タイトル: | 公開特許公報(A)_分注ノズルの洗浄方法、洗浄装置及びそれを搭載した分析装置 |
出願番号: | 2011191252 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 35/10 |
野島 彰紘 谷口 伸一 深谷 康太 赤松 直俊 草野 和美 石澤 宏明 JP 2013053889 公開特許公報(A) 20130321 2011191252 20110902 分注ノズルの洗浄方法、洗浄装置及びそれを搭載した分析装置 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 井上 学 100100310 戸田 裕二 100098660 岩崎 重美 100091720 野島 彰紘 谷口 伸一 深谷 康太 赤松 直俊 草野 和美 石澤 宏明 G01N 35/10 20060101AFI20130222BHJP JPG01N35/06 F 13 3 OL 13 2G058 2G058FB06 2G058FB07 2G058FB15 本発明は、分注ノズルの洗浄方法、洗浄装置及び前記洗浄装置を搭載した分析装置に関する。 医療診断用の臨床検査においては、血液や尿などの生体検体中のタンパク、糖、脂質、酵素、ホルモン、無機イオン、疾患マーカー等の生化学分析や免疫学的分析を行う。臨床検査では、複数の検査項目を信頼度高く、かつ高速に処理する必要があるため、その大部分を自動分析装置で実行している。 自動分析装置としては、例えば、血清や尿等の検体に所望の試薬を混合して反応させた反応溶液を分析対象とし、その吸光度を測定することで生化学分析を行う生化学分析装置が知られている。この種の生化学分析装置は、検体及び試薬を収納する容器、検体及び試薬を注入する反応セルを備え、検体及び試薬を反応セルに自動注入する分注ノズルを備えた分注機構と、反応セル内の検体及び試薬を混合する攪拌棒を持つ自動攪拌機構、反応中又は反応が終了した検体の吸光度を計測する機構、計測終了後の反応溶液を吸引・排出し反応セルを洗浄する自動洗浄機構等を備えている(例えば特許文献1)。近年の自動分析装置への要求としては、検体及び試薬の微量化、測定の高感度化がある。 自動分析装置では、同一の分注ノズルにより多数の検体及び試薬を次々と分注することが一般的である。例えば検体分注ノズルは、採血管などの検体を収納する容器から所定量の検体を分取して、試薬を反応させる反応セルに検体を吐出する。試薬分注ノズルは、試薬を収納する容器から分取した所定量の試薬を検体反応セルへ吐出する。 この際、分注ノズル表面に残留した被分注液体の成分が次の被分注液体に混入すると測定結果に影響を及ぼす場合がある。こうした残留成分の影響を低減し、分注ノズル表面の清浄度を上げることで、微量化・高感度化へ向けて、分析の信頼性を向上出来る。 分注ノズル表面の清浄度を上げる方法としては、従来、純水や界面活性剤を含む洗剤による洗浄が実施されてきた(特許文献2)。しかし、こうした方法ではタンパク質に代表される検体中の生体高分子の洗浄が困難な場合がある。また、純水や界面活性剤を含む洗剤による洗浄でより大きな洗浄効果を上げるためには、洗浄時間を長くする必要があり、分析スループットの低下を招いてしまうという欠点があった。 純水や界面活性剤を含む洗剤による洗浄を強化する以外にも、使い捨て可能なディスポーザブルノズル(ディスポーザブルティップ)を使用する方法が分注ノズル表面を清浄に保つ方法として知られている。この方法は、分注ノズルを使い捨てにして利用することで、課題を回避する方法である。ただし、同一の分注ノズルを繰返し使用する場合と比較して、ランニングコストがかかり、また、使用後の分注ノズルを大量に廃棄する必要がある、といった課題が残る。また、ディスポーザブルノズルは樹脂により作成されることが一般的であるため、強度、加工精度の観点から、微細な構造を形成することは難しい。 他にも、分注ノズルの表面を低表面エネルギーの樹脂で被覆する表面処理法により、分注ノズル表面を清浄に保つ方法も提案されている(特許文献3)。この方法では、低エネルギー表面を形成することで、被分注液体自体を付着しにくくし、それにより生体由来高分子の残存量を低減することを狙っている。 確かにこの方法によって、ノズル表面の液体に対する静的接触角を大きくすることは出来る。しかし、静的接触角が大きいことは、必ずしも液体の残存を防止する効果が大きいことを意味するわけではないことが広く知られている。これは、液体の残存しやすさや転落しやすさといった表面での液体の動的な挙動に関係した因子は、静的接触角に加えて、表面粗さなどにも大きく影響されるためである(非特許文献1)。特許第1706358号公報特開2007−85930号公報特開2000−329771号公報Thin Solid Films, 351, pp.279-283 (1999) 被分注液体に含まれるタンパク質などの生体高分子は分注ノズル表面に吸着する。これが、分析信頼性を向上する上での課題となる。分析信頼性向上のために,現状広く用いられている純水や界面活性剤を含む洗剤による洗浄を強化する方法をとる場合には,分析スループットの低下が避けられない。 本発明の目的は、表面の清浄度を上げながらスループットの低下を抑えた自動分析装置用分注ノズルの洗浄方法、洗浄装置、及びそれを用いた自動分析装置を提供することである。 本発明では、洗浄機構によりプラズマを発生させ、分注ノズルの外側表面をプラズマにより洗浄することで、分注ノズル表面に残存したタンパク質などの生体由来高分子などの残存を低減し、上記の課題を解決する。 本発明によれば、スループットの低下を抑え、かつ分注ノズル表面の清浄度を上げることで分析信頼性の向上を実現するノズル洗浄技術を提供することができる。本発明の一実施例にかかる自動分析装置の構成例を示す概略図である。本発明の一実施例にかかる分注ノズルの断面図である。本発明の一実施例にかかる洗浄槽の概略図である。本発明の一実施例にかかる洗浄槽の断面図である。本発明の一実施例にかかるノズルのXPSの結果を示す図である。本発明の一実施例にかかる洗浄槽の概略図である。本発明の一実施例にかかる洗浄槽の断面図である。本発明の一実施例にかかる洗浄槽の断面図である。本発明の一実施例にかかる洗浄槽の断面図である。 本発明の実施の形態について、実施例を、図面を参照しながら以下に説明する。本発明を実施例により詳細に説明をするが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。 本発明に係る第一の実施の形態について説明する。ここで、図1は自動分析装置の一例を示したものである。まず、これを用いて、自動分析装置の基本動作を述べる。検体収納部機構1には、一つ以上の検体容器25が配置されている。ここでは、ディスク状の機構部に搭載された検体収納部機構である検体ディスク機構の例で説明するが、検体収納部機構の他の形態としては自動分析装置で一般的に用いられている検体ラック又は検体ホルダー状の形態であってもよい。またここで言う検体とは、反応容器で反応させるために使用する被検査溶液のことを指し、採集検体原液でもよく、またそれを希釈や前処理等の加工処理をした溶液であってもよい。検体容器25内の検体は、検体供給用分注機構2の検体用分注ノズル27によって抽出され、所定の反応容器に注入される。試薬ディスク機構5は、多数の試薬容器6を備えている。また、機構5には、試薬供給用分注機構7が配置されており、試薬は、この機構7の試薬用分注ノズル28によって、吸引され所定の反応セルに注入される。これら分注ノズル27、28の材料には、加工性の良さ、耐腐食性などの観点からステンレススチールなどが広く用いられている。分光光度計10、26は集光フィルタつき光源であり、分光光度計10と集光フィルタつき光源26の間に、測定対象を収容する反応ディスク3が配置される。この反応ディスク3の外周上には、例えば、120個の反応セル4が設置されている。また、反応ディスク3の全体は、恒温槽9によって、所定の温度に保持されている。11は反応セル洗浄機構であり、洗浄剤容器13から洗浄剤が供給され、セル内の吸引は吸引ノズル12で行う。 19はコンピュータ、23はインターフェース、18はLog変換器及びA/D変換器、17は試薬用ピペッタ、16は洗浄水ポンプ、15は検体用ピペッタである。また、20はプリンタ、21は表示装置、22は記憶装置としてのフロッピー(登録商標)ディスクやハードディスク、24は操作パネルである。検体ディスク機構は駆動部100により、試薬ディスク機構は駆動部101により、反応ディスクは駆動部102により、それぞれインターフェースを介して制御並びに駆動されている。また自動分析装置の各部はインターフェースを介してコンピュータ19により制御される。 上述の構成において、操作者は、操作パネル24を用いて分析依頼情報の入力を行う。操作者が入力した分析依頼情報は、マイクロコンピュータ19内のメモリに記憶される。検体容器25に入れられ、検体収納部機構1の所定の位置にセットされた測定対象検体はマイクロコンピュータ19のメモリに記憶された分析依頼情報に従って、検体ピペッタ15及び検体供給用分注機構2の検体用分注ノズル27によって、反応セルに所定量分注される。検体用分注ノズル27は洗浄され、次の検体の分注に使用される。分注ノズルの先端は中空の筒上の形状が広く用いられている。図2に分注ノズル先端の断面図を示す。201が分注ノズル本体部、202が分注ノズル中空部である。 ここで、自動分析装置に洗浄槽103を設置する。洗浄槽103の詳細な構造を図3に示す。この洗浄槽は、絶縁体部301とその外周を覆う導体部302を持つ。導体部302は絶縁体部301に密着している。洗浄絶縁体301の材料としては、例えば、ガラスなどを用いることが出来る。外周を覆う導体302には、例えば、銅などを用いることが出来る。この導体部302は交流電源303に接続されている。 プラズマ洗浄を行う際には分注ノズル304の表面は接地され、導体部302の表面との間に交流電源303により電圧がかけられる。これにより、導体部302と分注ノズル304表面で放電が起きれば、洗浄槽内においてプラズマが発生する。この発生したプラズマにより分注ノズル304の表面洗浄を行う。ここで、分注ノズル304の材料としては、上に述べた様に、ステンレススチールなどの導電性を持つ金属材料が広く用いられているため、分注ノズル304自体を放電のための電極として用いることが出来る。 分注ノズル304は、例えば、洗浄槽上方から洗浄槽に対して下降し、洗浄槽内でプラズマ洗浄が行われ、再び上昇する。洗浄槽で分注ノズルを洗浄する際、分注ノズル304は停止していてもよいし、下降または上昇動作中に洗浄を行っても良い。 効率よく放電を起こすためには、導体部302と分注ノズル304は対向していることが望ましい。先に述べたように、分注ノズル304は中空の円筒形状である場合が多く、その場合、導体部302もこれと対向するように、円筒形状とすることが考えられる。 洗浄槽の詳細について、図4を用いて説明する。図4は、図3に示した洗浄槽の断面図である。401は絶縁体部、402はその外周を覆う導体部、403は交流電源、404は分注ノズルを示している。先に述べた通り、分注ノズル404の表面は接地され、導体部402との間に交流電源403により電圧がかけられることで放電を起こし、プラズマを発生し、分注ノズル404の表面が洗浄される。分注ノズル404側に交流電源を接続し、導電部402側を接地としてもよい。また、ノズルには、静電容量検知により液面を検知する液面検知機構(図示せず)が接続されているが、これの故障を防ぐために、プラズマ発生時には、液面検知機構への電気的接続を外すようにしてもよい。 我々は検討の結果、洗浄中における、分注ノズル404に対する導体部402の位置関係が、洗浄効果に重要な影響を持つことを見出した。具体的には、導体402の下端部よりも分注ノズル404の先端がより下側に来た状態(すなわち、分注ノズル404が導体部402の円筒形状を軸方向に貫通した状態)で洗浄を行うことで著しく洗浄効率が向上した。また、分注ノズル404が絶縁体401及び導体部402の中心部付近にくることで洗浄効率が著しく向上した。 こうした分注ノズル位置で、プラズマ洗浄を行うことが望ましいとの結論は、以下の検討結果に基づく。 分注ノズル404の先端が導体部402の下端部よりも上部にある状態で放電を行ったところ、分注ノズル404の先端―導体部402間でのストリーマ放電と呼ばれる現象が観測された。この現象は、これは分注ノズル404の先端部が鋭利であるため、分注ノズル404の先端に電界集中した状態で放電が起こったためであると考えられる。ストリーマ放電が発生した場合には分注ノズル404の表面に対し、十分な洗浄効果が得られなかった。 加えて、分注ノズル404が絶縁体部401の中心部から外れた位置で放電した場合にも同様に強い電界が発生し、ストリーマ放電が発生した。そこで、導体部402の下端部よりも分注ノズル404の先端がより下側に来るように分注ノズル404を停止させ、また、分注ノズル404が絶縁体部402の中心部付近で停止し、放電を行ったところ、分注ノズル404の先端部表面全体に放電が発生し、十分な洗浄効果を得ることが出来た。 上記のプラズマ洗浄法を用いて、分注ノズルの洗浄を行った具体的な結果の一例を示す。実験はウシ血清アルブミン2.5mg/mlリン酸緩衝溶液を繰返し分注後に水洗を行い、洗浄を行った分注ノズルに対して、上記のプラズマ洗浄法により洗浄を行った。プラズマ洗浄のための放電は、交流電源の電圧4.5kV、交流電源の周波数20kHz、洗浄時間1秒間の条件で行った。比較のため、純水洗浄のみを行った分注ノズルについても分析を行った。これらの分注ノズル表面に残存するBSAの量は、X線光電子分光法(XPS)により分析した。XPSの測定はPHI社製QuanteraSXMで行った。X線源としては単色化Al(1486.6eV)を用いた。検出領域は100μmΦとし、光電子の取り出し角は45°とした。 XPSの窒素原子(N)1sスペクトルにおいて、BSAに含まれているアミン、アミドに帰属されるピークが、結合エネルギー400eV付近に現れる。従って、分注ノズル表面に残存したタンパク質量は、N1sスペクトルのピーク強度により定量分析が可能である。そこで、BSA残存量をプラズマ洗浄の有無で比較するため、それぞれの分注ノズルに対して、XPS N1sスペクトルの測定を行った。測定条件は、結合エネルギー393〜408eV、エネルギーステップ0.1eVとした。測定結果を図5に示す。 純水洗浄のみを行った分注ノズルのXPS N 1sスペクトルを501に、プラズマ洗浄を1秒間行った分注ノズルのスペクトルを502にそれぞれ示す。 純水洗浄のみを行った分注ノズルに対するスペクトル501では、結合エネルギーが400eV付近にピークが検出された。これは、タンパク質中のアミン、アミドに由来するものであり、純水洗浄だけでは、分注ノズル表面にBSAが残存していることが分かる。これに対し、プラズマ洗浄を行ったものは、もピークが本測定の検出下限以下となっていることが分かる。本測定の検出下限値を考えると、BSAは純水洗浄のみを行ったものに対し、4%以下となっていると考えられる。 このようにXPS分析において、N 1sのピークが検出下限以下となったことは、以下の様に説明することが出来ると考えられる。本洗浄法では、発生したプラズマによる活性種である気体分子や、励起されたガスから放出される紫外線などにより分注ノズル表面のBSAが分解される。加えて、それらの分解物は、分子量が小さく揮発性であるため、空中に放出されると考えられる。このため分解物由来のピークも検出されなかったと考えられる。 もし、分解物が揮発性でなく、分注ノズル表面に残存してしまった場合には、その分解物の残渣が次の分析に持ち込まれるなどして、分析結果に影響を与えてしまうことが考えられる。しかし、本発明のプラズマ洗浄法による分注ノズル表面洗浄においては、そうした影響がなく、残渣による信頼性低下などが発生しにくいと考えられる。 また、この直接プラズマを照射する方法では、放電時間を1秒という短い時間であってもN 1sのピークは検出下限以下となっており、十分な効果が得られていることが分かる。従って本発明のプラズマ洗浄法では、極めて効率的に分注ノズル洗浄を行うことが可能であり、装置のスループットの大きな低下を招くことない。 上記のプラズマ洗浄を行うのは、例えば、ある被分注液体を分注後、次の被分注液体を分注するまでの間が考えられるが、特に被分注液体を分注後、分注ノズルを純水洗浄した後であり次の分注前にプラズマ洗浄を行うことも出来る。また、洗浄水量などの洗浄条件によっては、例えば、純水洗浄後にノズル表面に付着した水を真空吸引などで吸い取り、その後プラズマ洗浄を行うことも考えられる。そのために、洗浄機構103は、検体容器25、試薬容器6や反応セル4が設置される面であり、かつ分注ノズルの移動範囲内に設けられる。 以上の他、プラズマ洗浄を分注動作ごとに行う以外の使用法以外にも、1日の終了時や1日の使用開始など、定期的に行うメンテナンス洗浄として用いることも出来る。 また、毎回の分注動作のたびにプラズマ洗浄を行うのではなく、特に分注ノズルが汚染されやすい分析項目の後や、高感度な分析項目を分析する直前など、プラズマ洗浄を利用するタイミングを限定する機能を付与すれば、分析スループットの低下を最小限に食い止めながら、分注信頼性を向上することが出来る。 また、汚染が蓄積するなどした後にプラズマ洗浄を行う場合には、長時間にわたりプラズマを照射する必要がある場合がある。こうした際には、絶縁体を水冷するなどして絶縁体の温度が極端に上昇しないようにすることも出来る。 また、放電の際にノズルと対向する電極は分注ノズルの洗浄が必要な先端部のみに対向するように電極を配置しておけば、洗浄の必要のある被分注液体と接触するノズルの部位のみを選択的に洗浄することが出来る。 以上では、検体用分注ノズルを例にとり説明をしたが、試薬用分注ノズルについても同様の洗浄を行うことが出来る。 本発明に係る実施の形態である洗浄機構ついて他の実施例を、図6、7を参照して説明する。ここで図6は洗浄槽の機構を示したものである。 図6に示す洗浄槽は、先に説明した洗浄槽と同様の絶縁体部601とその内部に2ヶ所の導体部602、612を持つことを特徴とする。片方を交流電源603に、片方を接地電極に接続する。図6では分注ノズル604が侵入してくる側にある導体部602に対し、交流電源603を、下側にある導体部612に接地電極を接続しているが、逆であっても良い。2ヶ所の導体部602、612の間に交流電源603により電圧がかけられると、絶縁体601の表面に沿って放電が起きる。これにより、プラズマが発生する。 分注ノズル604は、例えば、洗浄槽上方から洗浄槽に対して下降し、洗浄槽内で洗浄が行われ、再び上昇する。この時、分注ノズル604は停止していてもよいし、下降または上昇動作中に洗浄を行っても良い。 我々は検討の結果、洗浄中における、分注ノズル604の導体部602に対する位置関係が、洗浄効果に重要な影響を持つことを見出した。 以下、断面図である図7を用いて説明をする。絶縁体部701とその内部に2ヶ所の導体部702、712を持つことを特徴とする。片方を交流電源703に、片方を接地電極に接続する。図7では分注ノズル704が侵入してくる側にある導体部702に対し、交流電源703を、下側にある導体部712に接地電極を接続しているが、逆であっても良い。2ヶ所の導体部702、712の間に交流電源703により電圧がかけられると、絶縁体701の表面に沿って放電が起きる。これにより、プラズマが発生する。 導体部702の上端部よりも分注ノズル704の先端がより上側に来た状態でプラズマ洗浄を行うことで著しく洗浄効率が向上した。 こうした分注ノズル位置で、プラズマ洗浄を行うことが望ましい理由は、以下の検討結果に基づく。分注ノズル704の先端が導体部702の上端部よりも下部にある状態で放電を行ったところ、分注ノズル704の先端―導体部702間でのストリーマ放電と呼ばれる現象が観測された。この現象は、これは分注ノズル704の先端部が鋭利であるため、電界集中し、分注ノズル704表面と導体部702で放電が起こったためであると考えられる。ストリーマ放電が発生した場合には分注ノズル704の表面に対し、十分な洗浄効果が得られなかった。 本発明に係る実施の形態である洗浄機構について他の実施例を、図8を参照して説明する。ここで図8は洗浄槽の断面図を示したものである。 図8において、絶縁体部を801、その外周を覆う導体部を802、交流電源を803、分注ノズルを804に示す。先に述べた通り、分注ノズル804の表面は接地され、電位を分注ノズル804の表面との間に交流電源803により電圧がかけられることで放電を起こし、プラズマを発生することで洗浄を行う。 ここでこの洗浄槽は、ガス導入口805を持つ。プラズマ洗浄中にガス導入口805から空気などを送り込むことで分注ノズル804内部の洗浄を行うことが出来る。 本発明に係る第一の実施の形態である洗浄の更に他の実施例について図9を参照して説明する。ここで図9は洗浄槽の機構を示したものである。 絶縁体部を901、その外周を覆う導体部を902、交流電源を903、分注ノズルを904に示す。先に述べた通り、分注ノズル904の表面は接地され、電位を分注ノズル904の表面との間に交流電源903により電圧がかけられることで放電を起こし、プラズマを発生することで洗浄を行う。 その上で、洗浄槽底部を閉口部905のあるのものとする。これにより、放電により発生した、生体由来高分子の分解を行うための活性種が対流によりノズル先端内部に入り込む。こうすることで、分注ノズル内面の洗浄を行うことが出来る。また、洗浄槽閉口部の形状を上に凸の形状とすることで、より多くの空気が分注ノズル内部へ入り込むことが出来、より大きな洗浄効果を得ることが出来る。 また、分注ノズルでガスを吸引しながらプラズマ洗浄を行えば、放電された空気がノズル内部に吸引されることで取り込まれ、内壁の洗浄を行うことが出来る。 本発明によれば、分注ノズル表面へのタンパク質などの生体高分子の非特異吸着を劇的に低減し、キャリーオーバの抑制を図ることで、自動分析装置の信頼性の向上に貢献することが出来る。 1…検体収納部機構、2…検体供給用分注機構、3…反応ディスク、4…反応セル、5…試薬ディスク機構、6…試薬容器、7…試薬供給用分注機構、8…撹拌機構、9…恒温槽、10…分光光度計、11…反応セル洗浄機構、12…吸引ノズル、13…洗浄剤容器、15…検体用ピペッタ、16…洗浄水ポンプ、17…試薬用ピペッタ、25…検体容器、26…集光フィルタつき光源、27…検体用分注ノズル、28…試薬用分注ノズル、29…撹拌棒、100…駆動部、101…駆動部、102…駆動部、201…分注ノズル本体部、202…分注ノズル中空部、301…絶縁体部、302…導体部、303…交流電源、304…分注ノズル、401…絶縁体部、402…導体部、403…交流電源、404…分注ノズル、501…純水洗浄のみを行った分注ノズルのXPS N 1sスペクトル、502…プラズマ洗浄を1秒間行った分注ノズルに対するXPS N 1sスペクトル、601…絶縁体部、602…導体部、612…導体部、603…交流電源、604…分注ノズル、701…絶縁体部、702…導体部、712…導体部、703…交流電源、704…分注ノズル、801…絶縁体部、802…導体部、803…交流電源、804…分注ノズル、805…ガス導入部、901…絶縁体部、902…導体部、903…交流電源、904…分注ノズル、905…閉口部。 検体を収納する検体容器と、 試薬を収納する試薬容器と、 検体と試薬が注入される反応セルと、 分注ノズルを備え、検体または試薬を前記反応セルに分注する分注機構と、 前記分注ノズルを洗浄する洗浄機構と有する分析装置において、 前記洗浄機構は、プラズマ発生源を有し、当該プラズマ発生源により発生させたプラズマにより前記分注ノズルの外側表面を洗浄することを特徴とする分析装置。 請求項1において、 前記洗浄機構は、第1の電極を有し、 前記電極と前記ノズルとの間に交流電圧を印加することによって、前記プラズマを発生させることを特徴とする分析装置。 請求項1において、 前記洗浄機構は、第1の電極と第2の電極とを有し、 当該第1の電極と第2の電極との間に交流電圧を印加することによって、前記プラズマを発生させることを特徴とする分析装置。 請求項2または請求項3において、 前記第1の電極と前記ノズル、または前記第1の電極と前記第2の電極のうち、一方は交流電源に接続されており、他方は接地されていることを特徴とする分析装置。 請求項2または請求項3において、 前記第1の電極は円筒状であり、 前記ノズルが前記第1の電極の円筒内に挿入された状態で、前記プラズマを発生させて洗浄を行うことを特徴とする分析装置。 請求項5において、 前記ノズルが前記第1の電極の円筒を貫通した状態で、前記プラズマを発生させて洗浄を行うことを特徴とする分析装置。 請求項1乃至6のいずれかにおいて、 前記洗浄機構は、円筒状の絶縁体を有し、 前記第1の電極及び/または第2の電極は、前記円筒状の絶縁体に設けられていることを特徴とする分析装置。 請求項1乃至7のいずれかにおいて、 前記ノズルの外側表面及び内側表面を洗浄することを特徴とする分析装置。 請求項8において、 前記ノズルの外側からガスを供給することにより、発生した前記プラズマをノズル内部に導入して前記内側表面を洗浄することを特徴とする分析装置。 請求項8において、 前記ノズル内部に吸引することにより、発生した前記プラズマをノズル内部に導入して前記内側表面を洗浄することを特徴とする分析装置。 請求項1乃至8のいずれかにおいて、 前記洗浄機構は、前記検体容器、前記試薬容器及び前記反応セルと同じ面であり、前記分注ノズルの移動範囲内に設けられていることを特徴とする分析装置。 検体を検体容器から反応セルに分注する分注ノズルを洗浄する洗浄装置において、 プラズマ発生源を有し、当該プラズマ発生源により発生させたプラズマにより前記分注ノズルの外側表面を洗浄することを特徴とする洗浄装置。 検体を検体容器から反応セルに分注する分注ノズルを洗浄する洗浄方法において、 プラズマ発生源によりプラズマを発生させ、発生させた前記プラズマにより前記分注ノズルの外側表面を洗浄することを特徴とする洗浄方法。 【課題】 尿や血液などの検体を分析する自動分析装置において、分析測定値が繰り返し使用する分注ノズルに汚染の影響を受けないようにする。【解決手段】 本発明では、洗浄機構に電極を設け、電極によってプラズマを発生させる。発生したプラズマによって、分注ノズルの外側表面をプラズマ洗浄により洗浄することで、生体高分子などによる汚染を低減し、分析信頼性を向上する。【選択図】図3