生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_被検査物に存在する鉛を検出する方法
出願番号:2010535569
年次:2012
IPC分類:G01N 31/00,G01N 21/77


特許情報キャッシュ

茅野 健吾 佐藤 直希 平山 慎一郎 JP 5056951 特許公報(B2) 20120810 2010535569 20081030 被検査物に存在する鉛を検出する方法 トヨタ自動車株式会社 000003207 平木 祐輔 100091096 関谷 三男 100105463 早川 康 100099128 茅野 健吾 佐藤 直希 平山 慎一郎 20121024 G01N 31/00 20060101AFI20121004BHJP G01N 21/77 20060101ALI20121004BHJP JPG01N31/00 TG01N21/77 C G01N 31/00-31/22 JSTPlus(JDreamII) 米国特許第05416028(US,A) 特表2002−511929(JP,A) 5 JP2008069748 20081030 WO2010050026 20100506 7 20101029 草川 貴史 本発明は、被検査物に存在する鉛を検出する方法に関し、限定されないが、特にSnを含むめっきやはんだが使用される確率の高い電子部品に鉛が存在するかどうかを検知するのに好適な鉛検出方法に関する。 鉛が人体に悪影響を及ぼすこと、また環境を汚染する恐れがあることから、多くの分野で鉛の使用を停止することが求められている。例えば、欧州では車載電子部品への鉛使用に規制がかけられている。機械部品等において、その一部に鉛が使用されているかどうかを目視により判断することは困難であることが多い。そのために、化学反応を利用して目視により容易に鉛を検出できるようにした検出方法が提案されている。一例として、鉛とロジゾン酸イオンの反応系を利用した鉛試験キットが、米国のHybrilvet Systems社から「Lead Check(商標)」として販売されている。このキットでは、2種類の試薬(ロジゾン酸ナトリウムおよび酒石酸塩緩衝液)が用いられ、混合した試薬で飽和した綿棒の先端で試験すべき表面をこすることにより生じる綿棒先端の色の変化を観察することによって鉛の存在を検出する。ピンクまたは赤に変色すれば鉛が存在することを示し、色の変化がなければ有意レベルの鉛が存在しないことを示す。 他の例として、特許文献1には、人の皮膚の表面に存在する鉛汚染の検出に好適な鉛検出方法として、鉛汚染の疑いのある表面(皮膚)をハンドワイプで拭き、ハンドワイプ上に収集した鉛を酸性水溶液で可溶化した後、溶解した鉛イオンとロジゾン酸イオンとを反応させることによって鉛の存在を検出する方法が記載されている。WO98/57167 車載電子部品として多用されている、例えばICチップをリードフレームに搭載した半導体装置のような電子部品では、端子の母材に黄銅、銅合金、42アロイ(Fe−42wt%Ni)などが用いられるが、素地のままでは端子表面が酸化してはんだ付け不良等による導通不良を引き起こす恐れがあるので、通常、めっき等により端子表面に保護膜が形成される。めっき層の材料としては、主にSnやSn合金が用いられる。鉛(Pb)を含むめっき液が用いられることもある。また、使用するはんだにも鉛とSnを主成分とする合金が用いられる場合がある。 近年、環境負荷を軽減する観点から鉛フリー化が求められるようになり、例えば、鉛を含まないめっき液の使用が求められ、また、Sn、Sn−Ag合金のように鉛を含まない、いわゆる鉛フリーはんだを使用することが求められている。 そのようなことから、車載電子部品等において、そこに鉛が使用されているかどうかを迅速かつ高精度で検出することのできる鉛検出方法が必要とされているが、前記したロジゾン酸を用いた検出方法は、それに的確に答えることができない。 その理由は、前記のように車載電子部品は表面のめっき層およびはんだ付け層にSnが存在する可能性が高いところ、ロジゾン酸イオンは、Snが溶解して生成したSn2+イオンとも反応して紫色の沈殿を生成する。それにより紫色に呈色し、鉛が存在する場合にロジゾン酸イオンが鉛イオンと反応してピンクまたは赤に呈色したとしても、そのピンクまたは赤の呈色を目視で認知することが困難となることによる。また、高濃度のSnが存在する場合には、Sn2+イオンとの反応が先行し、鉛を検出することができないことも起こり得る。 本発明は、上記の不都合を解決することを課題としており、被検査物の表面にSnが存在する場合であっても鉛の存在を確実に検知することのできる、ロジゾン酸を使用した新たな鉛検出方法を開示することを課題および目的とする。 上記の課題を解決すべく本発明者らは多くの実験を行うことにより、ロジゾン酸は、Sn2+イオンには反応して呈色を示すが、Sn4+イオンとは反応せず、反応による呈色が生じないことを知見した。本発明は、本発明者らが得た上記の知見に基づいてなされている。 第1の発明は、被検査物に存在する鉛を検出する方法であって、被検査物を、酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水とに接触させる工程と、その後にロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液に接触させる工程と、を少なくとも含むことを特長とする鉛検出方法である。 第1の発明において、前記酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水とに接触させる工程を、酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水との混合溶液を被検査物に接触させることによって行ってもよい。または、前記工程を、酸性水溶液またはその緩衝液を被検査物に接触させる工程と、過酸化水素水を被検査物に接触させる工程との2工程で行ってもよい。 第2の発明は、被検査物に存在する鉛を検出する方法であって、棒部材の先端に酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水との混合溶液を含浸させる工程と、前記混合溶液を含浸した棒部材の先端部を被検査物表面に擦りつける工程と、前記擦りつけ後の棒部材の先端にロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液を滴下する工程と、を少なくとも含むことを特長とする鉛検出方法である。 第3の発明は、被検査物に存在する鉛を検出する方法であって、棒部材の先端に酸性水溶液またはその緩衝液を含浸させる工程と、前記酸性水溶液またはその緩衝液を含浸した棒部材の先端部を被検査物表面に擦りつける工程と、前記擦りつけ後の棒部材の先端に過酸化水素水を滴下する工程と、前記過酸化水素水を滴下した後の棒部材の先端にロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液を滴下する工程と、を少なくとも含むことを特長とする鉛検出方法である。 本願の各発明による被検査物に存在する鉛を検出する方法では、被検査物の表面に存在する物質と過酸化水素水とを接触させることを必須の工程として含む。その後の工程で、過酸化水素と接触した被検査物の部分とロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液とを接触させる。 被検査物の表面にSnが存在する場合、Snが溶解して生成したSn2+イオンは過酸化水素によって酸化され、Sn4+イオンとなる。Sn4+イオンはロジゾン酸とは反応しないので、Snが存在したとしても、それに起因して格別の呈色は生じない。そのために、鉛が存在する場合にロジゾン酸イオンが鉛イオンと反応して生じるピンクまたは赤の呈色を目視により確実に認識することが可能となる。 過酸化水素水の濃度は0.1〜10wt%が好適である。0.1wt%未満では、Snが存在する場合に、そのすべてをSn4+イオンに酸化できない場合が起こり得る。その場合、Snとロジゾン酸との反応による呈色が発生し、鉛とロジゾン酸との反応による呈色を視認することが困難になるので好ましくない。また、10wt%を越えると、過酸化水素によってロジゾン酸が酸化してしまい、その結果、ロジゾン酸と鉛との反応が進まず、鉛が存在する場合にも、その呈色が薄くなる傾向があり好ましくない。 本願の各発明による鉛検出方法において、酸性水溶液は鉛の可溶化を促進する。それにより、ロジゾン酸イオンがPb+イオンと反応するのを容易化する。用いる酸は任意であるが、例として、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、あるいは酢酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸が挙げられる。酸またはそれらの塩であってもよく、それらの緩衝液を用いることもできる。酸の濃度は、pHとして1〜5が好ましい。pH1未満ではロジゾン酸と鉛がキレート化合物を作らず、呈色反応が起こらない。それにより、鉛が存在する場合でも充分な呈色が得られないことが起こる。pH5を越えると鉛の溶解力が低下するので、やはり充分な呈色が得られない。 本願の鉛検出方法のいずれにおいても、使用するロジゾン酸は、従来のロジゾン酸を用いた鉛検出方法で使用されているロジゾン酸またはロジゾン酸塩をそのまま用いることができる。例として、ロジゾン酸ナトリウム、ロジゾン酸カリウム、ロジゾン酸二ナトリウム、またはロジゾン酸二カリウムが挙げられる。それらは水溶液であってもよく、緩衝液であってもよい。 ロジゾン酸の量は、可溶化した鉛と反応して目視できるだけの呈色を示す量のロジゾン酸イオンが存在すればよい。好ましくは、水溶液が0.05〜0.5wt%のロジゾン酸またはその塩を含むことが望ましい。0.05wt%未満では鉛との反応による呈色が薄くなって視認が困難となり、0.5wt%を越えると飽和して溶け残りが生じオーバースペックとなる。 本発明による各鉛検出方法は、任意の被検査物に対して適用することができるが、前記したように、Snが存在する確率の高い被検査物に適用することは特に好適であり、その一例として電子部品を挙げることができる。なお、電子部品に適用されるメッキあるいははんだには、Snに加えてAgが含まれる可能性が高いが、Agはイオン化傾向が小さく溶解しにくいために、本発明による各鉛検出方法による鉛の検出を妨害することはない。ただし、ロジゾン酸は、Ag+,Sn2+,Ba2+,Sr2+,Cd2+,TI+とも有色化合物を作るため、鉛と共にBa2+,Sr2+,Cd2+,TI+のいずれかが共存する被検査物の場合には、充分な呈色が得られないことは起こり得る。 本発明による鉛検出方法において、被検出物の表面に酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水とを塗布し、所定時間後に、少なくとも過酸化水素水を塗布した領域にロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液を塗布してもよい。この場合にも、ピンクまたは赤の呈色を観察した場合には、鉛の存在が検出されたものと判断し、ピンクまたは赤の呈色を観察しない場合には、鉛の存在は検出されなかったものと判断することができる。そして、Snの存在によって、ピンクまたは赤の呈色が妨害されることはない。 上記の方法は、半導体装置のような電子部品の接続端子のように狭い面積領域での鉛の有無を検出するのには不向きである。その理由は、試薬としての酸性水溶液や過酸化水素やロジゾン酸が、検査すべき領域を越えて、他の領域にまで広がってしまい、被検査物に不具合を生じさせる恐れがあるからである。 半導体装置のような電子部品における鉛の存在の有無を検知しようとする場合には、先端に酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水との混合溶液を含浸させた棒部材を用いる態様が推奨される。この態様では、混合溶液を含浸した棒部材の先端で被検査部を擦りつける。それにより、棒部材の先端には、被検査部表面の一部と溶解した鉛が移り込む。移り込んだ被検査部表面の一部に含まれるSnは、過酸化水素と反応してSn4+イオンとなる。その後に、棒部材の先端にロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液を滴下すると、鉛が存在する場合には、先端はピンクまたは赤に呈色し、鉛が存在しない場合には、色の変化はない。 この態様では、棒部材の先端形状を適宜選択することにより、ごく狭い面積から試料の採取が可能となると共に、被検査物側に試薬による損傷が生じるのを最小限とすることができる利点がある。 この態様の変形例として、先端に酸性水溶液またはその緩衝液のみを含浸させた棒部材の先端で被検査物表面に擦りつけ、擦りつけ後の棒部材の先端に過酸化水素水を滴下するようにしてもよい。この態様でも、上記の同じ利点が得られる。 本発明者らの実験では、棒部材を用いる検出方法による場合、被検出領域が、鉛10wt%を含有する微小面積のめっき部(例えば、ICチップのリーダ1本、約0.05cm2)であっても、鉛の存在の有無を明確に検出することができた。また、酸性水溶液またはその緩衝液(特に、酒石酸水溶液またはその緩衝液)に過酸化水素水を滴下した混合溶液では酸素リッチになることから、酸性水溶液またはその緩衝液単独よりも鉛溶解を促進する傾向が認められ、その結果、Snの存在の有無に関わりなく、0.1μm程度のごく微量の鉛の存在を本発明の方法により検出することができた。[実施例1] ステップ1:紙軸の先端面の不織布を取り付けた棒部材を用いた。試薬として、pH2.8の酒石酸塩緩衝液93mLに、30%過酸化水素水を7mL添加した混合溶液(過酸化水素濃度として約2wt%)を調製した。棒部材の先端を前記試薬に浸漬し、その先端に試薬を0.01mL程度含浸させた。その後、棒部材の先端に付着している余分な試薬を除去した。 ステップ2:試薬を含浸した棒部材の先端で、表面に鉛とSnが存在する被検査物の表面を10秒程度擦りつけた。酒石酸による鉛の溶解作用に加え、棒部材先端での擦りつけにより、Snを含む表面の一部と溶解した鉛が棒部材の先端に移り込んだ。 ステップ3:棒部材の先端に、使用直前に調製した0.2wt%ロジゾン酸二ナトリウム水溶液を滴下した。ロジゾン酸水溶液は濃黄色であり、鉛の呈色を確認するのに妨害となるため、周囲に存在する余分なロジゾン酸水溶液を除去した。 ステップ4:ロジゾン酸水溶液を滴下した領域を観察した。その領域がピンク色に呈色したのを視認することができた。[実施例2] ステップ1:紙軸の先端面に不織布を取り付けた棒部材を用いた。試薬として、pH2.8の酒石酸塩緩衝液93mLを用い、棒部材の先端を前記試薬に浸漬して、その先端に試薬を0.01mL程度含浸させた。その後、棒部材の先端に付着している余分な試薬を除去した。 ステップ2:試薬を含浸した棒部材の先端で、表面に鉛とPbが存在する被検査物の表面を10秒程度擦りつけた。酒石酸による鉛の溶解作用に加え、棒部材先端での擦りつけにより、Snを含む表面の一部と溶解した鉛が棒部材の先端に移り込んだ。 ステップ3:棒部材の先端に、濃度約2wt%の過酸化水素水を滴下した。 ステップ4:過酸化水素水を滴下した棒部材の先端領域に、使用直前に調製した0.2wt%ロジゾン酸二ナトリウム水溶液を滴下した。ロジゾン酸水溶液は濃黄色であり、鉛の呈色を確認するのに妨害となるため、周囲に存在する余分なロジゾン酸水溶液を除去した。 ステップ5:ロジゾン酸水溶液を滴下した領域を観察した。その領域がピンク色に呈色したのを視認することができた。[比較例1] 試薬として、pH2.8の酒石酸塩緩衝液93mLを用いた以外は、実施例1と同様にして実験を行い、棒部材先端の色の変化を観察した。全体が紫色に抵触しており、ピンク色の呈色を明瞭には視認できなかった。[考察] 実施例1、2では、試薬中に過酸化水素が共存することにより、棒部材先端に存在するSnは、Sn2+イオンからSn4+イオンに変化し、Sn4+はロジゾン酸と反応しないことから、鉛とロジゾン酸との反応によるピンク色の呈色が明確に視認できたものと考えられる。一方、比較例1では、試薬に過酸化水素が含まれていないので、棒部材先端に存在するSn2+イオンがロジゾン酸と反応してしまい、紫色の呈色を示したことから、鉛とロジゾン酸との反応によるピンク色の呈色を明瞭には視認できなくなったと考えられる。 固体である被検査物の表面に含まれているまたは付着している鉛を検出する方法であって、 前記被検査物を、酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水との混合溶液に接触させる工程と、 その後にロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液に接触させる工程と、 を少なくとも含むことを特長とする鉛検出方法。 固体である被検査物の表面に含まれているまたは付着している鉛を検出する方法であって、 棒部材の先端に酸性水溶液またはその緩衝液と過酸化水素水との混合溶液を含浸させる工程と、 前記混合溶液を含浸した棒部材の先端部を被検査物表面に擦りつける工程と、 前記擦りつけ後の棒部材の先端にロジゾン酸またはロジゾン酸塩の水溶液を滴下する工程と、 を少なくとも含むことを特長とする鉛検出方法。 酸性水溶液または緩衝液が、酒石酸、クエン酸または酢酸などの有機酸または硝酸などの無機酸のいずれかの水溶液または緩衝液であり、pHが1〜5である請求項1または2に記載の鉛検出方法。 ロジゾン酸塩が、ロジゾン酸ナトリウム、ロジゾン酸カリウム、ロジゾン酸二ナトリウム、またはロジゾン酸二カリウムのいずれかである請求項1または2に記載の鉛検出方法。 被検査物が電子部品である請求項1に記載の鉛検出方法。


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