タイトル: | 公開特許公報(A)_血管内皮機能改善剤 |
出願番号: | 2011190948 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 36/896,A61P 3/04,A61P 3/06,A61P 3/10,A61P 7/02,A61P 9/00,A61P 9/10,A61P 9/12,A61P 13/12,A61P 37/02,A23L 1/30 |
中山 英樹 JP 2013053084 公開特許公報(A) 20130321 2011190948 20110901 血管内皮機能改善剤 ハウス食品株式会社 000111487 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 遠藤 真治 100130443 中山 英樹 A61K 36/896 20060101AFI20130222BHJP A61P 3/04 20060101ALI20130222BHJP A61P 3/06 20060101ALI20130222BHJP A61P 3/10 20060101ALI20130222BHJP A61P 7/02 20060101ALI20130222BHJP A61P 9/00 20060101ALI20130222BHJP A61P 9/10 20060101ALI20130222BHJP A61P 9/12 20060101ALI20130222BHJP A61P 13/12 20060101ALI20130222BHJP A61P 37/02 20060101ALI20130222BHJP A23L 1/30 20060101ALN20130222BHJP JPA61K35/78 VA61P3/04A61P3/06A61P3/10A61P7/02A61P9/00A61P9/10 101A61P9/10 103A61P9/12A61P9/10A61P13/12A61P37/02A23L1/30 B 3 1 OL 14 4B018 4C088 4B018LB10 4B018MD53 4B018ME14 4B018MF01 4C088AB87 4C088AC05 4C088BA08 4C088CA02 4C088CA05 4C088CA06 4C088CA07 4C088CA11 4C088CA17 4C088MA17 4C088MA22 4C088MA23 4C088MA28 4C088MA31 4C088MA32 4C088MA35 4C088MA37 4C088MA41 4C088MA43 4C088MA52 4C088MA56 4C088MA57 4C088MA58 4C088MA59 4C088MA60 4C088MA63 4C088MA66 4C088NA14 4C088ZA02 4C088ZA36 4C088ZA40 4C088ZA42 4C088ZA45 4C088ZA54 4C088ZA70 4C088ZA81 4C088ZC33 4C088ZC35 本発明はタマネギ又はタマネギ処理物を含む血管内皮機能改善剤に関する。 血管内皮細胞は、一酸化窒素(Nitric Oxide, NO)、内皮由来過分極因子(endothelial derived hyperporlaring factor, EDHF)、プロスタグランジンI2といった種々の血管作動性物質を放出することで血管平滑筋緊張を調整するほか、細胞接着や血小板の粘着凝集を抑制する(非特許文献1)。これらの血管保護に関わる血管内皮機能の異常は、高血圧症、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病、喫煙、閉経などで認められ、動脈硬化病変の端緒であると考えられている。 非侵襲かつ反復可能な血管内皮機能測定方法として、FMD(Flow-Mediated Dilation)の測定が臨床的に頻繁に用いられている(非特許文献2)。これまでに、お茶、ココア、ブドウなど、ポリフェノールを豊富に含む食品やビタミンの単回または継続摂取によって、FMD値が上昇することが報告されている(非特許文献3, 4, 5, 6)。 タマネギには、所謂「血液サラサラ」効果があるとされているが、効果やメカニズムについて、実際にはほとんど分かっていない。一方、タマネギにはポリフェノールの一種であるケルセチンが多量に含まれていることが知られている。 ケルセチンと血管内皮機能との関係に関わる先行技術文献の一例として非特許文献7-9が挙げられる。 非特許文献7には、ヒトによる純品ケルセチン200mgの摂取によって、血漿中もしくは尿中の一酸化窒素分解物が増加することが示されている。しかし、炎症反応による一酸化窒素の産生は血管内皮による一酸化窒素の産生量に比べてはるかに多いことから、一酸化窒素分解物の増加は、血管内皮機能の改善を必ずしも反映しない(非特許文献10)。更に、非特許文献7ではケルセチン摂取時の急性の変化を観察しているに過ぎず、この結果からは、ケルセチンを継続的に摂取した場合に内皮機能が改善するか否かは不明である。 非特許文献8には、6-7週齢の自然発症高血圧ラット(SHR)に、4週間にわたりケルセチン等のフラボノイドを1日1回10mg/kg投与したところ、このラットから調製した大動脈でアセチルコリンに対する内皮依存的血管拡張が顕著に高まったことが開示されている。ただしこの実験系ではケルセチンの投与量が非常に多く、臨床的に応用できる投与量ではない。 非特許文献9には、一般的にケルセチンが豊富なタマネギの皮から抽出したエキスをラットに継続摂取させたところ、血圧低下作用が確認されたことが開示されている。ただし非特許文献9では、この効果が血管内皮機能の改善に起因するものではなく、カルシウム拮抗阻害作用に起因するものであることが明瞭に示されている。すなわち、タマネギ由来ケルセチンは血管内皮機能改善作用を有さないことが確認されている。また、血圧が正常な健常人に対して同様の効果があるかどうかは明らかにされていない。 なお、FMD値は、食後の一時的な血糖上昇(糖負荷)によって低下することが知られている(非特許文献11、12、13)。これは、一般的に、血糖上昇による酸化ストレスの増加や炎症反応により血管内皮機能が低下することが原因であると考えられている。近年、食後高血糖が心血管イベントのリスクとなることが疫学研究において示されている(非特許文献14)。食後高血糖条件における血管内皮機能の改善は、動脈硬化病変等の予防に繋がることから、糖尿病や肥満傾向にない健常人においても求められている。Libby P. Inflammation and cardiovascular disease mechanisms. Am J Clin Nutr, Feb 2006; 83: 456S - 460ST Inoue, H et al Flow-mediated vasodilation as a diagnostic modality for vascular failure. Hypertens Res, 2008; 31(12): 2105 - 2113Grassi D. et al Black tea consumption dose-dependently improves flow-mediated dilation in healthy males. J Hypertens. 2009 Apr;27(4):774-81.Schroeter H. et al (-)-Epicatechin mediates beneficial effects of flavanol-rich cocoa on vascular function in humans. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Jan 24;103(4):1024-9.Lekakis J. et al Polyphenolic compounds from red grapes acutely improve endothelial function in patients with coronary heart disease. Eur J Cardiovasc Prev Rehabil. 2005 Dec;12(6):596-600.Neunteufl T. et al Effects of vitamin E on chronic and acute endothelial dysfunction in smokers. J Am Coll Cardiol. 2000 Feb;35(2):277-83.Loke W. M. et al, “Pure dietary flavonoids quercetin and (-)-epicatechin augment nitric oxide products and reduce endothelin-1 acutely in healthy men” Am. J. Clin. Nutr. 88(4):1018-25 (2008).Machha A. et al, “Chronic treatment with flavonoids prevents endothelial dysfunction in spontaneously hypertensive rat aorta” J. Cardiovasc. Pharmacol., 46(1):36-40 (2005)Naseri M. K. G. et al, “Vasorelaxant and hypotensive effects of Allium cepa peel hydroalcoholic extract in rat”, Pak. J. Biol. Sci., 11(12):1569-1575 (2008)東幸仁,脈管学,Vol. 49:385-390 (2009)Title L. M. et al Oral glucose loading acutely attenuates endothelium-dependent vasodilation in healthy adults without diabetes: an effect prevented by vitamins C and E. J Am Coll Cardiol. 2000 Dec;36(7):2185-91.Kawano H. et al Hyperglycemia rapidly suppresses flow-mediated endothelium-dependent vasodilation of brachial artery. J Am Coll Cardiol. 1999 Jul;34(1):146-54.Lavi T. et al The acute effect of various glycemic index dietary carbohydrates on endothelial function in nondiabetic overweight and obese subjects. J Am Coll Cardiol. 2009 Jun 16;53(24):2283-7.O'Keefe J.H. and Bell D.S. “Postprandial hyperglycemia/hyperlipidemia (postprandial dysmetabolism) is a cardiovascular risk factor.” Am. J. Cardiol. 2007 Sep 1;100(5):899-904Weiss E.P. et al Endothelial function after high-sugar-food ingestion improves with endurance exercise performed on the previous day. Am J Clin Nutr. 2008 Jul;88(1):51-7 継続的な摂取が可能な天然由来の成分を有効成分とする血管内皮機能改善剤が求められている。特に、食後の一時的な血糖上昇(糖負荷)条件における血管内皮機能を改善することができる血管内皮機能改善剤が求められている。 本発明者は、驚くべきことに、タマネギの鱗茎部の抽出物を継続摂取することにより、血管内皮機能が改善すること、特に、糖負荷条件における血管内皮機能が顕著に改善することを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は以下の発明を包含する。(1)タマネギ又はタマネギ処理物を有効成分として含有する血管内皮機能改善剤。(2)食後における血管内皮機能の改善のための血管内皮機能改善剤である、(1)の血管内皮機能改善剤。(3)タマネギ又はタマネギ処理物が、ヒト又は非ヒト動物に対して、1日あたり乾燥物換算重量で10 mg/kg体重以上の量で、7日間以上継続して摂取されるように用いられることを特徴とする、(1)又は(2)の血管内皮機能改善剤。 本発明により、継続的な摂取が可能な天然由来の成分を有効成分とする血管内皮機能改善剤、特に糖負荷条件での血管内皮機能を改善するために有効な血管内皮機能改善剤が提供される。本発明の血管内皮機能改善剤は糖尿病や肥満傾向にない健常人に対しても有効である。図1は、試験1において測定された、外皮を含むタマネギから調製されたタマネギエキスの継続摂取前後における被験者の空腹時FMD値及び糖負荷後FMD値の変化を示す。図2は、試験2において測定された、外皮を含まないタマネギから調製されたタマネギエキスの継続摂取前後における被験者の空腹時FMDの変化を示す。<有効成分> 本発明の血管内皮機能改善剤はタマネギ又はタマネギ処理物を有効成分とする。 タマネギは学名Allium cepaに分類される植物を指す。本発明に用いられるタマネギの品種は限定されない。 本発明に用いられるタマネギは、通常食用される球の部分(鱗茎部)を少なくとも含んでいればよく、鱗茎部の外皮を含んでいるか否かは問わない。更に、タマネギの他の部位(葉、根)を含んでいるか否かも問わない。本発明に用いられるタマネギは、典型的には、外皮を有するタマネギ鱗茎部、又は外皮が除去されたタマネギ鱗茎部である。タマネギ鱗茎部の外皮はケルセチンを多く含むことが知られているが、後述する試験2の結果は、タマネギの血管内皮機能改善作用がケルセチンに起因するものでないことを示唆しており、タマネギ鱗茎部の外皮は必須ではない。 タマネギは所望の形状に適宜加工されたものであってもよい。ミキサー等で破砕するなど、物理的な処理が施されたタマネギは、本発明におけるタマネギに包含される。 タマネギ処理物は前記タマネギを処理して得られる組成物であれば特に限定されないが、好ましくは、タマネギの破砕物の液体画分を分離して得られる搾汁、タマネギ又は前記搾汁を抽出媒体により抽出して得られる抽出液、前記搾汁又は抽出液或いは両者の混合物を濃縮又は乾燥した濃縮物又は乾燥物等が挙げられる。本明細書では、前記搾汁又は抽出液或いは両者の混合物を濃縮又は乾燥した濃縮物又は乾燥物を特に「タマネギエキス」と呼ぶ。前記搾汁、前記抽出液、或いは、前記タマネギエキス(前記濃縮物又は前記乾燥物)は、更に水、エタノール等の溶媒により希釈した希釈物として提供されてもよい。前記搾汁、前記抽出液、及び前記タマネギエキスのうち2種以上の混合物が有効成分として用いられてもよい。 タマネギの搾汁は、タマネギの破砕物における液体画分と細胞壁等の固体画分とを分離し、液体画分を取得する搾汁工程を含む方法により製造することができる。タマネギの破砕物は、タマネギをミキサー、コミトロール、ミクロマイスター、圧搾機等を用いて粉砕、圧搾等して破砕することにより調製することができる。液体画分と固体画分との分離は遠心分離、ろ過(例えば珪藻土ろ過)等の通常の固液分離手段により行うことができる。搾汁工程は、圧搾する等して破砕と同時に行うこともできる。破砕前のタマネギを、原型のまま、或いは適当な寸法及び形状にカットした状態で、電子レンジ加熱、ボイリング、蒸気加熱等により加熱して、タマネギ中のグルコシダーゼ等の酵素活性を予め失活させてもよい。また、タマネギの破砕物を加熱して、粉砕物中の水可溶性成分の液体画分中への溶出を促進させた後に、搾汁工程を行ってもよい。タマネギの破砕物を加熱する場合には、加熱温度及び加熱時間は特に限定されないが、例えば、60〜125℃にて、5〜120分間加熱することができる。搾汁のためのタマネギとしては、下記手順でタマネギから抽出液を調製する際に生じるタマネギ残渣を用いることもできる。 タマネギの抽出液は、タマネギ又は前記搾汁を抽出媒体により抽出することにより製造することができる。抽出媒体としては有機溶媒、水等の溶媒、超臨界二酸化炭素等の超臨界流体が挙げられ、溶媒が特に好ましい。溶媒としては水や、エタノール等のアルコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いることができ、水またはエタノール或いは水とエタノールとの混合溶媒が特に好ましい。溶媒抽出によりタマネギ抽出液を製造する場合には、タマネギ又は前記搾汁を適量の溶媒(例えばタマネギ又は前記搾汁(湿重量)に対して重量基準で0.5〜20倍量)中に浸漬し、適宜撹拌又は静置して溶媒中に溶媒可溶性成分を溶出させる。抽出時間は特に限定されないが、5〜120分間以上であることができ、15〜30分であることが好ましい。抽出温度は特に限定されないが、0〜125℃であることができ、60〜125℃であることが好ましい。抽出後、溶媒可溶性成分を含む溶媒画分と細胞壁等の固体画分とを上述の固液分離手段により分離し、溶媒画分を抽出液として取得する。抽出に用いるタマネギの形状は、原型のまま、或いは適当な寸法又は形状にカットした状態、或いは上記の粉砕物の形状であることができる。抽出に用いるタマネギは適宜乾燥されたタマネギであってもよい。抽出に用いるタマネギは粉砕等を行う前に予め、上記と同様に、タマネギを加熱してグルコシダーゼ等の酵素活性を失活させたものであってもよい。抽出後のタマネギの残渣が更に搾汁可能なものである場合(例えば、タマネギが原型のまま、或いは適当な寸法又は形状にカットした状態で抽出に用いられる場合には抽出後のタマネギの搾汁が可能である)には、抽出後の残渣を上述のタマネギ搾汁の調製のために用いてもよい。 タマネギエキスは前記搾汁又は抽出液或いはこれらの混合物を濃縮又は乾燥することにより製造することができる。ここで濃縮とは搾汁又は抽出液或いはこれらの混合物中の液体(水及び/又は抽出溶媒)を減少させて最終糖濃度を50%以上とすることを指す。糖濃度は市販の糖度計で測定することができる。乾燥とは搾汁又は抽出液或いはこれらの混合物中の液体を実質的に除去することを指す。 濃縮の方法としては、例えば真空蒸発濃縮、膜濃縮が採用できる。 真空蒸発濃縮は一般的に減圧濃縮と呼ばれる。濃縮時の真空度は最終品を糖度50%と以上とすることができる範囲で選択でき、特に限定されない。 膜濃縮は、例えば逆浸透膜(RO)、限外ろ過膜(UF)等の膜を使用して行うことができる。使用する膜の種類は糖度50%以上とすることができる範囲で選択でき、特に限定されない。 乾燥は前記搾汁、前記抽出液、又は前記濃縮物を凍結乾燥、減圧乾燥等の通常の手段を用いて乾燥することにより実施することができる。 濃縮又は乾燥に際して、前記搾汁、前記抽出液、又は前記濃縮物と賦形剤等の他の成分とを組み合わせて濃縮又は乾燥を行ってもよい。<血管内皮機能改善剤> 本発明の血管内皮機能改善剤は、血管内皮機能、特に血管内皮の一酸化窒素(NO)産生能を改善する能力を有する。血管内皮のNO産生能は、手又は足の駆血後の血流依存性血管拡張反応(FMD(Flow-Mediated Dilation))による血管径の増大率(FMD値(%))に基づき評価することができる。FMD値の測定は通常のFMD検査装置により行うことができる。 ヒトでの血管内皮機能の測定方法としてはFMDが一般的であるが、他にストレインゲージ・プレチスモグラフィを用いる方法、指尖容積脈波を用いる方法(Endo-PAT)等のFMD以外の方法を用いても構わない。また、血管内皮機能はヒトで測定することが好ましいが、in vivoまたはex vivo動物試験や内皮細胞を用いたNO産生能等のin vitroの指標で確認しても構わない。 本発明の血管内皮機能改善剤は、動脈硬化症、慢性腎臓病(CKD)、高血圧、脂質代謝異常症、糖尿病、肥満・メタボリック症候群、冠動脈疾患、脳血管疾患、播種性血管内凝固症候群(DIC)、膠原病等の疾患の予防又は治療のために用いることができる。本発明の血管内皮機能改善剤は、糖尿病患者や、肥満傾向にある対象者だけでなく、健常な対象者に対しても有効である。 本発明の血管内皮機能改善剤は食後の血糖上昇(糖負荷)条件における血管内皮機能を改善することが可能である。しかも本発明の血管内皮機能改善剤は天然由来成分を有効成分としており経口摂取においても安全性が高いため、長期間の摂取に適している。このため、本発明の血管内皮機能改善剤は、継続的に摂取することにより日々の食事による血管内皮機能の低下を持続的に抑制することが可能である。 本発明の血管内皮機能改善剤の対象は典型的にはヒトであるが、ヒトには限定されず他の非ヒト動物、例えばヒト以外の哺乳類であってもよい。 本発明の血管内皮機能改善剤は飲食品、医薬品(医薬部外品に分類されるものも含む。以下同じ)、化粧品等の形態で用いることができる。飲食品、医薬品等の形態で経口摂取される経口摂取用組成物であることが好ましいが、これには限定されず、他の経路、例えば静脈内投与、髄腔内投与、皮下投与、舌下投与、経直腸投与、経腟投与、点眼、経鼻、吸入、経皮投与、経皮的吸収等の経路で投与される組成物であってもよい。 本発明の血管内皮機能改善剤は、所望の作用を奏する量のタマネギ又はタマネギ処理物を含んでいることが好ましく、全体がタマネギ又はタマネギ処理物のみからなるものであってもよいし、タマネギ又はタマネギ処理物と他の成分とを含むものであってもよい。 本発明の血管内皮機能改善剤は他の成分を更に含んでいても構わない。他の成分は飲食品、医薬品、化粧品等の最終的な形態において許容される成分である限り特に限定されない。 本発明の血管内皮機能改善剤の形状は、特に限定されずに液状、固形状または半固形状であることができる。 前記飲食品の態様は限定されず、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品等の態様であることができる。前記飲食品は、タマネギ又はタマネギ処理物と、飲食品として許容される他の成分、例えば、果糖ブドウ糖液糖、環状オリゴ糖、酸味料、増粘剤、イノシトール、香料、ナイアシン、酸化防止剤、ビタミン類、甘味料、水等とを含むことができる。 前記医薬品の剤形は特に限定されず、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、注射剤、座薬、貼付剤、軟膏、細粒剤、カプレット、散剤、液剤、トローチなどの剤形が挙げられる。医薬品は、タマネギ又はタマネギ処理物を、薬剤学的に許容される他の製剤素材、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などと適宜組み合わせて製剤化することにより製造することができる。 前記化粧品の形態は限定されず、例えば化粧用クリーム、化粧水、乳液、ローションパック、分散液、洗浄料等の態様であることができる。化粧品は、タマネギ又はタマネギ処理物と、化粧品として許容される他の成分、例えば賦形剤、担体等とを適宜組み合わせて調製することができる。 本発明の血管内皮機能改善剤の摂取量は特に限定されず、摂取経路、対象となるヒト又は動物の年齢、体重、症状等に応じて適宜設定することができる。例えば、血管内皮機能改善剤は、1日あたり、有効成分であるタマネギ又はタマネギ処理物が、乾燥物換算重量で好ましくは10 mg/kg体重以上(ヒト又は非ヒト動物である対象(好ましくは成体)の体重を指す。以下同じ)、より好ましくは30 mg/kg体重以上となる量で摂取されるように用いられる。摂取は経口摂取が好ましいがこれには限定されない。血管内皮機能改善剤の摂取は1日に1回ないし数回に分けて行うことができる。 本発明の血管内皮機能改善剤は継続的に摂取されることが好ましい。好ましくは上記の1日あたりの量で7日間以上、より好ましくは14日間以上、特に好ましくは30日間以上継続して摂取されることが好ましい。試験1材料と方法被験者と試験デザイン 22名の健常男性を被験者とし、タマネギエキス継続摂取前後で各種指標を比較する、自己対照試験とした。摂取期間は4〜5週間とし、期間中は試験食を毎日摂取するようお願いした。摂取期間の1日目と最終日の翌日に、摂取前後の検査を行った。 検査前日の夕食および試験食は21時までに摂取して頂いた(以降、水のみ摂取可)。検査は全て環境試験室(空調により、24℃, 50%RHに調節)内で行った。9時または10時に来室頂き、検査を開始した。検査開始時に体重測定を行い、1時間デスクにて安静後、FMD値、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数、安静時血流量、血流増加率を測定した。その後、75g麦芽糖を含むジュースを摂取して頂き、摂取1時間後に再度FMD値等の測定を行った。試験食 タマネギエキス粉末:タマネギ(北海道産北もみじ)の皮をむき、1/4カットしたもの100重量部に等量の水を加え、95℃15分間加熱抽出した。ふるいにかけた後、残渣部分を搾汁し、液体部分に加えた。得られた液体をろ過して繊維成分除去した後、エバポレーターでBrix50まで濃縮した。得られたエキスを85℃10分で殺菌した。得られたエキスを凍結乾燥した後、粉砕し、約6重量部のタマネギエキス粉末を得た。 試験食:上記で得られたタマネギエキス粉末2.2gに、皮由来のケルセチン原料(横浜油脂社製PA-5)0.59g、乳糖(賦形剤)1.5g、スクラロース(甘味料)18.5mgを加え粉末状の試験食4.3gを得た。 上記の試験食4.3gを1日1回、120mlの水に懸濁して摂取して頂いた。摂取時間は問わない。試験食4.3g中の栄養成分は、表1のとおり。FMD値の測定 FMD値の測定には(株)ユネクス社のFMD測定装置を用いた。測定方法は、既に報告されているFMD値測定のガイドラインに準じて行った(T Inoue, H et al Flow-mediated vasodilation as a diagnostic modality for vascular failure. Hypertens Res, 2008; 31(12): 2105-2113; 及び Mary C. et al Guidelines for the ultrasound assessment of endothelial-dependent flow - mediated vasodilation of the brachial artery: A report of the International Brachial Artery Reactivity Task Force. J. Am. Coll. Cardiol., 2002; 39(2): 257-265)。 ベッドに移動し、20分間の安静の後、定法にてFMD値を測定した。なお、糖負荷前の測定時にサージカルテープにて測定位置をマークし、糖負荷後の測定時にも同じ位置で測定を行った。継続摂取前の検査時には、肘からの測定位置までの距離を計測し、継続摂取後の測定においても、測定位置を揃えるようにした。統計解析 統計解析には、R言語(統計解析向けプログラミング言語)を用いた。 FMD値、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数、安静時血管径、血流増加率の解析は、反復測定2要因(タマネギエキスの継続摂取と糖負荷)の分散分析で行った(有意水準p < 0.05)。対応の交互作用があった場合については、下位検定として対応のあるt-検定を行った。体重、BMIの解析については、対応のあるt-検定を行った(有意水準p < 0.05)。結果被験者背景と摂取状況 被験者背景は表2のとおりであった。 23名の被験者全員で、中止や脱落はなく試験を完了した。平均摂取期間は30日、試験食の平均摂取回数は29回であった。摂取期間中に、試験食の摂取が原因と考えられる有害事象の発生はなかった。被験者のうち1名で摂取方法に問題があっため、データを除外した。摂取によって、体重およびBMIには変化が見られなかった。FMD値の変化 FMD値の変化は、糖負荷の主効果、タマネギエキスの継続摂取の主効果、両者の交互作用の全てで有意であった(表3)。 交互作用について下位検定を行ったところ、継続摂取の前後ともに、糖負荷によってFMD値は有意に低下した(p < 0.01)。空腹時FMD値は継続摂取によって、0.8%ポイント上昇し、上昇は有意であった(p < 0.05)。糖負荷後FMD値は、タマネギエキスの継続摂取によって約1.6%ポイント上昇し、上昇は有意であった(図1)。各種指標の変化 収縮期血圧、心拍数は、糖負荷によってそれぞれ有意に上昇した(表3)。その他、拡張期血圧、安静時血管径、血流増加率については、摂取前後および糖負荷による有意な変化は観察されなかった。体重およびBMIについても、摂取前後で有意な変化は観察されなかった。考察FMD値の変化 タマネギエキスの継続摂取によって、空腹時FMD値が僅かではあるが上昇する傾向が見られた。さらに、糖負荷後のFMD値は、継続摂取後に大きく上昇した。血流増加率や血圧、脈拍等には、タマネギエキス摂取前後で変化が見られなかったことから、FMD値の改善は血管内皮機能の改善によるものと考えられる。これらのことから、タマネギエキスの継続摂取は、糖負荷による内皮機能低下を防ぐことが示された。 これまでに、前日の持久運動が健常人の高糖食摂取後の血管内皮機能を改善することが報告されている(非特許文献15)。また、グルコースと同時にビタミンCとEを摂取すると、FMD値の低下を抑制することが報告されている(非特許文献11)。しかし、前日までの食品の摂取によって、健常人の食後FMD値低下を抑制するという報告はなく、今回の結果は新しい知見を与えるものと言える。 タマネギエキスの摂取が、糖負荷後の血管内皮機能低下を、どのようなメカニズムで改善したかは不明である。 糖尿病や肥満傾向にない健常人であっても、タマネギエキスの継続摂取によって、食後高血糖による血管内皮機能の低下を抑制できたことは、臨床的に意義深い。本発明によれば、健常人であっても、タマネギエキスの摂取によって、内皮機能をより健全な状態にすることが可能である。各種指標の変化 糖負荷によって、収縮期血圧と心拍数が有意に増加した。飲料の低温刺激による可能性が考えられるが、変化量はわずかであり、結果に大きな影響を及ぼすものではないと考える。試験2方法 4名の健常男性を被験者とし、タマネギエキス継続摂取前後で各種指標を比較する、自己対照試験とした。摂取期間は4週間とし、期間中は試験食を毎日摂取するようお願いした。摂取期間の1日目と最終日の翌日に、摂取前後の検査を行った。外皮を含まないタマネギを加熱抽出、搾汁、ろ過、濃縮、乾燥して得られた粉末状のエキス3.1g(9mgのケルセチンを含む粉末)を、1日1回1カ月間、健康男性4名に摂取(摂取時間問わない)して頂いた。 タマネギエキス粉末:市販のタマネギ(北もみじ)を皮をむいて上から見て等分に包丁で1/4カットし100重量部のタマネギ鱗茎部を得た。これを120℃で20分加熱した後、家庭用ミキサー(MX-X107 National製)で破砕した。液状の破砕物を遠心分離機(himac CR21 日立製、ローター:RPR9-2)を用いて4℃、8000rpm、15minの条件で遠心分離をした。その上澄み液を凍結乾燥し、約6重量部の粉末状のエキスを得た。 摂取方法:試験2では、皮由来のケルセチン原料や賦形剤等を用いず、上記手順で得られた粉末状のエキス3.1gのみを1日1回、120mlの水に懸濁して摂取して頂いた。 FMD値の測定には(株)ユネクス社のFMD測定装置を用いた。測定方法は、既に報告されているFMD値測定のガイドラインに準じて行った(T Inoue, H et al Flow-mediated vasodilation as a diagnostic modality for vascular failure. Hypertens Res, 2008; 31(12): 2105-2113; 及び Mary C. et al Guidelines for the ultrasound assessment of endothelial-dependent flow - mediated vasodilation of the brachial artery: A report of the International Brachial Artery Reactivity Task Force. J. Am. Coll. Cardiol., 2002; 39(2): 257-265)。 ベッドに移動し、20分間の安静の後、定法にてFMD値を測定した。なお、糖負荷前の測定時にサージカルテープにて測定位置をマークし、糖負荷後の測定時にも同じ位置で測定を行った。継続摂取前の検査時には、肘からの測定位置までの距離を計測し、継続摂取後の測定においても、測定位置を揃えるようにした。 検査前日の夕食および試験食は21時までに摂取して頂いた(以降、水のみ摂取可)。検査は全て環境試験室(空調により、24℃, 50%RHに調節)内で行った。9時または10時に来室頂き、検査を開始した。検査開始時に体重測定を行い、1時間デスクにて安静後、FMD値、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数、安静時血管径、血流増加率を測定した。結果 結果を表5及び図2に示す。空腹時FMD値は約0.6%ポイント上昇した(p = 0.05)。その他の血流動態には変化は見られなかった。 本試験2で用いられたタマネギエキスは、試験1で用いられたタマネギエキスと比較してケルセチン含有量が顕著に低い。しかしながら試験2においても空腹時FMD値がタマネギエキス継続摂取により試験1と同程度に上昇することが確認された。このことは、タマネギエキスの摂取による血管内皮機能の改善が、ケルセチンに起因するものではないことを明確に示す。本発明に用いられるタマネギエキスに含まれるケルセチン含量は特に限定されない。 タマネギ又はタマネギ処理物を有効成分として含有する血管内皮機能改善剤。 食後における血管内皮機能の改善のための血管内皮機能改善剤である、請求項1の血管内皮機能改善剤。 タマネギ又はタマネギ処理物が、ヒト又は非ヒト動物に対して、1日あたり乾燥物換算重量で10 mg/kg体重以上の量で、7日間以上継続して摂取されるように用いられることを特徴とする、請求項1又は2の血管内皮機能改善剤。 【課題】本発明は、継続的な摂取が可能な天然由来の成分を有効成分とする血管内皮機能改善剤、特に食後の一時的な血糖上昇条件における血管内皮機能を改善することができる血管内皮機能改善剤を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は上記課題の解決手段としてタマネギ又はタマネギ処理物を有効成分として含有する血管内皮機能改善剤を提供する。【選択図】図1