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タイトル:公開特許公報(A)_うつ病治療用または予防用医薬組成物
出願番号:2011169082
年次:2013
IPC分類:A61K 35/56,A61K 45/00,A61K 31/138,A61K 31/553,A61P 25/24,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

酒井 和夫 JP 2013032308 公開特許公報(A) 20130214 2011169082 20110802 うつ病治療用または予防用医薬組成物 酒井 和夫 511000061 渡邊 和浩 100115118 酒井 和夫 A61K 35/56 20060101AFI20130118BHJP A61K 45/00 20060101ALI20130118BHJP A61K 31/138 20060101ALI20130118BHJP A61K 31/553 20060101ALI20130118BHJP A61P 25/24 20060101ALI20130118BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130118BHJP JPA61K35/56A61K45/00A61K31/138A61K31/553A61P25/24A61P43/00 121 7 OL 12 4C084 4C086 4C087 4C206 4C084AA19 4C084MA02 4C084MA13 4C084MA17 4C084MA23 4C084MA35 4C084MA36 4C084MA37 4C084MA41 4C084MA43 4C084MA52 4C084NA05 4C084NA14 4C084ZA12 4C084ZC75 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC75 4C086GA09 4C086GA12 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA13 4C086MA17 4C086MA23 4C086MA35 4C086MA36 4C086MA37 4C086MA41 4C086MA43 4C086MA52 4C086NA05 4C086NA14 4C086ZA12 4C086ZC75 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB11 4C087MA02 4C087MA13 4C087MA17 4C087MA23 4C087MA35 4C087MA36 4C087MA37 4C087MA41 4C087MA43 4C087MA52 4C087NA05 4C087NA14 4C087ZA12 4C087ZC75 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA21 4C206MA01 4C206MA02 4C206MA04 4C206MA33 4C206MA37 4C206MA43 4C206MA55 4C206MA56 4C206MA57 4C206MA61 4C206MA63 4C206MA72 4C206NA05 4C206NA14 4C206ZA12 4C206ZC75 本発明は、うつ病を治療または予防するための医薬組成物に関する。本発明はまた、前記医薬組成物を用いてうつ病を治療または予防する方法に関する。 東洋諸国では古くからミミズ乾燥物が漢方薬や民間薬として様々な疾患の治療や予防に用いられており、現在知られている代表的な効果効能としては、例えば解熱作用、鎮痛・鎮痙作用、筋肉・気管支弛緩作用、降血圧作用、利尿作用および血栓溶解作用などが挙げられる(非特許文献1)。近年では、それらの効果効能を裏付ける成分の解明も進みつつある。 現在までに、ミミズに含まれる特有の成分として、強い線容活性を有する酵素であるルンブロキナーゼ(非特許文献2、特許文献1〜3)やフラン化合物(特許文献4)が同定されており、ミミズ乾燥粉末から得られた非酵素分画も強力なプラスミノーゲンアクチベーター産生能を有することが知られている(非特許文献3)。またミミズ乾燥粉末を有効成分として含む医薬、例えば血栓溶解剤(特許文献3)、糖尿病治療剤(特許文献5)、高脂血症剤(特許文献6)、血圧調節剤(特許文献7)および血栓症治療剤(特許文献8)などが開示されている。これらの医薬に有効成分として含まれるミミズ乾燥粉末の製造方法や、それをさらに改良した製造方法が開示されている(特許文献9〜16)。 一方で、ミミズ乾燥物やミミズ乾燥物の成分がうつ病を治療または予防する可能性については、これまでに何の開示も示唆もなされていない。特開昭58-148824号公報特開昭59-63184号公報特開昭59-184131号公報特開昭63-5088号公報特開昭64-47718号公報特開昭64-47719号公報特開平1-268639号公報特開平3-72427号公報特開昭64-47720号公報特許第4699974号公報特開2009-249362号公報特開2011-84483号公報特開2004-292402号公報特開2006-96673号公報特開2009-143845号公報特開2010-275251号公報林輝明、「ミミズの人類への貢献」、シリーズ健康の科学No.18新ミミズ健康読本、株式会社東洋医学舎、平成21年1月15日、p8-16Hisashi MIHARA etal., “A Nove Fibrinolytic Enzyme Extracted from the Earthworm, Lumbricusrubellus”, Japanese Journal of Physiology, Vol.41(1991), No.3, 461-471須見洋行、外2名、「ルンブロキナーゼによる強力な血栓溶解能および組織プラスミノーゲンアクチベーター産生能」、シリーズ健康の科学No.18新ミミズ健康読本、株式会社東洋医学舎、平成21年1月15日、p22-25須見洋行、「ミミズの非酵素分画に認められた線溶発現作用」、シリーズ健康の科学No.18新ミミズ健康読本、株式会社東洋医学舎、平成21年1月15日、p18-22 現在、うつ病の治療には三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、フェニルピペラジン系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)などの抗うつ薬が使用されている。うつ病の治療には、これら多くの種類の抗うつ薬の中から個々の患者に適した治療薬を選択し、加えて適切な用量設定を行う必要がある。現在使用されている抗うつ薬は、効果が認められるまでに最低2週間程度、場合によっては更に長い期間が必要とされる。治療効果が認められないかまたは部分的である場合もあり、また、うつ病に対する治療効果が認められる前に副作用が認められる場合や治療効果に加えて副作用を伴う場合が多く存在する。従って、より短期間で高い治療効果が認められ且つ副作用を伴わず安全に使用することができる抗うつ薬の開発が未だ求められている。本発明者は、ミミズ乾燥粉末により頸動脈を含む全身の血流障害が改善するという報告に着目し、うつ病の患者にミミズ乾燥粉末を投与したところ、副作用を伴うことなく短期間でうつ病を治療することができることを見出した。 すなわち、本発明は、ミミズ乾燥粉末を有効成分として含む、うつ病を治療または予防するための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、うつ病を治療または予防するために、単独で用いることができ、あるいは他の既存の抗うつ薬などと組み合わせても用いることができる。 本発明の医薬組成物を用いることにより、従来の治療薬の使用に伴う選択や用量設定の困難性および副作用について考慮することなく、うつ病を安全に治療または予防することができる。 本発明の医薬組成物により治療または予防することができる「うつ病」には、「米国精神医学会による精神疾患の診断統計マニュアル:DSM-IV(American Psychiatric Association Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 第4版)」の改訂版であるDSM-IV-TR(2000年発行)の診断基準に基づくと、「気分障害)」に属する「うつ病性障害」が含まれる(高橋三郎 外2名訳、「DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版」、株式会社医学書院、2003年8月1日)。前記「うつ病性障害」には「296.2x 大うつ病性障害、単一エピソード」、「296.3x 大うつ病性障害、反復性」、「300.4 気分変調性障害」および「311 特定不能のうつ病性障害」が含まれる。前記「311 特定不能のうつ病性障害」の例としては、月経前不快気分障害、小うつ病性障害、反復性短期抑うつ障害、統合失調症の精神病後うつ病性障害などが挙げられる。 本発明の医薬組成物により治療または予防することができる「うつ病」には、世界保健機構(WHO)の「疾病と関連保健問題の国際統計分類:ICD-10(International Statistical Classification of Disease and Related Health Problems 第10版)」の診断基準で規定される「F32 うつ病エピソード」、「F33 反復性うつ病性障害」、「F34.1 気分変調症」および「F06.32 器質性うつ病性障害」が含まれる(中根允文 外2名訳、「ICD-10 精神および行動の障害−DCR 研究用診断基準−」、株式会社医学書院、1994年5月15日)。前記「F32 うつ病エピソード」には「F32.0 軽症うつ病エピソード」、「F32.1 中等症うつ病エピソード」、「F32.2 精神病症状を伴わない重症エピソード」、「F32.3 精神病症状を伴う重症うつ病エピソード」、「F32.8 他のうつ病エピソード」および「F32.9 うつ病エピソード、特定不能のもの」が含まれる。前記「F33 反復性うつ病性障害」には、「F33.0 反復性うつ病性障害、現在軽症エピソード」、「F33.1 反復性うつ病性障害、現在中等症エピソード」、「F33.2 反復性うつ病性障害、現在精神病症状を伴わない重症エピソード」、「F33.3 反復性うつ病性障害、現在精神病症状を伴う重症エピソード」、「F33.4 反復性うつ病性障害、現在寛解状態にあるもの」が含まれる。 本発明の医薬組成物によって治療または予防することができる「うつ病」には、難治性うつ病も含まれる。「難治性うつ病」とは、治療抵抗性うつ病とも呼ばれ、前記DSM-IV-TRまたは前記ICD-10に基づいて規定した「うつ病」の中でも、既存の抗うつ薬を用いた治療では全く治療効果が認められなかった、またはほとんど治療効果が認められなかった病態を有するか、あるいは既存の抗うつ薬を用いた治療で一旦は部分的または全体的に寛解しても服薬の終了により再度発症してしまう反復性の病態を有するものを意味する。 DMS-IV-TRやICD-10以外に臨床現場で前記「うつ病」の診断に用いられる他の診断基準または評価方法としては、例えばモントゴメリー/アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、自己評価式抑うつ性尺度(SDS)または光トポグラフィー検査などが挙げられる。 本発明において、うつ病を治療することができるとは、上述のうつ病に特徴的な症状の1つ以上について主観的もしくは客観的に軽減または消失が認められることを意味し得る。客観的に認められるとは、臨床現場でうつ病の診断に用いることのできる診断基準、評価尺度または検査の指標によってうつ病の改善の事実が認められることであってもよい。例えば、本発明の医薬組成物の投与により、上述のモントゴメリー/アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)または自己評価式抑うつ性尺度(SDS)の点数(スコア)が下がった場合、うつ病が治療できた、またはうつ病治療効果があったということができる。あるいは家族、主治医または周囲の人間といった第三者からみて、うつ病に特徴的な症状の1つ以上に軽減や消失などの改善が認められることであってもよい。 本発明において、うつ病を予防することができるとは、うつ病の罹患が予測され得る状況で本発明の医薬組成物を投与することにより、うつ病の罹患で予測されうる少なくとも1以上の症状が発症しないか、またはその重症度もしくは進行が抑制されることを意味し得る。うつ病の罹患の予測は、遺伝子検査または光トポグラフィー、CTもしくはMRIなどを用いた検査といった医学的検査の結果に基づくものであっても、環境変化や薬物療法の開始など医学的考察に基づくものであってもよい。 本発明の医薬組成物に含まれるミミズ乾燥粉末の原料として、天然または養殖の食用ミミズ、例えばアカミミズ(Lumbricus rubellus)、LTミミズ(Lumbricus terrestris)、シマミミズ(Eisenia foetida)、カッショクツリミミズ(Allolobophora caliginosa)、ムラサキツリミミズ(Dendrobaena octaedra)、サクラミミズ(Allolobophora japonica Michaelsen)、ハッタミミズ(Drawida hattamimizu Hatai)、セグロミミズ(Pheretima divergens Michaelsen)、フツウミミズ(Pheretima communissima)、ハタケミミズ(Pheretima agrestis)、シーボルトミミズ(Pheretima sieboldi Horst)、ヒトツモンミミズ(Pheretima hilgendorfi)、イソミミズ(Pontodrilus matsushimensis Iizuka)、イトミミズ(Tubifex hattai Nomura)、ゴトウイトミミズ(ユリミミズ)[Limnodrilus gotoi Hatai=L.Socialis Stephenson]などを用いることができる。中でもルンブリクス属(Lumbricus)に属するミミズが好ましく、最も好ましくはアカミミズ(Lumbricus rubellus)またはその近縁種である。 本発明の医薬組成物に含まれるミミズ乾燥粉末は、現在市販されている健康食品などに用いられているミミズ乾燥粉末を製造するいずれの方法で製造されたものであってもよい。そのような製造方法の例を挙げると、例えば、ミミズの生体から体皮に付着する汚物、消化管内に残留する消化物、体液などを除去して洗浄した後、ミミズを摩砕してミミズ摩砕物を得るか、またはミミズもしくはミミズ摩砕物をインキュベーションしてミミズ抽出液を得て、得られたミミズ摩砕物またはミミズ抽出液を乾燥させて製造することができる。 ミミズの生体から消化管内に残留する消化物を除去する方法としては、例えば、ミミズを水中に所定時間浸ける等によって消化管内の糞土を吐かせる方法を挙げることができる。また、ミミズの生体から体皮に付着する汚物を除去する方法としては、例えば、ミミズを明所に所定時間(例えば10〜50時間)放置してから体皮に付着する汚物を不織布に吸着させて剥ぎ取る方法を挙げることができる。 ミミズの体液の除去は、例えば、体皮に付着する汚物および消化管内に残留する消化物を除去した生ミミズをpH2〜5の有機酸水溶液中に所定時間(例えば3〜180分間)浸漬することによって行うことができる。有機酸水溶液中への浸漬は、あらかじめ調製した有機酸水溶液を用いてもよく、生ミミズを有機酸と接触させた後に水で希釈することによって行ってもよい。有機酸としては、例えば酢酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸などがあり、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。特にクエン酸が好ましい。あるいは有機酸として、結晶状ヒドロキシカルボン酸粉末を使用することもできる。結晶状ヒドロキシカルボン酸粉末は、使用条件下で結晶状であればよく、そのヒドロキシ基数またはカルボキシル基数には特に限定されず、モノヒドロキシモノカルボン酸、モノヒドロキシポリカルボン酸、ポリヒドロキシモノカルボン酸、ポリヒドロキシポリカルボン酸のいずれであってもよい。そのようなヒドロキシカルボン酸として、例えばグリコール酸、乳酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、α-ヒドロキシ-n-酪酸、β-ヒドロキシ-n-酪酸、α-ヒドロキシ-n-吉草酸、β-ヒドロキシ-n-吉草酸、リンゴ酸、α-メチルリンゴ酸、α-ヒドロキシグルタル酸、β-ヒドロキシグルタル酸、クエン酸などが挙げられ、これらの中でも乳酸、リンゴ酸、クエン酸が好ましい。 洗浄は、例えば水洗などで行うことができる。水洗には純水やマイクロナノバブルを含有する水などを用いてもよい。 このように処理されたミミズを、例えばホモジナイザー、ブレンダー、ホモミキサー、擂潰機または加圧型細胞破壊装置などを用いて摩砕してミミズ摩砕物を得ることができる。摩砕後に濾過することによって、ミミズ摩砕物に含まれるミミズの皮を除去してもよい。得られたミミズ摩砕物にネギ科植物のペーストや抽出物などを添加し混合してインキュベーションしてもよい。インキュベーションは、例えば20℃〜55℃にて5〜170時間行うことができる。そのようなネギ科植物の例としては、ニンニク、タマネギ、ネギ、ラッキョウ、ワケギ、ニラなどが挙げられ、どの部位を用いてもよいが鱗茎の部分が好ましい。 あるいは洗浄したミミズまたは上述のようにして得られたミミズ摩砕物をインキュベーションすることによってミミズ抽出液を滲出させることもできる。インキュベーションは、例えば10℃〜65℃で0.5〜6時間行うことができる。この際、前記ネギ科植物のペーストや抽出物などを共存させてインキュベーションを行うこともできる。 このようにして得られたミミズ摩砕物またはミミズ抽出液は、凍結乾燥やスプレードライヤーなどの手法を用いて乾燥させることができる。スプレードライヤーで乾燥する場合は、遠心分離や濾過などの方法により、前記摩砕物から濁り成分や不溶物を除去してから乾燥させてもよい。凍結乾燥は、真空下で、脱ガスを同時に行うのが好ましい。凍結乾燥は、例えば、ミミズ摩砕物を−18℃〜−35℃に急冷して20〜240時間凍結させてから、圧力50Pa以下、−60℃〜+90℃の温度において、数段階的に分けて昇温し、4〜80Paの圧力において、数段階に分け減圧しながら、10〜60時間の範囲で制御して行うのが好ましい。 このようにして得られたミミズ乾燥粉末を、さらに110℃以上130℃未満の温度で加熱処理することもできる。加熱処理の方法は特に限定されず、熱風をかける方法、加熱ジャケットを用いる方法、トレイ等に載せてヒーターで加熱する方法、定温恒温器を使用する方法などによって行うことができる。 また、本発明で用いるミミズ乾燥粉末は、例えば、上記特許文献10〜16(特許第4699974号公報、特開2009-249362号公報、特開2011-84483号公報、特開2004-292402号公報、特開2006-96673号公報、特開2009-143845号公報、特開2010-275251号公報)などで開示されている製造方法によって製造されたものであってもよい。 本発明の医薬組成物は、有効成分であるミミズ乾燥粉末の製造方法によって特に限定されるものではないが、原料のミミズの生体内に含まれる線容活性阻害物質、有害元素ならびにアンモニアおよび病原性微生物のような有害物質を除去し無害化したミミズ乾燥粉末を用いるのが好ましい。そのようなミミズ乾燥粉末を得る製造方法は、例えば上記特許文献10〜12(特許第4699974号公報、特開2009-249362号公報、特開2011-84483号公報)において開示されている。このような製造方法によって得られたミミズ乾燥粉末は、例えばLR末(登録商標)としてワキ製薬株式会社から入手することができる。また、このような製造方法によって得られたミミズ乾燥粉末を含む市販品としては、例えばプロルベイン(登録商標)DR(株式会社カインKN)などが挙げられる。 本発明の医薬組成物は、成人1日あたりの用量に有効成分としてミミズ乾燥粉末5mg〜1000mgを含むことが好ましく、より好ましくは20mg〜800mg、さらに好ましくは40mg〜600mgのミミズ乾燥粉末を含む。 本発明の医薬組成物は、経口投与により用いることができる。従って、本発明の医薬組成物は経口投与が可能ないずれの剤形としても用いることができ、そのような剤形としては例えばカプセル剤(ハードカプセルまたはソフトカプセル)、散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、液剤、エアゾール剤、エリキシル剤およびシロップ剤などを挙げることができる。 本発明の医薬組成物は、ミミズ乾燥粉末に加えて、製剤学的および薬理学的に許容される添加物を1つ以上含むこともできる。製剤学的および薬理学的に許容される添加物としては、例えば担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、助剤、溶媒、甘味剤などが挙げられる。そのような添加物の選択や用量設定は、本技術分野における当業者の技術常識の範囲内に含まれる。 本発明の医薬組成物は、1日1回〜数回に分けて経口投与することができる。本発明の医薬組成物は、起床直後、食前、食後、食間または就寝前のうちいつ経口投与してもよいが、空腹時、すなわち起床直後、食前、食間または就寝前に経口投与するのが好ましい。 本発明の医薬組成物は、投与開始から最短で2〜3日間で治療上または予防上の効果が認められ得るが、1週間以上継続的に投与するのが好ましく、1ヶ月以上継続的に投与するのがより好ましい。 本発明の医薬組成物は、小児から高齢者まで幅広い年齢の患者に用いることができる。 本発明の医薬組成物の最適な用量および投与計画は、個々の患者の状態、例えば年齢、体重、性別、症状の種類または重症度などに応じて、上述する記載を参考に当業者が適宜決定することができる。そのような決定は、本技術分野における当業者の技術常識の範囲内に含まれる。 本発明の医薬組成物は、うつ病を治療または予防するために用いられる1以上の他の医薬と組み合わせて用いることもできる。そのような1以上の他の医薬としては、例えば抗うつ薬、気分安定薬(気分調整薬)、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬などが挙げられる。本発明の医薬組成物と組み合わせて用いることができる抗うつ薬としては、例えばクロミプラミン、ノリトリプチリン、アミノトリプチリン、アモキサピン、イミプラミン、トリミプラミン、ロフェプラミンおよびドレスピンなどの三環系抗うつ薬、ミアンセリン、マプロチリンおよびセチプチリンなどの四環系抗うつ薬、トラドゾンなどのフェニルピペラジン系抗うつ薬、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、フルオキセチン、シタロプラムおよびエスシタロプラムなどの選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシンおよびネファゾドンなどの選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ならびにミルタザピンなどのノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)などが挙げられるがこれらに限定されない。前記1以上の他の医薬は、エナンチオマー、ジアステレオマー、それらの薬理学的に許容される塩、前記塩のエナンチオマー、前記塩のジアステレオマー、それらの溶媒和物、それらの活性代謝物またはそれらのプロドラッグなどの形態であってもよい。前記1以上の他の医薬は、本発明の医薬組成物の成分として含まれてもよく、あるいは本発明の医薬組成物とは別の医薬組成物として調剤されているものであってもよい。そのような他の有効成分の選択、用量設定および投与計画などは、本技術分野における当業者の技術常識の範囲内に含まれる。 以上説明した本発明の医薬組成物を用いることにより、従来の治療薬の使用に伴う選択や用量設定の困難性および副作用について考慮することなく、うつ病を安全に治療または予防することができる。本発明の効果は、本発明の医薬組成物に有効成分として含まれるミミズ乾燥粉末により得られるものであるが、ミミズ乾燥粉末中に含まれるどのような物質に由来するものであるかは現時点では不明である。当該物質は、既に同定された既知物質である可能性もあるが、未同定の物質である可能性もある。また、当該物質が単独で作用している可能性もあるが、他の成分と相互作用している可能性もある。 本発明の医薬組成物によるうつ病治療効果は最短で2〜3日で表れることから、本発明の医薬組成物の有効成分であるミミズ乾燥粉末について既に報告されている血流改善効果のみで説明できるものとは考えられない。 以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。[ミミズ乾燥粉末の調製例] 水洗により皮ふ表面に付着した汚物を除去した生のアカミミズ(Lumbricus rubellus)30kgを平皿に拡げ、この上にクエン酸250gを均一に振りかけ、15秒後に純粋30リットルを加えて希釈した。水を加えた直後のpHは2.25であり、完全に希釈したときのpHは2.74であった。この希釈したクエン酸中に浸したミミズを20℃にて60分間放置した後、生ミミズを取り出し、水洗して、ホモジナイザーを用いて10℃で摩砕してミミズ摩砕物を得た。このミミズ摩砕物を吸引脱気して摩砕物に含まれるガスを除いた後、瞬間的に−30℃まで急冷して50時間保持することによって凍結させた。凍結したミミズ摩砕物を−30℃で圧力5Paに減圧して10時間保持した後、温度を20℃まで昇温させて、さらに圧力10Paで10時間、次いで40℃で10時間乾燥させ、最後に温度を80℃にして圧力5Paにて5時間保持して真空凍結乾燥させた。 このようにして調製したミミズ乾燥粉末を用いて以下の実施例を行った。[実施例1] DSM-IV-TRに基づく診断が「296.2x 大うつ病性障害、単一エピソード」であり、ICD-10に基づく診断が「F32.2 精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード」である、44歳会社員の男性の症例である。4年前からうつ病を患って他院で治療をしており抗うつ薬のミルタザピン(リフレックス(登録商標)Meiji Seika ファルマ株式会社)15mg/日および抗不安薬としてロラゼパム(ワイパックス(登録商標)ファイザー株式会社)を服用していたが効果が認められず休職をよぎなくされており、3ヶ月前より本外来で治療を始めた。具体的な症状として抑うつ、不安、思考力・集中力の低下が認められた。最初に抗うつ薬としてフルオキセチン20mg/日を処方したが吐き気などの副作用が認められたためフルオキセチンの処方を中止し、抗不安薬としてエチゾラム(メディピース(登録商標)沢井製薬株式会社)1.5mg/日と気分安定薬としてクロナゼパム(リボトリール(登録商標)中外製薬株式会社)1mg/日とを処方したが症状が改善しなかった。 そこでフルオキセチンに換えてミミズ乾燥物80mg/日を就寝前1回投与したところ、2週間程で治療効果が自覚された。具体的には、抑うつ感および不安が消失し、思考力・集中力が向上した。ミミズ乾燥物を投与する前のMADRS合計スコアは25点であったが、ミミズ乾燥物投与開始から2週間経過後のMADRS合計スコアは6点にまで下がり、うつ状態の治癒が認められた。本外来での治療開始時は休職中であったが、より良い条件の会社へ転職することもできた。同量のミミズ乾燥物の投与を続けて2ヶ月経過後の現在までにうつ状態の悪化は認められず、いかなる副作用も認められなかった。 これらの所見から、本発明の医薬組成物がうつ病に対して副作用を伴うことなく明確な治療効果を発揮したことが示された。[実施例2] DSM-IV-TRに基づく診断が「296.2x 大うつ病性障害、単一エピソード」であり、ICD-10に基づく診断が「F32.2 精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード」である、33歳会社員の女性の症例である。具体的な症状として、抑うつ感、焦燥感、不安、易刺激性および過食嘔吐が認められた。抗うつ薬としてフルオキセチンを20mg/日で1週間、40mg/日に増量してさらに1週間処方したが、症状の改善がみとめられず、休職せざるを得なかった。 そこで上記処方に加えてミミズ乾燥物80mg/日を就寝前1回投与したところ、2日で治療効果が自覚された。具体的には、抑うつ感、焦燥感、不安および易刺激性が消失した。ミミズ乾燥物を投与する前のMADRS合計スコアは27点であったが、ミミズ乾燥物投与開始から2週間経過後のMADRS合計スコアは3点にまで下がり、うつ状態の治癒が認められ、復職することができた。同量のミミズ乾燥物の投与を続けて2ヶ月経過後の現在までにうつ状態の悪化は認められず、いかなる副作用も認められなかった。 これらの所見から、本発明の医薬組成物がうつ病に対して副作用を伴うことなく明確な治療効果を発揮したことが示された。[実施例3] DSM-IV-TRに基づく診断が「296.3x 大うつ病性障害、反復性」であり、ICD-10に基づく診断が「F33.2 反復性うつ病性障害、現在精神病症状をともなわない重症エピソード」である、31歳会社員の女性の症例である。今回の大うつ病エピソードの前に過去1回の大うつ病エピソードが存在し、今回の大うつ病エピソード開始は過去の大うつ病エピソード治癒から約2年半経過後であった。今回の大うつ病エピソードの具体的症状としては抑うつ気分、睡眠障害および疲労感が目立っており、休職せざるを得なかった。前回の大うつ病エピソード時に効果が認められた処方、抗うつ薬としてアモキサピン(アモキサン(登録商標)ファイザー株式会社)10mg/日およびフルボキサミンマレイン酸塩(デプロメール(登録商標) Meiji Seika ファルマ株式会社)25mg/日、睡眠薬としてゾルピデム酒石酸塩(マイスリー(登録商標)アステラス製薬株式会社)5mg/日およびエチゾラム(メディピース(登録商標)沢井製薬株式会社)1mg/日を1週間投与したが症状の改善が認められなかった。この処方にフルオキセチン40mg/日を追加し、さらにアモキサピンを30mg/日まで増量したが、やはり症状の改善が認められなかった。 そこで、上記処方に加えてミミズ乾燥物160mg/日を朝食前80mg、就寝前80mgの2回に分けて投与したところ、2日程でうつ病の治療効果が自覚された。具体的には、睡眠障害が改善して睡眠が深くなって目覚めが良くなり、疲れがとれ、易疲労感が改善し、表情が明るくなって抑うつ気分が消失した。ミミズ乾燥物を投与する前のMADRS合計スコアは26点であったが、ミミズ乾燥物投与開始から2週間経過時のMADRS合計スコアは8点にまで下がり、うつ状態の治癒が認められた。主観的にも客観的にも、あの時のうつ状態は何だったのだろうと言えるほどの回復を示した。同量のミミズ乾燥物の投与を続けて2ヶ月経過後の現在までにうつ状態の悪化は認められず、いかなる副作用も認められなかった。 これらの所見から、本発明の医薬組成物がうつ病に対して副作用を伴うことなく明確な治療効果を発揮したことが示された。[実施例4] DSM-IV-TRに基づく診断が「296.2x 大うつ病性障害、単一エピソード」であり、ICD-10に基づく診断が「F32.2 精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード」である、23歳大学生の女性の症例である。18歳頃よりうつ状態と過食症に悩んでおり、他院でフルボキサミンマレイン酸塩(ルボックス(登録商標)アボットジャパン株式会社)25mg/日、トラゾドン塩酸塩(デジレル(登録商標)ファイザー株式会社)25mg/日、バルプロ酸ナトリウム徐放剤(デパケン(登録商標)R、協和発酵キリン株式会社)100mg/日を処方されていたが有意な改善が認められず、2年9ヶ月前から本外来で治療を始めた。具体的な症状としては、過食、抑うつ感、易疲労感が認められていた。抗うつ薬としてフルオキセチンを20mg/日から60mg/日まで増量し、加えて気分安定薬としてバルプロ酸ナトリウム徐放剤(デパケン(登録商標)R、協和発酵キリン株式会社)100mg/日またはクロナゼパム(リボトリール(登録商標)中外製薬株式会社)1mg/日を必要に応じて投与していたが、やはり症状の大幅な改善は認められなかった。 そこで上記処方に加えてミミズ乾燥物80mg/日を就寝前1回投与したところ、数日で治療効果が自覚された。具体的には、過食が止み、抑うつ感および易疲労感が消失した。ミミズ乾燥物投与開始から1週間後には、フルオキセチンを40mg/日に減薬することができた。ミミズ乾燥物を投与する前のMADRS合計スコアは27点であったが、ミミズ乾燥物投与開始から2週間経過後のMADRS合計スコアは5点にまで下がり、うつ状態の治癒が認められた。同量のミミズ乾燥物の投与を続けて2ヶ月経過後の現在までにうつ状態の悪化は認められず、いかなる副作用も認められなかった。 これらの所見から、本発明の医薬組成物がうつ病に対して副作用を伴うことなく明確な治療効果を発揮したことが示された。[実施例5] DSM-IV-TRに基づく診断が「F296.2x 大うつ病性障害、単一エピソード」であり、ICD-10に基づく診断が「F32.1 中等症うつ病エピソード」である、46歳公務員の男性の症例である。5年前にうつ病治療のため他院への入院経験があり、退院後も抗不安薬としてブロマゼパム(レキソタン(登録商標)中外製薬株式会社)2mg〜5mg/日、必要に応じて睡眠薬リルマザホン塩酸塩水和物(リスミー(登録商標)塩野義製薬)および抗精神病薬レボメプロマジン(ヒルナミン(登録商標)塩野義製薬株式会社)を服用していたが、職場環境の変化から症状が悪化して2年11ヶ月前から本外来で治療を始めた。当初の具体的な症状としては、抑うつ感、焦燥、制止、集中力低下および易疲労感が認められた。抗うつ薬としてフルオキセチン20mg〜40mg/日、ベンラファキシン(エフェクサー(登録商標))150mg/日、抗不安薬としてブロマゼパム(レキソタン(登録商標)中外製薬株式会社)6mg/日の処方で当初に比べては症状の改善が認められていたが、うつ状態の治癒にまでは至らなかった。 そこで上記処方に加えてミミズ乾燥物80mg/日を就寝前1回投与したところ、2日で治療効果が自覚された。具体的には、抑うつ感、焦燥、制止、集中力低下および易疲労感が消失した。ミミズ乾燥物投与開始から1週間後にはブロマゼパムを断薬することができ、さらにミミズ乾燥物投与開始から約1ヶ月後にはフルオキセチンを断薬することができた。ミミズ乾燥物を投与する前のMADRS合計スコアは23点であったが、ミミズ乾燥物投与開始から2週間経過後のMADRS合計スコアは6点にまで下がり、うつ状態の治癒が認められた。同量のミミズ乾燥物の投与を続けて2ヶ月経過後の現在までにうつ状態の悪化は認められず、いかなる副作用も認められなかった。 これらの所見から、本発明の医薬組成物がうつ病に対して副作用を伴うことなく明確な治療効果を発揮したことが示された。[実施例6] DSM-IV-TRに基づく診断が「F296.2x 大うつ病性障害、単一エピソード」であり、ICD-10に基づく診断が「F32.2 精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード」である、29歳無職の男性の症例である。約3年半前から本外来に通院しており、具体的な症状としては、抑うつ感、疲労感、思考力の低下、意欲の欠如が認められた。抗うつ薬としてフルオキセチン40mg/日、気分安定薬としてクロナゼパム(ランドセン(登録商標)大日本住友製薬株式会社)を必要に応じて1.5mg〜3mg/日処方していたが、うつ状態の大幅な改善は認められなかった。 そこで上記処方に加えてミミズ乾燥物160mg/日を朝食前80mg、就寝前80mgの2回に分けて投与したところ、7日程でうつ病の治療効果が自覚された。具体的には、疲労感がとれ、思考力の低下が消失し、意欲が回復し、起業準備を始めるまでになった。ミミズ乾燥物投与開始から1ヶ月後にはフルオキセチンを断薬することができた。ミミズ乾燥物を投与する前のMADRS合計スコアは27点であったが、ミミズ乾燥物投与開始から1週間経過後のMADRS合計スコアは4点にまで下がり、うつ状態の治癒が認められた。同量のミミズ乾燥物の投与を続けて2ヶ月経過後の現在までにうつ状態の悪化は認められず、いかなる副作用も認められなかった。 これらの所見から、本発明の医薬組成物がうつ病に対して副作用を伴うことなく明確な治療効果を発揮したことが示された。 ミミズ乾燥粉末を有効成分として含むことを特徴とする、うつ病を治療または予防するための医薬組成物。 成人1日あたりの用量が有効成分としてのミミズ乾燥粉末を5mg〜1000mg含む、請求項1記載の医薬組成物。 経口的に投与される、請求項1記載の医薬組成物。 うつ病を治療または予防するために用いられる1以上の他の医薬と組み合わせて使用される、請求項1記載の医薬組成物。 1以上の抗うつ薬と組み合わせて使用される、請求項1記載の医薬組成物。 抗うつ薬がクロミプラミン、ノリトリプチリン、アミノトリプチリン、アモキサピン、イミプラミン、トリミプラミン、ロフェプラミン、ドレスピン、ミアンセリン、マプロチリン、セチプチリン、トラドゾン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシン、ネファゾドンおよびミルタザピンからなる群より選択される、請求項1記載の医薬組成物。 うつ病を治療または予防するための、ミミズ乾燥粉末を有効成分として含む医薬組成物の使用。 【課題】 本発明は、より短期間で高い治療効果が認められ且つ副作用を伴わず安全に使用することができる抗うつ薬を提供することを目的とする。【解決手段】 本発明は、ミミズ乾燥粉末を有効成分として含む、うつ病を治療または予防するための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、単独で、あるいはクロミプラミン、ノリトリプチリン、アミノトリプチリン、アモキサピン、イミプラミン、トリミプラミン、ロフェプラミン、ドレスピン、ミアンセリン、マプロチリン、セチプチリン、トラドゾン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシン、ネファゾドンおよびミルタザピンからなる群より選択される1以上の抗うつ薬と組み合わせて、うつ病の治療または予防に用いることができる。【選択図】なし


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