生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_2,3−ジクロロピリジンの製造方法
出願番号:2011056309
年次:2012
IPC分類:C07D 213/61


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石川 淳一 JP 2012193124 公開特許公報(A) 20121011 2011056309 20110315 2,3−ジクロロピリジンの製造方法 住友化学株式会社 000002093 特許業務法人深見特許事務所 110001195 石川 淳一 C07D 213/61 20060101AFI20120914BHJP JPC07D213/61 5 OL 8 4C055 4C055AA01 4C055BA02 4C055BA39 4C055CA02 4C055CA39 4C055DA01 4C055FA08 本発明は、医農薬の製造中間体として有用な2,3−ジクロロピリジンの製造方法に関する。 2,3−ジクロロピリジンの製造方法としては、例えば以下の2つの方法が知られている。特許文献1には、3−アミノ−2−クロロピリジンをジアゾ化して、得られたジアゾニウムクロリド塩を銅触媒の存在下で塩酸と処理する方法が記載されている。また、非特許文献1には、3−クロロピリジン−N−オキシドと塩化ホスホリルとを反応させる方法が記載されている。非特許文献1の方法では、第2245頁の表1から明らかなように、所望の2,3−ジクロロピリジンとその位置異性体である3,4−置換体と3,6−置換体とが47:38:15の比で生成している。特表2007−523065公報Chem. Pharm. Bull., Vol. 36, p.2244-2247 (1988) 特許文献1記載の製造方法で経由するジアゾニウムクロリド塩は、その取扱い及びそれを経由する製造工程には、充分な管理及びそれに適合する設備等が必要とされている。従って、本方法では容易に2,3−ジクロロピリジンを工業的に製造することが困難である。非特許文献1記載の製造方法では、2,3−ジクロロピリジンの生成比は必ずしも満足できるものではなく、また高純度の2,3−ジクロロピリジンに精製することも容易ではない。 そこで、2,3−ジクロロピリジンを容易に製造でき、選択性に優れる新たな製造方法が求められていた。 本発明者は、2,3−ジクロロピリジンの工業的製法について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。本発明は、以下の通りである。 [1] 式(1)(式中、R1は水酸基又は塩素原子を表し、R2は水酸基又はニトロ基を表す。)で表される化合物と、五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程を有することを特徴とする、2,3−ジクロロピリジンの製造方法。 [2] 前記工程が、さらに塩化ホスホリルの存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程である、[1]記載の製造方法。 [3] 前記工程が、さらに溶媒の存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程である、[1]又は[2]記載の製造方法。 [4] 前記溶媒が、スルホランである、[3]記載の製造方法。 [5] 前記工程が、前記式(1)で表される化合物と五塩化リンとを反応させる工程である、[1]〜[4]のいずれか記載の製造方法。 本発明によって、2,3−ジクロロピリジンを容易に製造でき、選択性に優れる新たな製造方法が提供される。 本発明の製造方法によれば、式(1)で表される原料に、五塩化リン又は塩化チオニルを反応させることで、2,3−ジクロロピリジンを製造することができる。 式(1)で表される原料は、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン、2−クロロ−3−ニトロピリジン、2,3−ジヒドロキシピリジン及び2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンのいずれかであるが、これら化合物は市販のものを本製造方法において好適に用いることができる。 五塩化リン又は塩化チオニルの使用量としては、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン又は2,3−ジヒドロキシピリジンを原料として用いる場合は、原料1モルに対して2モル以上が用いられ、好ましくは原料の重量に対して4倍〜15倍の量が用いられ、さらに好ましくは5倍〜12倍の量が用いられる。2−クロロ−3−ニトロピリジン又は2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンを原料として用いる場合は、五塩化リン又は塩化チオニルを、原料1モルに対して1モル以上が用いられ、好ましくは原料の重量に対して、3倍〜15倍の量が用いられ、さらに好ましくは4倍〜12倍の量が用いられる。塩化チオニルの場合は、溶媒として過剰に用いることも好ましい。 また、五塩化リン又は塩化チオニルに加えて、1又は2以上の塩素化剤をさらに加えることもできる。塩素化剤としては、五塩化リン、塩化チオニル、塩化ホスホリル、三塩化リン、塩化スルフリル、塩素等が挙げられる。好ましいものとしては塩化ホスホリルが挙げられる。これら塩素化剤の使用量としては、例えば原料の重量に対して4倍〜15倍の量が挙げられる。 本製造方法において、溶媒を用いることも好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない溶媒であればいずれも使用しうるが、高沸点の溶媒が好ましい。具体的には、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒等が挙げられ、好ましい例としてはジクロロベンゼン、スルホラン等が挙げられ、より好ましいものとしてスルホランが挙げられる。溶媒の使用量としては、例えば、原料の重量に対して1倍〜15倍の量、好ましくは3倍〜12倍の量が挙げられる。スルホン系溶媒を用いる場合は、後の後処理の抽出効率を上げるために、スルホン系溶媒の使用量は少量に留めるほうが好ましい。 本製造方法の反応温度としては、例えば80℃〜230℃が挙げられ、好ましくは100℃〜200℃が挙げられ、より好ましくは130℃〜180℃が挙げられる。反応時間としては、反応の進行及び副生物の量を確認して適宜選択することができるが、例えば、2時間〜15時間、好ましくは3時間〜10時間で選択することができる。 上記の反応終了後、2,3−ジクロロピリジンを単離する方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。まず、過剰の塩素化剤を分解させるために、反応混合物をゆっくりと塩基性の水溶液に添加する。その後、水層から2,3−ジクロロピリジンを有機溶媒で抽出する。有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒、エーテル、イソブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。なお、反応液に存在する原料及びその他の副生物を分離するために、水層のpH及び抽出有機溶媒の種類を適宜選択することもできる。常法に従い、乾燥、濃縮を行う。その後、2,3−ジクロロピリジンは、必要に応じて、蒸留することで精製することができる。また、塩酸塩等にして結晶化することで精製することもできる。 本製造方法によれば、ピリジン環上の置換基を直接クロロ化するため、位置選択にクロロ化できる。そのため、従来技術で問題となっていた他の位置異性体の副生が全く起こらないため、純度の高い2,3−ジクロロピリジンを製造することができる。 以下の各反応の実験において、一定量の反応液を高速液体クロマトグラムを用いて下記条件で測定し、その2,3−ジクロロピリジンの面百値を2,3−ジクロロピリジンの生成率として記載した。[HPLC条件] カラム:SUMIPAX ODS A−212 流速: 1.0mL/分 検出波長:UV 254nm 移動相: A液:アセトニトリル B液:0.1%トリフルオロ酢酸/水 グラジエント条件: 0〜10分間:5%A液/B液 10〜50分間:45%A液/B液までグラジエント <原料が2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジンである実験> 実施例1−1 高耐圧のガラス容器に、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例1−2〜1−6 高耐圧のガラス容器に、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、他の塩素化剤又は/及び溶媒を加えて、実施例1−1と同様な操作を行った。その後、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例1−1〜1−2 高耐圧のガラス容器に、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン50mg及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加えて、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下に、その結果を記載する。 <原料が2−クロロ−3−ニトロピリジンである実験> 実施例2−1 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例2−2〜2−5 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、他の塩素化剤又は/及び溶媒を加え、実施例1−1と同様な操作を行った。その後、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例2−1〜2−2 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ニトロピリジン50mg、及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下にその結果を記載する。 <原料が2,3−ジヒドロキシピリジンである実験> 実施例3−1 高耐圧のガラス容器に、2,3−ジヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例3−2〜3−6 高耐圧のガラス容器に、2,3−ジヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg、他の塩素化剤又は/及び溶媒を加え、実施例1−1と同様な操作を行った。その後、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例3−1〜3−2 高耐圧のガラス容器に、2,3−ジヒドロキシピリジン50mg、及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下にその結果を記載する。 <出発原料が2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンである実験> 実施例4−1 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例4−2 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg及びスルホラン500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行ったところ、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例4−1〜4−2 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン50mg及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下にその結果を記載する。 本発明によって、2,3−ジクロロピリジンを容易に製造でき、選択性に優れる新たな製造方法が提供される。 式(1)(式中、R1は水酸基又は塩素原子を表し、R2は水酸基又はニトロ基を表す。)で表される化合物と、五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程を有することを特徴とする、2,3−ジクロロピリジンの製造方法。 前記工程が、さらに塩化ホスホリルの存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程である、請求項1記載の製造方法。 前記工程が、さらに溶媒の存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程である、請求項1又は2記載の製造方法。 前記溶媒が、スルホランである、請求項3記載の製造方法。 前記工程が、前記式(1)で表される化合物と五塩化リンとを反応させる工程である、請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。 【課題】2,3−ジクロロピリジンを容易に製造でき、選択性に優れる新たな製造方法の提供。【解決手段】式(1) 【化1】(式中、R1は水酸基又は塩素原子を表し、R2は水酸基又はニトロ基を表す。)で表される化合物と、五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程を有することを特徴とする、2,3−ジクロロピリジンの製造方法。また、前記工程は、さらに塩化ホスホリルの存在下で、または溶媒の存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程であってもよい。【選択図】なし


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特許公報(B2)_2,3−ジクロロピリジンの製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_2,3−ジクロロピリジンの製造方法
出願番号:2011056309
年次:2015
IPC分類:C07D 213/61


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石川 淳一 JP 5736201 特許公報(B2) 20150424 2011056309 20110315 2,3−ジクロロピリジンの製造方法 住友化学株式会社 000002093 特許業務法人深見特許事務所 110001195 石川 淳一 20150617 C07D 213/61 20060101AFI20150528BHJP JPC07D213/61 C07D 213/61 CAplus/REGISTRY(STN) 特開平06−228096(JP,A) 特開2012−193125(JP,A) 国際公開第2009/114589(WO,A1) J.Org.Chem.,1988年,Vol.53,pp.2858-2859 Recueil: Journal of the Royal Netherlands Chemical Society,1983年,Vol.102, No.12,pp.511-513 Chem.Pharm.Bull.,1981年,Vol.29, No.4,pp.1069-1075 J.Phys.Chem. A,2010年,Vol.114,pp.4507-4519 Journal of Materials Chemistry,2001年,Vol.11,pp.2271-2281 2 2012193124 20121011 9 20140213 東 裕子 本発明は、医農薬の製造中間体として有用な2,3−ジクロロピリジンの製造方法に関する。 2,3−ジクロロピリジンの製造方法としては、例えば以下の2つの方法が知られている。特許文献1には、3−アミノ−2−クロロピリジンをジアゾ化して、得られたジアゾニウムクロリド塩を銅触媒の存在下で塩酸と処理する方法が記載されている。また、非特許文献1には、3−クロロピリジン−N−オキシドと塩化ホスホリルとを反応させる方法が記載されている。非特許文献1の方法では、第2245頁の表1から明らかなように、所望の2,3−ジクロロピリジンとその位置異性体である3,4−置換体と3,6−置換体とが47:38:15の比で生成している。特表2007−523065公報Chem. Pharm. Bull., Vol. 36, p.2244-2247 (1988) 特許文献1記載の製造方法で経由するジアゾニウムクロリド塩は、その取扱い及びそれを経由する製造工程には、充分な管理及びそれに適合する設備等が必要とされている。従って、本方法では容易に2,3−ジクロロピリジンを工業的に製造することが困難である。非特許文献1記載の製造方法では、2,3−ジクロロピリジンの生成比は必ずしも満足できるものではなく、また高純度の2,3−ジクロロピリジンに精製することも容易ではない。 そこで、2,3−ジクロロピリジンを容易に製造でき、選択性に優れる新たな製造方法が求められていた。 本発明者は、2,3−ジクロロピリジンの工業的製法について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。本発明は、以下の通りである。 [1] 式(1)(式中、R1は水酸基又は塩素原子を表し、R2は水酸基又はニトロ基を表す。)で表される化合物と、五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程を有することを特徴とする、2,3−ジクロロピリジンの製造方法。 [2] 前記工程が、さらに塩化ホスホリルの存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程である、[1]記載の製造方法。 [3] 前記工程が、さらに溶媒の存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程である、[1]又は[2]記載の製造方法。 [4] 前記溶媒が、スルホランである、[3]記載の製造方法。 [5] 前記工程が、前記式(1)で表される化合物と五塩化リンとを反応させる工程である、[1]〜[4]のいずれか記載の製造方法。 本発明によって、2,3−ジクロロピリジンを容易に製造でき、選択性に優れる新たな製造方法が提供される。 本発明の製造方法によれば、式(1)で表される原料に、五塩化リン又は塩化チオニルを反応させることで、2,3−ジクロロピリジンを製造することができる。 式(1)で表される原料は、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン、2−クロロ−3−ニトロピリジン、2,3−ジヒドロキシピリジン及び2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンのいずれかであるが、これら化合物は市販のものを本製造方法において好適に用いることができる。 五塩化リン又は塩化チオニルの使用量としては、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン又は2,3−ジヒドロキシピリジンを原料として用いる場合は、原料1モルに対して2モル以上が用いられ、好ましくは原料の重量に対して4倍〜15倍の量が用いられ、さらに好ましくは5倍〜12倍の量が用いられる。2−クロロ−3−ニトロピリジン又は2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンを原料として用いる場合は、五塩化リン又は塩化チオニルを、原料1モルに対して1モル以上が用いられ、好ましくは原料の重量に対して、3倍〜15倍の量が用いられ、さらに好ましくは4倍〜12倍の量が用いられる。塩化チオニルの場合は、溶媒として過剰に用いることも好ましい。 また、五塩化リン又は塩化チオニルに加えて、1又は2以上の塩素化剤をさらに加えることもできる。塩素化剤としては、五塩化リン、塩化チオニル、塩化ホスホリル、三塩化リン、塩化スルフリル、塩素等が挙げられる。好ましいものとしては塩化ホスホリルが挙げられる。これら塩素化剤の使用量としては、例えば原料の重量に対して4倍〜15倍の量が挙げられる。 本製造方法において、溶媒を用いることも好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない溶媒であればいずれも使用しうるが、高沸点の溶媒が好ましい。具体的には、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒等が挙げられ、好ましい例としてはジクロロベンゼン、スルホラン等が挙げられ、より好ましいものとしてスルホランが挙げられる。溶媒の使用量としては、例えば、原料の重量に対して1倍〜15倍の量、好ましくは3倍〜12倍の量が挙げられる。スルホン系溶媒を用いる場合は、後の後処理の抽出効率を上げるために、スルホン系溶媒の使用量は少量に留めるほうが好ましい。 本製造方法の反応温度としては、例えば80℃〜230℃が挙げられ、好ましくは100℃〜200℃が挙げられ、より好ましくは130℃〜180℃が挙げられる。反応時間としては、反応の進行及び副生物の量を確認して適宜選択することができるが、例えば、2時間〜15時間、好ましくは3時間〜10時間で選択することができる。 上記の反応終了後、2,3−ジクロロピリジンを単離する方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。まず、過剰の塩素化剤を分解させるために、反応混合物をゆっくりと塩基性の水溶液に添加する。その後、水層から2,3−ジクロロピリジンを有機溶媒で抽出する。有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒、エーテル、イソブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。なお、反応液に存在する原料及びその他の副生物を分離するために、水層のpH及び抽出有機溶媒の種類を適宜選択することもできる。常法に従い、乾燥、濃縮を行う。その後、2,3−ジクロロピリジンは、必要に応じて、蒸留することで精製することができる。また、塩酸塩等にして結晶化することで精製することもできる。 本製造方法によれば、ピリジン環上の置換基を直接クロロ化するため、位置選択にクロロ化できる。そのため、従来技術で問題となっていた他の位置異性体の副生が全く起こらないため、純度の高い2,3−ジクロロピリジンを製造することができる。 以下の各反応の実験において、一定量の反応液を高速液体クロマトグラムを用いて下記条件で測定し、その2,3−ジクロロピリジンの面百値を2,3−ジクロロピリジンの生成率として記載した。[HPLC条件] カラム:SUMIPAX ODS A−212 流速: 1.0mL/分 検出波長:UV 254nm 移動相: A液:アセトニトリル B液:0.1%トリフルオロ酢酸/水 グラジエント条件: 0〜10分間:5%A液/B液 10〜50分間:45%A液/B液までグラジエント <原料が2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジンである実験> 実施例1−1 高耐圧のガラス容器に、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例1−2〜1−6 高耐圧のガラス容器に、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、他の塩素化剤又は/及び溶媒を加えて、実施例1−1と同様な操作を行った。その後、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例1−1〜1−2 高耐圧のガラス容器に、2−ヒドロキシ−3−ニトロピリジン50mg及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加えて、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下に、その結果を記載する。 <原料が2−クロロ−3−ニトロピリジンである実験> 実施例2−1 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例2−2〜2−5 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ニトロピリジン50mg、五塩化リン300mg、他の塩素化剤又は/及び溶媒を加え、実施例1−1と同様な操作を行った。その後、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例2−1〜2−2 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ニトロピリジン50mg、及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下にその結果を記載する。 <原料が2,3−ジヒドロキシピリジンである実験> 実施例3−1 高耐圧のガラス容器に、2,3−ジヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例3−2〜3−6 高耐圧のガラス容器に、2,3−ジヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg、他の塩素化剤又は/及び溶媒を加え、実施例1−1と同様な操作を行った。その後、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例3−1〜3−2 高耐圧のガラス容器に、2,3−ジヒドロキシピリジン50mg、及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下にその結果を記載する。 <出発原料が2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンである実験> 実施例4−1 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg、塩化ホスホリル500mg及びスルホラン500mgを加え、150℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液に蒸留水2.5mLおよびアセトニトリル2.5mLを加えて、その溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分析して2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 実施例4−2 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン50mg、五塩化リン300mg及びスルホラン500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行ったところ、2,3−ジクロロピリジンの生成率を確認した。 比較例4−1〜4−2 高耐圧のガラス容器に、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン50mg及び五塩化リン以外の塩素化剤500mgを加え、実施例1−1と同様な操作を行った。2,3−ジクロロピリジンの生成を確認できなかった。 以下にその結果を記載する。 本発明によって、2,3−ジクロロピリジンを容易に製造でき、選択性に優れる新たな製造方法が提供される。 式(1)(式中、R1は水酸基又は塩素原子を表し、R2は水酸基又はニトロ基を表す。)で表される化合物と、五塩化リン又は塩化チオニルとを、スルホランの存在下、反応させる工程を有することを特徴とする、2,3−ジクロロピリジンの製造方法。 前記工程が、さらに塩化ホスホリルの存在下、前記式(1)で表される化合物と五塩化リン又は塩化チオニルとを反応させる工程である、請求項1記載の製造方法。


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