タイトル: | 公開特許公報(A)_MFAP−4産生促進剤 |
出願番号: | 2011151225 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61P 17/00,A61K 36/71,A61K 36/53,A61K 36/00,A61K 8/97,A61Q 19/00,A61P 43/00 |
笠松 慎也 八谷 輝 羽毛田 恵一 三沢 憲佑 JP 2013018716 公開特許公報(A) 20130131 2011151225 20110707 MFAP−4産生促進剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 笠松 慎也 八谷 輝 羽毛田 恵一 三沢 憲佑 A61K 36/18 20060101AFI20121228BHJP A61P 17/00 20060101ALI20121228BHJP A61K 36/71 20060101ALI20121228BHJP A61K 36/53 20060101ALI20121228BHJP A61K 36/00 20060101ALI20121228BHJP A61K 8/97 20060101ALI20121228BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20121228BHJP A61P 43/00 20060101ALI20121228BHJP JPA61K35/78 CA61P17/00A61K35/78 FA61K35/78 QA61K35/78 WA61K8/97A61Q19/00A61P43/00 105 6 OL 14 4C083 4C088 4C083AA111 4C083BB51 4C083CC02 4C083EE11 4C088AB12 4C088AB32 4C088AB38 4C088AC05 4C088AC11 4C088BA08 4C088CA04 4C088MA63 4C088NA14 4C088ZA89 本発明は、MFAP−4産生を促進することができる物質に関する。 皮膚伸展線条(striae distensae)とは、皮膚が急速に過伸展することによって生じる皮膚線条であり、妊娠や思春期の成長、急激な肥満などによって男女を問わず発生する。初期段階では、赤紫色を呈し、明瞭な陥没のない線条痕であるが、次第に、より白っぽく陥没した、傷跡のような外観を呈する。皮膚伸展線条は、膝窩、腰部、殿部、大腿といった箇所に多く見られるが、思春期線条は、乳房、背部、大腿の外側によく見られる。 妊娠に伴って生じる皮膚伸展線条は、妊娠線(striae gravidarum)と呼ばれ、妊婦のほとんどに認められる。妊娠線は、妊娠半年ぐらいから出産後にわたって、腹部、乳房、股部に発生する。出産後は時間の経過とともに目立たなくなるが、多くは完全には元に戻らない。 皮膚は表皮、真皮、皮下組織から成り立っている。このうち、表皮は伸展性が高いが、一方、真皮や皮下組織は伸びにくい。妊娠や成長、肥満等によって急激に皮膚が伸びると、真皮の弾性線維構造が破綻し、その結果、皮膚伸展線条が引き起こされると考えられている。妊娠線を発症した皮膚ではエラスチン線維が減少していることが報告されている(非特許文献1)。 真皮の弾性の維持には、細胞外マトリックス(ECM)に存在する弾性線維やコラーゲン線維が重要な役割を担っている。弾性線維は、ミクロフィブリルにトロポエラスチン分子の凝集体が重合して構築されている。弾性線維の土台となるミクロフィブリルは、350kDaの糖タンパク質であるフィブリリン−1から主に構成されており、直列及び並列に重合したフィブリリン−1に種々のタンパク質が作用することで構築される。 microfibrillar−associated protein 4(MFAP−4)は、Arg−Gly−Asp(RGD)配列とフィブリノーゲン様ドメインを含む255アミノ酸からなるタンパク質として最初に同定された。MFAP−4は、顔形状に異変(四角の顔、深くくぼんだ目、膨らんだ頬、低く突き出た顎など)が認められるSmith−Magenis syndromeの原因遺伝子として知られている(非特許文献2)ほか、エラスチンに関係のある疾患pseudoxanthoma elasticumにおいては、分解した弾性線維の蓄積部位に所見が認められることが報告されている(非特許文献3)。しかし、MFAP−4の機能や作用機序については未だ十分明らかにされていなかった。 MFAP−4が皮膚の真皮におけるECM及び弾性線維の構築に何らかの役割を果たしている可能性がある。さらに、MFAP−4の発現を制御することでで、妊娠や肥満によって皮膚が急激に伸びた場合の真皮における弾性線維の減少や亀裂の予防を図ることができると期待される。 ヒメウズ(姫烏頭)は、テンキシ(天葵子)、トンボソウとも称され、キンポウゲ科ヒメウズ属のSemiaquilegia adoxoidesを指す。これは従来、解熱・利尿に利用されてきた植物である。ローズマリーは、迷迭香(マンネンロウ)、ロスマリンとも称され、シソ科ローズマリー属またはマンネンロウ属のRosmarinus officinalisを指す。この植物の枝や葉は香料として用いられている。セイヨウシナノキ(西洋科樹)は、セイヨウボダイジュ(西洋菩提樹)とも称され、シナノキ科シナノキ属のTilia europaeaを指す。この花には発汗作用があることが従来知られていた。 しかし、これらの植物がMFAP−4発現やECM及び弾性線維の構築に何らかの役割を果たしていることはこれまで知られていなかった。Watson et al, 1998, British J Dermatol 138:931-937Zhao et al, 1995, Hum Mol Genet 4:589-597Hirano et al, 2002, J Dermatol Sci 28:60-67 本発明は、MFAP−4産生を促進し、ECM及び弾性線維の構築を促進することができる天然由来素材の提供に関する。 最近、一部に本発明者らを含む研究グループによって、線維芽細胞におけるMFAP−4が、コラーゲン線維や弾性線維などのECM分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現に関わっていることが示された(図1)。また、MFAP−4が、トロポエラスチン及びフィブリリン−1からなる重合体の形成に寄与していること(図2)、さらには弾性線維の土台となるミクロフィブリルを構成するフィブリリン−1と直接相互作用することが明らかになった(図3)。これらの研究により、MFAP−4がMMPを介したコラーゲン線維や弾性線維などのECMの分解を抑制するとともに、ECM内でフィブリリン−1と相互作用してフィブリリン−1からミクロフィブリルへの重合化を促進することで弾性線維の形成を促し、結果としてECMの構造を維持する働きがあることが示された(図4)。 従って、MFAP−4の発現を促進することができれば、組織におけるECM及び弾性線維の構築を促すとともにその分解を抑えて、その構造を維持し、結果として妊娠線等の皮膚伸展線条の予防を図ることができる。 上記の研究結果に基づいて、本発明者らは、MFAP−4の発現を促進する天然由来の物質を探索した結果、ある種の植物又はそれらの抽出物に、細胞のMFAP−4の発現を促進する作用があり、組織におけるECM及び弾性線維の形成促進及び分解抑制のため、さらには妊娠線等の皮膚伸展線条の予防のための素材として有用であることを見出した。 すなわち、本発明は、ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするMFAP−4産生促進剤を提供する。 また本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするミクロフィブリル形成促進剤を提供する。 また本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする弾性線維形成促進剤を提供する。 また本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする弾性線維分解抑制剤を提供する。 また本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするコラーゲン分解抑制剤を提供する。 また本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする皮膚伸展線条予防剤を提供する。 本発明によれば、細胞のMFAP−4産生を促進することができる。また本発明によれば、当該MFAP−4産生促進を介して、組織におけるコラーゲンや弾性線維の構造を維持することができ、結果として妊娠線等の皮膚伸展線条を予防することができる。A:MFAP−4のMMP−12発現への影響。B:MFAP−4のMMP−1発現への影響。エラーバー=SD、**:P<0.01。***:P<0.001。MFAP−4の細胞外マトリックスへの影響。スケールバー=50μm。MFAP−4とフィブリリン−1との相互作用。弾性線維構築の模式図。 本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。 本明細書において、「改善」とは、疾患又は症状の好転、疾患又は症状の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。 本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。 本明細書において、「MFAP−4」(microfibrillar−associated protein 4)とは、Gene ID:4239、MIM ID:600596として知られているタンパク質である。 本発明における「MFAP−4産生促進」は、MFAP−4タンパク質の量の増加、MFAP−4タンパク質の発現レベルの亢進、MFAP−4タンパク質をコードするmRNAの発現レベルの亢進、MFAP−4タンパク質をコードする遺伝子の転写制御領域の活性化レベルの亢進等の任意のパラメーターに基づいて測定することができる。 本明細書において、「ヒメウズ」とは、キンポウゲ科ヒメウズ属のSemiaquilegia adoxoidesを指し、「ローズマリー」とは、シソ科ローズマリー属のRosmarinus officinalisを指し、「セイヨウシナノキ」とは、シナノキ科シナノキ属のTilia europaeaを指す。 本発明において、上記に挙げた植物は、特に限定されない限り、当該植物の任意の部位、例えば全草、全木、葉、茎、芽、花、蕾、樹木、木質部、樹皮、根、根茎、仮球茎、塊根、地衣体、葉状体、種子、果実、若しくは樹脂等、又はそれらの組み合わせを利用すればよい。好ましい部位は、ヒメウズの場合は塊根、ローズマリーの場合は葉、及びセイヨウシナノキの場合は花又は葉である。 上記に挙げた植物の抽出物は、上述した当該植物の任意の部位又はそれらの組み合わせからの抽出物であればよいが、上述した当該植物の好ましい部位からの抽出物であるのが好ましい。これらの植物の部位は、そのまま抽出工程に付されてもよく、又は粉砕、切断若しくは乾燥された後に抽出工程に付されてもよい。 上記抽出物としては、市販されているものを利用してもよく、又は常法により得られる各種溶媒抽出物、又はその希釈液、その濃縮液、その乾燥末、ペースト若しくはその活性炭処理したものであってもよい。一例として、本発明における抽出物は、上記植物の部位を室温若しくは加温下にて抽出するか、又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。 抽出のための溶媒には、極性溶媒、非極性溶媒のいずれをも使用することができる。溶媒の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及び超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶媒;ならびにこれらの混合物が挙げられる。好適には、水、アルコール類及びその水溶液が挙げられ、アルコール類としてはエタノールが好ましい。より好ましい溶媒は、水及びエタノール水溶液である。 アルコール類と水との配合割合(容量比)としては、99.999〜0:0.001〜100が好ましく、95〜5:5〜95がより好ましく、80〜20:20〜80がさらに好ましく、70〜30:30〜70がさらにより好ましく、60〜40:40〜60がなお好ましい。 溶媒の使用量としては、上記植物(乾燥質量換算)1gに対して1〜100mLが好ましく、抽出時間としては、1分間〜2ヶ月間が好ましく、10分間〜4週間がより好ましい。このときの抽出温度は、0℃〜溶媒沸点、より好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは15〜40℃である。 抽出物を得る抽出手段は、具体的には、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等の手段を用いることができる。例えば、浸漬の好適な一例として、0℃〜溶媒沸点(好ましくは15〜40℃)で、1時間〜4週間の浸漬が挙げられる。また、抽出時間を短縮する場合には、攪拌を伴う固液抽出が望ましい。抽出物の酸化を防止するため、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する手段を併用してもよい。 後記実施例に示すように、上記植物の抽出物は、細胞におけるMFAP−4の発現を有意に促進する作用を有する。従って、上記植物及び/又はそれらの抽出物は、MFAP−4産生促進のために使用することができる。また、上記植物及び/又はそれらの抽出物は、当該MFAP−4産生促進作用を介して、組織における弾性線維の形成促進及び分解抑制、又はコラーゲンの分解抑制、あるいは妊娠線等の皮膚伸展線条の予防のために使用することができる。当該使用は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する検体における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。 従って、一態様として、本発明は、ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするMFAP−4産生促進剤を提供する。 別の態様として、本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするミクロフィブリル形成促進剤を提供する。 別の態様として、本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする弾性線維形成促進剤を提供する。 別の態様として、本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする弾性線維分解抑制剤を提供する。 別の態様として、本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするコラーゲン分解抑制剤を提供する。 別の態様として、本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする皮膚伸展線条の予防剤を提供する。 本発明において、上記剤は、本質的にヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つから構成される。 本発明において、これらの植物及び抽出物は、単独で使用されてもよく、いずれか2以上の組み合わせで使用されてもよい。 上記植物及び/又はそれらの抽出物は、MFAP−4産生促進、組織における弾性線維の形成促進及び分解抑制、又はコラーゲンの分解抑制、あるいは妊娠線等の皮膚伸展線条の予防のための組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等の製造のために使用することができる。当該組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等もまた、本発明の範囲内である。 上記組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等は、ヒト又は非ヒト動物用として製造され、又は使用され得る。上記植物及び/又はそれらの抽出物は、当該組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等に素材として配合され、MFAP−4産生促進、組織における弾性線維の形成促進及び分解抑制、又はコラーゲンの分解抑制、あるいは妊娠線等の皮膚伸展線条の予防のための有効成分であり得る。 上記医薬又は医薬部外品は、上記植物及び/又はそれらの抽出物を有効成分として含有する。当該医薬又は医薬部外品は、任意の投与形態で投与され得る。投与形態は、経口投与でも外用剤等の非経口投与でもよい。経口投与のための剤型としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤のような固形投薬形態、ならびにエリキシロール、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態が挙げられ、非経口投与のための剤型としては、注射、輸液、局所、外用剤、経皮、経粘膜、経鼻、経腸、吸入、坐剤、ボーラス、貼布剤等が挙げられる。 一例として、当該医薬又は医薬部外品は、ローション、クリーム、ジェル、軟膏、貼布剤等の形態の皮膚外用剤の形態であり得る。 上記医薬や医薬部外品は、上記植物又はそれらの抽出物を単独で含有していてもよく、又は薬学的に許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、希釈剤、分散剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。また、当該医薬や医薬部外品は、上記植物又はそれらの抽出物のMFAP−4産生促進作用が失われない限り、他の有効成分や薬理成分を含有していてもよい。 上記医薬又は医薬部外品は、上記植物及び/又はそれらの抽出物から、あるいは必要に応じて上記担体及び/又は他の有効成分や薬理成分を組みあわせて、常法により製造することができる。当該医薬又は医薬部外品における上記植物及び/又はそれらの抽出物の含有量は、例えば、当該抽出物の乾燥重量に換算して、通常0.001〜99.999質量%であり、0.01〜20質量%とするのが好ましい。 上記化粧料は、上記植物及び/又はそれらの抽出物を有効成分として含有する。上記化粧料は、上記植物又はそれらの抽出物を単独で含有していてもよく、又は化粧料として許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。 斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、希釈剤、分散剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。また、当該化粧料は、上記植物又はそれらの抽出物のMFAP−4産生促進作用が失われない限り、他の有効成分や化粧成分、例えば、保湿剤、美白剤、紫外線保護剤、細胞賦活剤、洗浄剤、角質溶解剤、メークアップ成分(例えば、化粧下地、ファンデーション、おしろい、パウダー、チーク、口紅、アイメーク、アイブロウ、マスカラ、その他)等を含有していてもよい。 化粧料の形態としては、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、フォーム、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧料に使用され得る任意の形態が挙げられる。 一例として、上記化粧料は、妊娠線予防用の化粧料であり得る。 上記化粧料は、上記植物及び/又はそれらの抽出物から、あるいは必要に応じて上記担体及び/又は他の有効成分や化粧成分を組みあわせて、常法により製造することができる。当該化粧料における上記植物及び/又はそれらの抽出物の含有量は、当該抽出物の乾燥重量に換算して、通常0.0001〜99.999質量%であり、0.001〜10質量%とするのが好ましい。 また本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを投与することを特徴とするMFAP−4産生促進方法を提供する。当該方法において、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つは、MFAP−4産生促進のために、それを必要とする対象に有効量で投与される。 また本発明は、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを投与することを特徴とする、組織における弾性線維の形成促進及び分解抑制、又はコラーゲンの分解抑制方法、あるいは妊娠線等の皮膚伸展線条の予防方法を提供する。当該方法において、上記植物及びそれらの抽出物から選択される少なくとも1つは、組織における弾性線維の形成促進及び分解抑制、又はコラーゲンの分解抑制、あるいは妊娠線等の皮膚伸展線条の予防のために、それらを必要とする対象に有効量で投与される。 投与する対象としては、動物、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトが挙げられる。好ましくは、当該投与は、美容を目的として、非治療的に投与され得る。あるいは、投与する対象は、動物由来の組織、器官、細胞、又はそれらの分画物であり得る。当該組織、器官、細胞、又はそれらの分画物は、好ましくは、MFAP−4発現能を有する天然由来又は生物学的若しくは生物工学的に改変された組織、器官、細胞、又はそれらの分画物であり、より好ましくは皮膚組織、皮膚組織由来の細胞、又はそれらの培養物である。 好ましい投与量は、対象の種、体重、性別、年齢、状態又はその他の要因に従って変動し得る。投与の用量、経路、間隔、及び摂取の量や間隔は、当業者によって適宜決定され得る。例えば、上記植物の抽出物の乾燥物換算で、成人1人当たり、0.01〜1000mg/日とすることが好ましく、0.1〜100mg/日がより好ましい。 以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。製造例 植物抽出物の調製製造例1 ヒメウズ抽出物の調製 ヒメウズ塊根(新和物産)40gに50%エタノール水溶液400mLを加え、室温で22日間浸漬した。これをろ過し、ヒメウズ抽出液を得た。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は14.89gであった。この抽出物を50%エタノールにて希釈し、1%(w/v)の溶液とした。製造例2 ローズマリー抽出物の調製 ローズマリー葉(新和物産)40gに50%エタノール水溶液400mLを加え、室温で28日間浸漬した。これをろ過し、ローズマリー抽出液を得た。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は6.53gであった。この抽出物を50%エタノールにて希釈し、1%(w/v)の溶液とした。製造例3 セイヨウシナノキ抽出物の調製 セイヨウシナノキ葉(新和物産)40gに50%エタノール水溶液400mLを加え、室温で19日間浸漬した。これをろ過し、セイヨウシナノキ抽出液を得た。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は5.89gであった。この抽出物を50%エタノールにて希釈し、1%(w/v)の溶液とした。実施例1 植物抽出物によるMFAP−4産生促進 正常ヒト真皮線維芽細胞(倉敷紡績株式会社)を、3.0×105細胞/ウェルで24ウェルプレートに添加し、24時間培養した。培地を交換し、次いで各ウェルに、試験物質として製造例1〜3で調製した植物抽出物のいずれか(最終濃度0.1%(v/v);エキス分として0.001%(w/v))、又は対照として同量の50%エタノールを添加した。3日後、培養上清を回収し、それをサンプルとしてウェスタンブロティング法によりMFAP−4のバンドを検出してMFAP−4タンパク質の発現量を定量し、対照に対する相対発現量を求めた。 結果を表1に示す。表1記載の植物抽出物は、いずれもMFAP−4発現を促進した。参考例1 MMP発現に対するMFAP−4の影響 実施例1と同様の手順で、正常ヒト真皮線維芽細胞を1.0×105細胞/ウェルで24ウェルプレートに添加し、24時間培養した。培地を交換し、細胞を3群に分けて8日間培養した。2つの群は、10nMの組換えMFAP−4(rMFAP−4)の存在下又は非存在下で培養し、培養中に2回、MFAP−4に対する特異性がない対照siRNA配列(20μMで3.75μl)を培地に添加することにより、siRNAを細胞に導入した。残りの1群はrMFAP−4非存在下で培養し、培養中に2回、MFAP−4 siRNA配列(20μMで3.75μl)を培地に添加して細胞に導入した。 培養後、細胞からトータルRNAを抽出して、TaqMan(登録商標)gene expression assays(Applied Biosystems)を用いたRT−PCRによりMMP−12発現を測定し、内部標準(GAPDH)に対する相対値として定量化した。同様の手順で、MMP−1発現を調べた。 結果を図1に示す。siRNAでMFAP−4発現を抑えた場合、MMP−12(図1A)やMMP−1(図1B)の発現は増加した。MMP−12やMMP−1はECM分解に関わる酵素であることから、この結果よりMFAP−4はコラーゲン線維や弾性線維などのECMの分解に関わることが示された。参考例2 MFAP−4発現抑制がフィブリリン−1の重合化に与える影響 参考例1と同様の手順で細胞を調製した後、メタノールで細胞を固定し、トロポエラスチン抗体及びフィブリリン−1抗体を用いて免疫染色を、DAPIを用いて核染色を行い、蛍光顕微鏡下で弾性線維の形成を観察した。 結果を図2に示す。siRNAでMFAP−4発現を抑えた場合、トロポエラスチン及びフィブリリン−1からなる重合体の形成が損なわれたことから、MFAP−4がフィブリリン−1の重合化に寄与していることが示された。参考例3 MFAP−4とフィブリリン−1との相互作用 実施例1と同様の手順で、正常ヒト真皮線維芽細胞を1.0×105細胞/ウェルで24ウェルプレートに添加し、24時間培養した。培地を交換し、細胞を8日間培養した。培養上清を回収し、0.45μmメンブレン(Millipore)で濾過した後3kDaカットオフメンブレン(Millipore)を用いて10倍に濃縮し、濃縮液500μLを10μgのMFAP−4抗体又は正常ウサギIgGとともにインキュベートした。これに20μLのProtein Gセファロースビーズ(GE Healthcare)を添加してインキュベートした後、遠心によりビーズを回収した。回収したビーズからタンパク質を集め、1×SDSサンプルバッファー(Thermo Fisher scientific)に懸濁し、フィブリリン−1抗体を用いたウェスタンブロティング法に供した。 結果を図3に示す。MFAP−4抗体により回収した画分にフィブリリン−1が検出されたことから、ECM内でMFAP−4とフィブリリン−1とが共存していることが示唆された。この結果を参考例2で示されたMFAP−4のフィブリリン−1の重合化に対する影響とあわせて考慮すると、MFAP−4は、ECM内でフィブリリン−1と相互作用して、フィブリリン−1からミクロフィブリルへの重合化を促進し、弾性線維形成に関与していることが示唆される(図4)。参考例まとめ 参考例1〜3に示すように、MFAP−4は、MMPを介したコラーゲン線維や弾性線維などのECMの分解を抑制するとともに、ECM内でフィブリリン−1と相互作用してフィブリリン−1からミクロフィブリルへの重合化を促進することで弾性線維の形成を促し、結果としてECMの構造を維持するように機能する。 従って、MFAP−4発現を促進することによって、上記MFAP−4の機能を介して組織の弾性を向上させることができ、ひいては妊娠や成長、肥満等によって起こる皮膚の急速な過伸展による真皮の弾性線維構造の破綻や弾性線維の減少を防ぎ、妊娠線等の皮膚伸展線条を予防することができる。 ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするMFAP−4産生促進剤。 ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするミクロフィブリル形成促進剤。 ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする弾性線維形成促進剤。 ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする弾性線維分解抑制剤。 ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするコラーゲン分解抑制剤。 ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とする皮膚伸展線条予防剤。 【課題】MFAP−4産生を促進し、ECM及び弾性線維の構築を促進することができる天然由来素材の提供。【解決手段】ヒメウズ、ローズマリー及びセイヨウシナノキ、ならびにそれらの抽出物から選択される少なくとも1つを有効成分とするMFAP−4産生促進剤。【選択図】なし