タイトル: | 公開特許公報(A)_細胞内在ウイルスを主成分とする伝染性ファブリキウス嚢病生ワクチン |
出願番号: | 2011265223 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 39/12,A61P 31/12,A61K 35/12 |
美馬 一行 酒井 英史 佐藤 克夫 藤井 昌仁 JP 2013116869 公開特許公報(A) 20130613 2011265223 20111202 細胞内在ウイルスを主成分とする伝染性ファブリキウス嚢病生ワクチン ワクチノーバ株式会社 511294464 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 大木 信人 100144794 美馬 一行 酒井 英史 佐藤 克夫 藤井 昌仁 A61K 39/12 20060101AFI20130517BHJP A61P 31/12 20060101ALI20130517BHJP A61K 35/12 20060101ALI20130517BHJP JPA61K39/12A61P31/12 171A61K35/12 6 OL 12 4C085 4C087 4C085AA03 4C085BA51 4C085CC08 4C085DD23 4C085EE01 4C085GG01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BB64 4C087BC83 4C087CA04 4C087MA66 4C087NA05 4C087NA10 4C087ZB05 4C087ZB09 4C087ZB33 本発明は、伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)ウイルスに感染した細胞を含む、IBDに対する生ワクチン、ならびにそれを用いた家禽の免疫方法に関する。 伝染性ファブリキウス嚢病(以下、「IBD」と記載)は通称ガンボロ病といわれ、IBDウイルス感染によって、鶏や七面鳥等の家禽に発症するウイルス性疾患であり、家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されている。 IBDウイルスはビルナウイルス科アビビルナウイルスに属し、感染によりリンパ系組織やファブリキウス嚢(以下「F嚢」と記載)の壊死や炎症反応を引き起こす。そのため、IBDウイルスに感染すると、免疫機能が低下し、宿主抵抗性の低下や各種ワクチン効果の低下がもたらされ、起病性の増強及び/又は他病の誘発が引き起こされる。IBDウイルスの感染においては、IBD発症による直接的な被害に加えて、飼養成績/生産性の低下等による経済的な被害も生じるために、IBDウイルスを防除することは、当該分野において非常に重要視されている。 今日、IBD対策として生ワクチンが開発され、広く一般的に用いられている。生ワクチンは、例えばIBDウイルスを発育鶏卵又は鶏胚初代培養細胞に接種して培養し、IBDウイルスをろ過又は遠心分離して回収することによって製造される(特許文献1,2)。当該生ワクチンは、孵化後の雛に対して注射によって、あるいはスプレーワクチン接種、エアロゾルワクチン接種や飲料水ワクチン接種により、複数回投与されている。 しかしながら、ワクチンは移行抗体の影響を受けやすく、その移行抗体の消失の程度が各個体において様々であるために、また、接種方法によっては、全ての個体に均一にワクチン接種を行うことができないために、ワクチン接種の効果にばらつきが生じ問題となっていた。さらに、ワクチン接種は各雛に対して、複数回実施しなければならず、実施者にとって大きな負担となっていた。したがって、当該分野においては、移行抗体の影響を受けることのない効果的なIBDワクチンの開発およびIBDワクチンの効率的な投与方法の開発切望されていた。 マレック病(以下、「MD」と記載)は、MDウイルスの感染を原因とする、鶏や鶉などの家禽に発症するウイルス性疾患である。MD対策として生ワクチンが開発され、広く一般的に用いられている。MDウイルスは元来非常に細胞随伴性が強い性状を有し、ウイルスが細胞外へ放出されてしまうと感染性や増殖性が極端に落ちる特性を有している。そのために、生ワクチンは細胞内在性の剤型として製造される。当該生ワクチンを発育鶏卵に接種することにより、非常に効率的かつ効果的にMDを防除できることが報告されている(特許文献3)。 一方、今日までに、細胞内在性の剤型を有するIBDウイルスの生ワクチンは製造されていない。特開平10-327855号公報特開2002-95485号公報WO00/35476 本発明は、IBDに対する新規ワクチンおよび当該ワクチンを用いた家禽の免疫方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、IBDウイルスに感染した細胞を含むIBDに対する生ワクチンを、発育卵に接種することによって、効率的かつ効果的に家禽を免疫できることを見いだし、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下を包含する。[1] 伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)ウイルスに感染した細胞を含む、IBDに対する生ワクチン。[2] IBDウイルスが弱毒株である、[1]のワクチン。[3] 細胞がニワトリ胎児線維芽(CEF)細胞である、[1]又は[2]のワクチン。[4] [1]〜[3]のいずれかのワクチンを、発育卵に接種することを含む、家禽の免疫方法。[5] 家禽がニワトリである、[4]の免疫方法。[6] 発育卵が17〜19日齢である、[5]の免疫方法。 本発明によれば、IBDに対する新規ワクチンおよび当該ワクチンを用いた、効率的かつ効果的な家禽の免疫方法を提供することができる。 本発明は、IBDウイルスに感染した細胞を含む、IBDに対する生ワクチン、に関する。 本発明において「IBDウイルス」としては、野生株や従来公知の分離株、およびそれらの変異株など、特に限定されることなく広く様々なウイルス株を使用することができる。 好ましくは、IBDウイルスは弱毒株である。弱毒株は野外より単離されたものであっても良いし、変異処理や遺伝子組換え操作などにより人為的に弱毒化された変異株であっても良い。従来的に、IBD生ワクチンに使用される弱毒株の弱毒化の程度は、ファブリキウス嚢に与えるダメージ(リンパ球減少)の程度とそれにより引き起こされる免疫抑制の程度によって、毒性の低い順に雛用(Mediate〜Inter Mediate)、雛用中等毒(Inter Mediate)、大雛用(Inter Mediate〜Hot)の3種類に分類される(動物用生物学的製剤基準)。本発明においては、雛用(Mediate〜Inter Mediate)に分類されるウイルス株を使用することが好ましい。「雛用(Mediate〜Inter Mediate)に分類されるウイルス株」とは、1〜4日齢の雛に投与しても免疫抑制を引起こさないウイルス株を意味する。IBDウイルスの弱毒株としては、Lukert-BP(LKT-BP)株、SAL株、D-78株、OH株、Variabt-A株、2512株、2512G株、O3株、O3BF株、FK-78株、K株、V877株、228E株、S706株、I.Q株、MB-1B株、TY2C株など既に様々なものが公知となっており、本発明においてはこれらを用いても良い(特にこれらに限定されない)。 本発明において「細胞」としては、IBDウイルスに感受性が高く、かつIBDウイルスを大量培養することができる、細胞であれば特に限定されない。このような細胞としては、アヒル胚線維芽細胞(DEF)、ニワトリ胎児線維芽細胞(CEF)、ニワトリ胎児肝細胞(CEL)などの初代細胞培養物や、Vero細胞株、BGM-70細胞株、RK-13細胞株、MDBK細胞株、QT-35細胞株、QM-7細胞株、LMH細胞株などの細胞株が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくは、鳥類由来の細胞であり、特に好ましくはニワトリ胎児線維芽細胞(CEF)である。 上記細胞に、IBDウイルスを接種し、培養することによって、本発明における「IBDウイルスに感染した細胞」を得ることができる。IBDウイルスは「IBDウイルスに感染した細胞」内において増殖し、当該細胞より産生される。当該感染した細胞の培養に用いる培地や培養条件は、細胞培養に一般的に用いられるものを適宜選択・調整して用いることができる。例えば、用いた細胞の種類や量、接種したウイルスの量、培地組成などの要因により、適宜調節されるが、35〜40℃の培養温度にて、1〜4日間ほど、好ましくは、IBDウイルスによる細胞変性効果(CPE)が認められる直前まで、培養することができる。 培養期間終了後、細胞は一般的に用いられる手法により回収することができる。すなわち、トリプシン等の制限酵素で処理して、遠心分離により洗浄し、適当な培地中に回収して、生ワクチン原液とすることができる。生ワクチン原液は必要に応じて、適当な生理的緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)等)を用いて希釈しても良い。生ワクチン原液は、凍結防止剤を添加することによって、凍結保存することができる。凍結防止剤としては、細胞の凍結保存に一般的に用いられるものを利用することができ、例えば、特に限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロールなどを利用することができる。 本発明のIBDに対する生ワクチンは、家禽の発育卵に接種する。 本発明において「家禽」とは、IBDウイルスに感染し、IBDを発症する危険のある全ての鳥類を意味し、例えば、ニワトリ、アヒル、ウズラ、カモ、シチメンチョウ等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくは、ニワトリである。 また、本発明において「発育卵」とは、受精後から、雛が孵化するまでの発育中の卵を意味する。発育卵は孵卵期間の後半にあるものが好ましく、ニワトリであれば15〜20日齢、好ましくは17〜19日齢である。この時期には雛は高い移行抗体を保持しており、従来公知の手法によって製造されたIBD生ワクチン(すなわち、発育鶏卵又は鶏胚初代培養細胞に接種して培養された、IBDウイルスをろ過又は遠心分離して回収して製造されIBD生ワクチン)を接種しても、ワクチン株の増殖は認められずワクチンは無効となる。 発育卵への接種に際しては、本発明の生ワクチンを(凍結保存されている場合には解凍した後に)適当な溶解用液に溶解する。溶解用液としては、従来公知のマレック病(MD)ワクチン用の溶解用液、トリプトンリン酸ブロス(TPB)等が挙げられるがこれらに限定されない。 生ワクチンの発育卵への接種は、発育卵へのワクチン接種に一般的に用いられる手法を用いて行うことができる。すなわち、適当なサイズを有する接種針(例えば22〜28ゲージ針)を発育卵の気室側より差し込んで、羊膜腔内及び/又は尿膜腔内に注入または注射することにより行う。自動接種装置などを利用しても良い。本発明の生ワクチンは、他のワクチン(例えば、MDワクチン等)と一緒に接種することが可能であり、本発明の生ワクチンと他のワクチンを同時に接種しても良い。ここで「同時に接種」には、本発明の生ワクチンと他のワクチンを一緒に接種する場合だけでなく、いずれかのワクチンの接種後、当該ワクチンに含まれる免疫原の存在下にて、もう一つのワクチンを接種する場合も含む。 生ワクチンの接種量は、卵一つあたり、102〜109 TCID50、好ましくは103〜106 TCID50の用量で投与することができる。 下記実施例にて詳述するとおり、本発明のIBDに対する生ワクチンを発育卵へ接種することによって、孵化後のごく初期からIBDウイルスに対する有効抗体価を得ることが可能であり、少なくとも孵化後21日目、好ましくは孵化後およそ6〜8週目においても、IBDウイルスに対する高い有効抗体価を維持することができる。通常、孵化直後の雛は移行抗体により防御されており、移行抗体は徐々に減少していき、孵化後およそ18〜24日には消失する。そして移行抗体の消失以降、自然感染を受けて自己抗体が徐々に増え、雛を防御している。本発明のIBDに対する生ワクチンを発育卵へ接種することによって、通常、移行抗体が減少〜消失する時期においても、IBDウイルスに対する高い有効抗体価を得ることができ、雛をIBDウイルスより効果的に防御することができる。また、通常、孵化後10週齢程度の雛はIBDウイルスに対する感受性が低下しており、また、たとえ感染したとしてもその影響はあまり大きくない。本発明のIBDに対する生ワクチンを発育卵へ接種することによって、孵化後およそ6〜8週目においても、IBDウイルスに対する高い有効抗体価を維持することができ、IBDウイルスに対する感受性が低下するまで、雛をIBDウイルスより効果的に防御することができる。 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。実施例1:IBD生ワクチンの作製 単層を形成した鶏胚線維芽細胞にIBDウイルスLukert-BP株を接種し、IBDウイルスによる細胞変性効果(CPE)が認められる直前まで(およそ2日間)、37℃環境下で培養する。0.5W/V%トリプシン溶液を用いて鶏胚線維芽細胞を分散させ、遠心沈殿法にて細胞を洗浄し採取する。採取した細胞を凍害防止剤(ジメチルスルホキシド)を含む安定剤に再浮遊させ、アンプルに分注・熔封後プログラムフリーザーを用いて徐々に-196℃まで凍結させ、使用するまで-196℃にて凍結保存する。実施例2:IBD生ワクチンを用いたニワトリの免疫材料と方法)1.材料 ワクチン:実施例1にて作製したIBD生ワクチン 供試卵:SPF鶏群由来18.5日齢発育鶏卵(SPAFAS社) 中和試験用ウイルス:Lukert-BP株中和抗体測定用ウイルス2. 試験方法1) ワクチン接種方法及び区分け ワクチンを104.5TCID50/0.05mLになるようにMD溶解用液(ワクチノーバ株式会社)に溶解後、75個の供試卵の鈍端部中央から25mm(25G)の針を用いて0.05mL/個を卵内(羊膜腔内)に接種した(試験区)。ワクチン非接種対照卵として、30個の供試卵にPBSを0.05mLずつ卵内(羊膜腔内)に接種した(対照区)。2) 孵化成績及び臨床観察 孵化日に孵化成績の確認及び雛の健康状態を観察したのち、無作為的に抽出した55羽(対照区は24羽)について、翼帯による個体識別を行い、それぞれ独立した陽圧式isolatorで21日間臨床症状を観察した。3) 体重測定 孵化時、孵化後1、3、5、7、14及び21日目に全羽の体重測定を行った。4) 剖検及び病理組織学的検査 各区5羽の病理解剖検査を行うとともに、F嚢/胸腺/脾臓/肝臓/骨髄について病理組織学的検査を行った。5) 抗体価測定 孵化後7、14及び21日目に試験区の10羽(同一個体からなる)から採血し、得られた血清についてIBDウイルスに対する中和抗体価を測定した。中和抗体価は、鶏胚線維芽細胞を用いて50%プラック抑制法により測定した。6) ウイルス回収検査 孵化後1、3、5、7、14及び21日目にそれぞれ、試験区の5羽に由来する標的臓器及び血液から、CEF細胞を用いてウイルス分離を行った。すなわち、採取した各標的臓器及び血液をリン酸緩衝食塩液に加えて30%乳剤を作製し、その0.1mLをCEF細胞に接種して37℃、5%CO2環境下で5日間培養し、培養期間中にIBDウイルスに特異な細胞変性効果を認めたものをウイルス分離陽性とした。ウイルス分離陽性の検体については、ウイルス含有量の測定を行った。3. 試験成績1)孵化成績: 結果を表1に示す。 対照区は30個中28羽(93%)が孵化したのに対し、試験区では75個中64羽(85%)が孵化した。対照区と試験区の孵化率について、χ2法による統計学的検査を行ったが、有意差は認められなかった。 正常雛率は、対照区で26羽/28羽(93%)(孵化時に対照区で1羽が死亡、1羽が沈鬱状態であった)であったのに対して、試験区では62羽/64羽(97%)であった(2羽が死亡)。正常雛率についてもχ2法による統計学的検査を行ったが、試験区と対照区との有意差(p<0.05)は認められなかった。 この結果より、ワクチン接種が孵化に影響を与えないことが示された。2)孵化後の臨床状態: 結果を表2に示す。 試験区では、孵化後3日目に2羽が死亡したが、いずれの個体も剖検所見には異常は認められず、死因は特定できなかった。また、孵化後10日目に1羽が沈鬱を呈し、12日目に死亡した。剖検したところ、死後変化が強く、これも死因は特定できなかった。その他の雛については、試験終了日まで臨床症状に異常を示すものはなかった。 対照区では、孵化後6日目に1羽が死亡したが、糞づまりによるものであった(剖検所見において異常は認められなかった)。 この結果より、ワクチン接種が孵化後の臨床状態に影響を与えないことが示された。3)増体重: 結果を表3に示す。 孵化時における試験区の雛の体重は、対照区の雛の体重とほぼ等しく、統計学的(student t検定)有意差は認められなかった。孵化後1日目〜3日目では、試験区の雛の体重が、対照区の雛の体重と比較して有意(p<0.05)に低かったが、孵化後5日目以降には再び、有意差は認められなかった。 この結果より、ワクチン接種が孵化後の増体重に影響を与えないことが示された。4)病理解剖検査: 結果を表4に示す。 試験区の雛において、孵化後5〜14日目にF嚢萎縮が認められたが、孵化後21日目にはF嚢萎縮は認められなかった。また、その他の臓器(肝臓、脾臓、骨髄)には試験期間を通じて異常は認められなかった。 一方、対照区の雛では全期間を通じて臓器に異常は認められなかった。 試験区の雛におけるF嚢萎縮について詳細に解析した結果を表5に示す。なお、F嚢については濾胞リンパ球の分布割合についてスコア化し、病変の推移について比較した。スコアの基準は、0:正常(100%) 1:0〜20%のリンパ球消失、2:20〜40%のリンパ球消失、3:40〜60%のリンパ球消失、4:60〜80%のリンパ球消失、5:80〜100%のリンパ球消失と定めた。 孵化後1日目に4羽/5羽で軽度な萎縮変化(平均スコア1.6)が認められた。孵化後3日目では全例に萎縮変化が認められ、平均スコアで2.8であった。また、全例に軽度ではあるが偽好酸球の浸潤が散見された。壊死性変化は認められなかった。孵化後5日目では、全例に萎縮変化はあるものの、萎縮変化は孵化後3日目よりも弱く(平均スコアは2.2に減少)、偽好酸球の浸潤や壊死性変化は認められなかった。孵化後7日目では、孵化後5日目よりも萎縮の度合いが減少し、濾胞リンパ球の再生が多く認められるようになった(平均スコア1.0)。正常な濾胞形成を持つ例もあった。孵化後14日目以降ではさらに回復が進み、孵化後14日目では3羽/5羽が、孵化後21日目では4羽/5羽が正常な濾胞構造を示していた(平均スコア0.6)。対照区は全期間を通じて異常は認められなかった。 ワクチン接種によりF嚢に萎縮がみられるものの軽度の萎縮であり、またその後回復していることから、本ワクチンの病原性は非常に低いものであることが示された。 この結果より、ワクチン接種が孵化後の雛の臓器/組織に影響を与えないことが示された。5)抗体検査 結果を表6−1及び表6−2に示す。 孵化後7日目の試験区の雛において、IBD抗体価はすでに平均値が564倍となり、全例が最少有効抗体価とされている200倍に達していた(表6−1)。孵化後14日目になると平均値が5,236倍、そして孵化後21日目では、平均値が21,497倍とさらに上昇した(表6−2)。一方、従来公知手法にしたがって、従来公知のIBD生ワクチン(IBD生ワクチン(バーシン2)ワクチノーバ株式会社)を生後0日齢の雛に強制的に経口投与し、孵化後21日目の抗体価を上記と同様に測定したところ、10個体の平均値が9,428倍となり、本ワクチンの接種によってもたらされた抗体価と比べて有意に低いことが示された。 この結果は、本ワクチンが極めて高い免疫原性を有することを示す。6)ウイルスの検出および定量 結果を表7−1及び表7−2に示す。 孵化後1日目より7日目まで、検査したすべての臓器からウイルスが検出された。一方、孵化後14日目になると、ウイルスは脾臓のみから検出され、孵化後21日目ではすべての臓器においてウイルスは検出されなかった(表7−1)。 ウイルスが検出された臓器についてウイルス量(感染価)を測定したところ、孵化後1〜3日目の各臓器、特にF嚢、に多量のウイルスが存在することが示された(表7−2)。一方、孵化後5〜7日目には、各臓器におけるウイルス量が減少した。 この結果より、発育鶏卵内へのワクチン接種によりウイルスが全身に素早く行き渡り、増殖することが示された。 以上から、IBDウイルス感染細胞を含むワクチンの発育卵への接種は、孵化および孵化後の鶏に対して影響を及ぼすことがなく安全であることが示された。また、当該ワクチンの発育卵への接種により、ウイルスは全身の臓器に素早く行き渡ると共に、増殖が可能であることが示された。さらに、当該ワクチンの発育卵への単回接種により、孵化後の早期より有効なIBD抗体価を得ることができ、少なくとも孵化後21日目においてもその抗体価は非常に高いものであり、極めて効率的かつ有効に鶏を免疫できることが示された。 上記したとおり、今日までに、細胞内在性の剤型(すなわち、ウイルス感染細胞の形態)を有するIBDウイルスの生ワクチンは製造されていなかった。IBDウイルスは、MDウイルスのような細胞随伴性の性状を有していないこと、ウイルスを接種した発育鶏卵又は鶏胚初代培養細胞の培養物を回収することによって製造された従来のIBD生ワクチンが十分に効果を有していたこと、ならびに、孵卵期間の後半にある雛は高い移行抗体を保持しており、従来公知のIBD生ワクチンでは十分な効果を得られないという事実、などから、本発明に係るIBDウイルスに感染した細胞を含む生ワクチン、および、当該ワクチンを発育卵に接種することを含む免疫化方法は、製造および検討されてこなかった。本明細書中に開示したとおり、本発明によれば、家禽を極めて効率的かつ効果的にIBDに対して免疫化することができる。したがって、本発明は家禽を扱う様々な分野において貢献することが期待される。 伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)ウイルスに感染した細胞を含む、IBDに対する生ワクチン。 IBDウイルスが弱毒株である、請求項1に記載のワクチン。 細胞がニワトリ胎児線維芽(CEF)細胞である、請求項1又は2に記載のワクチン。 請求項1〜3のいずれか1項に記載のワクチンを、発育卵に接種することを含む、家禽の免疫方法。 家禽がニワトリである、請求項4に記載の免疫方法。 発育卵が17〜19日齢である、請求項5に記載の免疫方法。 【課題】IBDに対する新規ワクチンおよび当該ワクチンを用いた家禽の免疫方法を提供する。【解決手段】伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)ウイルスに感染した細胞を含む、IBDに対する生ワクチン、および当該ワクチンを、発育卵に接種することを含む、家禽の免疫方法。【選択図】なし