生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ワクチン効力増強添加剤およびそれを含むワクチン製剤
出願番号:2011179855
年次:2013
IPC分類:A61K 39/39,A61K 39/02,A61K 39/12,A61K 39/00


特許情報キャッシュ

佐藤 朝光 藤原 道弘 添田 秦司 入江 圭一 見明 史雄 三島 健一 鹿志毛 信広 奥野 隆啓 榎木 麻希子 鶴田 翔大 上田 紗織 JP 2013040152 公開特許公報(A) 20130228 2011179855 20110819 ワクチン効力増強添加剤およびそれを含むワクチン製剤 学校法人福岡大学 598015084 小林 浩 100092783 片山 英二 100095360 大森 規雄 100120134 鈴木 康仁 100104282 佐藤 朝光 藤原 道弘 添田 秦司 入江 圭一 見明 史雄 三島 健一 鹿志毛 信広 奥野 隆啓 榎木 麻希子 鶴田 翔大 上田 紗織 A61K 39/39 20060101AFI20130201BHJP A61K 39/02 20060101ALI20130201BHJP A61K 39/12 20060101ALI20130201BHJP A61K 39/00 20060101ALI20130201BHJP JPA61K39/39A61K39/02A61K39/12A61K39/00 KA61K39/00 H 8 OL 18 4C085 4C085AA03 4C085BA02 4C085BA07 4C085BA49 4C085BA51 4C085DD86 4C085EE06 4C085FF12 4C085FF13 4C085FF18 この発明は、ワクチン効力増強添加剤およびそれを含むワクチン製剤に関するものである。更に詳細には、この発明は、幼若ホルモン類をアジュバント活性成分として含有するワクチン効力増強添加剤(以下、「アジュバント」ともいう)に関するものである。 最新医学の進歩により、細菌、真菌、ウイルス等の病原微生物による多種多様な感染症の診断、予防および治療が可能となっている。しかし、このように医学が進歩している今日でもなお、世界全体に目を向けると感染症は未だに死因の相当の割合を占めているのが現状であり、特に発展途上国では大きな問題であり、その対策は緊急の課題である。 かかる病原微生物による感染症に対する防御手段の1つとしてワクチンがある。ワクチンは、人や動物に対し、その病原微生物や近縁の微生物を投与して生体に予めかかる微生物に対する免疫を賦与することで、様々な感染症の予防に用いられていて、数多くの素晴らしい成果を上げてきた。しかしながら、そのようなワクチンであっても、副作用や、また効果が充分でないという例も多くあって、その改善が強く望まれていることも事実である。 現在、ワクチンは、一般的には、病原体あるいは病原体の一部をワクチンの抗原材料として用いて製造されている。ワクチンでヒトや動物において免疫反応を惹起する場合、抗体産生反応や細胞性免疫反応を調節するために、抗原材料とともに、ワクチン効力増強添加剤(アジュバント)を用いることが多い。このアジュバントとしては、抗原と別個に体内の免疫反応を非特異的または特異的に刺激し、それによって同時投与した抗原に対する特異的な免疫反応を強化または抑制する物質とされている(非特許文献1)。 上述したように、ワクチンの多くは、ワクチンの抗原材料として病原体あるいは病原体の一部を用いて製造されていることから、病原体の構成成分や病原体を増殖させる媒体の成分がワクチンに混入する可能性を否定できない。そのような成分が混入したワクチンを接種すれば、望ましくない副作用を引き起こす原因となることは明かである。このような副作用をできるだけ避け、安全性に優れたワクチンを製造するために、様々な方策が取られてきた。 ほとんどのワクチンは、注射により接種されているが、経口接種、経皮接種ならびに経鼻接種などの接種方法も採用されている。注射によるワクチン接種では、血中抗体価が上昇し、上昇した血中抗体価の持続により病原微生物の増殖が抑制され、感染症などの疾病が予防される。一方、インフルエンザウイルスなど多くのウイルスや細菌は、気道粘膜を介して感染するので、感染の初期段階で罹患を阻止するためには、血中よりも粘膜での局所免疫を強力に誘発するワクチンが望ましい。このためには、局所免疫を誘発しやすくする優れたアジュバントが必要である。また、経口、経皮あるいは経鼻接種などの、注射以外の接種方法では、一般的には十分な免疫刺激を得にくいため、それに適したアジュバントが求められている。 さらに、ワクチンは、一般的に、その免疫力が低下しやすいという問題点があり、これに対する有効な方策として、アジュバントが従来から使用されてきた。またこのようにワクチンを有効にかつ効率的に使用するために、様々なアジュバント(ワクチン効力増強添加剤)が研究されてきた。しかしながら、現在、人体用ワクチンに用いることができるアジュバントとしては、アルミニウム化合物、例えば、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムのゲルがほとんど唯一のものである。ところが、そのアルミニウムアジュバントには、いくつかの問題点があり、更なる改善が求められているところから、その他のアジュバントについても従来から研究が続けられている。 かかるアジュバントとしては、例えば、オリゴ糖(特許文献1)、多糖類(特許文献2)、アルキル基またはステロール残基が導入された疎水化多糖類(特許文献3)、アミノ酸(特許文献4)、脂質(特許文献5、特許文献6)、サイトカイン(特許文献7)、動物ホルモン(特許文献8)などが挙げられるが、未だ実用化されていないのが現状である。特公2000−169392号公報特公平11−502192号公報特表98/009650号公報特公2009−120596号公報特表2006−521321号公報特表2008−528570号公報特公2010−1304号公報特表2000−512130号公報免疫学辞典、東京化学同人、1993年 本発明者らは、従来のアジュバントが抱える諸問題を解決すべく鋭意検討の結果、幼若ホルモン類似体の1種であるメトプレン(methoprene)誘導体、フェノキシカルブ(fenoxycarb)誘導体ならびにピリプロキシフェン(pyriproxyfen)誘導体がタンパク質抗原との並行投与により抗体産生を高めることが確認できたことから、この発明を完成するに至った。 したがって、この発明は、幼若ホルモン類似体を有効成分として含有するワクチン効力増強添加剤、かかる幼若ホルモン類のワクチン効力増強添加剤としての使用方法、およびそれを含むワクチン製剤を提供することを目的とする。 上記目的を達成するために、この発明は、幼若ホルモン類似体を有効成分として含有するワクチン効力増強添加剤、例えば、メトプレン(methoprene)誘導体、フェノキシカルブ(fenoxycarb)誘導体ならびにピリプロキシフェン(pyriproxyfen)誘導体から選ばれる少なくとも1種の幼若ホルモン類似体を有効成分として含有するワクチン効力増強添加剤を提供する。 つまり、この発明は、一般式[I]: {式中、R1は、C1〜C6アルキル基;一般式[II]: (式中、R6は、水素原子またはC1〜C3アルキル基を意味し; R7は、C1〜C3アルキル基、C2〜C3アルケニル基、ハロゲン化C1〜C3アルキル基またはハロゲン化C2〜C3アルケニル基を意味し;および R8はC1〜C3アルキル基を意味する)で表される置換エチル基;または一般式[III]:(式中、R9はC1〜C3アルキル基を意味し;ならびに R10はC1〜C3アルキル基を意味する)で表される置換エポキシ基を意味する。}を意味し; R2はC1〜C3アルキル基を意味し; R3はOHまたはC1〜C3アルキル基を意味し; R4はC1〜C3アルキル基を意味し; R5はC1〜C6アルキル基(直鎖状または分岐状)もしくはC3〜C6アルキニルアルキル基を意味し; Zは酸素原子または硫黄原子を意味し;ならびに 点線(・・・)は一重結合または二重結合を意味する。}で表されるメトプレン(methoprene)誘導体; 一般式[IV]: (式中、R11は、C1〜C6アルキル基、カルボキシル置換C1〜C6アルキル基またはC1〜C3アルコキシカルボニル置換C1〜C6アルキル基を意味し;ならびにX1、X2およびX3は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子(Cl、Br、F、I)、NH2、NO2またはOHを意味する)で表されるフェノキシカルブ(fenoxycarb)誘導体;および 一般式[V]: (式中、X4、X5およびX6は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、NH2、NO2またはOHを意味し、ならびに X7およびX8は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子もしくはハロゲン原子を意味する。)で表されるピリプロキシフェン(pyriproxyfen)誘導体から選ばれる少なくとも1種の幼若ホルモン類似体を有効成分として含有することからなるワクチン効力増強添加剤を提供する。 また、この発明は、幼若ホルモン類似体であるメトプレン誘導体 [I]、フェノキシカルブ誘導体 [IV] およびピリプロキシフェン誘導体 [V] から選ばれる少なくとも一つをワクチン効力増強添加剤として使用することからなる使用方法を提供する。 さらに、この発明は、メトプレン誘導体 [I]、フェノキシカルブ誘導体 [IV] およびピリプロキシフェン誘導体 [V] から選ばれる少なくとも一つをワクチン効力増強添加剤として含有することからなるワクチン製剤を提供する。 この発明に係るワクチン効力増強添加剤(アジュバント)は、タンパク質抗原との並行投与により抗体産生を高めることが確認できた。また、この発明に使用する幼若ホルモン類は、脂質よりも安定性が高いことが期待できるとともに、製造方法が確立していることからワクチンの製造原価を安くでき、かつ、単一化合物であることから実際の使用において加工や容量設定が用意であるという効果がある。さらに、この幼若ホルモン類は、ヒトに対する副作用が比較的低いことから安全に使用できることが期待できる。 したがって、この発明のワクチン効力増強添加剤およびワクチン製剤は、従来のワクチン効力増強添加剤およびワクチン製剤が抱える問題を改善することができるという効果を有している。図1は血清中の卵白アルブミン特異的抗体をELISAで測定した結果を示す図である。図2はA549細胞を利用したフェノキシカルブの細胞毒性を示す図である。図3はA549細胞を利用したピリプロキシフェンの細胞毒性を示す図である。 この発明に係るワクチン効力増強添加剤、その用途およびワクチン製剤は、従来のワクチン効力増強添加剤およびワクチン製剤が抱える問題を改善することができる優れたものである。 この発明のワクチン効力増強添加剤として使用できる化合物としては、幼若ホルモン類似体であるメトプレン誘導体 [I]、フェノキシカルブ誘導体 [IV] およびピリプロキシフェン誘導体 [V] が使用され、これらの誘導体のうち1つを単独で、又は複数を適宜組み合わせて用いることができる。 この発明に使用されるメトプレン誘導体 [I] は、一般式[I]: {式中、R1は、C1〜C6アルキル基;一般式[II]: (式中、R6は、水素原子またはC1〜C3アルキル基を意味し; R7は、C1〜C3アルキル基、C2〜C3アルケニル基、ハロゲン化C1〜C3アルキル基またはハロゲン化C2〜C3アルケニル基を意味し;および R8はC1〜C3アルキル基を意味する)で表される置換エチル基;または一般式[III]:(式中、R9はC1〜C3アルキル基を意味し;ならびに R10はC1〜C3アルキル基を意味する)で表される置換エポキシ基を意味する。}を意味し; R2はC1〜C3アルキル基を意味し; R3はOHまたはC1〜C3アルキル基を意味し; R4はC1〜C3アルキル基を意味し; R5はC1〜C6アルキル基(直鎖状または分岐状)もしくはC3〜C6アルキニルアルキル基を意味し; Zは酸素原子または硫黄原子を意味し;ならびに 点線(・・・)は一重結合または二重結合を意味する。}で表される化合物である。 上記一般式において、「アルキル基」は、直鎖状もしくは分岐鎖状の1価飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、メチルプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。「アルケニル基」は、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素間二重結合を持つ1価炭化水素基を意味し、例えば、エテニル基、プロペニル基などが挙げられる。「アルキニルアルキル基」のアルキニル基は、炭素間三重結合をもつ1価鎖式炭化水素基を意味し、例えば、エチニル基などが挙げられる。「ハロゲン化」のハロゲンは、塩素、臭素、ヨウ素もしくはフッ素からなるハロゲン原子を意味する。なお、これらの定義は、下記においても同様に適用することができる。 上記のメトプレン誘導体 [I] の具体的な例としては、例えば、下記に示すような化合物を挙げることができる。 メトプレン:イソプロピル(2E,4E,7S)−11−メトキシ−3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート イソプロピル(2E,4E,7S)−11−メトキシ−3,7,7,11−テトラメチルドデカ−2,4−ジエノエート イソプロピル(2E,4E)−7,11−ジヒドロキシ−3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート イソプロピル(2E,4E)−11−メトキシ−11―(2−ヨードエテニル)―3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート イソプロピル(2E,4E)−11−ヒドロキシ−11―(2−ヨードエテニル)―3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート イソプロピル(2E,4E)−10,11−エポキシ−3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート S−ヒドロプレン(S-hydroprene):エチル(2E,4E)−3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート キノプレン(kinoprene):2−プロピニル(2E,4E)−3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート エチル(2E,4E)−10,11−エポキシ−3,7,11−トリ置換ドデカ−2,4−ジエノエート誘導体 トリプレン(triprene):S−エチル(2E,4E)−11−メトキシ−3,7,11−トリメチル−2,4−ドデカジエンチオエ−ト この発明で使用されるフェノキシカルブ(fenoxycarb)誘導体は、一般式[IV]: (式中、R11は、C1〜C6アルキル基、カルボキシル置換C1〜C6アルキル基またはC1〜C3アルコキシカルボニル置換C1〜C6アルキル基を意味し;ならびにX1、X2およびX3は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、NH2、NO2またはOHを意味する)で表される化合物である。 上記のフェノキシカルブ誘導体 [IV] の具体的な化合物の例としては、例えば、下記に示すような化合物を挙げることができる。 フェノキシカルブ:エチルN−[2−(4−フェノキシフェノキシ)エチル]カルバメート エチルN−[2−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)エチル]カルバメート エチルN−[2−(4−(4−ニトロフェノキシ)フェノキシ)エチル]カルバメート エチルN−[2−(4−(3−ブロモフェノキシ)フェノキシ)エチル]カルバメート エチルN−[2−(4−(3,5−ジフルオロフェノキシ)フェノキシ)エチル]カルバメート 6−[2−(4−フェノキシフェノキシ)エチルアミノカルボニルオキシ]ヘプタン酸 エチル6−[2−(4−フェノキシフェノキシ)エチルアミノカルボニルオキシ]ヘプタノエート この発明で使用されるピリプロキシフェン(pyriproxyfen)誘導体は、一般式[V]: (式中、X4、X5およびX6は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、NH2、NO2またはOHを意味し、ならびに X7およびX8は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子もしくはハロゲン原子を意味する。)で表される化合物である。 上記のピリプロキシフェン誘導体 [V] の具体的な化合物の例としては、例えば、下記の示すような化合物を挙げることができる。 ピリプロキシフェン:2−[1-メチル−2−(4−フェノキシフェノキシ)エトキシ]ピリジン 2−[1-メチル−2−(4−(3−ブロモフェノキシ)フェノキシ)エトキシ]ピリジン 2−[1-メチル−2−(4−(3−フルオロフェノキシ)フェノキシ)エトキシ]ピリジン 2−[1-メチル−2−(4−(3,5−ジフルオロフェノキシ)フェノキシ)エトキシ]ピリジン この発明において使用されるメトプレン誘導体 [I]、フェノキシカルブ誘導体 [IV] およびピリプロキシフェン誘導体 [V]は、例えば、当該技術分野で既知の合成法によって製造することができ、また市販品としても入手することもできる。 この発明に係るワクチン効力増強添加剤(アジュバント)は、公知のアジュバントの1つ以上と同時に使用することができる。当業技術分野に属する者であれば、好適な組み合わせを見出すことができる。 また、この発明のアジュバントは、免疫抗原との物理的混合物や抗原蛋白との化学的結合物とすることも、またはリポソームなどのキャリアーに抗原とともに内包させることも可能である。混合比率は ワクチンの種類に応じて好適な比率を決定して用いることができる。このようにアジュバントを調製することにより、得られるワクチンの望ましい免疫反応を増強したり、または望ましくない副反応を低下させたり、抗原やアジュバントの量を低下させたりすることもできる。 一方、この発明に係るワクチン製剤は、このワクチン効力増強添加剤(アジュバント)と共に、免疫抗原を用いて、当該技術分野で既知の方法に従って製造することができる。 この発明のワクチン製剤に使用できる免疫抗原としては、細菌、ウィルス、真菌、原虫または他の微生物に由来するものが挙げられる。例えば、カルメット・ゲラン桿菌、コレラ菌、ジフテリア菌、百日咳菌、破傷風菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌、炭疽菌、髄膜炎菌、腸チフス菌、ポリオ菌、結核菌、多剤耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)、ヘリコバクター・ピロリ菌、出血性大腸菌(EHEC)、天然痘ウイルス、麻しんウイルス、風しんウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水痘ウイルス、黄熱ウイルス、ロタウイルス、狂犬病ウイルス、日本脳炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、エイズウイルス、サルモネラ、クラミジア、マイコプラズマ、マラリア、コクシジウム、あるいは住血吸虫などが挙げられる。 したがって、上記のような免疫抗原とアジュバントを使用して製造できるワクチン製剤としては、例えば、BCGワクチン、コレラワクチン、ジフテリアワクチン、百日咳ワクチン、破傷風ワクチン、インフルエンザウイルスワクチン、インフルエンザ桿菌ワクチン、肺炎球菌ワクチン、炭疽菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、腸チフスワクチン、ポリオワクチン、結核菌ワクチン、多剤耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)ワクチン、ヘリコバクター・ピロリ菌ワクチン、出血性大腸菌(EHEC)ワクチン、天然痘ウイルスワクチン、麻しんワクチン、風しんワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、黄熱ワクチン、ロタウイルスワクチン、狂犬病ワクチン、日本脳炎ワクチン、A型肝炎ウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、ダニ媒介性脳炎ワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、エイズウイルスワクチン、サルモネラワクチン、クラミジアワクチン、マイコプラズマワクチン、マラリアワクチン、コクシジウムワクチン、あるいは住血吸虫ワクチンなどが挙げられる。これらのワクチンは、2種またはそれ以上と混合しても適用することができる。したがって、この発明のワクチンは、ヒトおよび動物に感染するウイルス、細菌、真菌、原虫、その他の微生物に有効である。 この発明に係るワクチン製剤は、さらに保存剤や安定剤を組み合わせて含有することもできる。安定剤としては、好ましくは0.2%程度のゲラチンやデキストラン、0.1−1.0%のグルタミン酸ナトリウム、あるいは約5%の乳糖や約2%のソルビトールなどが用いられる。保存剤としては、0.01%程度のチメロサールや0.5%程度のフェノキシエタノール、0.1%程度のベータプロピノラクトンなどが好ましい。 この発明に係るワクチン製剤は、免疫抗原、アジュバント、安定剤、保存剤、溶剤およびその他のワクチン成分をそれぞれ当該技術分野で公知の方法に従って厳密に無菌的に調製して、パイロジェンやアレルゲンとなるような夾雑蛋白質は可能な限り除去したうえで、それぞれのワクチン成分を所定量比で混合して調製することができる。 この発明のワクチン製剤において、免疫抗原とアジュバントとの混合比率は、一般的には、約1:0.0001〜1:10000(重量比)とするのがよいが、ワクチンの種類に応じて適宜好適な比率を決定して用いることができる。 また、この発明のワクチン製剤は、通常、免疫抗原とアジュバントとを一緒に混合した状態で接種するのがよいが、それぞれを別個に調製し、製剤化して、用時に混合してから接種してもよい。 この発明のワクチン製剤の接種方法としては、皮下注射による接種が一般的であるが、この投与経路に限定されるものではなく、静脈内、筋肉内、経皮などの非経口投与や経鼻投与、また経口投与なども可能である。また、このワクチン製剤の形態は、その接種方法に応じて適宜決めることが可能である。注射による非経口投与や経鼻投与などの場合は、ワクチン製剤の形態は液状が好ましく、経口投与の場合は、液状でも粉末状でもよい。 この発明のワクチン製剤を接種するときの免疫抗原の用量は、一般に、1投与あたり0.1ng〜100mg、望ましくは1μg〜1mg程度であるのがよい。 タンパク質抗原として卵白アルブミン(OVA)の生理食塩水(PBS)溶液と、幼若ホルモン類似体としてメトプレン(メトプレン標準品:和光純薬)、フェノキシカルブ(フェノキシカルブ標準品:和光純薬)およびピリプロキシフェン(ピリプロキシフェン標準品:和光純薬)の各エタノール溶液を下表1のように調製した。一般名メトプレン: ) 上記で調製した卵白アルブミン(OVA)の生理食塩水(PBS)溶液と、幼若ホルモン類似体エタノール溶液とを各群3匹からなる5週齢の雌マウス(BALB/c)に対し腹腔内投与した。生理食塩水(PBS)溶液は投与量は200μL、幼若ホルモン類似体エタノール溶液は、投与量が6mM/匹になるように調整した。投与後、0、1、3、5、7、9週目に眼窩採血して、室温で2時間放置し、遠心分離(12,000 rpm、15分、4℃)し、血清アルブミン(OVA)を回収した。 回収した血清中の卵白アルブミン特異的抗体をELISA法により次のように測定した。OVA(10μg/mL)を測定ウェルにコーティングし、1%BSAに溶解したPBSでブロッキングした。その後、各ウェルに50倍希釈した血清を添加し、4000倍希釈したAP標識抗マウスIgG(Cell Signaling)を添加した後、p−ニトロフェニルホスフェート(Sigma)にて発色させ、OD405 nmで血清中のOVA抗体を測定した。その結果を図1に示す。 A549細胞(セルあたり0.5 x 104個)を96ウエルに注入し、24時間後に所定濃度のフェノキシカルブを各ウエルに注入した。72時間後、細胞生存率をWST−1で測定して、A549細胞に対するフェノキシカルブの細胞毒性を決定した。なお、コントロールとしてエタノールを使用した。その結果を図2に示す。 A549細胞(セルあたり0.5 x 104個)を96ウエルに注入し、24時間後に所定濃度のピリプロキシフェンを各ウエルに注入した。72時間後、細胞生存率をWST−1で測定して、A549細胞に対するピリプロキシフェンの細胞毒性を決定した。なお、コントロールとしてエタノールを使用した。その結果を図3に示す。 この発明に係るワクチン効力増強添加剤(アジュバント)は、タンパク抗原との並行投与によりアジュバント活性を奏することができることから、ワクチン製剤として、ヒトおよび動物に感染するウイルス、細菌、真菌、原虫、その他の微生物に対して有効であるところから、かかる微生物による感染予防ならびに治療に有用である。したがって、この発明は、医薬分野において有用である。 幼若ホルモン類を有効成分として含有することを特徴とするワクチン効力増強添加剤。 請求項1に記載のワクチン効力増強添加剤であって、前記幼若ホルモン類が、メトプレン誘導体、フェノキシカルブ誘導体およびピリプロキシフェン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とするワクチン効力増強添加剤。 請求項1または2に記載のワクチン効力増強添加剤であって、前記メトプレン誘導体が、一般式 [I]:[式中、R1は、C1〜C6アルキル基;一般式[II]: (式中、R6は、水素原子またはC1〜C3アルキル基を意味し; R7は、C1〜C3アルキル基、C2〜C3アルケニル基、ハロゲン化C1〜C3アルキル基またはハロゲン化C2〜C3アルケニル基を意味し;および R8はC1〜C3アルキル基を意味する)で表される置換エチル基;または一般式[III]:(式中、R9はC1〜C3アルキル基を意味し;ならびに R10はC1〜C3アルキル基を意味する)で表される置換エポキシ基を意味する。}を意味し; R2はC1〜C3アルキル基を意味し; R3はOHまたはC1〜C3アルキル基を意味し; R4はC1〜C3アルキル基を意味し; R5はC1〜C6アルキル基(直鎖状または分岐状)もしくはC3〜C6アルキニルアルキル基を意味し; Zは酸素原子または硫黄原子を意味し;ならびに 点線(・・・)は一重結合または二重結合を意味する。]で表される化合物であることを特徴とするワクチン効力増強添加剤。 請求項1または2に記載のワクチン効力増強添加剤であって、前記フェノキシカルブ誘導体が、一般式[IV]: (式中、R11は、C1〜C6アルキル基、カルボキシル置換C1〜C6アルキル基またはC1〜C3アルコキシカルボニル置換C1〜C6アルキル基を意味し;ならびにX1、X2およびX3は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、NH2、NO2またはOHを意味する)で表される化合物であることを特徴とするワクチン効力増強添加剤。 請求項1または2に記載のワクチン効力増強添加剤であって、前記ピリプロキシフェン誘導体が、一般式[V]: (式中、X4、X5およびX6は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、NH2、NO2またはOHを意味し、ならびに X7およびX8は、同一であってもまたは異なっていてもよく、水素原子もしくはハロゲン原子を意味する。)で表される化合物であることを特徴とするワクチン効力増強添加剤。 メトプレン(methoprene)誘導体[I]、フェノキシカルブ(fenoxycarb)誘導体[IV]ならびにピリプロキシフェン(pyriproxyfen)誘導体[V]から選ばれる少なくとも1種の幼若ホルモン類似体を請求項1ないし5に記載するワクチン効力増強添加剤として使用することを特徴とする幼若ホルモン類似体の使用方法。 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のワクチン効力増強添加剤と抗原とを含むことを特徴とするワクチン製剤。 請求項7に記載のワクチン製剤であって、前記抗原が、細菌、ウイルス、真菌、原虫ならびに他の微生物に由来することを特徴とするワクチン製剤。 【課題】 従来のアジュバントが抱える諸問題を改善することができ、かつ、タンパク質抗原との並行投与により抗体産生を高めることとができるワクチン効力増強添加剤およびそれを含むワクチン製剤を提供すること。 【解決手段】 この発明に係るワクチン効力増強添加剤は、メトプレン(methoprene)誘導体、フェノキシカルブ(fenoxycarb)誘導体ならびにピリプロキシフェン(pyriproxyfen)誘導体から選ばれる幼若ホルモン類似体を有効成分として含有し、タンパク質抗原との並行投与により抗体産生を高めることが可能である。また、この発明のワクチン製剤は、ワクチン成分と共に、該ワクチン効力増強添加剤を含有するものである。【選択図】なし


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