生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサ
出願番号:2011047899
年次:2012
IPC分類:G01N 27/409


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青木 圭一郎 林下 剛 JP 2012185021 公開特許公報(A) 20120927 2011047899 20110304 酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサ トヨタ自動車株式会社 000003207 高橋 英樹 100106150 高田 守 100082175 大西 秀和 100113011 大塚 環 100117695 青木 圭一郎 林下 剛 G01N 27/409 20060101AFI20120831BHJP JPG01N27/58 B 6 2 OL 8 2G004 2G004BB01 2G004BD04 2G004BG05 2G004BJ02 2G004BM07 2G004BM10 この発明は、起電力式の酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサに関する。 車両の触媒下流に配置され、排気ガスの空燃比の検出に用いられるセンサとして、例えば、起電力式の酸素センサがある。起電力式の酸素センサは、一対の電極間の酸素濃度の差によって生じる起電力を出力とするセンサであり、その出力は、排気ガスが理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかに応じて大きく急変する。 特許文献1には、起電力式の酸素センサの活性化処理の手法が開示されている。特許文献1の技術では、酸素センサの一対の電極間に、500〜800℃の温度下で、所定の大きさの電圧を交番に印加する。この活性化処理は、酸素センサの作動前後で定期的に又は必要に応じて行われる。その結果、センサ素子の内部抵抗が低下し、酸素センサが活性化される。特開平06−265522号公報特公昭62−044613号公報特開2004−245680号公報 ところで、酸素センサは、例えば、車両の排気経路の触媒の下流に配置され、触媒下流の排気ガス空燃比の変化を検出するために用いられる。例えば、将来の低貴金属触媒を用いた排気システムでは、触媒の酸素吸蔵量が低下することが考えられる。従って、空燃比制御性向上の観点から、触媒下流のごく低濃度の排気ガスに対しても、より高く安定した感度を有する酸素センサが求められる。 しかし排気ガス中のリーン成分であるNOxは、センサの電極での反応性が低い。一方、リッチガス成分であるH2、CH4、COのうち、H2やCH4はリーン成分(O2、NOx)よりも拡散速度が速く、COはセンサの電極上での吸着性が高い。このため酸素センサはリッチ出力をだしやすく、リーン出力感度が低くなりやすい傾向があり、酸素センサの出力に感度差による偏りが生じる場合がある。このような酸素センサの偏りは、空燃比制御向上の観点からは好ましいものではない。 この点、上記特許文献1の酸素センサの活性化処理は、大気極及び排気極の電極界面の低抵抗化による反応性の向上を主目的とするものである。即ち、特許文献1によれば、酸素センサの電極のリッチガス、リーンガス双方に対する反応性、応答性が向上する。しかし、特許文献1の活性化処理では、酸素センサのリッチガス、リーンガスに対する酸素センサの感度の偏りを解決することはできない。 この発明は上記課題を解決することを目的とし、起電力式の酸素センサのリッチガス、リーンガスに対する感度の偏りを抑制し、酸素センサの感度を向上させることができるよう改良した酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサを提供するものである。 上記の目的を達成するため、この発明の酸素センサの活性化処理方法では、まず、大気極と、排気極と、大気極と排気極との間に配置された固体電解質とを備える起電力式の酸素センサに、所定の温度で熱処理を施す(熱処理工程)。その後、大気極と前記排気極との間に、大気極をプラスとし排気極をマイナスとする方向の電圧を印加する(プラス電圧印加工程)。 熱処理工程における熱処理の温度は、800℃〜1200℃の範囲内とすることが好ましい。また、熱処理工程は、低酸素濃度雰囲気下又は還元雰囲気下で実行されることが望ましい。ここで、「低酸素濃度雰囲気」とは、理論空燃比より僅かにリーンな雰囲気を意味するものとする。また、「還元雰囲気」とは、酸化雰囲気ではない雰囲気、即ち、リッチ雰囲気又は理論空燃比の雰囲気を意味するものとする。 プラス電圧印加工程における電圧は、固体電解質がブラックニングを起こさない範囲の電圧とされることが望ましい。 また、この発明の活性化処理方法は、熱処理工程の後、プラス電圧印加工程の前に、大気極をマイナスとし排気極をプラスとする方向で、プラス電圧印加工程における電圧よりも小さな電圧を印加するものであってもよい。 この発明における酸素センサは、内燃機関の排気経路に配置されて用いられる起電力式の酸素センサであって、固体電解質と、固体電解質の一面側に配置され、かつ、排気経路に設置された状態において大気に接する側の電極である大気極と、固体電解質の前記一面とは反対側の面に配置され、かつ、排気経路に設置された状態において排気ガスに接する側の電極である排気極と、を備える。また、酸素センサは、初期の段階で、所定の温度で熱処理を施され、熱処理の後、大気極と排気極との間に、大気極をプラスとし排気極をマイナスとする方向の電圧を印加する活性化処理が施されたものとする。 この発明によれば、熱処理及びプラス電圧印加処理により、大気極、排気極と固体電解質との界面における反応活性点を増加させ、かつ、安定化させることができる。また、プラス電圧印加処理により、電圧を印加した方向の電流移動、つまり、大気極から排気極側への電流移動がしやすい電極構造とすることができる。これにより、酸素センサのリーンガスに対する感度を向上させることができる。従って、この発明によれば、出力感度の良好な、かつ、感度の偏りによる出力のばらつきが抑制された酸素センサを得ることができる。この発明の実施の形態における酸素センサについて説明するための模式図である。この発明の実施の形態における酸素センサの活性化処理時の状態について説明するための模式図である。 以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。実施の形態.[本発明の実施の形態の酸素センサの構成] 図1は、この発明の実施の形態における酸素センサの構成について説明するための模式図である。図1では酸素センサ2のセンサ素子部を拡大して表している。図1の酸素センサ2は、例えば、内燃機関の排気経路の触媒下流に設置され、排気ガスの空燃比の変化の検出に用いられるものである。 図1の酸素センサ2は、固体電解質4と、固体電解質4を挟んで配置された一対の電極である大気極6と排気極8とを備えている。固体電解質4は、ジルコニア(二酸化ジルコニウム;ZrO2)等からなり、大気極6及び排気極8は白金粒子等からなる。 酸素センサ2には外部の大気が流入する大気室10が設けられており、大気極6は固体電解質4と接する面とは反対側において、大気室10の大気に接する構成となっている。大気室10には、酸素センサ2のセンサ素子部を加熱するためのヒータ12が配置されている。酸素センサ2は、複数の通気孔を有するケース(図示せず)に収納された状態で内燃機関の排気経路に設置される。酸素センサ2の排気極8は、複数の通気孔からケース内に流入した排気ガスに接する構成となっている。 酸素センサ2は、例えば、内燃機関の排気経路に設置された触媒の下流に配置される。酸素センサ2には、大気極6と排気極8とのそれぞれが接するガスの酸素濃度の差に応じた起電力が生じる。この起電力は、排気ガスが理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかによって急変する。従って、酸素センサ2に生じる起電力を検出することで、触媒下流の排気ガスが、理論空燃比に対してリッチとなっているかあるいはリーンとなっているかを検出することができる。[本実施の形態における特徴的な活性化処理について] ところで、従来の酸素センサに用いられる電極の触媒に対し、リーンガス成分であるNOxは反応性(剥離吸着性)が低い。一方、リッチガス成分のH2、CH4、COのうち、H2やCH4はリーンガス成分(NOx、O2)に比べて拡散速度が速く、COは電極吸着性が高い。このため従来の酸素センサの場合、リッチ出力を出しやすく、リーン出力感度が低いといった偏りを有している場合がある。 これに対し本発明の実施の形態では、製造後の初期段階(出荷時等、酸素センサ2の未使用状態)の酸素センサ2に下記の2つの工程からなる活性化処理を施すことで、酸素センサ2の感度のばらつきを抑制する。 図2は、本発明の実施の形態の活性化処理について説明するため、各処理工程における大気極6の状態を模式的に表した図である。図2において(a)は製造直後の未処理の状態を表し、(b)、(c)はそれぞれ後述する熱処理、電圧印加処理後の状態を表している。なお、図2では大気極6についてのみ図示しているが、排気極8も同時に処理され、排気極8も同様の状態となる。また、以下では、説明の簡略化のため、大気極6及び排気極8の一対の電極を、単に「電極」とも称することとする。(1)熱処理工程 製造後の初期段階で、酸素センサ2に高温雰囲気下で熱処理を施す。熱処理時の温度は約800℃〜約1200℃の範囲内とする。ここで上限温度(約1200℃)は、電極を構成する貴金属である白金が蒸発を開始する温度付近の温度である。より好ましい加熱温度は、センサが使用される環境下の温度である900℃程度である。 熱処理の時間は、保証したい走行距離や保証年数等を考慮して適宜、最適な値に設定される。また、熱処理の温度が高温である場合ほど必要な熱処理時間は短時間となる。具体的に例えば、ここでは1時間程度とされる。 熱処理は、低酸素濃度雰囲気下、又は還元雰囲気下で行われる。ここでの「低酸素濃度雰囲気」とは理論空燃比に対して僅かにリーンな雰囲気を意味し、「還元雰囲気」とは、酸化雰囲気ではない雰囲気、即ち、リッチ雰囲気又は理論空燃比の雰囲気を意味するものとする。より具体的に、低酸素濃度雰囲気としては例えば、酸素濃度0.1%以下の雰囲気が好ましい。また例えば、還元雰囲気としては、例えば、H2濃度1%以下の雰囲気などが好ましい。 上記の熱処理により、大気極6、排気極8のPt(白金)が酸化され融点が低下し、液化あるいは気化されて動きやすくなる。その後、温度低下により金属粒子が集まって分子間力により結合する。その結果、図2(b)に示されるように、大気極6、排気極8のPtの粒子径が大きくなり、かつ粒子間に空間が発生した状態で結合しポーラス化される。(2)プラス電圧印加 (1)の熱処理の後、大気極6と排気極8との間に電圧を印加する。電圧印加の方向は、大気極6をプラスとし、排気極8をマイナスとする方向、即ち、酸素イオンO2−が排気極8から大気極6側に移動し、電流が大気極6側から排気極8側に流れる方向である。 印加する電圧が大きい場合、固体電解質4であるZrO2中の酸素が放出され、黒化(ブラックニング)が生じてしまう。従って、ここで印加する電圧は、ブラックニングが生じない程度の電圧とする。より具体的には電圧の上限、下限を約±5Vとする。このとき電流値は電極の面積に応じて適宜設定される。 電圧の印加時間は、印加される電圧等に応じ最適な値に設定すればよいが、印加時間は印加電圧が大きくなるほど短時間とする。好ましい印加時間は約30秒〜約10分の範囲内である。電圧印加時の温度は、酸素センサ2が実際に使用される環境の上限温度とすることが望ましい。 上記の電圧印加により、大気極6と排気極8の反応活性点(A)の安定化が図られる。つまり電流を流すことで、まず反応活性点(A)に付着したコンダミや酸化物が分子レベルで除去される。これにより反応活性点は固体電解質4であるジルコニアになじみ、各電極と固体電解質4との密着性が向上し、安定化する。また、電圧印加は電極の粒子を細かくする作用があり、図2(c)に示されるように、電極の反応活性点(A)を増加させることができる。 更に、酸素センサ2の電極は、電圧を印加した方向の電流移動が生じやすい構造となる。つまり、大気極6から排気極8側への電流移動がしやすい電極構造となる。これにより酸素センサ2のリーンガスに対する感度を向上させることができる。 以上の処理により、実施の形態の酸素センサ2の出力の安定化を図ると共に、リーンガスに対する酸素センサ2の感度を向上させることができる。これにより、酸素センサ2の感度の偏りによる酸素センサ2の出力のばらつきを抑制することができる。従って、より高精度で安定して排気ガスの空燃比の変化を検知することができる。 なお、本実施の形態では、熱処理の後に、直ちにプラス電圧を印加する場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではない。例えば、上記熱処理の後、プラス電圧印加の前に、大気極側をマイナスとし排気極側がプラスとなる方向のマイナス電圧印加を行うものであってもよい。ただし、マイナス電圧印加は、上記のプラス電圧印加よりも短時間とする。またマイナス電圧印加における電圧は、プラス電圧印加と同程度の大きさとすればよい。 このように、マイナス電圧印加を行うことで、リッチガスに対しても反応性の向上を図ることができる。従ってマイナス電圧印加を行った酸素センサは、例えば、触媒上流に配置して、内燃機関から排出された触媒による浄化前の排気ガスを検知するセンサとして、特に有効である。 なお、以上の実施の形態において、電極としてPtが用いられる場合について説明したが、この発明はこれに限られるものではない。電極材料としては、Ptのほかに、例えばRh、Pdなどを用いる場合にも同様に適用することができる。 また、以上の実施の形態において、活性化処理は、酸素センサ2の製造後の初期の段階で実行する場合について説明した。しかし、この発明において上記の活性化処理は、酸素センサ2の使用開始後に、定期的に実行することとしてもよい。これにより酸素センサ2の経時劣化による出力ばらつきや感度低下を抑制することができる。 また、本実施の形態において言及した電圧、電流、温度、時間等の値等は、この発明を拘束するものではない。また本実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。 2 酸素センサ 4 固体電解質 6 大気極 8 排気極 大気極と、排気極と、前記大気極と前記排気極との間に配置された固体電解質とを備える起電力式の酸素センサに、所定の温度で熱処理を施す熱処理工程と、 前記熱処理工程の後、前記大気極と前記排気極との間に、前記大気極をプラスとし排気極をマイナスとする方向の電圧を印加するプラス電圧印加工程と、 を備えることを特徴とする酸素センサの活性化処理方法。 前記熱処理工程における熱処理の温度は、800℃〜1200℃の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載の酸素センサの活性化処理方法。 前記熱処理工程は、低酸素濃度雰囲気下又は還元雰囲気下で実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素センサの活性化処理方法。 前記プラス電圧印加工程における電圧は、前記固体電解質がブラックニングを起こさない範囲の電圧とされることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の酸素センサの活性化処理方法。 前記熱処理工程の後、前記プラス電圧印加工程の前に、前記大気極をマイナスとし排気極をプラスとする方向で、前記プラス電圧印加工程における電圧よりも小さな電圧を印加するマイナス電圧印加工程を、更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の酸素センサの活性化処理方法。 内燃機関の排気経路に配置されて用いられる起電力式の酸素センサであって、 固体電解質と、 前記固体電解質の一面側に配置され、かつ、前記排気経路に設置された状態において大気に接する側の電極である大気極と、 前記固体電解質の前記一面とは反対側の面に配置され、かつ、前記排気経路に設置された状態において排気ガスに接する側の電極である排気極と、を備え 所定の温度で熱処理を施され、 前記熱処理の後、前記大気極と前記排気極との間に、前記大気極をプラスとし排気極をマイナスとする方向の電圧を印加する活性化処理が施されたことを特徴とする酸素センサ。 【課題】起電力式の酸素センサのリッチガス、リーンガスに対する感度の偏りを抑制し、酸素センサの感度を向上させる。【解決手段】酸素センサは、大気極と、排気極と、大気極と排気極との間に配置された固体電解質とを備える起電力式のセンサとする。この酸素センサに対する活性化処理において、まず、酸素センサに所定の温度で熱処理を施す。この熱処理の後、大気極と排気極との間に、大気極をプラスとし、排気極をマイナスとする方向で、所定の電圧を印加する。【選択図】図2


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特許公報(B2)_酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサ

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タイトル:特許公報(B2)_酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサ
出願番号:2011047899
年次:2014
IPC分類:G01N 27/409


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青木 圭一郎 林下 剛 JP 5413387 特許公報(B2) 20131122 2011047899 20110304 酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサ トヨタ自動車株式会社 000003207 高橋 英樹 100106150 高田 守 100082175 大西 秀和 100113011 大塚 環 100117695 青木 圭一郎 林下 剛 20140212 G01N 27/409 20060101AFI20140123BHJP JPG01N27/58 B G01N 27/409 G01N 27/41 G01N 27/419 特開昭54−125094(JP,A) 特開昭55−141664(JP,A) 特開2009−133713(JP,A) 特開昭51−115888(JP,A) 特開昭55−039096(JP,A) 特開2002−048758(JP,A) 国際公開第2012/086079(WO,A1) 4 2012185021 20120927 7 20130417 黒田 浩一 この発明は、起電力式の酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサに関する。 車両の触媒下流に配置され、排気ガスの空燃比の検出に用いられるセンサとして、例えば、起電力式の酸素センサがある。起電力式の酸素センサは、一対の電極間の酸素濃度の差によって生じる起電力を出力とするセンサであり、その出力は、排気ガスが理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかに応じて大きく急変する。 特許文献1には、起電力式の酸素センサの活性化処理の手法が開示されている。特許文献1の技術では、酸素センサの一対の電極間に、500〜800℃の温度下で、所定の大きさの電圧を交番に印加する。この活性化処理は、酸素センサの作動前後で定期的に又は必要に応じて行われる。その結果、センサ素子の内部抵抗が低下し、酸素センサが活性化される。特開平06−265522号公報特公昭62−044613号公報特開2004−245680号公報 ところで、酸素センサは、例えば、車両の排気経路の触媒の下流に配置され、触媒下流の排気ガス空燃比の変化を検出するために用いられる。例えば、将来の低貴金属触媒を用いた排気システムでは、触媒の酸素吸蔵量が低下することが考えられる。従って、空燃比制御性向上の観点から、触媒下流のごく低濃度の排気ガスに対しても、より高く安定した感度を有する酸素センサが求められる。 しかし排気ガス中のリーン成分であるNOxは、センサの電極での反応性が低い。一方、リッチガス成分であるH2、CH4、COのうち、H2やCH4はリーン成分(O2、NOx)よりも拡散速度が速く、COはセンサの電極上での吸着性が高い。このため酸素センサはリッチ出力をだしやすく、リーン出力感度が低くなりやすい傾向があり、酸素センサの出力に感度差による偏りが生じる場合がある。このような酸素センサの偏りは、空燃比制御向上の観点からは好ましいものではない。 この点、上記特許文献1の酸素センサの活性化処理は、大気極及び排気極の電極界面の低抵抗化による反応性の向上を主目的とするものである。即ち、特許文献1によれば、酸素センサの電極のリッチガス、リーンガス双方に対する反応性、応答性が向上する。しかし、特許文献1の活性化処理では、酸素センサのリッチガス、リーンガスに対する酸素センサの感度の偏りを解決することはできない。 この発明は上記課題を解決することを目的とし、起電力式の酸素センサのリッチガス、リーンガスに対する感度の偏りを抑制し、酸素センサの感度を向上させることができるよう改良した酸素センサの活性化処理方法及び酸素センサを提供するものである。 上記の目的を達成するため、この発明の酸素センサの活性化処理方法では、まず、大気極と、排気極と、大気極と排気極との間に配置された固体電解質とを備える起電力式の酸素センサに、所定の温度で熱処理を施す(熱処理工程)。その後、大気極と前記排気極との間に、大気極をプラスとし排気極をマイナスとする方向の電圧を印加する(プラス電圧印加工程)。 熱処理工程における熱処理の温度は、800℃〜1200℃の範囲内とすることが好ましい。また、熱処理工程は、低酸素濃度雰囲気下又は還元雰囲気下で実行されることが望ましい。ここで、「低酸素濃度雰囲気」とは、理論空燃比より僅かにリーンな雰囲気を意味するものとする。また、「還元雰囲気」とは、酸化雰囲気ではない雰囲気、即ち、リッチ雰囲気又は理論空燃比の雰囲気を意味するものとする。 プラス電圧印加工程における電圧は、固体電解質がブラックニングを起こさない範囲の電圧とされることが望ましい。 また、この発明の活性化処理方法は、熱処理工程の後、プラス電圧印加工程の前に、大気極をマイナスとし排気極をプラスとする方向で、プラス電圧印加工程における電圧よりも小さな電圧を印加するものであってもよい。 この発明における酸素センサは、内燃機関の排気経路に配置されて用いられる起電力式の酸素センサであって、固体電解質と、固体電解質の一面側に配置され、かつ、排気経路に設置された状態において大気に接する側の電極である大気極と、固体電解質の前記一面とは反対側の面に配置され、かつ、排気経路に設置された状態において排気ガスに接する側の電極である排気極と、を備える。また、酸素センサは、初期の段階で、所定の温度で熱処理を施され、熱処理の後、大気極と排気極との間に、大気極をプラスとし排気極をマイナスとする方向の電圧を印加する活性化処理が施されたものとする。 この発明によれば、熱処理及びプラス電圧印加処理により、大気極、排気極と固体電解質との界面における反応活性点を増加させ、かつ、安定化させることができる。また、プラス電圧印加処理により、電圧を印加した方向の電流移動、つまり、大気極から排気極側への電流移動がしやすい電極構造とすることができる。これにより、酸素センサのリーンガスに対する感度を向上させることができる。従って、この発明によれば、出力感度の良好な、かつ、感度の偏りによる出力のばらつきが抑制された酸素センサを得ることができる。この発明の実施の形態における酸素センサについて説明するための模式図である。この発明の実施の形態における酸素センサの活性化処理時の状態について説明するための模式図である。 以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。実施の形態.[本発明の実施の形態の酸素センサの構成] 図1は、この発明の実施の形態における酸素センサの構成について説明するための模式図である。図1では酸素センサ2のセンサ素子部を拡大して表している。図1の酸素センサ2は、例えば、内燃機関の排気経路の触媒下流に設置され、排気ガスの空燃比の変化の検出に用いられるものである。 図1の酸素センサ2は、固体電解質4と、固体電解質4を挟んで配置された一対の電極である大気極6と排気極8とを備えている。固体電解質4は、ジルコニア(二酸化ジルコニウム;ZrO2)等からなり、大気極6及び排気極8は白金粒子等からなる。 酸素センサ2には外部の大気が流入する大気室10が設けられており、大気極6は固体電解質4と接する面とは反対側において、大気室10の大気に接する構成となっている。大気室10には、酸素センサ2のセンサ素子部を加熱するためのヒータ12が配置されている。酸素センサ2は、複数の通気孔を有するケース(図示せず)に収納された状態で内燃機関の排気経路に設置される。酸素センサ2の排気極8は、複数の通気孔からケース内に流入した排気ガスに接する構成となっている。 酸素センサ2は、例えば、内燃機関の排気経路に設置された触媒の下流に配置される。酸素センサ2には、大気極6と排気極8とのそれぞれが接するガスの酸素濃度の差に応じた起電力が生じる。この起電力は、排気ガスが理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかによって急変する。従って、酸素センサ2に生じる起電力を検出することで、触媒下流の排気ガスが、理論空燃比に対してリッチとなっているかあるいはリーンとなっているかを検出することができる。[本実施の形態における特徴的な活性化処理について] ところで、従来の酸素センサに用いられる電極の触媒に対し、リーンガス成分であるNOxは反応性(剥離吸着性)が低い。一方、リッチガス成分のH2、CH4、COのうち、H2やCH4はリーンガス成分(NOx、O2)に比べて拡散速度が速く、COは電極吸着性が高い。このため従来の酸素センサの場合、リッチ出力を出しやすく、リーン出力感度が低いといった偏りを有している場合がある。 これに対し本発明の実施の形態では、製造後の初期段階(出荷時等、酸素センサ2の未使用状態)の酸素センサ2に下記の2つの工程からなる活性化処理を施すことで、酸素センサ2の感度のばらつきを抑制する。 図2は、本発明の実施の形態の活性化処理について説明するため、各処理工程における大気極6の状態を模式的に表した図である。図2において(a)は製造直後の未処理の状態を表し、(b)、(c)はそれぞれ後述する熱処理、電圧印加処理後の状態を表している。なお、図2では大気極6についてのみ図示しているが、排気極8も同時に処理され、排気極8も同様の状態となる。また、以下では、説明の簡略化のため、大気極6及び排気極8の一対の電極を、単に「電極」とも称することとする。(1)熱処理工程 製造後の初期段階で、酸素センサ2に高温雰囲気下で熱処理を施す。熱処理時の温度は約800℃〜約1200℃の範囲内とする。ここで上限温度(約1200℃)は、電極を構成する貴金属である白金が蒸発を開始する温度付近の温度である。より好ましい加熱温度は、センサが使用される環境下の温度である900℃程度である。 熱処理の時間は、保証したい走行距離や保証年数等を考慮して適宜、最適な値に設定される。また、熱処理の温度が高温である場合ほど必要な熱処理時間は短時間となる。具体的に例えば、ここでは1時間程度とされる。 熱処理は、低酸素濃度雰囲気下、又は還元雰囲気下で行われる。ここでの「低酸素濃度雰囲気」とは理論空燃比に対して僅かにリーンな雰囲気を意味し、「還元雰囲気」とは、酸化雰囲気ではない雰囲気、即ち、リッチ雰囲気又は理論空燃比の雰囲気を意味するものとする。より具体的に、低酸素濃度雰囲気としては例えば、酸素濃度0.1%以下の雰囲気が好ましい。また例えば、還元雰囲気としては、例えば、H2濃度1%以下の雰囲気などが好ましい。 上記の熱処理により、大気極6、排気極8のPt(白金)が酸化され融点が低下し、液化あるいは気化されて動きやすくなる。その後、温度低下により金属粒子が集まって分子間力により結合する。その結果、図2(b)に示されるように、大気極6、排気極8のPtの粒子径が大きくなり、かつ粒子間に空間が発生した状態で結合しポーラス化される。(2)プラス電圧印加 (1)の熱処理の後、大気極6と排気極8との間に電圧を印加する。電圧印加の方向は、大気極6をプラスとし、排気極8をマイナスとする方向、即ち、酸素イオンO2−が排気極8から大気極6側に移動し、電流が大気極6側から排気極8側に流れる方向である。 印加する電圧が大きい場合、固体電解質4であるZrO2中の酸素が放出され、黒化(ブラックニング)が生じてしまう。従って、ここで印加する電圧は、ブラックニングが生じない程度の電圧とする。より具体的には電圧の上限、下限を約±5Vとする。このとき電流値は電極の面積に応じて適宜設定される。 電圧の印加時間は、印加される電圧等に応じ最適な値に設定すればよいが、印加時間は印加電圧が大きくなるほど短時間とする。好ましい印加時間は約30秒〜約10分の範囲内である。電圧印加時の温度は、酸素センサ2が実際に使用される環境の上限温度とすることが望ましい。 上記の電圧印加により、大気極6と排気極8の反応活性点(A)の安定化が図られる。つまり電流を流すことで、まず反応活性点(A)に付着したコンダミや酸化物が分子レベルで除去される。これにより反応活性点は固体電解質4であるジルコニアになじみ、各電極と固体電解質4との密着性が向上し、安定化する。また、電圧印加は電極の粒子を細かくする作用があり、図2(c)に示されるように、電極の反応活性点(A)を増加させることができる。 更に、酸素センサ2の電極は、電圧を印加した方向の電流移動が生じやすい構造となる。つまり、大気極6から排気極8側への電流移動がしやすい電極構造となる。これにより酸素センサ2のリーンガスに対する感度を向上させることができる。 以上の処理により、実施の形態の酸素センサ2の出力の安定化を図ると共に、リーンガスに対する酸素センサ2の感度を向上させることができる。これにより、酸素センサ2の感度の偏りによる酸素センサ2の出力のばらつきを抑制することができる。従って、より高精度で安定して排気ガスの空燃比の変化を検知することができる。 なお、本実施の形態では、熱処理の後に、直ちにプラス電圧を印加する場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではない。例えば、上記熱処理の後、プラス電圧印加の前に、大気極側をマイナスとし排気極側がプラスとなる方向のマイナス電圧印加を行うものであってもよい。ただし、マイナス電圧印加は、上記のプラス電圧印加よりも短時間とする。またマイナス電圧印加における電圧は、プラス電圧印加と同程度の大きさとすればよい。 このように、マイナス電圧印加を行うことで、リッチガスに対しても反応性の向上を図ることができる。従ってマイナス電圧印加を行った酸素センサは、例えば、触媒上流に配置して、内燃機関から排出された触媒による浄化前の排気ガスを検知するセンサとして、特に有効である。 なお、以上の実施の形態において、電極としてPtが用いられる場合について説明したが、この発明はこれに限られるものではない。電極材料としては、Ptのほかに、例えばRh、Pdなどを用いる場合にも同様に適用することができる。 また、以上の実施の形態において、活性化処理は、酸素センサ2の製造後の初期の段階で実行する場合について説明した。しかし、この発明において上記の活性化処理は、酸素センサ2の使用開始後に、定期的に実行することとしてもよい。これにより酸素センサ2の経時劣化による出力ばらつきや感度低下を抑制することができる。 また、本実施の形態において言及した電圧、電流、温度、時間等の値等は、この発明を拘束するものではない。また本実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。 2 酸素センサ 4 固体電解質 6 大気極 8 排気極 大気極と、排気極と、前記大気極と前記排気極との間に配置された固体電解質とを備える起電力式の酸素センサに、所定の温度で熱処理を施す熱処理工程と、 前記熱処理工程の後、前記大気極と前記排気極との間に、前記大気極をプラスとし排気極をマイナスとする方向の電圧を印加するプラス電圧印加工程と、 前記熱処理工程の後、前記プラス電圧印加工程の前に、前記大気極をマイナスとし排気極をプラスとする方向で、前記プラス電圧印加工程における電圧よりも小さな電圧を印加するマイナス電圧印加工程と、 を備えることを特徴とする酸素センサの活性化処理方法。 前記熱処理工程における熱処理の温度は、800℃〜1200℃の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載の酸素センサの活性化処理方法。 前記熱処理工程は、低酸素濃度雰囲気下又は還元雰囲気下で実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素センサの活性化処理方法。 前記プラス電圧印加工程における電圧は、前記固体電解質がブラックニングを起こさない範囲の電圧とされることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の酸素センサの活性化処理方法。


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