タイトル: | 再公表特許(A1)_半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法及び精製装置 |
出願番号: | 2011071928 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | H01L 21/304,C07C 211/63,C07C 209/84 |
村岡 久志 長 俊連 JP WO2012043496 20120405 JP2011071928 20110926 半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法及び精製装置 多摩化学工業株式会社 390034245 有限会社ユーエムエス 591285686 成瀬 勝夫 100082739 中村 智廣 100087343 佐々木 一也 100132230 村岡 久志 長 俊連 JP 2010230962 20100927 H01L 21/304 20060101AFI20140110BHJP C07C 211/63 20060101ALI20140110BHJP C07C 209/84 20060101ALI20140110BHJP JPH01L21/304 648FH01L21/304 647ZC07C211/63C07C209/84 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN 再公表特許(A1) 20140206 2012536447 34 4H006 5F157 4H006AA02 4H006AA04 4H006AD17 5F157AA46 5F157AA49 5F157BB02 5F157BE23 5F157BE32 5F157BE33 5F157CB01 5F157CB11 5F157CE35 5F157CF74 5F157DC85 本発明は、半導体基板の製造時や半導体基板を用いた半導体デバイス等の製造時等において、種々の目的で半導体基板を処理するために用いられるアルカリ性処理液の精製方法及び精製装置に係り、より具体的には、これら半導体基板を処理する際に用いられる各種のアルカリ性処理液中に極僅かに含まれ、半導体基板の表面を汚染し、また、半導体基板から製造されるデバイス等に有害な金属不純物、特に鉄(Fe)を、必要によりppq(pptの千分の1)領域まで低減させることができる半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法、及びこの精製方法を実施するための精製装置に関する。 例えば、半導体デバイスの製造時にシリコンウェーハ(Siウェーハ)等の半導体基板を処理するために用いられる代表的なアルカリ性処理液としては、従来より、Siウェーハを汚染したパーティクルに対する最も強力な洗浄剤である過酸化水素含有アンモニア水溶液(RCA社のSC1等)や、ポジレジスト膜現像用に用いられる有機強塩基水溶液が用いられており、また、上記有機強塩基水溶液の有機強塩基としては、水酸化テトラアルキルアンモニウムが代表的であって、一般的には水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)が用いられていた。しかし、当初の市販品は、金属不純物としてNa,Fe,Zn,Ca,Mg,Ni,Cr,Al,Cu等の金属不純物を数ppm程度の濃度で含み、また、Kについては遥かに多い濃度で含まれていて、デバイスの電気的特性の劣化やパターン欠陥等の問題を引き起こす原因になっていた。 当初のTMAH水溶液は、塩化テトラメチルアンモニウムのアルコール溶液を水酸化物と反応させ、生じた沈殿を濾過して除き、続いてアルコール溶剤を除去する方法で製造されていた(例えば、特許文献1参照)ので、その製造原料、製造装置、保存容器等からFe、Al、Ni、Na等の金属不純物が溶出し、金属汚染を受け易かった。そこで、このTMAH水溶液に含まれるこれらの金属不純物を除去するために、例えばポリアクリルゲル系弱酸性イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂の利用が提案され(特許文献2参照)、5wt%-TMAH水溶液の場合でFeを10ppbまで精製することが可能になった。しかしながら、このようにして精製されたTMAH水溶液においても、高腐食性の塩化物が残存し、貯蔵容器からの汚染を完全に防止することは困難であり、特にFeは、当時この種の有機アルカリ性処理液を用いて処理された処理面で検出される最も汚染の多い重金属であった。 そこで、陽イオン交換膜を隔膜とした電解槽を用い、炭酸テトラメチルアンモニウムのような第四アンモニウムの無機酸塩を電解してTMAH水溶液を製造することにより、金属やハロゲン元素の不純物が混入するのを可及的に防止した超高純度化法が提案され(特許文献3参照)、10wt%-TMAH水溶液の場合でFe5ppbまでの低減化が達成された。その後、関係諸材料の高純度化や製造環境の清浄化により、公開されている原液の25w%-TMAH水溶液の場合で、金属不純物の分析例は総ての金属元素において1ppb以下まで達成され、特に分析用に高純度化された25w%-TMAH水溶液のFeの分析例は測定限界の0.1ppb以下であるとされている(非特許文献1参照)。しかしながら、製造現場に供給される約2.4wt%-TMAH現像液では不純物のFeが100ppt前後の濃度で存在する。 また、他に半導体デバイス製造用の現像液として実用化されている有機強塩基水溶液として、水酸化トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)の水溶液(コリン水溶液)がある。原料のトリメチルアミン水溶液とエチレンオキシド水溶液とを特定の手段で混合反応させ、特定濃度の微量副反応生成物を共存させる製造法(特許文献4参照)により製造され、現像速度の制御された現像液が得られる。原料から製造まで汚染管理が容易なので高純度化し易く、公開されている5w%-コリン水溶液の金属不純物の分析例では、Feは標準的分析手段の検出限界の0.3ppb以下であるとされている(非特許文献1参照)。この5w%-コリン水溶液において、通常は不純物のFeが100ppt前後の濃度で存在する。 上記の洗浄剤SC1を用いた標準的なSiウェーハの洗浄処理においては、洗浄液中に1ppbの濃度で含まれた金属であって、洗浄処理後にSiウェーハ表面を1×1011atoms/cm2以上の濃度で汚染する元素はせいぜいAl、Fe、及びZnくらいであり、これらの元素の中でデバイスの接合電流増加、ライフタイム劣化、酸化膜耐圧不良等の問題を起こす重金属はFeである。そして、この洗浄剤SC1を調製する際に用いられる半導体用薬品のアンモニア水(29wt%)も過酸化水素水(30wt%)も共に、蒸留等の手段で比較的容易に超高純度化することができるが、上記有機強塩基の場合と同様に、製造装置や運搬容器の材質に難点があって、市販の両薬品におけるFe濃度の規格は共にここ数年以上に亘り標準的分析手段による検出限界の0.1ppb以下とされているが、これらの半導体用薬品においても恐らく0.03〜0.1ppb程度のFeが存在する。 従って、このような半導体用薬品を用いて調製した洗浄剤SC1の組成を例えば半導体用29wt%-アンモニア水1容量:30wt%-過酸化水素水1容量:超純水10容量とした場合、洗浄剤SC1のFe濃度は10ppt弱程度である。本発明者は、これまでに、入手し得る最高純度(有機不純物も含めて)の半導体用薬品で調製したSC1液を使用し、このSC1液にFeを添加して各種Fe濃度のSC1液を調製し、これらのSC1液にSiウェーハを浸漬し、SC1液のFe濃度と浸漬したSiウェーハの表面に吸着されたFeの吸着濃度との平衡状態での関係を求め、図5において太実線で示すように、“SC1液中のRI標識Fe濃度(Cv:atoms/cm3)とSiウェーハ表面のRI標識Feの吸着濃度(Cs:atoms/cm2)との関係”を示すCv−Cs両対数関係図を得た(非特許文献2)。この非特許文献2においては、図5中のCv濃度0.1〜10ppbの領域でフロイントリヒ吸着直線が得られていることから、この0.1〜1ppbまでの領域を引用したが、後述するその後の実験の結果から、0.1ppbより更に低いCv濃度の領域においても全てフロイントリヒ則が成り立ち、かつ、各直線の傾きがほぼ45°であることが判明した。そこで、図5中において、先のSC1液のフロイントリヒ吸着直線(太実線)を太点線で示すように更に下方へ延長することから理解されるように、SiウェーハのSC1洗浄においてSC1液からSiウェーハの洗浄面へのFe汚染を1×109atoms/cm2以下に抑えるためには、SC1液のFe濃度を1ppt以下にする必要があることが判明した。 また、前記のSC1と同様な処理条件で類似の洗浄効果が得られる洗浄液として、コリン過酸化水素水溶液(以下、「コリン洗浄液」という。)がある。このコリン洗浄液は、その標準的組成がコリン0.1wt%、過酸化水素4wt%、及び水95.9wt%であり(以下、この組成を有するコリン洗浄液を特に「COPO」と略称する。)、半導体デバイス製造環境雰囲気に有害なアンモニア汚染を起こさず、また、洗浄面が環境雰囲気から汚染を受け難いという好ましい特長がある。 そして、本発明者は、このCOPO中に存在するFeのシリコン面への吸着に関して、図5のSC1の場合と同様に、Fe濃度0.1〜1ppbの領域において、SC1と略平行であって若干下方に位置するフロイントリヒ吸着直線を得ていた(液に添加した極微量のキレート剤が関与しているものと考えられる。)が、最近、COPO中のFe濃度を100ppq近くまで精製することが可能になり、そこで、COPOのFe濃度を100ppq以下にまで精製し、得られたCOPOに1ppb以下の放射性Feを添加し、ラジオルミノグラフィ(RLG)法によるRIトレーサ実験(以下、「RIトレーサ法」という。)で検証し、このフロイントリヒ吸着直線をこのppq領域まで延長し得ることを見出した(非特許文献3参照)。 この非特許文献3の実験において、COPOをFe濃度ppq領域にまで精製するために採用された方法は、本発明者が既に実用に供した方法であって、被洗浄物のウェーハと同物質のシリコン粒を充填したシリコン粒充填層で濾過する精製法(特許文献5)を利用したものであり、その効果は予めRIトレーサ法で確認された。しかし、このシリコン粒充填層で濾過する精製法は、半導体工場ではフッ酸中のCuやAuを除去するために十年ほど使われたが、溶出したフルオロケイ酸の影響が問題になって中止された。また、SC1に適用し、1ppt程度までシリコンで吸着精製して洗浄に使う例(特許文献6)はあったが、その吸着体は形状が板状、粒状、ブロック状の何れでもよく、予めフッ酸処理で該シリコン表面の不純物濃度を109/cm2以下にしておくことが必要なようにみえる。 ところで、SC1液は、シリコン面に対し標準的な処理温度70℃で0.5nm/分程度、或いはそれ以上のエッチング作用があり、シリコン粒充填層においては、通常、粒総表面積と粒間隙を満たす被精製液体積の比S/Vが100程度となる粒サイズのシリコン微粒が使われているので、粒全体のFe濃度が均一と仮定して0.1ppmとすると、1分の接液でFeの溶出は0.1ppbとなる。従ってこれ以下までは吸着精製ができない。0.1ppm以下のFe濃度のシリコン粒は、CVD流動床法で作ることが可能であるが、経済性の点で難がある。更に、半導体用シリコン塊を粉砕してシリコン微粒を作ろうとしても、粉砕機からFe汚染が生じ、このFe汚染を洗浄等で除くのが難しく、この方法ではFe濃度0.1ppmすら得られない。シリコン粒は、このようにその純度に問題があるほか、このSC1の精製処理に用いた場合には、SC1中にシリコンが溶け出してメタケイ酸イオン(SiO32-)の生成が毎分0.5mM/Lにも達する。このメタケイ酸イオンは、SC1液に分散する正に帯電した金属水酸化物コロイド等に対して、好ましくない影響(例えば、微小パーティクル化)を与える可能性がある。特開昭52-3,008号公報特開昭57-139,042号公報特公平7-88,593号公報特公昭63-2,427号公報特公昭46-031,935号公報特許第2,893,493号公報「多摩化学工業 製品カタログ2004」、多摩化学工業株式会社 2004年5月「J. Electrochem. Soc., Vol.141, No.10」, Electrochem. Soc., 1994年, p.L139「第47回アイソトープ・放射線研究発表会要旨集」、社団法人 日本アイソトープ協会、2010年、p.76 アルカリ性処理液中の金属不純物で最も有害とされるのは鉄(Fe)である。鉄(Fe)は、Fe(OH)3の溶解度積が1×10-38と極めて小さいにも係わらず、低濃度領域では易溶性の錯イオンを形成していない限り、通常は大部分がFe酸化物の水和物が縮合した水酸化鉄コロイドとなって分散している。しかし、Fe濃度が減じて略10ppt以下となると、後述のように正コロイドとしての作用が強くなって、シリコン面より負のゼータ電位がやや高い酸化膜へ吸着し易くなる(即ち、Fe汚染が多くなる)ので、デバイスへの影響が現れる。この問題に対する第一の対策は、アルカリ性処理液中のFe量を先ず十分に低減することであり、電気的特性からの洗浄への要求にも応えられる。また、SC1を用いたSiウェーハの洗浄処理においては、その装置や環境が1×108/cm2まで洗浄できる状況にあっても、図5に示すCv−Cs両対数関係図の太直線の下方への延長太点線から推測して、その洗浄処理前にSC1液のFe濃度を50ppq以下にまで精製しておくことが必要である。 従って、本発明の目的は、種々の目的で半導体基板を処理するために市販の高純度薬品で作られる高純度のアルカリ性処理液を更に精製し、このアルカリ性洗浄液中のFe濃度をppq領域にまで低減することができる半導体基板用アルカリ性処理液の精製手段を提供することにある。 また、アルカリ性処理液の使用直前にシリコン粒充填床で吸着精製すればこの精製は可能であるが、上記した通り、シリコン面はエッチングを受け易く、シリコン粒はシリコン単結晶等よりその純度が遥かに低いので、Fe等の金属不純物がアルカリ性処理液を汚染して高純度化を妨げ、またアルカリ性処理液は高純度液といえないほどのメタケイ酸イオンの溶出汚染を受ける。このエッチングのためにシリコン微粒子の消耗は意外に早く、またその段階において有害な微小パーティクル化の危険を伴う。 従って、本発明の他の目的は、エッチングを受け難い(即ち、化学的耐性が強く)、また、機械的強度が強く、かつ、半導体基板用のアルカリ性処理液中の水酸化鉄コロイド等を強力に吸着してこのアルカリ性処理液を超高純度に精製し得る半導体基板用のアルカリ性処理液の精製手段を提供することにある。 更に、大量の半導体基板の洗浄処理等を迅速かつ正確に行なうため、例えば、半導体デバイス製造工場では、一般に一定のシーケンスの半導体基板の多槽浸漬式自動洗浄処理が行われている。特に、パーティクル除去に関して最も強力なSC1洗浄処理においては、更にその効果を高めるため、SC1液の循環フィルタリング再生機構が広く使われている。しかし液循環は被洗浄体から洗浄される離脱不純物が液に蓄積して行き特にFeの純度が悪くなる。パーティクル対策上好ましくても、SC1がシ−ケンス最終段で使われることは殆どない。 従って、本発明の他の目的は、例えば半導体デバイス製造工程の多槽浸漬式洗浄の最終段で、洗浄ウェーハ表面のFe残存量を108atoms/cm2オーダーに保ち得る液循環タイプアルカリ過酸化水素洗浄を可能にするため、液循環系に挿入する特にFe除去に有効でかつ再生可能な精製法と装置を提供することにある。 即ち、本発明は、半導体基板を処理するために用いられるアルカリ性処理液の精製方法であり、前記アルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させ、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去することを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法である。 また、本発明は、半導体基板を処理するために用いられるアルカリ性処理液を精製し、このアルカリ性処理液中の金属不純物を除去する際に用いられる半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置であり、前記アルカリ性処理液が接触する炭化ケイ素結晶面を有し、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する吸着精製手段を備えていることを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置である。 本発明において、精製処理の対象となるアルカリ性処理液としては、例えば、シリコンウェーハ、炭化ケイ素ウェーハ等の半導体基板を、これら半導体基板の製造時やこれら半導体基板を用いた半導体デバイス等の製造時に、種々の目的で処理する際に使用される以下のようなものが挙げられる。即ち、半導体基板の製造時に用いられるもので、特に高純度が要求されるのはポリッシング工程、エピタキシー前洗浄等で使用されるSC1洗浄液である。両面ラップ工程等で使用される無機強塩基水溶液も重金属に関しては純度が高い方がよい。半導体デバイスの製造時の基板の処理用としては、酸化・拡散・CVD等の多くの工程に付属する清浄化工程の代表的な洗浄液であるSC1を主としたコリン洗浄液等のアルカリ・過酸化水素水溶液がある。また、高耐圧パワーデバイス拡散工程の特殊な洗浄液として、界面活性剤入り無機有機強塩基水溶液も挙げられる。 そして、精製対象のアルカリ性処理液において、特に使用量の多いものとしては、先ず、半導体デバイス製造時のポジレジスト膜現像工程で使用されるポジレジスト現像液用の有機強塩基水溶液を挙げることができ、具体的には、例えばTMAHに代表される水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液や、コリンに代表される水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウム水溶液がある。また、VMOS用等のSiウェーハにおける異方性ウエットエッチングに使う強塩基の水溶液やエチレンジアミンのような弱塩基の水溶液も本発明の対象となる。更に、本発明の精製対象であって半導体基板や半導体デバイス等の製造時の洗浄工程等で用いられ、特にFe濃度についてppq領域のなるべく低いところまで高度の精製が望まれるものとして、半導体用クラスの高純度であって特にキレート作用を持つ分解阻止用有機不純物までも除去されている高純度過酸化水素水と、所謂半導体用クラス以上の清浄度を有する高純度アンモニア水とで調製された洗浄液(SC1)がある。更にまた、SC1とほぼ同じ工程で使われるが製造環境上の理由で用いられ、半導体用クラスの高純度で特にキレート作用のある分解阻止用有機不純物までも除去されている高純度過酸化水素水と、有機強塩基水溶液からなる洗浄液がある。また、太陽電池をSi単結晶ウェーハで製造する場合、表面反射率を下げるため、必ず微細ピラミット状のテクスチャを形成させるが、そのエッチングのために用いられる無機強塩基水溶液のKOH(約5%)等も対象になり得る。pn接合形成の際、処理液に鉄汚染対策があればライフタイムが低下する可能性がある。 また、本発明の精製方法は、半導体工場の生産用として通常市場で入手し得る高純度のアルカリ性処理液を更に精製し、特にFe濃度をppq領域にまで低減するものであり、精製の対象となるアルカリ性処理液としては、好ましくは市場で通常入手し得る最高純度の金属不純物濃度、特にFe濃度が3〜10pptの高純度アルカリ性処理液であるのがよく、また、必要により、市場で入手したアルカリ性処理液を予め別の公知の精製方法により精製し、Fe濃度を上記の範囲にまで低減してから、本発明の精製方法を適用してもよい。 また、本発明において、このようなアルカリ性処理液を接触させる炭化ケイ素結晶面については、特に制限されるものではなく、炭化ケイ素単結晶の結晶面であっても、また、化学気相成長(CVD)法で形成された炭化ケイ素多結晶の結晶面であってもよい。基板で使用する場合、後者の方が表裏の吸着性能の差が少ない。 本発明の精製方法及び精製装置により精製可能な金属不純物については、上述した半導体デバイス製造プロセスにおいて、Siウェーハに対して実質的に最も有害な重金属のFeを対象として説明したが、本発明においては、この不純物Feに限らず、アルカリ性処理液中において正電荷を持つ金属水酸化物コロイドを形成する金属不純物に対して有効である。このようなアルカリ性処理液中において正電荷を持つ金属水酸化物コロイドを形成する金属不純物としては、例えば、高濃度の有機強塩基水溶液の原液中に存在し、酸化膜耐圧不良やVthシフトを引き起こすCaやZnを挙げることができ、また、アルカリ過酸化水素洗浄液中に存在して界面準位を増加させるAlを挙げることができる。以下の説明においても不純物Feの除去のための精製を主体としているが、その説明はこれらの金属にも通じることである。 本発明における最大の技術的特徴は、アルカリ性処理液中において正電荷を持つ金属水酸化物コロイド不純物に対して極めて強力な吸着精製能を有する炭化ケイ素結晶面を、このアルカリ性処理液中の金属不純物を除去する際の吸着精製手段として利用することにある。本発明が提示する炭化ケイ素結晶表面は、シリコン結晶において吸着性能の高い(100)面よりも、遥かに強力な吸着性能を有しており、例えば、図7に示すシリコン(100)結晶面(A)と炭化ケイ素(0001)結晶面(B)の59Fe水酸化物コロイドに対するRIトレーサ法におけるラジオルミノグラフィ画像(RLG画像)の吸着濃度計測結果は、炭化ケイ素(0001)結晶面(B)が4675PSL/mm2であつて、シリコン(100)結晶面(A)が1214PSL/mm2であり、炭化ケイ素(0001)結晶面はシリコン(100)結晶面の約4倍の吸着があると判断される。更に、CVD多結晶炭化ケイ素基板の中には、表裏両面を合わせての比較で該単結晶基板の更に2倍近い59Fe吸着を示すものもある。 そこで、本発明は、炭化ケイ素結晶面をアルカリ性処理液の金属不純物に対する吸着精製手段として利用するものであり、シリコンよりも明らかに高い精製効果が得られる。しかも、炭化ケイ素は、シリコンと異なり、アルカリ性処理液中に実質的に溶け出すことがなく、従って仮に吸着精製手段として用いる炭化ケイ素結晶自体が微量の金属不純物を含有していたとしても、それによりアルカリ性処理液が汚染されるのを無視できるという効果がある。また、同様に、メタケイ酸イオンがアルカリ性処理液中に生成して汚染することに起因するアルカリ性処理液の本質的な純度低下も無視することができる。このように化学的耐性の効果のほかに、炭化ケイ素は、ダイアモンドに告ぐ硬度を有するので、パーティクル発生のような機械的劣化現象も少ない。従って、保守や経済性の面で本発明の効果は抜群である。 本発明によれば、アルカリ性処理液から炭化ケイ素結晶面に吸着した金属不純物は、極めて弱い酸系洗浄剤と水リンスによる洗浄処理により、容易に炭化ケイ素結晶面から除去されるので、吸着精製手段として用いる炭化ケイ素結晶面を容易に再生することができる。本発明の大きな効果は、炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段とこの炭化ケイ素結晶面を再生する再生手段の両者を組み込んだ多段並列炭化ケイ素吸着精製機構を容易に構成できることにある。また、炭化ケイ素は、その優れた耐化学薬品性と機械的強度から、容易に粒状の吸着剤として調製することができ、この吸着剤が充填された吸着剤充填カラムの通液によるアルカリ性処理液の精製を簡便にかつ安定的に実施し得るという効果もある。炭化ケイ素を微粒子化すると、その微粒子表面に現れる結晶面は必ずしも最も好ましい吸着特性を有するとは限らず、吸着精製手段としての精製能力が低下することも予測されるが、吸着剤充填カラム内の粒状吸着剤の総表面積(S)とこの粒状吸着剤に接する充満液(アルカリ性処理液)の体積(V)との比S/Vが大きいので、吸着剤充填カラムとして実質的に十分な除去率が得られる。通常、このように構成された機構を多段として本発明の精製を行なうと、アルカリ性処理液中のFeを2オーダー程度ppqの低い領域にまで下げられる効果がある。多槽浸漬式自動洗浄装置のシーケンスの最終をこの機構を備えたアルカリ過酸化水素洗浄とし、フッ酸を含む洗浄液の処理を先行させると、洗浄ウェーハの残存Feを1×108atoms/cm2のオーダーに到達させることができる。 本発明によれば、半導体デバイス製造時に用いられるポジレジスト現像用の現像液のような有機強塩基水溶液等の強アルカリ性処理液の高純度品中に残存する代表的有害金属元素Feを、その使用現場でその使用直前に、効果的に除去することができるので、現像液等の超高純度化処理の実施や管理が容易になり、薬品メーカー側の希釈前高濃度超高純度品の貯蔵や輸送容器に関しも、その汚染管理に余裕が生じる。図1は、本発明のアルカリ性処理液の精製方法で用いられる吸着板積層体(吸着精製手段)を説明するための概念説明図である。図2は、図1の吸着板積層体を用いたアルカリ性処理液の精製と、使用後の吸着板積層体の再生処理を説明するための概念説明図である。図3は、多槽浸漬洗浄システム最終段の槽に使用されるアルカリ性処理液を、本発明の精製方法として採用される炭化ケイ素結晶面を有する粒状吸着剤が充填された吸着剤充填カラム(吸着精製手段)を経由して循環して清浄化する、更に吸着剤の能力が低下したときの再生処理機構が付属する洗浄装置を説明するための概念説明図である。図4は、図3の洗浄装置の粒吸着剤充填カラムに換えて、本発明の精製方法として採用されるCVD法炭化ケイ素多結晶板からなる多数の薄板状吸着板の吸着板積層体が組み込まれた吸着カラムの断面概念図である。図5は、シリコン面と炭化ケイ素面におけるFeのフロイントリヒ吸着直線を示すCv−Cs両対数関係図である。図6は、シリコン面Fe汚染に対するSC1洗浄のEDTPO効果(V/S−59Fe残存率の関係)を示すグラフ図である。図7は、シリコン面と炭化ケイ素面に吸着された放射性鉄のRIトレーサ法において、RLG画像の計測結果を示す画像写真である。 以下、本発明の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法及び精製装置について、詳述する。 1.吸着精製手段を構成する炭化ケイ素の形態 本発明において、アルカリ性処理液を精製する吸着精製手段は、少なくともアルカリ性処理液と接触する炭化ケイ素結晶面を有するものであればよく、炭化ケイ素の形態としては、この炭化ケイ素結晶面を確保できるものであれば特に制限されるものではない。しかし、耐化学薬品性や機械的強度の劣るアモルファスは用途が限られる。単結晶は純度の点で好ましく、特に吸着性能のバラツキが少ない。半導体デバイス用としては六方晶系と立方晶系があり、前者は通常(0001)面が使われ、多形の性質があって市場にでているのは4Hと6Hのウェーハが多い。しかしこの差は無視し得る。問題は炭化ケイ素単結晶には極性があって、表裏でFe吸着性能にかなりの差があることである。図7の炭化ケイ素のRLG画像は良く吸着する側で、裏面は悪いときはその半分になることがある。立方晶系はSiウェーハ面にエピタキシャル成長させると生じ、面は(100)である。その面の吸着性能は六方晶系並みである。裏面はシリコンであるからこの場合は論外である。 ウェーハ状の炭化ケイ素で最も多く市場にでているのは、半導体プロセスで多用する酸化炉、拡散炉、減圧CVD炉等のための多結晶ダミーウェーハである。グラファイト基板にCVDで炭化ケイ素を必要な厚さまで成長させて、後は燃す等してグラファイトを除く方法が主流であるが、反りの問題や機械的強度、仕上がり面の粗面状態等で、使用するプロセスに応じて問題が異なり、ニーズに応じた製造者の工夫による種々の製品が市場にあって、ダミーウェーハの製造に関する特許公報は少なくない。古くから行なわれている炭化ケイ素の超微粉を焼結してウェーハ状に作る方法においても、これまで問題であった到達純度を解決した製品が登場しており、またグラファイトを直接ケイ化する方法も古くからの製法が改良されている。 本発明にとって炭化ケイ素CVD基板は特に重要である。通常の成長条件では立方晶系で、表面は(111)及び(110)で配向し、1600℃以下では前者が多いとされている。顕微鏡で(111)の四方錐が見られるほど粗な面もあれば、結晶の形状が全く判然としないものもある。多結晶基板は通常両面が略同程度にFeが吸着し、これは吸着板の両面を利用する本発明の実施例にとっては極めて重要な利点である。グラファイトを除いたCVDウェーハに更にCVD成長させたウェーハはこの点で更に望ましい。ただ理論的にこれらの利点を追求するのは容易でないので、本発明者はRLG法で一挙に判断する方法をとった。即ち、各種のCVDダミーウェーハから概ね面積4cm2の破片をサンプリングし、その約10個の試料と2cm角のシリコン(100)チップ数枚とを浸漬条件が等価となるよう工夫されたリング状フッ素樹脂製チップ受け台にセットし、59Feが略0.1ppbとなるよう準備された石英ビーカ内アルカリ過酸化水素洗浄液に浸漬して、後述の「3.炭化ケイ素面のFe吸着効果及び吸着Feに対する再生洗浄法」と同様の手順でRIトレーサ法用の乾燥試料を作成し、全試料同時に表側裏側の放射線画像を得て、各チップに吸着した59Fe量をシリコンチップ吸着量の平均と比較した。 ダミーウェーハ試料の全てについて表裏のばらつきは±20%とよく、更にシリコン(100)面に対する吸着濃度比較において特によいものは7倍を超え、概ね5倍から6倍で、3倍が1例あった。同時に行なった(0001)炭化ケイ素単結晶チップは良い面が5倍、その裏面は2.5倍であった。CVD炭化ケイ素多結晶板は本発明にとって最も好ましいFe吸着性能を与えるものである。これらの中には表面が極めて良好な親水性を示すものがあり、アルカリ性処理液との接触面積(炭化ケイ素結晶面)を確保でき、かつ、精製処理後のアルカリ性処理液が容易に分離する、いわゆる液切れ性が優れている。 また、CVD方式で作られた粒状結晶、例えば粒子径数百μm程度は立方晶系で、表面は(111)が配向していると思われ、充填床用の吸着剤として好ましい。広く使われてきたアチソン(Acheson)法による炭化ケイ素インゴットを粒子係数百μmの粒子にまで粉砕し、化学処理等で精製した後、粒子の表面全体を高純度の炭化ケイ素CVD膜で被覆したものも充填床用の吸着剤として使用可能である。 2.アルカリ性処理液のFe汚染におけるEDTPOの影響 アルカリ性処理液のうちで過酸化水素が添加されたアルカリ過酸化水素洗浄液では、過酸化水素水中の残存する微量の分解阻止用キレート剤がFeのシリコン面や炭化ケイ素面への吸着を抑制する場合がある。高純度過酸化水素水と称するものでも、メーカーやロットによって、この種のキレート剤がごく微量入っていたり、入っていなかったり、また、入っていてもその物質が明らかではない。製造メーカー各社の最高純度過酸化水素水で調製したSC1のシリコン面に対するフロイントリヒ直線は、図5の太実線上下の細点線に挿まれた区域内、即ちかなり広い範囲にばらつく(洗浄条件は太実践の場合と同じ)。本発明者はCOPOにエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸キレート剤(EDTPO)の10ppbを添加することにより、高純度過酸化水素水の差にあまり影響されずに図5の細実線のフロイントリヒ直線を得た。EDTPOのようなホスホン酸キレート剤は、SC1やCOPOからシリコン面へのFe吸着を抑制する効果が極めて強い(非特許文献2及び非特許文献3を参照)。炭化ケイ素面でのこのような効果を検討するために、先ず両文献で本発明者が示したEDTPO1ppm添加のフロイントリヒ直線を図5に転載し、後者と同じ実験条件で新たに作成したPOCOでの100ppb添加における該直線を付記した。 3.炭化ケイ素面のFe吸着効果及び吸着Feに対する再生洗浄法に対する再生洗浄法 COPO洗浄液における4H炭化ケイ素単結晶の(0001)面のFe吸着性能をシリコンでFeが吸着しやすい単結晶面(100)と比較するため簡単な吸着実験を行った。COPO洗浄液10mLを入れた9個の石英ガラス製小ビーカを準備し、放射性59Feで標識した塩化鉄水溶液を滴下して、夫々の液のFe濃度が1ppb弱となるようにした。シリコン単結晶(100)ウェーハ、アモルファス炭素ウェーハ、4H炭化ケイ素単結晶(0001)ウェーハから、前2者は2cm角の試料チップを切り出して、小さく硬い炭化ケイ素ウェーハは4分割を依頼してチップ化し、夫々実験試料とした。各試料を70℃の前記COPO洗浄液に10分浸漬後、超純水で10分リンスし、乾燥後にRIトレーサ法で放射能強度を計って試料表面のFeの吸着濃度を求めた。 結果を表1に示す。 この表1に示す吸着実験の結果から明らかなように、炭化ケイ素面はシリコン面に対し約4倍の吸着を示し、本発明の優位性の根拠となった。炭化ケイ素チップ面(B)とシリコンチップ面(A)のRLG画像の比較は図7に示す通りであって、両者の正確な放射線強度計測値は先に示した通りであり、肉眼で見る画像の濃さは、吸着59Fe濃度におおむね比例するが、一見してその差は明瞭である。また、アモルファス炭素面のFe吸着はごく僅かであった。 また、予め放射性鉄(59Fe)で汚染させたSiウェーハに対し種々の洗浄液による室温での比較洗浄試験を行ったが、先ず超純水リンスが迅速に済む希フッ酸が選ばれ、更に希フッ酸とそれに酸化剤を添加した場合とについて、上記吸着実験の試料に対する室温での洗浄試験を行った。シリコン面のFeは希フッ酸で容易に除去できたが、炭化ケイ素面は、希フッ酸洗浄では十分な除去が出来ず、過酸化水素水添加の場合に98%の除去が出来た。 この結果を表1に追加する。 この表1に示す洗浄実験の結果から連想して、オゾン添加で同様の洗浄実験を行なったところ全く同様な洗浄効果が得られ、酸化剤共存の希フッ酸洗浄がFe吸着炭化ケイ素面の吸着性能の再生に適することが分かった。提示した洗浄液の組成は、2wt%-過酸化水素・1wt%-フッ酸の水溶液であるが、作用からみて再生液の組成はこの値に限定されることはない。 4.炭化ケイ素面におけるフロイントリヒ吸着直線 上述のCOPO洗浄液(EDTPO 10ppb添加)の吸着実験とほぼ同条件で、炭化ケイ素チップを用い、液のFe濃度1ppbと0.1ppbの場合のチップ面吸着濃度を求めて図5にプロットしたところ、両者を結ぶ直線(一点鎖線)は、既に記載されているフロイントリヒ吸着直線群と略平行になり、この直線はフロイントリヒ吸着直線であるといえる。COPO洗浄液のシリコンのフロイントリヒ直線より遥かに上方に位置し、一見しても炭化ケイ素がシリコンより遥かにFeの吸着性能に優れていることが判明した。 100ppbEDTPOを添加した場合の炭化ケイ素のフロイントリヒ吸着直線(一点鎖線)も図5に示した。該キレート剤の吸着抑制作用は炭化ケイ素に対しても同様に働いている。該キレート剤は炭化ケイ素のFe吸着精製に際し、その能力を低下させ、その点では有害な物質である。しかし、該フロイントリヒ直線は、かなりシリコンのCOPO洗浄液の直線に近接し、従ってCOPOに100ppb添加されていても、炭化ケイ素の吸着精製効果はCOPO洗浄液(10ppb添加してある)に対するシリコンの吸着精製効果に略匹敵することになる。これは、アルカリ過酸化水素洗浄液にEDTPOを0.1ppm程度添加しても、炭化ケイ素は液中のFeに対する吸着性能において、実用上問題ない程度の吸着精製効果が得られることを示している。 室温のコリン原液(5wt%-コリン水溶液)に対し、同様に放射性59Feを使い、炭化ケイ素(0001)面に対するフロイントリヒ吸着直線を求め、図5に2点鎖線で示した。その位置は直線群の最上となった。アルカリ性処理液中のFeは過酸化水素を含有させた洗浄液からの方が炭化ケイ素につき難いという結果である。処理温度の関与を疑って、室温での両者の吸着効果を調べたが、実施例に示すとおり、ほぼ同じ結果となった。 5.アルカリ性処理液中の金属不純物の吸着挙動の機構について アルカリ性液中では、炭化ケイ素面でもSi面もSiO2面もゼータ電位が負であり、SiO2面のその値がSi面よりやや大きいことはよく知られている。これで説明される現象の一例を以下で取り上げるが、その結果から推論して炭化ケイ素の負のゼータ電位は更に大きいといえる。既述のように、アルカリ性液に分散している水酸化鉄は、正コロイドであるから、シリコン面よりも石英ガラス面や酸化膜面に対してより吸着し易い。しかし、EDTPOを添加すると、このコロイドは陰イオン化し、コロイドの吸着を阻止することができる。 この点を証するのが次の実験の目的であって、今回は、放射性59Fe濃度12pptのCOPO10mLずつを小石英ガラスビーカ5個に移し、夫々2cm角シリコンチップを浸漬してFe吸着実験を行なった。更に同じ放射性59Fe濃度のコリン洗浄液にEDTPOを1ppm添加し、同様にビーカ5個に移し、上記と同様にFe吸着実験を行った。チップの浸漬処理が終了した時点で、洗浄液を定量サンプリングして評価用濾紙に滴下・乾燥し、またチップは取り出してリンスした後に乾燥し、夫々前記と同様にしてRLG-RIトレーサ法で放射能強度測定を行い、液のFe濃度(液濃度)とシリコン面の吸着濃度(Si面吸着濃度)とを求めた。夫々の平均値を求め、その結果を表2に示す。 チップは表裏の全面積が8cm2であるから、Si面吸着濃度からSi面全体のFe吸着総量を計算し、それに液濃度から求められた液中のFe総量を加えた値を液・Si面の総量として表2に示す。容器内のFe量は1.2×1012atomsであるから、減算によりビーカの石英内面への吸着量が得られ、次いでビーカ内面の液と接する部分の面積は22cm2であるから石英面吸着濃度が得られる。EDTPO添加品ではこの減算の考え方に信頼性が欠けるので、石英面吸着(*1、*2)は、該ビーカをウエル型NaIシンチレータの中に入れ、放射能を計測して求めた。石英面のFe吸着濃度はシリコン面より約3倍多い。酸化膜面はSiO2面であるから同じ傾向を示して吸着が多くなる。しかし、液のFe濃度が1ppb程度であると、酸化膜面もシリコン面もほぼ同程度に吸着し、むしろ酸化膜面の方が若干吸着し難い傾向がある。アルカリ過酸化水素洗浄では、液中のFe濃度がpptの低い領域になると、液に分散している水酸化鉄コロイドの正コロイドとしての働きが大きくなってSiO2面とシリコン面との吸着差が現れる。一方、EDTPO添加の場合は、水酸化鉄コロイドがキレート化合物に変わり、該コロイドの吸着激減が明瞭にみられる。 以上のアルカリ性処理液中における金属不純物の吸着挙動を勘案すると、炭化ケイ素の抜群の水酸化鉄正コロイド吸着特性から推論して、炭化ケイ素の負のゼータ電位はシリコンよりも更に大きいといえる。また、シリコン基板洗浄工程ではFe汚染に対する強力な除去作用と液の発泡による劣化に対する抑制作用の必要から、洗浄液として用いられるアルカリ性処理液中にEDTPOの添加は好ましく、吸着精製手段として用いられる炭化ケイ素はこのEDTPOが添加されることの負担に耐えられなければならないことが分かる。 6.炭化ケイ素面に対するFeのフロイントリヒ吸着式とK値 図5のフロイントリヒ吸着直線は、Fe濃度CV(atoms/cm3)のアルカリ性処理液(1例を除き過酸化水素含有洗浄液)に浸漬して、液Fe濃度と平衡したシリコン基板面あるいは炭化ケイ素基板面の吸着Fe濃度CS(atoms/cm2)との間に下記の一次方程式(式中、mとKは常数であって、mは直線の公配である。)(式1)が成り立ち、また、この式1から次のフロイントリヒ吸着式(式2)が導かれる。 この直線群の傾斜角は、略45°であって、従って論を簡略化するため、夫々のmの値を1とした。この場合、上記のフロイントリヒ吸着式は下記式3の通りに表記することができる。 従って、おおまかには、K値は、液のFe濃度が一定の場合における液中のFeのシリコン面や炭化ケイ素結晶面への吸着し易さを示している。図5並びに後述する図6にはこのK値を付記した。COPO洗浄液の場合、シリコン(100)基板ではK値が0.065であるのに対して、炭化ケイ素(0001)基板の吸着の多い側の面では0.25であり、シリコン基板の4倍に近い。 7.炭化ケイ素ウェーハによるFeの吸着精製実験(Fe吸着精製実験) 200mm径炭化ケイ素CVDダミーウェーハ(多結晶面)2枚を用い、これら2枚のウェーハの周縁部間に四フッ化エチレン樹脂(PTPE)製シートから切り出した厚さ0.5mm×幅10mmのスペーサを挟み込んで固定し、また、上下にはスペーサの一部を切り取って形成された開口部を設け、両ウェーハ間のスリット間隙内にアルカリ性処理液の試験液を導入してウェーハ内面における吸着性能を調べるための試験用吸着板積層体を調製した。この試験用吸着板積層体を用い、先ず、過酸化水素入り希フッ酸でスリット間隙内を洗浄し、リンスした後に窒素ガスを流して乾燥し、次に、スリット間隙内に試験液(室温のCOPO洗浄液に所定量の放射性59Feを添加して調製したもの)を導入し、そのまま試験液を1分保持し、その後に排出させ、回収された試験液の放射能を測定し、試験液中に残存した放射性59Feの残存率を求めた。 上記の試験用吸着板積層体において、スリット間隙内に導入され充満した試験液の体積をVcm3とし、試験液と接触する試験用吸着板積層体の面積をScm2とし、また、スリット間隙内に導入する前の試験液のFe濃度をCVIとし、また、スリット間隙内に導入され充満した試験液が放置されて平衡に達したときの試験液のFe濃度をCVAとすると、この濃度でのフロイントリヒ吸着則が成り立つ限り、上記式3のフロイントリヒ吸着式から吸着精製後の放射性59Feの残存率は下記の式4によって表される。 実験の結果得られた残存率は約9%であった。この実験で使用したウェーハの接液面積は240cm2、即ちS=480であって、スリット間隙の体積はV=12であり、従って、S/V=40となる。CVA/CVI=0.09とおくと、上記式4からK=0.22となり、このCVD多結晶炭化ケイ素のK値はほぼ単結晶並であった。 即ち、炭化ケイ素結晶基板面はアルカリ性処理液のFe濃度が低レベル例えばppt領域の低い方であれば、単結晶多結晶に係らず高いK値でフロイントリヒ則が成り立つものと推測される。基板間の距離が0.5mmと狭まりS/V=40の空隙を持つ吸着板積層体であればこのように十分な精製出来る。CVD多結晶基板は単結晶基板と異なり、表裏で吸着特性が変わらず、しかも単結晶面に比しかなり高いK値が得られる可能性があるので、基板間隙をかなり広げうる可能性は高い。 また、単結晶多結晶に係らず、これらの炭化ケイ素の板状基板は炭化ケイ素粒に比し化学的にも機械的にも更に安定となり、後続させる微粒子除去用フィルターへの負荷が著しく低減される効果もある。 本発明に係わるアルカリ性処理液の精製方法及び精製装置について、以下に実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。 ここで、以下の実施例で使用されたアルカリ性処理液を調製するために使用された高純度原料としては、Fe濃度1〜0.3ppb以下の25wt%-TMHA水溶液、Fe濃度0.3〜0.05ppb以下の4wt%-コリン水溶液、Fe濃度0.1〜0.05ppbの29wt%-アンモニア水、Fe濃度0.1〜0.03ppbの30wt%-過酸化水素水を用いた。また、実施例で用いられた容器、配管、弁、ポンプ、フィルター等のアルカリ性処理液に接触する部材については、いずれもフッ素樹脂(主としてPTFE)製とし、予め界面活性剤添加のTMAH処理液を用いた超音波加熱洗浄と硝フッ酸洗浄とを複数回繰り返し実施し、金属汚染を除いた。〔実施例1〕 75mm径の2枚の炭化ケイ素単結晶(6H)ウェーハを用い、これらウェーハの鏡面について予め原子間力顕微鏡(AFM)像を求めた後、鏡面を向い合せに配置し、先のFe吸着精製実験の場合と同様にして、0.5mm隙間のスリット間隙を有する実施例1の吸着板積層体を形成した。 この実施例1の吸着板積層体について、上記の5wt%-コリン水溶液中に放射性59Feを添加して得られた放射性59Fe濃度100pptの試験液を用い、先のFe吸着精製実験の場合と同様の手順に従って、室温下でFe吸着精製実験を実施し、この試験液における放射性59Feの残存率を求めた。 その後、実施例1の吸着板積層体のスリット間隙内を上記と同様にして洗浄した後、上記の25wt%-TMAH水溶液を10倍に希釈し、得られた2.5wt%-TMAH水溶液に放射性59Feを添加して放射性59Fe濃度100pptの試験液を調製し、得られた試験液を用い、先のFe吸着精製実験の場合と同様の手順に従って、室温下でFe吸着精製実験を実施し、この試験液における放射性59Feの残存率を求めた。 どちらも90%以上の放射性59Feの除去率が得られ、十分な精製効果を有することが判明した。両者の炭化ケイ素面に対する室温でのFeフロイントリヒ吸着直線は、図5に示されているように、ppt領域でもコリン原液の直線の下方延長線にかなり近い位置にあると推定される。 その後、後者の放射化していない試験液(25wt%-TMHA水溶液)をスリット間隙内に満たして30時間放置する化学薬品耐性評価実験を行ない、試験液を排出させ、スリット空間内を上記と同様にして洗浄した後、吸着板積層体を分解し、処理前と同様にして炭化ケイ素ウェーハ面のAFM像を求めて比較したが、処理前と処理後とで変化が認められず、この耐性評価実験によって炭化ケイ素ウェーハ面がエッチングされた形跡は認められなかった。〔比較例1〕 炭化ケイ素ウェーハに代えて2枚の200mm径Siウェーハを用い、液接触容器具として上記のFe吸着精製実験で調製したものを利用したほかは、実施例1と同様にしてFe吸着精製実験を行なった。 実施例1も本比較例1も共にS/V=40であったが、本比較例1の場合には除去率が80%に達しなかった。また、スリット間隙内に放射化していない試験液)を30時間放置する化学薬品耐性評価実験において、Siウェーハ面には肉眼で著しい面荒れが観察された。〔実施例2〕 前記実施例1の知見に基づいて、アルカリ性処理液の吸着精製手段として、図1(a)〜図1(c)に示す吸着板積層体1を構成した。この吸着板積層体1は、レーザー加工により厚さ0.6mmのCVD多結晶ダミーウェーハ(K≒0.3、表裏共に良好な親水性)から100mm×102mmの大きさに切り出された11枚1組の薄板状の吸着板2と、これらの吸着板2を互いに所定の間隔(通常0.8〜3.0mm、好ましくは1〜2mm)で、互いに平行で、かつ互いに相対面した状態で保持するフッ素樹脂(PTFE)製の保持カセット3とで構成されている。そして、この保持カセット3は、吸着板積層体1の搬送や位置決めを行なう図示外のロボットアームとの連結用凹部6を有するカセット天井部4と、このカセット天井部4の両端から垂下され、互いに相対面する内面側にそれぞれ11本の吸着板固定溝7を有する一対のカセットアーム部5とで構成されており、また、上記11枚の吸着板2は、その両縁部が各カセットアーム部5の吸着板固定溝7内に嵌合された状態で、保持カセット3に固定されている。この実施例2において、上記各カセットアーム部5に形成された11本の吸着板固定溝7は、その深さが約1mmで、その間隔が2mmに設定されており、各吸着板2が保持カセット3に固定された状態で、各吸着板2は、互いに2mmの間隔を置いて互いに100mm×100mmの面積で相対面するようになっている。 また、図2には、本実施例2の吸着板積層体1を用いてアルカリ性処理液(被精製液)を精製する際に用いられる処理液精製装置10が示されている。この精製装置10は、被精製液Lqを精製するための被精製液精製領域11と、被精製液精製領域11で被精製液Lqの精製に使用された後の吸着板積層体1を洗浄するための吸着板積層体洗浄領域12と、この吸着板積層体洗浄領域12で洗浄された吸着板積層体1を乾燥するための吸着板積層体乾燥領域13とを備え、被精製液Lqの精製に使用された後の吸着板積層体1が吸着板積層体洗浄領域12と吸着板積層体乾燥領域13とを経て再生されるようになっている。そして、上記被精製液精製領域11には、被精製液Lqを収納する吸着精製槽14が備えられており、またこの被精製液Lqを被精製液精製領域11外から槽14内に送入すると共に精製後の被精製液Lqをこの被精製液精製領域11内から送出する図示外の機構が付属しており、更に、上記吸着板積層体洗浄領域12には、精製処理を終えた吸着板積層体1を洗浄するための洗浄槽15が備えられており、またこの槽15のための洗浄液とリンス用超純水を順に領域12外から槽15内に送入、それぞれ処理後領域12外に排出する図示外の機構が付属している。なお、上記吸着精製槽14の上部開口縁部には、図示外のロボットアームを操作して吸着精製槽14内に吸着板積層体1を導入する際に吸着板積層体1が容易に吸着精製槽14内に導入されるように、傾斜案内面16が形成されている。 そして、この実施例2において、上記吸着精製槽14は、上記吸着板積層体1を可及的に小さな隙間を維持して受け入れる構造に設計されており、この吸着精製槽14内に所定量の被精製液Lqを注入し、その後に吸着板積層体1を導入した際に、各吸着板2の上縁が吸着精製槽14内の被精製液Lqの液面下に僅かに沈むようになっており、また、図示外の機構により、吸着精製槽14内において吸着板積層体1を若干上下することができるようになっている。 従って、この実施例2において、上記を用いて吸着精製槽14内の被精製液Lqを精製する際には、先ず、洗浄済みの吸着精製槽14を被精製液精製領域11内の所定位置に正確に配置し、被精製液Lqの所定量を吸着精製槽14に送入した後、吸着板積層体乾燥領域13にある洗浄済み吸着板積層体1を吸着精製槽14の被精製液Lq内にロボットで送り込んで液中に沈め、また、若干上下させ、これら各吸着板2と被精製液Lqとを所定時間接触させる。 次に、この各吸着板2と被精製液Lqとの接触による吸着精製操作が終了した後、吸着板積層体1を引き上げて吸着板積層体洗浄領域12に位置する吸着板積層体洗浄槽15内に移送する。ここで、吸着板積層体1を構成する各吸着板2間の間隔が0.8mm以上3.0mm以下に設定されており、また、各吸着板2の表面が親水性であるので、これら各吸着板2と被精製液Lqとの間の高い接触効率を確保できるだけでなく、各吸着板2を被精製液Lqから引き上げた際に、各吸着板2の隙間に残存する被精製液Lqを可及的に少なくすることができるほか、高純度窒素の吹き付け等の手段で容易にかつ確実に吸着精製槽14内に戻すことができる。そして、この吸着板積層体洗浄槽15内では、吸着板積層体1に対して、水洗、2wt%-過酸化水素・1wt%-フッ酸水溶液等の吸着板洗浄剤による洗浄、超純水によるオーバーフローリンス等の手段で洗浄操作を行う。 そして、この吸着板積層体洗浄領域12での吸着板積層体1の洗浄操作が終了した後、吸着板積層体1は、精製装置10の次の吸着板積層体乾燥領域13内に移送され、例えば高圧窒素ガス吹付け等の手段で乾燥させ、再生される。 このようにして再生された吸着板積層体1は、再び精製装置10の被精製液洗浄領域11において、被精製液Lqの吸着精製のために繰り返し利用される。 以上が吸着板積層体1を用いた被精製液Lqの1次の吸着精製操作であるが、この1次の吸着精製操作で吸着精製槽14内の被精製液Lqが所望の純度にまで到達していない等の場合には、上記の吸着精製操作を、被精製液Lqの精製の程度に応じて、また、所望の高純度化が達成されるまで、必要により2次、3次、4次等と複数回繰り返して行うことができる。 以下に、この実施例2に基づくアルカリ性処理液の吸着精製の具体例を示す。 吸着板積層体1の構成としては、各吸着板2間の間隔を2mmとし、被精製液Lqとして放射性59Fe濃度100pptの4wt%-コリン水溶液を用い、吸着精製槽14内には300mLの被精製液Lqを仕込み、各吸着板2と被精製液Lqとの接触所定時間を1分間とし、吸着板積層体1の再生操作を行って4次の吸着精製操作まで繰り返した。 これら1次から4次までの吸着精製操作の間、各吸着精製操作毎に精製後の被精製液Lqの1mLを採取し、この採取液を測定用濾紙に滴下し乾燥させ、イメージングプレートで露光(低濃度の濾紙は数十日の長期間露光)し、RLG-RIトレーサ法で精製後の被精製液Lq中に残存するFe濃度を求めた。 結果は、1次精製後が26pptで、2次精製後が6pptで、3次精製後が1.2pptであって、4次精製後では100ppqであった。この4次精製後の値(100ppq)は、非特許文献3の場合と同様に、低濃度での精製加速現象がみられた。このことは、S/Vが10程度と低いにも係らず、低濃度領域では意外ともいえる精製効果である。〔実施例3〕 単結晶原料の粒径0.2〜1.2mmの高純度炭化ケイ素粒(太平洋ランダム社製GNF-CVD)を吸着精製剤として使うため、コリン原液と硝酸の夫々数日の浸漬予備洗浄の後、内径20mm長さ約120mmのフッ素樹脂製カラムに60gを充填(見かけ容積約30mL)して、吸着剤充填カラムを構成した。カラムは先ず7wt%-硝酸水溶液から、超純水、2wt%-フッ酸・1wt%-過酸化水素水溶液、超純水の順に夫々500mLを通液させた後、試験液の精製実験に入った。 また、アルカリ性処理液(被精製液)として4wt%-コリン水溶液(コリン原液)を用い、この被精製液500mLを前記吸着剤充填カラムに20mL/分の速度で通液し、カラム通液前、300mL通液後、400mL通液後、及び500mL通液後に夫々サンプリングし、各サンプルについて誘導結合プラズマ質量分析(ICPMS: Inductively Coupled Plasma Mass)により金属不純物濃度を分析した。 結果を表3(単位ppt)に示す。 表3に示す結果から明らかなように、水酸化物正コロイドになり易いFeやCaは夫々残存率16%、23%程度にまで除去できるが、強塩基水溶液中でヒドロキソ錯イオンを形成するAl、Cr、及びNi等については除去できないことが判明した。〔実施例4〕 アルカリ性処理液としてCOPO中に500pptのアルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、及びクロム(Cr)と120pptの鉄(Fe)とを添加して被精製液を調製した以外は、上記実施例3と同様にして吸着剤充填カラムによる吸着精製を行い、カラム通液前後の金属不純物をICP質量分析で分析した。 結果を表4(単位ppt)に示す。 表4に示す結果から明らかなように、Alに対する吸着性能の低下は早いが、精製作用は十分に見られ、また、Caに対しては極めてその精製効果が高く、一方、Crに対しては殆ど精製効果が認められない。CrはSiウェーハのアルカリ過酸化水素洗浄で洗浄面にも吸着し難く、従ってこの結果は問題ない。Feについては、4wt%-コリン水溶液の場合よりやや悪く、残存率が27%程度であったが、本発明の目的には十分な精製効果である。Feのこの結果は、吸着剤としてシリコンを用いた場合とほぼ同じである。炭化ケイ素粒のK値を0.2とすると式4からS/V=25となる。この結果は、使用した炭化ケイ素粒の粒度分布が広く、大きい粒の間隙を微小粒が埋めて、Vが意外に小さいためと推定された。900mLの通液を終えた後、8.5%-希硝酸を通液して分析を行なったところ、粒子に吸着していた金属の約90%を除去できることが分かった。汚染した炭化ケイ素粒面の洗浄には酸化性の希酸も大いに有効であった。〔実施例5〕 アルカリ性処理液としてFe濃度37ppt及びCa濃度17pptの4wt%-コリン水溶液(被精製液)を使用し、2000mLまで多数回通液した以外は、上記実施例3と同様に作業して、吸着剤充填カラムによる吸着精製を行い、カラム通液前後の金属不純物をICPMSで分析し、吸着剤充填カラム内の吸着剤の寿命を調べた。結果を表5(単位ppt)に示す。 炭化ケイ素結晶面の精製作用は、化学吸着によるものであるから、吸着座席に限りがある。従って、精製対象が低濃度であるほど座席の埋まりが遅れる。本発明のように不純物低濃度試料の更なる低濃度化を狙う場合、再生頻度に関してより好ましい効果が期待できる。この結果は高純度領域では頻繁な再生は不要であることを示している。〔実施例6〕 シリコン基板面のFe汚染を除く洗浄法としては希フッ酸(DHF)洗浄が一般的である。しかし、文献的には、DHFはFe濃度約1×1010atoms/cm2に壁があり、本発明者が行なったRIトレーサ法による検討では(2〜0.5)×1010atoms/cm2にばらついた。本発明者は、シリコンウェーハを濃度0.1%の放射性H18F標識DHFに10分浸漬したところ、18Fの吸着量が平均で1013atoms/cm2に達し、RLG画像からその吸着は欠陥領域に偏在し易いこと知った。18Fの半減期は短いので、その放射能がRLG画像を生じないレベルまで減じたとき、改めて59Feを添加した純水に10分浸漬して、そのウェーハの吸着59FeのRLG画像パターンを前記18Fのパターンと比較したところ、かなり一致した。そこで本発明者は、DHF洗浄ではシリコン面の欠陥にFがまず捕まり、そのFにFeが結合して残存するという仮説に達した。そこでDHF洗浄後のシリコン面残存Feは、本発明による炭化ケイ素で吸着精製したアルカリ過酸化水素洗浄液により、ごく僅かエッチングしてFeをキレート剤で錯イオン化し該液に分散させる手段を講じれば、Feを必要な清常度レベルに到達させ得るとの結論に達した。本実施例では、広く使われてきたRCA方式を基幹とする洗浄シーケンス、即ちSPM(硫酸過酸化水素処理)→SC1→DHF→SC2(塩酸過酸化水素処理)の洗浄装置を意識して、ウェーハ2枚セットの洗浄実験機を作成し、上述したFe清浄化に関する結論を実証した。 図3はこの装置の概念図である。通常強力な有機汚染物除去能力のあるSPMから始まるのは、デバイスパターン形成上必要とするドライエッチングでは加工した微細孔の側面や底にFe等の金属汚染を起こり易いが、同時に有機質汚染も起るので、まず後者の除去を必要とするからである。この実験装置でもまずSPM洗浄から始まり、その後DHF洗浄を経て循環炭化ケイ素吸着精製機構を備えたSC1洗浄を最終とした。微細凹凸のある酸化膜面はFeの洗浄が難しいという経験から、被洗浄試料としてはTMAH水溶液で粗面化したSiウェーハを熱酸化して得た疎面化酸化ウェーハを用いた。試料ウェーハに59Feを1×1012 atoms/cm2程度SC1液から汚染させた後、72時間プラスチックケース内に放置して有機汚染させ、洗浄実験の開始前に粗面の59Fe濃度をRLGで正確に計測して、RIトレーサ法利用洗浄実験の試料とした。 最終SC1洗浄後のシリコン面残存Fe濃度を5×108atoms/cm2に達せしめるには、DHF洗浄後残存濃度を2×1010atoms/cm2とすると、前記から該SC1のFeに対する洗浄能力は残存率4%以下でなければならない。SC1は、その組成によってエッチング速度に差があり、通常エッチング量が多いほど表面異物除去効果は大きいが、面は荒れるので、処理の目的に応じて組成を決める必要がある。ただ組成は同じでも、Feに対する洗浄効果は過酸化水素水の銘柄で差があり、通常の洗浄条件では残存率が6%から12%程度までもばらついている。この実施例6では、アンモニア水:過酸化水素水:水=1容:1容12容とした。しかし、非特許文献2及び3に示されているように、ホスホン系キレート剤を添加すれば、SC1でもまたCOPOでも残存率を劇的に低下できる。アルカリ過酸化水素洗浄では、Feに対する洗浄効果はV/S値に大きく依存するので、本発明者は先ずSC1洗浄後の残存率とV/S値との関係を既述のEDTPO(代表的ホスホン酸キレート剤)添加量に応じて求めた(図6)。経済性の点では処理液が少ないほど、即ちV/Sが小さいほど好ましいが、洗浄効果は低下するので、実用の洗浄装置ではこの比は0.8から1.25程度である。そこで本実験装置ではV/S=1で設計した。試料ウェーハは150mmφ、その2枚が専用のハンドル付き石英ガラス製チャックで洗浄液量700mLのウェーハ受け付き石英ガラス製処理槽にセットされるようにした。 このSC1の洗浄部には、既存洗浄装置のパーティクル除去能力向上と薬液量節約を主目的としたSC1液循環方式に習い、パーティクル用フィルターの前に本発明の吸着剤充填カラムを設けた。しかし、EDTPOをアルカリ性処理液に添加すると、炭化ケイ素でも図5のシリコンの場合と同様に添加量が増すほどフロイントリヒ直線が下がる。例えば10ppb添加COPOの上方一点鎖線が100ppb添加により下方一点鎖線まで落ちる。これは炭化ケイ素によるFeの吸着精製が難しくなることを意味する。シリコン面では、SC1とCOPOでEDTPO添加濃度が同じであれば、両者のフロイントリヒ直線は略一致する。炭化ケイ素面でも同様である。従って、下方一点鎖線は100ppb添加SC1に浸漬した炭化ケイ素のフロイントリヒ直線としても大差は生じない。この線はシリコンのCOPO(EDTPO:10ppb添加)線にかなり近い。このことは、本発明の吸着剤充填カラムの場合で100ppb添加SC1を通液したときも、非特許文献3に記載されている同タイプのシリコン粒充填カラムにEDTPO無添加SC1を通液した場合と、ほぼ同じ除去率が獲られることを示している。本実施例6では、実施例3の場合と同様の効果を狙って、充填床容積と該床への液供給速度を比例させる、即ち粒容積の10倍である約300mL(カラム内径6cm、高さ12cm弱)に、毎分200mLの通液ができるように準備した。更に、吸着剤として炭化ケイ素粒を篩分けしてシリコン粒と類似の粒度分布とし、同文献と同様にRIトレーサ法で該カラムに対して予備テストを行ない。Fe除去率82%を得た。 従って、100ppb-EDTPO添加SC1液によりこのSC1循環洗浄を開始すると、V/S≒1でかつ洗浄力が十分あるため、被洗浄ウェーハの平均Fe汚染濃度が2×1010atoms/cm2であれば、洗浄後ウェーハは略4×108atoms/cm2まで精製され、除かれた大部分のFeは液に移行して、精製カラムへ入るSC1液の濃度は2×1010atoms/cm3、即ち2pptに近い。75%除去し得たとして洗浄槽に戻ったFe濃度5×109atoms/cm3の液には、次のウェーハから離脱させられた略2×1010atoms/cm3のFeが加わる。上記の記載によって100ppb-EDTPO添加SC1の場合のフロイントリヒ直線と見なし得た図5の100ppb添加COPOの実線の下方への延長から、この液槽のFe濃度に平衡した洗浄ウェーハの到達濃度は4×108atoms/cm2から僅かしか増えない。 以上に基づいて、図3に示す本発明の実験装置を具体的に説明する。 オーバーフローリンス(リンス用容器22、DHF処理用容器41等)を挟んでSPM処理用容器20とSC1処理用容器とを並べて、乾燥は乾燥域から枚葉のスピンナに移して行った。2枚処理の被洗浄ウェーハ23の移動は前記した石英ガラス製チャック(図示せず)のハンドルによる手動である。SC1を含めて各容器での洗浄処理は一般的な操作で行なっており、本発明と直接の関係はないのでこのシーケンスの具体的な説明は省略する。炭化ケイ素による吸着精製を組み込んだSC1液循環系の根幹となる循環精製手段は、SC1処理用容器21の下方の弁を開いて被精製処理液(SC1液)の貯蔵容器24内に溜めたSC1液25を三方弁26経由で送液ポンプPにより、上記実施例3に準じて調製された第1の吸着剤充填カラム(以下、「第1のカラム」という。)27に毎分粒容積の半分乃至2/3の容量が流れる流速で通液し、三方弁28とパーティクル除去フィルターF経由で精製済処理液(SC1液)の貯蔵容器(加温機構付) 29に送り込む。洗浄に際しては、該容器29下方の弁を開いて容器29内の精製済処理液30を一気にウェーハのセットされたSC1処理用容器21に満し、所定時間洗浄後SC1処理用容器21下方の弁を開いてウェーハから汚染した液を一気に貯蔵容器24に戻す。SC1処理用容器21内の残液が略無くなったら、改めて精製済処理液の貯蔵容器(加温機構付)29から精製済処理液30を一気に流下させてSC1処理用容器21内を満たすという、SC1液の迅速置換によって投入SC1液の清浄度を十分に活かすことが出来る。ウェーハ面は超親水性になるのでこの置換時に面が乾燥することはない。なお、符号42は乾燥処理領域を示す。 EDTPO添加濃度を前記より更に高める必要がある場合は、カラム炭化ケイ素粒の除去能力が低下するので、本実験機では第1のカラムと同様の第2の吸着剤充填カラム(以下、「第2のカラム」という。)27を並列させ、2段吸着精製が行えるようにした。即ち、第1のカラム27で精製後、液を弁28,31により精製液復帰配管32で貯蔵容器24に戻し、改めて弁33経由で送液し、第2のカラム27で精製して付属フィルターF経由で2段精製液を貯蔵容器29に送り、2段精製液洗浄に使用する。 第1及び第2のカラム27の初期洗浄及びFe吸着面となる炭化ケイ素結晶面の再生洗浄は、洗浄液容器34に入った2wt%-過酸化水素・1wt%-フッ酸水溶液26を予め超純水洗浄した第1のカラム27に弁36、26経由で送液し、弁28,31から排液排気用配管38で排液する。その後のリンス用超純水は、前記カラム洗浄水同様、リンス用超純水供給管39から弁操作で第1のカラム27に送り、排液管38で排水する。その後の第1のカラム27内の乾燥は窒素ガス供給管40から弁操作で窒素ガスをカラムに送り排気管38で排気する。第2のカラム27の洗浄液は弁37,33経由で送液し、その他の操作は第1のカラム27関連の操作に準じる。 この実験機の液循環機構を生産用装置に適用する場合は、必要によりカラム数を増やし、装置稼動中に順次カラム洗浄を行なう。キレート剤添加量が少ない場合や全く無い場合は2カラムの並行使用を行なって、カラムの洗浄は必要な段階で交互に一方の稼動中に行なう。 第1及び第2のカラム27を使った多段精製の効果を調べるため、高純度薬品を選んで300ppb-EDTPO添加SC1を調製して貯蔵容器24に入れ、59Fe原液を添加してその濃度が約10pptになるよう準備した後、流速200mL/分で第1のカラム27に送液し、復帰配管32経由で容器24に戻し、この循環で5分通液して、次は第2のカラム27で同様の処理を行なった。その後粒洗浄機構を稼動させて第1及び第2のカラム27の粒を洗浄した後、改めて両カラムによる精製を行なった。最後に容器24からサンプリングして放射能濃度を測定し、精製後の残存率を求めて3%を得た。液の到達Fe濃度は約300ppqで、図6、図5によりシリコン基板面のFeは1×108atoms/cm2まで洗浄できることになる。 先に記載した59Fe汚染の疎面化酸化ウェーハ2枚を上記に従い本実験機で洗浄した。即ち、130℃10分のSPM洗浄後、室温の2%-DHFで10洗浄し、先ずこの段階でFe濃度は(1〜2)×108atoms/cm2となった。その後炭化ケイ素吸着精製機構で推定Fe濃度300ppqに精製された30ppb-EDTPO添加SC1の洗浄槽24で、標準的条件によるSC1洗浄を行なった。洗浄ウェーハの放射能測定結果では、目的とする酸化ウェーハのFe清浄化は6×108atoms/cm2が得られ目標に到達した。 EDTPOを10〜300ppbの範囲で添加したアルカリ過酸化水素洗浄液は炭化ケイ素による精製によりFeをppq台まで高純度化可能で、かつその液でシリコン基板面汚染のFeを1×108atoms/cm2台まで清浄化できる。EDTPOの代わりにそのエチレン基をプロピレン基に置換した1,2-プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(Methyl-EDTPO)を用いても、その作用及び効果はEDTPOと変わらない。〔実施例7〕 実施例6で用いられた吸着剤充填の第1及び第2のカラム27に代えて、図4に示すように、炭化ケイ素結晶面を有する複数の吸着板2が積層された吸着板積層体(吸着精製手段)1を使用したものであり、アルカリ性処理液は、この吸着板積層体1の各吸着板2の間隙に通液して精製される。 この実施例7で用いられた吸着板2は、炭化ケイ素CVD基板に更に炭化ケイ素をCVD成長させたダミーウェーハを所要寸法にレーザー加工したものであり、このダミーウェーハのK値は、ほぼ0.4近くになり、アルカリ性処理液として300ppb-EDTPO添加SC1液を用いた場合であっても59Feに対する精製効果を除去率75%以上に達成し得た。 1…吸着板積層体(吸着精製手段)、2…吸着板、3…保持カセット、4…カセット天井部、5…カセットアーム部、6…ロボットアームとの連結用凹部、7…吸着板固定溝、Lq…被精製液、10…処理液精製装置、11…被精製液洗浄領域、12…吸着板積層体洗浄領域、13…吸着板積層体乾燥領域、14…吸着精製槽、15…吸着板積層体洗浄槽、16…傾斜案内面、20…SPM処理用容器、21…SC1処理用容器、22…リンス用容器、23…被洗浄ウェーハ、24…被精製液の貯蔵容器、25…SC1液、26,28,31,33,36,37…三方弁、27…第1又は第2の吸着剤充填カラム、29…精製済液の貯蔵容器(加温機構付)、30…容器内精製液、31…弁、32…精製液復帰配管、34…洗浄液容器、35…2wt%-過酸化水素・1wt%-フッ酸水溶液、38…排液排気用配管、39…リンス用超純水供給管、40…窒素ガス供給管、41…DHF処理用容器、42…乾燥処理領域。 半導体基板を処理するために用いられるアルカリ性処理液の精製方法であり、前記アルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させ、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去することを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 炭化ケイ素結晶面が、炭化ケイ素単結晶の結晶面又は化学気相成長(CVD)法で形成された炭化ケイ素多結晶の結晶面である請求項1に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、アンモニア水溶液又は有機強塩基水溶液である請求項1又は2に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 有機強塩基水溶液の有機強塩基が、水酸化テトラアルキルアンモニウム又は水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウムである請求項3に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 水酸化テトラアルキルアンモニウムが水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)であり、また、水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウムが水酸化トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)である請求項4に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、過酸化水素を含む過酸化水素含有アルカリ性洗浄液である請求項3〜5のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させてこのアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する前に、前記炭化ケイ素結晶面を、酸化剤含有希フッ酸洗浄液又は酸化性酸希釈液で洗浄して清浄化する請求項1〜6のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 吸着精製手段には、半導体基板を処理する基板処理手段において半導体基板の処理に用いられた使用後アルカリ性処理液を回収し、この回収された使用後アルカリ性処理液を吸着精製手段に供給し、この吸着精製手段で使用後アルカリ性処理液を精製し再生して得られた再生アルカリ性処理液を再び基板処理手段に供給する処理液循環手段が配設されている請求項1〜7のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTPO)キレート剤、又はそのエチレン基がプロピレン基に置換された1,2-プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(Methyl-EDTPO)キレート剤のいずれかを10〜300ppbの範囲で含有する請求項8に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 半導体基板が、シリコンデバイス用基板である請求項1〜9のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する複数の薄板状の吸着板をその炭化ケイ素結晶面が互いに所定の間隔を維持して相対面するように積層して形成された吸着板積層体であり、この吸着板積層体の吸着板間の隙間内にアルカリ性処理液を保持して或いは流してこのアルカリ性処理液を炭化ケイ素結晶面に接触させる請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する粒状の吸着剤が所定の間隙を形成しながら充填された吸着剤充填カラムであり、この吸着剤充填カラム内にアルカリ性処理液を流してこのアルカリ性処理液を炭化ケイ素結晶面に接触させる請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 半導体基板を処理するために用いられるアルカリ性処理液を精製し、このアルカリ性処理液中の金属不純物を除去する際に用いられる半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置であり、 前記アルカリ性処理液が接触する炭化ケイ素結晶面を有し、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する吸着精製手段を備えていることを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する複数の薄板状の吸着板をその炭化ケイ素結晶面が互いに所定の間隔を維持して相対面するように積層して形成された吸着板積層体である請求項13に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する粒状の吸着剤が所定の間隙を形成しながら充填された吸着剤充填カラムである請求項13に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段は、その炭化ケイ素結晶面の総面積(S)とこの炭化ケイ素結晶面間に存在するアルカリ性処理液の総体積(V)との比(S/V)が10〜130である請求項11〜13のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 吸着精製手段には、半導体基板を処理する基板処理手段において半導体基板の処理に用いられた使用後アルカリ性処理液を回収し、この回収された使用後アルカリ性処理液を吸着精製手段に供給し、この吸着精製手段で使用後アルカリ性処理液を精製して得られた再生アルカリ性処理液を再び基板処理手段に供給する処理液循環手段が配設されている請求項13〜16のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 処理液循環手段は、吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面における吸着精製性能が低下した際に、この炭化ケイ素結晶面を酸化剤含有希フッ酸洗浄液又は酸化性酸希釈液と接触させて清浄化する炭化ケイ素結晶面の清浄化手段を備えている請求項17に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 半導体基板を種々の目的で処理するために用いられる各種のアルカリ性処理液を、超高純度に、特にFe濃度をppq領域にまで精製することができ、また、化学的耐性及び機械的強度にも優れた吸着精製手段を使用する半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法及び精製装置を提供する。 半導体基板や半導体デバイス等の製造時に種々の目的で半導体基板を処理するためのアルカリ性処理液の精製手段であり、アルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させ、例えば両面がCVD炭化ケイ素面の吸着板積層体2の間隙に流して、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法及び精製装置である。20120726A16333全文3 半導体基板を処理するために用いられるアルカリ金属無添加のアルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させ、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去するアルカリ性処理液の精製方法であり、 前記炭化ケイ素結晶面が炭化ケイ素単結晶の(0001)結晶面、化学気相成長(CVD)法で形成された炭化ケイ素結晶群の粒の(111)結晶面、又はCVD法で形成された炭化ケイ素多結晶基板の結晶面であることを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 (削除) アルカリ性処理液が、アンモニア水溶液又は有機強塩基水溶液である請求項1又は2に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 有機強塩基水溶液の有機強塩基が、水酸化テトラアルキルアンモニウム又は水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウムである請求項3に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 水酸化テトラアルキルアンモニウムが水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)であり、また、水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウムが水酸化トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)である請求項4に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、過酸化水素を含む過酸化水素含有アルカリ性洗浄液である請求項3〜5のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させてこのアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する前に、前記炭化ケイ素結晶面を、酸化剤含有希フッ酸洗浄液又は酸化性酸希釈液で洗浄して清浄化する請求項1〜6のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 吸着精製手段には、半導体基板を処理する基板処理手段において半導体基板の処理に用いられた使用後アルカリ性処理液を回収し、この回収された使用後アルカリ性処理液を吸着精製手段に供給し、この吸着精製手段で使用後アルカリ性処理液を精製し再生して得られた再生アルカリ性処理液を再び基板処理手段に供給する処理液循環手段が配設されている請求項1〜7のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTPO)キレート剤、又はそのエチレン基がプロピレン基に置換された1,2−プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(Methyl−EDTPO)キレート剤のいずれかを10〜300ppbの範囲で含有する請求項8に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 半導体基板が、シリコンデバイス用基板である請求項1〜9のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する複数の薄板状の吸着板をその炭化ケイ素結晶面が互いに所定の間隔を維持して相対面するように積層して形成された吸着板積層体であり、この吸着板積層体の吸着板間の隙間内にアルカリ性処理液を保持して或いは流してこのアルカリ性処理液を炭化ケイ素結晶面に接触させる請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する粒状の吸着剤が所定の間隙を形成しながら充填された吸着剤充填カラムであり、この吸着剤充填カラム内にアルカリ性処理液を流してこのアルカリ性処理液を炭化ケイ素結晶面に接触させる請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 半導体基板を処理するために用いられるアルカリ金属無添加のアルカリ性処理液を精製し、このアルカリ性処理液中の金属不純物を除去する際に用いられる半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置であり、 前記アルカリ性処理液が接触する炭化ケイ素結晶面を有し、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する吸着精製手段を備えており、 前記炭化ケイ素結晶面が炭化ケイ素単結晶の(0001)結晶面、化学気相成長(CVD)法で形成された炭化ケイ素結晶群の粒の(111)結晶面、又はCVD法で形成された炭化ケイ素多結晶基板の結晶面であることを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する複数の薄板状の吸着板をその炭化ケイ素結晶面が互いに所定の間隔を維持して相対面するように積層して形成された吸着板積層体である請求項13に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する粒状の吸着剤が所定の間隙を形成しながら充填された吸着剤充填カラムである請求項13に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段は、その炭化ケイ素結晶面の総面積(S)とこの炭化ケイ素結晶面間に存在するアルカリ性処理液の総体積(V)との比(S/V)が10〜130である請求項13〜15のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 吸着精製手段には、半導体基板を処理する基板処理手段において半導体基板の処理に用いられた使用後アルカリ性処理液を回収し、この回収された使用後アルカリ性処理液を吸着精製手段に供給し、この吸着精製手段で使用後アルカリ性処理液を精製して得られた再生アルカリ性処理液を再び基板処理手段に供給する処理液循環手段が配設されている請求項13〜16のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 処理液循環手段は、吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面における吸着精製性能が低下した際に、この炭化ケイ素結晶面を酸化剤含有希フッ酸洗浄液又は酸化性酸希釈液と接触させて清浄化する炭化ケイ素結晶面の清浄化手段を備えている請求項17に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 20130419A16333全文3 半導体基板を処理するために用いられるアルカリ金属無添加のアルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させ、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去するアルカリ性処理液の精製方法であり、 前記炭化ケイ素結晶面が炭化ケイ素単結晶の(0001)結晶面、化学気相成長(CVD)法で形成された炭化ケイ素結晶群の各結晶が配向した(111)結晶面、又はCVD法で形成された炭化ケイ素多結晶基板の結晶面であることを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、アンモニア水溶液又は有機強塩基水溶液である請求項1に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 有機強塩基水溶液の有機強塩基が、水酸化テトラアルキルアンモニウム又は水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウムである請求項2に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 水酸化テトラアルキルアンモニウムが水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)であり、また、水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウムが水酸化トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)である請求項3に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、過酸化水素を含む過酸化水素含有アルカリ性洗浄液である請求項2〜4のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液を吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面に接触させてこのアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する前に、前記炭化ケイ素結晶面を、酸化剤含有希フッ酸洗浄液又は酸化性酸希釈液で洗浄して清浄化する請求項1〜5のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 吸着精製手段には、半導体基板を処理する基板処理手段において半導体基板の処理に用いられた使用後アルカリ性処理液を回収し、この回収された使用後アルカリ性処理液を吸着精製手段に供給し、この吸着精製手段で使用後アルカリ性処理液を精製し再生して得られた再生アルカリ性処理液を再び基板処理手段に供給する処理液循環手段が配設されている請求項1〜6のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 アルカリ性処理液が、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTPO)キレート剤、又はそのエチレン基がプロピレン基に置換された1,2-プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(Methyl-EDTPO)キレート剤のいずれかを10〜300ppbの範囲で含有する請求項7に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 半導体基板が、シリコンデバイス用基板である請求項1〜8のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する複数の薄板状の吸着板をその炭化ケイ素結晶面が互いに所定の間隔を維持して相対面するように積層して形成された吸着板積層体であり、この吸着板積層体の吸着板間の隙間内にアルカリ性処理液を保持して或いは流してこのアルカリ性処理液を炭化ケイ素結晶面に接触させる請求項1〜9のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する粒状の吸着剤が所定の間隙を形成しながら充填された吸着剤充填カラムであり、この吸着剤充填カラム内にアルカリ性処理液を流してこのアルカリ性処理液を炭化ケイ素結晶面に接触させる請求項1〜9のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製方法。 半導体基板を処理するために用いられるアルカリ金属無添加のアルカリ性処理液を精製し、このアルカリ性処理液中の金属不純物を除去する際に用いられる半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置であり、 前記アルカリ性処理液が接触する炭化ケイ素結晶面を有し、このアルカリ性処理液中に含まれる金属不純物を前記炭化ケイ素結晶面に吸着させて除去する吸着精製手段を備えており、 前記炭化ケイ素結晶面が炭化ケイ素単結晶の(0001)結晶面、化学気相成長(CVD)法で形成された炭化ケイ素結晶群の各結晶が配向した(111)結晶面、又はCVD法で形成された炭化ケイ素多結晶基板の結晶面であることを特徴とする半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する複数の薄板状の吸着板をその炭化ケイ素結晶面が互いに所定の間隔を維持して相対面するように積層して形成された吸着板積層体である請求項12に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段が、表面に炭化ケイ素結晶面を有する粒状の吸着剤が所定の間隙を形成しながら充填された吸着剤充填カラムである請求項12に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 炭化ケイ素結晶面を有する吸着精製手段は、その炭化ケイ素結晶面の総面積(S)とこの炭化ケイ素結晶面間に存在するアルカリ性処理液の総体積(V)との比(S/V)が10〜130である請求項12〜14のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 吸着精製手段には、半導体基板を処理する基板処理手段において半導体基板の処理に用いられた使用後アルカリ性処理液を回収し、この回収された使用後アルカリ性処理液を吸着精製手段に供給し、この吸着精製手段で使用後アルカリ性処理液を精製して得られた再生アルカリ性処理液を再び基板処理手段に供給する処理液循環手段が配設されている請求項12〜15のいずれかに記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。 処理液循環手段は、吸着精製手段の炭化ケイ素結晶面における吸着精製性能が低下した際に、この炭化ケイ素結晶面を酸化剤含有希フッ酸洗浄液又は酸化性酸希釈液と接触させて清浄化する炭化ケイ素結晶面の清浄化手段を備えている請求項16に記載の半導体基板用アルカリ性処理液の精製装置。A1633000153 従って、本発明の目的は、種々の目的で半導体基板を処理するために市販の高純度薬品で作られる高純度のアルカリ性処理液を更に精製し、このアルカリ性処理液中のFe濃度をppq領域にまで低減することができる半導体基板用アルカリ性処理液の精製手段を提供することにある。A1633000233 そして、精製対象のアルカリ性処理液において、特に使用量の多いものとしては、先ず、半導体デバイス製造時のポジレジスト膜現像工程で使用されるポジレジスト現像液用の有機強塩基水溶液を挙げることができ、具体的には、例えばTMAHに代表される水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液や、コリンに代表される水酸化トリメチルヒドロキシアルキルアンモニウム水溶液がある。また、VMOS用等のSiウェーハにおける異方性ウエットエッチングに使う強塩基の水溶液やエチレンジアミンのような弱塩基の水溶液も本発明の対象となる。更に、本発明の精製対象であって半導体基板や半導体デバイス等の製造時の洗浄工程等で用いられ、特にFe濃度についてppq領域のなるべく低いところまで高度の精製が望まれるものとして、半導体用クラスの高純度であって特にキレート作用を持つ分解阻止用有機不純物までも除去されている高純度過酸化水素水と、所謂半導体用クラス以上の清浄度を有する高純度アンモニア水とで調製された洗浄液(SC1)がある。更にまた、SC1とほぼ同じ工程で使われるが製造環境上の理由で用いられ、半導体用クラスの高純度で特にキレート作用のある分解阻止用有機不純物までも除去されている高純度過酸化水素水と、有機強塩基水溶液からなる洗浄液がある。また、太陽電池をSi単結晶ウェーハで製造する場合、表面反射率を下げるため、必ず微細ピラミット状のテクスチャを形成させるが、そのエッチングのために用いられる無機強塩基水溶液のKOH(約5%)等も対象になり得る。pn接合形成の際、処理液に鉄汚染対策がないとライフタイムが低下する可能性がある。A1633000443 2.アルカリ性処理液のFe汚染におけるEDTPOの影響 アルカリ性処理液のうちで過酸化水素が添加されたアルカリ過酸化水素洗浄液では、過酸化水素水中の残存する微量の分解阻止用キレート剤がFeのシリコン面や炭化ケイ素面への吸着を抑制する場合がある。高純度過酸化水素水と称するものでも、メーカーやロットによって、この種のキレート剤がごく微量入っていたり、入っていなかったり、また、入っていてもその物質が明らかではない。製造メーカー各社の最高純度過酸化水素水で調製したSC1のシリコン面に対するフロイントリヒ直線は、図5の太実線上下の細点線に挿まれた区域内、即ちかなり広い範囲にばらつく(洗浄条件は太実践の場合と同じ)。本発明者はCOPOにエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸キレート剤(EDTPO)の10ppbを添加することにより、高純度過酸化水素水の差にあまり影響されずに図5の細実線のフロイントリヒ直線を得た。EDTPOのようなホスホン酸キレート剤は、SC1やCOPOからシリコン面へのFe吸着を抑制する効果が極めて強い(非特許文献2及び非特許文献3を参照)。炭化ケイ素面でのこのような効果を検討するために、先ず両文献で本発明者が示したEDTPO1ppm添加のフロイントリヒ直線を図5に転載し、後者と同じ実験条件で新たに作成したCOPOでの100ppb添加における該直線を付記した。A1633000653 7.炭化ケイ素ウェーハによるFeの吸着精製実験(Fe吸着精製実験) 200mm径炭化ケイ素CVDダミーウェーハ(多結晶面)2枚を用い、これら2枚のウェーハの周縁部間に四フッ化エチレン樹脂 (PTFE)製シートから切り出した厚さ0.5mm×幅10mmのスペーサを挟み込んで固定し、また、上下にはスペーサの一部を切り取って形成された開口部を設け、両ウェーハ間のスリット間隙内にアルカリ性処理液の試験液を導入してウェーハ内面における吸着性能を調べるための試験用吸着板積層体を調製した。この試験用吸着板積層体を用い、先ず、過酸化水素入り希フッ酸でスリット間隙内を洗浄し、リンスした後に窒素ガスを流して乾燥し、次に、スリット間隙内に試験液(室温のCOPO洗浄液に所定量の放射性59Feを添加して調製したもの)を導入し、そのまま試験液を1分保持し、その後に排出させ、回収された試験液の放射能を測定し、試験液中に残存した放射性59Feの残存率を求めた。A1633000743 この実施例1の吸着板積層体について、上記の4wt%-コリン水溶液中に放射性59Feを添加して得られた放射性59Fe濃度100pptの試験液を用い、先のFe吸着精製実験の場合と同様の手順に従って、室温下でFe吸着精製実験を実施し、この試験液における放射性59Feの残存率を求めた。A1633000843 そして、この吸着板積層体洗浄領域12での吸着板積層体1の洗浄操作が終了した後、吸着板積層体1は、精製装置10の次の吸着板積層体乾燥領域13内に移送され、例えば高圧窒素ガス吹付け等の手段で乾燥させ、再生される。 このようにして再生された吸着板積層体1は、再び精製装置10の被精製液精製領域11において、被精製液Lqの吸着精製のために繰り返し利用される。A1633001043 以上に基づいて、図3に示す本発明の実験装置を具体的に説明する。 オーバーフローリンス(リンス用容器22、DHF処理用容器41等)を挟んでSPM処理用容器20とSC1処理用容器21とを並べて、乾燥は乾燥域から枚葉のスピンナに移して行った。2枚処理の被洗浄ウェーハ23の移動は前記した石英ガラス製チャック(図示せず)のハンドルによる手動である。SC1を含めて各容器での洗浄処理は一般的な操作で行なっており、本発明と直接の関係はないのでこのシーケンスの具体的な説明は省略する。炭化ケイ素による吸着精製を組み込んだSC1液循環系の根幹となる循環精製手段は、SC1処理用容器21の下方の弁を開いて被精製処理液(SC1液)の貯蔵容器24内に溜めたSC1液25を三方弁26経由で送液ポンプPにより、上記実施例3に準じて調製された第1の吸着剤充填カラム(以下、「第1のカラム」という。)27に毎分粒容積の半分乃至2/3の容量が流れる流速で通液し、三方弁28とパーティクル除去フィルターF経由で精製済処理液(SC1液)の貯蔵容器(加温機構付) 29に送り込む。洗浄に際しては、該容器29下方の弁を開いて容器29内の精製済処理液30を一気にウェーハのセットされたSC1処理用容器21に満し、所定時間洗浄後SC1処理用容器21下方の弁を開いてウェーハから汚染した液を一気に貯蔵容器24に戻す。SC1処理用容器21内の残液が略無くなったら、改めて精製済処理液の貯蔵容器(加温機構付)29から精製済処理液30を一気に流下させてSC1処理用容器21内を満たすという、SC1液の迅速置換によって投入SC1液の清浄度を十分に活かすことが出来る。ウェーハ面は超親水性になるのでこの置換時に面が乾燥することはない。なお、符号42は乾燥処理領域を示す。A1633001063 第1及び第2のカラム27の初期洗浄及びFe吸着面となる炭化ケイ素結晶面の再生洗浄は、洗浄液容器34に入った2wt%-過酸化水素・1wt%-フッ酸水溶液35を予め超純水洗浄した第1のカラム27に弁36、26経由で送液し、弁28,31から排液排気用配管38で排液する。その後のリンス用超純水は、前記カラム洗浄水同様、リンス用超純水供給管39から弁操作で第1のカラム27に送り、排液管38で排水する。その後の第1のカラム27内の乾燥は窒素ガス供給管40から弁操作で窒素ガスをカラムに送り排気管38で排気する。第2のカラム27の洗浄液は弁37,33経由で送液し、その他の操作は第1のカラム27関連の操作に準じる。A1633001093 先に記載した59Fe汚染の疎面化酸化ウェーハ2枚を上記に従い本実験機で洗浄した。即ち、130℃10分のSPM洗浄後、室温の2%-DHFで10分洗浄し、先ずこの段階でFe濃度は(1〜2)×108atoms/cm2となった。その後炭化ケイ素吸着精製機構で推定Fe濃度300ppqに精製された30ppb-EDTPO添加SC1のSC1処理用容器21で、標準的条件によるSC1洗浄を行なった。洗浄ウェーハの放射能測定結果では、目的とする酸化ウェーハのFe清浄化は6×108atoms/cm2が得られ目標に到達した。