とする飲食物としては着色したもの、好ましくは前述した天然色素に基づいて色を有するものであれば特に制限されず、例えば「(2)水易溶性ミリシトリン組成物を含有する可食性組成物」の項に記載する各種の飲食物を挙げることができる。好ましくは飲料、ゼリーである。 本発明の飲食物は、製造の任意の工程で水易溶性ミリシトリン組成物を配合することを除けば、各種飲食物の慣用の製造方法に従って製造することができる。水易溶性ミリシトリン組成物の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、これらの水易溶性ミリシトリン組成物を製造工程の初期、好ましくは熱処理工程または光に晒される前に配合することが好ましい。 飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種着色製品に対する本発明の退色抑制剤の添加量は、それらに含まれる色素の退色現象が防止できる量であれば特に制限されない。着色製品に含まれる色素の種類及びその含量、対象物の種類・用途及びそれに含まれる成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。例えば上記着色製品を、退色抑制対象とする色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10%1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、ミリシトリンに換算して該着色製品に少なくとも3ppmとなるように、例えば3〜1000ppmの範囲、好ましくは3〜300ppmの範囲で含まれるように、退色抑制剤(水易溶性ミリシトリン組成物)を配合することができる。より好ましくは、上記色価(E10%1cm)を有する着色製品に対する配合割合が、少なくともミリシトリンの量に換算して0.03質量%以上、好ましくは0.3〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の範囲となるように、退色抑制剤を配合することが望ましい。 なお、色価とは着色物(着色料溶液)中の色素濃度を意味し、通例、該着色物(着色料溶液)の可視部での極大吸収波長における吸光度を測定し、10w/v%溶液の吸光度に換算した数値(E10%1cm)で表される。具体的には、当該色価(E10%1cm)は、まず測定対象とする着色物(着色料溶液)の濃度を吸光度が0.3〜0.7の範囲に入るように調整し、次いでそれを層長1cmのセルを用いて極大吸収波長で吸光度を測定し、得られた吸光度を、着色物(着色料溶液)の濃度が10w/v%のときの吸光度に換算することにより得ることができる(第8版食品添加物公定書:「17.色価測定法」参照)。 (4-3)退色抑制方法 また本発明は、色素または色素を含む各種の組成物の退色抑制方法を提供する。 本発明が対象とする色素は、前述した合成色素及び天然色素である。好ましくは前述した各種の天然色素であり、より好ましくはカロチノイド系色素、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素およびクチナシ青色素である。特に実験例に示すように、本発明の退色抑制方法は、これらの色素の光照射による退色現象を抑制する効果(耐光性)に優れている。 また、ここでいう色素を含む各種の組成物(色素含有組成物)とは、上記色素、好ましくは天然色素を含む組成物を広く意味するものである。具体的には、前述した色素製剤、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種着色製品を挙げることができる。 本発明は、これらの色素または該色素含有組成物を前述した水易溶性ミリシトリン組成物、または本発明の退色抑制剤と共存させることにより実施することができる。ここで共存の態様としては、両者が接触した状態で存在する状態が形成されるものであれば特に制限されない。例えば、この共存状態は色素またはこれを含む組成物に退色抑制作用を有する水易溶性ミリシトリン組成物を配合して両者を混合することによって形成することができる。例えば、色素を含む組成物が色素製剤または飲食物である場合は、水易溶性ミリシトリン組成物を色素製剤または飲食品の製造時に材料成分の一つとして配合することによって上記共存状態を形成することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の他の着色製品についても同様である。 色素または色素含有組成物に対する水易溶性ミリシトリン組成物の使用割合としては、本発明の効果を発揮する範囲であれば特に制限されず、対象とする色素の種類に応じて適宜調節することができる。色素含有組成物に対する水易溶性ミリシトリン組成物の使用割合は、特に制限されないが、該色素含有組成物を、退色抑制の対象色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10%1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、その中に水易溶性ミリシトリン組成物がミリシトリンの量に換算して少なくとも0.03質量%以上、好ましくは0.3〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の割合で含まれるような割合で含まれるような配合割合を挙げることができる。 当該本発明の退色抑制方法によれば、色素又は色素含有組成物の退色を有意に抑制することができる。本発明の退色抑制方法は、特にカロチノイド系色素、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素、クチナシ青色素、又はこれらの色素を含有する組成物の光照射によって生じる退色を抑制する効果に優れており、当該色素又は色素含有組成物に光退色耐性(耐光性)を付与することができる。 ここで光退色耐性とは、太陽光または人工光(蛍光灯など)の影響を受けても退色しにくい性質をいう。具体的には、色素または色素含有組成物が、通常の保存状態で受け得る光(太陽光、蛍光灯など)条件下におかれた場合に、退色抑制剤を配合しない色素または色素含有組成物に比して、退色が有意に抑制される性質をいう。例えば、上記条件としては、色素または色素含有組成物が、太陽光に5分から数時間晒される、あるいは、蛍光灯照射を1日から6ヶ月晒されるような条件を例示することができる。 (5)香味劣化抑制剤および香味劣化抑制方法 (5-1)香味劣化抑制剤 本発明の香気劣化抑制剤は、有効成分として本発明の水易溶性ミリシトリン組成物を含有することを特徴とする。 本発明の香味劣化抑制剤は、前述の水易溶性ミリシトリン組成物を含有するものであればよく、これらの組成物だけからなるものであってよいが、当該組成物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。 希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、澱粉類、トレハロース、乳糖、マルトース、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール;アラビアガム、ガティガム、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、ジェランガム、セルロース類等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤、保存料、pH調整剤、安定剤などを挙げることができる。 なおここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びL−アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸類;L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル等のアスコルビン酸エステル類;エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;クエン酸やクエン酸イソプロピル等のクエン酸類;二酸化硫黄;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、クローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、酵素分解リンゴ抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、ルチン抽出物(小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物等の各種植物の抽出物;その他、γ−オリザノール、エラグ酸、グアヤク脂、セサモリン、セサモール、メラロイカ精油、単糖アミノ酸複合物、クロロゲン酸、フィチン酸、フェルラ酸、トリトリエノール、ナタネ油抽出物、ドクダミ抽出物、ゴマ油不鹸化物、ヘスペレチン、カテキン、モリン、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリンを挙げることができる。 使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて香味劣化抑制剤を調製する場合は、水易溶性ミリシトリン組成物が、ミリシトリンの量に換算して少なくとも0.03質量%、好ましくは0.03〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。 本発明の香味劣化抑制剤はその形態を特に制限するものではない。例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。 本発明の香味劣化抑制剤が対象とする香味成分には、天然香料(植物性天然香料、動物性天然香料)及び合成香料の別を問わず、これらの香料を構成する香味成分が含まれる。 具体的には、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系香料;アップル、グレープ、ピーチ、バナナ、パイナップル等のフルーツ系香料;ミルク、バター、チーズ、ヨーグルト等のミルク系香料;バニラ系香料;紅茶や緑茶などの茶系香料;コーヒー系香料;ミント系香料;ハーブ、コショウ、ワサビ等のスパイス系香料;ナッツ系香料;ビーフ、ポーク、チキン等のミート系香料;魚貝類、甲殻類等の水産物系香料;ワイン、ウイスキー、ブランデー等の洋酒系香料;バラ、ラベンダー、ジャスミン等のフラワー系香料;オニオン、ガーリック、キャベツ等の野菜系香料;肉料理、魚介料理、野菜料理等の調理系香料;その他の香料を構成する香味成分をあげることができる。好ましくはシトラス系およびミルク系の香料を構成する香味成分である。一般に香料は、一つの香気成分からは再現できず、多数の香気成分より作り出すことができる。例えば、各系統の香気を特徴づける基原物質を主要成分として、これに様々な香気成分を調合することによって調製される。こうした各系統の香気の基原物質は公知であり、その調合方法も当業者が通常なしえるところである(例えば、参考図書として「香りの総合辞典」日本香料工業会編、朝倉書店、1998年12月10日発行を挙げることができる。)。 実験例で示すように、本発明の香気劣化抑制剤は、シトラス系香料を有する飲食物、およびミルク系香料を有する飲食物などの光や熱による香味劣化現象を抑制する効果(耐光性および耐熱性)に優れていることが確認されている。よって、本発明の香味劣化抑制剤は、各種の香味成分、好ましくは上に掲げるシトラス系香料またはミルク系香料を構成する香味成分を含む製品(付香製品)に広く適用することができ、これらの製品について香味の劣化を抑制若しくは防止するのに有用である。 本発明の香味劣化抑制剤は、香味劣化の抑制、特に光や熱によって生じる香味劣化の抑制を目的として幅広い製品(香味含有製品、付香製品、着香製品:以下「付香製品」という)に広く適用することができる。このような付香製品としては、例えば香料、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。好ましくは香料、飲食物及び化粧品である。また好ましい形態として含水物、特に飲料、化粧水及び液剤等の溶液状、中でも水溶液状のものを挙げることができる。 なお、本発明の香味劣化抑制剤は、香料などの香味成分を用いて着香した製品や本来的に香味成分を含む製品に添加配合することによって、該製品の香味劣化を防止することができる。これらの付香製品に対する発明の香味劣化抑制剤の用法については、下記(5-2)及び(5-3)において詳述する。 (5-2)香味劣化抑制剤を含む付香製品 本発明は、前述した水易溶性ミリシトリン組成物を香味劣化抑制剤として含有する付香製品を提供する。当該付香製品は、水易溶性ミリシトリン組成物を含有することによって中に含まれる香味の劣化現象、特に光や熱に晒されることにより生じる香味劣化現象が有意に抑制されるという効果を得ることができる。 なお、ここで「付香」とは、製品に人為的に香味成分(香料)を添加して着香した意味のみならず、例えば果汁や野菜汁等のように飲食物等の製品材料に本来含まれる香味成分に由来して香味を有しているものまでも広く包含する趣旨で用いられる。また、ここでいう「付香製品」には香味成分、特に前述した香料により付香している各種の製品、具体的には香料そのもの、香料製剤、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料が包含される。 好ましい製品としては、香料や、口に含んだ場合に感じられるフレーバー感が商品価値となり得る、例えば飲食物、口紅やリップクリーム等の化粧料、経口用の医薬製剤、歯磨き剤、口中清涼剤及び口臭予防剤等の医薬部外品などの製品を挙げることができる。より好適な製品は香料及び飲食物である。 本発明が対象とする香料としては、天然香料(植物性天然香料、動物性天然香料)及び合成香料の別、並びに単体香料及び調合香料の別を問わず、また製造方法並びに形態(水溶性香料、油性香料、乳化香料、粉末香料)の別を問わず、さらに食品香料や香粧品香料の別を特に問わず、任意の香料を挙げることができる。 好ましくは、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系香料;およびミルク、バター、チーズ、ヨーグルト等のミルク系香料である。 また、これらの香料を用途別に分類とすると、炭酸飲料、果実飲料、茶・コーヒー系飲料、乳飲料・乳酸菌飲料、機能性飲料等に使用される飲料用香料;冷菓、キャンディー・デザート、チューイングガム、焼き菓子等に使用される菓子用香料;ヨーグルト、バター・マーガリン、チーズ等に使用される酪農・油脂製品用香料;スープ用香料;味噌、醤油、ソース、たれ、ドレッシング等に使用される調味料用香料;食肉加工品用香料;水産加工品用香料;調理食品用香料;冷凍食品用香料等の食品香料;たばこ用香料;口腔製品用香料;医薬品用香料;飼料用香料;産業用香料等として例示することができる。 この香料中に配合される香味劣化抑制剤の割合は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、着香対象物への通常使用量が0.05〜0.2質量%である香料の場合、当該香料に対して水易溶性ミリシトリン組成物が、ミリシトリンの量に換算して、少なくとも0.03質量%、好ましくは0.03〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の割合で含まれることが好ましい。なお、本発明の効果の点から上限は特に制限されないが、例えば液体香料の場合、過剰に添加することにより着香対象物本来の味を損ねる、または不溶物析出を生じる可能性があり、これらを避ける意味では10質量%以下の範囲で配合することが好ましい。 このようにして得られる香料は、その製造工程中や流通、保存期間中の長期にわたって香味が劣化しにくく、光や熱等の劣化促進要因に対して耐性をもった香料として提供することができる。またこの香料は、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料等の各種製品に所望な香味を付与することができるだけでなく、当該飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料等の各種製品について、熱、光や酸素などによる香味劣化、特に熱による香味劣化を有意に防止することができる。 本発明の香料は、製造の任意の工程で水易溶性ミリシトリン組成物を配合することを除けば、各種香料の慣用方法に従って製造することができる。水易溶性ミリシトリン組成物の配合方法やその順番に特に制限はないが、香料が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、香料の製造工初期、好ましくは熱処理工程前または光に晒す前に各種の材料とともに配合することが望ましい。 本発明が対象とする飲食物としては付香したもの、好ましくは前述した香料(香味成分)を含有することによって、香りを有するものであれば特に制限されない。より好ましくはシトラス系またはミルク系の香りを有するものである。この飲食物として、例えば乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、水希釈して飲用する濃縮飲料、コーヒー飲料、しるこ飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、ウーロン茶飲料、ハト麦茶飲料、ソバ茶飲料、韃靼ソバ茶、プーアール茶飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料などの飲料類;カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類(以上、菓子類);味噌汁、すまし汁、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくは飲料及び菓子類である。 本発明の飲食物は、製造の任意の工程で水易溶性ミリシトリン組成物を配合することを除けば、各種飲食物の慣用の製造方法に従って製造することができる。水易溶性ミリシトリン組成物の配合方法やその順番に特に制限はないが、水易溶性ミリシトリン組成物を製造工程の初期、好ましくは熱処理工程または光に晒される前に配合することが好ましい。 本発明が対象とする化粧品としては香料、特に前述した香料(香味成分)を含むスキン化粧料(ローション、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品等を一例として挙げることができる。医薬品としては香料、特に前述した香料(香味成分)を含む各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を一例として挙げることができる。医薬部外品としては香料、特に前述した香料(香味成分)を含む歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を一例として挙げることができる。また飼料としては香料、特に前述した香料(香味成分)を含むキャットフードやドッグフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができる。しなしながら、これらに制限されるものではない。 これらの化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料などの各種製品は、それら製造の任意の工程で水易溶性ミリシトリン組成物を配合することを除けば、各種製品の慣用方法に従って製造することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料に対する水易溶性ミリシトリン組成物の配合時期は特に制限されないが、製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光に晒す前に各種材料とともに配合することが望ましい。 飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種付香製品に対する本発明の香味劣化抑制剤の添加量は、それらに含まれる香味成分の劣化現象が防止できる量であれば特に制限されない。付香製品に含まれる香味成分の種類及びその含量、対象物の種類・用途及びそれに含まれる成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。例えば上記付香製品に、付香製品に対する水易溶性ミリシトリン組成物のより好ましい配合割合は、ミリシトリンの量に換算して少なくとも0.0003質量%、好ましくは0.0003〜0.03質量%、より好ましくは0.0006〜0.015質量%の割合の範囲である。 (5-3)香味劣化抑制方法 また本発明は、香料または香味成分を含む各種の組成物の香味劣化抑制方法を提供する。 本発明が対象とする香料としては、天然香料(植物性天然香料、動物性天然香料)及び合成香料の別、並びに単体香料及び調合香料の別を問わず、また製造方法並びに形態(水溶性香料、油性香料、乳化香料、粉末香料)の別を問わず、さらに食品香料や香粧品香料の別を特に問わず、任意の香料を挙げることができる。 好ましくは、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系香料;ミルク、バター、チーズ、ヨーグルト等のミルク系香料である。 本発明でいう香料を含む各種の組成物(香料含有組成物、付香組成物)とは、上記香料、好ましくはシトラス系、またはミルク系の香味成分を含む組成物を広く意味するものである。具体的には、前述した香料、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種付香製品を挙げることができる。 本発明の方法は、これらの付香製品を、前述する水易溶性ミリシトリン組成物、または本発明の香味劣化抑制剤と共存させることにより実施することができる。ここで共存の態様としては、両者が接触した状態で存在する状態が形成されるものであれば特に制限されない。例えば、この共存状態は付香製品に水易溶性ミリシトリン組成物または上記本発明の香味劣化抑制剤を配合して両者を混合することによって形成することができる。また、付香製品が香料または飲食物である場合は、水易溶性ミリシトリン組成物または本発明の香味劣化抑制剤を香料または飲食品の製造時に材料成分の一つとして配合することによって上記共存状態を形成することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の他の付香製品についても同様である。 付香製品に対する水易溶性ミリシトリン組成物または本発明の香味劣化抑制剤の使用割合としては、本発明の効果を発揮する範囲であれば特に制限されず、対象とする香料の種類に応じて適宜調節することができる。また付香製品に対する水易溶性ミリシトリン組成物または本発明の香味劣化抑制剤の使用割合は、特に制限されないが、該付香製品中に、水易溶性ミリシトリン組成物が、ミリシトリンの量に換算して、少なくとも0.0003質量%、好ましくは0.0003〜0.03質量%、より好ましくは0.0006〜0.015質量%で含まれるような割合を挙げることができる。 当該本発明の香味劣化抑制方法によれば、付香製品の香味劣化を有意に抑制することができる。 本発明の香味劣化抑制方法は、香味成分を含む組成物、特にシトラス系の香味成分を含有する組成物の光や熱によって生じる香味劣化を抑制する効果に優れており、これらの香料を含む組成物に熱耐性や光耐性を付与することができる。 ここで熱耐性とは、熱の影響を受けても香味が劣化(減少、変質などを含む)しにくい性質をいう。具体的には、香料または香料含有組成物が、通常の保存状態または製造工程で受け得る熱(加温〜加熱)条件下におかれた場合に、香味劣化抑制剤を配合しない香料または香料含有組成物に比して、香味劣化が有意に抑制される性質をいう。例えば、上記条件としては、香料または香料含有組成物が、60℃で数十時間から1ヶ月晒される、あるいは、40℃で1日から6ヶ月晒されるような条件を例示することができる。 また光耐性とは、太陽光または人工光(蛍光灯など)の影響を受けても香味が劣化(香味減少、変質)しにくい性質をいう。具体的には、香料または香料含有組成物が、通常の保存状態で受け得る光(太陽光、蛍光灯など)条件下におかれた場合に、香味劣化抑制剤を配合しない香料または香料含有組成物に比して、香味の劣化が有意に抑制される性質をいう。例えば、上記条件としては、香料または香料含有組成物が、太陽光に5分から数時間晒される、あるいは、蛍光灯照射を1日〜6ヶ月間晒されるような条件を例示することができる。 以下、本発明の内容を以下の実験例および実施例を用いて具体的に説明する。但し、これらの実施例などは本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。なお、特に記載のない限り「%」は「質量%」を意味するものとする。また、MYはミリシトリン、γ−CDはγ−シクロデキストリン、MY−CDは、ミリシトリンのシクロデキストリン包接化物のことを意味する。また、「*」を付した製品は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であることを示し、「※」印を付した名称は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。 調製例1 MYの調製 ヤマモモ樹皮乾燥物の粉砕物1kgにメタノール10kgを加え、約60℃で5時間抽出したのちろ過し、残渣をメタノール3kgで洗浄し、メタノール抽出液約10kgを得た。この抽出液を濃縮後別の容器に移し替え、減圧乾燥してごく薄い黄色の粉末0.25kgを得た。 得られた固形物を粉砕し、約60℃でメタノール4kgに加熱溶解し、次いで、水20kgを加えてMYを析出させた。析出したMYをろ過して回収し、減圧乾燥してMY0.2kgを得た。得られたMYを以下条件で分析したところ、HPLC純度で99.2%であった。 <HPLC分析条件> カラム:Inertsil ODS-2 Φ4.6×250mm(GLサイエンス製) 溶離液:水/アセトニトリル/TFA=850/15/2 検出:波長351nmにおける吸光度 流速:0.8ml/min。 実施例1 水易溶性MY組成物の調製 MY(調製例1のものを使用)とγ−CD(WACKER C HEMICAL社製、以下同じ)を1:3(mol比)で混合し(合算質量3.8g)、これに水道水100mlを添加して、約90℃に加温して15分間撹拌し、固形成分を溶解した。これを、濾紙を用いて濾過した後、エバポレーターで濃縮乾燥した。得られた乾燥固形物をミキサーで粉末化して、粉末状のMY組成物(3.7g)を調製した。 実施例2 粉末状のMY組成物の調製 MY(調製例1のものを使用)とγ−CD(WACKER C HEMICAL社製、以下同じ)を1:1.2(mol比)で混合し(合算質量5.2g)、これにデキストリン34.8gを加え、水道水60mlを添加して、約90℃に加温して15分間撹拌し、固形成分を溶解した。これを、濾紙を用いて濾過した後、エバポレーターで濃縮乾燥した。得られた乾燥固形物をミキサーで粉末化して、粉末状のMY組成物(38g)を調製した。 実施例3 粉末状のMY組成物の調製 MY(調製例1のものを使用)とγ−CD(WACKER C HEMICAL社製、以下同じ)を1:1.2(mol比)で混合し(合算質量10.4g)、これにデキストリン29.6gを加え、水道水60mlを添加して、約90℃に加温して15分間撹拌し、固形成分を溶解した。これを、濾紙を用いて濾過した後、エバポレーターで濃縮乾燥した。得られた乾燥固形物をミキサーで粉末化して、粉末状のMY組成物(38g)を調製した。 実験例1 MY組成物の水溶性評価 MYとγ−CDを表1に記載する割合(mol比)で用いて、実施例1に記載する調製方法に従って20種類の粉末状ミリシトリン組成物(試料1〜22)を調製した。 水を20ml入れた100ml容量のマイヤーの中に、上記で調製した粉末状MY組成物(試料1〜22)、またはコントロールとしてMYそのものを、撹拌しながら、溶解しきれず析出するまで添加した。これらをそれぞれ25℃で40時間振盪(タイテック株式会社製 BIO−SHAKER BR−3000LF、回転速度160rpm、振幅40mm)させた後、9000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を採取した。得られた上澄み液を、適宜0.1%リン酸水溶液で希釈して、吸光度(346nm)を測定した。得られた吸光度から、予め下記に記載の方法で作成しておいた標準検量線を用いて、上澄み中のMYの濃度(mg/ml)を算出し、MY組成物(試料1〜22)およびMY(未包接)の溶解度とした。また、MY(未包接)の溶解度(mg/ml)を1として、これに対するMY組成物(試料1〜22)のMYとしての溶解度の相対比(以下、「溶解度(倍)」という)を算出した。 検量線作成方法(分光光度計)1)MY50mgを正確に量り採り、メタノールに溶解して正確に100mlとした。2)この液を0.1%リン酸水溶液で適宜希釈し、0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01mg/mlの濃度のMY溶液を調製した。3)分光光度計にて標準溶液の極大吸収波長における吸光度を測定した。4)MY溶液中の含量と、吸光度の測定値を元に検量線を作成した。 結果を表1、並びに図1(溶解度(mg/ml)、溶解度(倍))に示す。 この結果から、MY1molに対してγ−CDを1〜7mol使用することで、MYそのものを溶解する場合(溶解度0.12mg/ml)と比較してMYとしての溶解度が90倍以上(10mg/ml以上)と、顕著に向上することが判明した。また、MY1molに対して、γ−CDを1〜6mol、好ましくは1〜5mol、より好ましくは2〜5mol、さらに好ましくは2〜4mol使用することで、MYそのものに比してMYとしての溶解度がそれぞれ100倍以上(13mg/ml以上)、150倍以上(18mg/ml以上)、180倍以上(20mg/ml以上)、200倍以上(23mg/ml以上)と顕著に向上することが判明した。 参考実験例 α−またはβ−シクロデキストリンを使用した場合の水溶性評価 γ−CDに代えて、α−シクロデキストリン(α−CD)(日本食品化工社製)、およびβ−シクロデキストリン(β−CD)(日本食品化工社製)を用いて、MYを包接したものを調製し、水に対する溶解性を評価した。 具体的には、実施例1に記載する調製方法に準じて、MY1molに対して、それぞれα−CDを3mol含有するMY組成物(参考試料1)およびβ−CDを3mol含有するMY組成物(参考試料2)を調製し、各組成物について実験例1の方法に従って、水に対するMYとしての溶解度(mg/ml)を求めた。またコントロールとして、MYそのものの水への溶解度(mg/ml)を求め、それとの相対比から溶解度(倍)を算出した。 結果を、実験例1で評価した試料5の結果と併せて、表2に示す。 この結果からわかるように、α−CDおよびβ−CDを用いた組成物の場合(参考試料1および2)、水に対するMYの溶解性は、γ−CDを用いた場合(試料5)のそれに比して極めて低く、本発明のミリシトリン組成物の水溶性向上は、γ−CDを用いたことによる特有の効果であることが確認された。 実験例2 他のフラボノイド類の水溶性評価 γ−CD、並びに表3に記載する各種のフラボノイド類(ミリシトリン、クエルセチン、ミリセチン、ルチンおよびナリンギン)を、当該表に記載する割合(mol比)で用いて、実施例1に記載する調製方法に従って、粉末状の組成物を調製した。 調製した各組成物について実験例1の方法に従って、水に対する各フラボノイド類換算での溶解度(mg/ml)を求めた。またコントロールとして、各フラボノイド類そのものの水への溶解度(mg/ml)を求め、それとの相対比から溶解度(倍)を算出した。 結果(溶解度(倍))を、表3および図2に示す。 この結果からわかるように、フラボノイド類としてクエルセチン、ミリセチン、ルチンおよびナリンギンを用いた組成物の水に対する溶解性は、ミリシトリンを用いた場合のそれに比して極めて低く、本発明の組成物の水溶性向上は、γ−シクロデキストリンとミリシトリンとを組み合わせて用いたことによる特有の効果であることが確認された。 実験例3 保存安定性の評価(析出物の有無) MYとγ−CDを1:1の割合(mol比)で用いて、実施例1に記載する調製方法に従って粉末状MY組成物(試料1)を調製した。これをMYの最終濃度が0.1%または0.05%となるように、下記組成からなる各種pH(3、6および9)の酸糖液に溶解し、100ml容ガラスバイアルにホットパック充填(93℃)した。調製した飲料は放冷後、それぞれ50℃、室温(25±2℃)、および低温(5℃)の条件下に210日間放置し、析出の有無を目視で観察した。 <酸糖液> また比較実験として、MY単体、ルチン単体、および、実施例1に記載する調製方法に従って調製した粉末状ルチン組成物(ルチン:γ−CD=1:1、mol比)についても、それぞれ上記と同様にフラボノイドの最終濃度が0.1%または0.05%となるように、各種pH(3、6および9)の酸糖液に溶解し、200ml容ペットボトルにホットパック充填(93℃)した。調製した飲料は放冷後、それぞれ50℃、室温(25±2℃)、および低温(5℃)の条件下に210日間放置し、析出の有無を観察した。 結果を表4に示す。表中、「+」は析出有り、「−」は析出無し、をそれぞれ意味する。また「×」は調製した酸糖液に溶解しなかったことを意味する。 この結果に示すように、ルチンをγ−CDの包接物とした場合、水への溶解性はある程度上がるものの、保存することによって析出し、極めて不安定であった。これに対して、MYはγ−CDの包接物とすることにより、水への溶解性が格段に上がるとともに(実験例1参照)、pH3〜9および低温〜60℃の様々な条件で保存した場合でも析出がなく、溶解性が長期にわたって維持されること、すなわち保存安定性も向上することが判明した。 また、MY:γ−CD=1:1〜3からなるMYとγ−CDの包接物は、酸糖液にミリシトリン濃度として0.1%添加した場合でも、少なくとも2ヶ月間析出することなく、安定した状態で溶解していた。 実験例4 保存安定性の評価(分解安定性) 酸性溶液中に、MYまたはMY組成物を配合し、フェードメーターを照射した後のMY残存量を比較して、保存による分解安定性を評価した。 具体的には、下記処方の酸性溶液を調製し、これにMY3%製剤(商品名サンメリン※Y−AF*)、または実施例2で調製したMY/γ−CD包接物製剤(MY:γ−CD=1:1.2)(ミリシトリン3%含有)をそれぞれMYとしての最終濃度が0.05%となるように添加した。 <酸性溶液の処方> これに、紫外線フェードメーター(紫外線ロングライフフェードメーター FAL-3、スガ試験機株式会社製)で1〜16時間照射し、照射後のMY量を、HPLCにて測定し、照射後のMY残存率(%)を算出した。 結果を図3に示す。 この結果に示すように、MYをγ−CDの包接物とすることにより、紫外線照射による分解が抑制されること、すなわち、紫外線照射に対して抵抗性が向上する(保存安定性が向上する)ことが判明した。 実験例5 退色抑制効果の評価 下記表5に記載する各種の色素を用いて、MYおよびMY組成物の退色抑制効果を評価した。 具体的には、下記処方の色素含有酸性飲料を調製し、これにMYの3%製剤(商品名サンメリン※Y−AF*)、実施例2で調製したMY/γ−CD包接物製剤(MY:γ−CD=1:1.2)(MY3%含有)をそれぞれMYの最終濃度が0.003%となるように、またはγ−CD(WACKER CHEMICAL社製)の最終濃度が0.01%になるように添加した。また、ポジティブコントロールとして酵素処理イソクエルシトリン(EMIQ)15%製剤(商品名サンメリン※AO−3000*)をEMIQの最終濃度が0.015%となるように添加した。 <色素含有酸性飲料の処方> これに、紫外線フェードメーター(紫外線ロングライフフェードメーター FAL−3、スガ試験機株式会社製)または蛍光灯(BIOTRON LH 300、NK System製)を、それぞれ表6および7に記載する時間照射し、照射前と照射後の吸光度を測定し、照射後の色素残存率(%)を算出した。また対照試験として、色素含有酸性飲料に何も添加せずに(無添加)、上記と同様に、紫外線フェードメーターまたは蛍光灯で照射して、照射後の色素残存率(%)を算出した。 紫外線フェードメーター照射による結果を表8に、蛍光灯照射による結果を表9にそれぞれ示す。 この結果からわかるように、MYは単独で退色抑制効果があるが、これをγ−CDの包接物とすることにより、その退色抑制効果を向上させることができることが確認された。 実験例6 香味劣化抑制効果の評価 MYまたはMY組成物を配合した各種飲料について光または熱を用いた虐待試験を行い、MYまたはMY組成物の香味劣化抑制効果を評価した。 (1)飲料の調製 具体的には、下記1〜8の処方に従って8種類の飲料を調製し、これにMYの3%製剤(商品名サンメリン※Y−AF*)、実施例2で調製したMY/γ−CD包接物製剤(MY:γ−CD=1:1.2)(MY3%含有)、実施例3で調製したMY/γ−CD包接物製剤(MY:γ−CD=1:1.2)(MY6%含有)、γ−CD(WACKER CHEMICAL社製)を、またはポジティブコントロールとして酵素処理イソクエルシトリン(EMIQ)15%製剤(商品名サンメリン※AO−3000*)をそれぞれ表10に示す最終濃度になるように添加した。 処方1 グレープ飲料(pH3.1) 処方2 レモン飲料(pH3.2) 処方3 グレープフルーツ飲料(果汁100%)(pH3.4) 処方4 グレープフルーツ飲料(果汁20%)(pH3.2) 処方5 オレンジ飲料(果汁20%)(pH3.5) 処方6 コーヒー飲料(pH6.3) 処方7 ミルクティー(pH6.8) 処方8 酸乳飲料(pH3.3) (2)香味劣化抑制評価試験 上記で調製した各種の飲料を表10に記載する苛酷条件での試験に供し、試験前後の飲料の香味変化を、パネラー6名により官能評価した。なお、評価基準は下記の基準に従い、試験前の各飲料を5点、各飲料に何も添加せずに処理した飲料(ブランク)を1点として評価した。 <評価基準>5:試験前と変化なし4:試験前と僅かに変化している3:試験前と少し変化している2:試験前とかなり変化している1:試験前と著しく変化している(ブランクと同程度) 6名のパネラーの評点の平均値を表10に示す。 この結果からわかるように、いずれの飲料に対しても、MYそのものを使用するよりも、MYをγ−CDの包接物を用いることにより、飲料の香味劣化がより一層抑制されることが確認された。すなわち、本発明のMY組成物は、MYそのものよりも香味劣化抑制作用に優れていることが判明した。また本発明のMY組成物は、異味異臭もなかった。 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で含有する水易溶性ミリシトリン組成物。 ミリシトリンがγ−シクロデキストリンの包接体となっていることを特徴とする請求項1に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 退色抑制剤である、請求項1または2に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 請求項3に記載する水易溶性ミリシトリン組成物を、色素とともに含有する色素製剤。 香味劣化抑制剤である、請求項1または2に記載する水易溶性ミリシトリン組成物。 請求項5に記載する水易溶性ミリシトリン組成物を、香味成分とともに含有する付香製品。 請求項1または2に記載する水易溶性ミリシトリン組成物を、水または含水エタノールに溶解状態で含有する液状または半液状の可食性組成物。 飲料である請求項7に記載する可食性組成物。 請求項7に記載する液状または半液状の可食性組成物を固形化処理して得られる可食性組成物。 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molとなる割合で、ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接させることを特徴とする、請求項1または2に記載する水易溶性ミリシトリン組成物の製造方法。 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molの割合で含む混合物を下記AまたはBの工程に供することを特徴とする、請求項10に記載する製造方法:A.(1)加熱水溶液に溶解する工程、および(2)得られた水溶液を乾燥する工程B.(1)加熱水溶液に溶解する工程、水溶液を清澄化処理する工程、及び(2)得られた水溶液を乾燥する工程。 ミリシトリン1molに対してγ−シクロデキストリンを1〜7molとなる割合で、ミリシトリンをγ−シクロデキストリンに包接することを特徴とする、ミリシトリンの水溶性を向上し、pH3〜9の水溶液中での析出を抑制する方法。


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