タイトル: | 公開特許公報(A)_酵母及びカビの検出具 |
出願番号: | 2011286225 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12M 1/34 |
高橋 尚美 田中 孝 上門 英明 小川 廣幸 JP 2013132270 公開特許公報(A) 20130708 2011286225 20111227 酵母及びカビの検出具 株式会社明治 000006138 マイクロバイオ株式会社 501354912 志村 尚司 100104307 高橋 尚美 田中 孝 上門 英明 小川 廣幸 C12M 1/34 20060101AFI20130611BHJP JPC12M1/34 B 6 1 OL 16 4B029 4B029AA08 4B029BB06 4B029CC01 4B029DG01 4B029FA01 4B029GA02 4B029GB04 4B029GB06 本発明は、酵母及びカビの検出具、特に食品中の酵母及びカビを検出するための検査具に関する。 食品中の酵母やカビを検出する方法として、例えば、ポテトデキストロース寒天(PDA)、麦芽エキス寒天(MA)などの分離培地を用いた平板培養法(例えば「食品衛生検査指針」参照)が知られている。この方法は、検査対象物(測定試料)を直接、又は希釈や分配後に、前記寒天培地を使用して5日〜7日間程度で培養し、コロニーの形成を確認する方法である。 しかしながら、平板培養法において、検査対象物が固形物や油脂類である場合には、少量(0.1g程度)の試料しか用いることができなかったので、検出感度の観点で問題となっていた。 特許文献1〜3は、それぞれ酵母やカビが有する遺伝子の特定領域を利用した、検出方法を開示する。しかしながら、これらの方法では、遺伝子を増幅するための特別な装置や煩雑な操作が必要であり、簡便な方法であるとは言えなかった。そして、遺伝子を試料より直接抽出する場合には、試料中の酵母やカビを死滅させてしまうため、それらを分離培養した後には検出が困難であった。また、一定数以下の菌数しか含まない検査対象物では、数日間の増菌が必要となり、この場合には、増菌と検出との2工程が必要となる。 さらに、特許文献4や特許文献5に記載された検査具を用いる方法がある。この検査具は、液体培地と二酸化炭素の呈色指示薬とが、液体培地を遮断する二酸化炭素透過膜で隔てられて容器内に収められた構成を有し、目的とする細菌などに適切な液体培地が容器内に収められている。この検査具は「センシメディア」の名称(登録商標)で上市されており、ワインや乳酸菌飲料中の酵母検出用に、クロラムフェニコールを含むポテトデキストロース培地(じゃがいも侵出物及びブドウ糖を主成分とする培地)が容器内に収められたセンシメディアが提供されている(非特許文献1)。 この検査具では、液体培地中で酵母が増殖することによって発生した二酸化炭素が、二酸化炭素透過膜を透過して呈色指示薬と反応することで呈色指示薬が呈色する。この呈色の濃度を検出し、検査対象物を用いて求められる所定濃度の呈色に至るまでの時間と、菌数が既知である標準試料を用いて求められた所定濃度の呈色に至るまでの時間との対比から、試料中の菌数が推定される。また、液体培地がクロラムフェニコールを含むので、二酸化炭素を生成するヘテロ型の乳酸菌やその他の細菌の増殖が抑えられ、二酸化炭素を生成しないホモ型の乳酸菌を含む多量の乳酸菌を含む試料中の酵母が確実に検出される。特開2006−061152号公報国際公開第2005/093059号国際公開第2007/132589号特開平11−178597号公報特開2001−178496号公報マイクロバイオ株式会社、"SensiMedia"、[online]、[平成23年9月20日検索]、インターネット〈URL:http://www.microbio.co.jp/products/sensimedia.html〉 しかしながら、非特許文献1に記載された酵母検出用の検査具は、例えば、油脂含量が35質量%以上であるバター(乳脂肪含量:80質量%以上)、マーガリン(脂肪含量:80質量%以上)、ファットスプレッド(脂肪含量:35質量%以上80質量%未満)など、油脂を多く含む食品中に存在する一部の種類のカビ、例えば、Aspergillus nigerやCladosporium sp.、Penicillium sp.などの検出に時間を要する場合があった。つまり、検体中の菌数が少ないと、酵母の標準的な培養期間である5日間程度の培養期間における呈色の色調変化が不明瞭であるので確実な判定が行えない場合があった(表1参照)。 また、当該検査具は、例えば、Pseudomonas aeruginosaやPseudomonas fluorescensなどの一部の種類の細菌を検出してはならない。しかしながら、酵母やカビと同様に。これらの細菌の存在により呈色の変化が生じる場合(偽陽性)があった(表1参照)。 その一方、油脂を多く含む食品に特化した専用の検査具を準備することは、検査コストの増加を招くので、特定の食品に限らず多種類の食品に適用できる検査具が望まれる。 本発明は上記背景技術に基づいてなされたものであって、バターやマーガリン、ファットスプレッド(以下、マーガリン及びファットスプレッドの両者を「マーガリン類」と称する場合がある。)などの多量の油脂を含む食品において、5日程度の検査期間で食品中にわずかに存在する酵母やカビを検出できる検査具を提供することを目的とする。さらに、好ましくは、Pseudomonas属の細菌による偽陽性の発生を抑えた検査具を提供することを目的とする。 本発明の検査具は、密閉可能な容器内に、増菌用の培地を遮断する二酸化炭素透過膜で隔てられた培地収容部と指示薬収容部を備えた酵母及びカビ用の検出具であって、前記容器は外側から前記指示薬収容部の内部を見通せる透明部を備え、前記培地収容部は酵母又はカビを培養できる培地を収容し、前記指示薬収容部は二酸化酸素の呈色指示薬を収容し、前記酵母又はカビを培養できる培地が、培地1000ml中に、10.0g±1.0gのペプトン、50.0g±5.0gのブドウ糖、9.0g±0.9gの酵母エキス、2.1g±0.2gの硫酸マグネシウム、2.0g±0.2gのリン酸二水素カリウム、0.05g±0.01gのジアスターゼ、0.05g±0.01gのチアミンを含み、その他の増菌用成分を含まず、培地のpHが4.6±0.2である検査具である。 本発明の検査具によると、油脂含量の多少に関係なく、食品中や医薬品中の酵母やカビの検出が5日間程度で行える。図1は本発明の一実施形態である検査具の側面図である。 本発明の検査具は、密閉可能な容器内に、増菌用の培地を遮断する二酸化炭素透過膜で隔てて培地収容部と指示薬収容部とを備え、前記容器は外側から前記指示薬収容部の内部を見通せる透明部を備える。培地収容部は酵母又はカビを培養できる培地を収容し、指示薬収容部は二酸化炭素の呈色指示薬を収容する。 透明部は指示薬収容部の呈色が観察されればよく、容器全体が透明であっても容器の一部が透明であってもよい。また、透明部は無色であることが好ましい。呈色の変化を確実に観察するためである。容器は、例えば、図1に示すように、全体が透明となったプラスチック製の容器本体1に、キャップ7が螺合により脱着可能に取り付けられ、培地5及び呈色指示薬6が収納された後には、試料を入れるまで密閉状態で保管される。 培地収容部2と指示薬収容部3は、増菌用の培地5の透過を遮断する二酸化炭素透過膜4で隔てられ、培地収容部2で発生した二酸化炭素が当該透過膜4を透過して指示薬収容部3に収容された呈色指示薬6と反応する。例えば、図1に示すように、指示薬収容部3を二酸化炭素透過膜4から構成した密閉した袋とし、指示薬収容部3で占められた空間以外の容器内空間を培地収容部2とすることや、図示はしないが、容器内部を二酸化酸素透過膜で上下に分割し、一方の空間を培地収容部とし、他方の空間を指示薬収容部とすることができる。また、図1に示すように、袋状からなる指示薬収容部3を構成した場合には、培地収容部2に収容された培地5の上面の高さよりも高い位置に、指示薬収容部3に収容した呈色指示薬6の上面の高さが位置するように培地5を収容するのが好ましい。培地5の着色に影響を受けずに呈色指示薬6の呈色を観察できるからである。また、容器内部を透過膜で上下に分割した場合には、二酸化炭素透過膜よりも下方を指示薬収容部とするのが好ましい。容器を開封して培地に試料を加えるためである。なお、図1に示す容器本体1の底の近くには、指示薬収容部3の下端部を支持する支持部材8が備えられている。この支持部材8はキャップ7の内面に設けられた支持部材(図示せず)と対をなして、呈色指示薬6の上面高さが培地5の上面高さよりも高い位置に位置するように指示薬収容部3を保持する。このような検査具の構成(培地を除いた構成)として、例えば特許文献4や特許文献5に記載された種々の検査具の構成が例示される。 二酸化炭素透過膜4は、二酸化炭素は透過するが、イオン交換を生じずに、培地5と呈色指示薬6を確実に分離できる膜であればよく、二酸化炭素透過膜4の材質は特に問われない。例えば、未延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどからなるフィルムであり得る。その他、シリコンゴムやポリアルキルスルホンからなる均質膜、ポリテトラフルオロエチレンやポリスルホンからなる多孔質膜、ポリプロピレンとシリコンとの複合膜、ポリプロピレンとポリアルキルスルホンとの複合膜が用いられ得る。 呈色指示薬6は二酸化炭素と反応して呈色する指示薬であれば、特に制約されないが、培地5が呈色を示す場合には、呈色指示薬6の呈色と区別できるものが好ましい。呈色指示薬6として、二酸化炭素の反応剤とpH指示薬との混合液、例えば、水酸化ナトリウムとチモールフタレインの水溶液、水酸化ナトリウムとフェノールフタレインの水溶液、水酸化カルシウム水溶液、ヘモグロビンや赤血球、血液などのヘムを含む物質の水溶液の他、メチルバイオレットやメチルオレンジ、コンゴーレッド、メチルレッド、ブロムチモールブルー、フェノールレッド、クレゾールレッド、チモールブルーなど各種呈色指示薬6の水溶液が挙げられる。なお、呈色は着色又は脱色のいずれであってもよい。 本発明において、「酵母及びカビ」とは真菌と称される菌類からキノコを除く菌類を意味し、当業者が通常に用いる意味で用いられる。酵母は一般的に、サッカロミセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を意味するが、本発明では、当該菌に限定されることを意味しない。酵母として、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、トルロプシス属(Torulopsis)、ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)に属する菌が例示される。また、カビは、子実体を形成せず、菌糸からなる菌体を有する菌類を意味し、当業者が通常に用いる意味で用いられる。カビとして、ペニシリウム属(Penicillium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、クラドスポリウム属(Cladosporium)に属する菌類が例示される。 試料に酵母やカビが存在すると、増菌により二酸化炭素が生成される。本発明の検査具は、この二酸化炭素と指示薬収容部3の呈色指示薬6との反応により生じた呈色を利用する。同じ培養条件下では、検査対象物中の菌数は、所定濃度の呈色を生じるに要する時間と相関関係がある。検査対象物から調製された試料を培地中に加えた場合には、試料中の菌数が多ければ、所定濃度の呈色を生じるに要する時間は短くなり、試料中の菌数が少ないほど、その時間は長くなる。従って、予め菌数が既知である数種類の試料(標準試料)を用いて、所定濃度の呈色を生じるに要した時間と菌数の関係(感度特性)を求めておき、次いで、試料を用いて測定した所定濃度の呈色を生じるに要した時間と感度特性から、試料中(検査対象物中)の菌数を求めることができる。また、一つの標準試料を用いて、一定時間に生じる呈色濃度(濃度変化)を測定しておき、その時間を経過した際に、試料を用いて測定した呈色濃度から、おおよその菌数を求めることもできる。従って、例えば、希釈して理論上1×100の菌数を含む標準試料を用いて、測定開始から3日あるいは5日、7日など一定時間経過後に呈色の濃度変化を予め測定しておき、試料を用いて測定した濃度変化が予め測定した前記濃度変化よりも小さい場合には、理論上1×100以下、すなわち当該菌は存在しないという判定が行える。また、呈色の変化が見られない場合にも、当該菌は存在しないという判定も行える。 酵母やカビの増菌用の培地として、次の培地が用いられる。例えば、培地1000ml中に、10.0g±1.0gのペプトン、50.0g±5.0gのブドウ糖、9.0g±0.9gの酵母エキス、2.1g±0.2gの硫酸マグネシウム、2.0g±0.2gのリン酸二水素カリウム、0.05g±0.01gのジアスターゼ、0.05g±0.01gのチアミンを含み、溶液のpHが4.6±0.2に調整された培地である。この培地は、その他の増菌用成分を含まないが、培地のpH変化を観察するためのpH指示薬として、適量のブロモクレゾールグリーンを含む場合がある。pH指示薬を含む培地は、M−グリーンイーストアンドモールドブロス(培地)として公知である(例えば、上記「食品衛生検査指針」参照)。M−グリーンイーストアンドモールドブロスは、上記組成の培地1000ml中に約0.026gのブロモクレゾールグリーンを含む。二酸化炭素と呈色指示薬6との反応による呈色が生じるので、pH指示薬を含まない培地が好ましく用いられるが、呈色が判定される限り、培地中のpH指示薬の有無は問われない。従って、M−グリーンイーストアンドモールドブロスの名称が付された市販の培地(但し、寒天を含まない)が使用され得る。なお、前記培地と同じ組成を有する培地は、寒天を含むM−グリーンイーストアンド寒天培地としても市販されているが、本発明では、寒天を含まない培地が使用される。 前記培地は好ましくは細菌増殖防止剤を含む。細菌増殖防止剤は、細菌の増殖を防止する成分である。M−グリーンイーストアンドモールドブロスは、細菌の増殖に必要な成分を含むので細菌が増殖する恐れがある。このために、酵母やカビを含まない試料が細菌を含むと、呈色指示薬が反応する結果、試料が酵母やカビを含むとして判断される可能性がある。細菌増殖防止剤は、このような可能性を排除するために用いられる。細菌増殖防止剤は、好ましくは酵母やカビの増殖に影響を及ぼさず、細菌の増殖を防ぐ成分である。この成分は抗生物質であり、当該抗生物質はβ−ラクタム系抗生物質であり、アミノグリコシド系抗生物質であり、テトラサイクリン系抗生物質であり、クロラムフェニコール系抗生物質であり、マクロライド系抗生物質であり、ケトライド系抗生物質であり、ポリエンマクロライド系抗生物質であり得る。通例、これらの抗生物質の1種又は2種以上が用いられる。 バター、マーガリン類が検査対象物である場合、バター、マーガリン類はBacillus属の細菌を含む場合があるので、検査具は、これらの細菌を酵母やカビとして検出しないこと(Bacillus属細菌の増殖が抑制されること)が望まれる。また、バター、マーガリン類は一般的に、Pseudomonas属の細菌を含まないことが多いが、これらの細菌による偽陽性が排除されることが望まれる。さらに、例えば、食品衛生検査指針による酵母・カビの検出方法では、細菌の増殖を抑えるために、クロラムフェニコール系の抗生物質が使用されている実情もある。このような観点から、抗生物質としてはクロラムフェニコールが好ましい。なお、本発明に係る検査具では、細胞増殖防止剤を含まない培地が用いられる場合もある。例えば、バター、マーガリン類には一般的に、Pseudomonas属の細菌を含んではならないので、この細菌の増殖が抑制されずに、酵母やカビが検出されたと判定されても差し支えない。Pseudomonas属の細菌の存在により、酵母やカビが存在すると判定された場合(偽陽性の場合)にも、検体(製品)が再検査の対象として取り扱われ、不良製品の出荷が停止されるからである。 細菌増殖防止剤の添加量は、抗生物質の種類や増殖を抑えたい細菌の種類に応じて、当業者により適宜定められる。例えば、抗生物質がクロラムフェニコールの場合、液体培地への添加量は、0.0001mg/ml〜10mg/ml、好ましくは0.001mg/ml〜1.0mg/ml、より好ましくは0.01mg/ml〜0.5mg/mlである。 本発明の培地は、界面活性剤を含んでもよい。検査対象物が油脂を含む場合には、検査対象物が培地に十分に混和せず、検査対象物中の菌体を十分に検出できないことが考えられる。特に、バター、マーガリン類など、油脂含有量が多い食品の場合(例えば、油脂含量が35質量%以上の食品)には、検出できない恐れがある。界面活性剤の添加は、検査対象物の培地への分散を助けて、菌体の検出を確実にならしめるためである。また、界面活性剤の添加は、培地に添加できる試料の増量を助けて、菌体の検出感度を向上させる役割を果たす。 界面活性剤は、例えば、陰イオン系界面活性剤(脂肪酸塩、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウムなど)、陽イオン系界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩など)、両性イオン界面活性剤(アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなど)、非イオン系界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドなど)であり得る。1種若しくは2種以上の界面活性剤が用いられる。界面活性剤は、試料中の菌体の増殖に影響を与えない濃度で培地に加えられる。培地中の界面活性剤の濃度は、検査対象物に応じて適宜変更され得るが、概ね0.0001〜5.0w/v%、好ましくは0.01〜3.0w/v%、より好ましくは0.1〜2.0w/v%である。 培地の収容量は、容器本体1の内容量や指示薬収容部の容量などが考慮された上で適宜定められる。培地の収容量の目安は1×108〜1×100cfuの細菌数が検出可能な程度である。具体的には、培地収容部2や容器本体1の容量によっても異なるが、培地の収容量は一般的に、容器当たり1〜20mlであり、好ましくは約16ml容量の容器に対して、4〜6mlである。また、試料が液状である場合には、試料を添加した後の最終濃度がほぼ上記濃度となるように調製した高濃度の組成の培地5が、培地収容部2に収容される。 検査対象物中の酵母やカビは、例えば、検査対象物から培地に添加する試料を調製する工程と、検査具に収容された液体培地に試料を添加する工程と、前記容器を密閉して培養を開始し、培養の開始から定められた時間経過時に前記指示薬収納部の呈色の濃度を測定する工程と、当該濃度と予め定められた呈色の濃度を対比する工程とにより検出される。 対比される基準となる呈色の濃度は種々の方法によって定められる。例えば、培地に添加される試料の代わりに、同量の無菌である培地や水を加えて培養して得られた呈色の濃度を基準にする方法、培養開始直後の呈色指示薬による呈色の濃度を基準にする方法、さらには、菌数が既知である試料を培地に加えて培養して得られた呈色の濃度を基準にする方法が例示される。これらの中では、簡便に判定できる観点から、培養開始直後の提示指示薬による呈色の濃度を基準にする方法が好ましく採用される。呈色の変化を観察するだけでよいからである。 そして、これらの基準となる呈色の濃度と、検体を用いて得られた呈色の濃度を対比し、試料を用いて得られた呈色の濃度が基準となる呈色の濃度よりも同じか低いと判断されると、基準となる呈色の濃度が得られた菌数とほぼ同じか、それよりも少ない菌数の酵母やカビが試料中に存在すると判定できる。また、呈色の変化が観察されないと、酵母やカビが試料中に存在しないと判定できる。 また、上記のように、予め既知の菌数が数種類の試料(標準試料)を用いて、所定濃度の呈色を生じるに要した時間を測定して得られた感度特性から、試料中の菌数を求めることもできる。 培地に添加する試料の調製方法として、培地収容量に応じた適当量の検査対象物を計り取り、そのまま試料とする方法や、計り取った適当量の測定対象物を非選択培地や水などの適当な媒体に溶解ないし懸濁して試料とする方法がある。調製方法は、測定対象物の特性、例えば、固体であるか液体であるか、想定される菌数などに応じて、適宜選択される。 検査対象物は、食品(製品及び原材料などを含む)であり、医薬品であり得る。また、バターやマーガリン類が好適である。本発明の検査具は、バターやマーガリン類のように油脂含量が高い食品から、5日程度の培養期間で、従来の製品では検出できなかった Aspergillus niger や Cladosporium sp.、Penicillium sp. などの酵母やカビを検出できるからである。 培地5に添加される試料の添加量は、検査対象物の種類や推定される菌数、培地の使用量などに応じて適宜調整される。添加量は、例えば1〜20mlの培地を収容した検査具であれば、0.01〜10gの試料又は0.01〜10mlの試料が使用される。 試料が加えられた容器は密閉され、25℃付近にて一定時間、好ましくは5日〜7日間で培養される。このとき、静置した状態で培養されてもよいし、振とうした状態で培養されてもよい。酵母やカビが存在すると、呈色指示薬が呈色し、呈色の濃度が時間とともに変化する。培養を終えた段階で、呈色の濃度が測定され、基準となる呈色の濃度と対比される。このようにして、試料中の酵母やカビの存否を検出できる。 次に、本発明について下記の実施例に基づいて説明する。なお、下記の実施例は、あくまでも例示であって、本発明は下記の実施例に限られるものではない。 (既存品との対比) 市販されている酵母検出用のセンシメディア(製品番号SM008:比較品)と、当該センシメディアの培地に変えて、クロラムフェニコール(SIGMA社製)を0.01w/v%で加えたM−グリーンイーストアンドモールドブロス(DIFCO&BBL社製)を収容した本発明の検査具(実施品1)を用いて、表1に示す菌について検出を試みた。それぞれの検査具は、16ml容量のチューブに4mlの培地を収容している。なお、表1〜4の菌種欄におけるかっこ内の記載は、当該菌の由来を示す。記載のない菌種では由来が不明である。 検査対象物であるファットスプレッド(株式会社明治製、商品名「なめらかソフト」)を40℃で溶解し、表1に示す各種の細菌を接種して試料を調製した。1.0gの試料を加えた検査具を転倒して、試料と培地を十分に混和した後、25℃で5日間培養した。培養開始後、3日目、4日目、5日目に呈色指示薬の色調の変化を確認した。その結果を表1に示す。表中の「+」は色調の変化(黄変)が認められた場合を、「−」は色調の変化(黄変)が認められなかった場合を示す。また、表中の「(+)」は、呈色指示薬の上部では色調の変化が認められず、その下部では色調の変化が認められ、色調の変化が不明瞭だったことを示す。 これによると、比較品の検査具では、5日間の培養期間において、少数のAspergillus nigerやCladosporium sp.、Penicillium sp.が接種された試料から、これらの細菌を正しく検出できなかったのに対し、実施品1の検査具では、1g当たり1cfuの細菌が接種された試料から、これらの細菌を正しく検出できた。また、比較品の検査具では、Pseudomonas fluorescensが検出されたが、実施品1の検査具では、当該細菌が検出されず、偽陽性の発生が抑えられていた。 実施例1の実験から、実施品1の検査具では、油脂含量の高いファッドスプレッドの場合に、5日間の培養期間において、1cfu/gの酵母やカビが検出されることが確認された。 クロラムフェニコールの添加による効果を確認した。前記実施品1の検査具と、実施品1の検査具の培地に変えて、クロラムフェニコールを含まないM−グリーンイーストアンドモールドブロス(DIFCO&BBL社製)を収容した本発明の検査具(実施品2)を用いて、表2に示す細菌について検出を試みた。試験方法は、それぞれの検査具で5mlの培地を収容している以外には、実施例1と同様である。 この結果、クロラムフェニコールを含む培地を用いた実施品1の検査具では、1cfu/gのCladosporium sp.やPenicillium sp.の細菌が5日間の培養期間で検出されていたが、クロラムフェニコールを含まない培地を用いた実施品2の検査具では、これらの細菌は3〜4日間の培養期間が検出された。また、実施品2の検査具では、Pseudomonas fluorescensが検出されたが、実施品1の検査具では、当該細菌が検出されず、偽陽性の発生が抑えられていた。 実施例2の実験から、クロラムフェニコールを添加しない検査具では、高油脂含量の食品であっても、4日間程度の培養期間において、1cfu/gの酵母やカビが検出されることが確認された。従って、Pseudomonas属の細菌によって、酵母やカビが検出されたとして判断してもよい場合(不良品として排除できる場合)や、明らかに細菌による汚染が排除される場合などには、クロラムフェニコールを含まない培地が用いられた検査具の使用により、検査期間が短縮される。 各種のバター及びマーガリン類を検査対象物として、実施品1の検査具により検出を試みた。バターとして、有塩バター(株式会社明治製、商品名「有塩パーチバター 450g」)、無塩バター(株式会社明治製、商品名「無塩パーチバター 450g」)、発酵バター(株式会社明治製、「発酵パーチバター 450g」)、マーガリン類として、前記なめらかソフト、オリーブソフト(株式会社明治製、商品名「明治素材紀行 エクストラバージンオリーブソフト」)、ケーキマーガリン(株式会社明治製、商品名「明治ケーキマーガリン」)を用いた。これらの検査対象物の油脂含量は何れも50%以上である。試験方法は、実施例2(クロラムフェニコールが添加された検査具を用いた。)の方法と同様である。その結果を表3及び表4に示す。 実施品1の検査具では、5日間の培養期間において、酵母やカビを確実に検出する一方、従来品の検査具では、偽陽性として検出されたPseudomonas属細菌やBacillus属細菌を検出しなかった。 バターやマーガリン類に比べて低油脂含量の食品である普通牛乳(約3〜4質量%)及び無油脂含量の食品であるリンゴジュースを検査対象物として検出を試みた。常温で検査対象物に細菌を接種して試料を調製した。1.0mlの試料を加えた検査具を転倒して試料と培地を十分に混和した後に、25℃にて7日間で培養した。その結果を表5に示す。これらの結果から、実施品1の検査具では、4日間ないし5日間の培養期間において、酵母やカビが確実に検出された一方、Pseudomonas属やBacillus属の細菌は検出されなかった。この実施例4の実験から、実施品1の検査具では、低油脂含量の食品や無油脂含量の(油脂を含まない)食品から、5日間程度の培養期間において、酵母やカビが検出されることが確認された。 無塩バター(株式会社明治製、商品名「無塩パーチバター 450g」)を検査対象物として、界面活性剤による影響を調べた。試験方法は、実施例2(クロラムフェニコールが添加された検査具を用いた。)の方法と同様である。その結果を表5に示す。 この実験結果から、界面活性剤の添加は、酵母やカビの検出に影響を与えないことが確認された。また、界面活性剤の添加は、Pseudomonas属やBacillus属の細菌の検出にも影響を与えないことが確認された。 本発明によると、油脂含量の高いバターやマーガリン類のような食品であっても、油脂含量が低い又は油脂を含まない食品であっても、5日間から7日間の培養期間において、試料1g中に1cfu程度で存在するカンジダ属(Candida)菌などの酵母やペニシリウム属(Penicillium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、クラドスポリウム属(Cladosporium)などに属するカビを確実に検出できる検査具が提供される。1 全体が透明である容器本体2 培地収容部3 指示薬収容部4 二酸化炭素透過膜 密閉可能な容器内に、増菌用の培地を遮断する二酸化炭素透過膜で隔てられた培地収容部と指示薬収容部を備えた酵母及びカビ用の検出具であって、 前記容器は外側から前記指示薬収容部の内部を見通せる透明部を備え、 前記培地収容部は酵母又はカビを培養できる培地を収容し、 前記指示薬収容部は二酸化酸素の呈色指示薬を収容し、 前記酵母又はカビを培養できる培地が、 培地1000ml中に、10.0g±1.0gのペプトン、50.0g±5.0gのブドウ糖、9.0g±0.9gの酵母エキス、2.1g±0.2gの硫酸マグネシウム、2.0g±0.2gのリン酸二水素カリウム、0.05g±0.01gのジアスターゼ、0.05g±0.01gのチアミンを含み、その他の増菌用成分を含まず、培地のpHが4.6±0.2である検査具。 前記培地は、前記呈色指示薬の呈色の観察を妨げるpH指示薬を含まない請求項1に記載の検査具。 密閉可能な容器内に、増菌用の培地を遮断する二酸化炭素透過膜で隔てられた培地収容部と指示薬収容部を備えた酵母及びカビ用の検出具であって、 前記容器は外側から前記指示薬収容部の内部を見通せる透明部を備え、 前記培地収容部は酵母又はカビを培養できる培地を収容し、 前記指示薬収容部は二酸化酸素の呈色指示薬を収容し、 前記酵母又はカビを培養できる培地が、M−グリーンイーストアンドモールド培地である検査具。 前記酵母又はカビを培養できる培地が細菌増殖防止剤を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の酵母又はカビ用の検査具。 前記細菌増殖防止剤はクロラムフェニコール系の抗生物質である請求項4に記載の酵母又はカビ用の検査具。 前記酵母又はカビを培養できる培地が界面活性剤を含む請求項1〜5の何れか1項に記載の酵母又はカビ用の検査具。 【課題】 バターやスプレッド類などの油を多く含む食品において偽陽性の発生を少なくし、それ以外の飲食物や医薬品などを含めた多くの検体について、5日間程度の検査期間において、酵母やカビを検出できる検査具を提供する。【解決手段】 キャップ7によって密閉できる全体が透明となった容器本体1に、増菌用の培地を遮断する二酸化炭素透過膜4で隔てられた培地収容部2と指示薬収容部3を構成し、前記培地収容部2に、クロラムフェニコールが添加されたM−グリーンイーストアンドモールドブロスを収容し、前記指示薬収容部3に二酸化酸素の呈色指示薬6を収容して、本発明の検査具とする。【選択図】図1