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タイトル:公開特許公報(A)_胃酸及びガストリンの産生を抑制する乳酸菌
出願番号:2011013451
年次:2012
IPC分類:A61K 35/74,A61P 1/04,A61K 45/00,A23L 1/30,C12N 1/20,C12R 1/225


特許情報キャッシュ

中野 泰博 相場 勇志 熊谷 道彦 明壁 史弥 古賀 泰裕 JP 2012144506 公開特許公報(A) 20120802 2011013451 20110107 胃酸及びガストリンの産生を抑制する乳酸菌 スノーデン株式会社 593206894 中山 光子 100115440 中野 泰博 相場 勇志 熊谷 道彦 明壁 史弥 古賀 泰裕 A61K 35/74 20060101AFI20120706BHJP A61P 1/04 20060101ALI20120706BHJP A61K 45/00 20060101ALI20120706BHJP A23L 1/30 20060101ALI20120706BHJP C12N 1/20 20060101ALI20120706BHJP C12R 1/225 20060101ALN20120706BHJP JPA61K35/74 AA61P1/04A61K45/00A23L1/30 ZC12N1/20 EC12N1/20 AC12N1/20 AC12R1:225 2 書面 30 4B018 4B065 4C084 4C087 4B018LB10 4B018MD86 4B018ME11 4B018ME14 4B065AA30 4B065AC20 4B065CA42 4B065CA44 4C084AA19 4C084NA06 4C084NA14 4C084ZA66 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC56 4C087CA09 4C087NA06 4C087NA14 4C087ZA66 発明の詳細な説明 本発明は、乳酸菌の生菌又は死菌を生体へ投与することによって、胃液中の酸濃度の減少およびピー・エイチ(pH)の強酸性への傾きの抑制、ならびにガストリンの産生を抑制する方法に関する。また、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでプロトンポンプ・インヒビター(以下PPIと略記する)の継続的投与による副作用を緩和する方法に関する。 胃幽門部で産生されるガストリンは、胃液中の酸濃度の上昇およびpHを強酸性へと傾ける効果を有するホルモンである(Schubert ML,Peura DA.Gastroenterology,134:1842−1860,2008)。つまり、ガストリンの産生を抑制することで、胃液中の酸濃度の減少およびpHの強酸性への傾きを抑制することができる。 ラットの胃において、ガストリンの産生が細菌の存在によって抑制されることが示唆される報告がある(Uribe A,et al.Gastroenterology,107:1258−1269,1994)。また、ヒトの胃はほぼ無菌の状態にあり、齧歯類の胃に比べ胃液中の酸濃度が高く、pHも強酸性である(Kabir AM,et al.Gut,41:49−55,1997)。ヒトの胃に常在できる細菌として、病原菌であるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)が挙げらる。ヘリコバクター・ピロリ菌感染患者がその除菌を行うと、胃液中の酸濃度が上昇すること、また、逆流性食道炎への罹患率が高まることが報告されている(Labenz J,et al.Gastroenterology,112:1442−1447,1997)。 ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(以下、No.1088と略記)は本発明者によって開発されたラクトバシラス属乳酸菌であり、ヒトの胃液より単離されたものであるため、非常に優れた耐酸性をもちヒトの胃内でも生存できる特性をもつ。また、病原菌(大腸菌O−157やヘリコバクター・ピロリ菌など)に対して強い増殖抑制効果があり、ラクトバシラス属の細菌の中でも非常に有用な菌株であることが示されている(受託番号NITE P−278)。 胃液中の酸濃度が高い、つまりは過酸症の状態にあると、胃液が食道に逆流した際に食道の上皮細胞に傷害を与え、炎症が起こる。これが軽度の場合は胸やけの症状を呈し、重症化すると逆流性食道炎を患う。さらに、これが進行すると食道組織の変性・癌化が起こり、バレット食道癌などに発展する。また近年、本国での食文化が欧米化してきたことなどによって、胃噴門部と食道の境に存在する括約筋の働きが弱まり、胃酸が逆流しやすくなっていることがある。実際に、現在の本国において逆流性食道炎やバレット食道癌の罹患率が増加傾向にある。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染患者がその除菌を行うと、胃液中の酸濃度が上昇すること、また、逆流性食道炎になるリスクが高まることが報告されている(Labenz J,et al.Gastroenterology,112:1442−1447,1997)。 胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍などに対する治療として、胃酸の分泌を阻害するPPIを継続的に使用するが、この副作用としてガストリンの産生過多が知られている。またこれに伴って胃粘膜細胞の過剰な増殖や巨大化、胃組織の肥大化などが動物実験では実証されており、ヒトへの臨床試験でも同様のことが示唆される結果がある。さらには消化性潰瘍などの寛解によってPPIの使用を中止した際に、ガストリン過多状態にあることから胃酸の過剰分泌が起こるなどの症状が知られている(Schubert ML,Peura DA.Gastroenterology,134:1842−1860,2008)。 以上の問題を解決するため、胃酸又はガストリンの産生を抑制する方法を開発することが重要である。 課題を解決する本発明は、病原性をもたず胃中で作用する細菌を用いることでガストリンの産生を抑制する方法を提供する。当該方法は、乳酸菌の生菌又は死菌を生体に投与することでガストリンの産生を抑制する方法である。 課題を解決する本発明は、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでPPIの継続的投与による副作用の緩和をする方法である。 本発明は、一部には以下の実験結果に基づいている。 1.No.1088の生菌投与による胃酸及びガストリン産生の抑制1−1)No1088生菌投与マウスの作製 8週齢のジャーム・フリー(GF)Balb/c雄マウス(東海大学医学部、アイソレーター内で飼育管理)を7匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の生菌1x109CFUをリン酸緩衝液(PBS)に懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。 1−2)胃組織切片の作製 投与より10日後にマウスを屠殺し、胃を摘出し、10%ホルマリン(和光純薬)−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラス(MUTO PURE CHEMICALS社)に貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。 1−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューション(Target retrieval solution,Dako社)を用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体(Rabbit polyclonal anti gastrin antibody,Dako社)を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体(Goat anti rabbit IgG Alexa488 antibody,Molecular Probe社)を室温下で2時間反応させ、細胞核を染色するダピ(DAPI)を加えた退色封入剤を用いて封入した。 1−4)蛍光顕微鏡での観察 細胞のDNAに結合する蛍光色素DAPI、および抗ガストリン抗体で染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000(Keyence社)にて観察、撮影した。その結果を図1に示す。図に示す通り、No.1088生菌を投与してもDAPI染色による胃粘膜組織中の細胞数に大きな変化は認められないが、抗ガストリン抗体染色によるガストリン陽性細胞数は減少していることを認めた。すなわち、No.1088の生菌の投与によってガストリンの産生を抑制していることが示唆された。 1−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部の粘膜層の長さをアキシオヴィジョン(AxioVision,Zeiss社)にて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSS(SPSS社)を用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を図2に示す。No.1088生菌投与群ではPBS投与群より有意差をもって50%以上の減少をしていることが認められた。すなわち、No.1088の生菌を投与することでガストリンの産生を抑制することが示された。また同様の現象がラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)JCM1187の生菌投与でも認められた。 2.No.1088の生菌投与による胃液中の酸濃度の減少とpHの強酸性への傾きの抑制2−1)No1088生菌投与マウスの作製 8週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の生菌1x109CFUをPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。 2−2)胃液中の酸濃度とpHの測定 投与より10日後にマウス及びPBS投与マウスにメンブタールにより麻酔し、手術台に固定し開腹、胃の噴門部に隣接した食道及び胃の幽門部に隣接した十二指腸を鉗子によってクリップし、2時間静置した後、胃内部に蓄積した胃液を採取した。採取した胃液を0.1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬)により酸塩基滴定を行い、酸濃度を測定した。またpH測定器(Horiba社)を用いて、pHを測定した。それぞれのサンプルより得られた数値を、SPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を表1に示す。No.1088投与群において、有意差をもって胃液中の酸濃度の減少及びpHが弱酸性になっていることが認められた。すなわち、No.1088がもつガストリンの産生抑制効果によって胃液中の酸濃度の減少及びpHの強酸性への傾きの抑制することが示された。 3.No.1088の死菌投与によるガストリン産生の抑制3−1)No1088死菌投与マウスの作製 8週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の死菌を生菌の1x109CFUに相当する量をPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。投与は1日1回、10日間連続で行った。 3−2)胃組織切片の作製 最終の投与より24時間後にマウスを屠殺し、胃を摘出し、10%ホルマリン−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。 3−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。 3−4)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。No.1088死菌投与群とPBS投与群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が減少していることが示唆された。 3−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部における粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を図3に示す。No.1088死菌投与群ではPBS投与群より有意差をもって40%以上の減少をしていることが認められた。すなわち、No.1088は生菌の投与だけでなく死菌を投与によってもガストリンの産生を抑制することが示された。また同様の現象がラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)JCM1187の死菌投与でも認められた。 4.ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌によるガストリン産生の促進とNo.1088の死菌投与による促進の抑制4−1)ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスの作製 4週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ6群用意した。そのうち5群にはヘリコバクター・ピロリ菌の生菌1x109CFUをPBSに懸濁したものを4日間連続で経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを4日間連続で経口投与した。ヘリコバクター・ピロリ菌投与より4週間後にヘリコバクター・ピロリ保菌マウスのうちの1群及びPBS投与群を屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。残りのヘリコバクター・ピロリ保菌マウスのうちの3群にヒトのヘリコバクター・ピロリ菌の除菌と同様の処理化(Lind T,et al.Gastroenterology,116:248−253,1999)を行い、残りの1群には除菌しない対照群として抗生剤を加えていない溶液を投与した。この投与は2週間の連続投与によって行った。除菌処理が終了した2週間後に除菌処理群のうちの1群及び除菌していない対照群を屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。残りの除菌処理群のうち、片方の群には前記の操作と同様のNo.1088の死菌1x109CFU相当量をPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。投与は1日1回、10日間連続で行い、最終の投与より24時間後にマウスを屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。また、上記のマウスの作製過程は図4上段にも示した。 4−2)胃組織切片の作製 上記の操作によって得られたパラフィン包埋ブロックをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。 4−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。 4−4)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。その結果、まずヘリコバクター・ピロリ保菌マウスとヘリコバクター・ピロリ非感染マウス(PBS投与群)を比較すると、ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスにおいてガストリン陽性細胞の数が減少していることが認められた。次に、ヘリコバクター・ピロリを除菌したマウスでは、除菌していないマウスと比較してガストリン陽性細胞の数が増加していることが認められた。さらに、除菌後にNo.1088の死菌を投与した群とPBSを投与した群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が減少していることが認められた。 4−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 上記のサンプルにおいて、各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部における粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストでそれぞれのサンプルを採取した週齢間で行った結果を図4に示す。まずヘリコバクター・ピロリ保菌マウスとヘリコバクター・ピロリ非感染マウス(PBS投与群)を比較すると、ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスにおいてガストリン陽性細胞の数が減少していることが有意に認められた。次に、ヘリコバクター・ピロリを除菌したマウスでは、除菌していないマウスと比較してガストリン陽性細胞の数が増加していることが有意に認められた。さらに、除菌後にNo.1088の死菌を投与した群とPBSを投与した群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が約40%減少していることが有意に認められた。すなわち、ヒトにおけるヘリコバクター・ピロリ除菌の際に胃酸過多になり、逆流性食道炎のリスクが高まることがガストリンの産生亢進によるものであることが示唆され、またNo.1088の死菌を投与することによってガストリンの産生促進を抑制できることが示された。 次に本発明のPPIの継続的投与による副作用の緩和法の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例のNo.1088に限定されるものではなく、乳酸菌の生菌又は死菌によるものである。 5.PPIの継続的投与による副作用とNo.1088の投与によるその緩和5−1)No1088生菌投与マウスの作製 4週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ6群用意した。そのうちの3群にはNo.1088の生菌1x109CFUをPBSに懸濁したものを経口投与し、残りの3群には等量のPBSを経口投与した。 5−2)PPIの継続的投与 マウスが8週齢に達した時点で、No.1088投与マウス及びPBS投与マウスのうち1群ずつにPPIであるオメプラゾール(アストラゼネカ社)200μgをPBS200μLに溶解したものを一日おきに皮下に投与する処置を開始し(PPIの8週間の連続投与)、12週齢に達した時点で各投与マウス1群ずつに同様の処置を開始(PPIの4週間の連続投与)、残りの各投与マウス1群ずつはオメプラゾールの処置は行わず対照群とした。 5−3)胃重量の測定ならびに胃組織切片の作製 各群のマウスが16週齢になった時点でマウスを屠殺し、体重を量った後、胃を摘出、胃内容物(飼育飼料など)をPBSで洗浄し除去した後、胃重量を計測した。次に採取した胃組織を10%ホルマリン−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。 5−4)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。 5−5)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。PBS投与マウスではPPIの投与によってガストリン産生細胞の増加が認められた。一方で、No.1088生菌投与マウスではPPIによるガストリン陽性細胞の数の増減はないことが認められた。すなわち、No.1088の生菌の投与によってPPIによるガストリンの産生促進を抑制していることが示唆された。 5−6)胃重量比及びガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のサンプルより胃を摘出する際に計測した体重及び胃重量を用い、胃重量の体重比(%)を算出した。また、各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部の粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたクラスカル・ワリス・ティー・テストで解析を行った結果、胃重量の体重比については図5aに、ガストリン陽性細胞数については図5bに示す。PBS投与マウスではPPIの投与によって、胃重量比ならびにガストリン産生細胞数が投与期間に比例して有意に増加していた。一方で、No.1088投与マウスではPPIによる胃重量比ならびにガストリン産生細胞数の増減はなかった。すなわち、PPIの継続的投与による副作用であるガストリンの産生過多、胃粘膜細胞の過剰な増殖や巨大化、胃組織の肥大化などをNo.1088に代表される乳酸菌の投与によって緩和できると示唆された。 以上記載したとおり、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することで、胃酸及びガストリンの産生を抑制することが示された。すなわち、乳酸菌の生菌又は死菌を摂取することでの胃液中の酸濃度の制御ならびにpHの安定化を可能にする医薬品や機能性食品、健康食品などへの利用が可能である。また、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでPPIに代表される胃酸分泌抑制剤の副作用を緩和する医薬品などに利用することが可能である。 表1 No.1088の生菌投与による胃液中の酸濃度の減少とpHの強酸性への傾きの抑制 蛍光顕微鏡を用いた免疫染色による胃組織中のガストリン陽性細胞像とNo.1088の生菌投与によるガストリン陽性細胞数の減少No.1088の生菌投与によるガストリン産生の抑制No.1088の死菌投与によるガストリン産生の抑制ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌によるガストリン産生の促進とNo.1088の死菌投与による促進の抑制胃重量比及びガストリン陽性細胞数の統計学的解析 乳酸菌の生菌又は死菌を投与することで胃酸又はガストリンの産生を抑制する方法及びその方法を利用した医薬品、健康食品など各種製品 乳酸菌の生菌又は死菌を投与することで胃酸分泌抑制剤(例えばプロトンポンプ・インヒビター)の副作用を緩和する方法及びその方法を利用した医薬品、健康食品など各種製品 請求項1及び請求項2の特徴を有する乳酸菌がラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(受託番号NITE P−278) 【課題】プロトンポンプ・インヒビターの継続的投与による副作用を緩和する方法の提供。【解決手段】乳酸菌(例えばラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088)の生菌又は死菌を生体へ投与することによって、胃液中の酸濃度の減少およびピー・エイチの強酸性への傾きの抑制、ならびにガストリンの産生を抑制でき、該乳酸菌の生菌又は死菌を生体へ投与することで上記課題を解決できる。【選択図】なし 20110701A16333全文3 胃酸又はガストリンの産生を抑制する乳酸菌ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(受託番号NITE P−278)の生菌又は/および死菌を組成物とする医薬品、健康食品 胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプ・インヒビターによる高ガストリン血症的副作用を緩和する乳酸菌ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(受託番号NITE P−278)の生菌又は/および死菌を組成物とする医薬品、健康食品 A1633000043 【技術分野】【0004】 ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(以下、No.1088と略記)は、本発明者によって開発されたラクトバシラス属乳酸菌であり、ヒトの胃液より単離されたものであるため、非常に優れた耐酸性を持ちヒトの胃内でも生存できる特性を持つ。また、病原菌(大腸菌O−157やヘリコバクター・ピロリ菌など)に対して強い増殖抑制効果が有る(特開2008−271931号公報)。 No.1088は、特許法施行規則第27条の2の特許長官の指定する機関ならびに我が国の特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約第二条(viii)の国際寄託当局である独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託して、受託番号NITE P−278が付与された。 20120120A16333全文3乳酸菌であって、胃酸又はガストリンの産生を抑制する性質を有することを特徴とするラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(受託番号NITE P−278)の生菌又は/及び死菌を有効成分として含有する、胃酸過多症による胃潰瘍や逆流性食道炎に伴う痛みや胸やけの症状を緩和するための各種製品乳酸菌であって、胃酸又はガストリンの産生を抑制する性質を有することを特徴とするラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(受託番号NITE P−278)の生菌又は/及び死菌を有効成分として含有する、胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプ・インヒビターやH2ブロッカーによる胃酸過多の副作用を緩和するための各種製品A16330全文3発明の詳細な説明 本発明は、乳酸菌の生菌又は死菌を生体へ投与することによって、ガストリンの産生を抑制することにより、胃液中の酸濃度の減少およびピー・エイチ(pH)の強酸性への傾きを抑制する方法に関する。また、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでプロトンポンプ・インヒビター(以下PPIと略記する)、H2ブロッカー(以下H2Bと略記する)の継続的投与による副作用を緩和する方法に関する。 ガストリンは、胃幽門前庭部に存在するガストリン産生細胞(G細胞)で産生され血液を介し胃体部に存在する胃酸を分泌する胃壁細胞(壁細胞)に働いて、胃液中の酸濃度の上昇およびpHを強酸性へと傾ける効果を有するホルモンである(Schubert ML,Peura DA.Gastroenterology,134:1842−1860,2008)。つまり、ガストリンの産生を抑制することで、胃液中の酸濃度の減少およびpHの強酸性への傾きを抑制することができる。 ラットの胃において、ガストリンの産生が細菌の存在によって抑制されることが示唆される報告がある(Uribe A, et al.Gastroenterology,107:1259−1269,1994)。また、ヒトの胃はほぼ無菌の状態にあり、齧歯類の胃に比べ胃液中の酸濃度が高く、pHも強酸性である(Kabir AM,et al.Gut,41:49−55,1997)。ヒトの胃に常在できる細菌として、病原菌であるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)が挙げられる。ヘリコバクター・ピロリ菌感染患者がその除菌を行うと、胃液中の酸濃度が上昇すること、また、逆流性食道炎への罹患率が高まることが報告されている(Labenz J,et al.Gastroenterology,112:1442−1447,1997)。 ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(以下、No.1088と略記)は本発明者によって開発されたラクトバシラス属乳酸菌であり、ヒトの胃液から単離されたものであるため、非常に優れた耐酸性をもちヒトの胃内でも生存できる特性をもつ。また、病原菌(大腸菌O−157やヘリコバクター・ピロリ菌など)に対して強い増殖抑制効果がある。(特開2008−271931号公報) No.1088は、特許法施行規則第27の2の特許長官の指定する機関ならびに我が国の特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約第二条(viii)の国際寄託当局である独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託して、受託番号NITE P−278が付与された。 胃液中の酸濃度が高い、つまりは過酸症の状態にあると、胃液が食道に逆流した際に食道の上皮細胞に傷害を与え、炎症が起こる。これが軽度の場合は胸やけの症状を呈し、重症化すると逆流性食道炎を患う。さらに、これが進行すると食道組織の変性・癌化が起こり、バレット食道癌などに発展する。また近年、本国での食文化が欧米化してきたことなどによって、胃噴門部と食道の境に存在する括約筋の働きが弱まり、胃酸が逆流しやすくなっていることがある。実際に、現在の本国において逆流性食道炎やバレット食道癌の罹患率が増加傾向にある。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染患者がその除菌を行うと、胃液中の酸濃度が上昇すること、また、逆流性食道炎になるリスクが高まることが報告されている(Labenz J,et al.Gastroenterology,112:1442−1447,1997)。 胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍などに対する治療として、胃酸の分泌を阻害するPPI、H2Bを継続的に使用するが、この副作用として代償的にガストリンの産生過多が知られている。またこれに伴って胃粘膜細胞の過剰な増殖や巨大化、胃組織の肥大化などが動物実験では実証されており、ヒトへの臨床試験でも同様のことが示唆される結果がある。さらには消化性潰瘍などの寛解によってPPI、H2Bの使用を中止した際に、ガストリン過多状態にあることから胃酸の過剰分泌が起こるなどの症状が知られている(Schubert ML,Peura DA.Gastroenterology,134:1842−1860,2008)。 以上の問題を解決するため、胃酸又はガストリンの産生を根本的に抑制する物質を開発することが重要である。 課題を解決する本発明は、病原性をもたず胃中で作用する細菌を用いることでガストリンの産生を抑制する製品を提供する。当該製品は、乳酸菌の生菌又は死菌を生体に投与することでガストリンの産生を抑制する各種製品である。 課題を解決する本発明は、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでPPI、H2Bの継続的投与による副作用の緩和をする製品である。 本発明は、胃幽門前庭部に存在するガストリン産生細胞数を減少させガストリンの産生を抑制することで胃酸の分泌を抑制する性質が有る乳酸菌に関する。 前記乳酸菌は、No.1088の生菌又は/及び死菌を有効成分として含有する慢性胃酸過多や胃酸分泌抑制剤PPI、H2Bの継続投与で発症する副作用である胃酸過多の痛みや胸やけ症状を緩和させるための各種製品に関する。 すなわち、本発明は以下に関する。(1)胃酸又はガストリンの産生を抑制する必要がある対象に、胃酸又はガストリンの産生を抑制する乳酸菌No.1088の生菌又は死菌の有効量を投与することからなる各種製品。(2)胃酸分泌抑制剤の副作用を緩和する必要がある対象に、胃酸又はガストリンの産生を抑制する乳酸菌No.1088の生菌又は死菌の有効量を投与することからなる各種製品。 本発明の胃酸又はガストリンの産生を抑制する必要がある対象となる生物は、胃酸又はガストリンを分泌する動物であれば特に制限はないが、哺乳類であることが好ましく、ヒトであることが特に好ましい。<乳酸菌株> 本発明の乳酸菌株であるNo.1088株は、2006年11月14日付けで受託番号NITE P−278として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号 292−0818))に寄託され、NITE P−278として国際寄託当局に移管されている。 前記No.1088は、病原菌(大腸菌O−157やヘリコバクター・ピロリ菌など)に対する強い増殖抑制効果、及びガストリンの産生抑制効果を有する。 また前記No.1088は、胃液中の酸濃度を減少させること、胃液のpHが強酸性へ傾くこと、及びPPI、H2Bによりガストリンの産生が促進されることを抑制することができる。さらに前記No.1088は、胃酸分泌抑制剤であるPPI、H2Bの副作用を緩和することができる。 前記No.1088の菌学的性状及び製造方法は、日本国公開特許公報特開2008−271931に記載されている。<投与方法> 本発明の乳酸菌の生菌又は死菌の投与方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記投与方法は、例えば、経口投与などが挙げられる。 本発明の乳酸菌の生菌又は死菌は単独で投与することができる。また前記乳酸菌の生菌又は死菌は、その投与形態に合わせて薬学的または/及び健康食品に許容されうる添加剤と共に各種剤形に製剤化した後、投与することができる。 また本発明の胃酸又はガストリンの産生抑制剤及び胃酸分泌抑制剤の副作用緩和剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記乳酸菌の生菌又は死菌の他に、薬学的または/及び健康食品に許容されうる添加剤を添加することができる。 前記添加剤としては、製剤分野において通常用いられる各種の添加剤を使用することができ、具体的には例えば、乳糖、果糖オリゴ糖、及びビール酵母等の医薬品添加物または/及び食品添加物として許容されるもが挙げられる。 これらの添加剤を用いて製剤化される剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤;例えばシロップ剤、エリキシル剤等の液体製剤等が挙げられ、これらは、製剤分野における通常の方法に従って調製することができる。液体製剤としては、用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させる形であってもよい。また、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖液に溶解又は懸濁させてもよく、更に緩衝剤や保存剤を添加してもよい。 これらの製剤は、治療上有効な他の化合物を含んでいてもよい。前記化合物としては、例えば、ビール酵母等の酵母;グァファイバー等の食物繊維;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、又はビタミンCナトリウム等のビタミン;乳果オリゴ糖、β−シクロデキストリン(β−CD)、又は乳糖等の糖;エリスリトール等の糖アルコール;レモンジュースミクロン、又はレモンミクロン等の果汁;サイロページ(富士シリシア化学株式会社製)等の固結防止剤;若しくはラブリワックス(登録商標)(フロイント産業株式会社製)等の硬化油等が挙げられる。<有効量> 本発明の有効量は、組織、系、動物、又はヒトにおいて生物学的又は医学的応答を誘起する活性化合物又は医薬物質の量であって、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家によって探し求められている量を意味する。具体的には、本発明の有効量は、本発明の乳酸菌の生菌又は死菌を投与した後に、胃酸又はガストリンの産生を抑制する効果、又は胃酸分泌抑制剤の副作用を緩和する効果を発現する量を意味する。 本発明の有効量は投与する対象生物、又は投与の形態等の要因に依存して変動するものであり、例えば投与する対象生物、又は投与する対象生物の副作用の程度などに応じて適宜選択することができる。本発明の胃酸又はガストリンの産生抑制剤、又は胃酸分泌抑制剤の副作用緩和剤を医薬品として用いる場合、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家によって適切な有効量を選択することが可能である。 本発明の乳酸菌の生菌又は死菌を、胃酸又はガストリンの産生抑制剤、又は胃酸分泌抑制剤の副作用緩和剤等として使用する場合、その有効量及び投与回数は、投与する対象生物、前記対象生物の性別、年齢、体重、症状の程度及び目的とする効果の種類や範囲等により変えることができる。 またヒトへの有効量の範囲は、1日あたり体重1kgにつき2×108CFU〜1x109CFUであり、単回又は2回以上投与することができる。<胃酸又はガストリンの産生抑制剤、及び胃酸分泌抑制剤の副作用緩和剤> 本発明の胃酸又はガストリンの産生抑制剤、及び胃酸分泌抑制剤の副作用緩和剤は、本発明の有効量の乳酸菌No.1088の生菌又は死菌を含む。 前記胃酸又はガストリンの産生抑制剤及び胃酸分泌抑制剤の副作用緩和剤は、有効量のNo.1088の生菌又は死菌を含むことにより、胃酸又はガストリンの産生を抑制すること、及びPPIの継続的投与による副作用を緩和することができる。 本発明の胃酸分泌抑制剤の副作用緩和剤は、種々の胃酸分泌抑制剤に対して有効であるが、特にPPI、H2Bの副作用を軽減する効果に優れている。<食品> 本発明に係る乳酸菌の生菌又は死菌は、食品に添加することも可能である。 本発明の食品の具体例としては、例えばヨーグルト及びチーズなどを挙げることができる。また食品添加物として許容される賦形剤、滑沢剤等を添加した粒、顆粒、清涼飲料とすることもできる。 本発明は、一部には以下の実験結果に基づいている。1.No.1088の生菌投与による胃酸及びガストリン産生の抑制1−1)No1088生菌投与マウスの作製 8週齢のジャーム・フリー(GF)Balb/c雄マウス(東海大学医学部、アイソレーター内で飼育管理)を7匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の生菌1×109CFUをリン酸緩衝液(以下PBSと略記)に懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には同量のPBSを経口投与した。1−2)胃組織切片の作製 投与より10日後にマウスを屠殺し、胃を摘出し、10%ホルマリン(和光純薬)−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラス(MUTO PURE CHEMICALS社)に貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。1−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューション(Target retrieval solution,Dako社)を用い、98℃下10分間でマイクロウェーブを行い、抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体(Rabbit polyclonal anti gastrin antibody,Dako社)を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体(Goat anti rabbit IgG Alexa488 antibody,Molecular Probe社)を室温下で2時間反応させ、細胞核を染色するダピ(DAPI)を加えた退色封入剤を用いて封入した。1−4)蛍光顕微鏡での観察 細胞のDNAに結合する蛍光色素DAPI、および抗ガストリン抗体で染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000(Keyence社)にて観察、撮影した。その結果を[図1]に示す。図に示す通り、No.1088生菌を投与してもDAPI染色による胃粘膜組織中の細胞数に大きな変化は認められないが、抗ガストリン抗体染色によるガストリン陽性細胞数は減少していることを認めた。すなわち、No.1088の生菌の投与によってガストリン陽性細胞数は減少することによりガストリンの産生を抑制していることが示唆された。1−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部の粘膜層の長さをアキシオヴィジョン(Axio Vision,Zeiss社)にて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSS(SPSS社)を用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を[図2]に示す。No.1088生菌投与群ではPBS投与群より有意差をもって50%以上の減少をしていることが認められた。すなわち、No.1088の生菌を投与することでガストリンの産生を抑制することが示された。また同様の現象がラクトバシラス・アシドフィルスL.acidophilus JCM 1132及びラクトバシラス・ガッセリイL.gasseri LG21の生菌投与でも認められたが、それらの作用はNo.1088に比べ弱い。2.No.1088の生菌投与による胃液中の酸濃度の減少とpHの強酸性への傾きの抑制2−1)No1088生菌投与マウスの作製 8週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の生菌1×109CFUをPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。2−2)胃液中の酸濃度とpHの測定 投与より10日後にマウス及びPBS投与マウスにメンブタールにより麻酔し、手術台に固定し開腹、胃の噴門部に隣接した食道及び胃の幽門部に隣接した十二指腸を鉗子によってクリップし、2時間静置した後、胃内部に蓄積した胃液を採取した。採取した胃液を0.1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬)により酸塩基滴定を行い、酸濃度を測定した。またpH測定器(Horiba社)を用いて、pHを測定した。それぞれのサンプルより得られた数値を、SPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を[表1]に示す。No.1088投与群において、有意差をもって胃液中の酸濃度の減少及びpHが弱酸性になっていることが認められた。すなわち、No.1088がもつガストリンの産生抑制効果によって胃液中の酸濃度が減少すること、及びpHの強酸性への傾きを抑制することが示された。3.No.1088の死菌投与によるガストリン産生の抑制3−1)No1088死菌投与マウスの作製 8週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の死菌を生菌の1×109CFUに相当する量をPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。投与は1日1回、10日間連続で行った。3−2)胃組織切片の作製 最終の投与より24時間後にマウスを屠殺し、胃を摘出し、10%ホルマリン−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。3−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。3−4)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。No.1088死菌投与群とPBS投与群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が減少していることが示唆された。3−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部における粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を[図3]に示す。No.1088死菌投与群ではPBS投与群より有意差をもって40%以上の減少をしていることが認められた。すなわち、No.1088は生菌の投与だけでなく死菌の投与によってもガストリンの産生を抑制することが示された。また同様の現象がラクトバシラス・アシドフィルスL.acidophilus JCM 1132及びラクトバシラス・ガッセリイL.gasseri LG21の死菌投与でも認められたが、それらの作用はNo.1088に比べ弱い。4.ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌によるガストリン産生の促進とNo.1088の死菌投与による促進の抑制4−1)ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスの作製 4週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ6群用意した。そのうち5群にはヘリコバクター・ピロリ菌の生菌1×109CFUをPBSに懸濁したものを4日間連続で経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを4日間連続で経口投与した。ヘリコバクター・ピロリ菌投与より4週間後にヘリコバクター・ピロリ保菌マウスのうちの1群及びPBS投与群を屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。残りのヘリコバクター・ピロリ保菌マウスのうちの3群にヒトのヘリコバクター・ピロリ菌の除菌と同様の処理(Lind T,et al.Gastroenterology,116:248−253,1999)を行い、残りの1群には除菌しない対照群として抗生剤を加えていない溶液を投与した。この投与は2週間の連続投与によって行った。除菌処理が終了した2週間後に除菌処理群のうちの1群及び除菌していない対照群を屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。残りの除菌処理群のうち、片方の群には前記の操作と同様のNo.1088の死菌1×109CFU相当量をPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。投与は1日1回、10日間連続で行い、最終の投与より24時間後にマウスを屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。また、上記のマウスの作製過程は[図4]上段にも示した。4−2)胃組織切片の作製 上記の操作によって得られたパラフィン包埋ブロックをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。4−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。4−4)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。その結果、まずヘリコバクター・ピロリ保菌マウスとヘリコバクター・ピロリ非感染マウス(PBS投与群)を比較すると、ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスにおいてガストリン陽性細胞の数が減少していることが認められた。次に、ヘリコバクター・ピロリを除菌したマウスでは、除菌していないマウスと比較してガストリン陽性細胞の数が増加していることが認められた。さらに、除菌後にNo.1088の死菌を投与した群とPBSを投与した群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が減少していることが認められた。4−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 上記のサンプルにおいて、各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部における粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストでそれぞれのサンプルを採取した週齢間で行った結果を[図4]に示す。まずヘリコバクター・ピロリ保菌マウスとヘリコバクター・ピロリ非感染マウス(PBS投与群)を比較すると、ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスにおいてガストリン陽性細胞の数が減少していることが有意に認められた。次に、ヘリコバクター・ピロリを除菌したマウスでは、除菌していないマウスと比較してガストリン陽性細胞の数が増加していることが有意に認められた。さらに、除菌後にNo.1088の死菌を投与した群とPBSを投与した群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が約40%減少していることが有意に認められた。すなわち、ヒトにおけるヘリコバクター・ピロリ除菌の際に胃酸過多になり、逆流性食道炎のリスクが高まることがガストリンの産生亢進によるものであることが示唆され、またNo.1088の死菌を投与することによってガストリンの産生促進を抑制できることが示された。 次に本発明のPPIの継続的投与による副作用の緩和法の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例のNo.1088に限定されるものではなく、乳酸菌の生菌又は死菌によるものである。5.PPIの継続的投与による副作用とNo.1088の投与によるその緩和5−1)No1088生菌投与マウスの作製 4週齢のGF−Balb/c雄マウスを5匹ずつ6群用意した。そのうちの3群にはNo.1088の生菌1×109CFUをPBSに懸濁したものを経口投与し、残りの3群には等量のPBSを経口投与した。5−2)PPIの継続的投与 マウスが8週齢に達した時点で、No.1088投与マウス及びPBS投与マウスのうち1群ずつにPPIであるオメプラゾール(アストラゼネカ社)200μgをPBS200μLに溶解したものを一日おきに皮下に投与する処置を開始し(PPIの8週間の連続投与)、12週齢に達した時点で各投与マウス1群ずつに同様の処置を開始(PPIの4週間の連続投与)、残りの各投与マウス1群ずつはオメプラゾールの処置は行わず対照群とした。5−3)胃重量の測定ならびに胃組織切片の作製 各群のマウスが16週齢になった時点でマウスを屠殺し、体重を量った後、胃を摘出、胃内容物(飼育飼料など)をPBSで洗浄し除去した後、胃重量を計測した。次に採取した胃組織を10%ホルマリン−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。5−4)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。5−5)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。PBS投与マウスではPPIの投与によってガストリン産生細胞の増加が認められた。一方で、No.1088生菌投与マウスではPPIによるガストリン陽性細胞の数の増減はないことが認められた。すなわち、No.1088の生菌の投与によってPPIによるガストリンの産生促進を抑制していることが示唆された。5−6)胃重量比及びガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のサンプルより胃を摘出する際に計測した体重及び胃重量を用い、胃重量の体重比(%)を算出した。また、各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部の粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたクラスカル・ワリス・ティー・テストで解析を行った結果、胃重量の体重比については[図5a]に、ガストリン陽性細胞数について[図5b]に示す。PBS投与マウスではPPIの投与によって、胃重量比ならびにガストリン産生細胞数が投与期間に比例して有意に増加していた。一方で、No.1088投与マウスではPPIによる胃重量比ならびにガストリン産生細胞数の増減はなかった。すなわち、PPIの継続的投与による副作用であるガストリンの産生過多、胃粘膜細胞の過剰な増殖や巨大化、胃組織の肥大化などをNo.1088に代表される乳酸菌の投与によって緩和できると示唆された。6−1)製剤例1 ビール酵母:54.67g、グァファイバー:54.67g、ビタミンB1:0.55g、ビタミンB2:0.55g、ビタミンB6:0.55g、ビタミンCナトリウム:109.34g、乳果オリゴ糖LS55P:82.01g、セルデックスB−100β−CD:348.26g、レモンジュースミクロンH84391:32.80g、乳糖200M:328.03g、及びエリスリトール微分:328.03gを適量の水を加えて混合した後、乾燥する。乾燥後篩過し、0.3mm〜0.5mmの顆粒を製する。日本国公開特許公報特開2008−271931の実施例1に記載されている方法でNo.1088を凍結乾燥し得られたNo.1088の乾燥菌体(菌数5X1010CFU/g):100.00g、レモンミクロンH80662:30.00g、サイロページ720:20.00g、及びラブリワックス102H(登録商標):10.00gを適量の水に溶解させ前記顆粒に噴霧した後乾燥して、均等に混和して顆粒剤1000包を製する。 この製剤は、治療上有効な他の化合物を含んでいてもよい。6−2)ヒトでの使用例1 草野らが考案した逆流性食道炎診療Fスケール間診票のスコアー(草野元康、他:臨床と研究 82巻第2号 379頁〜382頁)が8以上の胃酸の逆流が疑われる男子ボランティア6名に上記6−1)で製造した顆粒状食品を1回1包、自覚症状に応じ1日1〜4回食後及び就寝前、1週間摂取させ摂取前後のFスケールスコアーの変化ならびに自覚症状の変化、自覚症状の変化が認められた時期、摂取中止後自覚症状改善継続日数を調べた。6−3)摂取したヒトの結果 Fスケールスコアー8以上のゴランティアがNo.1088 5x109個を含有する顆粒状食品を1日1〜4回、毎食後及び就寝前に1週間摂取した結果、Fスケールスコアーの改善が認められた者は6名中4名、スコアーが増加した者6名中2名、自覚症状に改善が認められた者は6名中4名、自覚症状の変化を感じなかった者は6名中2名であった。自覚症状の改善は摂取開始後3日目から7日目で認められ、摂取中止後も自覚症状改善の持続期間は2日間から5日間であった[表2]。 以上記載したとおり、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することで、胃酸及びガストリンの産生を抑制することが示された。すなわち、乳酸菌の生菌又は死菌を摂取することでの胃液中の酸濃度の制御ならびにpHの安定化を可能にする医薬品や機能性食品、健康食品などへの利用が可能である。また、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでPPIに代表される胃酸分泌抑制剤の副作用を緩和する医薬品などに利用することが可能である。蛍光顕微鏡を用いた免疫染色による胃組織中のガストリン陽性細胞像とNo.1088の生菌投与によるガストリン陽性細胞数の減少No.1088、L.acidophilus JCM1132及びL.gasseri LG21の生菌投与によるガストリン陽性細胞数の抑制No.1088、L.acidophilus JCM1132及びL.gasseri LG21の死菌投与によるガストリン陽性細胞数の抑制ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌によるガストリン産生の促進とNo.1088の死菌投与による促進の抑制胃重量比の統計学的解析ガストリン陽性細胞数の統計学的解析A16331全図3


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特許公報(B2)_胃酸及びガストリンの産生を抑制する乳酸菌

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_胃酸及びガストリンの産生を抑制する乳酸菌
出願番号:2011013451
年次:2012
IPC分類:A61K 35/74,A61P 1/04,C12N 1/20,C12R 1/225


特許情報キャッシュ

中野 泰博 相場 勇志 熊谷 道彦 明壁 史弥 古賀 泰裕 JP 5075254 特許公報(B2) 20120831 2011013451 20110107 胃酸及びガストリンの産生を抑制する乳酸菌 スノーデン株式会社 593206894 中山 光子 100115440 中野 泰博 相場 勇志 熊谷 道彦 明壁 史弥 古賀 泰裕 20121121 A61K 35/74 20060101AFI20121101BHJP A61P 1/04 20060101ALI20121101BHJP C12N 1/20 20060101ALI20121101BHJP C12R 1/225 20060101ALN20121101BHJP JPA61K35/74 AA61P1/04C12N1/20 EC12N1/20 EC12R1:225 A61K 35/74 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) 特開2008−271931(JP,A) 特開2008−169198(JP,A) 特開2008−189572(JP,A) 特開平08−268899(JP,A) 国際公開第07/010977(WO,A1) 特表2005−539013(JP,A) 特表2002−537336(JP,A) 特表2002−515458(JP,A) 国際公開第95/018110(WO,A1) 古賀泰裕,乳酸桿菌による胃過酸症の制御:無菌動物を用いた検討,日本消化器病学会雑誌,2010年 3月15日,Vol.107 臨時増刊号,p.A259,216 2 NPMD NITE P-278 2012144506 20120802 10 20110308 遠藤 広介 本発明は、乳酸菌の生菌又は死菌を生体へ投与することによって、胃液中の酸濃度の減少およびピー・エイチ(pH)の強酸性への傾きの抑制、ならびにガストリンの産生を抑制するための医薬品に関する。また、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでプロトンポンプ・インヒビター(以下PPIと略記する)の継続的投与による副作用を緩和するための医薬品に関する。 胃幽門部で産生されるガストリンは、胃液中の酸濃度の上昇およびpHを強酸性へと傾ける効果を有するホルモンである(Schubert ML,Peura DA.Gastroenterology,134:1842−1860,2008)。つまり、ガストリンの産生を抑制することで、胃液中の酸濃度の減少およびpHの強酸性への傾きを抑制することができる。 ラットの胃において、ガストリンの産生が細菌の存在によって抑制されることが示唆される報告がある(Uribe A,et al.Gastroenterology,107:1258−1269,1994)。また、ヒトの胃はほぼ無菌の状態にあり、齧歯類の胃に比べ胃液中の酸濃度が高く、pHも強酸性である(Kabir AM,et al,Gut,41:49−55,1997)。ヒトの胃に常在できる細菌として、病原菌であるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)が挙げられる。ヘリコバクター・ピロリ菌感染患者がその除菌を行うと、胃液中の酸濃度が上昇すること、また、逆流性食道炎への罹患率が高まることが報告されている(Labenz J,et al.Gastroenterology,112:1442−1447,1997)。 ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(以下、No.1088と略記)は本発明者によって開発されたラクトバシラス属乳酸菌であり、ヒトの胃液より単離されたものであるため、非常に優れた耐酸性をもちヒトの胃内でも生存できる特性をもつ。また、病原菌(大腸菌O−157やヘリコバクター・ピロリ菌など)に対して強い増殖抑制効果があり、ラクトバシラス属の細菌の中でも非常に有用な菌株であることが示されている(受託番号NITE P−278)。 胃液中の酸濃度が高い、つまりは過酸症の状態にあると、胃液が食道に逆流した際に食道の上皮細胞に傷害を与え、炎症が起こる。これが軽度の場合は胸やけの症状を呈し、重症化すると逆流性食道炎を患う。さらに、これが進行すると食道組織の変性・癌化が起こり、バレット食道癌などに発展する。また近年、本国での食文化が欧米化してきたことなどによって、胃噴門部と食道の境に存在する括約筋の働きが弱まり、胃酸が逆流しやすくなっていることがある。実際に、現在の本国において逆流性食道炎やバレット食道癌の罹患率が増加傾向にある。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染患者がその除菌を行うと、胃液中の酸濃度が上昇すること、また、逆流性食道炎になるリスクが高まることが報告されている(Labenz J,et al.Gastroenterology,112:1442−1447,1997)。 胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍などに対する治療として、胃酸の分泌を阻害するPPIを継続的に使用するが、この副作用としてガストリンの産生過多が知られている。またこれに伴って胃粘膜細胞の過剰な増殖や巨大化、胃組織の肥大化などが動物実験では実証されており、ヒトへの臨床試験でも同様のことが示唆される結果がある。さらには消化性潰瘍などの寛解によってPPIの使用を中止した際に、ガストリン過多状態にあることから胃酸の過剰分泌が起こるなどの症状が知られている(Schubert ML,Peura DA.Gastroenterology,134:1842−1860,2008)。 以上の問題を解決するため、胃酸又はガストリンの産生を抑制する方法を開発することが重要である。 課題を解決する本発明は、病原性をもたず胃中で作用する細菌を用いることでガストリンの産生を抑制するための医薬品を提供する。当該医薬品は、乳酸菌の生菌又は死菌を生体に投与することでガストリンの産生を抑制する。 課題を解決する本発明は、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでPPIの継続的投与による副作用の緩和をするための医薬品である。 本発明は、一部には以下の実験結果に基づいている。1.No.1088の生菌投与による胃酸及びガストリン産生の抑制1−1)No.lO88生菌投与マウスの作製 8週齢のジャーム・フリー(GF)Balb/c 雄マウス(東海大学医学部、アイソレーター内で飼育管理)を7匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の生菌1×109CFUをリン酸緩衝液(PBS)に懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。1−2)胃組織切片の作製 投与より10日後にマウスを屠殺し、胃を摘出し、10%ホルマリン(和光純薬)・PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラス(MUTO PURE CHEMICALS社)に貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。1−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューション(Target retrieval solution,Dako社)を用い98℃下10分間でマイクロウエーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体(Rabbit polyclonal anti gastrin antibody,Dako社)を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体(Goat anti rabbit IgG Alexa 488 antibody,Molecular Probe社)を室温下で2時間反応させ、細胞核を染色するダピ(DAPI)を加えた退色封入剤を用いて封入した。1−4)蛍光顕微鏡での観察 細胞のDNAに結合する蛍光色素DAPI、および抗ガストリン抗体で染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000(Keyence社)にて観察、撮影した。その結果を図1に示す。図に示す通り、No.1088生菌を投与してもDAPI染色による胃粘膜組織中の細胞数に大きな変化は認められないが、抗ガストリン抗体染色によるガストリン陽性細胞数は減少していることを認めた。すなわち、No.1088の生菌の投与によってガストリンの産生を抑制していることが示唆された。1−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部の粘膜層の長さをアキシオヴィジョン(Axio Vision,Zeiss社)にて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSS(SPSS社)を用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を図2に示す。No.1088生菌投与群ではPBS投与群より有意差をもって50%以上の減少をしていることが認められた。すなわち、No.1088の生菌を投与することでガストリンの産生を抑制することが示された。また同様の現象がラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)JCM1187の生菌投与でも認められた。2.No.1088の生菌投与による胃液中の酸濃度の減少とpHの強酸性への傾きの抑制2−1)No.1088生菌投与マウスの作製 8週齢のGF-Balb/c 雄マウスを5匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の生菌1×109CFUをPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。2−2)胃液中の酸濃度とpHの測定 投与より10日後にマウス及びPBS投与マウスにメンブタールにより麻酔し、手術台に固定し開腹、胃の噴門部に隣接した食道及び胃の幽門部に隣接した十二指腸を鉗子によってクリップし、2時間静置した後、胃内部に蓄積した胃液を採取した。採取した胃液を0.1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬)により酸塩基滴定を行い、酸濃度を測定した。またpH測定器(Horiba社)を用いて、pHを測定した。それぞれのサンプルより得られた数値を、SPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を表1に示す。No.1088投与群において、有意差をもって胃液中の酸濃度の減少及びpHが弱酸性になっていることが認められた。すなわち、No.1088がもつガストリンの産生抑制効果によって胃液中の酸濃度の減少及びpHの強酸性への傾きの抑制することが示された。3.No.1088の死菌投与によるガストリン産生の抑制3−1)No.l088死菌投与マウスの作製 8週齢のGF-Balb/c 雄マウスを5匹ずつ2群用意した。片方の群にはNo.1088の死菌を生菌の1×109CFUに相当する量をPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。投与は1日1回、10日間連続で行った。3−2)胃組織切片の作製 最終の投与より24時間後にマウスを屠殺し、胃を摘出し、10%ホルマリン−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。3−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウエーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。3−4)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。No.1088死菌投与群とPBS投与群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が減少していることが示唆された。3−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部における粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストで解析を行った結果を図3に示す。No.1088死菌投与群ではPBS投与群より有意差をもって40%以上の減少をしていることが認められた。すなわち、No.1088は生菌の投与だけでなく死菌を投与によってもガストリンの産生を抑制することが示された。また同様の現象がラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)JCM1187の死菌投与でも認められた。4.ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌によるガストリン産生の促進とNo.1088の死菌投与による促進の抑制4−1)ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスの作製 4週齢のGF-Balb/c 雄マウスを5匹ずつ6群用意した。そのうち5群にはヘリコバクター・ピロリ菌の生菌1×109CFUをPBSに懸濁したものを4日間連続で経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを4日間連続で経口投与した。ヘリコバクター・ピロリ菌投与より4週間後にヘリコバクター・ピロリ保菌マウスのうちの1群及びPBS投与群を屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。残りのヘリコバクター・ピロリ保菌マウスのうちの3群にヒトのヘリコバクター・ピロリ菌の除菌と同様の処理(Lind T,et al. Gastroenterology,116:248-253,1999)を行い、残りの1群には除菌しない対照群として抗生剤を加えていない溶液を投与した。この投与は2週間の連続投与によって行った。除菌処理が終了した2週間後に除菌処理群のうちの1群及び除菌していない対照群を屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。残りの除菌処理群のうち、片方の群には前記の操作と同様のNo.1088の死菌1×109CFU相当量をPBSに懸濁したものを経口投与し、もう一方の群には等量のPBSを経口投与した。投与は1日1回、10日間連続で行い、最終の投与より24時間後にマウスを屠殺し、前記の操作によってパラフィン包埋を行った。また、上記のマウスの作製過程は図4上段にも示した。4−2)胃組織切片の作製 上記の操作によって得られたパラフィン包埋ブロックをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。4−3)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウエーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。4−4)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。その結果、まずヘリコバクター・ピロリ保菌マウスとヘリコバクター・ピロリ非感染マウス(PBS投与群)を比較すると、ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスにおいてガストリン陽性細胞の数が減少していることが認められた。次に、ヘリコバクター・ピロリを除菌したマウスでは、除菌していないマウスと比較してガストリン陽性細胞の数が増加していることが認められた。さらに、除菌後にNo.1088の死菌を投与した群とPBSを投与した群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が減少していることが認められた。4−5)ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 上記のサンプルにおいて、各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部における粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたマンホイットニー・ユー・テストでそれぞれのサンプルを採取した週齢間で行った結果を図4に示す。 まずヘリコバクター・ピロリ保菌マウスとヘリコバクター・ピロリ非感染マウス(PBS投与群)を比較すると、ヘリコバクター・ピロリ保菌マウスにおいてガストリン陽性細胞の数が減少していることが有意に認められた。次に、ヘリコバクター・ピロリを除菌したマウスでは、除菌していないマウスと比較してガストリン陽性細胞の数が増加していることが有意に認められた。さらに、除菌後にNo.1088の死菌を投与した群とPBSを投与した群を比較すると、No.1088死菌投与群においてガストリン陽性細胞の数が約40%減少していることが有意に認められた。 すなわち、ヒトにおけるヘリコバクター・ピロリ除菌の際に胃酸過多になり、逆流性食道炎のリスクが高まることがガストリンの産生亢進によるものであることが示唆され、またNo.1088の死菌を投与することによってガストリンの産生促進を抑制できることが示された。 次に本発明のPPIの継続的投与による副作用の緩和法の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例のNo.1088に限定されるものではなく、乳酸菌の生菌又は死菌によるものである。5.PPIの継続的投与による副作用とNo.1088の投与によるその緩和5−1)No.l088生菌投与マウスの作製 4週齢のGF-Balb/c 雄マウスを5匹ずつ6群用意した。そのうちの3群にはNo.1088の生菌1×109CFUをPBSに懸濁したものを経口投与し、残りの3群には等量のPBSを経口投与した。5−2)PPIの継続的投与 マウスが8週齢に達した時点で、No.1088投与マウス及びPBS投与マウスのうち1群ずつにPPIであるオメプラゾール(アストラゼネカ社)200μgをPBS200μLに溶解したものを一日おきに皮下に投与する処置を開始し(PPIの8週間の連続投与)、12週齢に達した時点で各投与マウス1群ずつに同様の処置を開始(PPIの4週間の連続投与)、残りの各投与マウス1群ずつはオメプラゾールの処置は行わず対照群とした。5−3)胃重量の測定ならびに胃組織切片の作製 各群のマウスが16週齢になった時点でマウスを屠殺し、体重を量った後、胃を摘出、胃内容物(飼育飼料など)をPBSで洗浄し除去した後、胃重量を計測した。次に採取した胃組織を10%ホルマリン−PBSに浸し、室温にて一晩置き固定した。次に、固定された胃組織をエタノールに浸し、キシレンに浸した後、パラフィンを用いて包埋した。これをミクロトームにて2μmの厚さで薄切し、シランコーティーングスライドグラスに貼り付け、62℃下で一晩乾燥させ作製した。5−4)胃組織切片を用いたガストリンの免疫染色 作製した切片をキシレン及びエタノール処理にて脱パラフィンを行った後、ターゲット・レトリーバル・ソリューションを用い98℃下10分間でマイクロウェーブを行い抗原を賦活化した。その組織切片に一次抗体としてラビット・ポリクローナル・抗ガストリン抗体を4℃下で一晩反応させた後、二次抗体としてゴート・抗ラビット・アイジージー・アレクサ488修飾抗体を室温下で2時間反応させ、退色封入剤を用いて封入した。5−5)蛍光顕微鏡での観察 染色した組織切片を蛍光顕微鏡BZ−9000にて観察、撮影した。PBS投与マウスではPPIの投与によってガストリン産生細胞の増加が認められた。一方で、No.1088生菌投与マウスではPPIによるガストリン陽性細胞の数の増減はないことが認められた。すなわち、No.1088の生菌の投与によってPPIによるガストリンの産生促進を抑制していることが示唆された。5−6)胃重量比及びガストリン陽性細胞数の統計学的解析 各群のサンプルより胃を摘出する際に計測した体重及び胃重量を用い、胃重量の体重比(%)を算出した。また、各群のガストリン産生の変化を組織切片から統計学的に解析するため、組織写真中の胃幽門部の粘膜層の長さをアキシオヴィジョンにて計測し、その中のガストリン陽性細胞数を目視にて計測、単位長(1mm)あたりのガストリン陽性細胞数(個)に換算した。それらの数値をSPSSを用いたクラスカル・ワリス・ティー・テストで解析を行った結果、胃重量の体重比については図5aに、ガストリン陽性細胞数については図5bに示す。PBS投与マウスではPPIの投与によって、胃重量比ならびにガストリン産生細胞数が投与期間に比例して有意に増加していた。一方で、No.1088投与マウスではPPIによる胃重量比ならびにガストリン産生細胞数の増減はなかった。すなわち、PPIの継続的投与による副作用であるガストリンの産生過多、胃粘膜細胞の過剰な増殖や巨大化、胃組織の肥大化などをNo.1088に代表される乳酸菌の投与によって緩和できると示唆された。 以上記載したとおり、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することで、胃酸及びガストリンの産生を抑制することが示された。すなわち、乳酸菌の生菌又は死菌を摂取することでの胃液中の酸濃度の制御ならびにpHの安定化を可能にする医薬品や機能性食品、健康食品などへの利用が可能である。また、乳酸菌の生菌又は死菌を投与することでPPIに代表される胃酸分泌抑制剤の副作用を緩和する医薬品などに利用することが可能である。蛍光顕微鏡を用いた免疫染色による胃組織中のガストリン陽性細胞像とNo.1088の生菌投与によるガストリン陽性細胞数の減少を示す写真No.1088の生菌投与によるガストリン産生の抑制No.1088の死菌投与によるガストリン産生の抑制ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌によるガストリン産生の促進とNo.1088の死菌投与による促進の抑制胃重量比の統計学的解析ガストリン陽性細胞数の統計学的解析 乳酸菌ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(受託番号NITE P−278)の生菌又は/及び死菌を含む、胃酸又はガストリンの産生を抑制するための医薬品。 乳酸菌ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)No.1088(受託番号NITE P−278)の生菌又は/及び死菌を含む、プロトンポンプ・インヒビター(PPI)によるガストリンの産生過多を緩和するための医薬品。


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