タイトル: | 公開特許公報(A)_BDNF様低分子化合物を含有する治療薬 |
出願番号: | 2011263840 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/495,A61K 31/496,A61P 25/28,A61P 25/14,A61P 25/16,A61P 25/00,A61P 25/24,A61P 25/18,C07D 295/22,C07D 295/18,C07D 295/14,C07D 213/74 |
永田 龍 谷川 潤 川村 哲也 森 泰生 JP 2013116858 公開特許公報(A) 20130613 2011263840 20111201 BDNF様低分子化合物を含有する治療薬 大日本住友製薬株式会社 000002912 国立大学法人京都大学 504132272 田村 恭生 100068526 鮫島 睦 100100158 品川 永敏 100126778 森本 靖 100150500 永田 龍 谷川 潤 川村 哲也 森 泰生 A61K 31/495 20060101AFI20130517BHJP A61K 31/496 20060101ALI20130517BHJP A61P 25/28 20060101ALI20130517BHJP A61P 25/14 20060101ALI20130517BHJP A61P 25/16 20060101ALI20130517BHJP A61P 25/00 20060101ALI20130517BHJP A61P 25/24 20060101ALI20130517BHJP A61P 25/18 20060101ALI20130517BHJP C07D 295/22 20060101ALN20130517BHJP C07D 295/18 20060101ALN20130517BHJP C07D 295/14 20060101ALN20130517BHJP C07D 213/74 20060101ALN20130517BHJP JPA61K31/495A61K31/496A61P25/28A61P25/14A61P25/16A61P25/00A61P25/24A61P25/18C07D295/22 AC07D295/18 AC07D295/14 AC07D213/74 6 OL 18 4C055 4C086 4C055AA01 4C055BA02 4C055BA52 4C055BB02 4C055BB10 4C055CA01 4C055DA01 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC50 4C086GA08 4C086GA12 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA02 4C086ZA12 4C086ZA15 4C086ZA16 4C086ZA18 4C086ZA22 本発明は、脳由来神経成長因子(BDNF)様低分子化合物を含有する治療薬に関する。詳しくは、TRPC3またはTRPC6チャンネルを活性化することによりBDNF様作用を示す低分子化合物を有効成分とする神経変性疾患および精神疾患の治療薬に関する。 神経栄養因子は、中枢神経系(CNS)の神経膠細胞及び神経細胞で恒常的に発現され、神経系の発達(分化)と生存維持に重要な役割を果たす。神経栄養因子には神経成長因子(NGF)、脳由来神経成長因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(Neurotrophin 3、NT3)などが含まれ、TrkA,TrkB,TrkC等の特異的な受容体型チロシンキナーゼに結合して、これを活性化させる。中でもBDNFシグナルを活性化することは、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、レット症候群、外傷性脳損傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患、老年性認知症、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神疾患を治療する上で、特に重要な役割を果たすと考えられている。 しかしながら、BDNFを末梢投与しても、血中半減期が1分以下と短い上に、脳移行性も悪いため、BDNF蛋白そのものを神経変性疾患および精神疾患の治療薬として開発することは困難であった。そこで、BDNFに替わって末梢投与で薬効を発現する低分子化合物の発見が待ち望まれてきた。 BDNFと同様の効果を奏する(ミミックする)低分子化合物としては、TrkB受容体を直接活性化する7,8−ジヒドロフラボン誘導体(例えば、非特許文献1を参照)や、LM22化合物(例えば、非特許文献2を参照)が知られているが、これらは治療薬として開発された実績はない。 一方、BDNFシグナルはTRPC3またはTRPC6チャンネルと「共役(couple)」カップルしていることが知られており(例えば、非特許文献3を参照)、理論上、これらのチャンネルを直接活性化する低分子化合物はBDNFミミックとして働き、上述の神経変性疾患治療薬、精神疾患治療薬となりうる。唯一、ヨーロッパの民間伝承薬であるセイヨウオトギリソウ(St.John‘s Wort)の有効成分と考えられているハイパフォリン(Hyperforin)がTRPC6チャンネルを活性化することにより神経栄養因子様作用を示すという報告がなされているが(例えば、非特許文献4を参照)、他に、TRPC3またはTRPC6チャンネルを活性化しBDNF様作用を示す化合物の報告はほとんど見当たらない。 下記[表1]の化合物がNADH依存性エノイルACPレダクターゼ(NADH-dependent enoyl-ACP reductase)阻害作用を有することが知られている(非特許文献5を参照)。しかしながら、当該化合物がTRPCチャンネルを活性化するという記載や示唆は一切ない。 また下記式[化1]で表される化合物が、N−ホルミルペプチド受容体を活性化することが知られている(非特許文献6を参照)。しかしながら、当該化合物がTRPCチャンネルを活性化するという記載や示唆は一切ない。Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107, 2687-2692 (2010)J. Clin. Invest., 120, 1774-1785 (2010)Nat. Neurosci. 10, 559-567 (2007)FASEB J. 21, 4101-4111 (2007)Bioorg. Med. Chem., 15, 6649-6658 (2007)Eur. J. Med. Chem., 45, 5406-5419 (2010) 本発明の課題は、BDNF様作用を有する末梢投与可能な低分子化合物を有効成分として含む神経変性疾患治療薬および精神疾患治療薬を提供することを目的とする。 本発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物およびその薬学上許容される塩(以下必要に応じ「本発明に係る化合物」と略称することがある。)が、TRPC3またはTRPC6チャンネルを直接活性化することによりBDNF様作用を示すことを見出し、発明を完成させるに至った。 すなわち本発明は、以下の通りである。〔1〕 式(1):[式中、A1は、C1−6アルキル基;ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;アダマンチル基;フェニルオキシカルボニル基;C1−6アルコキシカルボニル基;ベンゾイル基;またはC1−6アルキルカルボニル基を表し、 nは、0または1を表し、 Lは、−SO2−、−SO2−N(R1)−、−C(=O)−、または−C(=O)−N(R1)−を表し、 R1は、水素原子、またはC1−6アルキル基を表し、 A2は、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;またはアダマンチル基を表す。]で表される化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分とする神経変性疾患または精神疾患の治療薬。〔2〕 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;アダマンチル基;またはC1−6アルコキシカルボニル基であり、A2が、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;またはC3−7シクロアルキル基である、〔1〕記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。〔3〕 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基であり、nが1であり、Lが−C(=O)−N(R1)−であり、R1が水素原子であり、A2が、C1−6アルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基;またはC3−7シクロアルキル基である、〔1〕記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。〔4〕 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;アダマンチル基;またはC1−6アルコキシカルボニル基であり、nが0であり、Lが、−SO2−、または−C(=O)−であり、A2が、ハロゲン原子、C1−6アルキル、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基である、〔1〕記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。〔5〕 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;またはピリジル基であり、nが0であり、Lが−C(=O)−であり、A2が、ハロゲン原子、C1−6アルキル、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基である、〔1〕記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。〔6〕 4−(4,5−ジクロロ−2−メチルフェニル)スルフォニルピペラジン−1−カルボン酸エチル[後記式(2)で表される化合物]、 1−(5−クロロ−2−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン[後記式(3)で表される化合物]、 1−(4−クロロ−3−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン[後記式(4)で表される化合物]、 1−(3−ベンジルオキシベンゾイル)−4−(2−ピリジル)ピペラジン[後記式(5)で表される化合物]、 N−シクロヘプチル−2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド[後記式(6)で表される化合物]、 N−シクロヘプチル−2−[4−(2−エトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド[後記式(7)で表される化合物]、 2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−(2−エトキシフェニル)アセトアミド[後記式(8)で表される化合物]、 1−(1−アダマンチル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン[後記式(9)で表される化合物]、もしくは 2−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−シクロペンチルアセトアミド[後記式(10)で表される化合物]、またはその薬学上許容される塩を有効成分とする、〔1〕記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。 また本発明では、以下の態様も含む。〔7〕 式(11):[式中、A1は、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基またはピリジル基である置換または無置換芳香環を表し、 nはそれぞれ独立して、0または1を表し、 A2は、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基またはC3−7シクロアルキル基である置換または無置換環基を表す。]で表される化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分とする神経変性疾患または精神疾患の治療薬。〔8〕 式(1):[式中、A1は、C1−6アルキル基;ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;アダマンチル基;フェニルオキシカルボニル基;C1−6アルコキシカルボニル基;ベンゾイル基;またはC1−6アルキルカルボニル基を表し、 nは、0または1を表し、 Lは、−SO2−、−SO2−N(R1)−、−C(=O)−、または−C(=O)−N(R1)−を表し、 R1は、水素原子、またはC1−6アルキル基を表し、 A2は、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;またはアダマンチル基を表すが、但し 4−(4,5−ジクロロ−2−メチルフェニル)スルフォニルピペラジン−1−カルボン酸エチル、 1−(5−クロロ−2−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン、 1−(4−クロロ−3−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン、 1−(3−ベンジルオキシベンゾイル)−4−(2−ピリジル)ピペラジン、 N−シクロヘプチル−2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド、 N−シクロヘプチル−2−[4−(2−エトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド、 2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−(2−エトキシフェニル)アセトアミド、 1−(1−アダマンチル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン、および 2−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−シクロペンチルアセトアミド、並びに 上記非特許文献5および6に開示された化合物を除く。]で表される化合物またはその薬学上許容される塩。〔9〕 〔8〕の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分とする神経変性疾患または精神疾患の治療薬。〔10〕 上記〔1〕〜〔7〕および〔9〕のいずれかに記載の有効成分を治療が必要な哺乳動物に投与することを特徴とする、神経変性疾患または精神疾患の治療方法。〔11〕 神経変性疾患または精神疾患の治療に使用するための上記〔1〕〜〔7〕および〔9〕のいずれかに記載の有効成分。〔12〕 神経変性疾患または精神疾患の治療剤の製造における上記〔1〕〜〔7〕および〔9〕のいずれかに記載の有効成分の使用。 本発明に係る化合物は、TRPC3またはTRPC6チャンネルを直接活性化することによりBDNF様作用を示すと共に、BDNFと同様の神経突起伸展作用を示し、神経変性疾患および精神疾患の予防および/または治療に有用である。は、式(2)で表される化合物の試験例2の結果を示す。白色のカラムは-100 mV、黒色のカラムは+100 mV時の値であり、化合物投与後の電流値を化合物投与前の電流値と比較した相対値で示してある。投与前後の2群間で統計学的有意差(T検定、* P<0.05, *** P<0.001)が認められた。は、式(3)で表される化合物の試験例2の結果を示す。白色のカラムは-100 mV、黒色のカラムは+100 mV時の値であり、化合物投与後の電流値を化合物投与前の電流値と比較した相対値で示してある。投与前後の2群間で統計学的有意差(T検定、** P<0.01)が認められた。は、式(4)で表される化合物の試験例2の結果を示す。白色のカラムは-100 mV、黒色のカラムは+100 mV時の値であり、化合物投与後の電流値を化合物投与前の電流値と比較した相対値で示してある。投与前後の2群間で統計学的有意差(T検定、* P<0.05)が認められた。は、式(6)で表される化合物の試験例2の結果を示す。白色のカラムは-100 mV、黒色のカラムは+100 mV時の値であり、化合物投与後の電流値を化合物投与前の電流値と比較した相対値で示してある。投与前後の2群間で統計学的有意差(T検定、* P<0.05)が認められた。は、式(7)で表される化合物の試験例2の結果を示す。白色のカラムは-100 mV、黒色のカラムは+100 mV時の値であり、化合物投与後の電流値を化合物投与前の電流値と比較した相対値で示してある。投与前後の2群間で統計学的有意差(T検定、* P<0.05)が認められた。 以下に、本発明をさらに詳細に説明する。本明細書において「置換基」の定義における炭素の数を、例えば、「C1−6」などと表記する場合もある。具体的には、「C1−6アルキル」なる表記は、炭素数1から6のアルキル基と同義である。 本明細書において「基」なる用語は、1価基を意味する。例えば、「アルキル基」は、1価の飽和炭化水素基を意味する。また、本明細書における置換基の説明において、「基」なる用語を省略する場合もある。 また、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分または置換基である場合にも該当する。 「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。好ましくはフッ素原子または塩素原子が挙げられる。 「C1−6アルキル基」は、炭素数1〜6個を有する直鎖状もしくは分枝状の飽和炭化水素基を意味する。好ましくは、「C1−4アルキル基」である。「C1−6アルキル基」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。 「C3−7シクロアルキル基」は、3員〜7員の単環式の飽和炭化水素基を意味する。好ましくは、「C3−6シクロアルキル基」である。「C3−7シクロアルキル基」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。 「C1−6アルコキシ基」は前記「C1−6アルキル基」に酸素原子が結合した基を意味する。好ましくは、「C1−4アルコキシ基」である。「C1−6アルコキシ基」の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。 「C1−6アルキルカルボニル基」の「C1−6アルキル」部分は、前記「C1−6アルキル」と同義である。好ましくは、「C1−4アルキルカルボニル基」である。「C1−6アルキルカルボニル基」の具体例としては、例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ペンチルカルボニル、イソブチルカルボニル、またはブチルカルボニル等が挙げられる。 「C1−6アルコキシカルボニル基」の「C1−6アルコキシ」部分は、前記「C1−6アルコキシ」と同義である。好ましくは、「C1−4アルコキシカルボニル基」などが挙げられる。「C1−6アルコキシカルボニル基」の具体例としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル等が挙げられる。 式(1)で表される化合物において、A1はC1−6アルキル基;ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;アダマンチル基;フェニルオキシカルボニル基;C1−6アルコキシカルボニル基;ベンゾイル基;またはC1−6アルキルカルボニル基を表し、好ましくはハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;アダマンチル基;フェニルオキシカルボニル基;またはベンゾイル基のような環基を含む基を表し、より好ましくはハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;またはピリジル基を表す。 また、ここでピリジル基、C3−7シクロアルキル基、アダマンチル基、フェニルオキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、およびC1−6アルキルカルボニル基もフェニル基と同様に、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよい。 上記フェニル基等に置換されてもよい1〜3個の置換基は、好ましくは1または2個の置換基、より好ましくは1個の置換基で置換されていてもよい。 式(1)で表される化合物において、A2はハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;またはアダマンチル基を表し、好ましくはハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;またはC3−7シクロアルキル基を表し、より好ましくはハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;またはC3−7シクロアルキル基を表す。 また、ここでピリジル基;C3−7シクロアルキル基;またはアダマンチル基もフェニル基と同様に、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよい。 上記フェニル基等に置換されてもよい1〜3個の置換基は、好ましくは1または2個の置換基、より好ましくは1個の置換基で置換されていてもよい。 式(1)で表される化合物において、Lは−SO2−、−SO2−N(R1)−、−C(=O)−、または−C(=O)−N(R1)−を表し、好ましくは−C(=O)−、または−C(=O)−N(R1)−を表す。 R1は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表す。 式(1)で表される化合物の薬学上許容される塩としては、例えば無機酸または有機酸との塩が挙げられる。無機酸との塩の具体例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。有機酸との塩の具体例としては、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。本発明に係る化合物は、水和物等の溶媒和物の形態をとってもよい。 本発明に係る化合物は、公知化合物を原料として公知の合成方法を組み合わせることにより合成することができる。原料化合物として用いられる化合物は、それぞれ塩として用いてもよい。 式(1)で表される化合物のうち、nが0であり、Lが−C(=O)−である化合物は、例えば非文献文献5に記載されている方法等と同様の方法によって製造することができる。 式(1)で表される化合物のうち、nが1であり、Lが−C(=O)−N(R1)−であり、R1が水素原子またはC1−6アルキル基である化合物は、例えば文献(国際公開第2009/025625号)に記載されている方法等と同様の方法によって製造することができる。 後記式(2)〜(10)で表される化合物は、CAS(Chemical Abstracts Service)により、Reg No.:838865-46-6、Reg No.:915893-66-2、Reg No.:915880-51-2、Reg No.:896659-19-1、Reg No.:896202-54-3、Reg No.:885435-40-5、Reg No.:896203-18-2、Reg No.:886634-85-1、およびReg No.:885428-11-5でそれぞれ登録されており、入手可能である。 また式(5)で表される化合物は、国際公開第2009/143404号に記載されている方法によって製造することもできる。 尚、これらの反応は単なる例示であり、有機合成に習熟している者の知識に基づき、適宜、これらの例示に準じた方法や、他の方法で製造することもできる。 本発明に係る化合物は、不斉が生じる場合または不斉炭素を有する置換基を有する場合があり、そのような化合物にあっては光学異性体が存在する。本発明に係る化合物にはこれらの各異性体の混合物や単離されたものを含む。そのような光学異性体を純粋に得る方法としては、例えば光学分割法が挙げられる。 光学分割法としては、本発明に係る化合物またはその中間体を不活性溶媒中(例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;およびこれらの混合溶媒)、光学活性な酸(例えば、マンデル酸、N−ベンジルオキシアラニン、乳酸などのモノカルボン酸類;酒石酸、o−ジイソプロピリデン酒石酸、リンゴ酸などのジカルボン酸類;カンファースルフォン酸、ブロモカンファースルフォン酸などのスルフォン酸類)と塩を形成させて光学活性体を単離する方法が挙げられる。 塩を形成させる温度としては、室温から溶媒の沸点の範囲が挙げられる。光学純度を向上させるためには、一旦、溶媒の沸点付近まで温度を上げることが望ましい。析出した塩を濾取する前に必要に応じて冷却し、収率を向上させることができる。光学活性な酸またはアミンの使用量は、基質に対し約0.5〜約2.0当量の範囲、好ましくは1当量前後の範囲が適当である。必要に応じ結晶を不活性溶媒中(例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエ−テル等のエ−テル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトニトリル等およびこれらの混合溶媒)で再結晶し、高純度の光学活性な塩を得ることもできる。必要に応じ、得られた塩を通常の方法で酸または塩基と処理しフリー体を得ることもできる。 本発明に係る化合物は、TRPC6チャンネルおよび(または)TRPC3チャンネルを直接活性化し、ラット小脳由来顆粒細胞において、BDNFと同様の神経突起伸展作用を示した。従って、本発明に係る化合物は、神経突起伸展作用剤であり、BDNFが薬効を示すであろうと期待されている以下の疾患、即ち、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、レット症候群、外傷性脳損傷、脊髄損傷、多発性硬化症、老年性認知症、ALS、うつ病、双極性障害、統合失調症などの神経変性疾患および精神疾患の治療薬として有用である。 「末梢投与」は、本発明に係る化合物が中枢神経系に直接、例えば脳室内または髄腔内投与される投与経路の外、任意の投与経路を包含する。例えば、経口投与;経鼻投与;舌下投与;経皮的投与;点眼的投与;経肺投与;直腸内投与;硝子体内投与;腹腔内投与;静脈内投与;皮下投与;筋肉内投与;およびこれらの投与経路の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される経路によって投与される。 経口的に投与する場合、通常用いられる投与形態で投与することができる。経口剤または直腸投与剤としては、例えば、カプセル、錠剤、ピル、散剤、カシェ剤、坐剤、液剤等が挙げられる。注射剤としては、例えば、無菌の溶液または懸濁液等が挙げられる。局所投与剤としては、例えば、クリーム、軟膏、ロ−ション、経皮剤(通常のパッチ剤、マトリクス剤)等が挙げられる。 上記の剤形は通常の方法で、薬学的に許容される賦形剤、添加剤とともに製剤化される。薬学的に許容される賦形剤、添加剤としては、担体、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。 薬学的に許容される担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロ−ス、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。カプセルは、本発明に係る化合物を薬学的に許容される担体と共に中に入れることにより製剤できる。本発明に係る化合物は薬学的に許容される賦形剤と共に混合し、または賦形剤なしにカプセルの中に入れることができる。カシェ剤も同様の方法で製造できる。 注射用液剤としては、溶液、懸濁液、乳剤等が挙げられる。例えば、水溶液、水−プロピレングリコール溶液等が挙げられる。液剤は、水を含んでもよい、ポリエチレングリコールまたは/およびプロピレングリコールの溶液の形で製造することもできる。経口投与に適切な液剤は、本発明に係る化合物を水に加え、着色剤、香料、安定化剤、甘味剤、溶解剤、増粘剤等を必要に応じて加え製造することができる。また経口投与に適切な液剤は、本発明に係る化合物を分散剤とともに水に加え、粘重にすることによっても製造できる。増粘剤としては、例えば、薬学的に許容される天然または合成ガム、レジン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたは公知の懸濁化剤等が挙げられる。 局所投与剤としては、上記の液剤および、クリーム、エアロゾル、スプレー、粉剤、ローション、軟膏等が挙げられる。上記の局所投与剤は、本発明に係る化合物と通常に使用される薬学的に許容される希釈剤および担体と混合し製造できる。軟膏およびクリ−ムは、例えば、水性または油性の基剤に増粘剤および/またはゲル化剤を加えて製剤化して得られる。該基剤としては、例えば、水、液体パラフィン、植物油(ピーナッツ油、ひまし油等)等が挙げられる。増粘剤としては、例えばソフトパラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ラノリン、水素添加ラノリン、蜜蝋等が挙げられる。 ローションは、水性または油性の基剤に、一種類またはそれ以上の薬学的に許容される安定剤、懸濁化剤、乳化剤、拡散剤、増粘剤、着色剤、香料等を加えることができる。 散剤は、薬学的に許容される散剤の基剤と共に製剤化される。基剤としては、タルク、ラクトース、澱粉等が挙げられる。ドロップは水性または非水性の基剤と一種またはそれ以上の薬学的に許容される拡散剤、懸濁化剤、溶解剤等と共に製剤化できる。 局所投与剤は、必要に応じて、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、ベンズアルコニウムクロリド等の防腐剤、細菌増殖防止剤を含んでもよい。 本発明に係る化合物またはその塩は、神経変性疾患、精神疾患を患っている患者に対して投与できる。その際の、投与量、投与回数は症状、年齢、体重、投与形態等によって異なるが、経口投与する場合には、通常は成人に対し1日あたり約1〜約500mgの範囲、好ましくは約5〜約100mgの範囲を1回または数回に分けて投与することができる。注射剤として投与する場合には約0.1〜約300mgの範囲、好ましくは約1〜約100mgの範囲を1回または数回に分けて投与することができる。試験例1 以下の試験例に従って、本発明に係る化合物のTRPCチャンネル活性化能を評価した。TRPC3チャンネルを一過性に発現したHEK293細胞を用いた膜電位アッセイ 6ウェル プレートにHEK293細胞を2.5×105 細胞/2mL/ウェルで播きこみ、一晩培養した。培地は抗生物質不含10% FBS/MEMを用いた。マウスTRPC3チャンネル発現プラスミドをリポフェクション法で導入し、37℃で4〜6時間培養した。トリプシンで細胞を剥がし、10% FBS/MEMに懸濁し、384ウェル black/clear プレート(Greiner, Cat#781090)に5×103 細胞/0.02mL/ウェルで再度播きこみ、一晩培養した。培地を捨て、カルシウムを含まない20 mM Hepes/Hanks緩衝液(以下HH)で調製した膜電位測定試薬(Molecular Devices, FLIPR membrane potential assay kit BLUE Bulk format, Cat# R8034)を0.02mL/ウェル添加し、室温で1時間静置した。試験化合物を10μL/ウェル添加(注入速度:20μL/秒)し、FLIPRで経時的に蛍光強度測定した(Ex 515_545, Em 565_625 nm)。最大蛍光強度を最大膜電位変化量とし、その半分の変化量分を増加させる濃度をEC50値とした。TRPC6安定発現細胞株の取得 HEK293細胞にマウスTRPC6発現プラスミドをリポフェクション法で導入して、限外希釈法により複数のG418(400μg)耐性株を取得した。これらからTRPC6に共役するアセチルコリン受容体の活性化剤であるカルバコール、既知のTRPC6阻害剤である2−アミノエチルジフェニルボリナートに対する応答性が見られる細胞株を選抜した。TRPC6安定発現HEK293細胞株を用いた膜電位アッセイ マウスTRPC6安定発現HEK293細胞株を384ウェル black/clear プレート(Greiner, Cat#781090)に5×103細胞/20μL/ウェルで播きこみ、一晩培養した。HHで調製した膜電位測定試薬を20μL/ウェル添加し、室温で1時間静置した。試験化合物を10μL/ウェル添加(注入速度:20μL/秒)し、FLIPRで経時的に蛍光強度測定した(Ex 515_545, Em 565_625 nm)。最大蛍光強度を最大膜電位変化量とし、その半分の変化量分を増加させる濃度をEC50値とした。 以下に、試験を実施した本発明に係る化合物の名称と構造を示す。 4−(4,5−ジクロロ−2−メチルフェニル)スルフォニルピペラジン−1−カルボン酸エチル[後記式(2)で表される化合物] 1−(5−クロロ−2−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン[後記式(3)で表される化合物] 1−(4−クロロ−3−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン[後記式(4)で表される化合物] 1−(3−ベンジルオキシベンゾイル)−4−(2−ピリジル)ピペラジン[後記式(5)で表される化合物] N−シクロヘプチル−2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド[後記式(6)で表される化合物] N−シクロヘプチル−2−[4−(2−エトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド[後記式(7)で表される化合物] 2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−(2−エトキシフェニル)アセトアミド[後記式(8)で表される化合物] 1−(1−アダマンチル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン[後記式(9)で表される化合物] 2−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−シクロペンチルアセトアミド[後記式(10)で表される化合物] 試験例1の評価結果を以下に記す。試験例2電気生理学的アッセイによるTRPC6チャンネルの活性化能評価 電気生理学的アッセイはEPC−10(HEKA Elektronik, Lambrecht, Germany)パッチクランプアンプ(patch-clamp amplifier)を用いて22−25℃で実施した。 カバースリップ上に培養させたTRPC6安定発現HEK293細胞株を測定に使用した。TRPC6電流はホールセルパッチクランプ法の膜電位固定法にて測定した。細胞外液(120mM NaCl、5mM KCl、1.2 mM MgCl2、1mM CaCl2、10mMグルコース、10mM HEPES、NaOHでpH 7.4に調整)で満たされたバス内にカバースリップを設置し、顕微鏡観察下にてピペット内液(100mM CsOH、100mM アスパラギン酸、20mM CsCl、2mM MgCl2−6H2O、4mM CaCl2、10mM BAPTA、5mM HEPES、2mM ATP Na2、0.1mM GTP、CsOHでpH 7.2に調整)を充填したガラス微小電極を細胞に押し当てて、非常に高い抵抗状態を作り上げた後にそのパッチを破壊することでホールセルを形成した。ホールセル形成後、細胞を−60mVの電位に保持し、500msかけて−100mVから100mVまでのランプパルスを5秒間隔で与えた際に流れた電流を記録した。自発的に見られる活性が安定した後、10μMの化合物を細胞外からバス内に投与してTRPC6電流に与える効果を計測した。なお、明確なTRPC6電流活性作用が観察されなかった場合は化合物をウォッシュアウト後に100μMのカルバコールを投与し、TRPC6が発現していたことを確認した。 結果を図1〜5に示す。化合物添加後一定時間ランプパルスを与え、−100mV、100mV時に流れた電流変化の割合を、化合物添加前の変化率を1として相対的に算出した。試験例3初代培養ラット小脳由来神経細胞を用いた神経突起伸展 SDラット哺乳6日目(清水実験材料)を使用。(小脳神経細胞培養) ラットをエーテル麻酔、70%エタノール消毒後、小脳を摘出した。軟膜および血管を除いた後、PBSで洗浄し、2mm角に切り分けた。トリプシン、DNaseを処置した後、10%ウシ胎児血清を加えたDMEMに懸濁した。懸濁液をセルストレイナーにかけた後、26mM KCl/10%ウシ胎児血清/DMEMに希釈し、24ウェルプレート中のポリエチレンイミンコートしたガラスへ1.0×105細胞/ウェルとなるように播種した。4時間後、試験化合物またはBDNFを含む培地に交換し、24時間培養後パラホルムアルデヒド固定した。(神経突起伸長評価) 小脳神経細胞を化合物処置後24時間培養し、4%パラホルムアルデヒド/4%スクロース/PBS 固定液で固定した。PBSで洗浄した後、Triton X−100により膜透過処理を行った。洗浄後、1%BSA/PBSでブロッキングし、神経細胞のマーカーとして抗MAP2抗体を加えて4℃で一晩振盪した。洗浄後、2次抗体Alexa Fluor(登録商標) 488−抗マウスIgG、およびアクチン繊維を染めるAlexa546(登録商標) ファロイジンを加え室温で一時間振盪した。洗浄後、スライドガラス上に封入し、共焦点レーザー顕微鏡によって観察した。MAP2のシグナルが見られる細胞について、アクチン繊維のシグナルを指標に神経突起伸長を測定した。神経突起伸長は、1細胞あたりの神経突起全長を決定して評価した。 上記の試験において、神経突起伸展の平均長はコントロール群で45.1μmであったのに対し、BDNF(50ng/mL)添加群で64.8μm (Tテスト:P<0.01 vs コントロール)、化合物3(10nM)添加群で67.1μm(Tテスト:P<0.001 vs コントロール)であった。 本発明に係る化合物は、TRPC3またはTRPC6チャンネルを直接活性化することによりBDNF様作用を示すので、神経変性疾患および精神疾患の予防および/または治療に有用である。 式(1):[式中、A1は、C1−6アルキル基;ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;アダマンチル基;フェニルオキシカルボニル基;C1−6アルコキシカルボニル基;ベンゾイル基;またはC1−6アルキルカルボニル基を表し、nは、0または1を表し、Lは、−SO2−、−SO2−N(R1)−、−C(=O)−、または−C(=O)−N(R1)−を表し、R1は、水素原子、またはC1−6アルキル基を表し、A2は、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;C3−7シクロアルキル基;またはアダマンチル基を表す。]で表される化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分とする神経変性疾患または精神疾患の治療薬。 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;アダマンチル基;またはC1−6アルコキシカルボニル基であり、A2が、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;またはC3−7シクロアルキル基である、請求項1記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基であり、nが1であり、Lが−C(=O)−N(R1)−であり、R1が水素原子であり、A2が、C1−6アルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基;またはC3−7シクロアルキル基である、請求項1記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;ピリジル基;アダマンチル基;またはC1−6アルコキシカルボニル基であり、nが0であり、Lが、−SO2−、または−C(=O)−であり、A2が、ハロゲン原子、C1−6アルキル、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基である、請求項1記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。 A1が、ハロゲン、C1−6アルキル、およびC1−6アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基;またはピリジル基であり、nが0であり、Lが−C(=O)−であり、A2が、ハロゲン原子、C1−6アルキル、およびベンジルオキシからなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいフェニル基である、請求項1記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。 4−(4,5−ジクロロ−2−メチルフェニル)スルフォニルピペラジン−1−カルボン酸エチル、 1−(5−クロロ−2−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン、 1−(4−クロロ−3−メチルフェニル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン、 1−(3−ベンジルオキシベンゾイル)−4−(2−ピリジル)ピペラジン、 N−シクロヘプチル−2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド、 N−シクロヘプチル−2−[4−(2−エトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド、 2−[4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−(2−エトキシフェニル)アセトアミド、 1−(1−アダマンチル)−4−(3−フルオロベンゾイル)ピペラジン、もしくは 2−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−N−シクロペンチルアセトアミド、またはその薬学上許容される塩を有効成分とする、請求項1記載の神経変性疾患または精神疾患の治療薬。 【課題】BDNF様作用を有する末梢投与可能な低分子化合物を有効成分として含む神経変性疾患治療薬および精神疾患治療薬を提供する。【解決手段】式(1)[式中、A1はフェニル基、ピリジル基、アダマンチル基、C1−6アルコキシカルボニル基等を表し;nは0または1を表し;Lは−C(=O)−N(R1)−等を表し;R1は水素原子またはC1−6アルキル基を表し;A2はフェニル基、C3−7シクロアルキル基等を表す。]で表される化合物もしくはそれらの薬学上許容される塩を有効成分とする神経変性疾患および精神疾患の治療薬。【選択図】なし