タイトル: | 公開特許公報(A)_経皮吸収評価装置及び評価方法 |
出願番号: | 2011045294 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12M 1/34,G01N 33/50,C12Q 1/02 |
吉田 大介 松本 ゆき子 矢作 彰一 JP 2011200224 公開特許公報(A) 20111013 2011045294 20110302 経皮吸収評価装置及び評価方法 日光ケミカルズ株式会社 000226437 株式会社コスモステクニカルセンター 301068114 吉田 大介 松本 ゆき子 矢作 彰一 JP 2010046417 20100303 C12M 1/34 20060101AFI20110916BHJP G01N 33/50 20060101ALI20110916BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20110916BHJP JPC12M1/34 AG01N33/50 QC12Q1/02 7 1 OL 14 2G045 4B029 4B063 2G045AA40 2G045CB09 4B029AA07 4B029BB11 4B029CC11 4B029FA12 4B029GA08 4B029GB04 4B029GB06 4B029GB10 4B063QA05 4B063QA18 4B063QQ02 4B063QQ08 4B063QQ23 4B063QQ36 4B063QQ67 4B063QQ70 4B063QQ79 4B063QQ89 4B063QQ91 4B063QR72 4B063QR77 本発明は、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを特徴とする経皮吸収評価装置及びその評価方法に関する。 従来、物質の経皮吸収については、フランツ型セルやside−by−sideセルなどを利用して皮膚を透過した物質量を測定し、得られた累積透過量からFluxなどの物質透過パラメータを算出し、物質そのもの、あるいは製剤のポテンシャルを評価するものである。一方、物質の有効性及び/又は安全性の評価は、細胞に直接物質を暴露させてその生理活性を評価してきた。そのため、皮膚に吸収された物質が、実際に標的とする細胞までどのくらい送達されるのか、そして、送達された物質が本当に有効性及び/又は安全性を示すのかを同時に評価する方法はなく、間接的に考察するのみであった。 ところで、共培養物を利用した技術及び評価方法としては、賦活化する物質をスクリーニングすること等に応用できる共培養物に関する技術(特許文献1)や、アレルゲンの評価で2つの細胞を共培養したものを利用する技術(特許文献2)のなどが報告されている。また、メラノサイト及びケラチノサイトを共培養してメラノサイトからケラチノサイトへのメラノソーム転送を検出する方法について報告されている(特許文献3)。しかしながら、一般には、安定かつ効率的に共培養物を作成する条件を見出すには、培地の最適化やpHの調整など非常に煩雑な作業を要する。 また、物質の有効性や安全性を容易に試験するための装置として、再構成組織のサンプルと、物理的、生物学的及び/又は化学的刺激がサンプルに与える影響、又はサンプルが物理的、生物学的及び/又は化学的刺激に与える影響を検出システムと関連づけた装置や(特許文献4)、再構成表皮と免疫細胞を共培養することで、より皮膚に近い安定な評価モデルとなりうることが報告されているが、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを特徴とする経皮吸収評価装置及びその評価方法についての報告はこれまでにない。特開2008−119010号公報特開2003−512626号公報特開2005−249390号公報特表2008−520199号公報M. Ishikawa et.al, Co-culture systems between U937 or THP-1 and Episkin as new in vitro skin sensitization models, VII World Congress on Alternatives & Animal Use in the Life Sciences, Final Programme, ID ABS: 567, p61, 2009 上述の通り、従来、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを特徴とする経皮吸収評価装置及びその評価方法については知られていない。従って、新規の物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時かつ簡便に測定できる経皮吸収評価装置及びその評価方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを特徴とする経皮吸収評価装置及びその評価方法について鋭意研究した結果、表皮等価物と、評価対象細胞とを用いた装置、より好ましくは表皮等価物として培養皮膚と評価対象細胞とを共培養した装置を用いることにより、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明に記載の経皮吸収評価装置を用いることにより、従来、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に困難だった評価を、簡便かつ迅速に測定できる。従って、物質及び/又は物質を含む外用組成物がもつ、皮膚に対する効果を直接的に測定できることから、実際に皮膚に塗布して有効に作用する物質及び/又は物質を含む外用組成物の開発を効率よくおこなうことができる。本発明に係る、経皮吸収評価装置である。本発明に係る、経皮吸収評価装置である。本発明に係る、細胞が培地中に浮遊している状態の経皮吸収評価装置である。本発明の実施例1に係るEPISKINを用いた経皮吸収評価装置のセッティング図である。本発明の実施例1に係るRHEを用いた経皮吸収評価装置のセッティング図である。 以下、本発明の構成を更に詳細に説明する。 本発明に係わる経皮吸収評価装置は、表皮等価物と、評価対象細胞とを用いるものである。本発明に係わる経皮吸収評価装置は、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定することができる。 本発明で用いる表皮等価物としては、培養皮膚、シリコンフィルム、濾過膜、セルロース膜からなる群から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。これらは特に限定されるものではないが、物質の代謝を含め、より皮膚に近い環境で測定することが望ましい場合は、再構成皮膚を用いて評価対象細胞と共培養して用いることが望ましいが、おおよその見当をつける場合など安価に評価する場合はその限りではない。 培養再構成皮膚としては、RHE再生ヒト表皮モデル(SkinEthic社製)、EPISKIN再生ヒト表皮モデル(SkinEthic社製)、皮膚3次元モデルEPI−200・212・200X・606・606X・201(MatTek社製)、皮膚3次元モデルEFT−400・412(MatTek社製)、TESTSKINTM(TOYOBO社製)、LSE−high MATREXTM LDM(TOYOBO社製)、LabCyte EPI−MODEL、(J−TEC社製)などの市販品が挙げられるが、再構成皮膚の強度が強い点を考慮するとRHE再生ヒト表皮モデルおよび、EPISKIN再生ヒト表皮モデルを用いるのが望ましい。なお、種類の異なる単層培養細胞を共培養するためには、培地の最適化やpHの選定など非常に煩雑な作業を要するが、再構成皮膚を用いることで簡便に評価対象細胞との安定かつ効率的に共培養物を作成することができる。 本発明で用いる評価対象細胞としては、線維芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、ランゲルハンス細胞、単球細胞、色素細胞などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。これらの評価対象細胞は、有効性及び/又は安全性の評価目的によって適宜選択されるべきである。 有効性の評価に用いる細胞としては、特に限定されるものではないが、線維芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、色素細胞などが挙げられる。安全性の評価に用いる細胞としては、特に限定されるものではないが、ランゲルハンス細胞、単球細胞などが挙げられるほか、細胞毒性を評価する場合は、血管内皮細胞や線維芽細胞などを用いることもできる。 評価対象細胞として、線維芽細胞を用いた場合、経皮吸収した物質が発現する線維芽細胞におけるコラーゲン産生作用、ヒアルロン酸産生作用、エラスチン産生作用、細胞増殖促進及び/又は抑制作用、各種サイトカイン産生促進及び/又は抑制作用の評価、フィブリリン産生作用、コラーゲナーゼなどのマトリクスメタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼなどの活性及び/又は産生阻害などのプロテアーゼ活性抑制作用などの評価をおこなうことができる。 評価対象細胞として、脂肪細胞を用いた場合、経皮吸収した物質が発現する脂肪細胞における脂質分解作用、リパーゼ活性阻害、細胞増殖促進及び/又は抑制作用、各種サイトカイン産生促進及び/又は抑制作用などの評価をおこなうことができる。 評価対象細胞として、血管内皮細胞を用いた場合、経皮吸収した物質が発現する血管内皮細胞における細胞増殖促進及び/又は抑制作用、一酸化窒素産生作用、各種サイトカイン産生促進及び/又は抑制作用などの評価をおこなうことができる。各種サイトカインとしては、特に限定されるものではないが、インターロイキン、インターフェロン、TGF、FGF、KGF、HGF、IGF、エイコサノイド、SCF、MCP及びCSFなどが挙げられる。これらの評価をすることで、抗炎症作用、抗老化作用、美白作用、などの有効性を評価することができる。 評価対象細胞として、ランゲルハンス細胞を用いた場合、経皮吸収した物質が発現するランゲルハンス細胞における各種表面抗原産生促進及び/又は抑制作用などの評価をおこなうことができる。 評価対象細胞として、単球細胞を用いた場合、経皮吸収した物質が発現する単球細胞における感作性などの評価をおこなうことができる。 評価対象細胞として、色素細胞を用いた場合、経皮吸収した物質が発現する色素細胞におけるメラニン産生促進及び/又は抑制作用、チロシナーゼ活性促進及び/又は抑制作用、チロシナーゼ産生促進及び/又は抑制作用、各種サイトカイン産生促進及び/又は抑制作用の評価をおこなうことができる。 評価対象となる物質は、主に化粧品及び/又は医薬品に利用できる成分を対象とし、そのまま皮膚等価物に塗布することもできるし、水、油性成分、各種溶媒などに溶解又は分散物として、更に乳化製剤として適用することもできる。また、化粧品、例えば抗老化用化粧品、美白用化粧品、保湿用化粧品、サンスクリーン化粧品、トイレタリー製品、医薬品製剤などを塗布することができる。 化粧品及び/又は医薬品に利用できる成分のうち、生理活性成分としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、トラネキサム酸及びその誘導体、エラグ酸、ルシノールなどの美白剤、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、アミノ酸、糖類、ムコ多糖、セラミド、ステロール及びその誘導体、リン脂質及びそれらの誘導体などの肌荒れ防止剤、レチノール及びそれらの誘導体、ビタミンA酸およびそれらの誘導体、コトリエノール、ユビキノン、アロエ、オウゴンなどの抗老化剤や各種ビタミン類やその誘導体、トコフェロール、酢酸トコフェロール、SOD、β−カロテン、カテキン、ポリフェノールなどの抗酸化剤、カフェイン、カカオ、セイヨウキズタ、ビスナジンなどのスリミング剤、カモミラ、シソ、カルニチン、リン脂質及びそれらの誘導体、機能性多糖などの抗炎症剤などが挙げられる。 また、生理活性成分などがより効率的に経皮吸収され、有効性及び/又は安全性がより発現される化粧品又は医薬品の剤型を検討するための方法としても利用できるため、化粧品又は医薬品の処方設計の検討に利用すると非常に効率的にそれらの開発を進めることができる。 物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定するには、図1または図2の培地をサンプリングして測定すればよい。物質の皮膚透過量は例えば、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーを用いて定量することができ、透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価は、例えば評価対象細胞として線維芽細胞を用いてコラーゲン産生促進作用を評価する場合は、ELISA法により、また、コラーゲナーゼ活性作用を評価する場合は、擬似基質を用いた活性測定法により評価することができる。 図1または図2は、表皮等価物と、評価対象細胞とを用いることを特徴とする、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを特徴とする経皮吸収評価装置である。 本経皮吸収評価装置は、皮膚等価物3を支持するバスケット2を収容するウェル1を含む。ウェル1が配置されるバスケット2は、ウェル1を着脱可能に固定できてもよい。バスケット2は皮膚等価物3を支持する底壁7を含む。底壁7は貫通穴8を有する。また、バスケット2に底膜7を固定するためのインサート9を有するものもある。バスケットという用語は制限的な意味で使用するものではなく、ウェル1内に配置された任意の支持体を含む。ウェル1は、複数(例えば12個)のウェルを有するプレートの一部を固定することができる。ウェル1には、溶液5(例えば、培地など)が充填されている。表皮等価物3は、例えば前述の培養皮膚などである。評価対象細胞4は、例えば前述の線維芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、ランゲルハンス細胞、色素細胞などである。評価対象となる物質6は、例えば化粧品及び/又は医薬品に利用できる成分、それを含む溶液、溶解又は分散物、乳化製剤、また、化粧品、トイレタリー製品、医薬品製剤などである。表皮等価物は、例えば、0.2〜5cm2の範囲、特に0.3〜2cm2の範囲の面積を有する。 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。 リン酸L−アスコルビルマグネシウム又はL−アスコルビン酸の水溶液又はそれを含有する乳化製剤の経皮吸収試験 1.試験の概要 皮膚の抗老化素材であるリン酸L−アスコルビルマグネシウム(以下、VCPMg)又はL−アスコルビン酸(以下、VC)の水溶液又はVCPMg又はVCを含有する乳化製剤適用後のVCPMgの累積透過量及び線維芽細胞のコラーゲン産生量をそれぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定法及びELISA法にて測定した。なお、コラーゲン産生量を測定する試験であるため、支持体の構成物の影響を考慮し、2種類の異なる表皮等価物を用いて評価した(EPISKIN;コラーゲン、RHE;ポリカーボネート)。 2.実験方法 経皮吸収試験の前日にヒト正常線維芽細胞を播種し、EPISKINまたはRHEをプレインキュベーションした。試験当日EPISKINまたはRHEとヒト正常線維芽細胞をKG2培地で共培養し、試料を適用した。図4および図5は、経皮吸収試験のセッティングである(表皮等価物3はEPISKINまたはRHE、評価対象細胞4は線維芽細胞、評価対象となる物質6はVCPMg水溶液又はVCPMgを含有する乳化製剤)。24時間後に試料を取り除き、48時間までインキュベーションを続けた。経時的に培養液を採取しVCPMg又はVCの累積透過量をHPLCにて測定した。また、48時間後に採取した培養液中コラーゲン産生量をELISA法にて測定した。コントロールとして、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。 3.結果 EPISKIN を用いた場合のVCPMg又はVCの累積透過量を表1に、48時間後のコラーゲン産生量を表2に示した。またRHEを用いた場合のVCPMg又はVCの累積透量を表3に、48時間後のコラーゲン産生量を表4に示した。いずれの表皮等価物を用いても累積透過量は製剤中VCPMg又はVC濃度および時間依存的に増加した。48時間後のコラーゲン産生量は製剤中VCPMg又はVC濃度依存的に増加した。また、単純な水溶液よりも乳化製剤とした方がより、累積透過量及びコラーゲン産生量が高かった。 なお、VCPMgとVCを比較すると、VCはVCPMgよりも累積透過量及びコラーゲン産生量が低かった。これは、VCが再構成皮膚を通過するときに代謝、分解されやすいことから、VCとして線維芽細胞に到達しにくかったためと考えられる。 線維芽細胞にVCを直接暴露させてコラーゲン産生能を評価した場合、その効果が極めて高いことがよく知られているが、実際に皮膚に塗布した場合は、VCよりもVCPMgの方がはるかに有効であることが示唆された。 また、EPISKINと比較して、RHEではコラーゲン量の定量により適していることが示された。すなわち、本経皮吸収装置でコラーゲン量を評価する場合、支持体がコラーゲンで構成されているEPISKINよりも、支持体の構成物がポリカーボネートであるRHEが、表皮等価物として適していることが示唆された。 本結果より、本経皮吸収評価装置は、物質の経皮吸収量及び経皮吸収した物質が評価対象細胞である線維芽細胞に作用して発現する効果を同時にかつ簡便に評価できることが明らかとなった。N−アセチルグルコサミンの水溶液又はそれを含有する乳化製剤の経皮吸収試験 1.試験の概要 皮膚の抗老化素材であるN−アセチルグルコサミン(以下、NAG)水溶液又はNAGを含有する乳化製剤適用後のNAG累積透過量及び線維芽細胞のヒアルロン酸産生量をそれぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定法及びELISA法にて測定した。 2.実験方法 経皮吸収試験の前日にヒト正常線維芽細胞を播種し、EPISKINをプレインキュベーションした。試験当日EPISKINとヒト正常線維芽細胞をKG2培地で共培養し、試料を適用した。図4は、経皮吸収試験のセッティングである(表皮等価物3はEPISKIN、評価対象細胞4は線維芽細胞、評価対象となる物質6はNAG水溶液又はNAGを含有する乳化製剤)。24時間後に試料を取り除き、48時間までインキュベーションを続けた。経時的に培養液を採取しNAGの累積透過量をHPLCにて測定した。また、48時間後に採取した培養液中ヒアルロン酸産生量をELISA法にて測定した。コントロールとして、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。 3.結果 NAG累積透過量を表5に、48時間後のヒアルロン酸産生量を表6に示した。累積透過量は製剤中NAG濃度および時間依存的に増加した。48時間後のヒアルロン酸産生量は製剤中NAG濃度の依存的に増加した。そして、単純な水溶液よりも乳化製剤とした方がより、累積透過量及びヒアルロン酸産生量が高かった。 本結果より、本経皮吸収評価装置は、物質の経皮吸収量及び経皮吸収した物質が評価対象細胞である線維芽細胞に作用して発現する効果を同時にかつ簡便に評価できることが明らかとなった。Epigallocatechin-3-gallateの水溶液又はそれを含有する乳化製剤の経皮吸収試験 1.試験の概要 皮膚の抗酸化及び抗老化素材であるEpigallocatechin-3-gallate(以下、EGCG)水溶液又はEGCGを含有する乳化製剤適用後のEGCG累積透過量及び線維芽細胞のコラーゲナーゼ活性をそれぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定法及び擬似基質にて測定した。 2.実験方法 経皮吸収試験の前日にヒト正常線維芽細胞を播種し、EPISKINをプレインキュベーションした。試験当日EPISKINとヒト正常線維芽細胞をKG2培地で共培養し、試料を適用した。図4は、経皮吸収試験のセッティングである(表皮等価物3はEPISKIN、評価対象細胞4は線維芽細胞、評価対象となる物質6はEGCG水溶液又はEGCGを含有する乳化製剤)。24時間後に試料を取り除き、48時間までインキュベーションを続けた。経時的に培養液を採取しEGCG累積透過量をHPLCにて測定した。また、48時間後に採取した培養液中のコラーゲナーゼ活性を擬似基質にて測定した。コントロールとして、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。 3.結果 EGCGの累積透過量を表7に、48時間後のコラーゲナーゼ活性を表8に示した。累積透過量は製剤中EGCG濃度および時間依存的に増加した。48時間後のコラーゲナーゼ活性は製剤中EGCG濃度の依存的に増加した。そして、単純な水溶液よりも乳化製剤とした方がより、累積透過量は高く、コラーゲナーゼ活性は低くなった。 本結果より、本経皮吸収評価装置は、物質の経皮吸収量及び経皮吸収した物質が評価対象細胞である線維芽細胞に作用して発現する効果を同時にかつ簡便に評価できることが明らかとなった。L−カルニチンの水溶液又はそれを含有する乳化製剤の経皮吸収試験 1.試験の概要 皮膚のスリミング素材であるL−カルニチン水溶液又はL−カルニチンを含有する乳化製剤適用後のL−カルニチン累積透過量及び脂肪細胞の脂肪分解作用をそれぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定法及び遊離グリセロール定量にて測定した。 2.実験方法 経皮吸収試験の前日に脂肪細胞を播種し、EPISKINをプレインキュベーションした。試験当日EPISKINと脂肪細胞をKG2培地で共培養(KG2)し、試料を適用した。図4は、経皮吸収試験のセッティングである(表皮等価物3はEPISKIN、評価対象細胞4は脂肪細胞、評価対象となる物質6はL−カルニチン水溶液又はL−カルニチンを含有する乳化製剤。24時間後に試料を取り除き、48時間までインキュベーションを続けた。経時的に培養液を採取しL−カルニチン累積透過量をHPLCにて測定した。また、48時間後に採取した培養液中の遊離グリセロール量を測定した。コントロールとして、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。 3.結果 L−カルニチン累積透過量を表9に、48時間後の脂肪分解作用を表10に示した。累積透過量は製剤中L−カルニチン濃度および時間依存的に増加した。48時間後の脂肪分解作用は製剤中L−カルニチン濃度の依存的に増加した。そして、単純な水溶液よりも乳化製剤とした方がより、累積透過量及び遊離グリセロールが高かった。 本結果より、本経皮吸収評価装置は、物質の経皮吸収量及び経皮吸収した物質が評価対象細胞である脂肪細胞に作用して発現する効果を同時にかつ簡便に評価できることが明らかとなった。リゾフォスファチジン酸の水溶液又はそれを含有する乳化製剤の経皮吸収試験 1.試験の概要 リゾフォスファチジン酸(以下、LPA)水溶液又はLPAを含有する乳化製剤適用後のLPA累積透過量及び血管内皮細胞の一酸化窒素産生促進作用をそれぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定法及びGriess法にて測定した。 2.実験方法 経皮吸収試験の前日に血管内皮細胞を播種し、EPISKINをプレインキュベーションした。試験当日EPISKINと血管内皮細胞をKG2培地で共培養し、試料を適用した。図4は、経皮吸収試験のセッティングである(表皮等価物3はEPISKIN、評価対象細胞4は血管内皮細胞、評価対象となる物質6はLPA水溶液又はLPAを含有する乳化製剤。24時間後に試料を取り除き、48時間までインキュベーションを続けた。経時的に培養液を採取しLPA累積透過量をHPLCにて測定した。また、48時間後に採取した培養液中の一酸化窒素量をGriess法にて測定した。 3.結果 LPA累積透過量を表11に、48時間後の一酸化窒素産生促進作用を表12に示した。累積透過量は製剤中LPA濃度および時間依存的に増加した。48時間後の一酸化窒素産生促進作用は製剤中LPA濃度の依存的に増加した。そして、単純な水溶液よりも乳化製剤とした方がより、累積透過量及び一酸化窒素量が高かった。 本結果より、本経皮吸収評価装置は、物質の経皮吸収量及び経皮吸収した物質が評価対象細胞である血管内皮細胞に作用して発現する効果を同時にかつ簡便に評価できることが明らかとなった。コウジ酸又はコウジ酸ジイソパルミチル(以下、KIP)の水溶液又はそれを含有する乳化製剤の経皮吸収試験 1.試験の概要 皮膚の美白素材であるコウジ酸又はKIPの水溶液又はコウジ酸又はKIPを含有する乳化製剤適用後のコウジ酸累積透過量、チロシナーゼ活性阻害作用及び色素細胞のメラニン産生抑制作用をそれぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定法、ドーパオキシダーゼ活性測定法及びアルカリ可溶化法にて測定した。 2.実験方法 経皮吸収試験の前日に色素細胞を播種し、EPISKINをプレインキュベーションした。試験当日EPISKINと色素細胞をKG2培地で共培養し、試料を適用した。図4は、経皮吸収試験のセッティングである(表皮等価物3はEPISKIN、評価対象細胞4は色素細胞、評価対象となる物質6はコウジ酸水溶液又はコウジ酸を含有する乳化製剤。24時間後に試料を取り除き、一週間までインキュベーションを続けた。経時的に培養液を採取しコウジ酸又はKIPの累積透過量をHPLCにて測定した。また、チロシナーゼ活性阻害作用はドーパオキシダーゼ活性測定法にて測定し、一週間後に採取した色素細胞中のメラニン量をアルカリ可溶化法にて測定した。コントロールとして、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。 3.結果 コウジ酸又はKIPの累積透過量を表13に、チロシナーゼ活性阻害作用及び一週間後のメラニン産生抑制作用を表14に示した。累積透過量は製剤中コウジ酸又はKIPの濃度および時間依存的に増加した。チロシナーゼ活性阻害作用及びメラニン産生抑制作用は製剤中コウジ酸又はKIPの濃度依存的に増加した。また、コウジ酸については、単純な水溶液よりも乳化製剤とした方が、より累積透過量が高かった。 なお、コウジ酸とKIPの乳化製剤での結果を比較すると、コウジ酸はKIPよりも累積透過量、チロシナーゼ活性阻害作用及びメラニン産生抑制作用が低かった。これは、コウジ酸が皮膚のとの親和性が低いため経皮吸収しにくいことから、コウジ酸として色素細胞に到達しにくかったためと考えられる。 色素細胞にコウジ酸を直接暴露させてチロシナーゼ活性阻害作用又はメラニン産生抑制作用を評価した場合、その効果が極めて高いことがよく知られているが、実際に皮膚に塗布した場合は、コウジ酸よりもKIPの方がはるかに有効であることが示唆された。 本結果より、本経皮吸収評価装置は、物質の経皮吸収量及び経皮吸収した物質が評価対象細胞である色素細胞に作用して発現する効果を同時にかつ簡便に評価できることが明らかとなった。 1 ウェル 2 バスケット 3 表皮等価物 4 評価対象細胞 5 溶液 6 物質 7 底壁 8 貫通穴 9 インサート表皮等価物と、評価対象細胞とを用いることを特徴とする、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを特徴とする経皮吸収評価装置。前記表皮等価物が、培養皮膚であることを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収評価装置。前記表皮等価物が、再構成皮膚であることを特徴とする請求項1又は2に記載の経皮吸収評価装置。前記評価対象細胞が、線維芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、ランゲルハンス細胞、色素細胞、単球細胞からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮吸収評価装置。請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮吸収評価装置を使用して、表皮等価物の経皮吸収測定と、前記評価対象細胞のコラーゲン産生作用、ヒアルロン酸産生作用、エラスチン産生促進又は抑制作用、フィブリリン産生促進作用、プロテアーゼ活性抑制作用、脂肪分解作用、細胞増殖促進又は抑制作用、一酸化窒素産生促進又は抑制作用、メラニン産生促進又は抑制作用、チロシナーゼ活性促進又は抑制作用、チロシナーゼ産生促進又は抑制作用、サイトカイン産生促進又は抑制作用からなる群から選択される1種又は2種以上の測定とを同時におこなうことを特徴とする評価方法。請求項5に記載の経皮吸収評価装置が、培養された再構成皮膚とそれを支持するコラーゲン膜の底膜からなる表皮等価物であることを特徴とする評価方法。請求項5に記載の評価方法において、評価対象細胞のコラーゲン産生作用の測定をおこなう場合に使用する経皮吸収評価装置が、培養された再構成皮膚とそれを支持するポリカーボネートの底膜からなる表皮等価物であることを特徴とする評価方法。 【課題】物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時かつ簡便に測定できる経皮吸収評価装置及びその評価方法を提供することすること。【解決手段】培養皮膚などの表皮等価物と、線維芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、ランゲルハンス細胞、単球細胞、色素細胞などの評価対象細胞とを用いた装置を用いることにより、物質の皮膚透過量と透過した物質の有効性及び/又は安全性の評価を同時に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。【選択図】図1