タイトル: | 公開特許公報(A)_岩石の一軸圧縮強度の推定方法 |
出願番号: | 2011282631 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 3/00,G01N 3/46 |
大久保 誠介 福井 勝則 大橋 仁壽 小崎 一朗 JP 2013134071 公開特許公報(A) 20130708 2011282631 20111226 岩石の一軸圧縮強度の推定方法 株式会社 大垣鐵工所 503393906 内藤 哲寛 100083655 大久保 誠介 福井 勝則 大橋 仁壽 小崎 一朗 G01N 3/00 20060101AFI20130611BHJP G01N 3/46 20060101ALI20130611BHJP JPG01N3/00 DG01N3/46 4 1 OL 10 2G061 2G061AA20 2G061AB04 2G061BA01 2G061CA06 2G061DA08 本発明は、先端部が円錐状に形成された試験針を岩石に対してスラストを加えた状態で、側方に所定長だけスライドさせて生ずる当該試験針の先端部の摩耗の程度により、当該岩石の摩耗能を測定する岩石摩耗能測定試験の測定値を利用して、当該岩石の一軸圧縮強度を推定する方法に関するものである。 さく岩機、回転さく孔機、ブームヘッダ、トンネル掘削機等の掘削機械の適用性の検討には、「岩石の摩耗能(abrasibity) 」の評価が重要となる。岩石の表面硬度として、モース(Mohs)硬度が古くから用いられ、また、フランス石炭研究センターで提案された「CERCHAR試験」により得られた「岩石の摩耗能」も用いられている。「岩石の摩耗能」とは、例えば、掘削機械により岩石を掘削する際に、当該岩石によって掘削工具類が摩耗される(摩り減らされる)程度を言い、「岩石の硬度」の一種に分類される物性である。 「CERCHAR試験」は、先端部が円錐状に形成された鋼棒から成る試験針を設定されたスラストで岩石の表面に押し付けながら滑らせて、試験後に針先端の摩耗状況を測定するものである。具体的には、図1に示されるように、先端の円錐部の頂角が90°の試験針Nを用いて、70Nのスラストを加えながら、岩石の表面を約10mmスライドさせて、試験後に試験針の先端に生じた平らな部分の直径を(Wc)とした場合において、以下に示される無次元の値が「CERCHAR試験」における「岩石の摩耗能」の指標となる。 ICERCHAR 〔無次元〕= Wc(mm)/ 0.1(mm) 「ICERCHAR 」の値が大きい岩石は、当該値が小さい岩石に比較して、試験針の先端部の摩耗程度が大きくて、掘削時において掘削工具類が摩耗され易いことになって、「岩石の摩耗能」が大きいことになる。 一方、「岩石の一軸圧縮強度」は、拘束力を受けない状態で、長軸方向に圧縮されるときの岩石の強度特性であって、掘削機械の適応性の検討に際しては、「岩石の摩耗能」とは別の観点から一つの指標となり得るものである。岩石の「一軸圧縮試験機」は、大型で、しかも固定構造であるために、原位置で試験を行うことはできず、原位置で岩石供試体を採取し、この供試体を、専用の一軸圧縮試験機にセットできる形状に整形加工した供試体の使用が不可欠であった(非特許文献1)。 また、「CERCHAR試験」における「岩石の摩耗能」は、岩石に対してスラストが加えられた試験針をスライドさせることにより発生した試験針の先端の摩耗の程度を測定することのみにより行っており、当該岩石に形成された切削溝の深さは、当該深さを測定する機器の開発が不十分な点もあって、殆ど評価の対象とされていなかった。 本特許出願の発明者は、「CERCHAR試験」において岩石(供試体)の表面に形成された切削溝の深さと、一軸圧縮強度とが一定の関連性を有するとの仮定に基づいて、種々の実験を重ねることにより、本発明を完成するに至った。 なお、従来の岩石の「CERCHAR試験」は、原位置から採取した供試体を試験室内に設置された「CERCHAR試験機」にセットして行っており、本特許出願の発明者は、上記した現状を打破して、原位置の岩石に対して直接に試験針を設定スラストで押し付けた状態でスライドさせることにより、岩石の供試体の採取を不要とする携帯式の「岩石摩耗能測定具」を開発し、「岩石の摩耗能」の測定が従来に比較して容易になったことも、本発明の完成に間接的に寄与している。JGS 2521:2000 地盤工学会基準 岩石の一軸圧縮試験方法(Method of confined compression test for rocks) 本発明は、上記した事情を背景にして、岩石の「CERCHAR試験」により得られた測定値によって、当該岩石の一軸圧縮強度を推定可能にすることを課題としている。 上記課題を解決するための請求項1の発明は、先端部が円錐状に形成された試験針を岩石に対してスラストを加えた状態で側方に所定長だけスライドさせて生ずる当該試験針の先端部の摩耗の程度により、当該岩石の摩耗能を測定する岩石摩耗能測定試験の測定値を利用して、当該岩石の一軸圧縮強度を推定する方法であって、前記測定値のうち試験針により岩石に形成された切削溝の深さ(D)及び前記試験針の先端摩耗部の直径(Wc)と、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)とが関数関係にあることを利用して、前記切削溝の深さ(D)及び試験針の先端摩耗部の直径(Wc)の各測定値により、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)の推定値を得ることを特徴としている。 「CERCHAR試験」と称される上記岩石摩耗能測定試験において、岩石表面に対して試験針の先端の円錐部を設定されたスラスト(70N)を加えた状態で、当該試験針を側方に設定長(10mm)だけスライドさせると、当該岩石の表面に切削溝が形成されると共に、当該試験針の先端の円錐部の先端は、平らに摩耗されて略円形に変形される。ここで、本発明者は、当該技術分野における研究及び多数の実験の結果から、岩石の一軸圧縮強度は、「CERCHAR試験」において岩石に形成された切削溝の深さのみではなくて、試験(測定)の始点又は終点において、当該試験針が岩石と接触している総接触面積、即ち、当該試験針の先端摩耗痕の面積を考慮した岩石に対する総接触面積に関連(比例)するとの知見を得た。 本発明者は、試験針のスラストを(F)、試験(測定)の始点又は終点において、当該試験針が岩石と接触している総接触面積を(A)、当該岩石の一軸圧縮強度を〔UCS(Uniaxial Compressive Strength)〕とすると、〔F=A×(UCS/ Sf)〕の式が成立するとの知見を得た。なお、(Sf)は、試験針の寸法効果に関する補正係数である。 この結果、請求項1の発明において、〔UCS=Sf×(F/ A)〕となって、試験(測定)の始点又は終点において、当該試験針が岩石と接触している総接触面積(A)を算出することにより、即ち、試験針により岩石表面に形成された切削溝の深さ(D)と、試験針の先端摩耗部の直径(Wc)とを測定することにより、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)の推定値が算出される。 請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記切削溝の深さ(D)は、当該切削溝の終点の深さを用いることを特徴としている。 請求項2の発明においては、「CERCHAR試験」において、岩石表面に対してスラスト(F)を付与した試験針をスライドさせて、当該岩石に切削溝を形成する場合において、当該切削溝の深さは、始点から終点に至る間において変化し、当該切削溝の始点よりも終点における切削溝の深さ(D)の方が、バラツキがなくて測定の信頼性が高くなり、ひいては、試験針により岩石表面に形成された切削溝の深さ(D)と、試験針の先端摩耗部の直径(Wc)との測定から得られる一軸圧縮強度(UCS)の信頼性が高まる。 請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記試験針は、(HRC40)と(HRC55)との硬度の異なる二種類を用い、前記切削溝の深さ(D)及び試験針の先端摩耗部の直径(Wc)は、いずれも当該二種類の試験針の平均値を使用することを特徴としている。 同一の岩石に対しても、異硬度の二種類の試験針を用いて、切削溝の深さ(D)及び試験針の先端摩耗部の直径(Wc)の各データを取得して平均値を用いる方が、特定硬度の一種類の試験針のみを用いるのに比較して、特定岩石に対する不釣り合いの硬度を有する試験針を用いることにより得られた低い信頼性のデータが是正されることにより、各測定の信頼性が高まり、ひいては、上記各データから算出される一軸圧縮強度(UCS)の信頼性が高まる。 請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記岩石摩耗能測定試験は、携帯可能な測定具により、岩石の供試体を用いることなく、原位置の岩石を直接に測定することにより得られた切削溝の深さ、及び試験針の先端摩耗部の直径に係る各測定値を利用することを特徴としている。 請求項4の発明によれば、携帯可能な測定具により原位置にて、岩石の表面に形成された切削溝の深さ、及び試験針の先端摩耗部の直径に係る各測定値を用いて、一軸圧縮強度を算出できるため、岩石の供試体を採取して整形加工する必要がなくなる。 本発明によれば、岩石の「CERCHAR試験」において、試験針により岩石表面に形成された切削溝の深さ(D)と、試験針の先端摩耗部の直径(Wc)とを測定することにより、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)の推定値が算出されるため、岩石の「摩耗能」の測定に不可欠な「CERCHAR試験」で得られた測定値から岩石の一軸圧縮強度を推定できる。従って、岩石の一軸圧縮強度(UCS)を求める場合において、その用途が、上記した推定値で十分な場合には、別途、一軸圧縮強度試験を行う必要がなくなる。(a)は、「CERCHAR試験」により岩石の供試体Rに形成された切削溝1の平面模式図であり、(b)は、切削溝1及び試験針Nの先端の摩耗状態を示す部分拡大断面図である。(a),(b)は、それぞれ切削溝1の始点及び終点における岩石の供試体Rに対する試験針Nの総接触面積を計算するための図である。日本国内で採取された19種類の岩石のモース硬度、実測UCS並びにHRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた各推定UCSの値をモース硬度の順に並べた表である。実測UCSと、HRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた各推定UCSとの関係を示すグラフである。実測UCSと、HRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた各推定UCSを単純平均した推定単純平均UCSとの関係を示すグラフである。日本国内で採取された10種類の岩石のモース硬度、実測UCS並びにHRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた切削溝の終点及び始点における推定単純平均UCSの値をモース硬度の順に並べた表である。実測UCSと、HRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた切削溝の終点及び始点における推定単純平均UCSとの関係を示すグラフである。 最初に、図1を参照して、「岩石の摩耗能」を測定する「CERCHAR試験」について説明する。「CERCHAR試験」に用いられる試験針Nは、外径が10mmの鋼棒から成り、その下端部(先端部)は、頂角90°の円錐状に形成されて突刺部Naとなっている。「CERCHAR試験機」の供試体ホルダーに岩石の供試体Rをセットし、当該供試体Rの表面に対して70Nのスラスト(F)を加えた状態で、当該試験針Nを10mmだけスライドさせる。これにより、図1に示されるように、供試体Rの表面に長さ(L)が10mmであって、終端の深さが(D)の切削溝1が形成されると共に、試験針Nの先端部の三角錐状をした突刺部Naの先端は平面状に研磨されて、直径(Wc)の略円形の平面状に摩耗変形される。なお、図1(a)において2は、岩石の供試体Rに対して70Nのスラスト(F)で試験針Nを突刺させ、その後に、当該スラスト(F)を維持したままでスライドさせる際に、岩石表面に発生した剥落部を示す。 段落「0003」で述べたように、試験針Nの突刺部Naの先端摩耗部の直径(Wc)を10倍した無次元の値が「ICERCHAR 」となって、この値が「岩石の摩耗能」の指標となる。 そして、本発明者は、試験針Nのスラストを(F)、試験(測定)或いは切削溝1の始点又は終点において、当該試験針Nが岩石の供試体Rと接触している総接触面積を(A)、当該岩石の一軸圧縮強度を(UCS) とすると、〔F=A×(UCS/ Sf)〕の式が成立するとの知見を得た。なお、(Sf)は、試験針Nの寸法効果に関する補正係数である。 ここで、「CERCHAR試験」における切削溝1の深さ(D)は、0.1mmのオーダーと小さいので、寸法効果によって、微少部分の一軸圧縮強度(UCS/ Sf)は上昇していると考えられる。一方、岩石の供試体Rの寸法は、10mmのオーダーであるので、当該供試体Rと、切削溝1の深さ(D)との寸法比を100として、以下の式により補正係数(Sf)を算出した。 Sf=0.010.2 =0.40 なお、上式の「べき数」には諸説があるが、丸めて0.2とした。 この結果、一軸圧縮強度(UCS)は、以下の式(1)となって、試験(測定)或いは切削溝1の始点又は終点において、当該試験針Nが供試体Rと接触している総接触面積(A)を算出することにより、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)の推定値が算出される。 UCS=Sf×(F/ A)・・・・・・・・・・式(1) ここで、切削溝1の始点における試験針Nと岩石の供試体Rとの総接触面積(As)は、試験針Nの喰込み深さを(D)とすると、〔As=21/2 ×π×D2 〕となる。 即ち、図2(a)において、三角形PQSは、直角二等辺三角形であるため、辺QS及びPSの各長さは、それぞれ(2D),(21/2 ×D)となり、試験針Nにおける岩石の供試体Rに喰い込んだ部分の表面を展開すると、半径(k)が(21/2 ×D)であって、中心角(θ)〔ラジアン〕が「2π×〔(π×2D)/ (2π×21/2 ×D)〕」の扇形となる。 As=π×k2 ×(θ/ 2π)=21/2 πD2 ・・・・・・・・式(2) 一方、切削溝1の終点においては、図2(b)に示されるように、試験針Nの先端摩耗部の摩耗高さは(Wc/ 2)であり、しかも終点においては、試験針Nの外周面の半分は、切削溝1に臨んでいて岩石の供試体Rと接触していない。 よって、切削溝1の終点における岩石の供試体Rに対する試験針Nの総接触面積(Ae)は、摩耗により円錐台状に変形された部分の半分の表面積(Ae1) と、略円形に摩耗された部分の面積(Ae2)との和である(Ae=Ae1+Ae2)。 Ae1=(21/2/2 )π(D+Wc/2)2 −(21/2/2 )π(Wc/2)2 Ae2=π(Wc/2)2 Ae=Ae1+Ae2=(21/2/2 )π〔D2 +D×Wc+(21/2/4 ×Wc2 )〕・・・・・・・式(3) よって、式(1)において、スラスト(F)と補正係数(Sf)は既知であり、「CERCHAR試験」によって、岩石の供試体Rに形成された切削溝1の始点又は終点における深さ(D)と、終点における試験針Nの略円形の先端摩耗部の直径(Wc)との各測定値が判明すれば、当該岩石の一軸圧縮強度の推定値が計算により得られる。 次に、図3ないし図5を参照して、岩石の実測UCSと、「CERCHAR試験」の結果に基づいて、上記した式(1)〜(3)から算出された推定UCSの関係に関する実験結果について考察する。図3は、日本国内で採取された19種類の岩石のモース硬度、実測UCS並びにHRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた各推定UCSの値をモース硬度の順に並べた表であり、図4は、実測UCSと、HRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた各推定UCSとの関係を示すグラフであり、図5は、実測UCSと、HRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた各推定UCSを単純平均した推定単純平均UCSとの関係を示すグラフである。また、「CERCHAR試験」により岩石の供試体Rに形成された切削溝1の深さ(D)の測定には、ローランドディジー社製の3次元スキャナーを使用した。この3次元スキャナーは、先端に半径80μmの半球の付いたプローブ(探り針)で切削溝1の深さ(D)を測定するもので、分解能は25μmであった。 図3には、横軸及び縦軸に、それぞれ実測UCS及び推定UCSをとって、計19種類の岩石から得られた同数の実測UCSのデータに対して、各岩石についてHRC40と同55との各試験針を用いたそれぞれ2回の試験から得られた計38の推定UCSのデータがプロットされている。各プロットは、実測UCSと推定UCSとが等しい点を結んだ「勾配=1」の直線に対してほぼ沿っているが、全体から見ると、当該直線よりも上方に位置するものの割合が僅かに多いことが分かり、結果的に、実測UCSと推定UCSとは、一定の比例関係にあることが判明した。また、HRC40の試験針を用いた場合において、稲田花崗岩と村田玄武岩とは、例外的に、実測UCSに対して推定UCSの方が遥かに大きな値であった。なお、「CERCHAR試験」における切削溝1の深さ(D)の測定は、当該切削溝1の終点で行った。 図5には、横軸及縦軸に、それぞれ実測UCS及び推定単純平均UCSをとって、計19種類の岩石から得られた同数の実測UCSのデータに対して各岩石についてHRC40と同55に係る推定UCSを単純平均した計19の推定単純平均UCSのデータがプロットされている。異硬度の試験針を用いた2回の「CERCHAR試験」から得られた各推定UCSを単純平均した推定単純平均UCSに関しては、個々の硬度の試験針から得られる推定UCSに比較して、実測UCSに対する比例性が高まることが判明した。そして、図5から、最小二乗法により、推定単純平均UCSと実測UCSとの関係を求めると、以下の式となった。 推定単純平均UCS=1.2×実測UCS 硬度の異なる二種類の試験針を用いたデータを単純平均することにより、特定岩石に対する不釣り合いの硬度を有する試験針を用いることにより得られた低い信頼性のデータが是正されることにより、データとしての信頼性が高まって、一軸圧縮強度の推定値の信頼性が高められる。 次に、図6及び図7を参照して、実測UCSと、岩石の切削溝の終点と始点における各推定単純平均UCSとの関係について検討する。図6は、日本国内で採取された10種類の岩石のモース硬度、実測UCS並びにHRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた切削溝の終点及び始点における推定単純平均UCSの値をモース硬度の順に並べた表であり、図7は、実測UCSと、HRC40及びHRC55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」から得られた切削溝の終点及び始点における推定単純平均UCSとの関係を示すグラフである。なお、推定単純平均UCSとは、HRC40と同55の各試験針を用いた「CERCHAR試験」の結果から得られた2つの推定UCSを単純平均したものである。 一般的に、岩石の供試体Rに成形される切削溝1は、始点から終点に向けて漸次深くなり、この結果、試験針と岩石との総接触面積は、始点よりも終点の方が大きくなるため、推定UCSは、始点よりも終点の方が小さくなり、図6及び図7には、その結果が表されている。また、計算により得られた推定(単純平均)UCSに関しては、始点よりも終点の方がバラツキが少ないことも分かった。これは、始点では、岩石に対して試験針が突刺されるのに対して、終点は、試験針のスライド端であるために、切削溝1の深さに関しては、始点に比較して終点の方が安定していることを意味する。 従って、岩石の供試体Rの切削溝1の深さ(D)に関するデータに関しては、終点の方が信頼性があることが、実験からも判明した。なお、図3ないし図5における推定UCSは、切削溝の終点における深さに基づいて算出してあるのは、上記理由による。 このように、本発明によれば、岩石の「CERCHAR試験」において、試験針により岩石表面に形成された切削溝の深さ(D)と、試験針の先端摩耗部の直径(Wc)とを測定することにより、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)の推定値が算出されるため、岩石の「摩耗能」の測定に不可欠な「CERCHAR試験」で得られた測定値から岩石の一軸圧縮強度を推定でき、岩石の一軸圧縮強度(UCS)を求める場合において、その用途が、上記した推定値で十分な場合には、別途、一軸圧縮強度試験を行う必要がなくなる。 また、本発明者は、原位置の岩石に対して直接に試験針を設定スラストで押し付けた状態でスライドさせることにより、岩石の供試体の採取を不要とする携帯式の「岩石摩耗能測定具」を開発し、この携帯式の「岩石摩耗能測定具」を使用すれば、原位置で岩石の供試体を採取することなく「CERCHAR試験」を行うことができ、その結果、一切の供試体を使用することなく、当該岩石の「摩耗能」を測定できると共に、その「一軸圧縮強度」を推定できる。 A:試験針における岩石との総接触面積 D:切削溝の深さ F:スラスト N:試験針 Na:試験針の突刺部 R:岩石又はその供試体 UCS:一軸圧縮強度 Wc:試験針の先端摩耗部の直径 1:切削溝 先端部が円錐状に形成された試験針を岩石に対してスラストを加えた状態で側方に所定長だけスライドさせて生ずる当該試験針の先端部の摩耗の程度により、当該岩石の摩耗能を測定する岩石摩耗能測定試験の測定値を利用して、当該岩石の一軸圧縮強度を推定する方法であって、 前記測定値のうち試験針により岩石に形成された切削溝の深さ(D)及び前記試験針の先端摩耗部の直径(Wc)と、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)とが関数関係にあることを利用して、 前記切削溝の深さ(D)及び試験針の先端摩耗部の直径(Wc)の各測定値により、当該岩石の一軸圧縮強度(UCS)の推定値を得ることを特徴とする岩石の一軸圧縮強度の推定方法。 前記切削溝の深さ(D)は、当該切削溝の終点の深さを用いることを特徴とする請求項1に記載の岩石の一軸圧縮強度の推定方法。 前記試験針は、HRC40とHRC55との硬度の異なる二種類を用い、前記切削溝の深さ(D)及び試験針の先端摩耗部の直径(Wc)は、いずれも当該二種類の試験針の平均値を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の岩石の一軸圧縮強度の推定方法。 前記岩石摩耗能測定試験は、携帯可能な測定具により、岩石の供試体を用いることなく、原位置の岩石を直接に測定することにより得られた切削溝の深さ、及び試験針の先端摩耗部の直径に係る各測定値を利用することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の岩石の一軸圧縮強度の推定方法。 【課題】岩石の「CERCHAR試験」により得られた測定値によって、当該岩石の一軸圧縮強度を推定可能にする。【解決手段】先端部が円錐状に形成された試験針Nを岩石Rに対してスラストFを加えた状態で側方に所定長だけスライドさせて生ずる当該試験針Nの先端部の摩耗の程度により、当該岩石Rの摩耗能を測定する岩石摩耗能測定試験の測定値を利用して、当該岩石Rの一軸圧縮強度を推定する方法であって、前記測定値のうち試験針Nにより岩石Rに形成された切削溝の深さD及び前記試験針Nの先端摩耗部の直径Wcと、当該岩石Rの一軸圧縮強度UCSとが関数関係にあることを利用して、前記切削溝の深さD及び試験針Nの先端摩耗部の直径Wcの各測定値により、当該岩石Rの一軸圧縮強度UCSの推定値を得る。【選択図】図1