タイトル: | 公開特許公報(A)_鼻腔又は咽喉からの粘液採取具 |
出願番号: | 2011170115 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 1/04,G01N 33/48,A61B 10/02,C12M 1/30 |
新井 文規 手島 宏一 洞口 勝則 影山 賢二 JP 2013036740 公開特許公報(A) 20130221 2011170115 20110803 鼻腔又は咽喉からの粘液採取具 協栄技研株式会社 500476093 クラレトレーディング株式会社 591121513 東和化成株式会社 591159228 株式会社エムケイメディカル 504293632 田中 政浩 100085109 新井 文規 手島 宏一 洞口 勝則 影山 賢二 G01N 1/04 20060101AFI20130125BHJP G01N 33/48 20060101ALI20130125BHJP A61B 10/02 20060101ALI20130125BHJP C12M 1/30 20060101ALI20130125BHJP JPG01N1/04 VG01N33/48 SA61B10/00 103CC12M1/30 3 2 OL 9 2G045 2G052 4B029 2G045AA25 2G045CB21 2G052AA29 2G052AD06 2G052BA02 2G052BA19 4B029AA09 4B029BB13 4B029CC02 4B029HA01 本発明は、インフルエンザウイルス等の感染を調べるために鼻腔又は咽喉から粘液を採取する器具に関するものである。 従来より、インフルエンザウイルスなどの感染を調べる際には、綿棒を用いて鼻腔や咽喉から粘液を検体として採取することが行われてきた(特許文献1)。 この綿棒10は、例えば図7に示すように、軸9の一端に綿やレーヨン等の親水性短繊維の糸をかたく巻付けたもの10が使用されているが、これらは親水性故に吸水率が高く、回収した検体の放出量が少ないという問題がある。そこで、最近では、ポリエステルのような疎水性短繊維を用いたものも使用されるようになってきている。ところが、疎水性繊維は吸水率が低いため検体の採取量が小さい。これを改良する手段として油分の除去処理を行うことが知られている(特許文献2)。また、綿棒の製造においては、繊維を構成する糸をスライバー加工やこの糸を軸に巻付ける捲着加工が行われるが、ポリエステルはこれらの加工性が悪く、その対策として、ポリエステルからなる綿状繊維を加熱処理して巻縮状態を固定させる方法も開発されている(特許文献3)。 また、検体の採取量を増加させるために、綿部をフロック化したものも知られている(特許文献4)。特表2002−508193号公報特許第3845037号公報特開2008−275576号公報特表2007−523663号公報 従来の粘液採取具は、いずれも検体の採取量が少ないあるいは不安定であるという問題がある。 すなわち、従来の綿やレーヨンの糸をかたく巻付けたものは元々採液量が少ない上、使用時の放出量も少なかった。綿やレーヨンに代えてポリエステルを用いたものも検体採液量が少なく、油分除去処理を行ってもそれを多少改善できるに過ぎなかった。フロック化したものは空隙を確保できるが採液時の押圧や周辺部位との接触で空隙が減少し、採液量が少なくなったりバラツキが大きいという問題があった。インフルエンザウイルスなどを検査する際、これをそのまま再分散液に入れてこれを分析することが一般に行われているので採液量が大きく変化すると、陰性陽性の判定に誤まりを生じることになる。 本発明者は、このような問題点を解決すべく鋭意検討し、疎水性の高い繊維を布状にして綿棒に用いたものを開発した(特願2010−87669号)。この採取具は、検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取できる。しかしながら、採取時に被検者が痛みを訴えることがあるという問題を生じた。 本発明の目的は、被検者に痛みを与えずに、鼻腔や咽喉から、検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取できる粘液採取具を提供することにある。 本発明者は、この痛みを軽減する手段としてまず、布表面の凹凸を小さくすることを考えた。そのため、繊維密度を上げれば布表面の凹凸が減って痛みの問題は解決するが、布内の空隙率が下がって検体の採取量が大幅に減ってしまうという新たな問題を生じた。そこで、本発明者は、さらに検討を進めて布表面をスウェード状にするために起毛を設けることを考え、それによって、検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取でき、採取時の痛みも軽減できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、軸の一端に筒状の布が取着され、その外周面が起毛されている鼻腔又は咽喉からの粘液採取具を提供するものである。 本発明の粘液採取具を用いることにより、被検者に苦痛を与えることなく、鼻腔や咽喉から検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取することができる。本発明の粘液採取具の一例の平面図である。その布取着部の拡大図である。別の布取着部の拡大図である。起毛前と起毛後を模式的に示した図である。熱可塑性樹脂層を設けた粘液採取具を模式的に示した断面図である。その固着方法を模式的に示した説明図である。従来の粘液採取具の一例の平面図である。 軸の一端に取付けられる布は繊維から形成されるが、使用される繊維は、親水性が大きいと採取した検体の放出量が減少するため好ましくなく、疎水性の高い繊維、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレンなどが好ましい。そして、これらを単独あるいは2種類以上で使用してもよい。また、短繊維でも長繊維でもどちらでもよいが、小さなほこりの発生がきわめて少ない点で長繊維が好ましい。 使用される繊維の繊度は特に限定されないが、例えば繊維直径が0.05〜20μm程度でよく、フィラメント間の空隙を増やすために繊度の小さいものが好ましい。また、断面形状は特に限定されないが、フィラメント間の空隙を増やすために、丸断面以外に、三角断面、多肢形断面、偏平断面等を用いてもよい。 使用する糸に捲縮があってもなくてもどちらでもよいが、フィラメント間の空隙を増やす点で捲縮がある繊維が好ましい。 使用する繊維の疎水性が高すぎると検体の採取量が減少するため、繊維の疎水性を減じることも重要である。そのために、公定水分率が1.5%〜7%程度の繊維を布の一部に使用しさらに表面に配したり、グロー放電処理のような物理的処理や、レーヨン等の親水性繊維と混紡した繊維の使用、採取後の検査で問題のない程度に親水性樹脂で繊維表面を覆う処理などを実施してもよい。 布は、平織等の織物、ニット等の編物あるいは不織布のいずれであってもよい。布を筒状にする方法は、チューブ状に編むなど種々の方法が知られており、本発明ではそれらの方法で筒状にしたものを用いることができる。例えば、特開2000−304975号公報、特開2010−410号公報に開示されている袋状にしたものも用いうる。また、方形等の布を軸に巻き付けて筒状にしたものでも良い。 検体を繊維空隙に取り込み易くするために、油分は取り除いたほうが望ましい。例えば、繊維業界で一般に実施されている精練と同様の洗剤で洗浄後、更に純水等で洗浄してこの洗剤を除去する方法がある。検体によっては、付着するイオンを超純水で洗浄除去する手段もとりうる。 本発明の粘液採取具は、筒状の布の外周面がスウェード状態に布表面を起毛し、毛羽立たせることである。布地を起毛する方法には、サンドペーパーによるエメリー起毛法と針布起毛法がある。 サンドペーパーや針布などで生地表面を擦る方法がよく利用される。ロール状に巻かれたサンドペーパーや針布で生地表面にあて、生地が進行する方向に対し、ロールが回転して生地表面を起毛するが、回転方向は順方向でも逆方向でもよい。また、1回だけでなく数回から10回程度、起毛工程を繰り返してもよい。また、生地の起毛方向は一方向だけでなく、その逆方向も実施することもできる。 一般に軽く起毛する場合はサンドペーパーによる起毛、しっかり起毛する場合は針布による起毛をするが、針布は生地への損傷が大きくなりすぎ、生地表面の凹凸を減じることが目的なのでサンドペーパーによる起毛が本件では好ましい。 起毛の長さは0.1〜3mm程度が適当であり、0.2〜2mm程度が好ましい。起毛は外周面の全面に行うのが基本であるが、鼻腔や口喉の粘液に接しない部分、例えば軸に取着した布の後端部近傍などは起毛しなくてもよい。一方、布の先端部を丸めた場合には、この先端部も起毛しておくことが好ましい。 起毛時期は、布を軸に取着した後に行ってもよいが、製法上、筒状の布を予め起毛しておくことが好ましい。その上で、例えば特開2000−304975号公報や特開2010−410号公報記載の方法などで袋状にして軸に固定することが好ましい。 軸に取着された状態の布は、起毛部を除き、外径が0.5〜30mmΦ程度、通常1.0〜20mmΦ程度、長さが5〜50mm程度、通常10〜35mm程度、厚みが0.12〜8mm程度、通常0.15〜6mm程度が適当である。 布取着部の空隙率は、布取着部の軸の表面と布の外面との間の容積に含まれる空隙の割合である。軸の直径をA、布部の外径をB、布部の長さをCとすると、[(B2−A2)×π/4]×Cが容積であり、そこに含まれる空隙の割合である。これは、例えば、1)予め布チューブを20mmに切断2)重量を測定 この重量値と比重から無空隙の体積を計算3)軸 直径 Aから断面面積測定4)布を挿入したときの直径を測定 B値、A値より布の断面積を計算5)C値と布の断面積より体積(空隙+布)を計算によって求めることができる。本発明では、この空隙率が45%以上、好ましくは50〜87%程度、特に55〜80%程度が適当である。この空隙は、布部の内径が軸の外径より大きい、すなわち布部と軸の間に遊びがあってもよい。 布を先端に取り着ける軸は、一般に綿棒等に使用されている紙、木、金属、プラスチック等を広く用いることができる。しかし、形成加工、滅菌、布の取着等の点でプラスチックが好ましい。具体例としては、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート等を挙げることができる。 軸の基端側には、持ちやすくするために柄を設けることもできる。柄の材質は軸と同様でよい。軸と柄は材質が異っていてもよいが製造上同一であることが好ましい。形状は、通常丸棒状であるが曲った形でもよい。 軸の直径は0.4〜4.0mm程度、通常0.7〜2.5mm程度、長さが5〜50mm程度でよい。柄の直径は1.5〜2.8mm程度、長さが30〜150mm程度でよい。柄を設ける場合、軸と柄を合わせた全長は50〜180mm程度が適当である。 布の軸への取着は、空隙を出来るだけ減らさないよう配慮する。具体的な方法としては、接着剤を用いる方法、熱で溶着させる方法、紐等で縛る方法、布と軸の間に熱可塑性樹脂層を設けて加熱溶融し、これに布を圧着させる方法などをとりうる。 接着剤は、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系などいずれも使用することができ、形態も有機溶剤溶解品、水溶解品、エマルジョン、無溶剤品のいずれでもよい。使用時には、布の空隙を埋めない程度の量を使用し、粘度も空隙に侵入しにくい程度がよい。 溶着させる場合の加熱手段は、ヒーター、超音波、レーザーを利用できる。 熱収縮チューブを用いて締付け固定することもできる。 固着部位は、布の内面全面でもよいが、通常は一部でよく、その場合基端側を固着させることが好ましい。 熱可塑性樹脂層を設けてこれを布に圧着させる場合は、軸にプラスチック等の熱融解性のものを用いるときは、軸の融点は、熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂の融点より高いものを用い、好ましくは30℃以上、より好ましくは55℃以上高いものがよい。特に、軸は、検体採取部の接着のため熱可塑性樹脂層を加熱融解する際に、その熱による軸の変形を生じないものがよい。 軸は、熱可塑性樹脂層が密着するので、熱可塑性樹脂が特に接着性を有していなくても検体採取部を固着し、通常の使用で脱落することはない。しかしながら、固着性をさらに高めるために、表面に凹凸を設けたり、一部の太さを変えることも可能である。 熱可塑性樹脂層は、アンカー作用により検体採取部を固着するものであり、融点が軸と検体採取部のいずれより低く、好ましくはいずれよりも20℃以上低いものであって検体およびその分析に実質的に影響を与えないものであればよい。熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂は、化学的に検体採取部に接着性を有しないものと有するものがあるがそのいずれでもよい。前者の例としてはポリエチレン、L−LDPE、エチレン−α−オレフィン共重合体等があり、後者の例としては接着性ポリオレフィン樹脂、低分子ポリエステル等がある。 熱可塑性樹脂層は、検体採取部を固着できる範囲でなるべく薄いことが望ましく、厚みが0.05〜10mm程度、好ましくは0.1〜5mm程度がよい。この厚みは、熱可塑性樹脂層の外側が検体採取部の内側に接触する厚みでも、離融していてもよいが、軸部を検体採取部に挿入する際にその力で検体採取部が変形して元に戻らないような厚みは検体採取量がばらつく原因となるので好ましくない。熱可塑性樹脂層を設ける部位は検体採取部の全長であってもよいが固着しようとする部位のみであってもよい。 この熱可塑性樹脂層の形成にあたっては、軸との間に空隙を生じないようにし、具体的には、軸に熱可塑性樹脂を塗布する方法、熱可塑性樹脂のフィルムを巻き付ける方法、チューブ状にして軸を挿入する方法などをとりうる。チューブ状にした場合には、加熱溶融して軸に固着させるようにする。 検体採取部の軸への取り付けは、布を熱可塑性樹脂層が形成された軸に巻き付ける方法もあるが通常は、筒状あるいは袋状やたんぽ状に形成した検体採取部の軸孔に熱可塑性樹脂層が形成された軸を挿入する。そして、固着は、検体採取部上から圧着、加熱して熱可塑性樹脂層を溶融させ、検体採取部に可塑性樹脂をしみ込ませた後、冷却させることにより行う。 加熱手段は、ヒーター、超音波、レーザーを利用できる。 固着部位は、検体採取部の軸孔内面全面でもよいが、通常は一部でよく、その場合基端側を固着させることが好ましい。 熱可塑性樹脂層4が表面に形成されている軸2を検体採取部1に挿入して、その基端部付近を加熱し、それによって固着部5を形成する方法を図6に模式的に示す。 本検体採取具は、滅菌しておくことが好ましい。滅菌手段は、エチレンオキサイドガスによる化学滅菌、放射線による滅菌、電子線による滅菌等いずれも利用できる。熱可塑性樹脂層に融点の低い樹脂を用いる場合はオートクレーブによる感熱滅菌は好ましくない。 検体採取部はポリエステルとナイロンからなる極細繊維の糸で緯密度31本/inch、経密度48本/inch、厚さ0.06mmで編んだニット状に編んだ材料を用いた。このものにエメリー型起毛機(パワーユニオン社製)を使用し、320メッシュのサンドペーパーにて起毛した。サンドペーパーを取り付けたロールを生地の進行方向に対し、順方向と逆方向 各2ロールを交互に配し、生地に接触させた。加工速度は15m/分で実施した。 起毛処理は片面に行い、特開2010−41号公報([0014]〜[0017])の方法で幅3.3mmで長さ17mmに折り3.8mm幅の両端を熱シール、切断し、表面に起毛面が表面になるように袋状にしたものを用いた。 軸部は直径1.1mmのポリエチレン(融点125℃)棒を15cmに切断して軸を作成した。熱可塑性樹脂部はエチレン/αオレフィン共重合体(日本ポリエチレン株式会社 KS240T、融点60℃)を用いて内径1.2mm、外径1.8mmのチューブを押し出し成型で作成し、17mmに切断して作成した。軸部に内径1.2mmの中に熱可塑性樹脂部を装着後、その軸に検体採取部を挿入し、検体採取部の上から超音波で末端部分を約0.8mm溶着して作成した。 このものを用いて官能試験を実施した。比較例1として起毛をかけないもの、比較例2としてスズラン株式会社 NO100(レーヨン製綿棒)を用いた 官能試験は鼻腔からのインフルエンザウイルス採取で実施した。 本発明の検体採取具は、鼻腔や咽喉から検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で採液でき、また、食品からも細菌検査検体も採取できるのでこれらの検体採取具として広く利用できる。1・・・布2・・・軸3・・・柄4・・・熱可塑性樹脂層5・・・固着部9・・・軸10・・綿部 軸の一端に筒状の布が取着され、その外周面が起毛されている鼻腔又は咽喉からの粘液採取具 布が疎水性材料で形成されている請求項1記載の粘液採取具 筒状の布の一端が閉じられて袋状になっている請求項1又は2記載の粘液採取具 【課題】被検者に痛みを与えずに、鼻腔や咽喉から、検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取できる粘液採取具を提供する。【解決手段】軸の一端に筒状の布が取着され、その外周面が起毛されている鼻腔又は咽喉からの粘液採取具とする。また、布が疎水性材料で形成され、筒状の布の一端が閉じられて袋状になっている場合もある。【選択図】図2