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タイトル:特許公報(B2)_経口投与用医薬組成物
出願番号:2010549466
年次:2014
IPC分類:A61K 31/4725,A61K 31/18,A61K 47/10,A61K 47/26,A61K 47/32,A61K 47/38,A61P 13/02,A61P 13/08


特許情報キャッシュ

保地 毅彦 木下 教之 芳野 裕行 川濱 周弥 迫 和博 杉原 昭夫 JP 5553026 特許公報(B2) 20140606 2010549466 20100202 経口投与用医薬組成物 アステラス製薬株式会社 000006677 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 森田 拓 100098501 矢野 恵美子 100109357 鈴木 ▲頼▼子 100117846 濱井 康丞 100137464 保地 毅彦 木下 教之 芳野 裕行 川濱 周弥 迫 和博 杉原 昭夫 US 61/149,854 20090204 20140716 A61K 31/4725 20060101AFI20140626BHJP A61K 31/18 20060101ALI20140626BHJP A61K 47/10 20060101ALI20140626BHJP A61K 47/26 20060101ALI20140626BHJP A61K 47/32 20060101ALI20140626BHJP A61K 47/38 20060101ALI20140626BHJP A61P 13/02 20060101ALI20140626BHJP A61P 13/08 20060101ALI20140626BHJP JPA61K31/4725A61K31/18A61K47/10A61K47/26A61K47/32A61K47/38A61P13/02A61P13/08 A61K31/00〜31/80 9/00〜 9/47 47/00〜47/48 国際公開第2009/013846(WO,A1) 国際公開第2004/078212(WO,A1) 国際公開第2006/070735(WO,A1) 18 JP2010051393 20100202 WO2010090172 20100812 16 20121126 平井 裕彰 本発明は、タムスロシンの放出を制御する放出制御部、及びソリフェナシンを速やかに放出する速放部から成る、経口投与用医薬組成物に関する。 詳細には、本発明は、タムスロシン、ハイドロゲル形成高分子物質、及び親水性基剤からなる放出制御部と、ソリフェナシン、及び親水性物質からなる速放部とを単一製剤中に含有してなる経口投与用医薬組成物に関するものである。 タムスロシンは、(R)−5−(2−{[2−(2−エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)−2−メトキシベンゼン−1−スルホンアミドであり、以下の構造式で表される。該化合物は、その製薬学的に許容される塩と共に、特許文献1において最初に開示された。 タムスロシンまたはその塩はアドレナリンα1A受容体遮断作用を有することが知られており、とりわけその塩酸塩(塩酸タムスロシン)は尿道及び前立腺部のα1受容体遮断作用を有し、尿道内圧曲線の前立腺部圧を低下させて前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する薬剤として汎用されている。また、塩酸タムスロシンは、下部尿路症の治療に有効であることが臨床において確認されているなど、臨床学的に極めて有用な薬物である。タムスロシンは、現在日本ではハルナール(登録商標)、米国ではFlomax(登録商標)、欧州ではOmnic(登録商標)として販売されている。 ソリフェナシンは、以下の構造式で示され、化学名は(R)−キヌクリジン−3−イル (S)−1−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボキシラートである。 ソリフェナシンまたはその塩は、ムスカリンM3受容体に対する優れた選択的拮抗作用を有し、神経性頻尿、神経因性膀胱、夜尿症、不安定膀胱、膀胱痙縮、慢性膀胱炎等における尿失禁及び頻尿等の泌尿器疾患、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息及び鼻炎等の呼吸器疾患、過敏性大腸症候群、痙性大腸炎及び憩室炎等の消化器疾病の予防又は治療剤として有用であることが報告されている(特許文献2参照) 特に、本化合物は、心臓等に存在するM2受容体と比較して平滑筋や腺組織等に存在するM3受容体に対する選択性が高く、心臓等への副作用の少ないM3受容体拮抗薬として、特に尿失禁並びに頻尿、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息及び鼻炎等の予防薬若しくは治療薬として有用性が高い。ソリフェナシンは、現在日本では、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁の治療剤として、ベシケア(登録商標)、米国ではVESIcare(登録商標)、欧州ではVesicare(登録商標)として販売されている。 タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩を含有する放出制御製剤が知られており(例えば特許文献3,4)、また、Omnic OCAS(登録商標)として販売されている。 従来の徐放製剤よりもピーク/トラフ比の小さい血中薬物濃度推移を示す製剤を提供し、起立性貧血などの潜在的な副作用発現を抑制するとともに、投与量増加の可能性や長時間にわたり安定な薬効を発現する可能性を示す。また、食事の摂取による血中薬物濃度への影響も受けにくくなり、服用コンプライアンスの観点からも高い安全性が期待される(特許文献5)。 前立腺肥大に伴う下部尿路症状の改善のため、タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩、及び、ソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物、具体的には、前立腺肥大に伴う下部尿路症状の改善用医薬組成物、並びに併用に関する発明が開示されている(特許文献6)。 タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩は、排尿症状の改善に有効な化合物であり、ソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩は、蓄尿症状の改善に有効な化合物であることから、両化合物は相反する効果を有する。しかしながら、両薬物を併用することにより、それぞれを単独で投与するよりも、排尿症状の改善作用を低下させることなく蓄尿症状には更なる改善作用を有するという意外な効果が得られている。 前立腺肥大に伴う下部尿路症状の改善方法として、タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩、及び、ソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩の併用療法が臨床上の効果が確認されたことを受け、服用コンプライアンス向上のため、合剤(または単一製剤)として医療現場への提供が要望されている。副作用発現の抑制と効果の持続は維持したまま、併用の効果を最大限発揮するための製剤の態様として、タムスロシンを含有する放出制御製剤、及びソリフェナシンを含有する通常製剤(速放製剤)の合剤が考えられる。しかしながら、二製剤の薬物溶出速度が異なることから、単一製剤(合剤)とした場合でも、それぞれの薬物放出性に変化の少ない製剤を提供することが求められる。特開昭56-110665号公報米国特許第6,017,927号明細書(対応国際公開第 WO96/20194号パンフレット)国際公開第 WO94/06414号パンフレット国際公開第 WO2004/078212号パンフレット米国公開特許第2005-0100603号明細書国際公開第 WO2009/013846号パンフレット 本発明者らは、まず現行製品、即ち、速やかな薬物放出性(30分値85%)を示すベシケア(製品名)と薬物放出制御製剤 Omnic OCAS(製品名)と同じ成分を用いて単一製剤(合剤)を調製した(後述の比較例1)。具体的には、タムスロシン、ポリエチレンオキサイド、及びポリエチレングリコール、及びステアリン酸マグネシウムからなる放出制御部と、ソリフェナシン、乳糖、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムからなる速放部とからなる二層錠を調製した。得られた二層錠について溶出試験を行ったところ、意外にも[1]ソリフェナシン溶出速度が遅延し30分で85%を満たないこと、また[2]ソリフェナシンの最大溶出率が90%に満たないことを知った。ソリフェナシンの溶出速度や最大溶出率が低下した場合、生体内における利用率(生物学的利用率bioavailability)の低下を招き、結果としてそれぞれの現行製剤(単剤)を併用する時と同等の薬理学的効果が得られないことが懸念される。 すなわち、本発明の目的は、タムスロシンを含有する放出制御部と、ソリフェナシンを含有する速放部とからなる単一製剤(合剤)を臨床現場に提供するに当り、(1)それぞれの薬物(とりわけ速放部におけるソリフェナシン)の溶出速度が現行製剤と変わらない単一製剤(合剤)を提供すること、(2)それぞれの薬物(とりわけ速放部におけるソリフェナシン)の最大薬物溶出率が90%以上であり、現行製剤と同等の生物学的利用率を示す単一製剤(合剤)を提供することである。 本発明者らには、ソリフェナシンの水への溶解度が610mg/mLであり、日本薬局方(日局)の溶解性の表現では、ソリフェナシンは水に『溶けやすい』物質に分類され、また、現行製品(ベシケア(登録商標))が既に薬物速放出性製剤として設計されているのにもかかわらず、前記二層錠からのソリフェナシンの溶出速度が遅延し、かつ最大溶出率が低下したことは大いに意外であった。 二層錠を投与した時とそれぞれの製剤(単剤)を投与した時とにおける、生体内環境が異なる点として、放出制御部と速放部とが近接しており、速放部から溶解したソリフェナシンが他の薬物を含有する、放出制御部の近傍に存在する点が挙げられる。 特にハイドロゲルを形成する高分子物質を含有してなる放出制御部内に、水に『溶けやすい』ソリフェナシンが溶解し、取り込まれるなどの可能性がある事自体が、予想外なことである。 後述の実施例1、2、及び3、並びに比較例1に記載の各速放部混合末と同処方の速放部単剤の崩壊時間を図1に、前記速放部単剤からの薬物放出時間を図2に示す。図中の比較例1に記載の速放部混合末処方に示す現行製品と同じ成分(ソリフェナシン、乳糖、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びステアリン酸マグネシウム)を用いた際には、単一製剤(合剤)とは異なり、速崩壊性、速薬物放出性を示したことから、単一製剤(合剤)である二層錠とした際の本結果は大いに意外であった。 そこで本発明者らは、特にソリフェナシンの放出速度と最大溶出率の改善に注目して、鋭意検討を行った結果、本願発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は、[1](1)タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩を含有してなる放出制御部と、(2)ソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩、及び親水性物質を含有してなる速放部とを含む経口投与用医薬組成物、[2]放出制御部がゲルを形成する前に速放部が崩壊及び/または溶解する[1]記載の経口投与用医薬組成物、[3]ソリフェナシンが、15分で70%以上溶出されてなる[1]〜[2]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[4]ソリフェナシンが、60分で90%以上溶出されてなる[3]記載の経口投与用医薬組成物、[5]ソリフェナシンが、15分で70%以上溶出し、且つ、60分で90%以上溶出されてなる[4]記載の経口投与用医薬組成物、[6]ソリフェナシンが、30分で85%以上溶出し、且つ、60分で90%以上溶出されてなる[5]記載の経口投与用医薬組成物、[7]親水性物質が、ポリエチレングリコール、マルトース、ポリビニルピロリドン、及びマンニトールからなる群より1種または2種以上選択される[1]〜[6]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[8]親水性物質の配合割合が5重量%以上99重量%以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[9]親水性物質のポリエチレングリコール、マルトース、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される1種または2種以上が、結合剤として使用されてなる[1]〜[8]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[10]親水性物質のマンニトールが賦形剤として使用されてなる[1]〜[9]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[11]放出制御部がハイドロゲルを形成する高分子物質を含む[1]〜[10]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[12]ハイドロゲルを形成する高分子物質が、1%水溶液25℃で4000mPa・s以上の粘度を有する[11]記載の経口投与用医薬組成物、[13]ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される1種または2種以上の高分子物質である[12]記載の経口投与用医薬組成物、[14]ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイドである[13]記載の経口投与用医薬組成物、[15]ポリエチレンオキサイドが、粘度平均分子量500万以上である[14]記載の経口投与用医薬組成物、[16]ハイドロゲルを形成する高分子物質の配合割合が、5重量%以上95%重量%以下である[11]〜[15]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[17]放出制御部が更に製剤内部に水を浸入させるための添加剤を含む[1]〜[16]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、[18]製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、1gを溶解する水の量が5mL以下の溶解性を有する[17]記載の経口投与用医薬組成物、[19]製剤内部に水を浸入させるための添加剤の配合割合が3重量%以上80%重量%以下である[18]記載の経口投与用医薬組成物、[20]医薬組成物が、前立腺肥大に伴う下部尿路症状の改善用医薬組成物である[1]〜[19]記載の経口投与用医薬組成物、[21]前立腺肥大に伴う下部尿路症状の改善用医薬組成物が錠剤である[20]記載の経口投与用医薬組成物、を提供するものである。 本発明は、タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩を含有する放出制御部、及び、ソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩を含有する速放部とからなる経口投与用医薬組成物を提供するものである。本発明の医薬組成物に依れば、単剤と比較して同程度の薬物放出性を有することから、単剤と同等の薬理学的効果が期待できる単一製剤(合剤)を提供することができる。また、服用する製剤数が減少することから、服用コンプライアンスが向上することが期待される。本発明の実施例1、2、及び3、並びに比較例1に記載の各速放部混合末と同処方の速放部単剤の崩壊時間を示す。本発明の実施例1、2、及び3、並びに比較例1に記載の各速放部混合末と同処方の速放部単剤からの薬物放出挙動を示す。本発明の実施例1、2、及び3、並びに比較例1に係る溶出プロファイルを示す。 図1に示す速放部単剤の崩壊時間、図2に示す速放部単剤からの薬物放出性においては、比較例1に記載の速放部混合末処方の速放部単剤でも、実施例1、2及び3に記載の各速放部混合末処方の速放部単剤と同様に、速崩壊性、及び15分で完全溶出する速薬物放出性を示した。 一方、図3に示す様に、単一製剤(合剤)にした際は、速放部単剤では同じ速崩壊性、速溶解性を示すものであったにもかかわらず、比較例1においては、ハイドロゲルを形成する高分子物質を含有してなる放出制御部内に、水に溶けやすいソリフェナシンが溶解し、取り込まれ、驚くべきことに、60分値でも薬物溶出が90%にも満たず完全な薬物放出が認められなかった。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 本明細書において「単剤」とは、1種類の薬物を含有する製剤の態様を意味する。 本明細書において「合剤」とは、「単一製剤」とも云い、2種以上の薬物を同一の製剤中に含有する製剤の態様を意味する。本発明における放出制御部、及び速放部のように、機能の異なる製剤を同一製剤中に含む場合も該当する。 本明細書において「放出制御部」とは、単一製剤中に含まれる一態様であって、薬物の放出を制御している部分を意味する。 本明細書において「速放部」とは、単一製剤中に含まれる一態様であって、医薬組成物からの薬物を速やかに放出(『溶けやすい』物質の場合、ほぼ溶出とも一致)する部分を意味する。 本明細書において「最大溶出率」とは、一定条件にて溶出試験を行い、医薬組成物からの薬物溶出速度が横ばいになった時の溶出率であることを意味する。 本発明の経口投与用医薬組成物について、以下詳記する。 本発明に用いられるタムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩としては、特開昭56−110665号公報及び特開昭62−114952号公報に記載された製法により、或いはそれに準じて製造することにより容易に入手可能である。 タムスロシンは広範囲の無機及び有機の酸と製薬学的に許容しうる塩を形成しうる。このような塩も、本発明の一部をなす。例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸との塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。他の態様として、塩酸塩が挙げられる。これらの塩は常法により製造できる。 投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。塩酸タムスロシンでは、通常経口投与の場合成人一人当たり有効成分約0.1mg乃至1.6mg/日程度であり、これを1日1回経口投与される。 本発明に用いられるソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩としては、WO96/20194号パンフレットに記載された製法により、或いはそれに準じて製造することにより容易に入手可能である。 ソリフェナシンは広範囲の無機及び有機の酸と製薬学的に許容しうる塩を形成しうる。このような塩も本発明の一部をなす。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩等が挙げられる。他の態様として、コハク酸塩が挙げられる。これらの塩は常法により製造できる。 投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。コハク酸ソリフェナシンでは、通常経口投与の場合成人一人当たり有効成分0.01mg/kg乃至100mg/kg/日程度であり、これを1日1回で、あるいは2〜4回に分けて投与する。また、症状によって静脈投与される場合は、通常成人1回当たり0.01mg/kg乃至10mg/kgの範囲で1日に1回ないし複数回投与される。 配合量は、治療上または予防上有効な量であれば特に制限されない。かかる配合量としては、例えば製剤全体の85重量%以下であり、他の態様として80重量%以下であり、更なる態様として50重量%以下であり、更に他の態様として10重量%以下である。 本発明の「放出制御部」は、タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩、ハイドロゲル形成高分子(以下、ハイドロゲルを形成する高分子物質とも云う)、及び親水性基剤(製剤内部に水を浸入させるための添加剤とも云う)からなり、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、50rpm〜200rpm)や日本薬局方溶出試験第1法(回転バスケット法、50rpm〜200rpm)にて試験を行うとき、医薬組成物からの薬物溶出率が50%を示す時点が3〜15時間である部分と規定する。 本発明に用いられるハイドロゲル形成高分子としては、製剤がほぼ完全にゲル化された状態で、食物消化に伴う消化管の収縮運動に耐え、ある程度の形状を保ったまま消化管下部の結腸に移行し得る程度の、ゲル化時の粘度等の性状を有するものであれば特に制限されない。例えば、ゲル化時の粘度が高いもの、例えば、1%水溶液(25℃)の粘度が4000mPa・s以上を有するものが挙げられる。 また、高分子の性状は分子量に依存し、本発明に適用可能なハイドロゲル形成高分子としてはより高分子量のものが好ましく、例えばポリエチレンオキサイドの平均分子量が500万以上、他の態様として平均分子量700万以上、更なる態様として平均分子量500万以上800万以下、更に他の態様として700万以上800万以下のものが挙げられる。 このような高分子としては、例えばポリエチレンオキサイド(PEO)(例えば、商品名Polyox WSR−308(平均分子量:800万、粘度:10000−15000mPa・s(1%水溶液25℃))、商品名Polyox WSR−303(平均分子量:700万、粘度:7500−10000mPa・s(1%水溶液25℃))、Polyox WSR Coagulant(平均分子量500万、粘度:5500−7500mPa・s(同))、何れもDow社製)、ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(例えば商品名メトローズ90SH100000(粘度:4100−5600mPa・s(1%水溶液20℃))、メトローズ90SH30000(粘度:25000−35000mPa・s(2%水溶液20℃))いずれも信越化学社製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)(例えば、商品名、サンローズF−1000MC(平均分子量:42万、粘度8000−12000mPa・s(同))、HECダイセルSE900(平均分子量:156万、粘度4000−5000mPa・s(同))ダイセル化学工業社製)、もしくはカルボキシビニルポリマー(例えばカーボポール940(平均分子量約250万)B.F.Goodrich Chemical社製)等が挙げられる。他の態様としてポリエチレンオキサイドが挙げられる。 これらのハイドロゲル形成高分子は、1種または2種以上適宜組合せて用いることができる。また、上記粘度または平均分子量の範囲に含まれない二種以上の高分子を組合せた混合物が、本発明の高分子と同等の性状を有する態様も本発明のハイドロゲル形成高分子に含まれる。 ヒトにおいて、結腸における薬物の放出能を有するためには、投与後少なくとも6〜8時間経過時、更に好ましくは12時間以上経過時において結腸中にゲル化された製剤の一部が残存していることが望ましい。このような性状を有するハイドロゲル製剤を形成するには、製剤の大きさ、高分子物質の種類、薬物及び錠剤中に水を浸入させるための添加剤の性質、含有量等によっても異なるが、ハイドロゲル形成高分子の配合割合としては、例えば一錠600mg以下の製剤では、例えば、製剤全体の5〜95重量%であり、他の態様として10〜90重量%であり、放出制御部において、例えば10〜95重量%であり、他の態様として15〜90重量%である。また、製剤全体における配合量としては、40mg以上、他の態様として60mg以上含有することが好ましい。これより少ない量では長期間に亘る消化管内での浸蝕に耐えられず、十分な徐放化が達成されない可能性がある。 本発明に用いられる製剤内部まで水を浸入させるための添加剤(「親水性基剤」とも云う)としては、製剤内部まで水を浸入させる機能を製剤に付与する物質であれば特に制限されない。例えば、該親水性基剤1gが溶解するのに必要な水の量が20±5℃下で5mL以下のもの、他の態様として4mL以下のものが挙げられ、水への溶解性が高い程、製剤中に水を浸入させる効果が高い。このような親水性基剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG;例えば、商品名PEG400、PEG1500、PEG4000、PEG6000、PEG20000、日本油脂社製)、ポリビニルピロリドン(PVP;例えば、商品名PVP K30、BASF社製)のような水溶性の高い高分子や、D-ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール類、白糖、無水マルトース、D-フルクトース、デキストラン(例えばデキストラン40)、ブドウ糖等の糖類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(例えばプルロニックF68、旭電化社製等)等の界面活性剤や塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の塩類あるいはクエン酸、酒石酸等の有機酸、グリシン、β-アラニン、塩酸リジン等のアミノ酸類、メグルミル等のアミノ糖類である。他の態様として、PEG6000、PVP、D-ソルビトール等が挙げられる。親水性基剤は、1種または2種以上適宜組合せて用いることができる。 親水性基剤の配合割合は、薬物の特性(溶解性、治療効果等)並びにその含有量、親水性基剤の溶解性、ハイドロゲル形成高分子の特性、あるいは、投与時の患者の状態等種々の因子により左右されるが、製剤が消化管上部に滞留する間にほぼ完全にゲル化ができる程度の割合が好ましい。製剤が消化管上部に滞留する時間は、種によって異なり、又個体差もあるが、イヌでは投与後約2時間、ヒトでは、投与後約4〜5時間である(Br.J.Clin.Pharmac.,(1988)26, 435−443)。ヒトの場合であれば投与後4〜5時間で製剤がほぼ完全にゲル化ができる程度の割合が好ましい。配合割合としては、例えば、製剤全体の3〜80重量%であり、他の態様として3〜60重量%程度であり、放出制御部中、例えば5〜80重量%であり、他の態様として5〜60重量%程度である。 本発明に用いられる「速放部」を構成する親水性物質としては、速放部を崩壊及び/または溶解させ得るものであれば特に制限されない。他の態様として、放出制御部がゲルを形成する前にほぼ完全に崩壊し得るものであれば特に制限されない。「ほぼ完全に」とは、速放部のマトリックスを形成する親水性物質が、溶出試験の条件下、視覚的にほぼ完全に崩壊することにより、示すことができる。また、「ほぼ完全に」とは、溶出試験の結果に基づき、例えば15分における薬物の溶出が70%以上、他の態様として85%以上、更なる態様として90%以上溶出すること、また、30分における薬物の溶出が85%以上溶出すること、他の態様として90%以上溶出すること、60分における薬物の溶出が90%以上溶出することをもって、示すことができる。また、速放部における最大溶出率としては、例えば、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、50rpm〜200rpm)や日本薬局方溶出試験第1法(回転バスケット法、50rpm〜200rpm)などにて試験を行うとき、60分後の医薬組成物からの薬物溶出率を示すことにより規定される。 該親水性物質としては、例えば、D-マンニトール、マルトース、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。 速放部は、ソリフェナシンまたはその塩と親水性物質とから構成される。このとき該親水性物質は、賦形剤及び/または結合剤の機能を併せ持つこともできる。すなわち、賦形剤としては、D-マンニトール、マルトース、ポリエチレングリコール、またはポリビニルピロリドンが挙げられ、結合剤としては、マルトース、ポリエチレングリコール、またはポリビニルピロリドンが挙げられる。ポリエチレングリコール(PEG)としては、例えば、PEG400、PEG1500、PEG4000、PEG6000、PEG20000(いずれも商品名、日本油脂社製)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)としては、例えば、Kollidon K25、Kollidon K90(いずれも商品名、BASF社製)が挙げられる。 親水性物質の存在状態として、例えば、速放部中に均一に配合される態様の他、速放部との界面に偏在する態様も含まれる。 親水性物質は、1種または2種以上を適宜組合せて用いることができる。 親水性物質の配合量として、例えば、製剤全体の2〜40重量%であり、他の態様として4〜35重量%程度であり、速放部中5〜95重量%であり、他の態様として10〜90重量%であり、更なる態様として20〜80重量%である。 本発明の医薬組成物には、所望によりさらに各種医薬賦形剤が適宜使用され、製剤化される。かかる医薬賦形剤としては、製薬的に許容され、かつ薬理的に許容されるものであれば特に制限されない。例えば、結合剤、安定化剤、崩壊剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、緩衝剤、抗酸化剤、界面活性剤などが使用される。 結合剤としては、例えば、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。 安定化剤としては、安定化剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、黒色酸化鉄などが挙げられる。本発明の経口投与用医薬組成物には、ポリエチレンオキサイドの安定化剤として、黄色三二酸化鉄及び/または赤色三二酸化鉄が配合されることが好ましい。該安定化剤の量として、マトリックス中での物理混合では、例えば製剤全体に対し1〜20重量%であり、他の態様として3〜15重量%である。例えば赤色三二酸化鉄では、製剤全体に対し5〜20重量%であり、他の態様として10〜15重量%である。黄色三二酸化鉄では、例えば1〜20重量%であり、他の態様として3〜10重量%である。フィルムコートにより配合される場合、錠剤重量に対し、例えば0.3〜2重量%であり、他の態様として0.5〜1.5重量%である。またこのとき、黄色三二酸化鉄あるいは赤色三二酸化鉄がフィルム中に存する濃度としては、例えば5〜50重量%であり、他の態様として10〜20重量%である。ここでいう「マトリックス中での物理混合」とは、例えば薬物、ポリエチレンオキサイド及び前記三二酸化鉄を均一に分散し、製剤の主たる基剤となるPEO中に薬物及び前記三二酸化鉄が均一に分散される手段を意味する。また「フィルムコート」とは、例えば前記三二酸化鉄をヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性高分子溶液に溶解あるいは懸濁し、別途調製した錠剤に薄膜で被覆することを意味する。本発明で用いることのできる黄色三二酸化鉄及び/または赤色三二酸化鉄は、通常製剤中どこに存在してもよい。例えば、フィルムコート等のフィルム中、造粒等の造粒物中、あるいはマトリックス中(例えば、ポリエチレンオキサイドの近傍)等が挙げられる。 崩壊剤としては、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。 酸味料としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。 発泡剤としては、例えば重曹などが挙げられる。 人工甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。 香料としては、例えばレモン、レモンライム、オレンジ、メントールなどが挙げられる。 滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。 着色剤としては、例えば食用黄色4号、5号、食用赤色3号、102号、食用青色3号などが挙げられる。 緩衝剤としては、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸またはその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニンまたはその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸またはその塩類などが挙げられる。 抗酸化剤としては、例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどが挙げられる。 界面活性剤としては、例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。 医薬賦形剤としては、1種または2種以上組合せて適宜適量添加することができる。 配合量については、いずれの賦形剤についても、本願発明の所望の効果が達成される範囲内の量で使用される。 本発明医薬組成物(製剤)としては、自体公知の方法により製した錠剤、例えば放出制御部と速放部を積層させた二層錠、速放部及び放出制御部を複数積層させた多層錠、放出制御部と速放部との間に薬物を含まない親水性物質及び/または水不溶性物質を用いて層を追加した三層錠等の多層錠、内核に放出制御部を、かつ外核に速放部を有する有核錠、及び放出制御部の核錠に速放部をフィルムコーティングしたフィルムコート錠などが挙げられる。 以下に、本発明の医薬組成物の製造法を詳述する。(1)粉砕・混合工程 該工程は、薬物、及び適当な添加剤を通常製薬学的に粉砕できる方法であれば、装置、手段とも特に制限されない。粉砕装置としては、例えばハンマーミル、ボールミル、ジェット粉砕機、コロイドミルなどが挙げられる。粉砕条件は適宜選択されれば特に制限されない。 粉砕に連続した各成分の混合工程は、通常製薬学的に各成分を均一に混合できる方法であれば、装置、手段とも特に制限されない。(2)放出制御部:造粒工程 該工程としては、噴霧液を用いてハイドロゲル形成高分子物質を造粒できる方法であれば、装置、手段とも特に制限されない。 造粒方法としては、例えば、高速攪拌造粒法、解砕(粉砕)造粒法、流動層造粒法、押出造粒法、転動造粒法、噴霧造粒法、あるいはそれらの方法により用いられる装置などが挙げられる。他の態様として、流動層造粒法・装置であり、更なる態様として、転動流動層造粒法・装置である。造粒後に乾燥することも出来る。乾燥方法は、通常製薬学的に乾燥できる方法であれば特に制限されない。(3)速放部:造粒工程 該工程としては、噴霧液を用いて薬物を造粒できる方法であれば、装置、手段とも特に制限されない。 製造方法として、たとえば、流動層造粒法、溶融造粒法、高速攪拌造粒法、解砕(粉砕)造粒法、押出造粒法、転動造粒法、噴霧造粒法、乾式造粒法あるいはそれらの方法により用いられる装置などが挙げられる。他の態様として流動層造粒法である。 湿式造粒法に用いる結合剤としては親水性物質が好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、マルトース、またはポリビニルピロリドンなどが挙げられる。結合剤としては、一種または二種以上適宜組合せて使用することができる。 噴霧液の調製条件は適宜選択されれば特に制限されない。 造粒後に乾燥することも出来る。乾燥方法は、通常製薬学的に乾燥する方法であれば特に制限されない。(4)成形工程 該工程としては、本発明の医薬組成物を成形する方法であれば装置、手段とも特に制限されない。例えば、造粒・乾燥工程を行わず、薬物、及び適当な添加剤を混合後に直接圧縮成形し錠剤を製する方法、造粒し更に滑沢剤を混合した後に圧縮成形し錠剤を製する方法、放出制御部と速放部を積層させて二層錠を製する方法、放出制御部と速放部を複数積層させて多層錠を製する方法、放出制御部と速放部との間に薬物を含まない層を追加した多層錠を製する方法、及び内核に放出制御部を、かつ外核に速放部を有する有核錠を製する方法等が挙げられる。他の態様として、二層錠を製する方法が挙げられる。 打錠装置としては、例えばロータリー式積層打錠機、オイルプレスなどが挙げられる。 打錠圧などの打錠条件としては、二層錠、及び多層錠を製造できる打錠圧であれば特に制限されない。例えば二層錠を調製する場合、一層目の造粒物と二層目の造粒物を積層して約2〜約20kNで圧縮、他の態様として、一層目の造粒物を約0.1〜約10kNで圧縮し、その後二層目の造粒物を積層して約2〜約20kNで圧縮することによって調製する。多層錠の場合、打錠圧を適宜調整し圧縮できる。 打錠品の硬度は、製造工程中乃至流通過程等で破損しない程度の硬度であれば特に制限されない。例えば、2〜20Nが挙げられる。(5)フィルムコーティング 適宜打錠後に錠剤表面にフィルムコーティングを施してもよい。 方法としては、通常製薬学的にコーティングする方法であれば特に制限されない。例えば、パンコーティング、ディップコーティングなどが挙げられる。 フィルムコーティング剤は、1種または2種以上組合せて適宜適量添加することができる。コーティング率は、フィルムを形成する率であれば特に制限されない。例えば、1%〜10%等である。 放出制御部からなる核錠に速放部をコーティングしてフィルムコート錠を製する場合は、速放部の成分を水などの溶媒に溶解または分散した噴霧液を、該核錠に対し噴霧することにより製することができる。コーティング率は、通常速放部からなるフィルムを形成する率であれば特に制限されない。例えば、1%〜20%等である。 フィルムコーティング後に乾燥してもよい。方法としては、通常製薬学的に乾燥できる方法であれば特に制限されない。乾燥条件としては、例えば製剤の安定性を考慮して適宜設定されれば特に制限されない。フィルムコーティング後の初期水分値については、例えば、安定性を考慮して0.1〜2%であることが望ましい。 本発明の経口投与用医薬組成物は、前立腺肥大に伴う下部尿路症状の改善用医薬組成物として使用される。 本発明の医薬組成物の製造方法としては、上記記載の方法あるいは自体公知の方法を適宜組合せて、所望の医薬製剤を製造する方法であれば特に制限されない。 以下、実施例、比較例及び試験例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定解釈されるものではない。実施例1(1)放出制御部混合末の調製 マクロゴール8000 1.2部を水 4.8部で攪拌溶解させ、該溶解液に予め粉砕した塩酸タムスロシン 0.1部を懸濁させて、噴霧液を調製した。次に、マクロゴール8000 8.8部、及びPEO(POLYOX(登録商標)WSR-303, Dow社製)50部を流動層造粒機に仕込み、前記噴霧液を噴霧することにより造粒した。乾燥した造粒物 60.1部にステアリン酸マグネシウム 0.3部を混合し放出制御部混合末を調製した。(2)速放部混合末の調製 マルトース 1部を水 4部で攪拌溶解して噴霧液を調製した。次に、コハク酸ソリフェナシン 0.6部とマンニトール 2.4部とを混合し粉砕した。該混合粉砕品、及びマンニトール 5.9部を流動層造粒機に仕込み、前記噴霧液を噴霧することにより造粒した。乾燥した造粒物9.9部にステアリン酸マグネシウム 0.1部を混合し速放部混合粉末を調製した。(3)打錠及びコーティング: ロータリー式積層打錠機を用い、上記放出制御部混合末、及び速放部混合末を打錠し本発明の製剤(二層錠)を得た。本積層錠に、更にヒドロキシプロピルメチルセルロース 5.04部、マクロゴール6000 0.95部、黄色三二酸化鉄 1.26部を溶解及び分散させた液をスプレーコーティングし、本発明の医薬組成物(フィルムコート錠)を得た。試験例1 実施例1の医薬組成物について、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、50rpm)に従って、溶出試験を行った。試験液は900mLとした。試験開始15分後、30分後、及び60分後におけるソリフェナシンの溶出率を表1に示す。実施例2(1)放出制御部混合末の調製 マクロゴール8000 1.2部を水 4.8部で攪拌溶解させ、予め粉砕した塩酸タムスロシン 0.1部を懸濁させて、噴霧液を調製した。次に、マクロゴール8000 8.8部、及びPEO(POLYOX(登録商標)WSR-303, Dow社製)50部を流動層造粒機に仕込み、前記噴霧液を噴霧することにより造粒した。乾燥した造粒物 60.1部にステアリン酸マグネシウム 0.3部を混合し放出制御部混合末を調製した。(2)速放部混合末の調製 コハク酸ソリフェナシン 0.6部、及びマンニトール 2.4部を混合し粉砕した。該混合粉砕品、マンニトール 5.9部、PEG 8000 1部、及びステアリン酸マグネシウム 0.1部を混合し速放部混合粉末を調製した。(3)打錠 オイルプレスを用い、上記放出制御部混合末、及び速放部混合末を打錠し本発明の医薬組成物(二層錠)を得た。実施例3(1)放出制御部混合末の調製 マクロゴール8000 1.2部を水 4.8部に攪拌溶解させ、該溶解液に予め粉砕した塩酸タムスロシン 0.1部を懸濁させて、噴霧液を調製した。次に、マクロゴール8000 8.8部、及びPEO(POLYOX(登録商標)WSR-303, Dow社製)50部を流動層造粒機に仕込み、前記噴霧液を噴霧することにより造粒した。乾燥した造粒物 60.1部にステアリン酸マグネシウム 0.3部を添加し混合し放出制御部混合末を調製した。(2)速放部混合末の調製 ポリビニルピロリドン(PVP K90)0.5部を水 4部に攪拌溶解して噴霧液を調製した。次に、コハク酸ソリフェナシン 0.6部とマンニトール 2.4部とを混合し粉砕した。該混合粉砕品にマンニトール 6.4部を加えて流動層造粒機に仕込み、前記噴霧液を噴霧することにより造粒した。乾燥した造粒物 9.9部にステアリン酸マグネシウム 0.1部を混合し速放部混合粉末を調製した。(3)打錠 ロータリー積層打錠機を用い、前記放出制御部混合末、及び速放部混合末を打錠し本発明の医薬組成物(二層錠)を得た。比較例1(1)放出制御部混合末の調製 マクロゴール8000 1.2部を水 4.8部で攪拌溶解させ、該溶解液に予め粉砕した塩酸タムスロシン 0.1部を懸濁させて、噴霧液を調製した。次に、マクロゴール8000 8.8部、及びPEO(POLYOX(登録商標)WSR-303, Dow社製)50部を流動層造粒機に仕込み、前記噴霧液を噴霧することにより造粒した。乾燥した造粒物 60.1部にステアリン酸マグネシウム 0.3部を混合し放出制御部混合末を調製した。(2)速放部混合末の調製 ヒドロキシルプロピルメチルセルロース2910 204部を水 1,836部で攪拌溶解し噴霧液を調製した。次に、コハク酸ソリフェナシン 340部と乳糖 1,360部とを混合し粉砕した。前記混合粉砕品、乳糖 2,125部、及びトウモロコシデンプン 1,020部を加えて流動層造粒機に仕込み、前記噴霧液を噴霧することにより造粒した。乾燥した造粒物 1,188部にステアリン酸マグネシウム 12部を混合し速放部混合粉末を調製した。(3)打錠 オイルプレスを用い、前記放出制御部混合末と速放部混合末を打錠し比較用の医薬組成物(二層錠)を得た。試験例2 実施例1、2及び3、または比較例1の医薬組成物について、日本薬局方溶出試験第1法(回転バスケット法、100rpm)に従って、溶出試験を行った。試験液は900mLとした。試験開始15分後、30分後、及び60分後におけるソリフェナシンの溶出率を表2に示す。 本発明は、タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩を含有する放出制御部、及び、ソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩を含有する速放部とからなる経口投与用医薬組成物を提供するものである。本発明の医薬組成物に依れば、単剤と比較して同程度の薬物放出性を有することから、単剤と同等の薬理学的効果が期待できる単一製剤(合剤)を提供する製剤技術として利用できる。 以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。(1)タムスロシンまたはその製薬学的に許容される塩、及びハイドロゲルを形成する高分子物質を含有してなる放出制御部を含む層と、(2)ソリフェナシンまたはその製薬学的に許容される塩、及び親水性物質を含有してなる速放部を含む層とを含み、前記親水性物質が、ポリエチレングリコール、マルトース、ポリビニルピロリドン、及びマンニトールからなる群より1種または2種以上選択される、経口投与用錠剤。 放出制御部がゲルを形成する前に速放部が崩壊及び/または溶解する請求項1記載の経口投与用錠剤。 ソリフェナシンが、15分で70%以上溶出されてなる請求項1乃至2のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 ソリフェナシンが、60分で90%以上溶出されてなる請求項3記載の経口投与用錠剤。 ソリフェナシンが、30分で85%以上溶出し、且つ、60分で90%以上溶出されてなる請求項4記載の経口投与用錠剤。 親水性物質の配合割合が5重量%以上99重量%以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 親水性物質のポリエチレングリコール、マルトース、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される1種または2種以上が、結合剤として使用されてなる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 親水性物質のマンニトールが賦形剤として使用されてなる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 ハイドロゲルを形成する高分子物質が、1%水溶液25℃で4000mPa・s以上の粘度を有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される1種または2種以上の高分子物質である請求項9記載の経口投与用錠剤。 ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイドである請求項10記載の経口投与用錠剤。 ポリエチレンオキサイドが、粘度平均分子量500万以上である請求項11記載の経口投与用錠剤。 ハイドロゲルを形成する高分子物質の配合割合が、5重量%以上95%重量%以下である請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 放出制御部が更に製剤内部に水を浸入させるための添加剤を含む請求項1乃至13のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、1gを溶解する水の量が5mL以下の溶解性を有する請求項14記載の経口投与用錠剤。 製剤内部に水を浸入させるための添加剤の配合割合が3重量%以上80%重量%以下である請求項15記載の経口投与用錠剤。 錠剤が、前立腺肥大に伴う下部尿路症状の改善用錠剤である請求項1乃至16のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。 錠剤が二層錠である請求項1乃至17のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。


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