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タイトル:特許公報(B1)_精製卵黄リン脂質組成物の製造方法およびこれにより得られた精製卵黄リン脂質組成物を用いた医薬品組成物、化粧品組成物、または食品組成物
出願番号:2010545131
年次:2011
IPC分類:C07F 9/10,A61K 47/24,A61K 8/55,A61Q 19/00,A61K 9/10,A23J 7/00


特許情報キャッシュ

西村 亜絵 吉田 英人 JP 4723694 特許公報(B1) 20110415 2010545131 20100924 精製卵黄リン脂質組成物の製造方法およびこれにより得られた精製卵黄リン脂質組成物を用いた医薬品組成物、化粧品組成物、または食品組成物 キユーピー株式会社 000001421 西村 亜絵 吉田 英人 JP 2009264907 20091120 20110713 C07F 9/10 20060101AFI20110627BHJP A61K 47/24 20060101ALI20110627BHJP A61K 8/55 20060101ALI20110627BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20110627BHJP A61K 9/10 20060101ALI20110627BHJP A23J 7/00 20060101ALI20110627BHJP JPC07F9/10 AA61K47/24A61K8/55A61Q19/00A61K9/10A23J7/00 C07F 9/10 A23J 7/00 A61K 8/55 A61K 9/10 A61K 47/24 A61Q 19/00 CA/REGISTRY(STN) 特開2005−272380(JP,A) 特開昭62−039593(JP,A) 9 JP2010066511 20100924 11 20101111 本堂 裕司本発明は、コレステロール含有量が低減された精製卵黄リン脂質組成物の製造方法およびこれにより得られた精製卵黄リン脂質組成物を用いた医薬品組成物、化粧品組成物、または食品組成物に関する。卵黄リン脂質は、分子内に親水基と疎水基を有していることから、従来より食品分野、化粧品分野、医薬品分野において幅広く乳化剤として利用されている。特にリン脂質含有量が80%以上であり、中性リン脂質含有量が60%以上である卵黄リン脂質は、乳化性、安全性に優れていることから、脂肪乳剤用の乳化剤などの医薬品用添加物として、また乳液等の皮膚用化粧料の乳化剤などの化粧品原料として用いられている。リン脂質を卵黄から抽出した場合、卵黄由来のコレステロールや中性脂質等の不純物も同時に抽出される。これらの不純物の含有量を低減させ、卵黄リン脂質組成物を精製する方法としては、アセトン処理による分別が一般的に知られている(非特許文献1)。卵黄から抽出した卵黄リン脂質組成物をアセトンに混合すると、アセトンに難溶性の卵黄リン脂質は沈殿となり、中性脂質などの不純物が溶解したアセトンを除去することで卵黄リン脂質を精製することができる。しかしながらこの方法は、中性脂質の含有量は充分に低減できるものの、コレステロールの除去効率が低く、コレステロールの含有量が特定量以下に低減された精製卵黄リン脂質組成物を得るためには、アセトン処理を多数回繰り返す必要があり、コストと手間がかかるだけでなく、収量が低下するという問題があった。リン脂質のコレステロール含有量を低減する方法として、精製リン脂質を非極性溶媒に溶解させ、得られた溶液をシリカゲルに接触させた後、シリカゲルを除去し、次いでこの溶液から非極性溶媒を留去する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法は中性脂質含有量が5%以下にまで精製されたリン脂質を用いないとコレステロール低減効果が得難く、卵黄から抽出した卵黄リン脂質組成物に対し、一度アセトン等を用いた精製処理を行ってからシリカゲルを用いた処理をする必要があり、コストと手間がかかるという問題があった。特開昭62−39593号公報特開2005−272380号公報中村良編、「卵の化学」、株式会社朝倉書店そこで、本発明の目的は、精製卵黄リン脂質組成物を製造する際、効率的にコレステロール含有量を低減することができる精製卵黄リン脂質組成物の製造方法、およびこれにより得られた精製卵黄リン脂質組成物を用いた医薬品組成物、化粧品組成物、または食品組成物を提供するものである。本発明者等は、上記目的を達成すべく、使用原料及び各工程等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、精製卵黄リン脂質組成物の製造方法において、卵黄リン脂質組成物の精製の際、アセトン含有率が80容量%以上である含水含アルコールアセトン処理を行うことで、コレステロール含有量が低減された精製卵黄リン脂質組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1)リン脂質含有量が80%以上であり、中性リン脂質含有量が60%以上である精製卵黄リン脂質組成物の製造方法であって、卵黄リン脂質組成物の精製の際、アセトン含有率が80容量%以上である含水含アルコールアセトン処理を行う精製卵黄リン脂質組成物の製造方法、(2)前記含水含アルコールアセトンのアルコール含有率が0.3〜3容量%である(1)記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法、(3)前記含水含アルコールアセトンの水含有率が0.3〜6容量%である(1)または(2)に記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法、(4)含水含アルコールアセトン処理を2回以上行う(1)乃至(3)のいずれかに記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法、(5)含水含アルコールアセトン処理を−10〜35℃の温度条件下で行う(1)乃至(4)のいずれかに記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法、(6)コレステロールの含有量が1.5%以下である(1)乃至(5)のいずれかに記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法、(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載の製造方法で得られた精製卵黄リン脂質組成物を含有する医薬品組成物、(8)(1)乃至(6)のいずれかに記載の製造方法で得られた精製卵黄リン脂質組成物を含有する化粧品組成物、(9)(1)乃至(6)のいずれかに記載の製造方法で得られた精製卵黄リン脂質組成物を含有する食品組成物、である。なお、本出願人は、卵黄から抽出して得られる粗製卵黄リン脂質組成物を含水アセトンで処理し、得られたアセトン不溶物から含水アセトンを除去することで、色調が改善された精製卵黄リン脂質組成物の製造方法を開示している(特許文献2)。この方法で得られた精製卵黄リン脂質組成物は、確かに色調は改善されているものの、コレステロール低減効果は満足いくものではなかった。本発明によれば、コレステロール含有量が低減された精製卵黄リン脂質組成物、およびこれを用いた医薬品組成物、化粧品組成物、または食品組成物を提供でき、更なるリン脂質組成物の需要拡大が期待される。以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。1.精製卵黄リン脂質組成物本発明は、コレステロール含有量が低減された精製卵黄リン脂質組成物を得るために、精製卵黄リン脂質組成物の製造方法において、卵黄リン脂質組成物の精製の際、アセトン含有率が80容量%以上である含水含アルコールアセトン処理を行うことを特徴とする。本発明において「精製卵黄リン脂質組成物」とは、リン脂質含有量が80%以上であり、中性リン脂質含有量が60%以上の組成物をいい、その他の成分として中性脂質やコレステロール等が混在するものも含む。本発明の「リン脂質」とは、卵黄由来のリン脂質、又は当該リン脂質のリン酸基に結合した塩基を交換あるいは除いたリン脂質のことであり、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、これらのリゾ化物、およびスフィンゴミエリン等が挙げられる。また、「中性リン脂質」とは、前記リン脂質の中で、中性の性質を示すものであり、例えば、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン等が挙げられる。本発明の精製卵黄リン脂質組成物は、医薬品組成物、化粧品組成物、食品組成物に使用する場合、不純物であるコレステロールの含有量が低いほうが好ましい。具体的には、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロールの含有量が1.5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。2.リン脂質含有量、中性リン脂質含有量およびコレステロール含有量の測定方法本発明において、リン脂質含有量、中性リン脂質含有量およびコレステロール含有量は、精製卵黄リン脂質組成物をTLC−FID法にて測定して求める。つまり、イアトロスキャン(TH−10:三菱化学ヤトロン社製)を用い、得られた精製卵黄リン脂質組成物の試料0.1gをクロロホルム:メタノール(2容量部:1容量部)溶液に溶解し、これをクロマロッドにインジェクションし、クロロホルム:メタノール:水(70容量部:30容量部:3容量部)溶液で展開し乾燥後、次にヘキサン:ジエチルエーテル:蟻酸(90容量部:10容量部:0.1容量部)溶液で展開する。これをスキャンスピード30にて脂質組成の分析を行い、リン脂質含有量、中性リン脂質含有量およびコレステロール含有量を算出する。3.原料本発明の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法における原料は、卵黄リン脂質を含有する組成物であれば特に限定するものではない。通常、卵黄を有機溶媒を用いて抽出して得られた卵黄リン脂質組成物を用いればよく、また、上述した「精製卵黄リン脂質組成物」を原料として用いて、よりコレステロール含有量が低減された「精製卵黄リン脂質組成物」を製造してもよい。更に、これら卵黄リン脂質組成物をホスフォリパーゼ等の酵素で処理し、脂肪酸残基が加水分解されたものを用いてもよい。本発明で使用する卵黄としては、鶏卵等鳥類の卵から分別され得られる未加工の生卵黄、保存を考慮した冷凍卵黄、乾燥卵黄、プロテアーゼやホスフォリパーゼ等で処理した酵素処理卵黄、又はコレステロール含有量を低減させるため超臨界ガス抽出法により処した卵黄等が挙げられる。特に本発明を実施するにあたり、原料の卵黄の水分含量が小さいほど抽出溶媒の量が低減され、また抽出溶媒を効率よく除去できるため、乾燥卵黄を用いることが好ましい。「乾燥卵黄」とは水分含量10%以下であって、スプレードライ法、フリーズドライ法、ドラムドライ法、真空連続乾燥法等により食品工業的に製されるものをいい、前処理としてプロテアーゼやホスフォリパーゼ等での処理、コレステロール含有量を低減させるため超臨界ガス抽出等を行っても良い。4.精製卵黄リン脂質組成物の製造方法4.1.卵黄リン脂質組成物の抽出工程本発明では、まず原料となる卵黄から卵黄リン脂質組成物を抽出する。具体的には、原料として乾燥卵黄を用いる場合、乾燥卵黄(水分含量4%)に有機溶媒を加え、高速ミキサー等の高回転可能な攪拌装置を用い攪拌する。これをろ過による固液分離後、ろ液より減圧蒸留装置を用い溶媒を除去し、卵黄リン脂質組成物を得ることができる。本発明で卵黄リン脂質組成物の抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール等のアルコールや、変性アルコール、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム等が挙げられるが、その中でも、炭素数1〜3の低級アルコールが好ましく、食品用途に使用されることを考慮するとエタノールがより好ましい。また、本発明においては蒸留水等工業用に用いることのできる水を混合した含水アルコールもアルコールに含まれ、アルコールの水含有率を変えることにより、得られる卵黄リン脂質組成物のリン脂質含量を調節することができるため、通常目的に応じた水含有率の含水アルコールが用いられる。卵黄リン脂質組成物の抽出に用いる含水アルコールの水含有率は、卵黄リン脂質組成物の抽出効率を向上させる観点から、0.5〜20容量%が好ましく、1〜10容量%がより好ましい。また、卵黄リン脂質組成物の抽出に用いる有機溶媒の量は、抽出効率を向上させる観点から、乾燥卵黄1部に対し、2〜20部が好ましく、5〜10部がより好ましい。4.2.卵黄リン脂質組成物の含水含アルコールアセトン処理工程次に、抽出された卵黄リン脂質組成物のリン脂質含有量を高めるため、卵黄リン脂質組成物の精製を行う。この際、含水含アルコールアセトン処理を行うことで、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロール含有量を低減することができる。具体的には、上記抽出工程で得られた卵黄リン脂質組成物に含水含アルコールアセトンを加え、高速攪拌器等で均質に分散後、静置することによりリン脂質組成物を沈殿させ、上澄みの溶媒を除去する。本発明の含水含アルコールアセトンとは、アセトンに、蒸留水等工業用に用いることのできる水およびアルコールを混合したものである。ここで、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、変性アルコール等が挙げられるが、炭素数1〜3の低級アルコールが好ましく、食品用途に使用されることを考慮するとエタノールがより好ましい。含水含アルコールアセトンのアセトン含有率は、80容量%以上であり、好ましくは90〜99.4容量%である。アセトン含有率が前記範囲よりも低いと、卵黄リン脂質の一部が含水含アルコールアセトンに溶解してしまうためか、精製卵黄リン脂質組成物の収量が低下する傾向にあるためである。また、本発明の含水含アルコールアセトンは、アセトン、水、アルコール以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶媒を含有しても良い。含水含アルコールアセトンのアルコール含有率は、0.3〜3容量%であり、好ましくは0.5〜2.5容量%である。アルコール含有率が前記範囲よりも低いと、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロール含有量が低減され難いためである。また、アルコール含有率が前記範囲よりも高いと、卵黄リン脂質の一部が含水含アルコールアセトンに溶解してしまうためか、精製卵黄リン脂質組成物の収量が低下する傾向にあるためである。また、含水含アルコールアセトンの水含有率は、好ましくは0.3〜6容量%、より好ましくは0.5〜4容量%である。水含有率が前記範囲よりも低いと、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロール含有量が低減され難くなるため好ましくない。また、水含有率が前記範囲よりも高いと、卵黄リン脂質の一部が含水含アルコールアセトンに溶解してしまうためか、精製卵黄リン脂質組成物の収量が低下する傾向にあるため好ましくない。また、水含有率が前記範囲である含水含アルコールアセトンで卵黄リン脂質組成物を処理することで、遊離脂肪酸の含有量も効果的に低減することができるため好ましい。含水含アルコールアセトン処理に用いる含水含アルコールアセトンの量は、処理効率を向上させる観点から、原料となる卵黄リン脂質組成物1部に対し、1〜10部が好ましく、2〜5部がより好ましい。含水含アルコールアセトン処理は、繰り返すことで更にコレステロール、中性脂質等の不純物を除去することができ、効果的である。含水含アルコールアセトン処理を繰り返す回数は、卵黄リン脂質組成物の精製の程度、処理工程にかかるコストおよび時間を考慮して、2回以上が好ましく、3〜5回がより好ましい。また、必要に応じて、含水含アルコールアセトン処理の前後、または含水含アルコールアセトン処理を繰り返し行う場合は、各処理の間に、アセトン、含水アセトン等、他の溶剤を用いた処理を行ってもよい。また、含水含アルコールアセトン処理は、−10〜35℃の温度条件下で行うことが好ましく、0〜20℃の温度条件下で行うことがより好ましい。温度が前記範囲より高いと、精製卵黄リン脂質組成物の収量が低下する傾向にあるため好ましくない。一方、温度が前記範囲より低いと、処理時におけるリン脂質の分散性が低下し、処理効率が低下するため好ましくない。4.3.卵黄リン脂質組成物を乾燥する工程本発明の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法において、上述した含水含アルコールアセトン処理の後に、前記上澄みの溶媒を除去して得られた卵黄リン脂質組成物を乾燥する工程を含むことができる。ここで、卵黄リン脂質組成物を乾燥する工程においては、上澄みの溶媒を除去して得られた卵黄リン脂質組成物を真空下で脱溶媒することにより、精製卵黄リン脂質組成物を得ることができる。5.用途また、本発明は上述した製造方法で得られた精製卵黄リン脂質組成物を含有する医薬品組成物、化粧品組成物、又は食品組成物である。具体的には、例えば脂肪乳剤やリポ化製剤等の医薬品組成物、皮膚用乳液やスキンクリーム等の化粧品組成物、ココアやホワイトシチュー、流動食等の食品組成物、もしくはこれらを製するための中間原料も各組成物に含まれる。上述した製造方法で得られた精製卵黄リン脂質組成物は、コレステロール含有量が低減されていることから、前記各組成物は、より安全性に優れたものとなる。以下、本発明について、実施例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。[実施例1]乾燥卵黄(卵黄液をスプレードライにて乾燥させて得られる、水分含量3%のもの)より含水エタノール(水含有率5容量%)を用い抽出し、卵黄リン脂質組成物を得た。得られた卵黄リン脂質組成物のリン脂質含有量は約60%であった。この卵黄リン脂質組成物90gに、アセトン192mL、蒸留水4mLおよびエタノール4mLの混合溶媒(水含有率2容量%、エタノール含有率2容量%の含水含エタノールアセトン)を加え、高速攪拌器(ヒスコトロンNS−50:日音医理科器械製作所製、目盛り30)を用い、混合物の温度を10℃に保持しながら5分間攪拌を行った。これを静置し、アセトン不溶物(主に卵黄リン脂質)を沈殿させ、上澄みの含水含エタノールアセトンをデカンテーションした。この操作を4回繰り返した後、得られたアセトン不溶物を真空状態で脱溶媒を行い、精製卵黄リン脂質組成物47gを得た。得られた精製卵黄リン脂質組成物に対して、TLC−FID法により、脂質組成を分析したところ、このリン脂質含有量は95%、中性リン脂質含有量は78%であり、コレステロール含有量は0.5%であった。[試験例1]含水含アルコールアセトン処理工程において、用いる混合溶媒の水含有率、およびアルコール含有率による、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロールの低減作用への影響を調べるため、次の試験を行った。具体的には、実施例1で用いた含水含エタノールアセトンを表1に記載した水含有率、エタノール含有率のアセトン溶媒に変更した以外は、実施例1と同様の方法で精製卵黄リン脂質組成物を得た。得られた精製卵黄リン脂質組成物の脂質組成を実施例1と同様の方法で分析した。なお、アセトン処理の条件として、アセトンまたはアセトンに水、アルコールを混合した混合溶媒の使用量を200mLとし、処理回数は4回行った。また、得られた全ての精製卵黄リン脂質組成物のリン脂質含有量は80%以上であり、中性リン脂質含有量は60%以上であった。表1より、水含有率が0.3〜6容量%、アルコール含有率が0.3〜3容量%である含水含アルコールアセトンで処理することで得られた精製卵黄リン脂質組成物は、コレステロール含有量が低減されており、収量も高く、水含有率が0.5〜4容量%、アルコール含有率が0.5〜2.5容量%である含水含アルコールアセトンで処理することで得られた精製卵黄リン脂質組成物は、よりコレステロール含有量が低減されており、収量も高いことが理解できる。[試験例2]含水含アルコールアセトン処理工程において、含水含アルコールアセトン処理の回数による、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロールの低減作用への影響を調べるため、次の試験を行った。具体的には、実施例1の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法において、含水含アルコールアセトン処理の回数を表2に示す回数に変更した後、溶媒処理回数の合計が4回となるように、アセトン196mLと蒸留水4mLの混合溶媒(水含有率2容量%の含水アセトン)を用いて同様の処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で精製卵黄リン脂質組成物を得た。得られた精製卵黄リン脂質組成物の脂質組成を実施例1と同様の方法で分析した。なお、得られた全ての精製卵黄リン脂質組成物のリン脂質含有量は80%以上であり、中性リン脂質含有量は60%以上であった。表2より、卵黄リン脂質組成物を含水含アルコールアセトンを用いて処理することで、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロール含有量が低減され、含水含アルコールアセトン処理の回数を増やすことで、精製卵黄リン脂質組成物のコレステロール含有量がより低減されることが理解できる。[実施例2]実施例1において、卵黄リン脂質組成物と含水含エタノールアセトンの混合物の温度を35℃に保持しながら5分間攪拌を行って含水含エタノールアセトン処理した以外は、実施例1と同様の方法で精製リン脂質組成物42gを得た。得られた精製卵黄リン脂質組成物の脂質組成を実施例1と同様の方法にて分析したところ、リン脂質含有量は94%、中性リン脂質含有量は77%であり、コレステロール含有量は0.5%であった。[実施例3]実施例1で用いた含水含エタノールアセトンをアセトン192mL、蒸留水4mLおよびメタノール4mLの混合溶媒(水含有率2容量%、メタノール含有率2容量%の含水含メタノールアセトン)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で精製リン脂質組成物46gを得た。得られた精製卵黄リン脂質組成物の脂質組成を実施例1と同様の方法にて分析したところ、このリン脂質含有量は96%、中性リン脂質含有量は78%であり、コレステロール含有量は0.4%であった。[実施例4]実施例1で得られた精製卵黄リン脂質組成物を乳化剤とし、下記の処方の脂肪乳剤(医薬品組成物の一例)を調製した。具体的には、精製卵黄リン脂質組成物(実施例1)を、精製大豆油に分散させ、60℃に加温する。次に注射用蒸留水に濃グリセリンを加え、60℃に加温する。両者を高速攪拌器(ヒスコトロンNS−50:日音医理科器械製作所製、目盛り30)を用い、室温(20〜25℃)にて30分間攪拌した後、TKホモミクサー(プライミクス社製)で均一に乳化し、脂肪乳剤を調製した。〔処方〕 精製卵黄リン脂質組成物(実施例1) 12(g) 精製大豆油 200 濃グリセリン 25 注射用蒸留水 (全量で1000に)[実施例5]実施例1で得られた精製卵黄リン脂質組成物を乳化剤とし、下記の処方の皮膚用化粧品組成物を調製した。具体的には、下記処方において、精製水にポリエチレングリコール、トリエタノールアミン、精製卵黄リン脂質組成物(実施例1)を加え加熱溶解し70℃に保つ(水相)。次に他の成分を混合し、加熱溶解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、TKホモミクサー(プライミクス社製)で均一に乳化し、乳化後30℃まで冷却し、皮膚用化粧品組成物を調製した。〔処方〕 ステアリン酸 25(g) セチルアルコール 15 ワセリン 50 流動パラフィン 100 ポリオキシエチレン(10モル) モノオレイン酸エステル 20 ポリエチレングリコール1500 30 トリエタノールアミン 10 精製卵黄リン脂質組成物(実施例1) 20 精製水 725 香料 5 防腐剤 適量[実施例6]実施例1で得られた精製卵黄リン脂質組成物を乳化剤とし、下記の処方のプロテイン飲料(食品組成物)を調製した。具体的には、下記処方において、精製水をTKホモミクサーにて攪拌しながら、分離状大豆蛋白質、果糖・ブドウ糖液糖、デキストリン、精製卵黄リン脂質組成物(実施例1)、香料、乳化剤、増粘安定剤を加え完全に溶解する。これに精製大豆油を徐々に加え1次乳化を行った。この液を80℃まで加熱し、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ社製)にて2次乳化を行い、プロテイン飲料(食品組成物)を調製した。〔配合〕 分離状大豆蛋白質 50(g) 果糖・ブドウ糖液糖 50 デキストリン(DE25) 100 精製大豆油 40 精製卵黄リン脂質組成物(実施例1) 20 香料 5 乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル) 2 増粘安定剤 2 精製水 (全量で1000に) リン脂質含有量が80%以上であり、中性リン脂質含有量が60%以上である精製卵黄リン脂質組成物の製造方法であって、卵黄リン脂質組成物の精製の際、アセトン含有率が80容量%以上である含水含アルコールアセトン処理を行うことを特徴とする精製卵黄リン脂質組成物の製造方法。 前記含水含アルコールアセトンのアルコール含有率が0.3〜3容量%であることを特徴とする請求項1記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法。 前記含水含アルコールアセトンの水含有率が0.3〜6容量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法。 含水含アルコールアセトン処理を2回以上行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法。 含水含アルコールアセトン処理を−10〜35℃の温度条件下で行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法。 精製後のコレステロールの含有量が1.5%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の精製卵黄リン脂質組成物の製造方法。 請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法で精製卵黄リン脂質組成物を製造し、これを配合することを特徴とする医薬品組成物の製造方法。 請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法で精製卵黄リン脂質組成物を製造し、これを配合することを特徴とする化粧品組成物の製造方法。 請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法で精製卵黄リン脂質組成物を製造し、これを配合することを特徴とする食品組成物の製造方法。 精製卵黄リン脂質組成物を製造する際、効率的にコレステロール含有量を低減することができる精製卵黄リン脂質組成物の製造方法およびこれを用いた医薬品組成物、化粧品組成物、または食品組成物を提供する。リン脂質含有量が80%以上であり、中性リン脂質含有量が60%以上である精製卵黄リン脂質組成物の製造方法であって、卵黄リン脂質組成物の精製の際、アセトン含有率が80容量%以上である含水含アルコールアセトン処理を行う精製卵黄リン脂質組成物の製造方法。【選択図】なし


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