タイトル: | 公開特許公報(A)_骨代謝改善剤 |
出願番号: | 2011272593 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 38/17,A61P 19/08,A61P 19/10,A61K 35/60,A61K 38/00 |
麻見 直美 川島 恵利子 JP 2013124221 公開特許公報(A) 20130624 2011272593 20111213 骨代謝改善剤 JNC株式会社 311002067 川口 嘉之 100100549 佐貫 伸一 100126505 丹羽 武司 100131392 麻見 直美 川島 恵利子 A61K 38/17 20060101AFI20130528BHJP A61P 19/08 20060101ALI20130528BHJP A61P 19/10 20060101ALI20130528BHJP A61K 35/60 20060101ALI20130528BHJP A61K 38/00 20060101ALI20130528BHJP JPA61K37/12A61P19/08A61P19/10A61K35/60A61K37/18 6 1 OL 14 4C084 4C087 4C084AA01 4C084AA02 4C084AA06 4C084BA03 4C084BA43 4C084CA45 4C084NA14 4C084ZA961 4C084ZA971 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BB29 4C087CA16 4C087NA14 4C087ZA96 4C087ZA97 本発明は、運動と併用して摂取される骨代謝改善剤に関する。 骨粗鬆症とは、骨がもろくなって骨折しやすくなる全身性の疾患である。特に女性は加齢とともに減少する女性ホルモンの影響から、罹患しやすい傾向にある。大腿骨頸部骨折や、腰椎の圧迫骨折等を引き起こして苦痛を伴うことに加え、寝たきり状態に陥ってしまうことは医学的な問題のみならず社会的な問題となっている。 正常な状態の成人の骨は常にリモデリングをくり返しており、骨代謝の平衡を維持している。すなわち、生命活動に必要なカルシウムを骨から血液中に動員するためには骨細胞が石灰化した組織を破壊吸収する骨吸収系と、骨強度維持に必要なコラーゲンやカルシウムを骨が細胞や骨細胞が骨基質として骨に沈着させる骨形成系とのバランスが保たれており、骨はその量が変動することなく120〜150日周期で新しく生まれ変わっている。しかし、このような骨代謝に異常が起こり、骨吸収が骨形成を上回ってしまうと、骨量・骨密度が減少して骨が脆弱化してしまい、骨粗鬆症の原因となりうる。 骨粗鬆症の治療は、骨の主成分であるカルシウムの吸収促進・流出抑制により骨量を維持し、骨自体を強化させることにより行われる。具体的には、エストロゲン補充療法や、カルシウム剤、イソフラボン、イプリフラボン、活性型ビタミンD3、ビスフォスフォネート、ビタミンK2、カルシトニン等の投与などが挙げられる。 また、コラーゲンを加水分解したペプチドにも骨を強化する作用があることが知られており、ウシ・ブタ、魚等の皮膚・骨由来のコラーゲン等の加水分解物を骨粗鬆症の治療等に適用することが開示されている(特許文献1、2、3)。 また、適度な運動は骨量を増加させ、骨粗鬆症の予防や改善にも適しているということも知られており、運動負荷を併用しながら骨強化剤を摂取することにより、その効果を向上させることが開示されている(特許文献4、5)。 ところで、近年、機能性食品等に用いられるコラーゲンとして、安全性が高く経済的に生産できる魚鱗類由来のコラーゲンが注目されている(特許文献6)。そのような魚鱗類由来のコラーゲンペプチドが、血糖値上昇抑制効果を有することも知られている(特許文献7)。特開平11−12192号公報特開2005−343852号公報特開2008−231065号公報再公表2007/132714号公報特開2011−93862号公報特開2006−217876号公報特開2002−326951号公報 骨代謝の改善には長い期間を要するため、有効性が高いことはもちろん、安全で経済的で継続しやすい態様の方法が求められる。 本発明はそのような状況に鑑み、骨代謝の改善に有効で、安全性が高く、経済的で、継続して用いやすい骨代謝改善剤を提供することを課題とする。 本願発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究の末、コラーゲン又はゼラチンを加水分解して得られるコラーゲンペプチドを、運動と併用して摂取することにより、骨代謝改善効果が得られることを見出した。 すなわち、本発明は以下のとおりである。(1)コラーゲン又はゼラチンを加水分解して得られるコラーゲンペプチドを有効成分として含有する骨代謝改善剤であって、運動と併用して摂取されることを特徴とする骨代謝改善剤(以降、本発明の骨代謝改善剤と記す)。(2)前記コラーゲンペプチドが魚鱗、魚骨、及び魚皮のいずれかに由来する、(1)に記載の骨代謝改善剤。(3)前記魚鱗、魚骨、及び魚皮がスズキ目魚類由来である、(2)に記載の骨代謝改善剤。(4)前記加水分解が、バチルス(Bacillus)属由来の分解酵素を用いる加水分解である、(1)〜(3)のいずれかに記載の骨代謝改善剤。(5)前記コラーゲンペプチドの数平均分子量が500〜1500である、(1)〜(4)のいずれかに記載の骨代謝改善剤。(6)前記運動が中強度以上である、(1)〜(5)のいずれかに記載の骨代謝改善剤。 本発明の骨代謝改善剤を運動と併用して摂取することにより、有効に骨代謝改善することができる。具体的には、骨重量、骨密度、骨塩量が増加し、骨強度が向上する。また、本発明の骨代謝改善剤は入手しやすい上、日常に取り入れやすい運動負荷と併用するものであるため、継続しやすい骨代謝の改善対策を実現する。体重補正した大腿骨破断力値を表すグラフである(a:標準食群、b:高タンパク質群)。体重補正した大腿骨破断エネルギー値を表すグラフである(a:標準食群、b:高タンパク質群)。 本発明の骨代謝改善剤は、コラーゲンペプチドを有効成分として含有し、ここでコラーゲンペプチドとはコラーゲン又はゼラチンを加水分解して得たペプチドを意味する。コラーゲンペプチドの原料としては、ウシ、ブタ、魚類の鱗・骨・皮などいずれでもよく、特に限定されるものではないが、特に魚鱗、魚骨、及び魚皮由来のコラーゲンペプチドが好ましい。その理由としては、ウシやブタ由来のコラーゲンペプチドに比して、家畜伝染病などの心配がなく安全性が高い点、さらに魚鱗、魚骨の場合は味や臭いを悪くする脂肪分の含有割合が非常に小さい点が挙げられる。 本発明の骨代謝改善剤の原料となる魚鱗、魚骨、及び/又は魚皮(以降、これらを魚鱗類と記す)を得る魚種としては、特に限定されず、イワシ、サンマ、ティラピア、マダイ、イトヨリダイ、フエフキダイ、ママカリ、サケ、ニシン、コイ、ナマズ、ハモ等を使用できるが、鱗中のコラーゲンの含有比率が高い点、及び鱗が比較的大きい点から、スズキ目魚種が好ましい。 本発明におけるコラーゲンまたはゼラチンの加水分解物であるコラーゲンペプチドの製造条件は特に限定されるものではないが、例えば、酸脱灰後に熱水抽出して酵素加水分解する方法や、加圧による抽出後に酵素加水分解する方法などを挙げることができる。なかでも品質面で優れた酵素加水分解物が得られることから、本発明においては、酸脱灰後に熱水抽出して酵素加水分解する方法が好ましい。 酸脱灰後に熱水抽出して酵素分解する方法とは、具体的には、塩酸や酢酸等で脱灰、水洗浄した湿潤又は乾燥粗コラーゲンに対し重量比で5〜20倍量の40〜100℃の温水又は熱水を用い、1〜20時間かけてコラーゲンまたはゼラチンを抽出し、この抽出液にタンパク質分解酵素を加え、抽出されたコラーゲンまたはゼラチンを酵素加水分解する方法である。 用いるタンパク質分解酵素としては、食品に使用できるものであり、高分解率で大量製造され比較的安価で入手可能で、アミノ酸の生成量が少ないものが好ましい。これらの諸条件を満足させる分解条件としては、コラーゲンがゼラチン化する40℃以上の温度と分解が容易なpH5.0〜8.0で使用できる中性酵素や、pH6.5〜12で使用できるアルカリ性酵素が好ましく、具体的にはバチルス(Bacillus)属由来の細菌性プロテアーゼが挙げられる。このような細菌性プロテアーゼとしては、中性酵素では例えばプロチンP(登録商標)(大和化成株式会社製)、オリエンターゼ(登録商標)90N(エイチビィアイ株式会社製)、プロテアーゼNアマノG(登録商標)(天野エンザイム株式会社製)等が挙げられ、アルカリ性酵素では例えばアルカラーゼ(登録商標)(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社製)、ビオプラーゼ(登録商標)SP−15FG(長瀬産業株式会社製)、プロレザー(登録商標)FG−F(天野製薬株式会社製)等が挙げられる。 本発明でのコラーゲンペプチドは精製工程を経ることで、より品質が向上する。当該精製工程には活性炭処理が好適である。本発明において好適に行われる活性炭処理については、活性炭の種類やその使用量をはじめ特に限定されるものではない。本発明において好ましい活性炭処理方法としては、粗コラーゲンに対して1〜20重量%の活性炭を、酵素加水分解物を含有する溶液に添加し、30〜60℃の温度範囲で15〜360分撹拌する工程を、1〜5回繰り返し行う方法を挙げることができる。なお、精製工程に使用する活性炭は市販品を用いることができる。 精製に使用した活性炭は、活性炭処理後の溶液をろ過することにより取り除くことができる。ろ過の手段は特に限定されないが、例えば市販の珪藻土を粗コラーゲンに対して1〜50重量%の割合となるように添加し、フイルタープレス等でろ過することにより取り除くことができる。 精製されたコラーゲンペプチド水溶液は、濃縮工程を経ることにより液状のコラーゲンペプチドとして、または濃縮工程、乾燥粉末化工程を経ることにより、粉末状のコラーゲンペプチドとして用いることができる。好適な濃縮工程には薄膜蒸発機などの真空濃縮装置が挙げられ、乾燥粉末化工程にはスプレードライヤーなどが挙げられる。 本発明の骨代謝改善剤の有効成分であるコラーゲンペプチドの分子量は特に限定されるものではないが、ゲルクロマトグラフィー(GPC)法による数平均分子量で15000以下であることが好ましく、より好ましくは300〜5000の範囲であり、特により好ましくは500〜1500の範囲である。上記範囲であれば水に対する溶解性が良好で、かつ体内で早く吸収されることが期待されるため、効果の早い発現が望める。 本発明の骨代謝改善剤は、コラーゲン又はゼラチンを加水分解して得られるコラーゲンペプチドを有効成分として含有し、骨代謝改善剤中における該有効成分の含有量は骨代謝改善効果を発揮できる量であれば特に制限はなく、摂取の頻度、摂取量、使用の目的によって適宜調整すればよい。少ない使用量で効果を発揮させる場合には、該含有量は多い方が好ましい。すなわち骨代謝改善剤全体の1〜100重量%含有することが好ましく、50〜100重量%含有することがより好ましく、80〜100重量%含有することがさらに好ましい。 本発明の骨代謝改善剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記有効成分の他の成分を含有することができる。他の成分としては、例えば生理的に許容される賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、懸濁化剤、乳化剤、防腐剤、安定化剤、防腐剤、着色料、香料、その他種々の食品添加物等が挙げられる。 本発明の骨代謝改善剤は、経口にて摂取される。その剤形としては、錠剤、コーティング錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、シロップ剤、液剤等の形態を適用することができ、あるいは液体・固体を問わず飲食物に添加する形態でもよい。 本発明の骨代謝改善剤を飲食物に添加する場合、その形態としては、特に制限はないが、例えば飲料、栄養ドリンク、菓子、加工食品、油脂類、乳製品、レトルト食品、レンジ食品、冷凍食品、調味料、健康補助食品等の形態が挙げられる。添加される飲食物の形状・性状も特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状等いずれでもよく、また、錠剤、カプセル剤、液剤、顆粒剤等いずれでもよい。 また、本発明の骨代謝改善剤を飲食物に添加する場合、各種機能の向上等を目的として、本剤の他の生理活性成分等をも配合することができる。抗酸化成分、油性成分、栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等が挙げられる。 抗酸化成分としては、特に制限は無いが、例えば、トコフェロール類およびそれらの誘導体、トコトリエノール類およびそれらの誘導体、セサミン、エピセサミン、セサミノール、セサモリン、セサモール等のリグナン類およびそれらの配糖体、β−カロチン等のカロテノイド類およびその誘導体、没食子酸やエラグ酸等のタンニン類およびそれらの誘導体、フラボン、カテキン、ケルセチン、ロイコアントシアニジン等のフラボノイド類、ユビキノンやビタミンK等のキノン類、オリザノール等のフェルラ酸誘導体、オリーブ抽出物等が挙げられる。栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等の種類については特に制限はないが、食品添加物公定書に定められるものが望ましい。 本発明の骨代謝改善剤を添加する飲食物について、下記に具体例を列記するが、本発明はこれらに制限されるものではない。また、その形態等について特に制限はないが、例えば、おかき、煎餅、おこし、饅頭、飴等の和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、カステラ、ドーナッツ、プリン、スポンジケーキ、ワッフル、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、チューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パン、菓子パン等の各種洋菓子、ポテトチップ等のスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等の氷菓、水、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、炭酸飲料等の清涼飲料水、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア等の嗜好品およびこれらの飲料、牛乳、粉乳、発酵乳、加工乳、チーズ等の乳製品、豆乳、豆腐等の大豆加工食品、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペースト等のペースト類、漬物類、うどんの麺、パスタ等の穀物製品類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、ハンバーグ等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の魚貝類製品、魚、貝等の干物、鰹、鯖、鰺等の各種節、ウニ、イカ等の塩辛、スルメ、魚等のみりん干、鮭等の燻製品、のり、小魚、貝、山菜、椎茸、昆布等の佃煮、カレー、シチュー等のレトルト食品、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、米飯類、パン、油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品や、油脂を含有する各種レンジおよび冷凍食品等が挙げられる。 本発明の骨代謝改善剤の摂取量は各人の年齢、体重などに応じて異なるが、成人に対する一日の摂取量は、上記コラーゲンペプチドとして1〜20gが好ましく、3〜10gがより好ましい。また、1日のうち複数回に分けて摂取してもよく、摂取する人の日常生活に取り入れやすいようにすることができる。 摂取量を上記範囲とすることにより、骨代謝の改善が促進される。 本発明の骨代謝改善剤は、運動と併用して摂取される。運動と併用することにより、運動をせずに本発明の骨代謝改善剤を摂取する場合に比べて、骨代謝改善効果が顕著に向上する。 ここで、運動とは身体活動を示し、計画的・意図的に実施する運動、労働、家事、通勤・通学、趣味等の日常の生活活動を含む。 負荷の程度としては3メッツ以上の中強度運動が好ましく、23エクササイズ(メッツ・時)/週以上の運動量が好ましい。なお、「メッツ」とは、厚生労働省の運動所要量・運動指針の策定検討会が「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)」で示した、運動の強さを表す単位であり、座って安静にしている状態(1メッツ)を基準として、その何倍に相当するかで運動強度が表される。また、「エクササイズ(メッツ・時)」とは同様に、運動の量を表す単位であり、運動強度(メッツ)に運動時間をかけたものである。例えば、普通の歩行、ボーリング、バレーボール等が3メッツの運動に、速歩、水中運動、自転車こぎ等が4メッツの運動に該当し、3メッツの運動を毎日30分間/日行うと10.5エクササイズ/週となる。 本発明の骨代謝改善剤を摂取するタイミングとしては、運動の前後いずれでもよく、特に制限されない。 運動頻度としては、毎日の実施が好ましいが、23エクササイズ(メッツ・時)/週以上となるように運動できればよい。 本発明の骨代謝改善剤又はこれを含有する飲食物は、骨代謝改善のために用いられるものである旨の表示、又は運動と併用して摂取するものである旨の表示を付してもよい。骨代謝改善のために用いられるものである旨の表示は、主に特定保健用食品として表示可能な表記であり、例えば「骨密度の低下を抑え、骨粗鬆症を予防するために」「骨密度を増加させて、元気な骨であるために」「骨粗鬆症を予防するために」等の表示が挙げられる。また、運動と併用して摂取するものである旨の表示は、主に特定保健用食品として表示可能な表記であり、例えば「本剤/本飲食物を運動と一緒に摂取/飲食して、より骨密度増加を」「摂取/飲食した後は運動を」「骨密度をより高めたい方は、ウォーキング運動を」等の表示が挙げられる。 なお、これらの表示は、公知の方法で容器包装手段に付すことができ、これによって本発明の骨代謝改善剤又はこれを含有する飲食物は骨代謝改善のために用いられるものであること、又は運度と併用して摂取するものであることが明示されるので、通常の剤又は飲食物との区別が明確となる。 本発明において骨代謝改善作用とは、骨吸収が骨形成を上回る異常なバランスを正常に戻して骨のリモデリングを正常化し、骨代謝を改善させる作用のことをいう。したがって、骨代謝改善作用は、骨量又は骨強度を測定することにより評価することができ、骨量が増加又は骨強度が向上した場合に骨代謝が改善したと判断できる。骨量は、骨長、骨重量、骨塩量、又は骨密度を測定することにより評価でき、骨強度は、骨の破断力又は骨破断エネルギーを測定することにより評価できる。なお、骨破断力は骨の強さを示し、骨が破断されたときの荷重(重力加速度)で表される(単位:dyn)。また、骨破断エネルギーは、骨が破断されるまでの仕事量(1dynの力が加わったときのその方向に動いた仕事量)を示す(単位:erg)。 本発明の骨代謝改善剤を運動と併用して摂取することにより、骨代謝を改善することができる。その結果、骨粗鬆症を予防又は治療する効果を得ることができる。 本発明の骨代謝改善加剤は、機能の向上、特に、骨代謝改善効果の相加・相乗的な向上、骨重量増加効果の補助、吸収性の向上等を目的として、その他の生理活性成分等と組み合わせて用いることができる。特に、飲食物、飼料等へ使用する場合、その他の生理活性成分等と組み合わせることは好ましい。 その他の生理活性成分としては、その生理機能が明確であるものであれば特に制限は無いが、例えば、他の骨代謝改善剤や、骨素症治療薬、カルシウム剤、骨強化用機能性飲食物等、例えばカゼインホスホペプチド、ラクトビオン酸、乳タンパク質、イソフラボン、クリプトキサンチン、栄養強化のための各種ビタミン類、例えば、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンK等、ビオチン、ミネラル類、例えば、カルシウム、カルシウムハイドロキシアパタイト、マグネシウム、亜鉛、セレン、銅、マンガン、ホウ素、珪素、アミノ酸類、その他の生理活性物質等が挙げられる。その他の生理活性物質としては、例えば、リグナン、コエンザイムQ10、リン脂質、オリザノール、黒胡椒抽出物、とうがらし抽出物、ウコン抽出物、ローズマリー抽出物、生姜抽出物等を配合することができる。 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。<1>本発明の骨代謝改善剤の製造 スズキ目の魚鱗を洗浄乾燥し、これを公知の方法により塩酸脱灰後、水洗して粗コラーゲンを得た。すなわち、洗浄乾燥鱗100g(水分15重量%)に0.6モル塩酸1,500mLを加え、2時間攪拌した。100メッシュ網にてろ過(脱灰溶液pH1.5)、固形分を1Lの水に入れて15分間攪拌し、この水洗/ろ過処理を3回繰り返した。105℃で3hr乾燥させた絶乾鱗の粗コラーゲン量は50重量%、N:17.4重量%、残カルシウム:0.12重量%、残リン酸分:0.37重量%であった。 該粗コラーゲンを20倍量(重量)の水に懸濁し、これにBacillus subtilis由来のタンパク質分解酵素、天野エンザイム(株)製のプロテアーゼN「アマノ」G(登録商標)を粗コラーゲンに対し1.0重量%の割合となるよう添加して50℃で3時間加水分解した。その後、活性炭「フタムラ化学(株)製 太閤S」(登録商標)を粗コラーゲンに対して0.4重量%加え、40℃において30分間攪拌処理して脱臭脱色した。その溶液を室温まで冷却後珪藻土ろ過し、濃縮、粉末化してコラーゲンペプチドを得た。 上記で得たコラーゲンペプチドの数平均分子量を、写真用ゼラチン試験法合同審議会が定めるパギイ法20−2「平均分子量」に準じて、高速液体クロマトグラフィーを用いたゲル濾過法によって測定したところ、1010であった。 具体的な測定操作は以下のとおりである。1)試料0.2gを100mLメスフラスコに取り、溶離液(0.1mol/Lリン酸二水素カリウム溶液と0.1mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液の等量混合液)を加え、1時間膨潤させた後、40℃で60分間加温して溶かした。室温まで冷却した後、溶離液を標線まで加えた。2)得られた溶液を溶離液で正確に10倍希釈し、検液とした。3)検液を用い、ゲル濾過法によってクロマトグラムを求めた。 カラム:Shodex Asahipak GS 620 7G を2本直列 溶離液の流速:1.0mL/min カラムの温度:50℃ 検出方法:測定波長230nmの吸光度4)保存時間を横軸にとり、対応した230nmの吸光度値を縦軸にして、試料の分子分布曲線を作成し、数平均分子量を算出した。<2>骨代謝改善作用試験<2−1>試験方法 前記製造例のように製造した本発明の骨代謝改善剤を用いて、骨代謝改善作用試験を行った。 被験動物として5週齢のWistar系雄ラットを用いた。飼料のタンパク質源にはカゼインを用い、タンパク質含量を飼料重量に対し20重量%(標準食;Moderate :M)又は40重量%(高タンパク質食;High :H)とした。また、飼料中カゼインの3割を本発明の骨代謝改善剤に置き換えた群(MC又はHC)を設けた。さらに各群を非運動群と運動群(Ex)とに分け、合計で表1に示す8群とした。 各群とも、予備飼育を1週間行った後、試験期間を11週間とした。 試験期間中は、23±1℃,湿度50±5%,12時間ごとの明暗サイクル(明期8:00a.m.〜8:00p.m.)の環境下でラットの飼育を行い、表2に示す組成の飼料及び脱イオン蒸留水を自由摂取させた。 また、試験期間中は運動負荷として、小動物用トレッドミル(KN−73、夏目製作所、東京)を用いた走行運動を、ラットに週6回の頻度で行わせた。運動適応期間を19日間設け、実験開始20日目から本走行を合計で55日間行った(25m/minを60min)。ランニングスピードは漸増的に上げ(25〜27m/min)、最終的に25m/minを15分、27m/minを45分の合計60分連続走行させた。なお、運動前後に準備運動(15m/minを5分)とクールダウン(15m/minを5分)を実施し、1日の総走行時間は70分とした。なお、本実施例の被験動物において25〜27m/minのランニングスピードは60〜70%VO2maxに相当し(Wheeler DL, Graves JE, Miller GL, Vander-Griend RE, Wronski TJ, Powers SK, Park HM. 1995. Effects of running in the torisional strength, morphometry, and bone mass of the rat skeleton. Med Sci Sports Exerc 27: 520-529)、ヒトにおける中強度の運動負荷に相当する。 体重及び飼料摂取量は2日ごとに計測した。飼育最終日に、12時間絶食させたラットをジエチルエーテル麻酔下で解剖し、左右の大腿骨、脛骨及び腰椎を採取した。採取した大腿骨、腰椎及び脛骨はそれぞれ付着している軟部組織を十分に取り除き、大腿骨は直ちに湿重量(新鮮重量)を測定し、腰椎及び脛骨は70重量%エタノールで保存した。これらの試料を用いて、後述の各評価項目を測定した。 なお、測定値は統計処理を行い、全てmean±SEで表した。統計ソフトはSPSS(version 12.0J; Inc., Chicago, IL, USA)を使用し、各群の差は一元配置分散分析を用い検討した。グループ間の多重比較はScheffe法を用い、危険率5%で検定した。<2−2>各評価項目及び結果 表3に最終体重、飼料摂取量、飼料効率を示す。 実験開始時の体重に各群間に差はなかった。最終体重、飼料摂取量では、本発明の骨代謝改善剤の有無にかかわらず、運動群(MEx及びMCEx、HEx及びHCEx)が非運動群(M及びMC、H及びHC)よりもそれぞれ有意に低値を示した。また、飼料効率において運動群(MEx及びMCEx、HEx及びHCEx)は非運動群(M及びMC、H及びHC)と比較してそれぞれ有意に低値を示し、本発明の骨代謝改善剤の摂取と運動負荷とを併用した群(MCEx、HCEx)が、標準食群においても高タンパク質食群においても最も低値だった。 大腿骨破断特性は、文献(江澤郁子:岡田玲子, 野崎幸久 & 尾形悦郎. 1979. 発育期ラット大腿骨の破断特性及び灰分量におよぼす低Caの影響. 栄養と食糧 32: 329-335.)に従い、骨破断特性測定装置(DYN-1255:飯尾電機製)により、大腿骨の骨幹部中央を破断し、破断力を測定した。骨破断力は骨の強さを示し、骨が破断されたときの荷重(重力加速度)で表される(単位:dyn)。また、骨破断エネルギーは、骨が破断されるまでの仕事量(1dynの力が加わったときのその方向に動いた仕事量)を示す(単位:erg)。 図1に大腿骨破断力、図2に大腿骨破断エネルギーの、それぞれ体重補正した値を示す。標準食を与えたラットでは、大腿骨破断力及び大腿骨破断エネルギーのいずれにおいても、本発明の骨代謝改善剤の摂取と運動負荷を併用した群(MCEx)は他の群と比較して高値傾向を示し、特にMC群に対しては有意に高値を示した。また、高タンパク質食を与えたラットでも、破断力及び破断エネルギーのいずれにおいても、運動群(MEx及びMCEx、HEx及びHCEx)は非運動群(M及びMC、H及びHC)よりも高値傾向を示し、本発明の骨代謝改善剤の摂取と運動負荷を併用した群(HCEx)はH群と比べて有意に高値を示した。 上記のように大腿骨破断特性を測定した後、大腿骨を95〜100℃の乾燥機(Hi-temp Oven,DR200:ヤマモト科学,東京)中で24時間乾燥し、秤量して乾燥重量とした。さらに550〜600℃のマッフル炉中で15時間灰化し、恒量を得て、灰化重量とした。表4に大腿骨長及び体重補正した大腿骨重量(新鮮重量、乾燥重量及び灰化重量)を示す。 大腿骨長については、標準食を与えたラットでは、本発明の骨代謝改善剤の有無にかかわらず、運動群(MEx及びMCEx)が非運動群(M及びMC)よりも低値傾向を示し、特にMEx群はM及びMC群よりも有意に低値だった。また、高タンパク質食を与えたラットでは、運動群HEx群はH及びHC群よりも有意に低値だった。 体重補正した大腿骨の新鮮重量、乾燥重量、灰化重量については、本発明の骨代謝改善剤の有無にかかわらず、運動群(MEx及びMCEx、HEx及びHCEx)が非運動群(M及びMC、H及びHC)よりもそれぞれ有意に高値を示した。標準食を与えたラットでは、新鮮重量、乾燥重量、灰化重量のいずれでも、MCExが最も高値だった。また、高タンパク質食を与えたラットでは、新鮮重量と乾燥重量で、HCEx群はHEx群よりも有意に高値だった。 腰椎及び脛骨それぞれの骨塩量及び骨密度は、二重エネルギーX線測定装置(DXA装置:Aloka DCR-600R:日立アロカメディカル,東京)を用いて測定した。なお、腰椎骨塩量は第3〜6腰椎をそれぞれ測定し、その合計を腰椎骨塩量として解析した。また、脛骨は脛骨全体のほかに、脛骨全長を5分割し、近位より1分割目の値を海綿骨を多く含む近位1/5の骨塩量として、2及び3分割目の各値の合計を皮質骨主体の骨幹部の骨塩量として、それぞれ解析した。また、骨塩量も同様に解析した。これらの測定は文献(Omi N, Tsukahara N, Ezawa I. 2001. Effect of milk on bone metabolism in growing male and female rats. J Home Econ Jpn 52: 689-698)に従って行った。 表5に腰椎及び脛骨のそれぞれ骨塩量の体重補正した値及び骨密度を示す。 腰椎の骨塩量について、標準食を与えたラットでは、本発明の骨代謝改善剤と運動負荷を併用した群(MCEx)が他の群と比較して有意に高値を示した。腰椎骨密度においてもMCEx群が他の群と比較して高値傾向を示し、特にM群に対しては有意に高値を示した。一方、高タンパク質食を与えたラットでは、本発明の骨代謝改善剤の有無にかかわらず運動群(HEx及びHCEx)が非運動群(H及びHC)よりも高値傾向を示し、特にHCEx群はH群に比べて有意に高値を示した。腰椎骨密度には有意な差は見られなかった。 また、脛骨全体,近位部及び骨幹部の骨塩量については、標準食・高タンパク質食ともに、本発明の骨代謝改善剤の有無にかかわらず運動群(MEx及びMCEx、HEx及びHCEx)が非運動群(M及びMC、H及びHC)に対して、それぞれ有意に高値を示した。さらに、脛骨全体及び近位部においては、本発明の骨代謝改善剤を摂取したMCEx及びHCEx群は、摂取していないMEx及びHEx群よりもそれぞれ有意に高値を示した。なお、骨密度については各群に有意な差は見られなかった。 本発明により、骨代謝の改善に有効で、安全性が高く、経済的で、継続して用いやすい骨代謝改善剤が提供されるため、産業上非常に有用である。 コラーゲン又はゼラチンを加水分解して得られるコラーゲンペプチドを有効成分として含有する骨代謝改善剤であって、運動と併用して摂取されることを特徴とする骨代謝改善剤。 前記コラーゲンペプチドが魚鱗、魚骨、及び魚皮のいずれかに由来する、請求項1に記載の骨代謝改善剤。 前記魚鱗、魚骨、及び魚皮がスズキ目魚類由来である、請求項2に記載の骨代謝改善剤。 前記加水分解が、バチルス(Bacillus)属由来の分解酵素を用いる加水分解である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の骨代謝改善剤。 前記コラーゲンペプチドの数平均分子量が500〜1500である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の骨代謝改善剤。 前記運動が中強度以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の骨代謝改善剤。 【課題】骨代謝の改善に有効で、安全性が高く、経済的で、継続して用いやすい骨代謝改善剤を提供することを課題とする。【手段】コラーゲン又はゼラチンを加水分解して得られるコラーゲンペプチドを有効成分として含有する骨代謝改善剤であって、運動と併用して摂取されることを特徴とする骨代謝改善剤。【選択図】図1