タイトル: | 公開特許公報(A)_胃粘膜保護用組成物、ウレアーゼ活性阻害用組成物及びそれらの組成物を有効成分とする医薬製剤 |
出願番号: | 2011178557 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 31/7048,A61P 1/04,A61P 43/00,A61K 31/4745,A61K 31/05,A61K 36/00,A61K 36/75,A61K 36/28,C07H 17/08,C07D 455/03 |
家高 敏彰 JP 2012097072 公開特許公報(A) 20120524 2011178557 20110817 胃粘膜保護用組成物、ウレアーゼ活性阻害用組成物及びそれらの組成物を有効成分とする医薬製剤 長野県製薬株式会社 399063507 柴田 富士子 100134153 柴田 五雄 100112760 家高 敏彰 JP 2010228738 20101008 A61K 31/7048 20060101AFI20120420BHJP A61P 1/04 20060101ALI20120420BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120420BHJP A61K 31/4745 20060101ALI20120420BHJP A61K 31/05 20060101ALI20120420BHJP A61K 36/00 20060101ALI20120420BHJP A61K 36/75 20060101ALI20120420BHJP A61K 36/28 20060101ALI20120420BHJP C07H 17/08 20060101ALN20120420BHJP C07D 455/03 20060101ALN20120420BHJP JPA61K31/7048A61P1/04A61P43/00 111A61K31/4745A61K31/05A61K35/78 WA61K35/78 XA61K35/78 KA61K35/78 TC07H17/08 AC07D455/03 8 OL 19 4C057 4C064 4C086 4C088 4C206 4C057BB02 4C057DD01 4C057KK11 4C064AA14 4C064CC02 4C064DD01 4C064EE03 4C064FF01 4C064GG01 4C064HH07 4C086AA01 4C086AA02 4C086CB22 4C086EA11 4C086MA01 4C086MA03 4C086MA04 4C086NA05 4C086NA14 4C086ZA66 4C086ZA68 4C086ZC20 4C086ZC75 4C088AB26 4C088AB55 4C088AB62 4C088AB65 4C088AB67 4C088AC01 4C088AC02 4C088AC06 4C088AC13 4C088BA08 4C088BA13 4C088BA23 4C088BA32 4C088BA33 4C088CA03 4C088CA05 4C088CA06 4C088MA08 4C088NA05 4C088ZA66 4C088ZA68 4C088ZC75 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA17 4C206KA18 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA17 4C206MA28 4C206NA05 4C206ZA66 4C206ZA68 4C206ZC75 本発明は、ウレアーゼ活性阻害用組成物、その組成物を有効成分とする医薬製剤に関する。より詳細には、スウェルチアマリンを有効成分として含有する、ウレアーゼ活性阻害用組成物、その組成物を有効成分とする医薬製剤に関する。 尿素を加水分解して二酸化炭素とアンモニアとに分解する酵素であるウレアーゼは、クレブシェラ・エルギノーザ(Klebsiella aerogenes)、スポロサルシナ・パステューリ(Sporosarcina pasteurii)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)等の菌によって産生される。 これらの中でも、ヘリコバクター・ピロリがウレアーゼによって尿素を分解し、それによって発生するアンモニアで胃酸を中和して胃に棲みつき、胃潰瘍の他、慢性蕁麻疹等の疾患の原因になることが知られている。 日本人は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の罹患率が西欧人に比べて高いが、こうした疾病の発症とヘリコバクター・ピロリへの感染とは相関があると言われている。そして、胃に棲みついたヘリコバクター・ピロリの除菌が胃潰瘍の治療等に有用であることから、現在のところ、オメプラゾールやランソプラゾール等のプロトンポンプ阻害剤(PPI)と後述する2種の構成物質とを組み合わせた3剤併用療法による除菌が行われている。(非特許文献1参照、以下「従来例1」という。)。 一方で、3剤併用による除菌の際に用いられるプロトンポンプ阻害剤(PPI)と抗生物質2種との併用ではなく、生薬を用いたヘリコバクター・ピロリの活性抑制剤等も提案されている(特許文献1:特開2004-115536、以下、「従来例2」という)。特開2004-115536特開2009-263262http://www.takeda.co.jp/press/article_37653.html 従来例1の3剤併用療法は、ヘリコバクター・ピロリの除菌には効果的な方法である。しかし、幾つかの問題点がある。まず、PPIには、胃壁が弱っている場合には胃潰瘍の原因となりかねないことや逆流性食道炎等を起こす場合があるといった副作用があること、及び逆転写酵素阻害剤であるアタザナビル硫酸塩とは併用が禁止されており、テオフィリン、タクロリムス水和物、ジゴキシン、メチルジゴキシン、イトラコナゾール、ゲフィチニブ、フェニトイン、ジアゼパム等とは併用に注意が必要であるとされている。 さらに、一次除菌にはアモキシシリン(AMPC)及びクラシスロマイシン(CAM)が使用されるが、この組み合わせでうまく除菌ができなかった場合に、二次除菌では、クラシスロマイシン(CAM)に代えてメトロニダゾール(MNZ)を使用することにも示されるように、耐性菌の出現という問題があり、耐性菌が出現すると除菌率が低下する。 このため、副作用が少なく、かつ耐性菌の出現しにくい薬剤に対する社会的な要請は強い。 また、従来例2の発明は、抗ヘリコバクター・ピロリ活性剤の発明が開示されている。この発明は、ヘリコバクター・ピロリ(ATCC 43504株)が産生するウレアーゼの活性を、オウゴン、アロエ、シャクヤク、クジン、ケイヒ、ケイヒ、大茴香、ニクズク、リョウキョウ、セキシャク、エンメイソウ、アカメガシワ、ヨウバイヒが阻害することに着目して完成されたものであり、ウレアーゼの阻害活性を有することが開示されている。 しかし、実際に製剤として開示されているのは、アカメガシワとシャクヤクとを有効成分とする錠剤/カプセル剤、エンメイソウとヨウバイヒとを有効成分とする顆粒剤、及びリョウキョウとウバイとを有効成分とする内服液である。 一方、従来例1には、センブリがヘリコバクター・ピロリの増殖阻害効果を有することは記載されているが、ウレアーゼを阻害する活性を有することは記載されていない。また、センブリに含まれているスウェルチアマリンには、インスリン様増殖因子−1(IGF-1)の産生を促進することが知られている(特許文献2:特開2009−263262、以下「従来例3」という)が、ウレアーゼ阻害活性があることは知られていない。 さらに、副作用の面から見れば生薬を候補としてウレアーゼ阻害活性を有するものを探索することが望ましいが、その場合、供給量の点で問題がないものであることも考慮する必要がある。 本発明は、上記のような環境の下で完成されたものである。 すなわち、本発明は、スウェルチアマリン、そのエステル、その生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるA群から選ばれる少なくとも1種以上を有効成分として含有する、胃粘膜保護用組成物である。 スウェルチアマリンは、下記式(I)で表わされる化合物である。 ここで、スウェルチアマリンのエステルとしては、四酢酸エステルであることが好ましく、生理学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、酢酸塩及びアンモニウム塩からなる群から選ばれるいずれかの塩であることが好ましく、水和物としては、一水和物、二水和物、及び六水和物であることが好ましい。 また、上記組成物は、下記式(II)で表わされるベルベリン、その生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるB群から選ばれる少なくとも1種以上、並びに、下記式(III)で表わされるマグノロール、その生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるC群から選ばれる少なくとも1種以上をさらに含み、A群、B群及びC群から選ばれた化合物の混合比が、モル比で1:(9〜13):(11〜15)であることが好ましい。 ここで、ベルベリンの生理学的に許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、二硫酸塩、及びタンニン酸塩からなる群から選ばれるいずれかの塩であることが好ましく、水和物としては、二水和物、三水和物、及び5・1/2水和物からなる群から選ばれるいずれかの水和物であることが好ましい。 また、マグノロールの生理学的に許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、及びアンモニウム酸塩からなる群から選ばれるいずれかの塩であることが好ましい。 本発明はまた、オウバク末エキス、センブリ末エキス及びコウボク末エキスからなる群から選ばれる少なくとも2種以上の生薬を含むことを特徴とする、ウレアーゼ活性阻害用組成物である。ここで、本発明の組成物は、オウバクエキス、センブリ末エキス及びコウボク末エキスを含み、さらに、ゲンノショウコ末及びビャクジュツ末を含むものであることがさらに好ましい。 そして、これらの抽出物を含む組成物中で、上記のA群、B群及びC群から選ばれた化合物の混合比が、モル比で1:(9〜13):(11〜15)となっていることがさらに好ましい。 また、本発明は、上記のいずれかの胃粘膜保護用組成物を含有する医薬製剤である。 本発明はさらにまた、上述した胃粘膜保護用組成物を含有する、ウレアーゼ活性阻害用組成物である。また、本発明は、前記ウレアーゼ活性阻害用組成物を含有する医薬製剤である。 本発明によれば、スウェルチアマリンを有効成分として含有し、強いウレアーゼ活性阻害作用を有する組成物を得ることができる。また、この組成物を有効成分として含有する、医薬製剤を得ることができる。図1は、各生薬及び百草丸の抽出物によるウレアーゼ活性阻害率を示すグラフである。図2は、正常群(陰性対照群)、対照群(陽性対照群)、御岳百草丸投与群、ベルベリン投与群における、スナネズミの胃粘膜の損傷面積を示したグラフである。図3は、正常群(陰性対照群)、対照群(陽性対照群)、御岳百草丸投与群、ベルベリン投与群における、スナネズミの胃粘膜の出血面積を示したグラフである。図4は、正常群(陰性対照群)、対照群(陽性対照群)、御岳百草丸投与群、ベルベリン投与群における、スナネズミの胃内でのHelicobacter pyloriの生息菌数を示したグラフである。図5は、正常群(陰性対照群)、対照群(陽性対照群)、御岳百草丸投与群、ベルベリン投与群における、スナネズミの胃粘膜のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の活性を示したグラフである。 以下に本発明を更に詳細に説明する。 本発明のウレアーゼ活性阻害用組成物は、スウェルチアマリン(C16H22O10,分子量 374.34)、そのエステル、その生理学的に許容される塩、及び水和物からなるA群から選ばれる少なくとも1種以上を有効成分として含有するものである。スウェルチアマリンは、上記式(I)で表わされる通りの配糖体であり、後述するセンブリに含有される化合物である。 また、本発明のウレアーゼ活性阻害用組成物は、ベルベリン([C20H18NO4]+、式量336.37)、その生理学的に許容される塩、及び水和物からなるB群から選ばれる少なくとも1種以上、並びにマグノロール(C18H18O2,分子量266.34)その生理学的に許容される塩、及び水和物からなるC群から選ばれる少なくとも1種以上をさらに含むものであることが、ウレアーゼ阻害活性が高いことから好ましい。 ベルベリンは、上記式(II)で表わされるアルカロイドであり、後述するオウバクに含有される化合物である。また、マグノロールは、上記式(III)で表わされる化合物であり、後述するコウボクに含有されるものである。 これらのエステル、生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物については、上述した通りである。 さらに、上記のA群、B群及びC群から選ばれた化合物の混合比が、モル比で1:(9〜13):(11〜15)であることが、ウレアーゼ阻害活性が高いことから好ましく、1:11:13のときに、最も活性が高い。 本発明のウレアーゼ活性阻害用組成物は、市販されているナタマメ由来のウレアーゼ、ATCC43504その他のヘリコバクター・ピロリから得られるウレアーゼのみならず、ヘリコバクター・ピロリ菌の臨床分離株から得られるものに対しても阻害作用を有するものである。 本発明はまた、オウバク末エキス、センブリ末エキス及びコウボク末エキスからなる群から選ばれる少なくとも2種以上の生薬を含む、ウレアーゼ活性阻害用組成物である。(生薬エキスの調製) ここで、オウバクはキハダ(Phellodendron Bark)又はその他同属植物(Phellodendron)の周皮を除いた樹皮から得られる生薬であり(日本薬局方)、粉末にしたものをオウバク末(日本薬局方)という。オウバク末に、所定の溶媒を加えて所定の条件で抽出することにより、有効成分ベルベリンを含有する抽出液が得られる。所定の溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル及び水等を挙げることができ、メタノール又は水を使用することが、有効成分の抽出効率が高いことから好ましい。溶媒の添加量としては、3〜7(w/v)とすることが有効成分の抽出効率の点から好ましく、4〜6(w/v)とすることがさらに好ましい。 抽出の条件としては、振蘯、ソックスレー抽出、超音波抽出等を挙げることができ、抽出効率の点から超音波抽出を行うことが好ましい。抽出時間は約15分〜約60分とすることが抽出効率の点から好ましく、約30分とすることがさらに好ましい。また、抽出温度は、20℃〜40℃とすることが抽出効率の点から好ましい。 ゲンノショウコは、ゲンノショウコ(Geranin thunbergii Siebold et Zuccarini (Geraniaceae))の地上部(日本薬局方)から得られる生薬であり、粉末としたものをゲンノショウコ末という(日本薬局方)。ゲンノショウコ末からも、上述したオウバク末と同様の条件で抽出液を得ることができる。 ビャクジュツは、オケラ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura)の根茎(ワビャクジュツ)又はオオバナオケラ(Atractylodes ovate De Candlle (Compositae))の根茎(カラビャクジュツ)から得られる生薬であり、粉末としたものをビャクジュツ末(日本薬局方)という。ビャクジュツ末からも、上述したオウバク末と同様の条件で抽出液を得ることができる。 センブリは、センブリ(Swertia japonica Makino(Gentianaceae))の開花期の全草であり、これを粉末としたものをセンブリ末という(日本薬局方)。センブリ末からも、上述したオウバク末と同様の条件で有効成分を含有する抽出液を得ることができる。この抽出液には、主成分の1つとして下記式(I)で表わされる配糖体、スウェルチアマリンが含有されている。 コウボクは、ホウノキ(Magnolia obovata Thunberg, Magnolia officibalis Rehder et al Wilson又はMagnolia officinalis Rehder et Wilson var. biloba Rehder et Wilson (Magnoliaceae))の樹皮から得られる生薬であり(日本薬局方)、粉末にしたものをコウボク末という(日本薬局方)。コウボク末からも、上述したオウバク末と同様の条件で抽出液を得ることができる。この抽出液には、主成分の1つとして、下記式(III)で表わされるマグノロールが含有されている。 上述したスウェルチアマリン、ベルベリン、及びマグノロール、これらのエステル、これらの生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物は、常法に従って精製して得ることもでき、市販品を購入して使用することもできる。 また、これらの抽出物の混合物として、上述した生薬の抽出液を所定の割合で混合してもよく、またこれらの抽出液を含有する生薬製剤を所定の溶媒で抽出し、これを使用することもできる。 具体的には、御岳百草丸(登録商標、長野県製薬(株))に、所定の溶媒、例えば、メタノールを10〜20倍(w/v)加えて抽出し、この抽出液を使用することができる。抽出は上述した方法を使用することができるが、ソックスレー抽出を行うことが、ベルベリン抽出効率が良いという理由から好ましい。 得られた抽出液(以下、「百草丸抽出液」という。)を、約40〜60°Cの湯浴を使用しながら減圧濃縮することによって、試料(百草丸エキス)とすることができる。使用の際には、減圧濃縮した百草丸エキスを、所望の溶媒で適宜希釈して使用する。 以下に、スウェルチアマリンを含有する抽出液を得る場合を例に挙げて説明する。上述したセンブリを乾燥させてこれを粉末とするか、市販のセンブリ末を所定量秤量し、これに3〜7倍(w/v)、好ましくは4〜6(w/v)倍の溶媒、例えば、メタノールを加えて、20〜30℃にて、15〜30分間、例えば、超音波抽出を行う。 得られた抽出液を濾過し、例えば、ロータリーエバポレータで濃縮した後に、常法に従って凍結乾燥する。以上のようにして、スウェルチアマリンを含有する抽出液を得ることができる。 ベルベリン又はマグノロールを含有する抽出液についても、同様にして得ることができる。これらを保存試料として、以下に記載するウレアーゼの阻害活性試験、抗菌試験及びin vivoでの胃粘膜保護試験に供する。(ウレアーゼの阻害試験) 所定の培地を調整し、ウレアーゼの産生菌を植菌し、所定の条件下で培養する。例えば、コロンビアHP培地を調整し、ここにヘリコバクター・ピロリを植菌して、微好気性条件下に、35〜39°Cで培養する。ここで、微好気性条件とは、炭酸ガス濃度の範囲が5〜8%の範囲にあることをいう。培養温度は、37°Cとすることが、生体内での増殖条件に近いことから好適である。 菌の増殖を確認した後に、適当な培地、例えば、5〜15%の仔ウシ血清を添加したブレインハートインフージョン培地に掻き取った菌を懸濁し、これを処理して菌の産生する酵素を含有する溶液を調製する。 具体的には、上記の懸濁液を、約(15,000rpm又は126xg)で遠心し、上清を除く。得られた沈渣に適当な還元剤とキレーター、例えば、0.5〜2mMのメルカプトエタノールと0.5〜2mMのEDTA−2Naとを添加したリン酸緩衝液(以下、「PB」ということがある。)を加え、氷冷下に、例えば、超音波処理を行って菌を破砕する。遠心によって、破砕物を沈殿させ、上清を濾別してPBで所定倍、例えば、10〜20倍に希釈して酵素液を調製する。 このようして得られた試験用酵素液に上述したようにして得られた各試料からの抽出液を加えて所定の条件下に静置し、ウレアーゼの基質溶液を加えて混合する。その後、所定の条件の下で一定時間反応させる。具体的には、例えば、酵素液25〜200μLに上記の抽出液を10〜50μL加え、約37°Cのウォーターバス中に10〜20分間置き、次いで200〜600mMの尿素を含有するPBを添加する。PBの添加後、ただちに振とうし、再度、約37℃のウォーターバス中に10〜20分間置き、その後、0.5〜2Nの硫酸を加えて反応を停止させる。 反応を停止させた溶液をインドフェノール法に従って処理し、ウレアーゼの阻害率を630nmの吸光度から求める。以上のようにして、ウレアーゼ阻害効果を確認することができる。(抗菌試験) 凍結保存してある所定のHelicobacter pylori株を、所定の培地に白金耳で植菌し、所定の条件下で培養して菌苔を形成させる。この菌苔を掻き取って懸濁液とし、濁度を、測定し、所望の菌数となるように調整する。この懸濁液を所定の寒天培地上に塗布して、所定の条件下に培養し、所定の濃度の薬液を浸み込ませたディスクを置き、阻止円の形成による抗菌作用を測定することができる。 例えば、−80°Cで凍結保存しておいたH. pyloriの臨床株を、コロンビアHP寒天培地に白金耳で植菌し、微好気条件下に約37°Cで2〜4日間培養して菌苔を形成させ、その一部を掻き取って懸濁液とする。この懸濁液の濁度を、例えば、OD600で測定し、菌数が0.5〜2x106個/100μLとなるように調製し、コロンビアHP寒天培地に塗布し、薬液50μLを浸み込ませたディスクをこの寒天培地上に置き、約37℃で3日間、微好気条件下に培養する。このときに形成された阻止円の大きさから、50%阻止濃度を求めることにより、抗菌作用の強さを評価することができる。 また、阻止円内のH. pyloriのコロニー形成能を、阻止円内を白金耳で触れ、HI-FBS-TTC培地に線を引き、画線培養することによって調べることができる。画線培養は、例えば、約37°Cで2〜4日間、微好気条件下に行うことができる。 さらに、例えば、0.1%(w/v)デオキシコール酸含有培地等を用いて、菌のコロニー形成能を調べることもできる。例えば、上記のH. pyloriをHP寒天培地に塗り広げ、微好気条件下で、約37°Cにて2〜4日間培養し、次いで、培養した菌を白金耳にとり、HI-FBS-DCA培地に線を引き、微好気条件下にて、さらに約37℃で2〜4日間培養して、形成されたコロニー数を計数することによって、こうした培地でのコロニー形成能を調べることができる。 また、H. pyloriを所望の数、例えば、2x108 CFU/0.5mL/マウスで経口接種し、その後、所望の量の御岳百草丸溶液又はベルベリン溶液を所望の期間、経口投与して、胃粘膜の損傷の程度、胃内でのH. pyloriの生息数、及びミエロパーオキシダーゼ(MPO)等の酵素活性を測定し、in vivoでの胃粘膜に対する効果を検討することができる。胃粘膜の損傷の程度は、例えば、実体顕微鏡下に目視によって確認して評価することができる。また、胃内でのH. pyloriの生息数は、例えば、ブルセラ寒天培地に、5〜15%の馬脱繊維血、1〜5μg/mLのアンホテリシンB、7〜11μg/mLのバンコマイシン、0.1〜0.64μg/mLのポリミキシンB、1〜10μg/mLのトリメトプリム、10〜100μg/mLのl, 2, 3, 5-triphenyltetrazolium chlorideを加えたH. pylori 選択プレートを用いて、形成されたコロニー数をカウントし、定量することができる。市販のH. pylori選択培養プレートを使用してもよい。 また、ミエロパーオキシダーゼ(MPO)等の酵素活性は、所定の期間、薬物を投与し、薬物投与の終了後所望の期間、通常は約24時間、絶食させた動物をエーテル麻酔下に開腹して胃を摘出する。薬物としては、例えば、御岳百草丸とベルベリンを、それぞれ、0.5〜2粒/kg/日又は0.1〜0.6mg/kg/日となるよう調製して、使用することができる。 胃粘としては、摘出した胃の所望の部位、例えば、胃体部及び幽門部の境界領域をコルクボーラー等を用いてパンチアウトして試験片とし、重量を測定する。こうして調製した試験片50mgに対して、所望の緩衝液、例えば、0.5% hexadecyltrimethylammonium bromideを含有する50 mMのリン酸緩衝液(pH6.0、以下「PBH」ということがある)を所定の量、例えば、1.0mL加え、ポリトロン等にて破砕後、この破砕液を2〜5回凍結融解し、例えば、2,000xgで10分間、4°Cにて遠心分離し、この上清を測定用試料とする。 このようにして、得た測定用試料から、2〜10μLを取って、所望の濃度、例えば、0.167mg/mlのo-dianisidine dihydrochlorideおよび0.0001〜0.001%のH2O2を含む5〜20mMのPBH(pH 6.0)140〜148μLを加えて混和する。この混液を、例えば、吸光度450nmで測定し、MPO活性を測定することができる。 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。[試料抽出液の調製] 日局オウバク末(ベルベリン濃度1.21%)は堀江生薬(株)から、日局コウボク末(マグのロール濃度2.10%)、日局センブリ末(スウェルチアマリン濃度3.13%)、日局ゲンノショウコ末、日局ビャクジュツ末は、長野県生薬(株)より、それぞれ購入した。 日局オウバク末、日局コウボク末、日局センブリ末は、別々の容器にそれぞれ10.0gを秤量し、50mLのメタノールを加えて30分間超音波抽出を行った。 日局ゲンノショウコ末は1.675gを秤量し、50mLのメタノールを加えて30分間超音波抽出を行った。日局ビャクジュツ末は0.50gを秤量し、50mLのメタノールを加えて30分間超音波抽出を行った。 百草丸を粉末にし、日本薬局方24号篩を通した後、40gを秤量し、円筒濾紙(Whatman、GEヘルスケア・ジャパン(株)製)にとった。800mLのメタノール(和光純薬工業(株)製)を加えて、80°Cのウォーターバス中で20時間、ソックスレー抽出器を用いて抽出を行った。 得られた抽出液を濾紙(No.4、Whatman)で濾過し、ロータリーエバポレータにて、50℃で減圧濃縮し、百草丸抽出液とした。百草丸抽出液を以下の条件で高速液体クロマトグラフィーに供し、ベルベリン、マグノロール及びスウェルチアマリンの含有量を測定した。 ベルベリン、マグノロール及びスウェルチアマリンの標準品は、和光純薬工業(株)より購入した。<HPLC条件> 装 置:高速液体クロマトグラフ((株)日立製作所) システムコントローラ:D-7000 インジェクタ:L-7200 ポンプ:L-7100 検出機:L-7405 溶離液:0〜12分、12分〜25分、25分〜30分で移動相の組成を変えて溶出させた。12分〜25分で使用した移動相を除き、9mMのリン酸二水素カリウム及び9mMの1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含む水/アセトニトリル混液(16:9)を使用した。12分〜25分では、19.7mMのリン酸二水素カリウム及び4mMの1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含む水/アセトニトリル混液(56:69)を使用した。 カラム:内径4.6mm×長さ150mm 粒子径5μm(ODS) 流 速:1.0mL/min カラム温度:40 ℃ 得られた各抽出液は、下記表1〜6に示す量にメタノール(和光純薬工業(株)製)で希釈し、ウレアーゼ阻害試験に使用した。[ウレアーゼ活性阻害試験](1)酵素溶液の調製 コロンビアHP培地(日本ベクトン・ディッキンソン(株)製)を用いて、ヘリコバクター・ピロリ(東京大学医科学研究所より供与を受けた臨床分離菌株)を、5日間微好気性条件下(アネロパウチ・キャンピロ,三菱ガス化学(株)製)で培養し、増殖させた。 次いで、コロンビアHP培地上で増殖したピロリ菌のコロニーを掻き取り、ここに2〜3mLの10%子牛血清(Gemini. Bio. Products社製)含有ブレインハートインフュージョン培地を加えて攪拌し、この菌液を2,000rpmで遠心分離した。 沈渣に1mMのメルカプトエタノールと1mMのEDTA-2Naとを添加したリン酸バッファー2〜3mLを加え、5分間、氷冷下で超音波処理をした。次いで、これを15,000rpmで遠心分離し、上清を濾別した。濾別した上清を20mMのリン酸バッファーで15倍に希釈し、酵素溶液(ストック溶液)とした。(2)ウレアーゼ活性の測定 ウレアーゼの活性はインドフェノール法で測定した。まず、フェノール5.0g、ニトロプルシドナトリウム25mgを秤量して500mLの水に溶解させ、フェノール・ニトロプルシッドナトリウム溶液(以下、「溶液A」という。)を調製した。また、2.2gのリン酸水素ナトリウム及び2.5gの水酸化ナトリウムを約300mLの水に溶解し、ここに、3.0mLの有効塩素濃度10%以上の次亜塩素酸ナトリウムを添加し、水を加えて500mLとした溶液(以下、「溶液B」という。)を調製した。 上記(1)で得られた各抽出液50μLを試験管に取り(n=3)、ここに上記酵素液50μLを加えてよく混合し、37°Cで15分間インキュベートし、400 mMの尿素を添加した100mMリン酸緩衝液を基質溶液として300μL添加した。この混合液を直ちに振とうし、37°Cで15分間インキュベートした後に、100μLの1N硫酸を加えて反応を停止させた。 得られた反応液に、上記の溶液A及び溶液Bを溶解し、有効塩素10%以上の次亜塩素酸ナトリウム3.0 mlを添加し、水で500 mlとした溶液2.5 mlを加え、65°Cのウォーターバス中で20分間インキュベートした。吸光光度計にて、波長630nmで測定し、下記の式に従ってウレアーゼの阻害率を求めた。 ウレアーゼ活性値(U)=Es−Eb Es:酵素液を使用して測定した吸光度 Eb:酵素液の代わりに緩衝液を使用して測定した吸光度 ウレアーゼ阻害率(%)={(Ub−Us)/Ub}×100 Ub:抽出液の代わりに水を使用して測定したウレアーゼ活性値 Us:抽出液を使用して測定したウレアーゼ活性値 各試料のウレアーゼ阻害活性を、表1〜表6に示す。 *反応液が黄色となり、吸光度は−で振り切れたため、100とした。 上記表6より、ゲンノショウコに高いウレアーゼ阻害活性が見られた。これに対し、センブリ及びビャクジュツには中程度のウレアーゼ阻害活性他見られた(表4及び表5)が、オウバクのウレアーゼ阻害活性は弱く(表2)、コウボクにはウレアーゼ阻害活性は見られなかった(表3)。 これに対し、百草丸の抽出物は非常に高いウレアーゼ阻害活性を示した(表1)。このため、実施例1で得た抽出液中のスウェルチアマリン、ベルベリン及びマグノロールの含有量を測定した。結果を下記表7に示す。 以上より、上記の各生薬からの抽出物を、それらに含まれるスウェルチアマリン、ベルベリン及びマグノロールの量比が、上記表7に示す割合となるように混合することによって、これらの抽出物単独では得られない、相乗的な高いウレアーゼ阻害活性を示すことが明らかになった。[抗菌作用の検討](1)試料等 通常、胃腸薬として市販されている製品で、抗菌作用のある中医・和漢生薬を複数含有する製剤(百草丸、長野県製薬(株))を用いて、その製剤及び含有する生薬のHelicobacter pyloriに対する抗菌作用を調べた。 コロンビアHP寒天培地は、日本ベクトン・ディッキンソン(株)より購入して使用した。ハートインフュージョン(HI)、トリプティケースソイブロス(TBS)培地、及びミューラーヒントン培地は、栄研化学(株)より購入したものを用いた。血清を含むHI培地は、牛胎児血清(FBS、Gemini. Bio. Products社製)を10%(v/v)加えて調製した。 必要に応じて、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC、東京化成工業(株)製)を5x10-4%(v/v)、またはデオキシコール酸(DCA、和光純薬(株)製)を0.1%(w/v)加えた。LB培地は、0.5gのNaCl、0.5gのイーストエキストラクト、1gのトリプトンに100mLの蒸留水を加えて調製した。 百草丸5gに、メタノール100mLを加えて抽出を行い、そのメタノール抽出液(ベルベリン4.13%、マグノロール3.77%、スウェルチアマリン0.33%含有)を試験に供した。 和漢生薬として、オウバクエキス(ベルベリン8.8%含有、日本粉末(株)製)の原液と、コウボク乾燥エキス(マグノロール0.695%含有、日本粉末(株)製)を用いた。これらは、それぞれ5gを水50mLに溶かして100mg/mLに調整し、原液とした。 また、センブリ末エキス(スウェルチアマリン9.86%含有、日本粉末(株)製)は、66%センブリエキス(170mg/mL)の水溶液を調整し、原液とした。ゲンノショウコ末エキスは、66%ゲンノショウコエキスを用いて33.5mg/mLの水溶液を調整し、ゲンノショウコ原液とした。ビャクジュツ末エキス(日本粉末(株)製)は、73.6%ビャクジュツエキスを用いて82mg/mLの水溶液に調整し、原液とした。 生薬の有効成分の標準品として、市販のベルベリン、マグノロール、スウェルチアマリン(いずれも、和光純薬(株)製)を使用した。塩化ベルベリンは10mg/mL、マグノロールとスウェルチアマリンはそれぞれ1mg/mLのメタノール溶液に調整し、これらを原液とした。なお、クラリスロマイシン(和光純薬(株)製)は、2mg/mLのメタノール溶液に調整し、原液とした。 ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、東大医科研より1株、理研より2株(株名なし、JCM12095)を入手し、使用した。(2)抗菌効果の測定 抗菌効果の測定はディスク法で行い、阻止円の直径を測定して評価した。 菌液の調整は、以下のように行った。−80°Cで凍結保存してあるHelicobacter pyloriのHI-FBS凍結凝塊を、コロンビアHP寒天培地に白金耳で全面に植菌し、微好気ガスパック(三菱ガス化学(株))を用いて、37°Cで3日間培養した。次いで、この培地上にHI-FBSを2mL加えて菌苔を掻き取り懸濁液とした。 この懸濁液の濁度をOD600で測定し、菌数が106個/100μLとなるように調製した。この菌液100μLをコロンビアHP寒天培地に塗布し、薬液50μLを浸み込ませたディスク(ペーパーディスク抗生物質検定用、直径8mm(ADVANTEC東洋(株)製))をこの寒天培地上に置き、37°Cで3日間、微好気条件下に培養した。 陰性対照として、10倍希釈した菌液をコロンビアHP寒天培地に塗布した別プレートを作成し、同時に同じ条件下で培養して、コロニー数を計数した。 1検体について、同じ条件で3回以上実験を行い、各回の阻止円を測定して平均値と偏差とを求めた。 陽性対象として、Escherichia coliとStaphylococcus aureus H209Pを用い、同様の実験を行い、抗菌効果を測定した。E. coliはLB培地で、S. aureusはTSB培地で、それぞれ培養し、各菌液の濁度をOD600で測定し、Helicobacter pyloriのときと同様に、106個/100μLに調製し、ミューラーヒントン培地に塗布してディスクを置き、37°Cで一昼夜培養し、阻止円の直径を測定した。結果を表8に示す。 オウバク末エキス、コウボク末エキス、ゲンノショウコ末エキスは、いずれも、S. aureus、2株のHelicobacter pyloriに対する阻止円が形成され、これらの菌に対して抗菌作用を示した。オウバク及びコウボクでは、標準品とエキスとで阻止円の大きさに違いがあり、エキスの阻止円の方が大きくなっていた。 センブリ末エキスの場合、E. coli、S. aureus及び2株のH. pyloriに対する阻止円が形成されたが、スウェルチアマリンの標準品では、いずれの濃度でも、阻止円の形成は見られなかった。また、ビャクジュツ末エキスでは、使用したいずれの菌に対しても阻止円を形成しなかった。一方、製剤では、H. pyloriの2株に対し、阻止円の形成が見られた。製剤とほぼ同量のベルベリンを含有するオウバク末エキスでは、製剤より大きな阻止円の形成が観察された。S. aureusでは、製剤を用いたときには阻止円が形成されなかった。 これに対し、Helicobacter pyloriでは、エキスを使用した場合に形成される阻止円よりも小さかったが、製剤でも阻止円が形成され、抗菌作用があることが確認された。(3)阻止円内のHelicobacter pyloriのコロニー形成能の検討 また、抗菌効果の測定方法の手順に従って、Helicobacter pyloriの培養を行い、クラリスロマイシン、ベルベリン、オウバクエキスのディスクを置いて阻止円を形成させた。その後、阻止円内を白金耳で触れ、HI-FBS-TTC培地に線を引き、画線培養した。対照として阻止円外の菌苔についても、同様の操作を行った。以上のようにして調製したプレートを、37°Cで3日間、微好気条件下に培養した。 また、各プレートに上記の薬液に浸漬したディスクを置いて、同様の条件下に培養を行い、1〜4日目まで、経時的に阻止円内外の菌のコロニー形成能の有無を検討した。結果を表9に示す。 阻止円内のH. pyloriのコロニー形成能を確認した結果、阻止円の菌苔から、画線培養した菌は生育した。しかし、クラリスロマイシン、ベルベリン、オウバク末エキスを含浸させたディスクによって形成された阻止円内から採取し画線培養した菌は、いずれも、生育しなかった。 H. pyloriは、周囲の環境がその生存に適さなくなると、球状体cocoid formに変化することが知られていることから、この実験において、阻止円内から得た菌を画線培養しても生育しなかったことが、抗菌薬の抗菌作用によるものであるのか否かは判定できなかった。(4)0.1%(w/v)デオキシコール酸含有培地における菌のコロニー形成能 E. coli、S. aureus及びH. pyloriを用いた実験で使用した各薬剤の抗菌スペクトルを見ると、Helicobacter pyloriは同じグラム陰性菌のE. coliではなく、グラム陽性菌であるS. aureusに類似した抗菌スペクトルを示した。これより、グラム陽性菌の発育を抑制するデオキシコール酸含有培地におけるHelicobacter pyloriの生育の有無を検討した。 −80°Cで凍結保存してあるHelicobacter pyloriをHP寒天培地に塗り広げ、微好気条件下で、37°Cにて3日間培養した。次いで、培養した菌を白金耳にとり、HI-FBS-DCA培地に線を引き、微好気条件下にて、37°Cで3日間培養した。E. coli及びS. aureusは、LB寒天培地上野コロニーを白金耳で釣菌し、HI-FBS-DCA培地に画線し、37°Cで一昼夜培養を行った。 また、対象として、HI-FBS培地でも、同様に培養を行った。結果を表10に示す。 表10に示されるように、デオキシコール酸含有培地において、E. coliは発育できたが、S. aureus、Helicobacter pyloriは発育しなかった。これに対し、対照であるデオキシコール酸を含んでいない培地では、すべての菌が生育した。このことから、同じグラム陰性菌であっても、Helicobacter pyloriとE. coliとでは、外膜の透過性に違いがある可能性が示唆された。 以上より、胃腸薬として常用されている製剤Aに、ピロリ菌に対する抗菌作用が見られ、このことから、除菌治療の補助として使用できる可能性が示唆された。また、各エキスを混合した製剤では、S. aureus H209Pに対する抗菌作用は減弱していたが、ピロリ菌に対する特異的な増殖抑制効果は維持されていた。さらに、オウバク末エキス、コウボク末エキスの抗菌作用は各主成分(ベルベリン、マグノロール)の抗菌効果を上回る相乗効果が認められた。[in vivoにおけるヘリコバクター・ピロリに対する効果の検討](1)動物及び試薬等 6週齢の雄性スナネズミ(日本SLC(株)、6週齢)、体重40〜50gを清水実験材料(株)より購入した。ヘリコバクター・ピロリ菌は、TN2GF4 株(臨床分離株, Vac A およびCag A陽性)を使用した。試料として、御岳百草丸(長野県製薬(株)製)を、また、対照としてベルベリンを使用した。 御岳百草丸は、1粒を、第15改正日本薬局方の溶出試験第1液(pH1.2程度)と同組成の溶媒に溶解して1粒/10mLの溶液とした。また、ベルベリンは、第15改正日本薬局方の溶出試験第1液(pH1.2程度)と同組成の溶媒に溶解して0.03mg/10mLの溶液とした。(2)試験方法 雄性スナネズミ20匹は、温度22±1°C、明暗サイクル12/12時間の条件で、水と飼料を自由に摂取させながら、1週間、馴化飼育した後、1群4〜5匹に分けた。 陰性対照群(図2〜5中、「正常」と示す。)を除いて、ヘリコバクター・ピロリ菌を2 x 108 CFU/0.5mL/動物で経口接種し、その後、御岳百草丸溶液(1粒/kg/日)又はベルベリン(0.3mg/kg/日)を4週間連続投与した。(2−1)胃粘膜の損傷 薬物投与終了後またはH. pylori 接種28日後に、動物をエーテル致死させて胃を摘出した。摘出した胃を大弯に沿って切開し、コルク板上にピンで固定後、解剖顕微鏡下(×10)にて、損傷程度を観察し、損傷面積及び出血面積(mm2)を測定した。(2−2)胃内でのヘリコバクター・ピロリの生息数 薬物投与終了後、実施例4の観察を終えた胃を、20mLのPBS(pH 7.0)中に入れ、ポリトロンにて破砕した。この破砕液を原液とし、これをPBS(pH 7.0)にて10倍希釈した。 原液および10倍希釈液を、それぞれ100μLずつ、H. pylori 選択培養プレート(日水製薬(株))に塗布し、微好気性条件下に7〜8日間、37°Cで培養した。培養終了後、プレート上のコロニーをH. pyloriとしてコロニー数を計測した。H. pylori胃内生菌数はCFU/胃で表示した。(2−3)ミエロパーオキシダーゼ(MPO)活性の変化 薬物投与終了後、24時間絶食させた動物をエーテル麻酔下に開腹した。生理食塩水にて全身灌流を行い、その後に胃を摘出し、Krawiszらの方法によりMPO活性を測定した。 すなわち、胃を大弯に沿って切開し、コルク板上にピンで固定後、胃体部および幽門部境界領域をコルクボーラー(内径9mm)にてパンチアウトして試験片とし、各試験片の湿重量(mg)を測定した。 各試験片50 mgに対して、0.5% hexadecyltrimethylammonium bromide(Sigma社製)含有50 mMリン酸緩衝液(pH6.0、以下「PB」ということがある)を1.0 mL加え、ポリトロンにて破砕後、この破砕液を3回凍結融解し、2,000xgで10分間、4℃にて遠心分離し、この上清を測定用試料とした。 各試料から5μLとって、0.167mg/ml o-dianisidine dihydrochloride(Sigma社製)および0.0005%のH2O2を含む10 mMのPB(pH 6.0)145 μLを加えて混和し、450nmにおける吸光度の変化をマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社製)を用いて測定した。MPO活性は、μmol H2O2/分/mgタンパクで表示した。 試料のタンパク量は、BCAプロテインアッセイキット(Pierce社製)を使用して測定した。(3)結果(3−1)胃粘膜の損傷 損傷面積を図2に、また、出血面積を図3にそれぞれ示す。胃粘膜には、過形成変化、潰瘍及びびらんが認められた。損傷面積はベルベリン投与群でやや低くなる傾向が認められたが、対照群及び御岳百草丸投与群との間に有意差は認められなかった。 また、出血面積は、御岳百草丸投与群で有意な低下が見られた、御岳百草丸がヘリコバクター・ピロリ感染に起因する胃潰瘍の出血を抑制していることが示された。(3−2)胃内でのヘリコバクター・ピロリの生息数 薬物投与終了後、対照群、御岳百草丸投与群、及びベルベリン投与群のいずれからも、H. pyloriが検出された。菌数は、対照群で約5.0x104 CFU/胃、他の2群では約0.9x102 CFU/胃であり、対照群と比較して有意に少なくなっていた。 以上から、御岳百草丸及びベルベリンはいずれも、ヘリコバクター・ピロリの生息数を減少させることが示された。(3−3)MPO活性の変化 各群のスナネズミの胃から調製した試料のMPO活性は、御岳百草丸投与群で対照よりやや高く、ベルベリン投与群でやや低い傾向を示したが、いずれの群でも有意差は認められなかった。 以上より、in vivoでは、御岳百草丸は、粘膜の損傷面積を減少させてはいないものの出血面積を大きく減少させていた。また、ヘリコバクター・ピロリの胃内の生息数もベルベリンと同程度に減少させることが示された。 御岳百草丸は、ヘリコバクター・ピロリの感染による胃粘膜障害に対して、保護作用を有することが示唆された。 本発明は、医薬の分野において有用である。 スウェルチアマリン、そのエステル、その生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるA群から選ばれる少なくとも1種以上を有効成分として含有する、胃粘膜保護用組成物。 ベルベリン、その生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるB群から選ばれる少なくとも1種以上、並びに、マグノロール、その生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるC群から選ばれる少なくとも1種以上をさらに含み、A群、B群及びC群から選ばれた化合物の混合比が、モル比で1:(9〜13):(11〜15)であることを特徴とする、請求項1に記載の胃粘膜保護用組成物。 オウバク末、ゲンノショウコ末、ビャクジュツ末、センブリ末及びコウボク末からなる群から選ばれる少なくとも2種以上の生薬からの抽出物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の胃粘膜保護用組成物。 オウバク末、ゲンノショウコ末、ビャクジュツ末、センブリ末及びコウボク末からの各抽出物を含むことを特徴とする、請求項3に記載の胃粘膜保護用組成物。 前記組成物中のスウェルチアマリン、その生理学的に許容される塩、及び水和物からなるA群から選ばれる少なくとも1種以上と、ベルベリン、それらの生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるB群から選ばれる少なくとも1種以上と、マグノロールその生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるC群から選ばれる少なくとも1種以上との混合比が、モル比で1:(9〜13):(11〜15)であることを特徴とする、請求項4に記載の胃粘膜保護用組成物。 請求項1〜5のいずれかに記載の胃粘膜保護用組成物を含有する医薬製剤。 請求項1〜5のいずれかに記載の胃粘膜保護用組成物を含有する、ウレアーゼ活性阻害用組成物。 請求項7に記載のウレアーゼ活性阻害用組成物を含有する医薬製剤。 【課題】 優れた抗菌作用を発揮しつつ、副作用が少なく、安全性の高い、複数の生薬の抽出物からなる、ウレアーゼ阻害活性を有する医薬組成物及びその医薬組成物を含有する医薬製剤を提供することを目的とする。【解決手段】 スウェルチアマリン、そのエステル、その生理学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなるA群から選ばれる少なくとも1種以上を有効成分として含有する、ウレアーゼ活性阻害用組成物及びこの組成物を有効成分として含有する医薬製剤を提供する。【選択図】 なし