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タイトル:公開特許公報(A)_安定なタンパク質分解酵素含有組成物
出願番号:2011132126
年次:2013
IPC分類:C12N 9/96,C12N 9/50


特許情報キャッシュ

金子 昌之 須藤 文彦 田村 茂昭 JP 2013000023 公開特許公報(A) 20130107 2011132126 20110614 安定なタンパク質分解酵素含有組成物 ニコスタービューテック株式会社 510106717 長谷部 善太郎 100122954 佐藤 荘助 100150681 山田 泰之 100162396 児玉 喜博 100105061 金子 昌之 須藤 文彦 田村 茂昭 C12N 9/96 20060101AFI20121204BHJP C12N 9/50 20060101ALI20121204BHJP JPC12N9/96C12N9/50 10 5 OL 17 4B050 4B050CC07 4B050HH02 4B050KK01 4B050KK05 4B050KK20 4B050LL01 4B050LL02 4B050LL04 本発明は、タンパク質分解酵素、特に液状に加工されたタンパク質分解酵素含有組成物の安定化に関する。 近年、動植物あるいは微生物を起源とする各種の加水分解酵素類を筆頭として各種多様な酵素類が、工業分野や生活の中で使用されている。化粧品や洗剤など日常品にも各種酵素が配合されている。これらの酵素類は固定化酵素を除き、通常水性溶液として使用される。しかし、一般に、酵素は、水溶液状態では不安定であり、時間とともにその酵素活性を失う。 また、酵素類は流通段階での安定性を考えて、粉末もしくは顆粒等の固体状態で製品化されることが多い。しかし粉末の酵素は、取り扱いにあたって飛散の防止や、吸湿などの問題がある。供給される酵素類が長期に安定な溶液状態であれば、使用量の調節や、希釈、混合操作も簡単となり、酵素製剤使用上の利便性が著しく高まる。貯蔵の間の十分な酵素安定性を確保することは、流通あるいは消費に要する時間が長い、一般消費者向けの液体酵素洗剤のような液体酵素系の配合物の場合、特に重要である。最近では、工業向けに一部酵素製剤が溶液状態で流通されるようになって来ているが、その安定性は十分なものとはいえない。 酵素溶液の安定化方法に関しては、各種のものが提案されている。例えば、リパーゼ水溶液に1価又は多価アルコールのポリオキシアルキレンエーテルを添加する方法(特許文献1:特開昭59−173080号公報)のように、各種界面活性剤を添加する方法や、各種酵素のアルコール性水溶液にソルビトール、マルチトールのような糖アルコールを添加する方法(特許文献2:特開昭61−139384号公報)等が知られている。 また、デキストリンのような水溶性高分子を添加する方法も、提案されている(特許文献3:特開平02−261898号公報)。 化粧品などに使用するタンパク質分解酵素の安定化にはイソマルトオリゴ糖、ラフィノース、フルクトースなどの糖類、グリシルグリシンやアルギニルグルタミン酸などのペプチドを使用する技術が開示されている(特許文献4:特開2005−306822)。 あるいは多糖類ステロイドのハイドロゲルに酵素を内包させて安定化を果たす方法が提案されている(特許文献5:特開2002−146100号公報)。 さらに又、液状洗濯用洗剤や自動食器洗浄機用液体洗剤に使用するための洗浄用各種酵素を粘土やシリカなどの多孔性の構造体に吸着させ、その多孔性の構造体をシリコーン油などの疎水性物質でコーティングしておくことで、洗剤中での安定性を保つ技術が提案されている(特許文献6:特表平09−511005号公報)。これらの提案のいずれも未だ十分なものではない。特に化粧料用途としてタンパク質分解酵素を化粧料に配合するための安定な液状組成物としては、酵素活性の維持と使用感の両方を満たす必要があるが、これらの面からみて必ずしも適切とはいえないのが現状である。特開昭59−173080号公報特開昭61−139384号公報特開平02−261898号公報特開2005−306822号公報特開2002−146100号公報特表平09−511005号公報 タンパク質分解酵素を含有する酵素活性の安定な液状又はクリーム状組成物を提供することを課題とする。 本発明の主な構成は、次のとおりである。(1)タンパク質分解酵素、水、粘土鉱物を含有することを特徴とする液状形態の酵素活性が安定な組成物。(2)タンパク質分解酵素がパパイン又はブロメラインである(1)に記載の組成物。(3)粘土鉱物が、タンパク質分解酵素1重量部あたり1〜200重量部含有する(1)又は(2)に記載の組成物。(4)粘土鉱物が膨潤性層状ケイ酸塩を含有するものである(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。(5)粘土鉱物が、スメクタイト系の粘土鉱物、雲母粘土鉱物、カオリン鉱物、タルクのいずれかである(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。(6)スメクタイト系の粘土鉱物がモンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイトから選択される1以上である(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。(7)水の含有量が5重量%以上である(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物。(8)さらに、多価アルコールと界面活性剤を含有する(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。(9)さらに酵素安定剤を含有する(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物。(10)酵素安定剤が亜硫酸の塩である(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物。 本発明は(1)水溶液、(2)界面活性剤存在下の水溶液等液状態において粘土鉱物の添加によって酵素活性が安定化し、品質の維持・向上が顕著な組成物とすることができる。特に本発明の組成物は、含有するタンパク質分解酵素の活性が長期間安定に保たれており、さらに形態が液状であるため種々の食品、薬品、化粧品に配合することができる。特に化粧品の製造に当たって簡便に、液状化粧料に配合することができる。また、粉末状の酵素の場合、配合時に微粉末の飛散を防止したり、作業員が吸引したりすることを予防するための設備や器具が必要となるが、液状のためこのような設備や器具を必要としない。さらに、本発明のタンパク質分解酵素含有組成物を配合した場合、化粧料の使用感が良く、洗浄用化粧料は特に使用感が好ましい。特に注目すべきはパパインにおいて上記効果が顕著であり、粉末でしか提供できなかったパパイン含有組成物を液状で提供することができる。水中でのタンパク質分解酵素の活性変化を示す。グリセリンを含有する水中でのタンパク質分解酵素活性の変化を示す。酵素安定剤として亜硫酸ナトリウムを含有する水中でのタンパク質分解酵素の活性変化を示す。粘土鉱物を含有する水中でのタンパク質分解酵素活性の変化を示す。パパインの酵素活性の安定化に粘土鉱物スメクタイトが有効であることを示す。パパインの酵素活性の安定化粘土鉱物ベントナイトが有効であることを示す。ブロメラインの酵素活性の安定化に粘土鉱物スメクタイトが有効であることを示す。 本発明で用いるタンパク質分解酵素としては、化粧料に配合できるものであれば微生物由来、植物由来、動物由来のいずれも使用することができる。微生物由来のタンパク質分解酵素としては、例えば、カビ由来のプロテアーゼ、酵母由来のプロテアーゼ、細菌由来のプロテアーゼ等を例示することができる。植物由来のタンパク質分解酵素としては、例えば、パパイン、キモパパイン、ブロメライン、フィシン等を例示することができる。動物由来のタンパク質分解酵素としては、例えば、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パンクレアチン等を例示することができる。洗顔用化粧料に使用する場合には、特にアルカリ性域に至適pH値を有する酵素が好ましいが、特にパパイン又はブロメラインが好ましい。本発明に使用する酵素は、粗酵素であっても精製酵素であっても良い。また原料の植物から抽出しても良いし、市販の工業や医薬品用の酵素であってもよい。特にパパインは、至適pHが7〜8にある、パパイヤの実から抽出した植物プロテアーゼであり、耐熱性や耐酸性が高く、基質特異性が広く非常に安定な酵素であり好ましい。 本発明においては、使用目的に合わせて所望の酵素活性を調整することができる。酵素の量は、酵素重量または酵素活性で組成物中の含有量を特定することができる。本発明においては、組成物中のタンパク質分解酵素の含有量を0.01重量%とすることができる。酵素含有量は目的に応じて調整することができ、特に配合量の上限はない。 また本発明組成物は、従来の技術と異なり、水分含量(水分量)を5重量%以上にすることができることが大きな特徴である。本発明においては、水分量は5重量%以上であれば特に制限されない。 本発明においてタンパク質分解酵素の安定化に重要な役割を果たすのは粘土鉱物である。粘土鉱物に含有される膨潤性層状ケイ酸塩は、陽イオン交換能を有し、更に層間に水を取り込んで膨潤していく層状ケイ酸塩で、スメクタイト型粘土や膨潤性雲母等が知られている。 本発明でいう粘土鉱物とはこのような物質を全て包含する。従来技術においても述べたように、粘土鉱物は、その層状構造中にタンパク質分解酵素などのタンパク質を吸着し、安定化させることが知られている。しかし水を含む系においては、水の存在によって酵素活性を失うため、水を極力添加しないかあるいは、水の影響を排除するために酵素を吸着した粘土鉱物の表面をシリコーンなどの疎水性の物質でコーティングする必要があった。しかし本発明の組成物とすることで、タンパク質分解酵素力価を長期間安定に維持することができる。 粘土鉱物の具体例としては、天然物、天然物からの精製物又は合成の何れのものであっても特に限定されないが、例えば、カオリン、ナクライト、ディッカイト、ハロサイトなどのカオリン系粘土鉱物、アンティゴライト、アメサイト、クロンステダイトなどのアンティゴライト系粘土鉱物、パイロフィライト、タルク(滑石)などのパイロフィライト系粘土鉱物、イライト、海緑石、セラドナイト、セリサイト、マイカ(雲母)、白雲母、クロム白雲母、黒雲母などの雲母系粘土鉱物、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントナイト、サポナイト、ヘクトライト、ルーセンタイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライトなどのバーミキュライト系粘土鉱物;緑泥石(クロライト)などの緑泥石系粘土鉱物、スメクタイト系やバーミキュライト系の粘土鉱物を塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理した有機変性粘土鉱物などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。 本発明においては、酵素安定性並びに、使用感から、スメクタイト系粘土鉱物であるベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントナイト、サポナイト、ヘクトライト、ルーセンタイトなどの粘土鉱物が好ましい。特に化粧品用途においては、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントナイト、サポナイトが特に好ましい。スメクタイト系粘土鉱物以外では、カオリン、タルク、マイカ、セリサイトが好ましい。粘土鉱物は市販品をそのまま用いることができる。スメクタイト系としては、モンモリロナイトとしてクニミネ工業(株)製のクニピアG(商品名)及びクニピアF(商品名)、アメリカンコロイド社製のウエスタンボンド(商品名)、ドレッサーミネラルズ社製のイエローストーン(商品名)などが市販されている。サポナイトを含有するものとして、バンダービルド社製のビーガム(製品名)、ビーガムHV(製品名)、ビーガムF(製品名)、ビーガムウルトラ(製品名)及びビーガムK(製品名)などが、また、ヘクトライトを含有するものとして、アメリカンコロイド社製のヘクタブライトAW(製品名)、ヘクタブライト200(製品名)及びベントンEW(製品名)、ナショナルリード社製のマカロイド(製品名)などが市販されている。また、合成スメクタイトには、例えば水澤化学工業(株)製のイオナイトH(製品名)が、コープケミカル(株)製のSWN(製品名)やSAN(製品名)が、ラポルテインダストリー社からラポナイト(製品名)がそれぞれ市販されている。 膨潤性合成雲母は、タルクとケイフッ化アルカリの混合物を加熱処理して得られる膨潤性合成雲母が挙げられ、タルクとケイフッ化ナトリウム及び/又はケイフッ化リチウムとを混合した微粉末を600〜1200℃に加熱処理して得られるものが好ましい。このような膨潤性合成雲母としては、コープケミカル(株)製の膨潤性合成雲母MEシリーズ(商品名)、トピー工業(株)製のナトリウム四ケイ素雲母(商品名、DP−DM及びDMクリーン)などが挙げられる。 また、本発明におけるカオリン系粘土鉱物として、酸性白土のアルカリ処理物も用いることができる。この酸性白土は、通常1重量%水溶液分散液のpH5〜6以下、膨潤度10ml/2g以下、SiO2とAl2O3のモル比(SiO2/Al2O3)6〜10を有し、このようなものとしては、例えば中条、小戸、上赤谷、糸魚川、水澤、川崎、松根、三川、青梅、上砂見産の酸性白土や、これらの酸性白土と類似の性質を示す英国産のフラーズ・アース(Fuller’s earth)、米国産のフロライド・アース(Floride earth)、ドイツ産のワルケル・エルデ(Warkel erde)などがある。酸性白土中には、交換性の陽イオンとしてナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオンなどが存在する。これらの酸性白土をアルカリ処理したものは、前記の粘土鉱物と同様に用いることができる。カオリンの市販品としては、例えば、カオリン(商品名,伊那貿易社製);タルクの市販品としては、例えば、TALK PP(商品名,松村産業社製);マイカの市販品としては、例えば、カシュミール(商品名,触媒化成社製);ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトの市販品としては、例えば、ベントン38V(商品名,エレメンティスジャパン社製);ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライトの市販品としては、例えば、ベントン27V(商品名,エレメンティスジャパン社製);ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイトの市販品としては、例えば、ベントン34(商品名,エレメンティスジャパン社製)などを例示することができる。 粘土鉱物の含有量は、タンパク質分解酵素の安定化効果が付与されるのであれば特に限定されない。通常、組成物に含有されるタンパク質分解酵素1に対して、重量として1〜100倍量、好ましくは10〜100倍量を含有させる。また組成物中には0.1〜30重量%を含有させることが好ましい。 粘土鉱物は結晶であり、市販品は微粉末で提供される。これを水溶液に添加する場合にはできるだけ均一に分散させ、沈降させないことが望ましい。このため、溶液の粘度を調整することが好ましい。粘度調整のために、通常使用される多糖類やポリマー、あるいは多価アルコールを配合することができる。 本発明の組成物は、多価アルコールを含有させることが好ましい。多価アルコールを含有させることで、相対的に水分量が低下し、酵素の安定化に寄与するとともに、防腐効果を付与することができる。このため、化粧品原料として取り扱いやすくなるなどの利点がある。本発明に使用する多価アルコールとしては化粧品の基材として使用されるポリエチレングリコール(PEG)やグリセリン、ソルビトールなどの糖アルコール類が好ましい。これ以外の多価アルコールであっても水溶性を有するものであれば本発明に使用可能である。 このような多価アルコールとしては、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等が例示できる。これらの多価アルコールの一種以上を必要に応じて混合して用いることができる。多価アルコールを配合する場合には組成物あたり10〜80重量%とする。 本発明では、さらに界面活性剤を配合することができる。界面活性剤は、タンパク質の立体構造をリフォールディングするため、水溶液とする場合には、従来は添加は好ましくないとされてきた。本発明により安定に添加できるようになった。用いられる界面活性剤は、含有する水と多価アルコール、粘土鉱物を均等に分散させる機能を有するものであればどのようなものでも良いが、タンパク質分解酵素の安定化の観点から、脂肪酸の塩類を使用することが望ましい。脂肪酸塩の種類については、特に限定されないがラウリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、ステアリン酸カリウムなどのカリウム塩や、その他脂肪酸のナトリウム塩が好ましい。これらの脂肪酸塩を単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明においては界面活性剤の含有量は1〜50重量%の範囲内であれば、タンパク質分解酵素に悪影響を及ぼさない。特に好ましくは1〜40重量%である。 本発明においては、さらに必要に応じてその他の公知のタンパク質分解酵素安定剤を配合することができる。このようなタンパク質分解酵素安定剤としては亜硫酸塩、カルシウム塩(例えば、塩化カルシウムや、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質又はこれらの組合せ等が挙げられる。本発明においては亜硫酸塩を用いることが好ましい。 以下に試験例、実施例、比較例を示しさらに本発明を詳細に説明する。なお本発明は、これに限定されるものではない。[試験例]1.試験試料の調製 本発明のタンパク質分解酵素の安定化効果を確認するために試験試料を調製した。 ・使用成分(1)タンパク質分解酵素 パパイン: 本試験及び実施例で用いるパパインは、パパイヤ(Carica papaya L.)の完熟前果実から採った分泌物ラテックスを、常温で等量の純水で希釈し混合均一化して、第1次遠心分離(5000rpm)、フィルタープレス濾過、第2次遠心分離(10000rpm)、滅菌濾過などの操作を行い凍結乾燥したものである。パパイン成分(ほぼ100重量%)のみの純品で他の成分は含まれていない。化粧品種別配合成分規格「パパイン」に収載されている定量法に基づき、活性量を定量すると40000Pa.U.N./g以上の活性量を有する。前記パパインの乾燥の程度は、乾燥減量試験法として「化粧品原料基準一般試験法8.乾燥減量試験法」に従って行い、本実施例のパパインの約1gを精密に量り、105℃で1時間乾燥するとき、その減量が採取量の10.0%以下であるものを用いた。(2)多価アルコール グリセリン 局方規格品(3)酵素安定剤 亜硫酸ナトリウム:無水亜硫酸ナトリウム局方品(4)粘土鉱物 スメクタイト(ケイ酸アルミニウムマグネシウム) :ビーガムウルトラ(R.T.Vanderbilt C.INC.製、以下「ビーガム」と略記する。)[試験1] パパイン0.1重量%、グリセリン30重量%、精製水69.1重量%の溶液を調製し室温(約25℃)で150日間保存し、酵素活性の変化を測定した。[試験2] パパイン0.1重量%とし、亜硫酸ナトリウム0.5、1、3重量%の3段階の濃度を設定して、水を加えて全量を100とした溶液を調製し、これを120日間室温で保存して、酵素活性の変化を測定した。[試験3] パパイン0.1重量%とし、ビーガムを1、3、5、8、10、12、15重量%の7段階にし、水を加えて全量を100とした溶液を調整した。これを120日間室温で保存して、酵素活性の変化を測定した。 なお、参考のため水にパパイン0.1重量%を溶解した溶液を調製し、同様に酵素活性を測定した。2.酵素活性の測定(1)力価測定方法A.検量線用標準液の調製 α-N-ベンゾイル-L-アルギニン-エチルエステル(BAEE)塩酸塩342.84mgを正確に量り、水で50mLとした。これを標準原液(1mLはBAEE 20マイクロmolを含む)とする。これを酵素基質としても用いた。標準原液の1mLを正確に量り、水で20mLとし検量線用標準溶液(濃度:1マイクロmol / mL)とした。B.緩衝液の調製 リン酸水素二カリウム2.164gとリン酸二水素カリウム14.66gを水に溶かして1000mLとし、リン酸緩衝液(pH5.8)を調製した。C.トリクロロ酢酸溶液の調製 トリクロロ酢酸81.7gを水に溶かし1000mLとし、トリクロロ酢酸溶液を調製した。D.活性測定方法 検量線用標準液をHPLCで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。検量線については、適宜1点検量線および2点検量線を用いた。HPLCの測定条件は以下の通りであった。 装置:島津HPLC:検出器 SPD−M20A、ポンプ LC−20AD 検出器:PDA (測定波長:254nm) カラム:Chemcobond 5−ODS−H(内径4.6mm、長さ10cm) 移動相:0.05M酢酸アンモニウム+アセトニトリル(85+15) 前記タンパク質分解酵素含有液状組成物0.1gを秤量し、前記緩衝液2mLと前記基質1mLを入れた10mLの試験管に入れた。25℃で30分間インキュベートした後、トリクロロ酢酸溶液5mLを加え反応を停止させた。メンブランフィルター(アドバンテック製、PTFE、径:0.45μm)でろ過し、得られたろ液を用いHPLCにて測定した。ピーク面積を測定し、検量線より基質分解量を計算し、次式によって酵素活性(U/g)を求めた。(数1) パパイン活性(U/g) = C×V1×V2 V3×M×S C:試料の減少量(μmol/ml) S:試料の量(g) M:反応時間(分) V1:反応溶液の最終液量(ml) V2:試料液の量(ml) V3:試料液の採取量(ml)3.結果 各試験の結果及び水中での酵素安定性を測定した結果を、各溶液調整時の酵素活性を100として下記表1〜4、図1〜4に示す。 上記のとおり試験結果から、ビーガムは濃度依存的にタンパク分解酵素水溶液の酵素活性低下を抑制し、安定化することが確認できた。また、酵素活性は調製後1日目に低下するが、その低下はスメクタイトの濃度を高めることで抑制できることがわかった。また、その効果は従来の酵素安定剤である亜硫酸塩に比較して高いことがわかった。そしてその効果は120日後も持続していた。一方従来酵素の安定化効果があるといわれていたグリセリンを添加した溶液は、100日経過後はほとんど酵素活性が消失してしまうことが明らかとなった。[実施例・比較例] 界面活性剤を含有する化粧品用の原液を調製し、本発明の粘土鉱物の界面活性剤存在下での効果を確認した。なお粘土鉱物としてスメクタイト、ベントナイトを使用した。1.試料の調製(1)実施例1、2・比較例1、2の溶液調製 タンパク質分解酵素含有液状組成物用基材の調製 多価アルコール グリセリン 30重量部 PEG400 5重量部 PEG1540 15重量部 ソルビトール 5重量部 界面活性剤 ラウリン酸カリウム 10重量部 パルミチン酸カリウム 10重量部 ミリスチン酸カリウム 5重量部 ステアリン酸カリウム 5重量部 水 精製水 5重量部 各化合物を秤量混合した後、85℃で1時間撹拌し、均一な基材となる組成物を得た。 この基材となる組成物を60℃まで冷却した後、スメクタイト系粘土鉱物として、モンモリロナイトを主成分とするビーガムを5重量部、亜硫酸ナトリウムを1重量部添加(実施例1)、又は無添加(実施例2)とし、60℃で10分間撹拌し、均一な組成物を得た。この組成物を40℃まで冷却した後、タンパク質分解酵素としてパパインを0.1重量部加え、40℃で10分間撹拌し、均一に分散させた後、水3.9重量部(又は水4.9重量部)を加え、全量を100重量部とした。これを40℃で10分間撹拌し、タンパク質分解酵素含有液状組成物とした。 同様にしてビーガムと亜硫酸ナトリウムを添加しない組成物を調製し、これを比較例1とした。またビーガムを添加しない組成物を調製しこれを比較例2とした。(2)実施例3、4・比較例3、4の調製 多価アルコール グリセリン 30重量部 PEG400 5重量部 PEG1540 15重量部 ソルビトール 5重量部 界面活性剤 ラウリン酸カリウム 10重量部 パルミチン酸カリウム 10重量部 ミリスチン酸カリウム 5重量部 ステアリン酸カリウム 5重量部 水 精製水 5重量部 各化合物を秤量混合した後、85℃で1時間撹拌し、均一な基材となる組成物を得た。 この基材となる組成物を60℃まで冷却した後、スメクタイト系粘土鉱物として、ベントナイト(白石工業株式会社製)を5重量部、亜硫酸カリウムを1重量部添加(実施例3)、又は無添加(実施例4)、60℃で10分間撹拌し、均一な組成物を得た。この組成物を40℃まで冷却した後、タンパク質分解酵素としてパパインを0.1重量部加え、40℃で10分間撹拌し、均一に分散させた後、水3.9重量部(又は水4.9重量部)を加え全量を100重量部とした。これを40℃で10分間撹拌した。これを、タンパク質分解酵素含有液状組成物とした。 同様にしてベントナイトと亜硫酸カリウムを添加しない組成物を調製し、これを比較例3とした。またベントナイトを添加しない組成物を調製しこれを比較例4とした。(3)実施例5、6・比較例5、6の調製 多価アルコール グリセリン 30重量部 PEG400 5重量部 PEG1540 15重量部 ソルビトール 5重量部 界面活性剤 ラウリン酸カリウム 10重量部 パルミチン酸カリウム 10重量部 ミリスチン酸カリウム 5重量部 ステアリン酸カリウム 5重量部 水 精製水 5重量部 各化合物を秤量混合した後、85℃で1時間撹拌し、均一な基材となる組成物を得た。 この基材となる組成物を60℃まで冷却した後、スメクタイト系粘土鉱物として、ビーガムを5重量部、亜硫酸ナトリウムを1重量部加え、60℃で10分間撹拌し、均一な組成物を得た。この組成物を40℃まで冷却した後、タンパク質分解酵素としてブロメライン粉末(和光純薬製)を0.1重量部加え、40℃で10分間撹拌し、均一に分散させた後、水13.9重量部(又は水14.9重量部)を加え、全量を100重量部とした。これを40℃で10分間撹拌し、タンパク質分解酵素含有液状組成物とした。 同様にしてビーガムと亜硫酸ナトリウムを添加しない組成物を調製し、これを比較例5とした。またビーガムを添加しない組成物を調製しこれを比較例6とした。(4)実施例7の調製 多価アルコール グリセリン 35重量部 PEG400 5重量部 PEG1540 15重量部 ソルビトール 10重量部 界面活性剤 ラウリン酸カリウム 15重量部 各化合物を秤量混合した後、85℃で1時間撹拌し、均一な基材となる組成物を得た。 この基材となる組成物を60℃まで冷却した後、スメクタイト系粘土鉱物として、ビーガムを5重量部、亜硫酸ナトリウムを1重量部加え、60℃で10分間撹拌し、均一な組成物を得た。この組成物を40℃まで冷却した後、タンパク質分解酵素としてブロメライン粉末を0.1重量部加え、40℃で10分間撹拌し、均一に分散させた後、水13.9重量部を加え、全量を100重量部とした。これを40℃で10分間撹拌し、タンパク質分解酵素含有液状組成物とした。 上述の実施例1〜7、比較例1〜6の組成を一括して下記表5に示す。2.安定性評価 タンパク質分解酵素含有液状組成物の酵素活性が安定化する調製直後(1日目)に活性を測定し、その後一定期間経過後に同じく測定し、タンパク質分解酵素含有液状組成物の酵素活性の安定性を評価した。 実施例1、2、比較例1、2の測定結果を下記表6、及び図5に示す。 実施例3、4比較例3、4の測定結果を下記表7、及び図6に示す。 実施例5、6、比較例5、6の測定結果を下記表8、及び図7に示す。 以上のとおり実施例、比較例の酵素活性を測定した結果、本発明品は界面活性剤の存在する場合であっても水溶液状態のタンパク質分解酵素の活性を長期間安定に保つことがわかった。 なお実施例7の組成物についても、調製の翌日酵素活性を測定したところ24.1U/gであった。これを室温で150日間保存した後酵素活性を測定したところ19.7U/gであり、酵素活性が安定に維持されていることを確認した。 タンパク質分解酵素、水、粘土鉱物を含有することを特徴とする液状形態の酵素活性が安定な組成物。 タンパク質分解酵素がパパイン又はブロメラインである請求項1に記載の組成物。 粘土鉱物が、タンパク質分解酵素1重量部あたり1〜200重量部含有する請求項1又は2記載の組成物。 粘土鉱物が膨潤性層状ケイ酸塩を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。 粘土鉱物が、スメクタイト系の粘土鉱物、雲母粘土鉱物、カオリン鉱物、タルクのいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。 スメクタイト系の粘土鉱物がモンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイトから選択される1以上である請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。 水の含有量が5重量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。 さらに、多価アルコールと界面活性剤を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。 さらに酵素安定剤を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。 酵素安定剤が亜硫酸の塩である請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。 【課題】水を含有し安定な液状のタンパク質分解酵素含有を提供すること。【解決手段】タンパク質分解酵素、水、粘土鉱物を含有することを特徴とする液状形態の酵素活性が安定な組成物。【選択図】図5


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