生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞懸濁液の濃縮方法
出願番号:2011077911
年次:2012
IPC分類:C12N 1/02,C12N 5/078


特許情報キャッシュ

谷口 修平 JP 2012210187 公開特許公報(A) 20121101 2011077911 20110331 細胞懸濁液の濃縮方法 株式会社カネカ 000000941 谷口 修平 C12N 1/02 20060101AFI20121005BHJP C12N 5/078 20100101ALI20121005BHJP JPC12N1/02C12N5/00 202J 6 OL 13 4B065 4B065AA90X 4B065AC20 4B065BD14 4B065CA44 本発明は、細胞懸濁液から細胞を分離するための技術に関する。さらに詳しくは、中空糸型分離膜を用いた、細胞懸濁液処理器およびそれを用いた細胞懸濁液の濃縮方法に関する。 細胞医療の分野では、生体から採取した細胞を直接、又は生体外で培養した後、体内に移植する方法が用いられている。これら移植に用いる細胞は、移植に適した溶液に懸濁され、また適切な濃度に調整され移植される。しかしながら、生体から採取した又は体外での培養を経た細胞は、組織由来の夾雑物や培地などを含んでおり、また、細胞が溶液に希釈された状態で採取されることが多い。そこで、移植に用いるためには、夾雑物や培地を取り除き、移植に適した溶液に置換され(洗浄)、移植に適した細胞濃度に濃縮される必要がある。この目的のため、従来は、遠心分離を用いた洗浄、濃縮操作が広く行われてきた。 たとえば、ヒト組織から再生細胞を分離して濃縮するために遠心分離装置を用いる方法が開示されている(特許文献1)。 また、特許文献2には、細胞懸濁液をろ過する方法として、フィルター膜を遠心する方法が開示されている。 しかし、このように遠心分離装置を用いる方法は、装置が大型になることや、コストが増大することになり、利用できる施設が限定されてしまうことが懸念される。 これに対して、中空糸型分離膜を用いた細胞懸濁液のろ過に関しては、コンパクトで簡便な装置のものが血漿分離分野において種種提案されている(特許文献3)。しかしながら、上記分離膜は、体内を循環するヒト血液から血漿をろ過し、分離することを目的としており、血液細胞の濃度は大きく変化することはなく、細胞懸濁液の細胞濃度が高まる濃縮は意図していない。また、ヒト体内からの血漿成分の分離であり、早急な血漿のろ過は人体に悪影響を及ぼすため、高いろ過速度も意図していない。 一方、中空糸型分離膜を用いた細胞懸濁液のろ過に関して、特許文献4のような細胞懸濁液から高いろ過速度を維持したままろ過を可能とする方法が開示されている。しかしながら、該分離膜は、ろ過液の高い生産性を意図しており、分離後の細胞へのダメージや細胞のロスなくろ過することに関しては考慮されていない。特表2007−524396号公報特表平5−504289号公報特許第2928913号公報特開2008−229612号公報 本発明の目的は、細胞懸濁液(ただし、ヒト血液は除く)を濃縮するに際して、簡便、低コストな方法で、短時間に、細胞をロスすることなく、さらに細胞へのダメージが少ない濃縮方法を提供することである。 本発明者らは、上記課題について検討した結果、特定の中空糸分離膜を用いることで、目的とする細胞を効率よく濃縮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、細胞懸濁液(ただし、ヒト血液は除く)の濃縮方法であって、細胞懸濁液を受け入れるための細胞懸濁液入口と、該細胞成分を実質上含まない液体を排出するためのろ液出口と、細胞懸濁液を排出するための細胞懸濁液出口と、前記細胞懸濁液入口と細胞懸濁液出口の間に配置された分画分子量が1000kD以下の中空糸型分離膜を備え、内圧ろ過方式である細胞懸濁液処理器を用いて濃縮する方法である。 さらには、該中空糸型分離膜がポリエーテルスルホン又は酢酸セルロースからなる細胞懸濁液処理器を用いる細胞懸濁液の濃縮方法である。 さらには、該中空糸型分離膜に線速200〜1000cm/分で細胞懸濁液を供給することを特徴とする細胞懸濁液の濃縮方法である。 本発明によれば、細胞懸濁液から細胞を分離するに際して、簡便で、効率的に濃縮できさらに細胞へのダメージが少ない分離が出来る。更に加えれば、本発明の細胞懸濁液処理器は無菌的な閉鎖系で処理することも可能であり、濃縮された細胞は細胞治療用として提供することが可能である。本発明の細胞懸濁液処理器の側面断面図 以下に、本発明について説明する。 本発明の細胞懸濁液処理器は、図1に示すとおり例示されるが、これに限定されるものではない。筒状容器1はストレートな胴部2とその両側の頭部3、ヘッダー部9からなり、頭部3、ヘッダー部9にはろ過液出口4が備えられている。このろ過液出口は一方に備えられていても、両端に備えられていてもよい。この例ではヘッダー部9に細胞懸濁液入口8a、頭部3には細胞懸濁液出口8bが設けられている。該筒状容器1内部には、装填された中空糸型分離膜の束5と、ヘッダー部9の内部に設けられた中空糸型分離膜の束5を容器内部に固定するとともに中空糸型分離膜の開口端6を形成している樹脂層部7、更に頭部3の内部に設けられたこれと同等の構造を有している。この樹脂層部7および開口端6は、ヘッダー部9(或いは頭部3)に被冠された構造となっており、細胞懸濁液出入口8a、8bとろ過液出口4が中空糸型分離膜を構成する壁材により隔てられ、連続しない構造となっている。 なお、図1に示した例では、各部分を筒状容器の胴部2、頭部3、ヘッダー部9というように区別しているが、これは便宜的なものである。設計上、ヘッダー部9が筒状容器の頭部3に一体化したものや、筒状容器の胴部2と頭部3が別々のパーツから形成されている場合でも、細胞懸濁液入口と細胞懸濁液出口が中空糸型分離膜を構成する壁材で隔てられることなく連続しており、更に細胞懸濁液出入口とろ過液出口が中空糸型分離膜を構成する壁材により隔てられている構造を備えていれば、各種構造をとることが可能である。 本発明の細胞懸濁液処理器には、中空糸型分離膜を数十から数千本程度束ねたものを筒状の容器内に充填していることが好ましい。尚、本発明において、中空糸型分離膜の配置は、直線状になっていても、撓んでいても、らせん状になっていてもよく、細胞懸濁液入口と細胞懸濁液出口の間に中空糸型分離膜の両端が保持されていれば特に形状は限定されない。 細胞懸濁液処理器の筒状容器の素材として、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー等のアクリロニトリルポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー;ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリドアクリルコポリマー、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等を使用できる。特に耐滅菌性を有する素材、具体的にはポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン等のブロック共重合体を使用することが好ましい。 中空糸型分離膜を固定する樹脂層部の素材としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびシリコン樹脂など一般的な接着材料が好ましく用いることができる。 本発明の細胞懸濁液処理器に用いられる中空糸型分離膜の分画分子量は1000kD以下(表面の孔径でいえば、通常0.1μm以下)であることが好ましい。分画分子量(あるいは表面孔径)がこれより大きくなると、孔と細胞の接触が強まったり、孔に細胞が入り込んだりすることで、細胞が膜に接着し回収効率が低下する傾向がある。中空糸型分離膜の分画分子量として、より好ましく750kD以下であり、更に好ましくは500kD以下である。 本発明に用いられる中空糸型分離膜の樹脂材料は、どのような材料でも好適に用いることができ、例えば、再生セルロース、硝酸セルロースや酢酸セルロースなどのセルロースエステルなどのセルロース系樹脂、ポリアクリロニトリル、ナイロン66などのポリアミド系の樹脂、ポリエーテルスルホン、エチレンビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、PVDFやPFAなどのフッ素系樹脂などが例示される。 この中でも、好ましくはセルロース系樹脂、ポリエーテルスルホン又はポリスルホンが好適に用いることができる。更に好ましくは、酢酸セルロースやポリエーテルスルホンが好適に用いることができる。中空糸膜などの膜材料において、膜のもつ親水性、疎水性の物性は膜表面に付着する微粒子、蛋白質、細胞などの成分の付着しやすさやはがれやすさに影響を与え、親水性が高い材料のほうがこれら成分の付着を低減できるといわれている。親水性の高い材料からなる中空糸型分離膜を用いることで、微粒子、蛋白質、細胞などの膜表面に付着や膜への目詰まりを低減でき、高い回収率や高いろ過速度が期待できる。 また、本発明に用いられる中空糸型分離膜の膜表面に親水性の材料をコーティングしてもよい。コーティングすることで膜表面の親水性を改善でき、蛋白質や細胞の膜への付着を低減し、回収効率を高くすることも期待できる。 本発明に用いられる中空糸型分離膜の内径は100μm〜2000μmであることが好ましく、100μm〜1500μmがより好ましくは、200μm〜1500μmが更に好ましい。膜の内径が100μmより小さくなると、細胞回収後にも膜内に濃縮された細胞懸濁液が残ってしまう恐れがあり、効率的な細胞の回収ができなくなる。また、中空糸型分離膜の内径は2000μm以下であることが好ましい。2000μmより大きくなると、ろ過に必要な膜面積を実現するためには非常にたくさんの中空糸型分離膜を用意する必要があり、コスト等の増大が懸念される。 本発明のに用いられる中空糸型分離膜の膜面積は0.01〜1.0m2の範囲が好ましく、0.02〜1.0m2の範囲が更に好ましい。膜面積が0.01m2を下回ると、十分な単位時間あたりのろ過量を得ることができず、1.0m2より大きすぎると細胞懸濁液が中空糸型分離膜内に残存し、回収される細胞数が少なくなることが懸念される。ここで、膜面積とは、中空糸型分離膜のうち、物質のろ過に寄与する有効部分長さ、内径および総本数から求まる内膜面積のことをいう。 本発明に用いられる中空糸型分離膜の長さは、3〜40cmであることが好ましく、5〜30cmであることが更に好ましい。中空糸型分離膜の長さが3cmより短いとろ過効率が低下することが懸念され、中空糸型分離膜の長さが40cmより短長いと、ハンドリングへの影響が懸念される。 本発明の細胞懸濁液処理器の開口端6の面積は、1〜30cm2が好ましく、1〜20cm2がより好ましい。開口端6の面積が1cm2より小さくなると充填できる中空糸数が少ないため、効率的なろ過ができなくなる。開口端6の面積が20cm2より大きくなると、細胞懸濁液が均等に中空糸に流入できなくなり効率的なろ過ができなくなる懸念があり好ましくない。 本発明によれば、簡便でかつ効率的に細胞を濃縮でき、分離細胞へのダメージが少なく、更には無菌的な閉鎖系で処理することが容易な点から、ヒトに移植される細胞の濃縮に好適に使用することができる。 本発明で濃縮し得る細胞としては、例えば人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系細胞、脂肪由来間質幹細胞、多能性成体幹細胞、骨髄ストローマ細胞、造血幹細胞等の多分化能を有する生体幹細胞、T細胞、B細胞、キラーT細胞(細胞障害性T細胞)、NK細胞、NKT細胞、制御性T細胞などのリンパ球系の細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、顆粒球、赤血球、血小板など、神経細胞、筋細胞、線維芽細胞、肝細胞、心筋細胞などの体細胞または、遺伝子の導入や分化などの処理を行った細胞が例示される。 中でも顆粒球、T細胞、B細胞、キラーT細胞(細胞障害性T細胞)、NK細胞、NKT細胞、制御性T細胞、マクロファージ、樹状細胞等の免疫細胞に対して好適に用いることができる。 また、本発明で用いる細胞懸濁液としては、細胞を含む懸濁液であれば特に限定されないが、例えば、脂肪、皮膚、血管、角膜、口腔、腎臓、肝臓、膵臓、心臓、神経、筋肉、前立腺、腸、羊膜、胎盤、臍帯などの生体組織を酵素処理や破砕処理や抽出処理や分解処理や超音波処理などをした後の懸濁液、血液や骨髄液を密度勾配遠心処理やろ過処理や酵素処理や分解処理や超音波処理などの前処理をして調製された細胞懸濁液等が例示される。または、上記に例示した細胞を生体外で培養液、例えば、DMEM,α−MEM、MEM、IMEM、RPMI−1640や、サイトカイン、抗体やペプチドなどの刺激因子などを用いて培養した後の細胞懸濁液が例示される。 また、本発明により分離される細胞は、白血病治療、心筋再生や血管再生、幹細胞疲弊疾患、骨疾患、軟骨疾患、虚血性疾患、血管系疾患、神経病、やけど、慢性炎症、心疾患、免疫不全、クーロン病等の疾患、豊胸、しわとり、美容成形、組織陥没症等の組織増大などの再生医療、T細胞療法、NKT細胞療法、樹状細胞移入療法などの免疫療法、遺伝子導入した細胞を用いる遺伝子療法などに用いることも可能であるが、これらに限定されるものではない。また、分離された細胞をスキャフォールドなどの構造材料に播種して治療に用いることも可能である。 本発明の細胞懸濁液処理器の滅菌は、特に限定されず、γ線滅菌や電子線滅菌やEOG滅菌、高圧蒸気滅菌などの医療用具の滅菌に汎用されている滅菌方法を好適に用いることができる。 本発明の細胞懸濁液処理器は、細胞懸濁液を線速150〜2000cm/分で流して用いることが好ましい。より好ましくは線速200〜1000cm/分で用いることが好ましい。線速200cm/分以下では、ろ過速度の低下や、細胞回収率の低下が懸念される。線速1000cm/分以上では、細胞懸濁液処理器にかかる圧力が大きくなりすぎて、処理器が破壊されたりすることが懸念される。ここで、線速とは細胞懸濁液処理器内の中空糸内空断面を単位時間あたりに通過する細胞懸濁液量で、細胞懸濁液の細胞懸濁液処理器への流入速度(流速)を細胞懸濁液処理器内の中空糸内空の全断面積で除して算出することができる。ここで、本発明におけるろ過速度とは、単位時間、中空糸型分離膜内側の単位面積あたりに中空糸型分離膜よりろ過される溶液量のことである。 以下、本発明の細胞懸濁液処理器を用いて細胞を分離する方法を例示するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨に反しない範囲で各種変更をすることができる。 本発明の細胞懸濁液処理器を用いた細胞懸濁液から細胞の分離(濃縮)では、細胞懸濁液処理器内に備えられた中空糸型分離膜に流入した細胞懸濁液が内圧ろ過により、細胞を実質上含まないろ液が中空糸型分離膜の外側にろ別され、細胞成分が濃縮された細胞懸濁液が細胞懸濁液出口より流出する。なお、ここで細胞を実質上含まないろ液とは、その細胞の数が、流入前の細胞懸濁液中の細胞の数の0.1%を上回らない範囲であることを意味する。 先ず、細胞懸濁液処理器の細胞懸濁液入口および出口にチューブ等を取り付け(処理器内の中空糸に細胞懸濁液が流入および流出する回路の一部となる)、更に取り付けたチューブを細胞懸濁液が入った細胞バッグなどの容器に連結し、バッグなどの容器と細胞懸濁液処理器との間で細胞懸濁液が循環できるようにする。なお、液を循環させるために、ポンプなどの機械をこの回路に介在させることが考えられる。また、ろ過液出口には廃液タンクなどに連絡されたチューブを連結しておくことが好ましい。このとき、回路の全体の取り付けは、無菌的な環境下で行われることが好ましい。また、この際に、細胞懸濁液出口側の流路を狭くするなどして、分離膜に圧力をかけることもできるし、ろ過側のチューブにポンプ等を用いて圧力をかけながらろ過を行ってもよく、一般的に中空糸型分離膜で用いられる各種ろ過方法を併用することができる。 一方、濃縮が進んだ後、バッファーなどの洗浄液を追加し、濃縮を繰り返すことで、細胞の洗浄や培地の交換を行うことができる。この際、洗浄液の投入は、循環回路のチューブに設けた流入口から行う。この際、無菌的に液を注入できる流入口を用いることが好ましい。 濃縮・洗浄された細胞懸濁液は、回収バッグなどに収集して、その後の治療などに用いることができる。この際、回収バッグは、循環回路のチューブに別途三方活栓などの流出口を設けて無菌的に行うことが好ましい。 以下、実験結果を用いて本発明を説明する。なお、ここで細胞回収率とは、一定量まで濃縮した時点での細胞懸濁液中の細胞数を初期細胞数で除した値で、値が高いほど回収効率に優れていることを示す。また生存比率とは、トリパンブルー染色により染色された細胞を死細胞とし、染色されていない生細胞数を全細胞数で除して生存率を算出し、処理後の生存率を処理前の生存率で除した値を生存比率とした。細胞数は、細胞懸濁液を血球カウンター(シスメックス、K−4500)により測定し、白血球分画の細胞濃度を本実施例での細胞濃度として算出し、細胞懸濁液量と細胞濃度より算出した。 各実験例における細胞濃縮の方法は、各実施例に記載した細胞懸濁液処理器の入り口と出口に塩ビチューブをつなげた。プラスチック容器に細胞懸濁液を貯留させて、懸濁液がモジュールおよびチューブを循環できるように細胞懸濁液処理器の両端から延びる塩ビチューブの両端を懸濁液中に垂らした。塩ビチューブにはポンプを設置し、懸濁液の流れが適当な流速に設定できるようにした。細胞懸濁液処理器のろ液出口にもチューブを取り付け、こちらは廃液入れに注ぐように設置した。また、細胞懸濁液処理器入口、出口、ろ液出口に三方活栓および圧力計をつなげ、細胞懸濁液処理器入口、出口およびろ液出口圧力を測定した。ポンプにより流速を調整し、回路に細胞懸濁液を循環させながらろ過を行った。実施例1〜8および比較例1〜3は初期の膜間圧力差(TMP)が60mmHg程度となるように線速度を調整し、実施した。ここで、TMPは細胞懸濁液処理器入口圧および出口圧の平均値とろ液出口圧の差を意味する。初期TMPとは濃縮開始時のTMP値を意味する。一定量まで濃縮した後、チューブや中空糸型分離膜内の細胞懸濁液をエアーで押し出した後、ポンプを停止し、プラスチック容器中の細胞懸濁液の細胞数を測定し、回収率を算出した。以下の実施例では、市販されている中空糸型分離膜モジュールを本発明の細胞懸濁液処理器として実験を実施した。 〔実施例1〕 酢酸セルロースの中空糸型分離膜〔FB−02−VC−FUC1582EXP(株式会社ダイセン・メンブレン・システムズ社製)、膜面積1300cm2、中空糸内径0.8mm、分画分子量150kD〕を用いて細胞濃縮検討を行った。ヒトT細胞性白血病由来株細胞(jurkat細胞)がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.0×106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度230ml/m2/分で、細胞懸濁液を198mlまで濃縮でき、細胞回収率は98%であった。 〔実施例2〕 透析用の酢酸セルロース中空糸型分離膜〔トリアセテートホローファイバーダイアライザー FB−50Pβeco(ニプロ株式会社製)、膜面積5000cm2、中空糸内径0.2mm(分画分子量500kD以下)〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.7×106cells/ml)3000mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度76ml/m2/分で、細胞懸濁液を145mlまで濃縮でき、細胞回収率は95%であった。 〔実施例3〕ポリエーテルスルホンの中空糸型分離膜〔FB−02−VC−FUS5082EXP(株式会社ダイセン・メンブレン・システムズ社製)、膜面積1300cm2、中空糸内径0.8mm、分画分子量500kD〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.1×106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度923ml/m2/分で、細胞懸濁液を167mlまで濃縮でき、細胞回収率は93%であった。 〔実施例4〕 ポリエーテルスルホンの中空糸型分離膜〔型式:P−N1−500E−100−01N(Spectrum Laboratories社製)、膜面積2600cm2、中空糸内径0.5mm、分画分子量500kD〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.0×106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度740ml/m2/分で、細胞懸濁液を145mlまで濃縮でき、細胞回収率は87%であった。 〔実施例5〕 透析用のポリエーテルスルホン中空糸型分離膜〔型式:JMS BIOPESシリーズNeoBP−N80(株式会社JMS製)、膜面積8000cm2、中空糸内径0.2mm(分画分子量500kD以下)〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.0×106cells/ml)3000mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度66ml/m2/分で、細胞懸濁液を148mlまで濃縮でき、細胞回収率は95%であった。 〔実施例6〕 ポリスルホンの中空糸型分離膜〔型式:M2−500S−300−01P(Spectrum Laboratories社製)、膜面積3100cm2、中空糸内径0.5mm、分画分子量500kD〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度3.1×106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度258ml/m2/分で、細胞懸濁液を158mlまで濃縮でき、細胞回収率は69%であった。 〔実施例7〕 ポリスルホンの中空糸型分離膜〔型式:M2AB−300−01N(Spectrum Laboratories社製)、膜面積3100cm2、中空糸内径0.5mm、分画分子量100kD〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.0×106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度116ml/m2/分で、細胞懸濁液を205mlまで濃縮でき、細胞回収率は92%であった。 〔実施例8〕透析用のポリスルホン透析用中空糸型分離膜〔フレゼニウスダイアライザー FXシリーズ FX60(フレゼニウスメディカルジャパン株式会社製)、膜面積6000cm2、中空糸内径0.185mm(分画分子量500kD以下)〕を用いて細胞濃縮検討を行った。jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.0×106cells/ml)3000mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度75ml/m2/分で、細胞懸濁液を150mlまで濃縮でき、細胞回収率は99%であった。 〔比較例1〕 混合セルロースの中空糸型分離膜〔型式:M21M−300−01N(Spectrum Laboratories社製)、膜面積2500cm2、中空糸内径0.6mm、孔径0.1μm〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度1.8x106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度192ml/m2/分で、細胞懸濁液を230mlまで濃縮でき、細胞回収率は47%であった。 〔比較例2〕ポリエーテルスルホンの中空糸型分離膜〔型式:M2−N02E−300−F1N(Spectrum Laboratories社製)、膜面積3100cm2、中空糸内径0.5mm、孔径0.2μm〕を用いて細胞濃縮検討を行った。Jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度2.1x106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度838ml/m2/分で、細胞懸濁液を129mlまで濃縮でき、細胞回収率は53%であった。 〔比較例3〕 ポリスルホンの中空糸型分離膜〔サルフラックスFS−05(株式会社カネカ製)、膜面積5000cm2、中空糸内径0.34mm、孔径0.3μm〕を用いて細胞濃縮検討を行った。jurkat細胞がRPMI1640培地に懸濁された細胞懸濁液(jurkat細胞濃度1.3x106cells/ml)1500mlから培地をろ過する検討をおこなった。結果、ろ過速度480ml/m2/分で、細胞懸濁液を140mlまで濃縮でき、細胞回収率は37%であった。 〔実施例9〕〔実施例10〕〔実施例11〕 ポリエーテルスルホンの中空糸型分離膜〔FB−02−VC−FUS5082EXP(株式会社ダイセン・メンブレン・システムズ社製)、膜面積2500cm2、中空糸内径0.8mm、分画分子量500kD〕を用いて細胞濃縮検討を行った。表2に示すように線速度を変化させて細胞回収率、ろ過速度への影響を検討した。線速度120cm/分ではろ過速度240ml/m2/分、細胞回収率53%、線速度380cm/分ではろ過速度800ml/m2/分、細胞回収率73%、線速度650cm/分ではろ過速度2000ml/m2/分、細胞回収率83%であった。 〔実施例3〕〔実施例12〕〔実施例13〕〔実施例14〕 ポリエーテルスルホンの中空糸型分離膜〔FB−02−VC−FUS5082EXP(株式会社ダイセン・メンブレン・システムズ社製)、膜面積1300cm2、中空糸内径0.8mm、分画分子量500kD〕を用いて細胞濃縮検討を行った。表2に示すように線速度を変化させて細胞回収率、ろ過速度への影響を検討した。線速度230cm/分ではろ過速度269ml/m2/分、細胞回収率84%、線速度400cm/分ではろ過速度923ml/m2/分、細胞回収率93%、線速度580cm/分ではろ過速度1038ml/m2/分、細胞回収率86%、線速度1150cm/分ではろ過速度900ml/m2/分、細胞回収率96%であった。 以上の結果から、分画分離量、中空糸材料の回収率への影響を表1に、線速度の回収率への影響を表2に示した。 1 筒状容器 2 胴部 3 頭部 4a ろ過液出口 5 中空糸型分離膜の束 6 開口端(点線部) 7 樹脂層部(斜線部) 8a 細胞懸濁液入口 8b 細胞懸濁液出口 9 ヘッダー部 細胞懸濁液(ただし、ヒト血液は除く)の濃縮方法であって、細胞懸濁液を受け入れるための細胞懸濁液入口と、該細胞成分を実質上含まない液体を排出するためのろ液出口と、細胞懸濁液を排出するための細胞懸濁液出口と、前記細胞懸濁液入口と細胞懸濁液出口の間に配置された分画分子量が1000kD以下の中空糸型分離膜を備え、内圧ろ過方式である細胞懸濁液処理器を用いることを特徴とする細胞懸濁液の濃縮方法。 該細胞懸濁液が免疫細胞の細胞懸濁液であることを特徴とする請求項1に記載の細胞懸濁液の濃縮方法。 該細胞懸濁液が免疫細胞を培養して調製した細胞懸濁液であることを特徴とする請求項1または2に記載の細胞懸濁液の濃縮方法。 該細胞懸濁液処理器が滅菌されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞懸濁液の濃縮方法。 該中空糸型分離膜がポリエーテルスルホン又は酢酸セルロースからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の細胞懸濁液の濃縮方法。 該中空糸型分離膜に線速200〜1000cm/分で細胞懸濁液を供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細胞懸濁液の濃縮方法。 【課題】 本発明の目的は、細胞懸濁液から細胞を分離、濃縮するに際して、簡便で、効率的に濃縮できさらに細胞へのダメージが少ない方法を提供することである。【解決手段】 細胞懸濁液を、分画分子量が1000kD以下の中空糸型分離膜を用いた内圧ろ過により、細胞を含まないろ液をろ別し、濃縮された細胞懸濁液を分離・回収することを特徴とする、細胞懸濁液の濃縮方法。【選択図】なし


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