タイトル: | 特許公報(B2)_飲食品の呈味向上剤 |
出願番号: | 2010519670 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A23L 1/22,A23D 7/00,A23L 1/39,A23C 9/154,C12J 1/00 |
井野 智和 藤原 英記 山田 祐三 白砂 尋士 JP 4955813 特許公報(B2) 20120323 2010519670 20090316 飲食品の呈味向上剤 株式会社J−オイルミルズ 302042678 阿部 正博 100100181 井野 智和 藤原 英記 山田 祐三 白砂 尋士 JP 2008179761 20080710 20120620 A23L 1/22 20060101AFI20120531BHJP A23D 7/00 20060101ALN20120531BHJP A23L 1/39 20060101ALN20120531BHJP A23C 9/154 20060101ALN20120531BHJP C12J 1/00 20060101ALN20120531BHJP JPA23L1/22 ZA23D7/00 500A23L1/39A23C9/154C12J1/00 A A23L 1/22-1/24 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭61−015647(JP,A) 特表2008−520193(JP,A) 特表2008−517090(JP,A) 国際公開第2006/079534(WO,A1) 6 JP2009055017 20090316 WO2010004784 20100114 19 20111107 渡邉 潤也本発明は長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体、並びにステロール及び/又はステロールエステルから成る呈味向上剤、該呈味向上剤を添加することにより呈味を増強する方法、更にこれらの方法で呈味が向上した飲食品等に関する。 アラキドン酸(シス-5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)は長鎖高度(多価)不飽和脂肪酸の一種であり動物の臓器及び組織から得られるリン脂質中に存在する。これは必須脂肪酸でありプロスタグランジン、トロンボキサンチン及びロイコトリエン等の合成の前駆体となる重要な化合物である。 このようなアラキドン酸の機能に注目して、従来、アラキドン酸のような長鎖高度不飽和脂肪酸及びそのエステルを、栄養強化及び各種生理的機能を付与する目的で油脂及び食品等の各種組成物へ添加することが試みられてきた。 特開平10-99048に記載の栄養強化組成物には、母乳に近い成分を実現する為に添加される成分の一種としてアラキドン酸が0.1〜10重量%含有されている。 また、特開平11-89513に記載のヒト乳脂肪に近似する合成脂質組成物には、アラキドン酸を含む長鎖n-6高度不飽和脂肪酸がトリグリセリドを構成する脂肪酸の一種として使用されている。 さらに、特開平10-70992及び特開平10-191886にはアラキドン酸をトリグリセリドの形で豊富に含有する微生物由来の食用油脂が記載されており、この好適用途として、未熟児用調製乳、乳児用調製乳、幼児用食品、及び妊婦用食品等が挙げられている。 他のアラキドン酸の生理機能として、特開平9-13075では、アラキドン酸等の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むグリセリドからなる血中脂質濃度を低減する作用のある油脂が記載されている。また特開平9-13076では、同じ構成から成る血小板凝集能を抑制する作用のある油脂が記載されている。 一方で、食品分野における長鎖高度不飽和脂肪酸の利用例として調味料がある。特開2001-78702には、油脂とエキスを水中油型に乳化させることで、まろやかさ、後味、うま味が増強された調味料が開示されている。 また特許第3220155号には、乳脂肪以外の脂肪酸等の酸化によって得ることができる香味料組成物が開示されている。 さらに米国特許第3689289号明細書(US3689289)には還元糖とアミノ酸及びアラキドン酸又はそのアラキドン酸メチルエステルを特定の条件化で加熱反応させることで人工的なチキンフレーバーを製造する方法が記載されている。また国際公開第WO2003/051139号パンフレットには還元糖とアミノ酸及びアラキドン酸を特定の条件化で加熱反応させることによる人工的なチキンフレーバーを製造する方法においてアラキドン酸をグリセリンエステルの形で使用することにより、精製したチキンフレーバーの香りに耐熱性や持続性が生じることが記載されている。 これらはいずれも糖とアミノ酸とアラキドン酸の3種の加熱反応物が人工的なチキン様の臭いを発現するものある。 加えて、特開2002-95439号には、高度不飽和脂肪酸グリセリドを含有することを特徴とする調味料が開示されている。この発明の目的は、酸化劣化されやすい高度不飽和脂肪酸グリセリドの酸化安定性を高めることであり、その為に、大豆の発酵加工食品、魚介類の発酵加工食品若しくはトマト成分を主体とした調味料に高度不飽和脂肪酸グリセリドを含ませることを特徴とするものである。 その他アラキドン酸を用いる調味料に関しては、特許第3729272号、特許第3962068号には、n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体から成るコク味増強剤が記載され、アラキドン酸等の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を単独で食品に含有させるか、又はそれを特定の範囲で含有する植物油脂で加熱調理などの酸化処理をした場合に、食品のコク味が増し、味を引き立たす効果が得られることが見出された。 WO2005/004634には、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を分解しその分解物、及びその分解物の抽出物を食品に添加した場合に、食品のコク味が増す効果が得られることを見出している。 WO2005/046653では、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を食品に添加することでコク味増強の他に、食品の味又は風味を向上させる様々な機能があることを見出している。 WO2005/046354では、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体にコク味向上成分(α-トコフェロール、鉄分)を含むことで、コク味が一層向上することが示されている。 また、ステロール及び/又はステロールエステルは、これを植物ステロールとして含む油脂には血中及び肝臓中コレステロールを下げる作用があることが知られている(特開2002-112723)。ステロール及び/又はステロールエステルは、その他医薬品原料、又は乳化剤や乳化安定剤として化粧品や食品に一般的に利用されている。以上、先行文献には高度不飽和脂肪酸やステロール/ステロールエステルに関連する様々な機能、コク味の改善が示されているが、ステロールエステルとアラキドン酸等の長鎖多価不飽和脂肪酸との組み合わせを、呈味を向上させる目的で使用することに対する開示又示唆はなく、又、このような組み合わせによって呈味向上の相乗効果が得られる可能性を示唆する記載も見当たらない。特開平10-99048号公報特開平11-89513号公報特開平10-70992号公報特開平10-191886号公報特開平9-13075号公報特開平9-13076号公報特開2001-78702号公報特許第3220155号公報米国特許第3689289号公報WO2003/051139号公報特開2002-95439号公報特許第3729272号公報特許第3962068号公報国際公開第2005/004634号パンフレット国際公開第2005/046653号パンフレット国際公開第2005/046354号パンフレット特開2002-112723号公報 本発明は飲食品の呈味向上剤、飲食品の呈味向上方法、呈味の向上した飲食品を提供することを課題とする。 本発明は、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体並びにステロール及び/又はステロールエステルから成る呈味向上剤、並びに該呈味向上剤を添加することにより飲食品の呈味を向上する方法、これらの方法で呈味が向上した飲食品、更には、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体並びにステロール及び/又はステロールエステルの組み合わせの飲食品の呈味向上剤としての使用等に係る。本発明によれば、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体、並びに、ステロール及び/又はステロールエステルの2成分を飲食品に添加使用することによって呈味向上の相乗効果が得られ、その結果、通常よりも低い呈味成分濃度でより呈味が向上された飲食品、又は同一呈味成分濃度でより呈味が向上された飲食品、より具体的には、コク味、塩味、甘味、及び酸味等の各味が増強された飲食品を提供することができる。本発明において、「呈味向上」とは、各飲食品が元来有する呈味の向上・改善、より具体的には、飲食品の元来の味・風味に応じて、コク味、塩味、甘味、及び酢味等の各味を増強することを意味する。即ち、本発明の呈味向上剤に活性成分として含まれる長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体並びにステロール及び/又はステロールエステルの2成分は上記各味覚の増強成分として機能する。従って、本発明の呈味向上剤はそれを添加する飲食品の種類・含有成分等に応じて、「コク味増強剤」、「塩味増強剤」、「甘味増強剤」、及び「酸味増強剤」として作用・機能するものである。 本発明で「長鎖高度不飽和脂肪酸」とは、n-3系の長鎖高度不飽和脂肪酸の場合には炭素数が20以上かつ二重結合を3つ以上有する脂肪酸を意味し、n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸の場合には炭素数が18以上かつ二重結合を3つ以上有する脂肪酸を意味する。更に、n-3系及びn-6系の双方ともに炭素数が20〜24かつ二重結合を4〜6有する長鎖高度不飽和脂肪酸が好ましい。n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸の例としてアラキドン酸(AA)及びドコサテトラエン酸(DTA)を挙げることが出来、特に、アラキドン酸が好適である。又、n-3系の長鎖高度不飽和脂肪酸の例として、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)を挙げることが出来る。 アラキドン酸等の本発明で使用する長鎖高度不飽和脂肪酸及びそのエステル体の由来に特に制限はなく、各種動植物、微生物、藻類等から得られたものが市販されており、これら当業者には公知のものを適宜使用することが出来る。 例えば、上記の特開平10-70992及び特開平10-191886に記載されたアラキドン酸をトリグリセリドの形で豊富に含有する微生物由来の食用油脂を使用することが出来る。2種以上の長鎖高度不飽和脂肪酸又は異なる原料から得られた同種の脂肪酸を適宜混合して使用することも可能である。 長鎖高度不飽和脂肪酸のエステル体の構造及びその製造方法に特に制限はなく、これを構成するアルコール類としては、一価及び多価アルコールを使用することが出来る。多価アルコールの中でも、安全性やコストの点から好ましいものの例としてグリセロールをあげることができ、この場合にエステル体としてトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを構成する。これらのエステル体を構成する脂肪酸中に本発明の長鎖高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸が含まれていても良い。又、遊離体および/又はそのエステル体の割合は任意である。 なお、n-3系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の酸化処理の方法に特に制限はないが、その一例として加熱処理があげられる。加熱処理の方法に特に制限はないが、酸化防止剤を存在させる必要はなく、又、酸化処理を密閉系で行う必要もない。開放系において、通常、40℃〜200℃において0.1時間〜240時間加熱する方法があり、好ましくは、80℃〜180℃において0.5時間〜72時間加熱する。 また、n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体は、ステロール及び/又はステロールエステルと共にその一部を構成する呈味向上剤の効果を発揮するための酸化処理は必要ないが、酸化処理することによって、その呈味向上剤としての効果が一層増す。さらに、このような酸化処理は、本発明の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体、並びにステロール及び/又はステロールエステルから成る呈味向上剤を含有する飲食品を加熱処理することによっても実施することが出来る。 「ステロール」とは、コレステロール又は当該飽和型であるコレスタノールに類似した構造をもつ化合物の総称であり動植物、微生物及び藻類に広く分布している。本発明におけるステロール及び/又はステロールエステル供給原料は、当業者に公知の任意のものを使用することが出来る。特に、当業者に公知の任意の方法により、大豆、菜種、米糠及び米胚芽等の適当な植物の脂溶性画分より得られる、各種の植物ステロール若しくは植物スタノールの混合物をそのまま使用することが出来る。なお、このような混合物中には、植物ステロール若しくは植物スタノール以外の各種成分、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、トコフェロール類、リン脂質等が適宜含まれていても良い。又は、これら混合物の構成成分として含まれている各種の植物ステロール又は植物スタノールから選択された任意の一種又は数種の化合物から成る組み合わせを使用することが出来る。このような構成成分の代表例としては、例えば、β−シトステロール、β−シトスタノール、スチグマステロール、スチグマスタノール、カンペステロール、カンペスタノール、ブラシカステロール、ブラシカスタノール等が挙げられる。尚、植物スタノールについては、天然物の他、植物ステロールを水素添加により飽和させたものも使用することができる。遊離体および/又はそのエステル体の割合は任意である。 本発明の呈味向上剤中の活性成分である、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体、並びにステロール及び/又はステロールエステルの含有量に特に制限はなく、飲食品の種類、呈味向上剤の添加目的などに応じて適宜選択・調整することができる。又、これら2成分の含有量の比率に関して特に制限はない。 本発明の呈味向上剤中には、上記活性成分の他に、その効果に悪影響を与えない限り、当業者に公知の他の任意成分、例えば、乳化剤、トコフェロール類、リン脂質、その他の脂肪酸、その他の脂肪酸より構成されるトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリド等が含まれていても良い。又、呈味向上剤の基剤としてコーン油などの任意の油脂を使用することができる。 本発明の呈味向上剤を添加することによって呈味を向上することができる飲食品の種類に特に制限はなく、本明細書の各実施例に挙げられているようなものを例示することが出来る。又、各飲食品に添加する呈味向上剤の量は、飲食品の種類や添加目的などに応じて適宜選択・調整することができる。更に、本発明の呈味向上剤は飲食品の調理時、又は喫食時等の任意の時期に飲食品に添加することが出来る。 本発明の呈味向上剤をコク味増強剤として作用・機能させる場合は、例えば、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体が飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは1.0ppm〜1,000ppm、より好ましくは1.0ppm〜500ppmの範囲で含有される。ステロール及び/又はステロールエステルが、コク味増強飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは0.1ppm〜500ppmの範囲で含有される。又、塩味増強剤として作用・機能させる場合は、例えば、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体が、塩味成分を含む飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは1.0ppm〜1,000ppm、より好ましくは1.0ppm〜500ppmの範囲で含有され、ステロール及び/又はステロールエステルが、塩味成分を含む飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは0.1ppm〜500ppmの範囲で含有される。又、甘味増強剤として作用・機能させる場合は、例えば、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体が、甘味成分を含む飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは1.0ppm〜1,000ppm、より好ましくは1.0ppm〜500ppmの範囲で含有され、ステロール及び/又はステロールエステルが、甘味成分を含む飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは0.1ppm〜500ppmの範囲で含有される。又、酢味増強剤として作用・機能させる場合は、例えば、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体が、酢味成分を含有する飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは1.0ppm〜1,000ppm、より好ましくは1.0ppm〜500ppmの範囲で含有され、ステロール及び/又はステロールエステルが、酢成分を含む飲食品全体に対する重量比で0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは0.1ppm〜500ppmの範囲で含有される。 飲食物に含まれる塩味成分は、天然塩、非天然塩等、どのようなものでも特に制限なく用いることができる。また、塩濃度は使用する食品に適した濃度であれば、特に制限されることなく用いることができる。飲食物に含まれる甘味成分は、食用のものであれば、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、ステビア、アスパルテームなど、どのようなものでも特に制限なく用いることができる。また、甘味料濃度は使用する食品に適した濃度であれば、特に制限されることなく用いることができる。飲食物に含まれる酢味成分は、米酢、穀物酢、黒酢、りんご酢など、どのようなものでも特に制限なく用いることができる。また、酢濃度は使用する食品に適した濃度であれば、特に制限されることなく用いることができる。 以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。以下の実施例の結果を示した表における記号の意味は以下の通りである。 評価記号は、-:効果なし、+:+の数が多いほど高い効果あり実施例、比較例の評価実験では以下を用いた。・コーン油:(株)J-オイルミルズ製・アラキドン酸トリグリセリド(以下、AATG):サントリー(株)製「SUNTGA40S」(微生物由来アラキドン酸、以下AA 純度40〜45%)・希釈AATG:AATGを0.5%濃度(重量%)になるようにコーン油で希釈したもの・希釈ステロールエステル:植物ステロール((株)八代製 ステロールエステル含量92% フリーステロール濃度として56%)を0.5%濃度(重量%)になるようにコーン油で希釈したもの。・希釈酸化AA:AATGを120℃3時間酸化処理したものを、0.5%濃度(重量%)になるようにコーン油で希釈したもの。(株)八代製のステロールエステル・使用原料大豆、菜種のスカム(86.14:13.86で混合) ・総ステロール量13%(大豆スカム 総ステロール量12.1%、菜種18.5%)以上を、(株)八代が酵素エステル交換によりステロールエステルを得て、それを分子蒸留したもの・ステロールエステル含量(92.1%)、フリーステロール濃度として56.4%程度・(株)八代製のステロールエステルのステロールエステル組成(※カッコ内はフリーステロール)Brassicsterol 5.3% (3.0%) Campesterol 26.5% (14.9%)Stigmasterol 18.9% (10.7%)β-Sitosterol 49.2% (27.7%)〔試験例1〕砂糖溶液での評価(甘味料に対するAATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例1 コーン油のみ(コントロール) 比較例2 希釈ステロールエステル 比較例3 希釈AATG 実施例1 希釈ステロールエステル+希釈AATG表1に示すように、比較例1〜3、実施例1と、水及び砂糖を計量し、鍋で沸騰させた後、60℃で保温したものを、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表2に示す。ステロールエステルを添加した比較例2には、甘味増強効果は認められなかった。AATGを添加した比較例3には、甘味増強効果が見られた。ステロールエステルとAATGを添加した実施例1は、比較例2、比較例3に比べて明らかに甘味増強効果は増し、相乗効果が見られた。〔試験例2〕チョコレートスプレッドでの評価(AATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例4 コーン油のみ(コントロール) 比較例5 希釈ステロールエステル 比較例6 希釈AATG 実施例2 希釈ステロールエステル+希釈AATG チョコレートスプレッド:明治乳業製(株)製 チョコレートクリーム表3に示すように、比較例4〜6、実施例2と、チョコレートスプレッドを計量し、よく混合した後、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表4に示す。ステロールエステルを添加した比較例5には、甘味増強効果は認められなかった。AATGを添加した実施例6には、甘味増強効果が見られた。ステロールエステルとAATGを添加した実施例2は、比較例5、比較例6に比べて明らかに甘味増強効果は増し、相乗効果が見られた。〔試験例3〕加糖練乳での評価(AATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例7 コーン油のみ(コントロール) 比較例8 希釈ステロールエステル 比較例9 希釈AATG 実施例3 希釈ステロールエステル+希釈AATG 加糖練乳:雪印乳業製株)製 雪印北海道コンデンスミルク表5に示すように、比較例7〜9、実施例3と、加糖練乳を計量し、よく混合した後、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表6に示す。ステロールエステルを添加した比較例8には、甘味増強効果は認められなかった。AATGを添加した比較例9には、甘味増強効果が見られた。ステロールエステルとAATGを添加した実施例3は、比較例8、比較例9に比べて明らかに甘味増強効果は増し、相乗効果が見られた。〔試験例4〕コーンクリームスープでの評価(AATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例10 コーン油のみ(コントロール) 比較例11 希釈ステロールエステル 比較例12 希釈AATG 実施例4 希釈ステロールエステル+希釈AATG コーンクリームスープ粉末:味の素(株)クノールカップスープ コーンクリーム表7に示すように、比較例10〜12、実施例4と、スープ粉末を計量し、熱湯を添加しよく混合した後に、これを味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表8に示す。ステロールエステルを添加した比較例11には、甘味増強効果は認められなかった。AATGを添加した比較例12には、甘味増強効果が見られた。ステロールエステルとAATGを添加した実施例4は、比較例11、比較例12に比べて明らかに甘味増強効果は増し、相乗効果が見られた。〔試験例5〕食塩溶液での評価(ステロールエステルの種類と添加効果の確認) 比較例13 コーン油のみ(コントロール) 比較例14 希釈ステロールエステル 比較例15 希釈ライステロールエステル 比較例16 希釈AATG 実施例5 希釈ステロールエステル+希釈AATG 実施例6 希釈ライステロールエステル+希釈AATG 希釈ライステロールエステル:ライステロールTM エステル 築野食品工業(株)製を0.5%濃度(重量%)になるようにコーン油で希釈したもの。築野食品工業(株)製のライステロールエステル・米糠及び米胚芽より得られる、植物ステロール及びトリテルペンアルコールとの脂肪酸エステルからなる混合物・ステロールエステル含量(82.3%)、フリーステロール濃度として50.8%程度、ステロール組成を表9に示す。表10に示すように、比較例13〜16、実施例5〜6と、水及び食塩を計量し、鍋で沸騰させた後、60℃で保温したものを、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表11に示す。 ステロールエステルを添加した比較例14、及びライステロールエステルを添加した比較例15には塩味増強効果はあるが、塩角があった。すなわちコントロールを味の質感が変わらなかった。AATGを添加した比較例16は塩味増強効果の他、塩角を取る効果(呈味向上と呈味改善)があった。ステロールエステルとAATGを添加した実施例5、及びライステロールエステルとAATGを添加した実施例6は、比較例14、比較例15、比較例16に比べて明らかに塩味の強さが増し、相乗効果が見られた。〔試験例6〕鶏がらスープでの評価(AATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例17 コーン油のみ(コントロール) 比較例18 希釈ステロールエステル 比較例19 希釈AATG 実施例7 希釈ステロールエステル+希釈AATGスープの素:味の素(株)丸鶏がらスープの素表12に示すように、比較例17〜19、実施例7と、水及びスープの素を計量し、鍋で沸騰させた後、60℃で保温したものを、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表13に示す。 ステロールエステルを添加した比較例18には塩味増強効果はあるが、塩角があった。すなわちコントロールの味の質感が変わらなかった。AATGを添加した比較例19は塩味増強効果の他、塩角を取る効果(呈味向上と呈味改善)があった。ステロールエステルとAATGを添加した実施例7は比較例18、比較例19に比べて明らかに塩味の強さが増し、相乗効果が見られた。〔試験例7〕マーガリンでの評価(AATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例20 コーン油のみ(コントロール) 比較例21 希釈ステロールエステル 比較例22 希釈AATG 実施例8 希釈ステロールエステル+希釈AATGマーガリン(ファットスプレッド):雪印乳業(株)ネオソフト 表14に示すように、比較例20〜22、実施例8と、マーガリンを計量し、よく混合した後、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表15に示す。 ステロールエステルを添加した比較例21には、塩味増強効果は認められなかった。AATGを添加した比較例22には、塩味増強効果が見られた。ステロールエステルとAATGを添加した実施例8は、比較例21、比較例22に比べて明らかに塩味増強効果は増し、相乗効果が見られた。〔試験例8〕酢溶液での評価(穀物酢に対するAATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例23 コーン油のみ(コントロール) 比較例24 希釈ステロールエステル 比較例25 希釈AATG 実施例9 希釈ステロールエステル+希釈AATG 穀物酢:(株)ミツカン製表16に示すように、比較例23〜25、実施例9と、水及び酢を計量し、鍋で沸騰させた後、60℃で保温したものを、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表17に示す。ステロールエステルを添加した比較例24には、酢角抑制(呈味向上と呈味改善)効果は見られなかった。AATGを添加した比較例25には、酢角抑制効果が見られた。また濃厚感、酸味の強さも増した。ステロールエステルとAATGを添加した実施例9は、表には示せないが、比較例利24、比較例25より先に来る酢角がなくなり、中から後に酸味が来るようになった。また、実施例9は、比較例利24、比較例25より濃厚感、酸味の強さが明らかに増し、ステロールエステルとAATGに相乗効果が見られた。〔試験例9〕トマトケチャップでの評価(AATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例26 コーン油のみ(コントロール) 比較例27 希釈ステロールエステル 比較例28 希釈AATG 実施例10 希釈ステロールエステル+希釈AATG トマトケチャップ:カゴメ(株)製表18に示すように、比較例26〜28、実施例10とトマトケチャップを計量し、よく混合した後、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表19に示す。ステロールエステルを添加した比較例27には、酢角抑制効果は見られなかった。AATGを添加した比較例28には、酢角抑制効果が見られた。また濃厚感、酸味の強さも増した。ステロールエステルとAATGを添加した実施例10は、比較例27、比較例28に比べ酢角抑制効果、濃厚感、酸味の強さが明らかに増し、ステロールエステルとAATGに相乗効果が見られた。また、塩味の強さにおいても同様のことが確認できた。〔試験例10〕中濃ソースでの評価(AATG並びにステロールエステルの添加効果) 比較例29 コーン油のみ(コントロール) 比較例30 希釈ステロールエステル 比較例31 希釈AATG 実施例11 希釈ステロールエステル+希釈AATG 中濃ソース:ブルドックソース(株) 製表20に示すように、比較例29〜31、実施例11と中濃ソースを計量し、よく混合した後、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表21に示す。ステロールエステルを添加した比較例30には、酢角抑制効果は見られなかった。AATGを添加した比較例31には、酢角抑制効果が見られた。また濃厚感、酸味の強さも増した。ステロールエステルとAATGを添加した実施例11は、比較例30、比較例31に比べ酢角抑制効果、濃厚感、酸味の強さが明らかに増し、ステロールエステルとAATGに相乗効果が見られた。また、塩味の強さにおいても同様のことが確認できた。〔試験例11〕食塩溶液での評価(AATG酸化処理の効果確認) 比較例32 コーン油のみ(コントロール) 比較例33 希釈ステロールエステル 比較例34 希釈AATG 比較例35 希釈酸化AA 実施例12 希釈ステロールエステル+希釈AATG 実施例13 希釈ステロールエステル+希釈酸化AA表22に示すように、比較例32〜35、実施例12〜13と、水及び食塩を計量し、鍋で沸騰させた後、60℃で保温したものを、味覚パネラー5人で官能評価を実施した。結果は表23に示す。 ステロールエステルを添加した比較例33には塩味増強効果はあるが、塩角があった。すなわちコントロールを味の質感が変わらなかった。AATGを添加した比較例34は塩味増強効果の他、塩角を取る効果(呈味向上とて呈味改善)があり、酸化AAを添加した比較例35では塩味増強効果が更に向上した。また、ステロールエステルとAATGを添加した実施例12は、比較例33、比較例34に比べて明らかに塩味の強さが増し、相乗効果が見られた。ステロールエステルと酸化AAを添加した実施例13においては、塩味増強効果が更に向上し、ステロールエステルと酸化AAに相乗効果が見られた。〔試験例12〕コク味増強剤の呈味増強効果、減コク味向上剤でのコク味の維持効果<官能検査による評価法> 以下に行う官能検査での官能評価において「コク味が増強される」とは各表中の評価項目にある「風味の強さ」、「味の強さ」及び「後味の強さ」がそれぞれの「風味の好ましさ」、「味の好ましさ」及び「後味の好ましさ」を向上させる若しくは損なうことなく増大させることである。評価記号の意味は以下の通りである。×:コントロールより弱い又は好ましくない;△:コントロールと同等;〇:コントロールより強い又は好ましい;◎コントロールより明らかに強い又は好ましい また、ステロールエステルは、植物ステロールエステル((株)八代製 ステルステロールエステル含量92% フリーステロール濃度として56%)を使用した。<ステロールのコク味増強成分としての効果> 表24の組成で長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体及びステロールエステルと植物油脂(コーン油)を混合しコク味向上剤を調製した。 上記表25の結果に示されるように、比較例36(コントロール:ステロールエステルを含有しない)と実施例14、15、16、17の比較において、AAがスープ中に同濃度でも、実施例14、15、16の濃度のステロールエステルを含有することによりコク味向上効果が増強されたことが判明した。更に、比較例36と比較例37の比較において、コク味向上効果はAA濃度の低い比較例37は比較例36に比べ劣ること、及び油中のステロールエステル濃度が5ppm(喫食時は0.01ppm)の場合(実施例14)は、コク味増強効果は無いことが判明した。また、500ppmのステロールエステルを添加した実施例18は比較例37とAA濃度が同じでも、(すなわち比較例36の半分のAA濃度でも)比較例36以上のコク味向上効果を発現したことが判明した。 酸化処理されている長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体並びにステロール及び/又はステロールエステルから成る飲食品の呈味向上剤。 n-6系長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体並びにステロール及び/又はステロールエステルから成る飲食品の呈味向上剤。 アラキドン酸及び/又はそのエステル体並びにステロール及び/又はステロールエステルから成る飲食品の呈味向上剤。 長鎖高度不飽和脂肪酸が微生物由来である請求項1〜3のいずれかに記載の呈味向上剤。 請求項1〜4のいずれかに記載の呈味向上剤を添加することを特徴とする飲食品の呈味向上方法。 請求項5に記載の方法を用いてなる呈味の向上した飲食品。