タイトル: | 公開特許公報(A)_イソα酸を含有する発泡性飲料 |
出願番号: | 2011121407 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12C 5/02,C12G 3/02 |
河邊 正雄 JP 2012244971 公開特許公報(A) 20121213 2011121407 20110531 イソα酸を含有する発泡性飲料 アサヒビール株式会社 311007202 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 渡辺 浩司 100147588 河邊 正雄 C12C 5/02 20060101AFI20121116BHJP C12G 3/02 20060101ALI20121116BHJP JPC12C5/02C12G3/02 7 OL 9 4B015 4B015AG03 4B015AG17 本発明は、イソα酸を含有する発泡性飲料に関する。 本明細書を通じて、「発泡性飲料」とは、酒税法上の分類、使用原料やその使用量にとらわれず、炭酸ガスによる発泡性を有し、ビールと同様又は同類の香味を有するアルコール飲料及びノンアルコール飲料を意味する。従って、発泡性飲料とは、酒税法及びその関係法規に現在規定されているビール及び発泡酒はもちろん、第3のビール、ビールテイスト飲料と呼称されるノンアルコールビール風味飲料をも包含する意味で用いる。 従来より、ビールの製造プロセスにおいては、発酵及び熟成前の仕込みの段階で、麦汁にホップを投入して、麦汁とホップを共に煮沸している(例えば、特許文献1から3を参照)。このような麦汁及びホップの煮沸により、ホップ中に含まれる苦味成分であるα酸が高温下でイソ化して麦汁中に溶解するので、麦汁にビール独特の苦味を付与することができる。 また、一般的なビールにはイソα酸が含有されているものの、ビールには、イソα酸以外にも、ビールの原料に由来する苦渋味を感じさせる成分や、ビールの製造過程で生じる苦渋味を感じさせる成分も含有されている。これらの麦汁中に溶解するイソα酸や他の苦渋味成分は、ビールにすっきりとしたキレの良い苦味を与えるものであるが、ホップ等の配合量が増加すると、後を引く(後味として残る)苦渋味を生じさせるものとなる。 ビールにおけるこのような後を引く苦渋味は、ビールのすっきり感、後味のさっぱり感、キレのよさ等を損なう結果となり、ビールの嗜好性が低下する原因となる。しかしながら、ホップに由来する香気成分やイソα酸は、ビールには不可欠な成分であり、これらの成分なしではビールを製造することはできない。このため、ビールの製造に当たっては、後を引く苦渋味を抑えつつ、ホップに由来する苦味を付与する必要があり、従来は原料の種類や配合量、製造時の原料の添加方法、各製造工程の条件などを調整することにより、ホップ由来の香気とイソα酸のバランスを調整したり、各種原料を前処理することにより苦味物質の前駆物質を除去する方法や、仕込み工程で麦芽穀皮を分離する方法、一番麦汁のみを使用する方法、苦味物質を事後的に除去する方法などにより、苦味成分を減少させたりしていた。このため、ビールのこのような後を引く苦渋味は、ビールの味の多様性を狭める原因となっていた。特開平10−323174号公報特開2002−519018号公報特開2003−251175号公報 従って、本発明は、イソα酸の含有量が多い場合でも、後を引く苦渋味を有さない発泡性飲料を提供することを目的とする。 本発明の発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を行った。その結果、イソα酸を含有する発泡性飲料に、ネオテームを含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。 具体的には、本発明は、イソα酸及びネオテームを含有する発泡性飲料を提供する。 本発明の発泡性飲料は、イソα酸に加えてネオテームを含有する。ネオテームに由来する甘味は、イソα酸に由来する後を引く苦渋味をマスクするため、イソα酸とネオテームとを同時に含有する発泡性飲料は、イソα酸の含有量が多い場合でも、イソα酸に由来する後を引く苦渋味を有さず、すっきり感、さっぱり感を有し、のど越しのよい飲料となる。 以下、本発明について詳細に説明する。 <発泡性飲料> 本発明の発泡性飲料は、イソα酸及びネオテームを含有する。 [イソα酸を含む発泡性飲料の製造方法] まず、イソα酸を含む発泡性飲料について、その一般的な製造方法を示す。イソα酸を含む発泡性飲料の製造方法については、麦芽を原料として使用する発泡性アルコール飲料を製造する場合、麦芽を原料として使用しない発泡性アルコール飲料を製造する場合、及びアルコール飲料ではない発泡性飲料を製造する場合について、それぞれ分けて示す。 ビールや発泡酒等、麦芽を原料として使用する発泡性アルコール飲料は、次の工程で製造される。まず、主原料である麦芽の粉砕物と、副原料である米やコーンスターチ等の澱粉質に温水を加えて混合・加温し、主に麦芽の酵素を利用して澱粉質を糖化させる。この糖化液を濾過して得られた濾液にホップを加え煮沸する。ホップは煮沸開始から煮沸終了前であれば、どの段階で投入してもよい。煮沸後、ワールプールと呼ばれる槽でホップ粕等の沈殿物を除去し、プレートクーラーにより適切な発酵温度まで冷却する。冷却した濾液に酵母を接種して、発酵を行う。次いで、得られた発酵液を熟成させた後、濾過により酵母及びタンパク質等を除去して、目的の発泡性アルコール飲料を得る。 麦芽を使用せずに発泡性アルコール飲料を得る場合、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製する。当該液糖溶液を、麦芽を原料として使用する発泡性アルコール飲料の製造工程と同様に煮沸し、ホップ粕等の沈殿物を除去して冷却後、酵母を接種して発酵させ、濾過することにより、目的の発泡性アルコール飲料を得る。ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に当該液糖溶液に投入してもよい。 アルコール飲料ではない発泡性飲料については、基本的には、麦芽等を利用して調整される液糖溶液を、酵母により発酵させないか、酵母による発酵を極度に抑制した状態で保持し、得られた溶液に炭酸ガスを添加することにより製造する。 アルコール飲料ではない発泡性飲料は、一般には、麦芽等の粉砕物等に、必要に応じて米やコーンスターチ等の澱粉質に温水を加えて混合・加温し、主に麦芽の酵素を利用して澱粉質を糖化させる。この糖化液を濾過して得られた濾液に、例えば、糖類、穀物シロップ、穀物エキス、食物繊維、果汁、苦味料、色素、ホップ等の副原料を加え煮沸する。ホップは煮沸開始から煮沸終了前であれば、どの段階で投入してもよい。煮沸後、ホップ粕等の沈殿物を除去し、炭酸ガスを添加して、目的のアルコール飲料ではない発泡性飲料を得る。 本発明において用いられる麦芽の粉砕物、米やコーンスターチ等の澱粉質、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源等の原料は、特に限定されるものではなく、従来の発泡性アルコール飲料を製造する場合に、通常用いられるものを、通常用いられる量で用いることができる。 [イソα酸] 本発明の発泡性飲料は、一般には、上述したような製造方法で製造される発泡性飲料であるが、必須成分としてイソα酸を含有するものである。当該イソα酸は、好ましくは、発泡性飲料の製造過程において添加されるホップに由来する。なお、本発明の発泡性飲料においては、必ずしも、ホップそのものを上記の液糖溶液に添加することにより発泡性飲料にイソα酸を含有させる必要は無く、例えば、ホップ粉砕物、ホップペースト、及びホップ抽出物等、イソα酸を含有する任意のものを液糖溶液に添加することにより、発泡性飲料にイソα酸を含有させてもよい。 発泡性飲料に含まれるイソα酸の含有量は、10ppm以上60ppm以下であることが好ましく、10ppm以上40ppm以下であることが更に好ましい。イソα酸の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性飲料がすっきりとしたキレのよい苦味を有するものとなり、且つ発泡性飲料の後を引く苦渋味を最低限に抑えることができる。 [ネオテーム] 本発明の発泡性飲料は、ネオテームを含有する。発泡性飲料にネオテームを含有させることにより、イソα酸等のホップに含まれる苦味成分に由来する発泡性飲料の後を引く苦渋味がマスクされ、後味のさっぱり感に優れ、キレのよい発泡性飲料を得ることができる。 本発明の実施例において示すように、本発明の発泡性飲料は、高甘味度甘味料の中でも、特にネオテームを含有することにより、発泡性飲料の好ましくない後を引く苦渋味を改善することができる。これは、ネオテームの摂取後にネオテームの甘味が知覚されるのは、通常の高甘味度甘味料よりも遅いため、ネオテームの立ち上がりの遅い甘味が、イソα酸による後を引く苦渋味と同じタイミングで知覚されることにより、発泡性飲料の後味の苦渋味が知覚されにくくなるためであると考えられる。 ここで、「ネオテーム」とは、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルであり、アスパルテームの還元アルキル化により合成されるジペプチドメチルエステル誘導体である。ネオテームの甘味度は、使用する食品の種類や配合組成によっても異なるが、アスパルテームの30倍から60倍、砂糖の7000倍から13000倍である。ネオテームは苦味、渋味、えぐ味や金属味のないクリーンな味質を有しており、発泡性飲料に添加しても、発泡性飲料の本来の味を損なうことがない。 ネオテームは無水物であっても、水和物であってもいずれでもよい。例えば、特許第3643921号公報に記載されているように、1水和物(A型結晶)、又は水分含量3%未満のC型結晶のいずれであってもよい。なお、ネオテームのC型結晶とは、CuKα線を用いる粉末X線回折法で測定した場合における回折角度において、7.1°、19.8°、17.3°、及び17.7°の回折角度(2θ)に回折X線の特有ピークを有する結晶を意味する。 本発明の発泡性飲料にネオテームを添加する場合、当該ネオテームは、分散剤等を含む組成物の形態であってもよい。ネオテーム組成物が含有していてもよい分散剤としては、含水結晶ブドウ糖、無水ブドウ糖、還元パラチノース、エリスリトール、ラクチトール、トレハロース、デキストリン、及びD−マンニトールからなる群から選択される、少なくとも1種を挙げることができる。 本発明の発泡性飲料の製造方法において、上記ネオテームは、任意の段階で添加すればよい。即ち、ネオテームの添加時期は、液糖溶液を煮沸する前であっても、液糖溶液の煮沸中であっても、液糖溶液の煮沸後であってもよく、発酵の前であっても、発酵の後であってもよい。また、本発明の発泡性飲料が製品として出来上がった後にネオテームを加えても、本発明の効果は十分に得られる。 本発明の発泡性飲料におけるネオテームの含有量は、50ppb以上800ppb以下であることが好ましく、50ppb以上100ppb以下であることが更に好ましい。ネオテームの添加量が、上記の添加量の範囲内であることにより、発泡性飲料においてネオテーム自体の甘味が感じられることなく、後を引く苦渋味を効果的にマスクすることができる。 なお、ネオテームの含有量は、イソα酸の含有量が10ppm以上20ppm以下の場合は、50ppb以上200ppb以下、イソα酸の含有量が20ppmを超え30ppm未満の場合は、50ppb以上400ppb以下、イソα酸の含有量が30ppm以上40ppm以下の場合は、50ppb以上800ppb以下が好ましい。 本発明の発泡性飲料における、ネオテームの含有量Yは、イソα酸の含有量Xとの関係で、次の関係式(1)を満たすことが好ましい。 Y≦X2/2 ・・・(1)(但し、Xはイソα酸の含有量(ppm)、Yはネオテームの含有量(ppb)であり、X>0及びY>0である。) ネオテームの含有量が、イソα酸の含有量との関係で、上記の関係式を満たす場合、発泡性飲料においてネオテーム自体の甘味が感じられることなく、後を引く苦渋味を効果的にマスクすることができる。 [発泡性飲料] 本発明の発泡性飲料は、ビール若しくはビール様アルコール飲料、又はビールテイスト飲料であることが好ましい。これらの発泡性飲料は、ホップに由来するイソα酸が含まれているため、ネオテームを含有させることにより、すっきりとして、キレのよい苦味を有するものとすることができる。 <実施例1> 苦味価10の市販のビールA、苦味価20の市販のビールB、並びにビールBに、イソα酸を添加して、苦味価を40又は60に調整したビールC及びDに、砂糖等価甘味度0.1%SE及び0.4%SEのネオテーム(DSP五協フード&ケミカル株式会社製、「ミラスィー(登録商標)200」)、スクラロース、及びアセスルファムKをそれぞれ添加した。得られたビールについて、ビール専門パネリスト5名で苦味の強さ、後を引く苦渋味の強さ、甘味の強さ、及びボディ感の強さについて、以下の評価尺度に基づいて評価を行い、その平均値を求めた。また、得られた評価を基に、ビールとしての嗜好性について、以下の基準に基づき総合評価した。結果を表1から3に示す。 味の評価尺度(苦味の強さ、後を引く苦渋味の強さ、甘味の強さ、ボディ感の強さ) 5:強い 4:やや強い 3:甘味料無添加の対照と同等 2:やや弱い 1:弱い 嗜好性の評価尺度(総合評価) 5:嗜好性に問題なし 4:やや嗜好性を欠くが問題のないレベル 3:やや嗜好性を欠く 2:ビールとしての嗜好性を欠く 1:ビールとしての嗜好性を著しく欠く なお、イソα酸1ppmを含む溶液が苦味価1の溶液となる。表1:ネオテームによるに後を引く苦渋味の改善効果表2:スクラロースによる後を引く苦渋味の改善効果表3:アセスルファムKによる後を引く苦渋味の改善効果 スクラロースは苦味を低減する効果は高いが、イソα酸に由来する本来の苦味であるビールの苦味をマスキングするのみであって、結果として苦味そのものを感じなくなるが、後を引く苦渋味をマスキングする効果は得られない。また、添加量が多くなるとボディ感が強くなってしまい、ビール本来のすっきりした飲み口を欠き、嗜好性が低下してしまう。アセスルファムKはビールの苦味よりも早く甘味を感じてしまうので、ビールの苦味や後を引く苦渋味のマスキング効果は得られない。また、甘味の立ち上がりが早いために甘味を強く感じ、対比効果で苦味も強く感じられてしまう。また、ボディ感は無いものの、ビールとして違和感のある呈味になる傾向がある。 一方、ネオテームは、ビールの苦味の後に甘味が立ち上がるので、後を引く苦渋味のマスキング効果は高い。苦渋味を打ち消しあうので、同じ砂糖等価甘味度であっても甘味やボディ感は感じにくい。ネオテームがビール本来の苦味自体をマスキングしないことと相まって、ビールのすっきりした飲み口が保たれ、嗜好性が低下しない。 <実施例2> 苦味価10の市販のビールA、苦味価20の市販のビールB、並びにビールBに、イソα酸を添加して、苦味価を30又は40に調整したビールE及びFに、砂糖等価甘味度0.05SE%から1.6SE%のネオテーム(DSP五協フード&ケミカル株式会社製、「ミラスィー(登録商標)200」)を添加した。得られたビールについて、ビール専門パネリスト5名で以下の基準で甘味、後を引く苦渋味、及び嗜好度を評価し、その平均値を求めた。甘味評価4.0未満、苦渋味評価2.5未満、及び嗜好度評価4.0以上を合格とした。結果を表4から表6に示す。 甘味・苦渋味の評価尺度 5:強い 4:やや強い 3:甘味料無添加の対照と同等 2:やや弱い 1:弱い 嗜好度の評価 5:嗜好性に問題なし 4:やや嗜好性を欠くが問題のないレベル 3:やや嗜好性を欠く 2:ビールとしての嗜好性を欠く 1:ビールとしての嗜好性を著しく欠く表4:ネオテームを添加した苦味価10から40のビールにおける甘味の評価表5:ネオテームを添加した苦味価10から40のビールにおける苦渋味の評価表6:ネオテームを添加した苦味価10から40のビールにおける嗜好性の評価 表4から表6より、ネオテーム添加量は、苦味価10では100ppb以下、苦味価20では200ppb以下、苦味価30では400ppb以下、苦味価40では800ppb以下の場合に、甘味及び後を引く苦渋味が感じられず、良好な嗜好性が得られていることが分かった。 イソα酸及びネオテームを含有する発泡性飲料。 ネオテームの含有量が50ppb以上800ppb以下である請求項1の発泡性飲料。 イソα酸の含有量が10ppm以上60ppm以下である請求項1又は2の発泡性飲料。 式(1)の条件でイソα酸及びネオテームを含有する請求項1から3のいずれかの発泡性飲料。 Y≦X2/2 ・・・(1)(但し、Xはイソα酸の含有量(ppm)、Yはネオテームの含有量(ppb)であり、X>0及びY>0である。) イソα酸がホップに由来する請求項1から4のいずれかの発泡性飲料。 アルコール飲料である請求項1から5のいずれかの発泡性飲料。 ビールテイスト飲料である請求項1から5のいずれかの発泡性飲料。 【課題】イソα酸の含有量が多い場合でも、後を引く苦渋味を有さない発泡性飲料を提供すること。【解決手段】イソα酸及びネオテームを含有する発泡性飲料は、ネオテームに由来する甘味は、イソα酸に由来する後を引く苦渋味をマスクするため、イソα酸とネオテームとを同時に含有する発泡性飲料は、イソα酸の含有量が多い場合でも、イソα酸に由来する後を引く苦渋味を有さず、すっきり感、さっぱり感を有し、のど越しのよい飲料となる。【選択図】なし