タイトル: | 再公表特許(A1)_胆道疾患の治療又は予防剤 |
出願番号: | 2011051737 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/485,A61P 1/16,C07D 489/02 |
小林 良輔 中尾 薫 JP WO2011093441 20110804 JP2011051737 20110128 胆道疾患の治療又は予防剤 東レ株式会社 000003159 小林 良輔 中尾 薫 JP 2010018730 20100129 A61K 31/485 20060101AFI20130510BHJP A61P 1/16 20060101ALI20130510BHJP C07D 489/02 20060101ALN20130510BHJP JPA61K31/485A61P1/16 105A61P1/16A61P1/16 101C07D489/02 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130606 2011505302 20 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA03 4C086CB23 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA75 4C086ZA76 4C086ZA77 本願発明は、モルヒナン誘導体又はその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分として含んでなる胆道疾患の治療又は予防剤に関する。 胆道疾患は、胆嚢や胆管又は膵臓や膵管で発症する消化器系疾患の総称である。胆道疾患の発症原因の一つとして、胆道の最下流である総胆管と膵管が合流した後の胆管末端部である十二指腸乳頭部のOddi括約筋が収縮することによる胆道抵抗圧の増加が知られている。Oddi括約筋収縮により発症する胆道疾患の例としては、胆道閉塞、胆嚢障害、胆石症、膵炎、胆道ジスキネジー、胆管炎、胆嚢炎などが知られている。したがって、Oddi括約筋の収縮を抑制する薬剤は、Oddi括約筋の収縮が発症原因である胆道疾患の治療剤として有用であることが知られている。 一方、Oddi括約筋収縮が発症原因ではないが、Oddi括約筋収縮によって悪化する可能性がある胆道疾患として原発性胆汁性肝硬変(以下、PBCと表記することがある)が挙げられる。PBCは総胆管よりも上流の肝臓内の胆管である小葉間胆管が破壊され、胆汁がうっ滞する疾患であるが、総胆管が閉塞することにより悪化することが知られている(非特許文献1)。したがって、Oddi括約筋の収縮を抑制する薬剤は、総胆管閉塞を改善し、PBCの悪化を抑制できることが考えられる。 本願発明の有効成分であるモルヒナン誘導体又はその薬理学的に許容される酸付加塩(以下、「本願化合物」と表記することがある)については、これまでに、オピオイドκ受容体作動性をもち、鎮痛薬及び利尿薬としての用途が開示されている(特許文献1)。また、鎮咳薬(特許文献2)、脳細胞保護薬(特許文献3)、止痒薬(特許文献4)、低ナトリウム血症治療薬(特許文献5)、ORL−1受容体拮抗薬(特許文献6)、神経因性疼痛治療薬(特許文献7)、角膜又は結膜用止痒薬(特許文献8)、精神神経疾患治療薬(特許文献9)、薬物依存治療薬(特許文献10)、敗血症治療薬(特許文献11)、多発性硬化症に伴う痒みの治療薬(特許文献12)、統合失調症治療薬(特許文献13)及びジスキネジア治療薬(特許文献14)などとしての用途も既に開示されている。しかしながら、胆道疾患の治療又は予防効果については、なんら開示されていない。 現在、Oddi括約筋の収縮を抑制する作用を有し、胆道疾患の治療薬として使用されている薬物には、トレピブトンのようにCa2+の細胞内Ca−Store Siteへの取り込み促進作用を有するもの、ヒメクロモンのように細胞外液Ca2+の収縮タンパクへの結合阻害作用を有するもの、フロプロピオンのようにカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(以下、「COMT」と表記することがある)阻害作用及び抗セロトニン作用を有するもの、チキジウムのように抗ムスカリン作用を有するもの、オキサピウムのようにアトロピン様及びパパベリン様作用を有するもの、ガベキサートのようにOddi括約筋の収縮を抑制する作用機序は明らかではないが、トリプシン、カリクレイン阻害作用を有するものなどが知られているが、本願化合物とは構造類似性がなく、オピオイドκ受容体作動性も有していない薬物である。 また、オピオイド類はOddi括約筋を収縮させることが知られており、胆道疾患を悪化させる可能性があることから、胆道疾患を有する患者への使用には注意が必要であることも知られている。オピオイド類については、以下のような報告がある。 本願化合物と同様にモルヒナン骨格を有するが、オピオイドμ受容体作動薬であるという点で本願化合物とは異なるモルヒネは、胆道けいれんを起こすことがあることから、胆嚢障害及び胆石のある患者に対しては慎重に投与する必要があることが記載されている(非特許文献2)。 さらに、モルヒナン骨格を有するオピオイドμ受容体作動薬であるオキシコドンはOddi括約筋を収縮させ、胆嚢障害、胆石症又は膵炎の患者の症状を増悪することがあることから、慎重に投与する必要があることが記載されている(非特許文献3)。同様に、モルヒナン骨格を有するオピオイドμ受容体部分作動薬であるブプレノルフィンは動物実験(イヌ)において高用量(0.1mg/kg i.v.以上)でOddi括約筋を収縮することから胆道疾患のある患者に対しては慎重投与する必要があることが記載されている(非特許文献4)。さらに、モルヒナン骨格を有さないオピオイドμ受容体作動薬であるトラマドールは動物実験において大量投与した場合Oddi括約筋を収縮することから、胆道疾患のある患者に対しては慎重投与する必要があることが記載されている(非特許文献5)。同様に、モルヒナン骨格を有さないオピオイドμ受容体部分作動薬であるペンタゾシンは大量投与した場合Oddi括約筋を収縮することから、胆道疾患のある患者に対しては慎重投与する必要があることが記載されている(非特許文献6)。 一方、モルヒナン骨格を有さないオピオイドκ受容体作動薬は胃腸機能障害の治療薬として有用であり、その胃腸機能障害の一例がOddi括約筋収縮であることが記載されている(特許文献15乃至18)が、Oddi括約筋収縮を抑制することは記載されていない。 さらに、モルヒナン骨格を有し、オピオイドκ受容体作動性とオピオイドμ受容体部分作動性を示すことが知られているナルブフィンは、Oddi括約筋収縮に対する作用がないという報告(非特許文献7)と、胆道内圧を6%上昇させるが、統計学的に有意な作用ではないという報告(非特許文献8)があるが、Oddi括約筋の収縮を抑制するという報告はない。また、オピオイドκ受容体作動薬に分類されるブトルファノールは、胆道内圧を12%上昇させ、これは統計学的に有意な作用であることから(非特許文献8)、Oddi括約筋収縮作用を有することが示されている。さらに、モルヒナン骨格を有さないが、オピオイド受容体に対してκ作動薬として作用することが知られているエプタゾシンは、動物実験で大量投与した場合、Oddi括約筋を収縮する作用が認められることから、胆道疾患のある患者に対しては慎重投与する必要があることが記載されている(非特許文献9)。 一方、内因性のオピオイドδ受容体作動性ペプチドであるロイシンエンケファリン及びメチオニンエンケファリンはOddi括約筋に対して一過性の収縮を引き起こした後、持続的な収縮抑制作用を示すことが報告されている(非特許文献10)。また、モルヒナン骨格を有するオピオイドμ受容体拮抗薬ナロキソンはOddi括約筋の収縮抑制作用を有するということも知られている(非特許文献11)。 以上のように、本願化合物のようにモルヒナン骨格を有するオピオイドκ受容体作動薬がOddi括約筋の収縮を抑制することは全く示唆されていなかった。 また、本願化合物が拮抗作用を示すことが開示されているORL−1受容体については、当該受容体の内因性の作動性ペプチドであるノシセプチン(又は、オルファニンFQと記載される場合もある)が、Oddi括約筋の筋層間神経層の興奮性運動神経に発現していること、及びコリン性の神経伝達を抑制することから、ノシセプチンはフィードバック自己抑制メカニズムを介してOddi括約筋に作用する可能性が示されている(非特許文献12)。 このことから、ORL−1受容体作動薬はOddi括約筋の収縮を抑制することが考えられ、ORL−1受容体拮抗作用によりOddi括約筋の収縮を抑制することは示唆されていない。国際公開 第93/015081号パンフレット国際公開 第95/001178号パンフレット国際公開 第95/003307号パンフレット国際公開 第98/023290号パンフレット国際公開 第99/005146号パンフレット特開2000−53572号公報国際公開 第01/014383号パンフレット特開2001−163784号公報国際公開 第02/078744号パンフレット国際公開 第99/011289号パンフレット国際公開 第02/089845号パンフレット国際公開 第06/095836号パンフレット国際公開 第09/001764号パンフレット国際公開 第08/133297号パンフレット国際公開 第05/004796号パンフレット国際公開 第05/049564号パンフレット国際公開 第05/023799号パンフレット国際公開 第04/093796号パンフレットHastier P et al.,Dig Dis Sci.,43,2426(1998)財団法人日本医薬情報センター編集・発行、JAPIC医療用医薬品集2010、丸善株式会社、p.2705、モルヒネ塩酸塩水和物財団法人日本医薬情報センター編集・発行、JAPIC医療用医薬品集2010、丸善株式会社、p.618、オキシコドン塩酸塩水和物財団法人日本医薬情報センター編集・発行、JAPIC医療用医薬品集2010、丸善株式会社、p.2166、ブプレノルフィン塩酸塩財団法人日本医薬情報センター編集・発行、JAPIC医療用医薬品集2010、丸善株式会社、p.1713、トラマドール塩酸塩財団法人日本医薬情報センター編集・発行、JAPIC医療用医薬品集2010、丸善株式会社、p.2448、ペンタゾシンIsenhower HL et al.,Am J Health−Syst Pharm.,55,480(1998)Thompson DR.,Am J Gastroenterol.,96,1266(2001)財団法人日本医薬情報センター編集・発行、JAPIC医療用医薬品集2010、丸善株式会社、p.549、エプタゾシン臭化水素酸塩Behar J et al.,Gastroenterol.,86,134(1984)Behar J et al.,Motilly of the Digestive Tract.,New York:Raven, (1982),p.397O‘Donnell AM et al.,J Comp Neurol.,29,430(2001) 本発明は、モルヒナン骨格を有する特定の化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分とする優れた効果を有する胆道疾患の治療又は予防剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、モルヒナン骨格を有する特定の化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩が優れた胆道疾患治療効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、以下の[1]から[5]に関する。[1]下記一般式(I)[式中、点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、R1は炭素数4から7のシクロアルキルアルキルを表し、R2は炭素数1から5の直鎖又は分岐アルキルを表し、Bは−CH=CH−を表す]で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分とする胆道疾患の治療又は予防剤。[2]一般式(I)において、R1がシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル又はシクロヘキシルメチルであり、R2がメチル、エチル又はプロピルである、[1]に記載の胆道疾患の治療又は予防剤。[3]一般式(I)で表される化合物が(−)−17−(シクロプロピルメチル)−3,14β−ジヒドロキシ−4,5α−エポキシ−6β−[N−メチル−トランス−3−(3−フリル)アクリルアミド]モルヒナンである、[1]に記載の胆道疾患の治療又は予防剤。[4]胆道疾患が、胆道閉塞、胆嚢障害、胆石症、膵炎、胆道ジスキネジー、胆管炎、胆嚢炎又は原発性胆汁性肝硬変である、[1]乃至[3]のいずれか一項記載の胆道疾患の治療又は予防剤。[5]Oddi括約筋収縮を抑制することにより、胆道疾患の治療又は予防作用を発現する、[1]乃至[3]のいずれか一項記載の胆道疾患の治療又は予防剤。[6]胆道疾患の治療又は予防のために用いる、下記一般式(I)[式中、点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、R1は炭素数4から7のシクロアルキルアルキルを表し、R2は炭素数1から5の直鎖又は分岐アルキルを表し、Bは−CH=CH−を表す] で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩。[7]下記一般式(I)[式中、点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、R1は炭素数4から7のシクロアルキルアルキルを表し、R2は炭素数1から5の直鎖又は分岐アルキルを表し、Bは−CH=CH−を表す] で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩の有効量を胆道疾患の治療又は予防剤を必要とする患者に投与することを含む、胆道疾患を治療又は予防する方法。 本発明は、胆道疾患の顕著な治療又は予防効果をもたらす。実施例1における、ウサギOddi括約筋収縮に対する化合物1の影響を示した図である。横軸は被験物質を示し、縦軸は、被験物質静脈内投与開始直前の3分間における最大灌流抵抗圧に対する投与開始直後3分間の最大灌流抵抗圧の変化率(Oddi muscle contraction(Delta%))を示している(平均値±標準誤差、N=11例、*p<0.05,paired t test)。 本発明の胆道疾患の治療又は予防剤は、一般式(III)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分として含有する。[式中、点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表す。R1は炭素数1から5のアルキル、炭素数4から7のシクロアルキルアルキル、炭素数5から7のシクロアルケニルアルキル、炭素数6から12のアリール、炭素数7から13のアラルキル、炭素数4から7のアルケニル、アリル、フラン−2−イルアルキル(アルキル部の炭素数は1から5)又はチオフェン−2−イルアルキル(アルキル部の炭素数は1から5)を表す。 R14は水素、ヒドロキシ、ニトロ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルキル又はNR9R10を表す。ここでR9は水素又は炭素数1から5のアルキルを表し、R10は水素、炭素数1から5のアルキル又は−(C=O)R11を表し、R11は、水素、フェニル又は炭素数1から5のアルキルを表す。 R3は水素、ヒドロキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ又は炭素数1から5のアルコキシを表す。 Aは−XC(=Y)−、−XC(=Y)Z−、−X−又は−XSO2−(ここでX、Y及びZは各々独立してNR4、S又はOを表す。ここでR4は水素、炭素数1から5の直鎖若しくは分岐アルキル又は炭素数6から12のアリールを表し、式中R4が二つ以上存在する場合は互いに同一又は異なっていてもよい)を表す。 Bは原子価結合、炭素数1から14の直鎖若しくは分岐アルキレン(ただし、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、ヒドロキシ、弗素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル及びフェノキシからなる群から選ばれた少なくとも一種以上の置換基により置換されていてもよく、1から3個のメチレン基がカルボニル基で置き換わっていてもよい)、2重結合及び/若しくは3重結合を1から3個含む炭素数2から14の直鎖若しくは分岐の非環状不飽和炭化水素(ただし炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、ヒドロキシ、弗素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル及びフェノキシからなる群から選ばれた少なくとも一種以上の置換基により置換されていてもよく、1から3個のメチレン基がカルボニル基で置き換わっていてもよい)又はチオエーテル結合、エーテル結合及び/若しくはアミノ結合を1から5個含む炭素数1から14の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素(ただし、ヘテロ原子は直接Aに結合することはなく、1から3個のメチレン基がカルボニル基で置き換わっていてもよい)を表す。 R5は水素又は下記の基本骨格の何れかを持つ有機基(ただし、これらの式中、QはN、O又はSを表し、TはCH2、NH、S又はOを表し、lは0から5の整数を表し、m及びnはそれぞれ独立に0から5の整数を表し、mとnの合計は5以下であり、各有機基は、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、ヒドロキシ、弗素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、ニトロ、シアノ、イソチオシアナト、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びメチレンジオキシからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の置換基により置換されていてもよい)を表す。 R6は水素を、R7は水素、ヒドロキシ、炭素数1から5のアルコキシ又は炭素数1から5のアルカノイルオキシをそれぞれ表すか、R6とR7は一緒になって−O−、−CH2−又は−S−を表す。 R8は水素、炭素数1から5のアルキル又は炭素数1から5のアルカノイルを表す。 R12及びR13は共に水素を表すか、何れか一方が水素で他方がヒドロキシを表すか、一緒になってオキソを表す。 また、一般式(III)は(+)体、(−)体、(±)体を包含する] 一般式(III)中の点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、単結合であることが好ましい。 本発明の胆道疾患の治療又は予防剤は、一般式(III)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩の中でも、既に示した一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分として含有することが好ましい。 一般式(I)中の点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、単結合であることが好ましい。 一般式(I)において、R1は炭素数4から7のシクロアルキルアルキルを表す。中でもR1としてはシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル又はシクロヘキシルメチルが好ましく、特にシクロプロピルメチルが好ましい。 R2は炭素数1から5の直鎖又は分岐アルキルを表す。R2としては、メチル,エチル又はプロピルが好ましい。中でもメチルが好ましい。 Bは、−CH=CH−を表す。Bとしてはトランス型の−CH=CH−が好ましい。 一般式(I)で表される化合物としては、点線と実線の二重線が単結合であり、R1がシクロプロピルメチルであり、R2がメチルであり、Bがトランス型の−CH=CH−であり、(−)体である化合物、すなわち、(−)−17−(シクロプロピルメチル)−3,14β−ジヒドロキシ−4,5α−エポキシ−6β−[N−メチル−トランス−3−(3−フリル)アクリルアミド]モルヒナンが特に好ましいが、本発明はこれに限定されない。 これら一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、特許第2525552号公報に記載の方法に従って製造することができる。一般式(III)で表される化合物のうち、R12及びR13が共に水素のものは特許第2525552号公報に記載の方法に従って製造することができる。一般式(III)で表される化合物のうち、R12及びR13が一緒になってオキソを表す化合物は、たとえば文献(Heterocycles,63,865(2004),Bioorg.Med.Chem.Lett.,5,1505(1995))に従って得られる10−オキソを有する化合物を原料として、これよりChem.Pharm.Bull.,52,664(2004)及び特許第2525552に記載の方法に従って製造することができる。さらに、一般式(1)で表される化合物のうちR12が水酸基でR13が水素である化合物は、Chem.Pharm.Bull.,52,664(2004)に記載の方法に従って製造することができる。 本発明における薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩若しくはリン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩若しくはフタル酸塩などの有機カルボン酸塩又はメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩若しくはカンファ−スルホン酸塩などの有機スルホン酸塩などが挙げられる。中でも塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酒石酸塩又はメタンスルホン酸塩などが好ましく用いられるが、もちろんこれらに限られるものではない。 本発明で言う「胆道疾患」は、胆嚢や胆管又は膵臓や膵管で発症する消化器系疾患を包含する。本発明の胆道疾患の治療又は予防剤は、これらのうち、好ましくは、Oddi括約筋収縮により発症又は悪化する胆道疾患、特に好ましくは、胆道閉塞、胆嚢障害、胆石症、膵炎、胆道ジスキネジー、胆管炎、胆嚢炎、原発性胆汁性肝硬変などの治療又は予防に用いうる。 一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、医薬品用途にまで純化され、必要な安全性試験に合格した後、そのまま、又は公知の薬理学的に許容される酸、担体、賦形剤などと混合した医薬組成物として、経口的又は非経口的に投与することができる。経口投与における剤型は、錠剤、カプセル剤、口腔内崩壊剤、散剤又は顆粒剤など、非経口的な投与としては静脈内急速注入、静脈内持続注入、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、テープ剤、パッチ剤などを選択できるが、もちろんこれに限られるものではない。 医薬組成物中の一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩の含量は特に限定されないが、1服用あたり通常0.1μg〜100mgとなるように調製され得る。また、投与量は、患者の症状、年齢、体重、投与方法などに応じて適宜選択することができるが、通常、成人1日当り、一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩の量として、0.1μg〜20mg、好ましくは1μg〜10mg程度であり、それぞれ1回又は数回に分けて投与することができる。 本発明の胆道疾患の治療又は予防剤は、一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩を単独で、又は疾患の治療若しくは予防、症状の減少若しくは抑制に対して用いられる1種類又はそれ以上の薬剤と組み合わせて投与することができる。 例えば、トレピブトン(膵・胆道疾患治療剤)、ヒメクロモン(胆道疾患治療剤)、フロプロピオン(膵胆道・尿路系鎮痙剤)、チキジウム(抗ムスカリン剤)、オキサピウム(鎮痙抗コリン剤)、ガベキサート(タンパク分解酵素阻害剤)、デヒドロコール酸、アネトルチリチオン、ウルソデオキシコール酸、コノデオキシコール酸のような利胆剤が挙げられる。 例えば、モルヒネ、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、オキシコドン、フェンタニル、レミフェンタニル、トラマドール、ブトルファノール、エプタゾシンなどのように、胆道疾患による痛みの緩和を目的に投与される薬剤であると同時にOddi括約筋収縮を亢進する副作用を有する薬剤であるものも存在するが、これらの薬剤と本発明の薬剤を組み合わせることで、副作用を抑制することも可能である。 これらは例として与えるものであり、制限するものと解釈されるべきではない。なお、組み合わせの方法はそれぞれの薬剤を併用しても良いし、合剤とすることも可能である。 本願発明の治療又は予防剤の有効成分である一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩が、胆道疾患の治療や予防に有効であることは、後で記載する実施例に記載の方法で確認することができる。この方法で用いられているウサギOddi括約筋収縮モデルは、胆道疾患の基礎研究において一般に用いられるモデルであり(Wei JG et al.,World J. Gastroenterol.,6,102(2000))、本モデルでOddi括約筋収縮抑制作用を示すことは、本薬剤が、胆道疾患に対して治療及び予防効果を有することを示している。 以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。実施例1 ウサギOddi括約筋収縮に対する(−)−17−(シクロプロピルメチル)−3,14β−ジヒドロキシ−4,5α−エポキシ−6β−[N−メチル−トランス−3−(3−フリル)アクリルアミド]モルヒナン塩酸塩(化合物1)の効果 Wei JG et al.,World J. Gastroenterol.,6,102(2000)に記載の方法を一部変更し、Oddi括約筋の灌流抵抗圧変化を測定した。なお、Oddi括約筋の灌流抵抗圧変化はOddi括約筋の収縮変化のmotilityを反映する。 入荷時体重2.0〜2.5kgのNZW系雄性ウサギ(日本SLC)を用い、実験前日の夕方から絶食させた。実験はペントバルビタール麻酔下及び人工換気下にて行った。ウサギを背位に固定した後、腹部を切開し、十二指腸周囲及び総胆管を露出させた。総胆管を小さく切開し、総胆管内に十二指腸側に向けてカニューレを挿入し、その先端をOddi括約筋(膨大部括約筋)に留置した。なお、胆汁排泄用として総胆管内の胆嚢側へ別のカニューレを挿入し固定した。先端をOddi括約筋に留置したカニューレの反対側の端から生理食塩水を6mL/hourの流速で持続的に注入し、Oddi括約筋に灌流させた。その灌流抵抗圧を血圧モニタリングトランスデューサー(日本光電、DX−300)を介して記録することにより、Oddi括約筋の収縮反応を測定した。 ウサギに化合物1溶液の溶媒である5%マンニトール溶液を頸静脈内に投与した。さらに溶媒投与後30分以上の間隔を開け、同一個体に化合物1を0.2μg/kgの用量で頸静脈内に投与した。なお、溶媒及び化合物1の投与容量は1mL/kgとし、60秒かけて投与した。 投与開始直前の3分間における最大灌流抵抗圧に対する投与開始直後3分間の最大灌流抵抗圧の変化率(Oddi muscle contraction(Delta%))を求めた結果を図1に示す(平均値±標準誤差、N=11例)。化合物1の0.2μg/kgの静脈内投与では、最大灌流抵抗圧の変化率は平均93.32%であったのに対して、溶媒投与では、最大灌流抵抗圧の変化率は平均99.81%であった。このように、化合物1投与群では溶媒投与群と比較して、最大灌流抵抗圧の変化率は減少し、その差は統計学的に有意であった(*p<0.05,paired t test)。このことは、化合物1がOddi括約筋収縮の抑制作用を有することを表している。 Oddi括約筋の収縮抑制作用を有し、現在、臨床において胆道疾患の治療薬として使用されているオキサピウムヨウ化物は、0.3mg/kgの用量でイヌに静脈内投与した場合に、Oddi括約筋灌流抵抗圧を約10mmH2O(mmHgに換算すると0.74mmHg)低下させる(玉沢佳已ら,基礎と臨床,6,128(1972))。また、ガベキサートメシル酸塩は1mg/kg又は3mg/kgの用量でイヌに静脈内投与した場合に、Oddi括約筋灌流抵抗圧をそれぞれ6.9mmH2O(mmHgに換算すると0.51mmHg)又は10.6mmH2O(mmHgに換算すると0.78mmHg)低下させる(山里晃弘ら,J Smooth Muscle Res.,27,87(1991))。なお、オキサピウムヨウ化物は、通常成人には1日量として30〜60mgを3回に分服経口投与され、ガベキサートメシル酸塩は、通常100mgを500mLのリンゲル液に溶解し、8mL/分以下で点滴静注されることから、上記投与量は各薬剤の臨床投与量と同等であると考えられる。 本実施例において、化合物1をウサギに0.2μg/kgの静脈内投与することにより、最大灌流抵抗圧の実測値は平均0.95mmHg低下した。したがってこの結果は、化合物1が臨床においても胆道疾患に対して治療及び予防効果が期待できることを示している。なお、化合物1の構造は下記式(II)で表される。 本発明は、優れた胆道疾患治療効果を有し、胆道疾患の治療又は予防に有用である。 下記一般式(I)[式中、点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、R1は炭素数4から7のシクロアルキルアルキルを表し、R2は炭素数1から5の直鎖又は分岐アルキルを表し、Bは−CH=CH−を表す]で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分とする胆道疾患の治療又は予防剤。 一般式(I)において、R1がシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル又はシクロヘキシルメチルであり、R2がメチル、エチル又はプロピルである、請求項1記載の胆道疾患の治療又は予防剤。 一般式(I)で表される化合物が(−)−17−(シクロプロピルメチル)−3,14β−ジヒドロキシ−4,5α−エポキシ−6β−[N−メチル−トランス−3−(3−フリル)アクリルアミド]モルヒナンである、請求項1記載の胆道疾患の治療又は予防剤。 胆道疾患が、胆道閉塞、胆嚢障害、胆石症、膵炎、胆道ジスキネジー、胆管炎、胆嚢炎又は原発性胆汁性肝硬変である、請求項1乃至3のいずれか一項記載の胆道疾患の治療又は予防剤。 Oddi括約筋収縮を抑制することにより、胆道疾患の治療又は予防作用を発現する、請求項1乃至3のいずれか一項記載の胆道疾患の治療又は予防剤。 胆道疾患の治療又は予防のために用いる、下記一般式(I)[式中、点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、R1は炭素数4から7のシクロアルキルアルキルを表し、R2は炭素数1から5の直鎖又は分岐アルキルを表し、Bは−CH=CH−を表す]で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩。 下記一般式(I)[式中、点線と実線の二重線は二重結合又は単結合を表し、R1は炭素数4から7のシクロアルキルアルキルを表し、R2は炭素数1から5の直鎖又は分岐アルキルを表し、Bは−CH=CH−を表す] で表される化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩の有効量を胆道疾患の治療又は予防剤を必要とする患者に投与することを含む、胆道疾患を治療又は予防する方法。 本発明は、優れた胆道疾患治療効果を有し、胆道疾患の治療又は予防に有用な新規薬剤を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、化合物1に代表される特定のモルヒナン骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分とする胆道疾患の治療又は予防剤を提供するものである。【化1】