タイトル: | 再公表特許(A1)_メタノールの分離方法 |
出願番号: | 2011067666 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07C 29/76,C07C 31/04,C07C 67/03,C07C 69/54,B01D 71/02,B01D 61/36 |
加門 良啓 喜多 英敏 JP WO2012018007 20120209 JP2011067666 20110802 メタノールの分離方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 国立大学法人山口大学 304020177 宮崎 昭夫 100123788 石橋 政幸 100106138 緒方 雅昭 100127454 加門 良啓 喜多 英敏 JP 2010174092 20100803 C07C 29/76 20060101AFI20130906BHJP C07C 31/04 20060101ALI20130906BHJP C07C 67/03 20060101ALI20130906BHJP C07C 69/54 20060101ALI20130906BHJP B01D 71/02 20060101ALI20130906BHJP B01D 61/36 20060101ALI20130906BHJP JPC07C29/76C07C31/04C07C67/03C07C69/54 ZB01D71/02B01D61/36 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20131003 2011536645 25 4D006 4H006 4D006GA25 4D006HA28 4D006MA02 4D006MA09 4D006MB06 4D006MC03X 4D006NA45 4D006NA49 4D006NA50 4D006NA64 4D006PA01 4D006PB13 4D006PB32 4H006AA02 4H006AC48 4H006AD17 4H006BA10 4H006BA32 4H006DA15 4H006DA25 4H006FE11 4H006KA03 4H006KC14 本発明は、メタノールを効率よく分離する方法に関する。 工業的に生産されるエステルは多くの用途に使用されている。例えば、フタル酸エステルは可塑剤として、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルはポリマーを製造するためのモノマーとして使用され、得られたポリマーは成形材料、塗料、接着剤などとして使用されている。また、テレフタル酸ジメチルはポリエステルの製造原料として使用されている。この他、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、イソ吉草酸エステル、カプロン酸エステル、カプリル酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、桂皮酸エステル、サリチル酸エステルは合成香料として使用されている。なお、以後、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルをあわせて(メタ)アクリル酸メチルと呼ぶこともある。 一般に、炭素数4以上の1価アルコールのエステルは、メチルエステルとのエステル交換反応によって製造されている。なお、以後、炭素数2以上のアルコールを高級アルコール、炭素数2以上のアルコールのエステルを高級エステルと呼ぶこともある。 カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸ハライドなどのカルボン酸誘導体を原料としたエステルの製造方法に対し、メチルエステルを原料とするエステル交換反応の長所としては、原料であるメチルエステルと高級アルコールが、高濃度のものを入手しやすく、取扱いも容易である点、副生成物がメタノールだけである点が挙げられる。エステル交換反応は平衡反応であり、効率よく高級エステルを得るために、通常、メチルエステル、あるいは高級アルコールが過剰モル使用される。メチルエステルが高級アルコールに対し過剰モル使用される場合もあるが、メチルエステルの沸点が高級アルコールより高い場合や、メチルエステルが高級アルコールより貴重な場合などは、高級アルコールがメチルエステルに対し、過剰モル使用される場合が多い。したがって反応終了時の反応液は、反応副生成物であるメタノール、未反応の高級アルコールおよび反応生成物である高級エステルの混合物となる。このうち、反応生成物である高級エステルは、メタノール、高級アルコールとの沸点差が大きいので、蒸留による分離が比較的容易であり、高級エステルを除いたメタノールと高級アルコールの混合物を得ることができる。 メチルエステルを原料としたエステル交換反応の平衡を、より多くの高級エステルが得られるように傾けるために、反応液を加熱し、メタノールの沸点である64.7℃(大気圧下)以上の温度とすることで、生成するメタノールを蒸発させて反応液から除くことが行なわれることもある。高級アルコールがメチルエステルに対し、過剰モル使用される場合、反応初期の反応液の組成は、メタノールが少なく、高級アルコールが多いため、メタノールを蒸発させようとすれば、メタノールと高級アルコールの混合物の蒸気が得られる。 また、メタノールと共沸混合物を形成するメチルエステルが原料である場合、反応液を加熱すれば、メタノールと高級アルコールとメチルエステルとの混合物の蒸気が得られる。このような共沸混合物を形成するメチルエステルを表1に示す(非特許文献1)。 メタノールと高級アルコールとの混合物、あるいはメタノールと高級アルコールとメチルエステルとの混合物から、高級アルコールを高濃度で分離して回収することができれば、エステル交換反応の原料として再利用することができる。また、メタノールを高濃度で回収することができれば、別の用途にメタノールを利用することも可能である。この場合、回収された成分に含まれる、他の成分の濃度は、可能な限り低いことが望ましい。 メタノールと高級アルコールの分離には、通常蒸留が用いられている。しかし、蒸留は熱エネルギーを非常に多く消費するプロセスである。さらに、高級アルコールの沸点がメタノールの沸点と近い場合に、メタノールと高級アルコールをそれぞれ高濃度で得ようとすれば、多段蒸留塔による精密な分離が必要となり、いっそう多くの熱エネルギーを消費することになる。 なお、メタノールと高級アルコールと、メタノールと共沸混合物を形成するメチルエステルとの混合物を通常の蒸留によりそれぞれの成分に分離しようとすると、共沸混合物を形成するため、メタノールとメチルエステルを共沸組成以上に分離することはできず、高濃度のメタノールを得ることはできない。 蒸留以外の方法として、メタノールと高級アルコールの分離に、溶剤の添加による抽出が用いられることがある。溶剤として、水を用いればメタノールのみを水に溶解させることができ、ヘキサンなどの非極性溶媒を用いれば高級アルコールのみを非極性溶媒に溶解させることができる。しかし、非極性溶媒を用いた場合に高純度の高級アルコールを得ようとすれば、非極性溶媒と高級アルコールを何らかの方法により分離しなければならず、プロセスが複雑化する。また、水を用いる場合は、水に大きな溶解性を示す高級アルコールとメタノールの分離は困難である。 一方、最近、混合物、特に共沸混合物の分離に膜を用いる分離方法が提案されている。膜を用いる分離は、蒸留のみによる分離と比較して、熱エネルギーの消費量の点で優れている。分離に使用する膜としては、有機系のポリビニルアルコール膜、ポリイミド膜や無機系のゼオライト膜がある。有機系の膜は、無機系の膜と比較して生産性の点で優れ、無機系の膜は、分離性、耐熱性、耐薬品性の点で優れている。 混合物の分離に膜を用いる分離方法としては、例えば、耐薬品性を有する特殊なポリイミド中空糸膜を用いて、エタノールとメタクリル酸メチルを原料とするエステル交換反応で得られる混合物の蒸気、あるいは1−ブタノールと(メタ)アクリル酸メチルを原料とするエステル交換反応で得られる混合物の蒸気からメタノールを選択的に分離する方法が提案されている(特許文献1)。 この方法によれば、メタノールと(メタ)アクリル酸メチルの共沸組成より高濃度のメタノールを得ることができる。しかし、原料の組成は、(メタ)アクリル酸メチルが過剰であり、高級アルコールが過剰でメタノールと炭素数4以上の1価アルコールからなる混合物の蒸気が発生する組成については記載されていない。 一方、無機系の膜では、FAU型の結晶構造を持つX型ゼオライト膜、Y型ゼオライト膜を用いて、共沸混合物である水とエタノール、エタノールとシクロヘキサン、エタノールとベンゼン、メタノールとベンゼン、メタノールとメチル−t−ブチルエーテルを分離する方法が提案されている(特許文献2、3)。 この方法によれば、例示された共沸混合物中から水、メタノール、あるいはエタノールを比較的高濃度で効率よく分離することができる。しかし、分離の対象となる混合物として例示されているものは、水/アルコール系溶剤、アルコール系溶剤/炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤/エーテル系溶剤の混合物であり、メタノールと炭素数4以上の1価アルコールとからなる混合物は記載されていない。 また、Y型ゼオライト膜を用いて、共沸混合物であるメタノールと酢酸メチルを分離する方法が提案されている(特許文献4)。 この方法によれば、多段蒸留塔より少ない熱エネルギーで、共沸組成より高濃度のメタノールと酢酸メチルとを得ることができる。しかし、分離の対象となる混合物として例示されているものには、メタノールと炭素数4以上の1価アルコールからなる混合物は記載されていない。特開2007−63171号公報特開平10−212117号公報特開平8−257301号公報特開2006−306762号公報Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry A16巻 「Methanol」、VCH、1990年、pp465−486 本発明は、メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物から、高濃度のメタノールを効率よく分離することを目的とする。 すなわち、本発明は、メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離する方法である。 また本発明は、炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとの間でエステル交換反応を行い、得られた反応液から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離する方法である。 さらに本発明は、炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとの間でエステル交換反応を行い、得られた反応液から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離するエステル交換物の製造方法である。 本発明によれば、メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物から、高濃度のメタノールを効率よく分離することができる。ゼオライト膜の分離性能を評価するための装置の一例を示す概略図である。 本発明で使用される膜としては、分離性、耐熱性、耐薬品性の観点からFAU型の結晶構造を持つゼオライト膜、すなわちX型ゼオライト膜、Y型ゼオライト膜を用いる。製膜の容易さを考慮すれば、Y型ゼオライト膜が好ましい。 X型ゼオライト膜、Y型ゼオライト膜は、無機化合物を成分とする多孔質管状支持体の表面にNaX型ゼオライト結晶、NaY型ゼオライト結晶を析出させることで製膜することができる。多孔質管状支持体の成分である無機化合物としては、膜の分離性能を考慮すれば、α−アルミナ、ムライト、ステンレスが好ましい。多孔質管状支持体の表面にゼオライト結晶を析出させるには、支持体表面にゼオライトの種結晶を塗布し、アルミノシリケートゲルに浸漬して加熱することが好ましい。加熱する方法としては高温高圧の熱水を用いる方法、いわゆる水熱合成法が好ましい。 水熱合成法では、オイルなどの熱媒、熱風、マイクロ波等によって加熱することができる。ゼオライトの結晶化速度を考慮すると、温度は100〜140℃が好ましく、加熱する時間は、X型ゼオライト膜の場合は3〜27時間が好ましく、Y型ゼオライト膜の場合は2〜6時間が好ましい。Y型ゼオライト膜で透過性能の優れた膜を得るには、温度を一定とするよりも、温度を120〜140℃で1〜2時間加熱し、次に温度を100℃以上120℃未満として1〜4時間加熱することが好ましい。なお、マイクロ波を用いて加熱する場合、周波数としては家庭用電子レンジで利用できる2450MHzが好ましい。 メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物から効率よくメタノールを分離するためには、X型ゼオライト膜の場合、アルミノシリケートゲルのシリカ/アルミナのモル比が2〜10であることが好ましい。アルミナシリケートゲルを構成するシリカ、アルミナ以外の成分としては酸化ナトリウムと水が挙げられる。それら酸化ナトリウム/シリカの組成モル比は1〜3であることが好ましく、水/酸化ナトリウムのモル比は20〜50であることが好ましい。Y型ゼオライト膜の場合、アルミノシリケートゲルのシリカ/アルミナのモル比が20以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましい。シリカ/アルミナのモル比の上限は50以下であることが好ましい。アルミナシリケートゲルを構成するシリカ、アルミナ以外の成分としては酸化ナトリウムと水が挙げられる。酸化ナトリウム/シリカのモル比は0.6〜1.2であることが好ましく、水/酸化ナトリウムのモル比は40〜100であることが好ましい。 また、X型ゼオライト膜の場合はアルミノシリケートゲルのエージングの必要はなく、Y型ゼオライト膜の場合はアルミノシリケートゲルのエージングは20〜40℃で15〜21時間であることが好ましい。 このようにして得られたY型ゼオライト膜は、膜を構成するゼオライトのケイ素/アルミニウムのモル比が2.5以上となり、高い分離性能と高い透過流束とを有する膜が得られる。Y型ゼオライト膜を構成するゼオライトのケイ素/アルミニウムのモル比が2.7以上であることが好ましい。Y型ゼオライト膜を構成するゼオライトのケイ素/アルミニウムのモル比が4.0以下であると、アルミノシリケートゲル中で損失するケイ素分の増大を抑制することができて、ピンホールなどの欠陥を生じることなくY型ゼオライト膜を製造することができて好ましい。メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物からメタノールを分離する際には、メタノール濃度10質量%、1−ブタノール濃度90質量%の混合物を供給液とし、温度60℃、減圧度0.1kPa以下を保つように浸透気化分離した際の、透過液のメタノール濃度が95質量%以上、透過流束が0.6[kg/(m2・h)]以上となるY型ゼオライト膜を用いることが好ましい。 本発明で分離の対象となるメタノールとの混合物の成分である、炭素数4以上の1価アルコールとしては、特に制限はないが、例えば、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブチルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブチルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(t−ブチルアルコール)、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、メタリルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール)、2−メチル−2−ブタノール(t−アミルアルコール)、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−ペンテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3−ペンテン−2−オール、4−ペンテン−2−オール、1−ペンテン−3−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−オクタデカノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、2−エトキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノールなどが挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。中でも、メタノールと比較的沸点が近く、単純な蒸留による分離が困難な点で、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブチルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブチルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(t−ブチルアルコール)、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、メタリルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール(t−アミルアルコール)、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、4−ペンテン−2−オール、1−ペンテン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、又は2−メチル−3−ブテン−2−オールが好ましい。炭素数2のアルコールであるエタノールや炭素数3のアルコールである1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、アリルアルコールなどは、炭素数4以上の1価アルコールと比較して、ゼオライト膜による分離の選択性、透過流束が低い傾向がある。 本発明で使用されるメタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとの混合物の組成は、特に限定されないが、温度40℃以上で90質量%以上の高濃度のメタノールを得るためには混合物のメタノール濃度が5質量%以上であることが好ましい。 メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとの混合物には、さらに炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルを含んでいても膜分離を行うことができる。炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとしては、特に制限はないが、例えば、プロピオン酸メチル、(メタ)アクリル酸メチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、イソ吉草酸メチル、カプロン酸メチル、カプリル酸メチル、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、桂皮酸メチル、サリチル酸メチル、テレフタル酸ジメチルなどが挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。 中でも、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとしては、プロピオン酸メチル又は(メタ)アクリル酸メチルであることが、メタノールと共沸混合物を形成して蒸留による分離が困難であり、特に膜分離が有効である観点から好ましい。炭素数2以下のカルボン酸から誘導されるメチルエステル、例えば、ぎ酸メチル、酢酸メチルは、炭素数3以上のカルボン酸より誘導されるメチルエステルと比較して、ゼオライト膜による分離の選択性が低い傾向がある。 メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとの混合物には、さらに炭素数3以上のカルボン酸及び炭素数4以上の1価アルコールから誘導されるエステルを含んでいても膜分離を行うことができる。このようなメタノールと炭素数4以上の1価アルコールなどを含む混合物は、エステル交換反応で得ることができる。 炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとに触媒を添加してエステル交換反応させることで、原料である炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステル、触媒に加えて、生成物であるメタノールと、炭素数3以上のカルボン酸及び炭素数4以上の1価アルコールから誘導されるエステルも含む混合物である反応液が得られる。 エステル交換反応に用いることができる触媒は、特に制限はないが、チタニウムテトラアルコキシド、ジアルキルスズオキシドなどの金属錯体触媒や酸化カルシウムなどの塩基性触媒が好ましい。硫酸やパラトルエンスルホン酸などの酸性触媒は、ゼオライト膜と接触すると膜を溶解する場合がある。 (メタ)アクリル酸エステルを製造するエステル交換反応では、(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止するために、重合防止剤を使用することが好ましい。重合防止剤としては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシラジカル系化合物、p−メトキシフェノールなどのフェノール系化合物、ハイドロキノンなどのキノン系化合物、フェノチアジンなどのアミン系化合物を挙げることができる。これらは、それぞれ単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。 メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物のFAU型の結晶構造を持つゼオライト膜による分離では、メタノールが選択的に透過され、炭素数4以上の1価アルコールはほとんど透過されない。蒸気の状態で透過された場合の高濃度メタノールは冷却して液体の状態にすることが好ましい。 本発明におけるメタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物をFAU型の結晶構造を持つゼオライト膜により分離する方法としては、液体の状態(浸透気化法)、又は蒸気の状態(蒸気透過法)で分離する方法を挙げることができる。装置をコンパクト化できる点では浸透気化法が好ましく、相変化を伴わず熱エネルギーの消費を低減できる点では蒸気透過法が好ましい。蒸気透過法の場合には、蒸留と組み合わせて使用することが、分離の選択性、熱エネルギーの消費を低減する点から好ましい。 メタノールの効率的な膜分離を実現するために、膜に対する透過側と供給側でメタノールの濃度差を設けることが好ましい。濃度差を設ける具体的な手段としては、透過側と供給側で大きな差圧をつけるか、あるいは透過側にメタノールが滞留しないようにメタノール以外の気体を流すことが挙げられる。大きな差圧をつけるためには、供給側を加圧するか、あるいは透過側を減圧にしなければならない。実現の容易さと透過性を考慮すれば、供給側の圧力は50〜470kPa、透過側の圧力は0.5kPa以下が好ましく、供給側の圧力は大気圧、透過の圧力側は0.1kPa以下がより好ましい。透過側にメタノールが滞留しないように流すメタノール以外の気体としては、メタノールと反応せず不活性で、入手の容易なことを考慮すれば、空気、窒素、アルゴンが好ましい。 分離における供給側の混合物の温度は、実現の容易さを考慮すれば0〜200℃が好ましく、メタノールの透過量を考慮すれば、30〜180℃が好ましく、膜分離の選択性と消費する熱エネルギーを考慮すれば、50〜150℃がより好ましい。蒸気透過法により、混合物を蒸気の状態で供給する場合には、メタノールの透過量を多くするために、膜分離の前に蒸気を過熱して供給することもできる。 以上のように、本発明の分離方法によれば、メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールを含む混合物からメタノールを効率よく分離することができる。また、本発明のエステル交換物の製造方法によれば、得られた反応液からメタノールを効率よく分離することができるため、効率よくエステル交換物を得ることができる。 以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。 <FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜の製造> (製造例1) ゼオライト膜は機械強度に欠けるため、多孔質管状支持体上に膜を析出させることで調製した。NaY型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製、商品名:HSZ−320NAA)に同じ質量の水を加えてペースト状にしたものを多孔質ムライト支持体(株式会社ニッカトー製、商品名:PMチューブ、外径12mm、内径9mm、平均細孔径1.3μm、気孔率45%、全長100mm)の表面に、ゼオライト粉末が析出するまで指で塗布した。 アルミン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製一級)2.598g、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製特級)12.688g、水ガラス(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)80g、蒸留水211.7gを混合した。このとき、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=25/1/22/990(モル比)となった。その混合液を室温で4時間撹拌し、30℃で17時間エージングすることでアルミノシリケートゲル307gを得た。 容量0.5Lのオートクレーブ中にアルミノシリケートゲルを仕込み、前述のゼオライト粉末を塗布した支持体を浸漬した。オートクレーブを密閉して100℃で6時間水熱合成した。水熱合成終了後、作製したY型ゼオライト膜(Y型−1)を水洗し、乾燥して、X線解析装置(株式会社島津製作所製XRD−6100)を用いて、光源:Cu−Kα、測定点間隔:0.1度、測定範囲:5〜45度にてX線回折スペクトルを測定し、NaY型ゼオライト結晶のピークが出現していることを確認した。 なお、多孔質支持体上に形成されたY型ゼオライト膜の有効膜面積は、全長100mmの多孔質ムライト支持体のうち、長さ50mmの部分が露出していたことから1.20×3.14×5.00=18.84cm2であった。 別途、同一条件にてゼオライト膜を形成し、そのゼオライト膜についてSEM/EDS(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM6060A/日本電子株式会社製ミニカップ型EDS検出器付き)を用いて加速電圧:20kV、スポットサイズ(フィラメント電流):60mA、測定時間:300秒、作動距離:10mmにて測定した結果、ケイ素/アルミニウムのモル比は2.5であった。 (製造例2) オートクレーブ中にアルミノシリケートゲルを仕込み、ゼオライト粉末を塗布した支持体を浸漬し、オートクレーブを密閉して100℃で6時間水熱合成する処理から、パイレックス(登録商標)容器内にアルミノシリケートゲルを仕込み、ゼオライト粉末を塗布した支持体を浸漬し、マイクロ波反応装置(四国計測工業株式会社製、マイクロ波周波数2450±50MHz、出力1kW)を用いてパイレックス(登録商標)容器にマイクロ波を連続的に照射して容器内の温度を100℃にし、以後はマイクロ波を間欠的に照射することで100℃を4時間保つ処理に替えたこと以外は、製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−2)を作製した。 (製造例3) アルミノシリケートゲルとして、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=25/1/22/990(モル比)となるように混合液を調製する処理から、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=40/1/22/990(モル比)となるように混合液を調製する処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−3)を作製した。 別途、同一条件にてゼオライト膜を形成し、そのゼオライト膜についてSEM/EDS(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM6060A/日本電子株式会社製ミニカップ型EDS検出器付き)を用いて製造例1と同じ条件にて測定した結果、ケイ素/アルミニウムのモル比は2.7であった。 (製造例4) オートクレーブを密閉して100℃で6時間水熱合成する処理から、オートクレーブを密閉して130℃で1時間、100℃で3.5時間水熱合成するする処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−4)を作製した。 (製造例5) パイレックス(登録商標)容器にマイクロ波を連続的に照射して容器内の温度を100℃にし、以後はマイクロ波を間欠的に照射することで100℃を4時間保つ処理から、容器にマイクロ波を連続的に照射して容器内の温度を130℃にし、以後はマイクロ波を間欠的に照射することで130℃を1時間、100℃を2時間保つ処理に替えたこと以外は、製造例2と同様にY型ゼオライト膜(Y型−5)を作製した。 (製造例6) 多孔質管状支持体を、多孔質ムライト支持体から、75℃で16時間硝酸処理した多孔質ステンレス支持体(マイクロフィルター株式会社製、外径10mm、内径8.3mm、平均細孔径1.0μm、気孔率30%、全長100mm)に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−6)を作製した。有効膜面積は(支持体の直径)×(円周率)×(露出部分の長さ)=1.00×3.14×5.00=15.70cm2であった。 (製造例7) アルミノシリケートゲルとして、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=25/1/22/990(モル比)となるように混合液を調製する処理から、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=15/1/13.5/990(モル比)となるように混合液を調製する処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−7)を作製した。 別途、同一条件にてゼオライト膜を形成し、そのゼオライト膜についてSEM/EDS(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM6060A/日本電子株式会社製ミニカップ型EDS検出器付き)を用いて製造例1と同じ条件にて測定した結果、ケイ素/アルミニウムのモル比は2.3であった。 (製造例8) アルミノシリケートゲルとして、30℃で17時間エージングをする処理から、30℃で12時間エージングをする処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−8)を作製した。 (製造例9) アルミノシリケートゲルとして、30℃で17時間エージングをする処理から、30℃で24時間エージングをする処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−9)を作製した。 (製造例10) オートクレーブを密閉して100℃で6時間水熱合成する処理から、オートクレーブを密閉して100℃で3時間、150℃で1.5時間水熱合成する処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−10)を作製した。 (製造例11) アルミノシリケートゲルとして、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=25/1/22/990(モル比)となるように混合液を調製する処理から、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=10/1/14/800(モル比)となるように混合液を調製する処理に替え、エージング時間を12時間とし、オートクレーブを密閉して100℃で6時間水熱合成する処理から、オートクレーブを密閉して90℃で5時間水熱合成する処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−11)を作製した。 (製造例12) NaX型ゼオライト粉末(シグマアルドリッチジャパン株式会社製モレキュラーシーブス13X粉末)に同じ質量の水を加えてペースト状にしたものを、多孔質ムライト支持体の表面に、ゼオライト粉末が析出するまで指で塗布した。シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=3.6/1/5.04/252(モル比)となるように混合液を調製し、その混合液を室温で4時間撹拌することでアルミノシリケートゲルを得た。 容量0.5Lのオートクレーブ中にアルミノシリケートゲルを仕込み、前述のゼオライト粉末を塗布した支持体を浸漬した。オートクレーブを密閉して100℃で24時間水熱合成した。水熱合成終了後、作製したX型ゼオライト膜(X型−1)を水洗し、乾燥して、X線解析装置(株式会社島津製作所製XRD−6100)を用いて、光源:Cu−Kα、測定点間隔:0.1度、測定範囲:5〜45度にてX線回折スペクトルを測定し、NaX型ゼオライト結晶のピークが出現していることを確認した。 (製造例13) アルミノシリケートゲルとして、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=25/1/22/990(モル比)となるように混合液を調製する処理から、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム/水=30/1/25/990(モル比)となるように混合液を調製する処理に替えたこと以外は製造例1と同様にY型ゼオライト膜(Y型−12)を作製した。 別途、同一条件にてゼオライト膜を形成し、そのゼオライト膜についてSEM/EDS(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM6060A/日本電子株式会社製ミニカップ型EDS検出器付き)を用いて製造例1と同じ条件にて測定した結果、ケイ素/アルミニウムのモル比は2.5であった。 <分離性能の測定> (実施例1) 以上のようにして作製したゼオライト膜のうち、多孔質支持体上に調製したものの浸透気化による分離性能を測定した。Y型ゼオライト膜を図1に示す装置に取り付けた。具体的に説明すると、恒温水槽(1)の内部に容量0.3Lの供給液用容器(2)を設置し、供給液用容器(2)の中の供給液の温度を一定に保つようにした。供給液として、メタノールと1−ブタノールの混合物0.25Lを満たした。供給液の温度が高く、蒸発量が多い場合には、供給液用容器(2)にジムロート冷却管を取り付けて、供給液の揮発を抑制した。供給液にY型ゼオライト膜(3)を浸漬し、その片末端を封止し、残りの末端をシリコーンチューブ(4)を介してガラス減圧ライン(5)に接続した。ガラス減圧ライン(5)は切替え用コック(6)で枝分かれし、それぞれのラインをトラップ管(7)を経由して真空ポンプ(9)に連結した。装置内を減圧にすることで供給液の成分がY型ゼオライト膜(3)を蒸気の形態で透過するようにし、透過した蒸気を、デュワー瓶(8)に満たした液体窒素により冷却して、トラップ管(7)で捕集した。0.5時間経過ごとに切替え用コック(6)を操作することでトラップ管(7)に捕集した液体(透過液)の質量と組成を測定した。測定後、透過液を供給液に加え、供給液の質量と組成が変化しないようにした。透過液の質量と組成が安定し、3回連続してほとんど変化がなくなった時点で測定を終了し、その平均を透過物質量(kg)とメタノール濃度(質量%)として求めた。通常は、透過を開始して1〜1.5時間経過すると、透過液の質量と組成は安定し、2.5〜3時間経過した時点で測定を終了した。なお、多孔質支持体上に形成されたY型ゼオライト膜(3)の有効膜面積は、全長100mmの多孔質ムライト支持体のうち、長さ50mmの部分が露出していたことから18.84cm2であった。 測定中の装置の減圧度は0.1kPa以下を保つようにした。また、透過液の組成はガスクロマトグラフにより測定した。 ゼオライト膜の透過性能は、透過液中に含まれるメタノールの濃度と、次の式で示される分離係数α、α=[Y/(100−Y)]/[X/(100−X)] X:供給液のメタノールの濃度(質量%) 100−X:供給液のメタノール以外の成分の濃度(質量%) Y:透過液のメタノールの濃度(質量%) 100−Y:透過液のメタノール以外の成分の濃度(質量%) 透過流束Q[kg/(m2・h)]、Q=w/(A×t) w:透過物質量(kg) A:有効膜面積(m2) t:透過時間(h) で評価した。 メタノール(関東化学株式会社製特級)と1−ブタノール(関東化学株式会社製特級)から、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物である供給液を調製し、製造例1で作製したゼオライト膜(Y型−1)を浸漬して、温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液メタノール濃度は95.70質量%、分離係数αは210、透過流束Qは0.60kg/(m2・h)となった。結果を表2に示す。なお、浸透気化分離実験におけるゼオライト膜の有効膜面積は18.84cm2であった。 (実施例2〜19) 供給液のメタノール濃度やゼオライト膜を表2及び表3に示すように替えたこと以外は、実施例1と同様にゼオライト膜によるメタノール/1−ブタノール混合物の浸透気化分離実験を行った。実施例の結果を表2及び表3に示す。なお、浸透気化分離実験におけるゼオライト膜の有効膜面積は18.84cm2であり、製造例6で作成したゼオライト膜(Y型−6)のみ有効膜面積は15.70cm2であった。 (実施例20) 供給液を、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物から、メタノール濃度9.32質量%のメタノール/2−ブタノール(sec−ブチルアルコール、関東化学株式会社製)混合物に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液メタノール濃度は93.00質量%、分離係数αは130、透過流束Qは0.80kg/(m2・h)となった。 (実施例21) 供給液を、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物から、メタノール濃度9.83質量%のメタノール/2−メチル−1−プロパノール(イソブチルアルコール、関東化学株式会社製特級)混合物に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液メタノール濃度は93.29質量%、分離係数αは130、透過流束Qは0.74kg/(m2・h)となった。 (実施例22) 供給液を、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物から、メタノール濃度9.04質量%のメタノール/2−メチル−2−プロパノール(t−ブチルアルコール、関東化学株式会社製鹿特級)混合物に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液メタノール濃度は97.40質量%、分離係数αは380、透過流束Qは0.76kg/(m2・h)となった。 (実施例23) 供給液を、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物から、質量比がメタノール/1−ブタノール/メタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製アクリエステルM)=13.27/36.07/50.66の混合物に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液の質量比はメタノール/1−ブタノール/メタクリル酸メチル=97.69/1.50/0.81、透過流束Qは2.03kg/(m2・h)となった。 (実施例24) 供給液を、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物から、質量比がメタノール/1−ブタノール/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル(三菱レイヨン株式会社製アクリエステルB)=10.03/20.09/29.83/40.05の混合物に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液の質量比はメタノール/1−ブタノール/メタクリル酸メチル=98.00/1.37/0.63%、透過流束Qは1.69kg/(m2・h)となった。 (実施例25) 図1の供給液用容器(2)を容積0.1Lのものに替え、供給液用容器(2)に、1−ブタノール0.0371kg、メタクリル酸メチル0.0501kg、チタニウムテトラ−n−ブトキシド(関東化学株式会社製)0.00085kg、p−メトキシフェノール(関東化学株式会社製鹿特級)0.00007kgを仕込み、均一になるまで撹拌した。この液にゼオライト膜(Y型−1)を浸漬して、ガラス真空ライン(5)に接続した。恒温水槽(1)により供給液の温度を80℃で一定に保つようにし、80℃になった時点から装置内の減圧を開始した。以後は実施例1と同様に装置を操作して、0.5時間経過ごとに切替えながらトラップ管(7)で透過液を捕集した。6時間経過後、それまでに捕集した透過液を全て合わせたものの質量は0.0170kgであり、質量比はメタノール/1−ブタノール/メタクリル酸メチル=94.12/3.97/1.91質量%となった。6時間経過後の残液の質量は0.0711kgで、質量比は1−ブタノール/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル=0.42/1.39/98.19であり、仕込んだ1−ブタノールを基準とするメタクリル酸ブチルの収率は97.4%だった。 (比較例1) Y型ゼオライト膜を、市販されているA型ゼオライト膜(三井造船株式会社製、外径12mm、全長100mm、露出部分長さ50mm、有効膜面積18.84cm2)に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。しかしながら、透過を開始して3時間が経過しても透過液は留出しなかった。 (比較例2) Y型ゼオライト膜を、市販されているT型ゼオライト膜(三井造船株式会社製、外径12mm、全長100mm、露出部分長さ50mm、有効膜面積18.84cm2)に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。しかしながら、透過を開始して3時間が経過しても透過液は留出しなかった。 (比較例3) 供給液を、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物から、メタノール濃度9.44質量%のメタノール/1−プロパノール(関東化学株式会社製特級)混合物に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液メタノール濃度は69.40質量%、分離係数αは20、透過流束Qは0.19kg/(m2・h)となった。 (比較例4) 供給液を、メタノール濃度9.80質量%のメタノール/1−ブタノール混合物から、メタノール濃度9.61質量%のメタノール/2−プロパノール(イソプロピルアルコール、関東化学株式会社製特級)混合物に替えたこと以外は実施例1と同様に温度60℃で浸透気化分離実験を行った。透過液の質量と組成が安定したとき、透過液メタノール濃度は77.10質量%、分離係数αは30、透過流束Qは0.25kg/(m2・h)となった。 本発明の分離方法によれば、メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとの混合物を効率よく分離することができ、例えば、エステル交換反応において高濃度で原料を回収し、再利用することができる。1 恒温水槽2 供給液用容器3 Y型ゼオライト膜4 シリコーンチューブ5 ガラス減圧ライン6 切替え用コック7 トラップ管8 デュワー瓶9 真空ポンプ メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離する方法。 混合物が、さらに炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルを含む混合物である請求項1に記載の方法。 混合物が、さらに炭素数3以上のカルボン酸及び炭素数4以上の1価アルコールから誘導されるエステルを含む混合物である請求項2に記載の方法。 炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとの間でエステル交換反応を行い、得られた反応液から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離する方法。 炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルが、プロピオン酸メチル、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルである請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。 浸透気化法で分離する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 ゼオライト膜がY型ゼオライト膜である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 ゼオライト膜がY型ゼオライト膜であり、Y型ゼオライト膜を構成するゼオライトのケイ素/アルミニウムのモル比が2.5以上4.0以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 ゼオライト膜が、メタノール濃度10質量%、1−ブタノール濃度90質量%の混合物を供給液とし、温度60℃、減圧度0.1kPa以下を保つように浸透気化分離した際の、透過液のメタノール濃度が95質量%以上、透過流束が0.6[kg/(m2・h)]以上となるY型ゼオライト膜である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 ゼオライト膜が、NaY型ゼオライトを種結晶として、シリカ/アルミナのモル比が20〜50であって、20〜40℃で15〜21時間エージングされたアルミノシリケートゲルを用いて、水熱合成によって製造されたY型ゼオライト膜である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとの間でエステル交換反応を行い、得られた反応液から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離するエステル交換物の製造方法。 メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物から、メタノールを効率よく分離する方法を提供する。メタノールと、炭素数4以上の1価アルコールとを含む混合物から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離する方法。炭素数4以上の1価アルコールと、炭素数3以上のカルボン酸から誘導されるメチルエステルとの間でエステル交換反応を行い、得られた反応液から、FAU型の結晶構造を持つゼオライト膜を用いてメタノールを分離する方法。