タイトル: | 公開特許公報(A)_加硫ゴム中の遊離硫黄の定量方法 |
出願番号: | 2011228090 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 31/00,G01N 33/44,G01N 30/06,G01N 30/88,G01N 30/86,G01N 27/62 |
久家 克明 JP 2013088253 公開特許公報(A) 20130513 2011228090 20111017 加硫ゴム中の遊離硫黄の定量方法 キヤノン株式会社 000001007 阿部 琢磨 100126240 黒岩 創吾 100124442 久家 克明 G01N 31/00 20060101AFI20130416BHJP G01N 33/44 20060101ALI20130416BHJP G01N 30/06 20060101ALI20130416BHJP G01N 30/88 20060101ALI20130416BHJP G01N 30/86 20060101ALI20130416BHJP G01N 27/62 20060101ALN20130416BHJP JPG01N31/00 PG01N33/44G01N30/06 ZG01N30/88 CG01N30/86 JG01N31/00 YG01N27/62 V 2 OL 8 2G041 2G042 2G041CA01 2G041EA06 2G041FA07 2G041LA08 2G042AA01 2G042BA08 2G042CA07 2G042CB06 2G042EA01 2G042EA03 2G042FA20 2G042FB02 本発明は、加硫ゴム中の遊離硫黄の定量方法に関するものである。 加硫ゴム中には、ゴムの架橋反応に寄与していない未反応の硫黄、すなわち遊離硫黄が含まれている。遊離硫黄は、例えばゴム材料と接する金属部分を腐食させることがあるため、加硫ゴム中の遊離硫黄量を制御する必要がある。一般に加硫ゴム中の遊離硫黄の定量は、アセトン等の有機溶剤を用いて加硫ゴム試料中の遊離硫黄を連続抽出し、得られた抽出液に含まれる硫黄分を定量することで行われる。 加硫ゴム試料の遊離硫黄の定量方法としては非特許文献1に臭素法,亜硫酸ナトリウム法,銅網法の3種類の方法が規定されている。例えば、臭素法は遊離硫黄の抽出液を一度溶媒留去して得られた抽出物に臭素と水とを加えて加熱後、過剰の塩化バリウム溶液を加えて硫酸バリウムを沈殿させ、この硫酸バリウムの質量を秤量する方法である。 また、特許文献1では、遊離硫黄成分の抽出後に臭素もしくは過酸化水素水を加え、一定時間酸化することで硫酸イオンに変換した後、細管式電気泳動装置を用いて硫酸イオン量を定量する方法が開示されている。特開昭60−169754号公報JIS−K6350(ゴム製品分析方法 遊離硫黄の定量) しかし、上記非特許文献1に記載の従来例では遊離硫黄成分の抽出後にいずれも煩雑な分析前処理と熟練を要する方法であるため、定量に時間と手間がかかるという問題点があった。 また、特許文献1に記載の方法では遊離硫黄成分の抽出後の分析前処理工程が少なく、より簡便な定量方法として発明が開示されているが、抽出物に対して臭素もしくは過酸化水素水の試薬を用いた前処理を行う必要がある。更に分析の際に過剰な臭素もしくは過酸化水素を取り除く作業も必要である。したがって、複数の試料を同時に連続抽出を行ってスループットを高めようとした場合、分析前処理が必要となる為、分析前処理によって定量作業が律速されるという問題点があった。 本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、簡易にかつ迅速に加硫ゴム中の遊離硫黄を定量する方法を提供するものである。 上記の課題を解決する加硫ゴム中の遊離硫黄の定量方法は、ホスフィン化合物を含有する有機溶剤を用意する工程と、前記有機溶剤を用いて前記加硫ゴム中の遊離硫黄を連続抽出して、ホスフィン化合物の硫化物を含む抽出溶液を得る工程と、前記抽出溶液に含まれるホスフィン化合物の硫化物をクロマトグラフィーにより分離する工程と、分離された前記ホスフィン化合物の硫化物を定量する工程とを有することを特徴とする。 本発明によれば、簡易にかつ迅速に加硫ゴム中の遊離硫黄を定量する方法を提供することができる。実施例1の標準試料により作成した検量線を元にトリフェニルホスフィンスルフィドの定量を説明するグラフである。実施例2の標準試料により作成した検量線を元にNBRゴム中の遊離硫黄を定量するために、生成したトリフェニルホスフィンスルフィドの定量を説明するグラフである。実施例3の標準試料により作成した検量線を元にヒドリンゴム中の遊離硫黄を定量するために、生成したトリフェニルホスフィンスルフィドの定量を説明するグラフである。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 本発明に係る加硫ゴム中の遊離硫黄の定量方法は、ホスフィン化合物を含有する有機溶剤を用意する工程と、前記有機溶剤を用いて前記加硫ゴム中の遊離硫黄を連続抽出して、ホスフィン化合物の硫化物を含む抽出溶液を得る工程と、前記抽出溶液に含まれるホスフィン化合物の硫化物をクロマトグラフィーにより分離する工程と、分離された前記ホスフィン化合物の硫化物を定量する工程とを有することを特徴とする。 ここで、遊離硫黄とは加硫ゴム中に含まれる、架橋反応に寄与していない硫黄分のことである。 本発明の定量方法を用いれば、加硫ゴム中の遊離硫黄を有機溶剤で抽出する工程と同時に遊離硫黄とホスフィン化合物を反応させる事ができるため、連続抽出の工程の後、分析前処理無しに、前記ホスフィン化合物の硫化物を定量することで簡易にかつ迅速に遊離硫黄を定量することができる。例えば、複数の試料を同時に連続抽出を行った場合、分析前処理の必要はなく、そのまま抽出液を分析装置にかけることができるため、容易にスループットを高めることができる。 本発明の定量方法においては、まず、加硫ゴム試料中の遊離硫黄の抽出に用いる有機溶剤にホスフィン化合物を添加して、ホスフィン化合物を含有する有機溶剤を用意する。 硫黄は斜方硫黄、単斜硫黄であるS8のほか、Sxで表されるゴム状硫黄など様々な分子状態を取りうる事から、直接硫黄成分を分析する事が困難である。ホスフィン化合物は硫黄と速やかに反応し、単一生成物であるホスフィン化合物の硫化物を生成する。この性質を用い、ホスフィン化合物と遊離硫黄が反応して生成するホスフィン化合物の硫化物の濃度を計測する事で、加硫ゴム試料を抽出した有機溶剤中に含まれる遊離硫黄の濃度を容易に求める事ができる。 さらに有機溶剤に添加するホスフィン化合物として、置換基を有していてもよいトリフェニルホスフィンが好ましい。一般的に常温で液体のホスフィン化合物は特有の臭いがあるため、取り扱いが煩雑になるが、本発明に用いる置換基を有していてもよいトリフェニルホスフィンは常温で固体であり揮発しないため、臭いも無く、取り扱いが容易になる。また後述の連続抽出の工程で、抽出の為の有機溶剤と共にホスフィン化合物が揮発することで、加硫ゴム試料自体とホスフィン化合物が反応することで生じる分析誤差も防ぐことができる。 置換基を有していてもよいトリフェニルホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、またはリン原子に結合する3つのフェニル基の少なくとも1つが置換基を有するトリフェニルホスフィンが挙げられる。置換基は同じでもそれぞれ異なる置換基でもよい。置換基を有していてもよいトリフェニルホスフィンには、例えばトリフェニルホスフィン、トリメシチルホスフィン、トリス(3−スルホフェニル)ホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィン、メシチルジフェニルホスフィン、(2−ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィン、(2−ブロモフェニル)ジフェニルホスフィン、(2−スルファニルフェニル)ジフェニルホスフィン、トリス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジヒドロキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(4−メチルフェニル)(ジフェニル)ホスフィンなどが例示される。また、有機溶剤に添加するホスフィン化合物の量としては、遊離硫黄量に対して過剰に加える事が望ましい。例えば加硫ゴム作成時に添加された硫黄量から、加硫に消費された後に遊離すると予測される硫黄原子のモル数を計算し、それに対して過剰量のホスフィン化合物の量を算出しても良い。 抽出に用いる有機溶剤は、遊離硫黄が抽出できる溶媒であれば特に限定は無く、例えばJIS K 6229にゴム剤の種類に応じて推奨される抽出溶媒が記載されている有機溶剤を用いることができる。具体的には、メタノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサンといった有機溶剤をゴム剤の種類に応じて好適に用いることができる。 次に、このようにして調整された有機溶剤を用いて加硫ゴムを連続抽出する工程を説明する。 連続抽出方法としては既知の種々の方法を用いることができ、例えば、ソックスレー抽出法を好ましく用いることができる。ソックスレー抽出を行う場合は、加温された有機溶剤が一旦気化した後に再度液化して抽出溶媒として作用することから、用いられる有機溶剤の沸点以上の温度で加温を行うことが好ましい。分析する加硫ゴム試料は抽出効率を上げる為に細かく裁断し、重さを精秤したのち、円筒ろ紙に入れる。抽出時間は、特に制限はないが、好ましくは8時間前後が望ましい。また予め、抽出される遊離硫黄量が定常状態になる抽出時間を求める事で、抽出時間を決めても良い。 連続抽出過程において、加硫ゴム中の遊離硫黄が有機溶剤中に抽出されると同時に、有機溶媒中のホスフィン化合物と反応することで、ホスフィン化合物の硫化物を含む抽出溶液が得られる。 このようにして得られた抽出溶液は分析用試料としてそのまま機器分析装置にかけることもできるし、また、所望の有機溶剤で適宜希釈してホスフィン化合物の硫化物の濃度を調整して分析用試料とすることができる。 得られた抽出溶液に含まれる複数の成分の中から、ホスフィン化合物の硫化物を分離するためにはクロマトグラフィーが用いられる。クロマトグラフィーとしては、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーを用いることができる。さらに液体クロマトグラフィーとしては、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いることができる。これらの機器装置は一般的に広く普及している機器装置であり、操作も簡易である。オートサンプラーを備える事で、複数の試料を自動的に分析する事ができ、スループットを高める事も容易である。 このようにして、抽出溶液に含まれる複数の成分の中から分離されたホスフィン化合物の硫化物は、各種検出装置で検出できる。検出装置としては液体クロマトグラフィーを用いる場合、質量分析装置、UV−VIS検出器、屈折率検出器、ガスクロマトグラフィーの場合は質量分析装置、熱伝導度型検出器、水素炎イオン化型検出器といった一般的に用いられる検出器が広く使用できる。 定量は抽出溶液をクロマトグラフィーにかけ、検出装置で検出し、横軸がカラムのリテンションタイム、縦軸がピーク強度として出力されるピークの内、用いたホスフィン化合物の硫化物に帰属されるピークの強度もしくは面積値を読み取る事によって行われる。その際、ピークの帰属は、別途本分析に用いたホスフィン化合物の硫化物を同様の条件で分析し、予めリテンションタイムを求める事で容易に帰属することができる。また、事前に本分析に用いたホスフィン化合物の硫化物の種々の濃度の溶液(標準試料溶液)を機器分析装置にかけ、前記ホスフィン化合物の硫化物の量とピーク強度もしくは面積値の関係を示す検量線を作成しておくことで、未知分析試料のピーク強度もしくは面積値からホスフィン化合物の硫化物量を算出することができる。このホスフィン化合物の硫化物量から硫黄量を計算する事で、簡易に遊離硫黄量を求める事ができる。 (実施例1) アセトン5mlに硫黄700μgを溶解した液を遊離硫黄の抽出溶液とした。硫黄のモル数に対して過剰量のトリフェニルホスフィン(11.703mg)を抽出溶液に加え、2時間加熱還流した。得られた溶液をアセトンを用いて正確に10mlに希釈し、アセトンで精確に100倍希釈する事でモデル分析試料とした。 検量線作成用の標準試料としては、市販のトリフェニルホスフィンスルフィドを用いて濃度の異なる3つのアセトン溶液を調整した。GC−MS(サーモフィッシャー社製TRQACE ITQ1100)を用いて分析したところ、各々の標準試料において、リテンションタイム約14.7分にトリフェニルホスフィンスルフィドに帰属されるピークが観測された。各々の標準試料においてトリフェニルホスフィンスルフィドに帰属されるピークの面積値を求め、縦軸がピーク面積、横軸がトリフェニルホスフィンスルフィドの濃度として、原点を含め4点のデータから検量線を作成したところ直線関係が得られた。その結果を図1に示す。 次に、上記モデル分析試料の溶液をGC−MSを用いて分析したところ、リテンションタイム14.7分にトリフェニルホスフィンスルフィドに帰属されるピークが観測された。このピーク面積の値は2968565であった。上記の予め作成した検量線を用いてトリフェニルホスフィンスルフィド(SPPh3)の濃度換算したところ、62.9ug/10mlであった。その結果を図1に示す。 上記モデル試料において、加えた硫黄量から算出された硫黄濃度は64.3ug/10mlであり、本実施例を用いて定量した結果と一致した。 (実施例2) 硫黄加硫されたNBRゴム1.18gを細かく裁断し、ソックスレ−抽出器用円筒ろ紙に充填し、メタノールにトリフェニルホスフィン121mgを溶解した溶液を用いて8時間連続抽出を行った。得られた抽出液の体積を測ったところ81.0mlであった。分析には抽出液をそのまま用いた。 検量線作成用の標準試料としては、市販のトリフェニルホスフィンスルフィドを用いて濃度の異なる3つのメタノール溶液を調整し、実施例1と同様、原点を含め4点のデータから検量線を作成した。その結果を図2に示す。 実施例1と同様に、抽出液中のトリフェニルホスフィンスルフィド量をGC−MSを用いて分析した。トリフェニルホスフィンスルフィドに帰属されるピークのピーク面積の値は14052072であった。上記の予め作製した検量線を用いて算出したトリフェニルホスフィンスルフィド量は0.156mg/10mlであった。その結果を図2に示す。従って、前記の抽出液全体に含まれるトリフェニルホスフィンスルフィド量は1.26mgであった。トリフェニルホスフィンスルフィドの分子量294.35、硫黄の原子量32.06として、加硫ゴム中の遊離硫黄量を算出すると、0.14mgであった。この結果から、加硫ゴム中の遊離硫黄濃度はゴム量に対して0.012 wt%であると簡便に求めることができた。 (実施例3) 硫黄加硫されたヒドリンゴム1.19gを細かく裁断し、ソックスレ−抽出器用円筒ろ紙に充填し、アセトンにトリフェニルホスフィン123mgを溶解した溶液を用いて、8時間連続抽出を行った。得られた抽出液の体積を測ったところ101.5 mlであった。 実施例2と同様の操作により抽出液中のトリフェニルホスフィンスルフィド量をGC−MSを用いて分析した。トリフェニルホスフィンスルフィドに帰属されるピークのピーク面積の値は19145266であった。実施例2で作製した検量線を用いて算出したトリフェニルホスフィンスルフィド量は0.213mg/10mlであった。その結果を図3に示す。従って、前記の抽出液全体に含まれるトリフェニルホスフィンスルフィド量は2.16mgであった。実施例2を同様の計算を行うことで、加硫ゴム中の遊離硫黄濃度はゴム量に対して0.020 wt%であると簡便に求めることができた。 以上のように本発明の定量方法は、特別な技術の必要なく簡便かつ短時間で加硫硫黄中の遊離硫黄量を求める事ができることが認められた。 本発明の定量方法は、簡易にかつ迅速に加硫ゴム中の遊離硫黄を定量する方法に利用することができる。 加硫ゴム中の遊離硫黄を定量する方法であって、ホスフィン化合物を含有する有機溶剤を用意する工程と、前記有機溶剤を用いて前記加硫ゴム中の遊離硫黄を連続抽出して、ホスフィン化合物の硫化物を含む抽出溶液を得る工程と、前記抽出溶液に含まれるホスフィン化合物の硫化物をクロマトグラフィーにより分離する工程と、分離された前記ホスフィン化合物の硫化物を定量する工程とを有することを特徴とする加硫ゴム中の遊離硫黄の定量方法。 前記ホスフィン化合物が、置換基を有していてもよいトリフェニルホスフィンであることを特徴とする請求項1に記載の定量方法。 【課題】 簡易にかつ迅速に加硫ゴム中の遊離硫黄を定量する方法を提供する。【解決手段】 ホスフィン化合物を含有する有機溶剤を用意する工程と、前記有機溶剤を用いて前記加硫ゴム中の遊離硫黄を連続抽出して、ホスフィン化合物の硫化物を含む抽出溶液を得る工程と、前記抽出溶液に含まれるホスフィン化合物の硫化物をクロマトグラフィーにより分離する工程と、分離された前記ホスフィン化合物の硫化物を定量する工程とを有する加硫ゴム中の遊離硫黄の定量方法。【選択図】 なし