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タイトル:特許公報(B2)_ヘキサフルオロプロピレンオキシドとヘキサフルオロプロピレンの分離方法
出願番号:2011504784
年次:2013
IPC分類:C07D 301/32,C07D 303/08,C07C 19/08,C07C 21/18


特許情報キャッシュ

中谷 英樹 市原 一義 仙波 靖英 中越 幹雄 森本 和賀 JP 5267657 特許公報(B2) 20130517 2011504784 20100218 ヘキサフルオロプロピレンオキシドとヘキサフルオロプロピレンの分離方法 ダイキン工業株式会社 000002853 鮫島 睦 100100158 田村 恭生 100068526 吉田 環 100132252 中谷 英樹 市原 一義 仙波 靖英 中越 幹雄 森本 和賀 JP 2009065633 20090318 20130821 C07D 301/32 20060101AFI20130801BHJP C07D 303/08 20060101ALI20130801BHJP C07C 19/08 20060101ALN20130801BHJP C07C 21/18 20060101ALN20130801BHJP JPC07D301/32C07D303/08C07C19/08C07C21/18 C07D 301/32 C07D 303/08 C07C 19/08 C07C 21/18 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平09−020765(JP,A) 特開平09−136882(JP,A) 国際公開第2008/050760(WO,A1) 5 JP2010052404 20100218 WO2010106865 20100923 11 20110915 早川 裕之 本発明は、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(以下、HFPOとも言う)をヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPとも言う)から分離する方法、より詳細には、ヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびヘキサフルオロプロピレンの混合物からヘキサフルオロプロピレンオキシドを得る方法に関する。 ヘキサフルオロプロピレンオキシドは、例えばパーフルオロビニルエーテルの原料として用いられるなど、含フッ素化合物の製造において重要な化合物である。また、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマーは潤滑油や熱媒などとして利用されている。 一般的に、ヘキサフルオロプロピレンオキシドは、ヘキサフルオロプロピレンを原料とし、これを種々の方法で酸化することにより製造されている(例えば特許文献1を参照のこと)。 かかる製造方法において得られる反応混合物は、目的生成物であるHFPOと未反応のHFPを含んで成る。反応混合物を精製して、高純度のHFPOを得ることが望ましく、また、未反応のHFPを回収してHFPO生成の原料として再利用することが望ましい。 精製には通常、蒸留が利用され得る。しかしながら、HFPおよびHFPOの沸点はそれぞれ−29.4℃および−27.4℃(いずれも大気圧下)であり、沸点が近いために蒸留によりこれらを分離するのは困難である。低温・低圧下にて蒸留する方法が提案されているが(特許文献2を参照のこと)、このような方法によっても、相対揮発度を十分に大きくすることはできないという難点がある。 よって、HFPおよびHFPOの混合物からHFPOを分離するために、抽出蒸留が利用されている(特許文献1および3を参照のこと)。 この抽出蒸留における溶剤として、以下の一般式(Y)で表わされる含塩素化合物を使用し得ることが知られている。 Cn’Ha’Clb’Fc’ ・・・(Y)(式中、n’、a’、b’およびc’は、n’=2〜6、1≦a’≦n+1、1≦b’≦2n、1≦c’≦2n、およびa’+b’+c’=2n+2を満たす整数である。) 具体的には、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123)、1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225cb)が挙げられる。 また、上記抽出蒸留における溶剤として、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、CH2ClCH2Clなどの含塩素化合物も使用し得ることが知られている。国際公開第2008/050760号パンフレット特開平9−136882号公報特許第3785652号公報 しかしながら、上述したような含塩素化合物は、環境に対する影響が懸念される。特に上記一般式(Y)で表わされる含塩素化合物はオゾン層の破壊を招き得、例えば1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)は約0.1のオゾン破壊係数を有する。 本発明は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをヘキサフルオロプロピレンから分離する方法であって、環境に対する負荷を低減することができる新規な方法を提供することを目的とするものである。 ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)をヘキサフルオロプロピレン(HFP)から抽出蒸留により分離するには、HFPに対するHFPOの相対揮発度が大きい溶剤を用いることが好ましい。しかしながら、ある物質について、HFPに対するHFPOの相対揮発度の値を予想することは不可能であり、HFPOをHFPから抽出蒸留により分離するための溶剤として使用できるかどうかを判断することはきわめて困難である。本発明者らは、種々の物質について鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。 本発明の1つの要旨によれば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをヘキサフルオロプロピレンから分離する方法であって、ヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびヘキサフルオロプロピレンを含んで成る混合物を、以下の一般式(X) CnHaFb ・・・(X)(式中、n、aおよびbは、n=3〜8、0≦a≦2n+1、および1≦b≦2n+2を満たす整数である)で表わされる少なくとも1種の含フッ素飽和化合物(以下、単に含フッ素化合物とも言う)を溶剤として用いて、抽出蒸留操作に付すことにより、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを含んで成る第1フラクションと、ヘキサフルオロプロピレンおよび溶剤を含んで成る第2フラクションとに分離することを含んで成る方法が提供される。 塩素を含まない含フッ素化合物は、含塩素化合物に比べて極性が小さいために、抽出蒸留の溶剤として今まで検討されてこなかった。しかしながら、上記含フッ素化合物はHFPに対するHFPOの相対揮発度が高いことが、本発明者らの実験を通じて確認された。本発明によれば、このような含フッ素化合物を溶剤として用いて、HFPOおよびHFPを含んで成る混合物からHFPOを抽出蒸留操作により第1フラクションの形態で分離しているので、少なくとも元の混合物より高純度のHFPOを得ることができ、かつ、含塩素化合物を用いる従来の方法に比べて、環境に対する負荷を低減することができる。特にこのような含フッ素化合物は、上記一般式(Y)で表わされる含塩素化合物に比べて、概して、オゾン破壊係数が小さいという利点を有する。 上記含フッ素化合物は、−5℃以上100℃以下の沸点(0.1MPaまたは大気圧下、以下、特に断りのない限り同様とする)を有し得る。−5℃以上の沸点を有する含フッ素化合物は、HFPOおよびHFPの双方より十分高い沸点を有し、これらを抽出蒸留操作により効率的に分離し得る。また、100℃以下の沸点を有する含フッ素化合物は、過剰な高温を要することなく液相から気相(蒸気)に状態変化させ得るので、HFPおよびHFPOの分解を防止し、かつ、必要な熱量をできるだけ小さくできる。 上記含フッ素化合物は飽和化合物である。このような含フッ素飽和化合物は、非環式化合物(上記一般式(X)中、n、aおよびbは、a+b=2n+2を満たす)であっても、環式化合物(上記一般式(X)中、n、aおよびbは、a+b=2n+2−mを満たし、mは環構造の数を示す)であってもよい。 上記含フッ素化合物は、水素を有して成る、いわゆるハイドロフルオロカーボン(HFC)(上記一般式(X)中、aは、1≦a≦2n+1を満たす整数である)であることが好ましい。ハイドロフルオロカーボンは、パーフルオロカーボンに比べて一般的に極性が高く、極性物質も溶解させ得るという特徴を有する。 そのようなハイドロフルオロカーボンは、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(CHF2CH2CF3:HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(CH3CF2CH2CF3:HFC−365mfc)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(CF3CHFCHFCF2CF3:HFC−43−10mee)、および1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(c−CH2CHFCF2CF2CF2:HFC−C−447ef)からなる群より選択され得る。これらは、いずれもオゾン破壊係数がゼロであるという利点を有する。 しかしながら、上記含フッ素化合物は、水素を有しない、いわゆるパーフルオロカーボン(PFC)(上記一般式(X)中、a=0である)であってもよい。パーフルオロカーボンは、ハイドロフルオロカーボンに比べて極性が低く、安定性が極めて高いという特徴を有する。 あるいは、溶剤として、前記一般式(X)で表わされる含フッ素化合物(含フッ素飽和化合物)の少なくとも1種に代えて、1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンの少なくとも一方を用いることも可能である。即ち、本発明のもう1つの要旨によれば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをヘキサフルオロプロピレンから分離する方法であって、ヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびヘキサフルオロプロピレンを含んで成る混合物を、1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンの少なくとも一方を溶剤として用いて、抽出蒸留操作に付すことにより、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを含んで成る第1フラクションと、ヘキサフルオロプロピレンおよび溶剤を含んで成る第2フラクションとに分離することを含んで成る方法が提供される。 1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンも塩素を含まず、よって、含塩素化合物に比べて極性が小さいために、抽出蒸留の溶剤として今まで検討されてこなかった。しかしながら、1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンもHFPに対するHFPOの相対揮発度が高いことが、本発明者らの実験により確認された。本発明によれば、1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンの少なくとも一方を溶剤として用いて、HFPOおよびHFPを含んで成る混合物からHFPOを抽出蒸留操作により第1フラクションの形態で分離しているので、含塩素化合物を用いる従来の方法に比べて、環境に対する負荷を低減することができる。特に1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンは、安価であり、取扱いが比較的容易であるという利点を有し、工業的にも洗浄剤として利用が進んでいる。 またあるいは、溶剤として、前記一般式(X)で表わされる含フッ素化合物(含フッ素飽和化合物)の少なくとも1種に代えて、含フッ素エーテル化合物、例えばハイドロフルオローテルおよびパーフルオロエーテルなども使用可能である。しかしながら、上記含フッ素化合物や1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンに比べて、HFPに対するHFPOの相対揮発度が低く、好ましさの程度は劣る。 本発明のいずれの要旨による方法も、抽出蒸留操作によって得られた第2フラクションを蒸留操作に付して、ヘキサフルオロプロピレンを含んで成る第3フラクションと、溶剤を含んで成る第4フラクションとに分離することを更に含み得る。これにより、HFPOおよびHFPを含んで成る混合物からHFPOを第1フラクションの形態で分離し、更に、HFPを第3フラクションの形態で分離することができる。分離回収されたHFPは、HFPからHFPOを生成するための原料として利用可能である。また、分離回収された溶剤は、先の抽出蒸留操作の溶剤として利用可能である。 尚、本発明に用いる「ヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびヘキサフルオロプロピレンを含んで成る混合物」は、HFPOおよびHFPから実質的に成るが、他の成分を少量含んでいてもよいことを意味する。そのような他の成分の混合物中の割合は、例えば約10モル%以下、好ましくは約5モル%以下であり、より好ましくは約3〜0モル%である。 また、本発明において、「・・・を含んで成る・・フラクション」とは、言及した含有成分から実質的に成るが、他の成分を少量含んでいてもよいことを意味する。そのような他の成分は、本発明に用いる上記混合物にもよるが、例えば約20モル%以下、好ましくは約10モル%以下であり、より好ましくは約5〜0モル%である。 本発明によれば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをヘキサフルオロプロピレンから分離する方法であって、環境に対する負荷を低減することができる新規な方法が提供される。本発明の1つの実施形態におけるヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)をヘキサフルオロプロピレン(HFP)から分離する方法を説明する概略模式図である。 本発明の1つの実施形態におけるヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)をヘキサフルオロプロピレン(HFP)から分離する方法について以下に詳述する。 まず、HFPOおよびHFPを含んで成る混合物と、溶剤とを用意する。 本実施形態において用いる混合物は、HFPOおよびHFPを含んで成る。HFPOとHFPの混合比は、特に限定されない。以下、理解を容易にするために、混合物がHFPOおよびHFPの二成分から成るものとして説明する。しかし、本実施形態はこれに限定されず、混合物は他の成分を少量含んでいてよい。 このような混合物は、特に限定されないが、例えばHFPを原料とし、HFPの酸化によりHFPOを生成させて得られた反応混合物を、必要に応じて後処理に付して得られたものであってよい。この場合、HFPOとHFPの混合モル比は、代表的には1:約0.1〜9である。 溶剤は、HFPに対するHFPOの相対揮発度が大きいほうが好ましい。 そのような溶剤には、以下の一般式(X) CnHaFb ・・・(X)(式中、n、aおよびbは、n=3〜8、0≦a≦2n+1、および1≦b≦2n+2を満たす整数である)で表わされる少なくとも1種の含フッ素化合物を用い得る。 溶剤として使用するためには、含フッ素化合物の沸点は、−5℃以上100℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以上90℃以下である。 上記含フッ素化合物は含フッ素飽和化合物であり、非環式化合物であっても、環式化合物であってもよい。特にハイドロフルオロカーボン(HFC)が好適に使用され、その例としては、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa、沸点15.3℃)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc、沸点40.2℃)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee、沸点55℃)、および1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(HFC−C−447ef、沸点82.5℃)などが挙げられる。 あるいは、溶剤として、1−ブロモプロパン(沸点71℃)および/または2−ブロモプロパン(沸点59.4℃)を使用してもよい。 このような溶剤は、HFPに対するHFPOの相対揮発度が高く、かつ、HFPおよび/またはHFPOと共沸しない。 次に図1を参照して、上記のような混合物(HFPO+HFP)および溶剤を抽出蒸留塔1に供給し、混合物を抽出蒸留操作に付す。一般的には、溶剤の供給部は、混合物の供給部より上方に位置する。抽出蒸留塔1において、これら供給部間が濃縮部であり、これより上方が溶剤回収部、下方が回収部である。 上述した溶剤は、いずれも、HFPOよりもHFPとの親和力が大きく、溶剤添加によりHFPの揮発度が低下する。よって、抽出蒸留塔1の塔頂側から、HFPOを含んで成る第1フラクションが取り出され、塔底側からHFPおよび溶剤を含んで成る第2フラクションが取り出される。これにより、HFPOが第1フラクションの形態で得られる。 図1に示す例では、第1フラクションは、塔頂蒸気フラクションをコンデンサーにて凝縮し、その一部を抽出蒸留塔1に還流させた残余として得られる。第2フラクションは、塔底液体フラクションの一部をリボイラーに送った残余として得られ、リボイラーに送られた部分は、加熱により蒸発させて抽出蒸留塔1に戻される。 抽出蒸留操作の条件は、使用する溶剤や、第1フラクションの目的HFPO純度などに応じて適宜設定され得る。例えば、混合物と溶剤との供給モル比は、1:約1〜30、好ましくは1:約5〜15とされる。また例えば、抽出蒸留塔1内の温度および圧力は、約−5〜150℃および約0.2〜0.5MPaG(ゲージ圧)とされ得る。しかしながら、これらは例示であり、本実施形態はかかる条件に限定されない。 次に、抽出蒸留塔1より得られた第2フラクション(HFP+溶剤)を溶剤回収塔3に供給し、第2フラクションを蒸留操作に付す。 溶剤回収塔3の塔頂側から、HFPを含んで成る第3フラクションが取り出され、塔底側から溶剤を含んで成る第4フラクションが取り出される。これにより、HFPが第3フラクションの形態で得られる。 図1に示す例では、第3フラクションは、塔頂蒸気フラクションをコンデンサーにて凝縮し、その一部を溶剤回収塔3に還流させた残余として得られる。第4フラクションは、塔底液体フラクションの一部をリボイラーに送った残余として得られ、リボイラーに送られた部分は、加熱により蒸発させて溶剤回収塔3に戻される。 蒸留操作の条件は、使用する溶剤や、第3フラクションの目的HFP純度などに応じて適宜設定され得る。例えば、溶剤回収塔3内の温度および圧力は、約−5〜150℃および約0.2〜0.5MPaG(ゲージ圧)とされ得る。しかしながら、これらは例示であり、本実施形態はかかる条件に限定されない。 以上のようにして、HFPOおよびHFPを含んで成る混合物からHFPOが第1フラクションの形態で分離され、更に、HFPが第3フラクションの形態で分離される。本実施形態の方法は連続式で実施することができるが、これに限定されず、バッチ式で実施してもよい。 本実施形態によれば、第1フラクションのHFPO純度は、例えば約90モル%以上、好ましくは約99モル%以上とすることが可能である。また、第3フラクションのHFP純度は、例えば約90モル%以上、好ましくは約99モル%以上とすることが可能である。 得られた第3フラクションは、HFPからHFPOを生成する反応に戻してよく、これにより、HFPを原料として再利用できる(図示せず)。また、第4フラクションは、図1に一点鎖線にて示すように、必要に応じて新たな溶剤と一緒に、抽出蒸留塔1に供給してよく、これにより、溶剤を再利用することができる。第4フラクション中には、HFPOおよびHFPも少量含まれ得るが、このように第4フラクションを抽出蒸留塔1に戻すことによって、第4フラクション中のHFPOおよびHFPを廃棄することなく回収することができる。 以上、本発明の1つの実施形態について上述したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の改変が可能である。 例えば、上記実施形態においては、混合物と溶剤とを別々に抽出蒸留塔に供給するものとしたが、一緒に供給するようにしてもよい。具体的には、HFPからHFPOを生成する反応を反応溶媒中で実施し、この反応溶媒を抽出蒸留操作の溶剤としても使用し得る場合、反応後に得られるHFP、HFPOおよび溶剤(=反応溶媒)を含む混合物を抽出蒸留塔に供給してもよい。反応溶媒としても使用し得る溶剤の例としては、HFC−365mfc、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパンなどが挙げられる。更にこの場合、抽出蒸留操作によって得られた第2フラクションを、次の蒸留操作に付さずに、HFPからHFPOを生成する反応に戻してよく、これにより、HFPおよび溶剤を原料および反応溶媒として再利用できる。 また例えば、溶剤として、含フッ素エーテル化合物、例えばハイドロフルオロエーテル(C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C6F13OCH3、C3HF6−CH(CH3)O−C3HF6)およびパーフルオロエーテルなどを使用することも不可能ではない。しかしながら、上記含フッ素化合物や1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンに比べて、HFPに対するHFPOの相対揮発度は低い。(相対揮発度) 種々の溶剤を用いた場合および溶剤を用いなかった場合について、HFPに対するHFPOの相対揮発度を求めた。1)HFC−365mfc オスマー型気液平衡測定装置にHFPOを28g、HFPを25g、溶剤としてHFC−365mfc(CH3CF2CH2CF3)を495gでそれぞれ仕込み、圧力が0.5MPaG(ゲージ圧)になるように液相温度を調節すると、液相温度は71.8℃となった。この条件で3時間以上経過させた後、気相部の凝縮液と液相部の液とをサンプリングし、これらをガスクロマトグラフィーにてそれぞれ測定した。得られたデータから、HFPとHFPOのモル比を測定し、HFPに対するHFPOの相対揮発度を求めたところ、2.67となった。これら条件および結果を表1に示す。2)1−ブロモプロパン 溶剤として、HFC−365mfcに代えて、1−ブロモプロパンを用いて条件を若干変更したこと以外は、上記1)の場合と同様にしてHFPに対するHFPOの相対揮発度を求めた。条件および結果を表1に示す。3)溶剤なし 溶剤を用いず、条件を若干変更したこと以外は、上記1)の場合と同様にしてHFPに対するHFPOの相対揮発度を求めた。条件および結果を表1に示す。4)ハイドロフルオロエーテル 商品名「HFE7200」 溶剤として、HFC−365mfcに代えて、ハイドロフルオロエーテル 商品名「HFE7200」(3M社製、C4F9OC2H5)を用いて条件を若干変更したこと以外は、上記1)の場合と同様にしてHFPに対するHFPOの相対揮発度を求めた。条件および結果を表1に示す。5)ジクロロメタン 溶剤として、HFC−365mfcに代えて、ジクロロメタンを用いて条件を若干変更したこと以外は、上記1)の場合と同様にしてHFPに対するHFPOの相対揮発度を求めた。条件および結果を表1に示す。 表1を参照して、HFC−365mfcおよび1−ブロモプロパンを溶剤とした場合において、溶剤なしの場合に比べて非常に高い相対揮発度が得られた。よって、HFC−365mfcおよび1−ブロモプロパンは本発明において溶剤として好適に利用し得ることが理解される。他方、溶剤なしの場合に比べ、HFE7200およびジクロロメタンを溶剤とした場合には、それほど高い相対揮発度は得られなかった。(実施例) 図1を参照して上述した実施形態1に従って本発明を実施した場合をシミュレーションした。 溶剤回収部約7段、濃縮部約15段、回収部10段の抽出蒸留塔に、HFPOとHFPの混合物(モル比1:1)を濃縮部の下部から毎時106gで連続的に供給し、また、溶剤回収部の下部から溶剤としてHFC−365mfcを毎時595gで連続的に供給し、塔頂側にて還流比16に制御しつつ第1フラクションを毎時56gで連続的に抜き出し、塔底側にて第2フラクションを毎時645gで連続的に抜き出して、抽出蒸留を行うものとした。この間の抽出蒸留塔内(系内)の圧力は0.2MPaG(ゲージ圧)とし、塔頂温度は0℃、塔底温度は59℃となった。 抽出蒸留塔より得られる第1フラクション中のHFPOモル分率は0.995となった。また、第1フラクション中に溶剤は3モルppm含まれるものとなった。 他方、抽出蒸留塔より得られる第2フラクション中のHFPモル分率は0.077となり、残部は実質的にHFC−365mfcが占めるものとなった。 以上より得られる第2フラクションを、約14段の段数を有する溶剤回収塔へ、下から5段目の位置にて毎時645gで連続的に供給し、塔頂側にて還流比10に制御しつつ第3フラクションを毎時50gで連続的に抜き出し、塔底側にて第4フラクションを毎時595gで連続的に抜き出して、回収蒸留を行うものとした。この間の溶剤回収塔内(系内)の圧力は0.2MPaG(ゲージ圧)とし、塔頂温度は−3℃、塔底温度は75℃となった。 溶剤回収塔より得られる第3フラクション中のHFPモル分率は0.995以上となった。 他方、溶剤回収塔より得られる第4フラクション中のHFC−365mfcモル分率は0.999以上となった。 得られる第4フラクションは、抽出蒸留塔へ再循環させるものとした。 本発明の方法により分離されるヘキサフルオロプロピレンオキシドは、含フッ素化合物、例えばパーフルオロビニルエーテルの製造に利用され得、また、オリゴマーの形態で潤滑油や熱媒などとして利用され得る。 1 抽出蒸留塔 3 溶剤回収塔 ヘキサフルオロプロピレンオキシドをヘキサフルオロプロピレンから分離する方法であって、ヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびヘキサフルオロプロピレンを含んで成る混合物を、以下の一般式(X) CnHaFb ・・・(X)(式中、n、aおよびbは、n=3〜8、0≦a≦2n+1、および1≦b≦2n+2を満たす整数である)で表わされる少なくとも1種の含フッ素飽和化合物を溶剤として用いて、抽出蒸留操作に付すことにより、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを含んで成る第1フラクションと、ヘキサフルオロプロピレンおよび溶剤を含んで成る第2フラクションとに分離することを含んで成る方法。 含フッ素飽和化合物が水素を有して成る、請求項1に記載の方法。 含フッ素飽和化合物が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、および1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。 溶剤として、前記一般式(X)で表わされる含フッ素飽和化合物の少なくとも1種に代えて、1−ブロモプロパンおよび2−ブロモプロパンの少なくとも一方を用いる、請求項1に記載の方法。 抽出蒸留操作によって得られた第2フラクションを蒸留操作に付して、ヘキサフルオロプロピレンを含んで成る第3フラクションと、溶剤を含んで成る第4フラクションとに分離することを更に含んで成る、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。


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