タイトル: | 特許公報(B2)_ヒアルロン酸の製造方法 |
出願番号: | 2010521572 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12P 19/26 |
橋本 正道 架間 晃明 藤井 健治 池見 昌久 JP 5356388 特許公報(B2) 20130906 2010521572 20080725 ヒアルロン酸の製造方法 電気化学工業株式会社 000003296 小林 義教 100101199 園田 吉隆 100109726 橋本 正道 架間 晃明 藤井 健治 池見 昌久 20131204 C12P 19/26 20060101AFI20131114BHJP JPC12P19/26 C12P 19/00−19/26 C08B 37/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特表2002−510648(JP,A) 特表2007−535917(JP,A) 7 IPOD FERM BP-2396 IPOD FERM BP-2319 JP2008063427 20080725 WO2010010631 20100128 11 20110411 荒木 英則 本発明は、微生物を用いたヒアルロン酸の製造方法に関する。 ヒアルロン酸は、化粧品の保湿剤の他、眼科、整形外科、皮膚科等で医薬品として用いられている。ヒアルロン酸は、動物組織、例えば、鶏の鶏冠、牛の眼の硝子体等からの抽出物により製造することができるが、夾雑物としてコンドロイチン硫酸等が混入したり、組織内に含まれるヒアルロニダーゼ等によって低分子量化されやすいため、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養し、培養液からヒアルロン酸を製造すること(発酵法)も行なわれている(特許文献1)。醗酵法によって製造されるヒアルロン酸は、抽出法と比べ、一定の原料で、一定の方法で製造されるため、製品の品質が一定に保たれることから、産業上の利用価値は大きい。 さらに工業的なヒアルロン酸の生産を目的に、発酵法のための様々な培地成分の培地を用いた発酵法が開発されている(特許文献2〜4)。特許文献2では、ヒアルロン酸生産に有効な成分として、生育に必須とされる8種類のアミノ酸を増量した培地を用いた発酵法が記載されている。また、特許文献3には、アルギニン及び/又はグルタミン酸を増量した培地を用いた発酵法が記載されている。また、特許文献4には、アルギニンを増量した培地を用いた発酵法が記載されている。特公平4−12960号公報特開平7−46992号公報特開昭62−289198号公報特開昭63−141594号公報 しかしながら、培養法に好適とされる従来の培地の多くは、成分数が多く、培地調製も繁雑であったり、培地からのヒアルロン酸の分離・精製が複雑であったりするなどして、工業的な生産方法としては更なる改善が望まれていた。また、その他の従来技術の方法についても、工業的な生産方法としては更なる改善が望まれていた。 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ヒアルロン酸を高収率で簡便に製造する方法を提供することを目的とする。また、ヒアルロン酸を短時間で製造する方法を提供することも目的とする。 本発明者らは、上記目的を解決するために、鋭意研究に励んだ結果、培養の特定の時期に、アルギニンとグルタミンを組み合わせて培養液に添加することで、ヒアルロン酸の生産が改善されることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明によれば、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養する工程と、その微生物の対数増殖期後期にグルタミン及びアルギニンを培養液に添加する工程とを含むヒアルロン酸の製造法が提供される。この製造方法によると、培養の特定の時期にグルタミンとアルギニンとを組み合わせて培養液に添加することで、ヒアルロン酸を高収率、短時間で簡便に製造することができる。 本発明のヒアルロン酸の製造方法によれば、ヒアルロン酸生産能を有する微生物の培養の特定の時期にグルタミンとアルギニンを組み合わせて培養液に添加することで、ヒアルロン酸を高収率、短時間で簡便に製造することができる。図1は、ヒアルロン酸生産微生物を培養した際の、培養液中のアミノ酸濃度のグラフである。図2は、アルギニンを一括添加した場合と、後添加した場合の比較のグラフである。左のグラフは、菌体濃度の時間経過を表し、右のグラフは、粘度(ヒアルロン酸濃度の指標)の時間経過を表す。発明の実施の形態〔用語の説明〕 本明細書における「対数増殖期後期」とは、微生物が十分に増殖した状態であって、対数増殖期の後半〜静止期(定常期)にかけてをいう。なお、対数増殖期とは、微生物の培養において、微生物が一定時間ごとに二分して増殖するとき、時間に対して細胞数の対数が直線となる時期のことをいう。対数増殖期の後期であることは、当業者に既知の、任意の指標・方法を用いて判断することができる。簡便には、これに限定されるものではないが、例えば濁度又は比増殖速度を指標として判断してもよい。 本明細書における「濁度」は、微生物の増殖を培養液の濁り具合(培養液中の菌体量)で測定する、最も一般的な簡便で迅速な測定法である。光を培養液に当て、その透過光がどのくらい散乱および吸収によって阻まれるかを測定する。ヒアルロン酸を生産する微生物は微粒子であるため、微生物の量と培養液の濁度とは比例関係にある。濁度は、例えば、以下のようにして測定される。 波長660nmの単波長の光を培養液に入射し、透過光を分光光度計により測定する。ここで入射光と透過光の強さを、それぞれI0、I、透過層の厚みをL、吸光度をτとし、次式によって求めた吸光度を培養液の濁度(OD)と定義する。なお、培養前の培地自体が無視できないほどの濁度を有している場合、対照培地の濁度を培養液の濁度から減算してもよい。 本明細書における対数増殖後期としては、培養液の660nmにおける濁度が0.5以上を示す時期が用いられる。なお、上記対数増殖期としては、1.0以上の濁度を示す時期が好ましく、2.0以上の濁度を示す時期がより好ましく、3.0以上の濁度を示す時期がさらに好ましい。 本明細書における「比増殖速度」とは、その比増殖速度は以下の式で定義される値である。ここで、菌体の世代時間は、ヒアルロン酸を生産する微生物が二倍に増殖するのに要する時間である。ヒアルロン酸を生産する微生物は十分に増殖すると、栄養の枯渇、代謝産物の蓄積等により増殖速度が低下し、比増殖速度も低下することになる。 本明細書における対数増殖後期としては、比増殖速度が0.5h−1以下を示す時期が用いられる。なお、上記対数増殖期としては、0.4h−1以下の比増殖速度を示す時期が好ましく、0.3h−1以下の比増殖速度を示す時期がより好ましく、0.2h−1以下の比増殖速度を示す時期がさらに好ましく、0.1h−1以下の比増殖速度を示す時期がさらにより好ましい。なお、当然のことではあるが、比増殖速度は0h−1より大きい。 本明細書における「ストレプトコッカス属細菌」とは、ヒアルロン酸を生産することのできるストレプトコッカス(Streptococcus)属の任意の細菌・その変異株を含み、これに限定されるものではないが、例えば、ストレプトコッカス・エキ(Streptococcus equi)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)、ストレプトコッカス・エキシミリス(Streptococcus equisimilis)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)及びこれらの変異株などが挙げられる。 本明細書における「グルタミン」「アルギニン」「ヒアルロン酸」等の化学物質の定義には、特記しない限り、発明の目的を損なわない範囲で使用可能な任意の塩(これに限定されるものではないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩や、塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などの酸付加物など)や水和物、それらの混合物も含まれる。 また、本明細書におけるそれぞれの数値範囲については、「〜」で示された上限値および下限値をそれぞれ含むものとする。〔実施の形態〕 以下、本発明の実施の形態について説明する。 本発明のある実施形態は、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養する工程と、その微生物の対数増殖期後期にグルタミン及びアルギニンを培養液に添加する工程とを含むヒアルロン酸の製造法である。この製造方法によると、培養後期にアルギニンをグルタミンと共に加えることで、アルギニンの有する高濃度での微生物の生育阻害作用を抑えることもでき、ヒアルロン酸を高収率、短時間で製造することができる。また、本実施形態においては、グルタミン及びアルギニンを培養開始後に添加することにより、特に繁雑な調製を必要とするような培地を用意する必要が無く、通常の培地を用いることができる。さらに、不必要な栄養成分を加えないことにより、ヒアルロン酸の分離・精製工程の負荷を軽減し、品質の維持・生産性の安定化をすることもできる。 上記実施形態に用いられる培養方法としては、通常用いられる培養方法を用いることができる。すなわち、培地には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、シュークロース等の糖成分からなる炭素源、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、硝酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機塩類、ポリペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆加水分解液等の有機栄養源、必要に応じて各種ビタミン類等が好適に用いられる。培養は、例えば、通気撹拌培養等の好気的な培養法など、既知の方法を用いて行うことができる。培養温度は30〜35℃が好ましいが、これに限定されるものではない。培養液のpHは微生物の生育と共に低下するため、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のpH調整剤を添加しpH7.0〜9.0にコントロールしてもよい。 グルタミン及びアルギニンは、同時に添加されても、別々に添加されてもよく、本発明の目的を損なわない範囲でバッファーや塩などの他の成分も共に添加されてもよいが、その後の分離・精製工程等を考慮すると、精製を必要とする成分は少ない方が好ましく、例えば、グルタミン、アルギニン以外の栄養成分又は活性成分は、0.001%以下、0.0005%以下あるいは含まれないことがさらに好ましい。 また、本発明の更なる実施形態は、上記対数増殖期後期が、培養液の660nmにおける濁度が0.5以上を示す時期である上記の製造方法である。濁度が0.5以上になる時期にグルタミン及びアルギニンを添加することにより、より確実にヒアルロン酸の収率が向上する。さらに好ましくは、上記濁度が2.0以上を示す時期にグルタミン及びアルギニンを添加する。微生物が十分に増殖した状態である上記濁度を示す時期にグルタミン及びアルギニンを添加することにより、さらに高い収率でヒアルロン酸を得ることができる。上記濁度が3.0以上を示す時期にグルタミン及びアルギニンを添加することがさらに好ましく、確実に収率の向上及び短時間を達成することができる。 また、濁度については、培養液の濁度をそのまま用いることができるが、培養前の培地などの対照培地の濁度が無視できないほど大きな場合(これに限定されるものではないが、例えば、0.01又は0.05以上)、培養液の濁度から対照培地の濁度を減算した濁度を指標としてもよい。対照培地としては、培養前の培地を用いても、微生物を接種しない培養液を用いてもよい。 なお、上記の濁度による添加時期の定義は、時期範囲をある一つの指標で具体的に例示したものであって、必ずしも、上記の条件で濁度を測定する工程を必須とするものではない。したがって、当然のことながら、仮に600nmにおける濁度を測定して判断した場合でも、660nmにおける濁度が上記実施形態の範囲に含まれる場合は、上記実施形態に含まれるものと解される。 また、本発明の更なる他の実施形態は、上記対数増殖期後期が、比増殖速度が0.5h−1以下を示す時期である上記の製造方法である。比増殖速度が0.5h−1以下になる時期にグルタミン及びアルギニンを添加することにより、より確実にヒアルロン酸の収率が向上する。さらに好ましくは、上記比増殖速度が0.4h−1以下を示す時期にグルタミン及びアルギニンを添加する。微生物が十分に増殖した状態である上記比増殖速度を示す時期にグルタミン及びアルギニンを添加することにより、さらに高い収率でヒアルロン酸を得ることができる。上記濁度が0.3h−1以下を示す時期にグルタミン及びアルギニンを添加することがさらに好ましく、確実に収率の向上及び短時間を達成することができる。 なお、上記の比増殖速度による添加時期の定義は、時期範囲をある一つの指標で具体的に例示したものであって、必ずしも、上記の条件で比増殖速度を測定する工程を必須とするものではない。 また、本発明の更なる実施形態は、上記ヒアルロン酸生産能を有する微生物がストレプトコッカス属細菌である上記の製造法である。ヒアルロン酸生産能を有し、一般的に用いられているストレプトコッカス属細菌を用いることで、簡便かつ確実にヒアルロン酸を工業的に製造することができる。ここで用いられるストレプトコッカス属細菌には、自然界から分離されるストレプトコッカス属の細菌及びその変異株が含まれる。 さらに、上記実施形態におけるストレプトコッカス属細菌としては、ストレプトコッカス・エキ、ストレプトコッカス・エキ変異株FM−100(微工研条寄第2396号)又はストレプトコッカス・エキ変異株FM−300(微工研条寄第2319号)を好適に使用することができる。これらのような高収率で安定にヒアルロン酸を生産する株を用いることで、より高収率で安定した生産性でヒアルロン酸を製造することができる。 また、上記実施形態におけるグルタミンの添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で特に制限はないが、過量添加では効果の伸びが小さくなるため、0.01〜0.3%が好ましく、更に好ましくは0.05%以上、0.1%以上、及び/又は0.2%以下である。この濃度範囲のグルタミンを用いることで、より確実に収量向上及び生産の安定化の効果を奏することができる。また、上記上限値以下のグルタミンを用いることで、その後の分離・精製工程の負担を軽減することができる。 また、上記実施形態におけるアルギニンの添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で特に制限はないが、過量添加では効果の伸びが小さくなるため、0.01〜0.2%が好ましく、更に好ましくは0.05%以上、0.1%以上、及び/又は0.1%以下である。この濃度範囲のアルギニンを用いることで、より確実に収量向上及び生産の安定化の効果をあげることができる。また、上記上限値以下のアルギニンを用いることで、その後の分離・精製工程の負担を軽減することができると共に、アルギニンによる生育阻害作用をさらに強く防ぐことができる。 なお、上記実施形態により説明される製造方法等は、本発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるものであり、当業者は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲において種々の設計的変更が可能である。 例えば、上記製造方法は、更なる他の工程を含むか、あるいは、上記製造方法に引き続いて更なる他の工程・方法が実施されてもよい。そのような工程・方法としては、例えば、活性炭や濾過などによる除菌工程、中和工程や結晶化工程、クロマトグラフィーや遠心分離などによるエンドトキシン、蛋白質、核酸、金属等の不純物等の除去・精製工程などが挙げられる。 以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 はじめに、本発明に関する予備実験の概要を以下に示す。これらの予備実験例は、後述する実施例1と類似の培養条件を用い、同一の予備実験内では、条件を揃えて検討した。また、それぞれの実験のグラフ等において、ヒアルロン酸を「HA」、グルタミンを「Gln」、アルギニンを「Arg」、培養開始時からある成分を培地に加えておくことを「一括添加」、培養開始後(特に対数増殖期後期)にある成分を培養液に添加することを「後添加」と表記した。また、一部実験例等においては、ヒアルロン酸生産量を、ヒアルロン酸濃度と相関関係のある粘度を指標として評価した。〔予備実験1〕 従来の標準的な条件でのヒアルロン酸生産微生物の培養における、各種アミノ酸の濃度変化を調べた。結果のグラフを図1に示す。各種アミノ酸は、培養時間経過に伴い、種類によって減少、一定、増加の何れかの挙動を示したが、特に、グルタミンおよびアルギニン量の大幅な減少が観察され、標準的な培養条件では、これらが枯渇することが観察された。〔予備実験2〕 予備実験1の結果に基づき、グルタミン及びアルギニンを添加することを念頭において、さらなる検討を行った。アルギニンは、その菌体内での機構は不明であるが、単体ではヒアルロン酸収量向上には寄与せず、生育阻害をもたらすことが報告されている。そこで、それらの点について、アルギニンの添加方法を改良することでさらに改善しようと考え、検討を行った。 その結果、図2のグラフに示すように、アルギニンを培養時に一括添加せず、後添加することで、ヒアルロン酸の濃度(グラフ中、ヒアルロン酸濃度は粘度により評価される)が飛躍的に高まることが見出された。このアルギニンについての実験結果は、以下の表にまとめることができる。〔予備実験3〕 以上の実験の結果から得られた知見を基に、標準条件に対し、グルタミン及びアルギニンを後添加してヒアルロン酸生産微生物を培養する実験を行った。この実験結果を以下の表2に示す。 表2に示されるように、グルタミンとアルギニンとを組み合わせて後添加することにより、ヒアルロン酸の生産量が大きく上昇することが観察された。〔比較実験例1〕 以下に示す実施例1〜4及び比較例1〜4の実験を、実施例1と同様の条件で行い、ヒアルロン酸の濃度及び、一定のヒアルロン酸の濃度(粘度で評価)に達するまでの時間を計測した。結果は、表3に示した。*表中のグルタミン量は、培養中に添加した量を示す。〔実施例1〕 ポリペプトン1.5%、酵母エキス0.5%からなる培地1リットルを加熱殺菌後、グルコース6%、リン酸水素二カリウム0.1%、グルタミン0.06%となるように加え培養初期条件とし、ストレプトコッカス・エキFM−100(微工研条寄第9027号)を接種し、空気を1vvmで通気しながら、撹拌500回転/分、温度33℃、pH8.0(25%水酸化ナトリウムの自動滴下によるコントロール)で培養を開始した。経時的に培養液を採取し、培養液の660nmにおける濁度が3.6、比増殖速度が0.34h−1に達した時点でグルタミン0.1%、アルギニン0.05%相当を添加した。ヒアルロン酸の蓄積による培養液の粘度上昇が停止するまで培養を継続した。培養液の粘度上昇の停止後、培養液を硝酸でpH3に調整し、遠心により菌体を除き、上清を回収した。 培地中のヒアルロン酸を定量するため、この上清を順次希釈し培地中に含まれるヒアルロン酸の濃度を示差屈折型検出器を備えるサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。培地中のヒアルロン酸は6.2g/Lの高収量が得られ、培養時間としてヒアルロン酸濃度が4.0g/Lに達した時間は17時間と短時間であった。〔実施例2〕 実施例1と同様に培養を開始し、グルタミン0.1%、アルギニン0.1%相当を添加した。培地中のヒアルロン酸は6.0g/Lの高収量が得られ、培養時間としてヒアルロン酸濃度が4.0g/Lに達した時間は17時間と短時間であった。〔実施例3〕 実施例1と同様に培養を開始し、グルタミンは実施例1より少ない0.04%、アルギニンは0.05%相当を添加した。添加時期は菌体濃度がOD5.3、比増殖速度0.16で行った。添加グルタミン量が少ないため、培地中のヒアルロン酸は実施例1、2より少ないが5.2g/Lの高収量が得られ、培養時間としてヒアルロン酸濃度が4.0g/Lに達した時間は18時間と短時間であった。〔実施例4〕 実施例3と同様に培養を開始し、実施例3と同様にグルタミンとアルギニンを添加した。添加時期は菌体濃度がOD7.0、比増殖速度0.05で行った。培地中のヒアルロン酸は5.0g/Lの高収量が得られ、培養時間としてヒアルロン酸濃度が4.0g/Lに達した時間は18時間の短時間であった。〔比較例1〕 実施例1と同様に培養を開始し、グルタミンとアルギニンは添加しなかった。培地中のヒアルロン酸は4.1g/Lと低収量であり、培養時間としてヒアルロン酸濃度が4.0g/Lに達した時間は23時間と長時間であった。〔比較例2〕 実施例1と同様に培養を開始し、アルギニンのみを0.05%添加した。培養時間としてヒアルロン酸濃度が4.0g/Lに達した時間は18時間であったが、培地中のヒアルロン酸は4.3g/Lと低収量であった。〔比較例3〕 実施例1と同様に培養を開始し、グルタミンのみを0.1%添加した。培地中のヒアルロン酸は5.3g/Lと低収量だった。培養時間としてヒアルロン酸濃度が4.0g/Lに達した時間は21時間と長時間であった。〔比較例4〕 実施例3と同様に培養を開始し、実施例3と同様にグルタミンとアルギニンを添加した。添加時期は菌体濃度がOD0.0001、比増殖速度1.0で行った。培地中のヒアルロン酸は4.0g/Lと低収量であった。〔比較実験例2〕 上記実施例1〜4及び比較例1〜4と同様の方法(グルコース濃度は6%)で、さらなる比較実験を行った。結果を以下の表4に示す。この比較実験からも、ヒアルロン酸の生産量(表中HA濃度)がグルタミンとアルギニンとを対数増殖期後期に培養液に添加した場合において、ヒアルロン酸の生産量が増加することが確認された。〔まとめ〕 以上の実験から、グルタミン及びアルギニンを対数増殖期後期に培養液に添加する方法では、従来技術に比べ、ヒアルロン酸を高収率かつ短時間で製造可能であることが確認された。 以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。 ストレプトコッカス属細菌を培養する工程と、該微生物の対数増殖期後期にグルタミン及びアルギニンを培養液に添加する工程とを含むヒアルロン酸の製造法。 前記対数増殖期後期が、培養液の660nmにおける濁度が0.5以上を示す時期である請求項1に記載の製造方法。 前記対数増殖期後期が、培養液の660nmにおける濁度が2.0以上を示す時期である請求項1に記載の製造方法。 前記対数増殖期後期が、比増殖速度が0.5h−1以下を示す時期である請求項1に記載の製造方法。 前記ストレプトコッカス属細菌が、ストレプトコッカス・エキ、ストレプトコッカス・エキ変異株FM−100(微工研条寄第2396号)又はストレプトコッカス・エキ変異株FM−300(微工研条寄第2319号)である請求項1に記載のヒアルロン酸の製造方法。 前記グルタミンの濃度が、0.01〜0.3%である請求項1ないし5の何れか一項に記載のヒアルロン酸の製造法。 前記アルギニンの濃度が、0.01〜0.2%である請求項1ないし6の何れか一項に記載のヒアルロン酸の製造法。