生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_クルクミンの可溶性錯体
出願番号:2010546374
年次:2011
IPC分類:A61K 31/12,A61K 47/40,A61K 9/08,A61K 47/12,A61K 9/14,A61P 35/00,A61P 35/02,A61P 9/10,A61P 31/04,A61P 11/00,A61P 1/16,A61P 13/02,A61P 1/18,A61P 37/06,A61P 39/00,A61P 9/00,A61P 19/00,A61P 29/00,A61P 9/04,A61P 17/06,A61P 37/00,A61P 1/04,A61P 13/12,A61P 17/00,A61P 11/06,A61P 25/16,A61P 25/28,A61P 25/00,A61P 37/04


特許情報キャッシュ

ジャッコ パーキネン JP 2011512346 公表特許公報(A) 20110421 2010546374 20090216 クルクミンの可溶性錯体 ノボビオン オイ 510222615 NOVOBION OY 杉村 憲司 100147485 冨田 和幸 100119530 野田 裕子 100135172 ジャッコ パーキネン US 61/029,037 20080215 A61K 31/12 20060101AFI20110325BHJP A61K 47/40 20060101ALI20110325BHJP A61K 9/08 20060101ALI20110325BHJP A61K 47/12 20060101ALI20110325BHJP A61K 9/14 20060101ALI20110325BHJP A61P 35/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 35/02 20060101ALI20110325BHJP A61P 9/10 20060101ALI20110325BHJP A61P 31/04 20060101ALI20110325BHJP A61P 11/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 1/16 20060101ALI20110325BHJP A61P 13/02 20060101ALI20110325BHJP A61P 1/18 20060101ALI20110325BHJP A61P 37/06 20060101ALI20110325BHJP A61P 39/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 9/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 19/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 29/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 9/04 20060101ALI20110325BHJP A61P 17/06 20060101ALI20110325BHJP A61P 37/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 1/04 20060101ALI20110325BHJP A61P 13/12 20060101ALI20110325BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 11/06 20060101ALI20110325BHJP A61P 25/16 20060101ALI20110325BHJP A61P 25/28 20060101ALI20110325BHJP A61P 25/00 20060101ALI20110325BHJP A61P 37/04 20060101ALI20110325BHJP JPA61K31/12A61K47/40A61K9/08A61K47/12A61K9/14A61P35/00A61P35/02A61P9/10A61P31/04A61P11/00A61P1/16A61P13/02A61P1/18A61P37/06A61P39/00A61P9/00A61P19/00A61P29/00 101A61P9/04A61P17/06A61P37/00A61P29/00A61P1/04A61P13/12A61P17/00A61P11/06A61P25/16A61P25/28A61P25/00A61P37/04 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW FI2009050119 20090216 WO2009101263 20090820 22 20101004 4C076 4C206 4C076AA12 4C076AA29 4C076CC11 4C076CC15 4C076CC16 4C076CC17 4C076CC18 4C076CC27 4C076CC31 4C076CC47 4C076DD23 4C076DD26Z 4C076DD39 4C076DD41Z 4C076DD43 4C076DD43Z 4C076EE39 4C076FF15 4C076FF31 4C076FF33 4C076FF36 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB14 4C206MA02 4C206MA05 4C206MA37 4C206MA63 4C206ZA01 4C206ZA15 4C206ZA16 4C206ZA36 4C206ZA59 4C206ZA66 4C206ZA68 4C206ZA75 4C206ZA81 4C206ZA89 4C206ZA96 4C206ZB07 4C206ZB08 4C206ZB15 4C206ZB26 4C206ZB27 4C206ZB35 本発明は,水溶性クルクミン錯体に関する。特に,本発明は,水溶性で安定なクルクミン錯体を含有する水性組成物に関する。また,本発明は,安定なシクロデキストリン錯体を形成することによりクルクミンを可溶化する方法に関する。更に,本発明は,クルクミンの医薬及び栄養補助製剤並びに細胞及び器官を保護する組成物及び方法に関する。 クルクミンは,ジフェルロイルメタンと化学的に呼ばれ,多年生ハーブであるウコンの根茎に由来した疎水性ポリフェノールである。これは,広範な生物学的及び薬理学的な活性を有する。ターメリック粉末から単離したクルクミンは,生物学的活性が異なる二つの他のクルクミノイド,すなわちデメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンを含有する。クルクミンは多くのインビトロバイオアッセイにおいて最も活性なクルクミノイドであるが(非特許文献1),他のクルクミノイドですら幾つかの疾病モデルにおいて有効であることが証明されている。 クルクミンは,強力な抗炎症性,免疫調節性,抗増殖性及び抗腫瘍形成性活性を示し,種々の損傷機序に対して細胞及び組織を保護することが示された。多数の前臨床的研究は,クルクミンが,例えば,ガン及び白血病,脳卒中,心筋梗塞,慢性関節リウマチ,炎症性腸疾患,膵炎,敗血症,出血性ショック,臓器移植並びに放射線障害の治療を含むいくつかの疾病及び臨床的疾患に対する有望な治療薬であることを示している。 数個の分子標的がクルクミンに対し同定されており,これら標的とクルクミンとの相互作用が動物疾患モデルで同定された治療効果の少なくとも一部を説明する。更に,クルクミンは,動物試験及び第I相臨床試験において高い投薬レベルでさえも著しく安全であることが立証されている。 クルクミンの潜在的に価値ある治療効果の活用を制限している問題点は,その低い生体利用率である。実際,クルクミンの極めて低いレベルのみが血液及び組織において該クルクミンの経口投与により達成され得る(非特許文献2)。クルクミンの低い生体利用率は,その臨床的使用を消化管の疾病の予防及び可能な治療に今まで制限してきた。 クルクミンの低い生体利用率をもたらす主な理由は,その極めて低い水溶解度と、特に被験者における急速な腸内代謝である。更に,貧弱な水溶解度が,組織内でのクルクミンの有効濃度につながる静脈内投与に適した医薬製剤の開発を阻害してきた。 経口クルクミンの低吸収性を軽減するため,米国特許出願公開第20060067998号には,クルクミンの非経口投与用コロイド状薬物送達システムが開示されている。当該発明者らは,リポソーム薬物送達システムと、高分子系ナノ粒子及び微粒子を開示する。一般に,クルクミンのような水不溶性薬物は,リポソーム内の脂質膜に組み込まれ,リポソームの内側の水性相に組み込まれないため,薬物の組み込み量及びその安定性を制限しうる。 クルクミンは,中性及びアルカリ性のpHで急速に加水分解されることが一般に既知である(非特許文献3)。リポソーム製剤及び他のコロイド状薬物送達システムにおけるクルクミンの安定性は記載されていない。リポソームクルクミンでの前臨床的研究において,凍結乾燥したリポソームを凍結貯蔵され,これは限定的な安定性を示唆する。他方,投薬が投与容量によって制限されることが報告されており,これはリポソームクルクミンの濃度が十分に高くないことを示唆する(非特許文献4)。 数件の学術文献が,クルクミンのシクロデキストリンとの相互作用を扱っている(非特許文献5,6,7)。シクロデキストリンは,親油性の空洞及び親水性の外表面を形成するα(1−4)結合グルコピラノース単位からなる環状オリゴ糖である。その非極性空洞は,非共有結合力によって疎水性分子を包含し,それによって水溶解度を改善することができる。しかしながら,報告された実験は,高いモル過剰量のシクロデキストリンであっても相対的に低い濃度のクルクミンしか可溶化しえず,記載された錯体は治療用途に適さないことを示唆する。ドイツ特許出願第10233598号には,クルクミン及びシクロデキストリンを含有する化粧用又は皮膚用組成物が開示されている。しかしながら,開示された組成物がクルクミンを水溶性の形態で含有することは示されず,当該用途の例は,例えば非経口投与に適しない水中油型エマルジョンのみを記載する。 本発明は,人体及び動物体へ有効用量で投与し得るに十分高い濃度でクルクミンを可溶化する新規な方法を探究することによりクルクミン投与に付随した問題点を緩和しようとする。更に,本発明は,クルクミンの医薬及び栄養補助製剤の製造を可能にするクルクミンの安定な水溶性製剤を提供しようとする。最後に,本発明はまた,器官及び細胞の保護用組成物及び方法を提供しようとする。米国特許出願公開第20060067998号ドイツ特許出願第10233598号米国特許第5,861,415号米国特許第4,999,205号Sandur SK,Pandey MK,Sung B等,「クルクミン,デメトキシクルクミン,ビスデメトキシクルクミン,テトラヒドロクルクミン及びターメロンは,ROS非依存性機序を介して抗炎症性及び抗増殖性応答を特異的に調節する」 Carcinogenesis. 2007;28:1765-73.Anand P,Kunnumakkara AB,Newman RA,Aggarwal BB.「クルクミンの生体利用率:問題と展望」 Mol Pharm. 2007;4:807-18.Tonnesen HH,Karlsen J.「クルクミン及びクルクミノイドの研究VI 水溶液中のクルクミン分解の速度論」 Z Lebensm Unters Forsch. 1985;180:402-4.Li L,Ahmed B,Mehta K,Kurzrock R.「オキサリプラチン有無でのリポソームクルクミン:結腸直腸ガンにおける細胞成長,アポトーシス及び血管新生に対する効果」 Mol Cancer Ther. 2007;6:1276-82.Tonnesen HH,Masson M,Loftsson T.「クルクミン及びクルクミノイドの研究XXVII シクロデキストリン錯化:溶解性,化学的及び光化学的安定性」 Int J Pharm. 2002;244:127-35.Baglole KN,Boland BG,Wagner BD.「親および修飾したシクロデキストリン類への包接によるクルクミンの蛍光増強」 J Photochem Photobiol A. 2005;173:230-7.Tomren MA,Masson M,Loftsson T,Tonnesen HH.「クルクミン及びクルクミノイドの研究XXXI 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本発明により得ることができるシクロデキストリン錯体は,前述したシクロデキストリン錯体又は他のクルクミン製剤よりも一層高いクルクミン濃度で水溶液中に可溶であり,クルクミンの可溶化に必要なシクロデキストリンのモル過剰量は,前述したものよりも明らかに低い。クルクミンはまた、上記錯体中で著しく安定で,前述した錯体中よりも一層良好な安定性を有する。 クルクミンのシクロデキストリン錯体は、人体又は動物体への非経口,経口又は局所投与に適した医薬組成物に処方することができる。重要なことに,新しいクルクミン製剤は,重篤な疾病及び臨床的疾患の治療に有効な投薬量でクルクミンの静脈内投与を可能にできる。 また,クルクミンの溶液組成を体外で器官,組織及び細胞の保存及び灌流溶液に添加することもできる。更に,該錯体はクルクミンを含有する栄養補助調製品の製造に使用できる。 本発明に係るクルクミンの内毒素のない製剤を製造する方法は,クルクミンを少なくとも11のpHで溶解して溶液を形成し,該溶液のpHをシクロデキストリン又はアルブミンのような錯化剤の存在下pH8以下に下げ,このようにして得た溶液を回収することを備える。この簡単な方法によって,内毒素を使用した生物学的原材料から効率的に除去することができる。錯体の製造する間のクルクミンとシクロデキストリンとの接触中のpHの影響を示す。2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンを1〜200mmol/lの水酸化ナトリウム溶液に150g/lで溶解し,クルクミンを11.7g/lの濃度で添加した。溶液を10分間撹拌し,pHを測定し、0.5M塩酸で7.0に調整した。クルクミン濃度をHPLCによって430nmの吸光度で計測した。クルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する溶液の調整後のクルクミンの安定性に対するpHの影響を示す。クルクミンの2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン錯体を実施例3に記載したように12.3のpHで製造し,溶液を0.5Mのクエン酸でpH5.0〜pH11.3の間の異なるpH値に調整した。溶液を遮光して23℃で7日間貯蔵し,その後クルクミンの濃度をHPLCによって計測した。 本発明のシクロデキストリン錯体の製造に適するシクロデキストリンは,γ−シクロデキストリンのエーテル誘導体である。該誘導体は,特にγ−シクロデキストリンの(置換)アルキルエーテル誘導体で、ここでアルキル基が分岐又は直線状であり,1〜6個の炭素原子を有する。アルキル基を,ヒドロキシ,スルホキシ,アミノ及びチオ基からなる群から選択した1〜3の置換基で置換するのが好ましい。適当なエーテルの例としては,ヒドロキシアルキル及びスルホアルキルエーテル誘導体を特に挙げることができる。 一実施態様によれば,ヒドロキシアルキル基はヒドロキシプロピル,ジヒドロキシプロピル又はヒドロキシエチルであり,スルホアルキル基はスルホブチルである。 シクロデキストリンエーテルの置換度(DS)は通常3〜10である。ここで用いる置換度は,シクロデキストリン分子当たりのヒドロキシアルキル又はスルホアルキル基のようなエーテル化基の平均数を意味する。 γ−シクロデキストリンはまた,メチル又はエチル基のようなアルキル置換基を含有してもよい。γ−シクロデキストリンのグルコシル及びマルトシル誘導体も使用することができる。 特定の実施態様によれば,上記シクロデキストリンは,3〜7の置換度を有する2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである。クルクミン錯体の製造に適した2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンは,「CAVASOL W8 Pharma」の商品名でドイツのWacker Chemie AG社により提供されている。 シクロデキストリン錯体はクルクミン以外のクルクミノイドを含有することができる。ターメリック粉末における天然に産する組成に類似のクルクミノイド組成が適している。ターメリック粉末の抽出によって得た市販のクルクミン調製品は,95%以上のクルクミノイドを含有し、その約70〜80%がクルクミン,15〜25%がデメトキシクルクミン、3〜7%がビスデメトキシクルクミンである。あらゆるクルクミノイドを純粋な形態で使用できる。合成クルクミノイドも使用できる。以下に使用するような「クルクミン」とは,クルクミン,デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミン,並びにその混合物を意味する。 ターメリック粉末からのクルクミン単離方法は,例えば米国特許第5,861,415号及び非特許文献1に記載されている。クルクミン及び他のクルクミノイドは,例えば,非特許文献1に記載されたようなシリカゲル60を用いたクロマトグラフィーによって更に精製することができる。 「水溶性」とは,クルクミンのシクロデキストリン錯体が水溶液に少なくとも10mmol/lの濃度で沈殿なしに可溶であることを意味する。また、錯体は通常「安定」であり、これは錯体中のクルクミン濃度の減少がとは,遮光下室温(23±2℃)で三ヶ月間の貯蔵中,或いはまた光から保護される際に2〜8℃で十二ヶ月間の貯蔵中に20%未満であることを意味する。 錯体は,クルクミンをシクロデキストリンとアルカリ性水溶液中少なくともpH11,優先的には少なくともpH12のpHで接触させることにより製造される。適切なアルカリ性溶液は,例えば,0.1〜0.5mol/lの水酸化ナトリウムである。 10〜250g/lのシクロデキストリン濃度が適しているが,より高濃度を使用してもよい。クルクミンをシクロデキストリンに対して1:1〜1:6のモル比で添加し,溶液を撹拌する。該溶液を製造中光から保護してクルクミンの分解を防止する。pHを8以下で約3以上,特に約4.0〜7.6に調整する。 pHは,例えば塩酸,リン酸又はクエン酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,酢酸,グルコン酸,コハク酸のような有機酸及びその組み合わせで調整することができる。適切な組み合わせは,例えば,塩酸とクエン酸のようなヒドロキシ酸を用いることにあり,この場合錯体を、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含有する溶液組成物中で静脈内点滴に適したpH及びモル浸透圧濃度で回収できる。 いくらかの沈殿物を,使用する条件に応じてpH調整中に形成することができる。かかる沈殿物をろ過により除去することができる。 組成物の更なる調整を行うことができ,下記に例示する浸透圧調整剤,錯体形成促進剤,安定剤及び凍結保護剤のような他の補助物質を添加してもよい。組成物を滅菌ろ過できる。 クルクミン錯体を溶液から回収するか,又は単離なしに溶液中で更なる処理を行うことができる。 錯体の製造中,クルクミン及びシクロデキストリンを異なる方法で接触させることができる。第一の方法は,少なくともpH11のpHを有するアルカリ性シクロデキストリン溶液を作製し,クルクミンをアルカリ性シクロデキストリン溶液と混合し,溶解後pHをpH8以下へ下げる工程を備える。これは好適な方法である。クルクミンは,通常数分で溶解する。 第二の方法においては,クルクミンを先ずアルカリ性溶液に少なくともpH11のpHで溶解し,シクロデキストリンを該アルカリ性クルクミン溶液と混合し,溶解後pHを下げる。 第三の方法は,クルクミンをアルカリ性溶液に少なくとも11のpHで溶解し,シクロデキストリンを第二の溶液に溶解し,これら溶液を混合し,pHを下げる工程を備える。 上記全実施態様において,固体形態で用いるクルクミンをシクロデキストリン溶液と混合する前に濡らし,脱気できる。 エタノールのような有機溶剤を添加してクルクミンの溶解度を高めることができる。 接触工程に適した温度は、2〜40℃,たとえば15〜30℃,特には20〜25℃である。 シクロデキストリ及び他の生物学的原料は,細菌性内毒素を含有する場合がある。驚くべきことに,クルクミンを本発明の方法,特に実施例1に記載した実施態様を用いることにより溶解した場合、発熱物質のない水に100g/lで溶解した際に約100IU/mlの内毒素を含有する市販シクロデキストリンを使用した場合であっても,1IU/ml未満の内毒素を有するクルクミン錯体が得られることを見出した。 従って,本発明の方法は,使用した生物学的原料中に存在する内毒素を除去することにより内毒素のないクルクミン錯体を製造するのに特に有益である。 回収したクルクミンのシクロデキストリン錯体は,水溶液組成において室温で少なくとも三ヶ月間安定である。錯体の濃度が溶液中での安定性に影響するため,希釈溶液は不安定である。それゆえ,クルクミン濃度が1mmol/lより高く,約100mmol/lまで,好適には少なくとも5mmol/lである溶液組成を有することが好適である。実際のクルクミン濃度は,少なくとも10mmol/l,例えば10〜60mmol/lである。 錯体を,例えば,凍結乾燥,噴霧乾燥,凍結噴霧乾燥,反溶媒沈澱,超臨界又は亜臨界流体を使用する処理法,又は当業者に既知の他の方法によって乾燥して粉末,顆粒又は他の個体形態を作成することができる。 本発明に係る錯体は,中性のpH(約6.8〜7.5,特には約7.4のpH)で赤色である。好適には,赤色は10mmol/l以上のクルクミン濃度で検出可能である。このことは,上記錯体を,中性pHで橙色又は黄色である遊離のクルクミン及び他のシクロデキストリンとクルクミンとの錯体から区別する。 優れたクルクミン収量を有する水溶性で安定なシクロデキストリン錯体を得ることが可能であるという発見は驚くべきことであった。従来技術ではクルクミンがアルカリ性pHで急速に加水分解されると考えられたからである(非特許文献3)。米国特許第4,999,205号には,優れた光安定性及び染色力を有する透明な水溶性クルクミン錯体の製造方法が開示されている。当該方法は,基質とクルクミンを水溶液中でクルクミンが水溶性赤色アルカリ性形態で存在する9以上のpHで接触させ,次いで酸性化してpHを約8以下に下げ,これによって中性の黄色形態のクルクミンを基質で錯化する工程を備える。クルクミンの安定性を吸収により計測した。しかしながら,クルクミンの加水分解生成物がクルクミン形成吸収と類似の吸収を有するため,吸光がクルクミンの安定性評価のためには不確実な方法であることが示された(非特許文献3)。本発明においては,逆相HPLC法をクルクミン濃度の計測に用いる。 米国特許第4,999,205号は,クルクミン錯体形成用の基質として,水溶性の分岐鎖又は環状多糖類及び水溶性又は水分散性タンパク質を挙げている。一般に、シクロデキストリンが基質として挙げられる。実施例2に記載した比較研究においては,実質的に米国特許第4,999,205号に記載されたようにクルクミン錯体をゼラチンで調製した。また,クルクミン錯体を本発明の条件を含む異なる条件下非エーテル化γ−シクロデキストリン及びβ-シクロデキストリンのエーテル誘導体で調製した。相当量のクルクミンが,pHの低下中又は他のシクロデキストリン錯体及びゼラチン錯体の貯蔵中に沈殿し,低濃度の可溶性クルクミンしか得られなかった。添加したクルクミンの回収率は,他のシクロデキストリンを使用した際に1%未満〜26%で変化する一方,本発明のシクロデキストリン錯体では95%以上のクルクミンが回収された。他のシクロデキストリンとの水溶性錯体が,本発明の錯体よりも明らかに高いシクロデキストリン対クルクミンのモル比の存在下でのみ得られた。更に,他の錯体は貯蔵中不安定であった。 ドイツ特許出願第10233598号は,クルクミンとシクロデキストリンを含有する化粧用又は皮膚用組成物を記載し,その実施例2にはクルクミンとヒドロキシプロピル−γ-シクロデキストリンを含有する水中油型エマルション(クリーム)が挙げられている。該組成物の製造方法及びpHは記載されていない。学術文献(非特許文献5,6,7)及び本発明者等の実験から、クルクミンはヒドロキシプロピル−γ-シクロデキストリンとドイツ特許出願第10233598号に記載された質量比及び皮膚用組成物に使用できるpH(pH3〜9)で接触させた際に水溶性錯体を形成しないことが明白である。その代わりに,クルクミンは,本発明の組成物とは違って非経口投与に適さない記載の組成物の油相中に溶解しうる。 それゆえ,本発明に係るシクロデキストリン錯体が当該技術分野で既知のクルクミンの他のシクロデキストリン及びタンパク質との錯体よりも,一層高いクルクミン濃度で可溶であることにより優ることは明らかである。加えて,クルクミンに対するシクロデキストリンの過剰モル量は,他のシクロデキストリンとの錯体よりも本発明の錯体において明らかに低い。更に,本発明の錯体は,室内環境光に曝露された場合でも,他の錯体よりも著しく優れた安定性を有する。最後に,当該錯体は実質的に内毒素がない。これらの特性は,錯体の医薬的及び他の臨床的並びに栄養補助用途にとって重要である。 本発明は,クルクミンが治療効果を有する疾病及び臨床的疾患の予防及び治療用医薬組成物を提供する。該組成物は,有効量のクルクミンのシクロデキストリン錯体を補助物質と共に含有する。 多くの疾病,特に生命を危うくする疾患において,クルクミンを静脈内注射又は点滴として付与して危機的な組織内での治療濃度を達成することが必要である。静脈内投与に適した製剤は,最も単純には,シクロデキストリン錯体の製造後滅菌水溶液を当業者に既知の方法及び条件を用いて製造した際に得られる溶液組成である。該溶液組成は,塩化ナトリウムのような少なくとも一つの浸透圧調整剤,及び好適には緩衝剤を含有する。緩衝剤は,好適にはクエン酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸又はグルコン酸のようなヒドロキシ酸又はその塩である。 浸透圧調整剤,錯体形成促進剤,安定剤,保存剤,抗酸化剤,キレート剤及び凍結保護剤のような他の補助物質を添加してもよい。溶液のモル浸透圧濃度は,好適には240〜600mOsmol/lであり,pHは少なくとも約4で8以下,好適には4.0〜7.6である。かかる製剤を注射又は点滴容器,アンプル,袋もしくは注射器に無菌で充填することができる。製剤を、投与前の復元まで粉末形態で凍結乾燥し、貯蔵することができる。 製剤を,静脈内,血管内,動脈内,皮下,筋肉内,関節内,腹腔内又は髄腔内のような異なった非経口経路を通じて投与することができる。 新規な方法によって,例えば20mg/mlのクルクミンを含有するクルクミン医薬製剤を製造することができる(実施例4)。これは,静脈内点滴として100mg/kgの高い投薬量を70kgの患者に対し350mlのような点滴に適する容量で投与することを可能にする。 クルクミンのシクロデキストリン錯体はまた,リポソーム並びに高分子系ナノ粒子及び微粒子のようなクルクミンのコロイド状薬物送達システムの製造に使用できる。特に,クルクミンのシクロデキストリン錯体は,血行中の長期半減期及び腫瘍に対するより効率的な標的化のためにペグ化リポソームのようなリポソームに取り込むことができる。リポソームへの疎水性薬物のシクロデキストリン錯体の取り込み方法が最近開示された(非特許文献8)。クルクミンのシクロデキストリン錯体の使用は,リポソーム内側の水性空間内へのクルクミンの取り込みをもたらし,より高いクルクミン濃度と優れた安定性を得ることができる。 クルクミンのシクロデキストリン錯体の更なる用途は,吸入用の医薬製剤の製造である。シクロデキストリン水溶液は,適当なシクロデキストリン濃度でエアロゾル化することができ,得られる液滴のサイズは肺沈着に匹敵する。ヒドロキシプロピル-γ−シクロデキストリンについてエアロゾル化に適切な濃度は,約50mmol/lであると報告されている(非特許文献9)。エアロゾルは,クルクミンの肺への効率的な投薬のために超音波噴霧吸入器によって発生させることができる。エアロゾル化用の水性製剤は,静脈内投与用の溶液と同様の補助物質を含有し,シクロデキストリン錯体の濃度をエアロゾル化に最適な濃度へ調整する。シクロデキストリン錯体は,粉末吸入器によるクルクミンの投与のための吸入剤粉末の製造にも使用できる。肺投薬は,肺でのより高濃度のクルクミンが得られるだけでなく,クルクミンの全身送達に用いることができる。 本発明はまた,クルクミンの経口投与用の医薬及び栄養補助組成物を経口溶液,錠剤,カプレット,ペレット,カプセル,顆粒,丸薬,粉末又は小袋の投薬形態で提供する。本発明はさらに,口腔,経胃腸,鼻,膣及び直腸粘膜,目及び耳を含む皮膚及び粘膜表面へのクルクミンの局所投与並びに経粘膜送達用の医薬組成物を提供する。医薬の形態は,クリーム,ゲル,ローション,溶液,軟膏,ペースト,粉末,顆粒形態又は経皮的パッチとすることができる。これは液体,半固体又は固体であってもよく,また粘膜付着性又は生体付着性であってもよい。頬側又は鼻側送達システム若しくは直腸投与用坐薬を製造することができる。これら医薬製剤は,活性成分としてのクルクミンのシクロデキストリン錯体を投薬形態に応じて補助物質(賦形剤)と共に含有する。賦形剤の選択は,意図する投与経路及び薬務に基づいて行うことができる。賦形剤としては,溶解性及び錯体形成促進剤,溶剤,充填剤,ビヒクル,被覆剤,崩壊剤,香味料,結合剤,緩衝剤,キレート剤,発泡調節剤,緩和薬,湿潤剤,潤滑剤,可塑剤,保存剤,抗酸化剤,濃厚剤,粘液破壊物質,粘膜付着又は生体付着物質,もしくはその組み合わせを挙げることができる。 錯体形成促進剤を添加してクルクミンのシクロデキストリンでの錯化を高めることができる。適切な錯体形成促進剤としては,一つ以上の薬理学的に不活性な水溶性高分子と,ヒドロキシ酸と、特定試薬のシクロデキストリンでの錯化を高めるために液体製剤に通常用いる他の有機化合物とが挙げられる。水溶性天然高分子としては,イヌリン,ペクチン,アルギン誘導体及び寒天のような多糖類,並びにカゼイン及びゼラチンのようなポリペプチドが挙げられる。適当な水溶性半合成高分子としては,メチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルエチルセルロース,ヒドロキシプロピルエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのようなセルロース誘導体が挙げられる。適当な水溶性合成重合体としては,ポリエチレングリコールのようなポリオキシエチレン誘導体,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン及びポリスチレンスルホネートのようなポリビニル誘導体,並びにカルボマーのような種々のアクリル酸共重合体が挙げられる。適当なヒドロキシ酸としては,クエン酸,リンゴ酸,乳酸及び酒石酸並びに当業者に既知の他の酸が挙げられる。 緩衝剤としては,一例として限定することなく,下記の酸及びそのナトリウム及びカリウム塩,つまり,酢酸,アジピン酸,クエン酸,マレイン酸,乳酸,酒石酸,フマル酸,コハク酸,リン酸及びグルコン酸が挙げられる。適当な浸透圧調整剤としては,例えば,グリセロール,ラクトース,マンニトール,デキストロース,塩化ナトリウム,ソルビトール,蔗糖及びトレハロースが挙げられる。安定化剤としては,例えばアルブミン,グリシン及び他のアミノ酸,グリセロール,マンニトール,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,蔗糖並びにその他当業者に既知のものが挙げられる。保存剤,抗酸化剤及びキレート剤としては,例えば安息香酸,ベンジルアルコール,クロルヘキシジングルコネート,クロロブタノール,エデテート(EDTA),ペンテテート,フェニルエチルアルコール,ソルビン酸,メチル,エチル及びプロピルパラベン類,アスコルビン酸,アスコルビルパルミテート,レチニルパルミテート,ブチル化ヒドロキシアニソール,ブチル化ヒドロキシトルエン,モノチオグリセロール並びにプロピルガレートが挙げられる。凍結保護物質としては,例えばグリセロール,トレハロース,プロピレングリコール及びポリエチレングリコールが挙げられる。 可溶化剤としては,一例として限定することなく,アルギン酸,カルボキシメチルセルロース,セルロース,グリコール,エチレングリコール及びプロピレングリコールが挙げられる。適当な充填剤としては,例えば炭酸カルシウム,第二リン酸カルシウム,ラクトース,炭酸マグネシウム,酸化マグネシウム,無水ラクトース,微結晶セルロース及びマンニトールが挙げられる。適当な結合剤の例としては,アルギン酸,メチルセルロース及びポリビニルピロリドンが挙げられる。適当な潤滑剤は,例えば,ステアリン酸,タルク,フマル酸ステアリルナトリウム,ベヘン酸グリセリル,ケイ酸マグネシウム,三ケイ酸マグネシウム及び水添ヒマシ油,並びにその混合物である。崩壊剤としては,例えばクロスカルメロースナトリウム,クロスポビドン,デンプン,デンプングリコール酸ナトリウム,カルボキシメチルセルロース及び微結晶セルロースが挙げられる。滑剤は,例えばコロイド状無水シリカ及びタルクであってもよい。被覆剤としては,例えばカルボキシメチルセルロース,コポビドン,二酸化チタンが挙げられる。 多数の補助物質、すなわち賦形剤が一つ以上の機能を発揮し,本明細書中で挙げなかった多数の他の物質が当業者に既知で,本発明の製剤に使用できることは明白である。 本発明のシクロデキストリン錯体を含有する医薬製剤で治療できる疾病及び臨床的疾患としては,多種の形態のガン及び白血病のような生命を危うくする疾病及び臨床的疾患,心筋梗塞のような循環器疾病,脳卒中,敗血症,急性肺損傷,急性肝不全,急性尿細管壊死,急性膵炎,移植片対宿主疾病及び移植片拒絶,並びに放射線障害が挙げられる。 本発明の医薬組成物は,化学療法又は放射線療法を施されている又は施す準備をしている患者の口腔及び胃腸の粘膜炎の治療又は低減に更に使用できる。 本発明の医薬製剤は,一又は数個の器官への血流の一時的減少又は完全な停止(虚血)と、続いて血流の回復(再灌流)とにより特徴付けられた臨床的疾患おいて生起する虚血/再灌流損傷の予防及び治療に更に使用できる。これら臨床的疾患としては,臓器移植,血栓溶解療法及び他の血管再生処置,心肺バイパスの有無での心臓外科手術及び血管障害性外科手術のような循環器外科手術,出血性ショック及び他の形態のショックが挙げられる。 本発明のシクロデキストリン錯体を含有する医薬製剤で治療し得る更なる臨床的疾患としては,限定されないが,関節リウマチ,血管炎及び結合組織障害のような自己免疫疾患及び炎症性疾病,炎症性腸疾患,腎症,肝炎,肝臓損傷及び線維症,乾癬,強皮症及び皮膚ガンのような皮膚疾病,肺損傷及び線維症,慢性閉塞性肺疾患,喘息,パーキンソン病,アルツハイマー病及び多発性硬化症のような中枢神経系の退行性及び自己免疫疾患が挙げられる。 本発明の医薬製剤の投与を,他の治療処置と組み合わせることができる。培養細胞及び動物モデルでの研究は通常の組織及び細胞を処置に関連した毒性から保護しながらクルクミンが化学療法及び放射線療法の抗ガン効能を高めることができることを示すので、例えばガン及び白血病の化学療法及び放射線療法と組み合わせることができる。 疾病及び臨床的疾患の予防及び治療において,クルクミンのシクロデキストリン錯体の有効投薬量を人体又は動物体に投与する。有効投薬量は疾病及び臨床的疾患,投与経路及び投薬形態に応じて広範囲に変わる。一般に、投薬量は0.1〜300mg/kg/日である。経口投与における投薬量は、1〜300mg/kg/日のように非経口投与におけるものより通常高い。静脈内の投薬量は、通常0.5〜100mg/kg/日である。より高い投薬量を幾つかの臨床的疾患に用いることができ(非特許文献10,11),一方敗血症(非特許文献12)及び外傷性障害後の筋再生(非特許文献13)のような或る疾患においては,クルクミンのより低い投薬量が効果的な場合がある。局所投与において,投薬量は治療すべき表面積に応じて変わり,0.1mg/kg/日以下の投薬量を用いてもよい。 本発明は,器官及び細胞をクルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する保存溶液と接触させることを備える低体温保存及び灌流中の器官,組織及び細胞の保護方法を更に提供する。クルクミンは,低体温貯蔵及び灌流中に虚血,低体温損傷及び酸化ストレスから器官及び細胞を保護する。復温及び再灌流中,クルクミンは器官を再灌流損傷から保護する。本発明ではクルクミンを安定な水溶性の形態で水性保存及び灌流溶液へ添加することが可能で,これは器官及び細胞の保存におけるクルクミンの保護効果の開発の前提条件である。 当然ここで用いる「低体温」は,体温より低い温度,特に35℃以下の温度を言う。臓器移植体は,通常10℃〜0℃で貯蔵される。本発明の範囲内で「低体温」はまた,凍結保存に用いる温度,すなわち0℃以下の温度で凍結又はガラス状態に細胞及び組織の保存する温度を言う。 本発明によれば、移植用の器官が摘出中クルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する水溶液で洗い流される。生体外での保存中,前記器官は,初期洗い流し後クルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する保存溶液で連続的に灌流,或いはまた低温度に維持することができる。該器官は,移植前にクルクミンのシクロデキストリン錯体を含有するリンゲル溶液のような洗浄溶液で洗い流さしてもよい。組織及び細胞は,クルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する水溶液に浸漬される。器官はまた,特に一時的心停止及び心臓外科手術中の心臓の保存のため,現場でクルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する血液または血液のない溶液で灌流されてもよい。 器官及び細胞の保護に有効なクルクミン濃度は,一般に0.5〜250μmol/lである。保存,灌流及び貯蔵溶液に添加する溶液組成は,静脈内投与用の溶液と同じ補助物質を含有する。使用前に復元される粉末製剤を使用してもよい。 本発明は,クルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する第一溶液又は粉末製剤と、使用前に足し合わせる第二溶液とからなるキットも含む。錯体を血液細胞の調製又は治療に用いるバッグセットのような医療機器に組み込むことができ、この場合液体又は固体形態で貯蔵し、使用前に復元させることができる。 クルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する組成物を,従来の臓器保存及び灌流溶液に添加することができる。かかる市販の保存溶液としては,ViaSpan(登録商標)(Barr Laboratories社及びBristol−Myers Squibb社,米国),Celsior(登録商標)(SangStat社,米国),KPS−1(登録商標)(Organ Recovery Systems社,米国),Perfadex(登録商標)(Vitrolife AG社,スウェーデン),Custodiol(登録商標)(Dr. Franz Kohler Chemie GmbH社,ドイツ及びEssential Pharmaceuticals,LLC社,米国),IGL−1(登録商標)(Institut Georges Lopez社,フランス),Polysol(登録商標) (Doorzand Medical Innovations B.V.社,オランダ),SCOT(MacoPharma社,フランス)及びPlegisol(登録商標)(Abbott Laboratories社,米国)が例示される。アルブミンのような他の物質も添加できる。(実施例に用いた方法) クルクミンの濃度を逆相HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)によって測定した。50μlの希釈試料を450μlのアセトニトリルに添加し,pH3.0の0.5%クエン酸カリウム500μlを添加した。分離を,4μmの Nova−Pak C18 カラム,150×3.9mm(Waters社,米国)上で行った。移動相は,KOHでpH3に調整した0.5%クエン酸及びアセトニトリル(55:45)からなる。1.0ml/分の流速を用いた。UVを256nmで監視した。4−ヒドロキシベンゾフェノン(Fluka)を内部標準として使用した。クルクミン,デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンの保持時間は,およそ7.4,6.8及び6.2分であった。内毒素は,ゲルークロット法及びPh. Eur. 2.6.14に従う比色比濁法によって計測した。 以下は,本発明を説明する限定されない実施例である。実施例1.クルクミンの水溶性で安定なシクロデキストリン錯体及びその医薬製剤の製造 2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(CAVASOL W8 Pharma,Wacker Chemi社,ドイツ)を約23℃で0.2mol/lの水酸化ナトリウム溶液に100g/lの濃度まで溶解した。クルクミン(Curcumin C3 Complex,Sabinsa社,米国)を14g/lの濃度まで添加した。生成した溶液を撹拌し,遮光した。クルクミンの完全溶解後,0.62mol/lの塩酸及び0.12mol/lのクエン酸の混合物の添加によってpHを6.1まで下げた。溶液を滅菌ろ過し,滅菌バイアル瓶中に無菌充填した。生成物の組成を表1に示す。実施例2.本発明のシクロデキストリン錯体とクルクミンの他のシクロデキストリン及びゼラチン錯体との比較 クルクミンと、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPγCD),2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD;CAVASOL W7 Pharma,Wacker Chemi社),スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(SBEβCD;CyDex社,米国)及びγ−シクロデキストリン(γCD;Sigma Aldrich社,ドイツ)を含む種々のシクロデキストリンとの錯体形成を比較した。まず,100g/lのHPγCD及びHPβCDと135g/lのSBEβCDを0.1mol/lの水酸化ナトリウムに溶解し,8.8g/lのクルクミンを添加し,溶液を撹拌した。クルクミンの完全溶解後,pHを0.5Mのクエン酸で7.0まで下げ,溶液の一部では更にpH5.0まで下げた。また、γCDの47g/l溶液を0.1mol/lの水酸化ナトリウム中で作り,クルクミンを4.4g/lの濃度まで添加し、撹拌した。クルクミンの溶解後,pHを0.5Mのクエン酸で7.0まで下げ,溶液の一部では更にpH5.0まで下げた。すべての溶液がアルカリ性pHで透明濃赤色であった。pHの低下中,相当量の黄色沈殿が他のシクロデキストリン溶液中で形成されたが,HPγCD溶液中では形成されなかった。沈殿はγCD溶液中で最も多かった。他の溶液は,pHを8以下に下げたときに橙黄色に変わったが,一方HPγCD溶液はpH7.4で赤色だった。これら溶液を滅菌ろ過し,室温で1週間貯蔵した。溶液の特性を表2に示す。 2%ゼラチン溶液(Sigma Aldrich社製)を1mol/lの水酸化ナトリウムでpH10に調整した。クルクミン(C3)を0.1mol/lの水酸化ナトリウムに9mg/mlの濃度まで溶解した。クルクミン溶液をゼラチン溶液に添加してクルクミン対ゼラチンの5.5%負荷(クルクミン対ゼラチンの重量比,米国特許第4,999,205号)を付与した。透明赤色溶液が得られた。pHを0.1Mのクエン酸でpH7.0まで下げ,溶液の一部では更にpH5.0まで下げた。pHを低下させたときに相当量の沈殿が形成された。黄色溶液が得られ,滅菌ろ過し,室温で1週間貯蔵した。溶液の特性を表2に示す。実施例3.クルクミンのシクロデキストリン錯体の安定性 異なる量のHPγCDを0.1mol/lの水酸化ナトリウムに溶解し,異なる量のクルクミンを添加して異なるシクロデキストリン/クルクミン(CD/C)比を付与することによりHPγCDとのクルクミン錯体を調製した。クルクミンの溶解後,pHを0.5mol/lのクエン酸で異なるpH値に下げた。溶液を滅菌ろ過し,滅菌バイアル瓶中に無菌充填し,室温で貯蔵し遮光した。クルクミン濃度を表3に示す時点でHPLCによって計測した。実施例4.クルクミンのシクロデキストリン錯体及びその20g/lのクルクミンを含有する医薬製剤の製造 2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンを0.2mol/lの水酸化ナトリウム溶液に205g/lの濃度まで溶解した。クルクミンを25g/lの濃度まで添加した。溶液を撹拌し,遮光した。クルクミンの完全溶解後,0.62mol/lの塩酸及び0.12mol/lのクエン酸の混合物を添加することによりpHを6.1まで下げた。溶液を滅菌ろ過し,滅菌バイアル瓶中に無菌充填した。生成物の組成を表4に示す。 ガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体とクルクミンとによって形成された水溶性錯体を含み、また任意に非錯化シクロデキストリンを含み,クルクミン対シクロデキストリンのモル比が1:1〜1:6である組成物。 前記錯体を溶解する水性相を含む請求項1に記載の組成物。 前記水性相中のクルクミン濃度が少なくとも1mmol/l,好ましくは1〜100mmol/l,特に約5〜60mmol/l,例えば約10〜60mmol/lである請求項1又は2に記載の組成物。 前記水性相のpHが8以下で少なくとも約3であり,好ましくは4.0〜7.6である請求項2又は3に記載の組成物。 1IU/ml未満の内毒素を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。 pH7.4で赤色であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。 薬理学的に不活性な水溶性高分子と,ヒドロキシ酸と,特定試薬のシクロデキストリンでの錯化を高めるために液体製剤で通常用いる他の有機化合物との群から選択した錯体形成促進剤を更に含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。 実質的に乾燥した粉末又は他の固体もしくは半固体形態からなる請求項1に記載の組成物。 クルクミンをガンマ−シクロデキストリンのエーテル誘導体と水性相中少なくともpH11で接触させて水溶液を形成し,該水溶液のpHを8未満に下げ,前記水溶液を回収することにより得られる請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。 前記回収した水溶液を乾燥して粉末又は他の固体又は半固体形態を形成する請求項9に記載の組成物。 前記シクロデキストリンが,3〜10の置換度を有するガンマ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル又はスルホアルキルエーテル誘導体である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。 前記シクロデキストリンが,3〜7の置換度を有する2−ヒドロキシプロピル−ガンマ−シクロデキストリンである請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。 前記クルクミンのシクロデキストリン錯体が,包接錯体である前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。 a)クルクミンをガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体と水性相中少なくともpH11で接触させて溶液を形成し, b)前記溶液のpHをpH8以下に下げてクルクミンのシクロデキストリン錯体を形成することを備えることを特徴とするクルクミンとガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体との水溶性錯体の製造方法。 前記溶液のpHを約3から8以下,特に4.0〜7.6の範囲の値に下げる請求項14に記載の方法。 クルクミンを前記ガンマ−シクロデキストリン誘導体と約1:1〜1:6のモル比で接触させる請求項14又は15に記載の方法。 前記クルクミンのシクロデキストリン錯体を含有する溶液を回収することを備える請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。 前記回収した溶液がpH7.4で赤色を示す請求項17に記載の方法。 請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を備え、更に塩化ナトリウム及び任意に緩衝剤を含有する医薬組成物。 前記緩衝剤がクエン酸塩,リン酸塩,酢酸塩,乳酸塩,グルコン酸塩,リンゴ酸塩,コハク酸塩及び酒石酸塩並びにその混合物からなる群から選択される請求項19に記載の医薬組成物。 請求項1〜13、19もしくは20のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする人体及び動物体におけるガン,白血病,心筋梗塞,脳卒中,敗血症,急性肺損傷,急性肝不全,急性尿細管壊死,急性膵炎,移植片対宿主疾病,移植片拒絶,放射線障害及びその他の生命を危うくする疾患を治療するのための医薬組成物。 請求項1〜13、19もしくは20のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする化学療法又は放射線療法を施されている又は施す準備をしている人体又は動物体における粘膜炎の治療又は低減のための医薬組成物。 請求項1〜13、19もしくは20のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする人体又は動物体における臓器移植,血栓溶解療法及び他の血行再生処置,循環器及び血管障害性外科手術中の再灌流損傷並びにショックの予防及び治療用医薬組成物。 有効投薬量のガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体とクルクミンを含有する医薬組成物を投与することを特徴とする人体又は動物体におけるガン,白血病,心筋梗塞,脳卒中,敗血症,急性肺損傷,急性肝不全,急性尿細管壊死,急性膵炎,移植片対宿主疾病,移植片拒絶,放射線障害及びその他の生命を危うくする疾患の治療方法。 有効投薬量のガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体とクルクミンを含有する医薬組成物を投与することを特徴とする人体又は動物体における粘膜炎の治療又は低減方法。 有効投薬量のガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体とクルクミンを含有する医薬組成物を投与することを特徴とする人体又は動物体における臓器移植,血栓溶解療法及び他の血行再生処置,循環器及び血管障害性外科手術中及び手術後の再灌流損傷並びにショックの予防及び治療方法。 ヒト又は動物の器官,組織又は細胞を有効投薬量のガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体とクルクミンによって形成された組成物と接触させることを特徴とする前記器官,組織又は細胞を低体温で保存する方法。 a)クルクミンを水性相に少なくともpH11で溶解して溶液を形成し, b)該クルクミン溶液のpHをpH8以下に下げ, c)得られたクルクミン製剤を含有する溶液を回収することを特徴とする内毒素のないクルクミン製剤の製造方法。 ガンマ−シクロデキストリンのアルキルエーテル誘導体とクルクミンにより形成した水溶性で安定な錯体を備え、非錯化シクロデキストリンを任意に含み,クルクミン対シクロデキストリンのモル比が1:1〜1:6である組成物並びにかかる組成物の製造方法である。クルクミンの水溶性で安定な錯体は,例えば人体又は動物体におけるガン,白血病,心筋梗塞,脳卒中,敗血症,急性肺損傷,急性肝不全,急性尿細管壊死,急性膵炎,放射線障害及びその他の生命を危うくする疾患の治療,並びにヒト又は動物の器官,組織又は細胞の低体温での保存に有用である。


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