| タイトル: | 公開特許公報(A)_原子吸光光度計 |
| 出願番号: | 2011011504 |
| 年次: | 2012 |
| IPC分類: | G01N 21/31 |
照井 康 田口 安夫 西村 崇 JP 2012154652 公開特許公報(A) 20120816 2011011504 20110124 原子吸光光度計 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 井上 学 100100310 戸田 裕二 100098660 岩崎 重美 100091720 照井 康 田口 安夫 西村 崇 G01N 21/31 20060101AFI20120720BHJP JPG01N21/31 610A 3 2 OL 6 2G059 2G059AA01 2G059BB04 2G059CC02 2G059DD12 2G059DD13 2G059DD16 2G059EE01 本発明は、原子吸光光度計に関する。 原子吸光光度計は、試料を通過した光の減衰を利用して元素の量を計測する装置である。しかし、光の分散または分子吸収によって生じるバックグラウンド吸収が、計測精度を低下させており、各種のバックグラウンド補正法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 既知のバックグラウンド補正法として、重水素ランプを用いたD2補正法、ゼーマン効果を利用したゼーマンバックグラウンド補正法、ホローカソードランプと呼ばれる光源ランプの自己吸収現象を利用した自己反転法が知られている。原子吸光光度計に用いられるフレームレス原子吸光法では、測定時の信号変化が速いため、D2補正法では補正が難しく、ゼーマンバックグラウンド補正法または自己反転法が用いられる。 フレームレス原子吸光光度計は、微量試料をppbからpptという高い感度で測定することが可能である。そのため、鉄鋼製造,石油精製,薬品生産などの広い工業分野で利用されている。近年では、半導体デバイスの製造過程で使用される純水や試薬の品質管理における微量元素の測定,食品や生体中の微量元素の測定にも利用されている。 この測定装置におけるバックグランド補正の方法の1つにゼーマン効果を用いる方法がある。ゼーマン効果とは、原子蒸気を磁場中に存在させることにより、原子スペクトルが一連の成分線に分岐し、さらに偏光性を帯びる現象である。この偏光性は、磁場に対して平行な偏光性分の光が原子に吸収され、磁場に対して垂直な偏光性分の光はわずかしか吸収されないという特性を有している。ゼーマンバックグランド補正法とは、この現象を利用して原子蒸気内のバックグランドを効果的に補正する方法である。 また、他の補正方法として、光源ランプのホローカソードランプの自己吸収を利用した自己反転法がある。本方法はホローカソードランプ点灯中、ランプに大電流と小電流とを交互に流し、大電流供給時には、ホローカソードランプの発光スペクトルが自己吸収のため、発光スペクトルの中心が凹んだM字形状となる現象を利用している。大電流供給時は、測定元素の原子吸収は大きく現れないことから、主にバックグラウンド測定を行う。また、小電流供給時は、発光スペクトルは通常の逆V字形状のスペクトルとなるため、測定元素による原子吸収とバックグラウンド吸収の両方の測定を行う。両測定結果の吸光度の差を求めることにより、バックグラウンド補正を実施する。ただし大電流と小電流を切り替えて測定を行うため、その切り替え中はバックグラウンド補正ができないため、光の利用効率が低下する課題もある。 これらのバックグラウンド補正法の利用により、フレームレス原子吸光光度計は、高感度という装置特性を得、広い範囲で利用されている。 昨今の環境対応製品は、小型化,高性能化が求められており、その実現のために希土類元素が広く利用されるようになっている。例えば希土類磁石におけるネオジウム(Nd)やジスプロシウム(Dy)、燃料電池におけるランタン(La),セリウム(Ce)、太陽電池におけるジスプロシウム(Dy)等々、従来使用していなかった希土類元素が様々な分野で用いられている。それに伴い、フレームレス原子吸光光度計でも希土類元素を、高感度に測定したいという要望が増えていた。 フレームレス原子吸光光度計では測定元素の原子蒸気を生成するため、原子化部にグラファイト(炭素)製の炉を用いていることが多い。希土類元素を測定する場合、炉の材質であるグラファイトと目的元素である希土類元素が反応しカーバイドと呼ばれる金属間化合物を生成する。このカーバイドは融点,沸点が高いため、フレームレス原子吸光光度計で希土類元素を測定する場合は、測定感度が低下するという課題があった。特開昭58−5632号公報 本発明は、希土類元素を測定可能なフレームレス原子吸光光度計において、原子化炉内のカーバイド生成を抑制することによる希土類元素の測定感度向上と、正確なバックグラウンド補正を同時に実施可能とすることである。 前記課題を解決するために本発明の実施態様は、希土類元素の試料を測定可能なフレームレス原子吸光光度計において、グラファイト製の筒状の原子化炉と、その内部に固定される少なくとも2800℃以上の融点の金属製かつ常磁性を有する試料台と、試料を原子化するために原子化炉の筒状のそれぞれの端部に設けられた右電極および左電極と、右電極の内部および左電極の内部に設けられたガスを原子化炉へ導入するためのガス流路とを備え、試料台は試料が滴下される皿形状の部分を有することを特徴とする。 本発明によれば、希土類元素を測定可能なフレームレス原子吸光光度計において、原子化炉内のカーバイド生成を抑制することによる希土類元素の測定感度向上と、正確なバックグラウンド補正を同時に実施可能となる。フレームレス原子吸光光度計の全体システムを示すブロック図である。原子化炉の斜視図である。原子化炉3に導入されるガスの経路を表す構成図である。 以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。 図1は、フレームレス原子吸光光度計の全体システムを示すブロック図である。測定試料に対応したホローカソードランプ1から出た光は、光路2を通り、原子化炉3に導入される。原子化炉3は、バックグラウンド補正法がゼーマン法の場合、その周囲に磁場4が存在する。測定試料、例えば液体の試料を原子化炉3に入れ、乾燥−灰化−原子化−洗浄の工程を実施する。原子化時は原子化炉の温度が2000から2800℃と高温になり、測定試料は原子蒸気となる。この原子蒸気中を光路2が通過することで、原子吸収が観測される。バックグラウンド補正は、この原子化時が重要であり、ゼーマン法では磁場4によるゼーマン効果を用いて、また、自己反転法ではホローカソードランプ1の点灯方法によって、補正を行う。原子化炉を通過した光は分光器5に導入され、測定元素固有の測定波長に分光後、検出器6に到達することで原子吸収が観測される。 図2は、原子化炉の斜視図である。試料台7には金属材料が用いられ、グラファイト製の筒状の原子化炉3の内部に矢印で示す方向に挿入される。図2(a)の試料台7の装着前の図に示されるように、グラファイト製の原子化炉3の内部には、ガイド溝31が設けられ、図2(b)の試料台7の装着後の図に示されるように、試料台7の位置が固定される。炉の中で試料台7は2000から2800℃の高温となるため、試料台7の材料には少なくとも融点が2800℃以上の高融点金属が必要となる。具体的にはタンタル(Ta),タングステン(W),レニウム(Re),オスミウム(Os),イリジウム(Ir)、もしくはこれらの合金が材料として望ましい。また、バックグラウンド補正にゼーマン効果を利用している場合、原子化炉近傍は磁場中にあり、試料台7として強磁性、もしくは反磁性の材料を用いると、磁場の乱れからバックグラウンド補正の精度が低下してしまう。そのため、材料は常磁性であることが必須となり、バックグラウンド補正の精度の低下を防止できることになる。 フレームレス原子吸光光度計の測定試料形態は、固体もしくは液体であるが、多くは液体である。液体試料を試料導入口32から原子化炉3内に導入し、金属材料を用いた試料台7の上に滴下する。液体の表面張力にも依存するが、液体は試料台7の上に広がる可能性がある。試料液体が炉内で広がると、原子蒸気の濃度が低下して、検出感度の低下に繋がる。試料液体が広がらないようにするため、図2(a)に示すように、試料台7の滴下する部分を平面でなく皿のように傾斜構造としたり、階段状にしたりして、皿形状部71を形成している。液体試料が滴下される部分をこのような皿形状にすることにより、測定中の乾燥時、測定試料が炉内に広がることなく中心に集まるようになる。その結果、原子化時に発生する測定試料の原子蒸気の濃度が高くなり、装置感度が向上する。 図3は、原子化炉3に導入されるガスの経路を表す構成図である。ガス容器8等のガス源から供給されたガスは、ガス制御部9に導入される。ガス制御部9から後は、ガス経路が2系統に別れ、一方は原子化炉用右電極10、もう一方は原子化炉用左電極11のガス流路12とガス流路13に接続される。ガスはガス流路12,13を通り、グラファイト製の原子化炉3に、左右両側から導入され、試料導入口32から炉外へ排出される。この構造により、希土類元素を測定する場合の、炉の材質であるグラファイトと目的元素である希土類元素が反応して生成されるカーバイドを抑制することができる。 フレームレス原子吸光光度計では、通常、グラファイト製原子化炉内にアルゴンを代表とする不活性ガスを導入している。これはフレームレス原子吸光法では、大気下でグラファイト製の原子化炉を2000から2800℃と非常に高温にして測定を行う。その際、大気中の酸素とグラファイト(炭素)が反応すると、炉が短時間で使用できなくなってしまうため、炉の外側と内側の両方にアルゴンガスを流し、原子化炉を保護している。また、生体試料等の炭素量の多い測定試料の場合はアルゴンガスに少量の酸素を混合し、炉内のみに流す。これは炉内にある測定試料の燃焼を促進するためである。本発明の場合、金属材料を用いた試料台7がグラファイト製原子化炉3内に存在するため、グラファイトとの反応を低下させ、炉の金属材料表面の還元を促進するために、不活性ガスと少量の水素を混合し、炉内のみに流すことが望ましい。 以上述べたように、本発明によれば、希土類元素を測定可能なフレームレス原子吸光光度計において、原子化炉内のカーバイド生成を抑制することによる希土類元素の測定感度向上と、正確なバックグラウンド補正を同時に実施可能となる。1 ホローカソードランプ3 原子化炉4 磁場7 試料台9 ガス制御部10 原子化炉用右電極11 原子化炉用左電極12,13 ガス流路71 皿形状部 希土類元素の試料を測定可能なフレームレス原子吸光光度計において、グラファイト製の筒状の原子化炉と、その内部に固定される少なくとも2800℃以上の融点の金属製かつ常磁性を有する試料台と、前記試料を原子化するために前記原子化炉の筒状のそれぞれの端部に設けられた右電極および左電極と、前記右電極の内部および前記左電極の内部に設けられたガスを前記原子化炉へ導入するためのガス流路とを備え、前記試料台は前記試料が滴下される皿形状の部分を有することを特徴とする原子吸光光度計。 請求項1の記載において、前記試料台は、タンタル(Ta),タングステン(W),レニウム(Re),オスミウム(Os),イリジウム(Ir)、もしくはそれらの合金を材料とすることを特徴とする原子吸光光度計。 請求項1の記載において、前記ガスは不活性ガスもしくは水素、またはその混合物であることを特徴とする原子吸光光度計。 【課題】フレームレス原子吸光光度計において、原子化炉内のカーバイド生成を抑制することによる希土類元素の測定感度向上と、正確なバックグラウンド補正を同時に実施可能とする。【解決手段】グラファイト製の筒状の原子化炉と、その内部に固定される少なくとも2800℃以上の融点の金属製かつ常磁性を有する試料台と、試料を原子化するために原子化炉の筒状のそれぞれの端部に設けられた右電極および左電極と、右電極の内部および左電極の内部に設けられたガスを原子化炉へ導入するためのガス流路とを備え、試料台は試料が滴下される皿形状の部分を有する。【選択図】 図2