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タイトル:特許公報(B2)_Th1系免疫賦活剤
出願番号:2010517817
年次:2015
IPC分類:A61K 36/48,A61P 37/06,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

西村 孝司 加納 勉 JP 5693220 特許公報(B2) 20150213 2010517817 20090516 Th1系免疫賦活剤 国立大学法人北海道大学 504173471 ネピュレ株式会社 302067903 佐川 慎悟 100110766 小林 基子 100133260 金丸 清隆 100145126 高橋 史織 100164220 川野 陽輔 100169340 西村 孝司 加納 勉 JP 2008161015 20080619 20150401 A61K 36/48 20060101AFI20150312BHJP A61P 37/06 20060101ALI20150312BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150312BHJP JPA61K35/78 JA61P37/06A61P43/00 107 A61K 36/48 A61P 37/06 A61P 43/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2006−296251(JP,A) 特開2007−106718(JP,A) 特開2005−118015(JP,A) 国際公開第2007/020755(WO,A1) 特開平09−176033(JP,A) Nat. Prod. Sci.,2007年,Vol.13 No.2,pp.123-127 北海道新聞 朝刊 地方 空知,2007年11月10日,第28頁 日本農業新聞記事情報,2005年 1月 4日,社会12版,第5頁 北海道新聞 朝刊 地方 空知,2008年 1月18日,第29頁 (株)日刊工業新聞社,2008年 4月 2日,No.213,第30頁 Chan-Ho Oh et al,Effect of small Black Soybean Fraction on the T cell-mediated Immune Responses in vivo and Prolifera,Natural product sciences,2007年,Vol.13, No.2,p.123-127 12 JP2009059097 20090516 WO2009154051 20091223 20 20120514 (出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 鈴木 理文 本発明は、黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物、特に水で膨潤した黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物を有効成分とする免疫賦活剤に関する。なお、本願は、平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願である。 免疫系は、生体の防御機構を構成する多くの要素の中で特に重要であり、細菌、酵母、カビ、ウイルス等の微生物による感染あるいは腫瘍等に対する防御並びに生体の恒常性維持において、重要な役割を果している。その主要な機構は、微生物や腫瘍を異物として認識する樹状細胞やマクロファージ等の抗原提示細胞や抗原提示細胞からの刺激を受けたTリンパ球及びBリンパ球等のいわゆる獲得免疫細胞が、抗原特異的に活性化され、あるいは菌体成分やレクチン等を認識する受容体を介して抗原非特異的に活性化され、異物を排除する能力を高めることである。 特に抗原提示細胞は、生体に侵入した異物を貧食して細胞内に取り込み、消化して排除するとともに、消化した異物のペプチドを細胞表面に発現させてリンパ球に提示する機能を有する他、癌細胞に対する傷害性の獲得や、インターロイキン−12(IL−12)等の各種サイトカイン類の放出によってT細胞やB細胞等の他の免疫細胞の活性化に関与する等、深く免疫系の賦活化に関与していることが知られている。そのため、抗原提示細胞を活性化することは、免疫能の賦活化において重要な課題である。 一方、免疫系は、加齢、ストレス、疲労、環境因子等、何らかの要因により、その機能が低下することが知られている。こうした要因は日常生活において頻繁に発生する性質のものであることから、機能が低下する度に免疫能を賦活化させるよりも、むしろ食事やサプリメントの摂取等によって免疫能を恒常的にあるいは日常的に賦活化させておくことが望ましいと考えられている。 そうした恒常的なあるいは日常的な免疫能の賦活化を目的として、様々な食品やサプリメント、あるいは漢方処方や生薬等の天然抽出物を含む免疫賦活剤が数多く研究され、また開発されている。例えば、ケフィア粒(特許文献1)、イソマルトオリゴ糖(特許文献2)、アマノリ属抽出物(特許文献3)、大豆タンパク質(特許文献4)には水溶性リグニン(特許文献5)等を、例として挙げることができる。 黒千石は、栽培に手間がかかることから1970年代頃にはいったん栽培が途絶えてしまった、黒大豆の一種である。最近になって、黒大豆が大豆イソフラボン、アントシアニンを多く含むという栄養的な価値と味の良さが再評価され、再び栽培が始められたが、その利用は納豆、黒豆茶、雑穀商品、巻き寿司等の、一般的な食品素材としての範囲に留まっている。特開平2−65790号公報特開平2−174718号公報特開平3−284626号公報特開平4−229189号公報特開平2−237934号公報 本発明は、免疫バランス調節作用、特に免疫賦活能を有する新たな天然素材を提供することを目的とする。 本発明者らは、黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物、特に水で膨潤した黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物が、その他の黒大豆には認められない免疫賦活能を示すこと、及び行き過ぎたTh2系免疫能の亢進を抑制し得ることを見いだし、下記の各発明を完成した。(1)黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物を有効成分とする免疫バランス調節剤。(2)黒千石が、水で膨潤した黒千石である、(1)に記載の免疫バランス調節剤。(3)水で膨潤した黒千石が水で煮た黒千石又は水蒸気で蒸した黒千石である、(2)に記載の免疫バランス調節剤。(4)黒千石の破砕物が、水で膨潤した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で膨潤したものである、(1)に記載の免疫バランス調節剤。(5)水で膨潤した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で膨潤したものが水で煮た黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で煮たもの、若しくは水蒸気で蒸した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水蒸気で蒸したものである、(4)に記載の免疫バランス調節剤。(6)黒千石の破砕物が、水を移動相とした遠心分離において400×gで上澄み画分に回収され、18000×gで沈殿画分に回収される破砕物である、(4)又は(5)に記載の免疫バランス調節剤。(7)さらに水分が除去された黒千石又は黒千石の破砕物である、(2)〜(6)の何れかに記載の免疫バランス調節剤。(8)エタノール水溶液が、30体積%エタノール水溶液及び/又は60体積%エタノール水溶液である、(1)〜(7)の何れかに記載の免疫バランス調節剤。(9)エタノール水溶液抽出物が、エタノール水溶液を移動相とした遠心分離において485×gで上澄み画分に回収される抽出物である、(1)〜(7)の何れかに記載の免疫バランス調節剤。(10)抗原提示細胞を活性化させるための、(1)〜(9)の何れかに記載の免疫バランス調節剤。(11)脾臓免疫細胞を活性化させるための、(1)〜(9)の何れかに記載の免疫バランス調節剤。(12)黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物の免疫バランス調節用食品としての使用。(13)黒千石が、水で膨潤した黒千石である、(12)に記載の使用。(14)水で膨潤した黒千石が水で煮た黒千石又は水蒸気で蒸した黒千石である、(13)に記載の使用。(15)黒千石の破砕物が、水で膨潤した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で膨潤したものである、(12)に記載の使用。(16)水で膨潤した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で膨潤したものが水で煮た黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で煮たもの若しくは水蒸気で蒸した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水蒸気で蒸したものである、(15)に記載の使用。(17)黒千石の破砕物が、水を移動相とした遠心分離において400×gで上澄み画分に回収され、18000×gで沈殿画分に回収される破砕物である、(15)又は(16)に記載の使用。(18)さらに水分が除去された黒千石又は黒千石の破砕物である、(13)〜(17)の何れかに記載の使用。(19)抗原提示細胞を賦活化させるための食品としての、(12)〜(18)の何れかに記載の使用。(20)脾臓免疫細胞を活性化させるための食品としての、(12)〜(18)の何れかに記載の使用。(21)水で膨潤した黒千石を磨り潰したものを、水を移動相として400×gの遠心分離を行い、回収される上澄み画分をさらに18000×gで遠心分離を行って、沈殿画分として回収される破砕物からなる黒千石の破砕物を有効成分とする免疫バランス調節剤。(22)水で膨潤した黒千石を磨り潰したものを、水を移動相として800×gの遠心分離を行って回収される沈殿画分に30体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、回収される濾液を485×gの遠心分離を行って上澄み画分に回収される抽出物を有効成分とする免疫バランス調節剤。(23)水で膨潤した黒千石を磨り潰したものを、水を移動相として800×gの遠心分離を行って回収される沈殿画分に30体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、さらに回収される固形分に60体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、回収される濾液を485×gの遠心分離を行って上澄み画分に回収される抽出物を有効成分とする免疫バランス調節剤。 本発明の免疫バランス調節剤は、黒千石という天然素材を利用した安全な免疫バランス調節剤であり、生体防御に重要な免疫細胞を、特に抗原提示細胞を活性化することによって免疫機能を賦活化させることができる。また同時に、行き過ぎたTh2系免疫能を抑制して、Th1系免疫能とTh2系免疫能とのバランスを保ち、免疫による生体防御機能の強化と望ましくないアレルギー反応の抑制を達成することができる。実施例1に示した黒千石又は黒千石の破砕物のIFNγ産生誘導能を示すグラフである。収穫年の異なる黒千石から調製した破砕物のIFNγ産生誘導能を示すグラフである。黒千石とその他の豆から調製した可溶画分と沈殿画分(破砕物)におけるIFNγ産生誘導能の比較試験結果を示すグラフである。収穫年の異なる黒千石から調製した破砕物の、脾臓免疫細胞に対する増殖促進作用をグラフである。黒千石の破砕物との共培養による、NK1.1陽性NK細胞及びNKT細胞、CD11c陽性樹状細胞、CD19陽性B細胞、TCRβ陽性T細胞の活性化している細胞の割合の増加を示す、フローサイトメトリーによる解析結果である。黒千石の破砕物との共培養により、DC表面のMHCクラスII分子及びCD86分子の発現が有意に促進されることを示す、フローサイトメトリーによる解析結果である。黒千石の破砕物との共培養により、DC表面のMHCクラスI分子、MHCクラスII分子、CD40及びCD86の発現が有意に促進されることを示す、フローサイトメトリーによる解析結果である。黒千石とその他の豆から調製した沈殿画分(破砕物)におけるDCに対するIL−12p70産生促進能の比較試験結果を示すグラフである。エタノールを用いて乾燥させた黒千石の破砕物のIFNγ産生誘導能を示すグラフである。黒千石きな粉からの破砕物のIFNγ産生誘導能を示すグラフである。黒千石の破砕物がTLR2又はTLR4に認識され、IFNγの産生を誘導することを示すグラフである。黒千石の水溶画分、30体積%エタノール抽出画分、60体積%エタノール抽出画分及び100%エタノール抽出画分の脾臓免疫細胞に対するIFNγ産生誘導作用を示したグラフである。60体積%エタノール抽出画分が、TLR2及びTLR4に認識され、脾臓免疫細胞からのIFNγ産生を誘導することを示す図である。60体積%エタノール抽出画分が、TLR2及びTLR4に認識され、骨髄由来樹状細胞からのIL−12p70産生を誘導することを示す図である。60体積%エタノール抽出画分が、ヒト末梢血単核球からのIFNγ産生をより誘導することを示す図である。 本発明は、黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物を有効成分とする免疫賦活剤である。黒千石は黒大豆(学名Glycine max)の一種であるが、実は球形であること、他の黒大豆よりも極小粒(100粒重量は約10−11g)であること、他の黒大豆よりも大豆イソフラボン及びアントシアニンの含有量が高いこと、普通の大豆の歯数が9−10枚であるのに対して黒千石は13−14枚であること等、多くの点でその他の黒大豆とは性質が異なる、固有の品種である。 黒千石は、北海道では北海道黒千石生産組合(北海道雨竜郡北竜町字碧水31番地の1)が推進役となって同北竜町や北海道爾志郡乙部町等において生産され、供給されている。また、黒千石は岩手県岩手郡雫石町においても生産され、供給されている。本発明では、これら黒千石をその産地を問わずにいずれも利用することができ、黒千石又は納豆等の黒千石の加工品に新たな機能的付加価値を与えるものである。 本発明の免疫バランス調節剤の一態様は、黒千石、特に水で膨潤した黒千石をそのまま使用するものである。水で膨潤した黒千石は、乳鉢と乳棒を用いて磨り潰せるあるいは砕ける程度にまで、適当な量、好ましくは過剰量の水に一昼夜浸すか、過剰量の水に浸して煮るか、あるいは水蒸気を用いて蒸すかして、調製すればよい。また、本発明では、上記の様な水で膨潤した黒千石を凍結乾燥等によって乾燥させたものも使用することができる。本発明において「水で膨潤した黒千石」と表すときは、特に断らない限り、水で膨潤した黒千石及びそれを乾燥させたものを含めて意味するものとする。本発明の免疫バランス調節剤の好適な態様は、黒千石に対してその重量比で約10倍程度の量の水を加えて煮ることで得られる、「水で膨潤した黒千石」である。 本発明の免疫バランス調節剤の他の好ましい形態は、黒千石由来の破砕物である。黒千石由来の破砕物には、生の黒千石又は黒千石を加熱焙煎したものを磨り潰すあるいは砕いて得られる破砕物であって一度も水で膨潤していない破砕物、生の黒千石又は黒千石を加熱焙煎したものを磨り潰すあるいは砕いて得られる破砕物を水で膨潤させて得られる破砕物、水で膨潤した黒千石を磨り潰すあるいは砕いて得られる破砕物、水で膨潤した黒千石を乾燥させたものを磨り潰すあるいは砕いて得られる破砕物等を挙げることができる。すなわち、本発明の免疫バランス調節剤は、黒千石の破砕物である限り、破砕する前の黒千石が生であるか、加熱焙煎されたものであるか、水で膨潤したものであるか、水で膨潤したものを乾燥させたものかは問わず、また破砕の操作と水による膨潤の操作の前後も問わない。また、破砕物には粉末も含まれる。 さらに、生の黒千石又は黒千石を加熱焙煎したものを磨り潰すあるいは砕いて得られる破砕物を水で膨潤させて得られる破砕物及び水で膨潤した黒千石を磨り潰すあるいは砕いて得られる破砕物は、加熱乾燥、風乾、あるいは凍結乾燥等の乾燥処理によって水を除去してから使用してもよい。すなわち本発明では、水を含んだままの破砕物及びそこから水を除去したものも、利用することができる。 本発明では、「水で膨潤した黒千石の破砕物」と表すときは、前記水を含んだままの破砕物及びそこから水を除去したものの何れも含むことを意味する。また、「黒千石の破砕物」と表すときは、一度も水で膨潤していない破砕物及び「水で膨潤した黒千石の破砕物」を含め、本発明における黒千石由来の破砕物の全ての態様を含むことを意味する。 黒千石又は「水で膨潤した黒千石」を磨り潰す又は砕く操作は、乳鉢と乳棒、ミキサーやブレンダーその他の豆類を破砕することのできる一般的な器具、装置あるいは方法によって行うことができ、特別な器具、装置、方法等は特に必要とされない。 本発明で利用可能な「黒千石の破砕物」の好ましい第一の例は、生の黒千石又は黒千石を加熱焙煎したものを磨り潰すあるいは砕いて得られる破砕物である。この黒千石の破砕物はそのまま免疫バランス調節剤として使用してもよく、また破砕物を過剰量の水に浸して水で膨潤させて「水で膨潤した黒千石の破砕物」としてから、免疫バランス調節剤として使用してもよい。なお、前記の通り、この破砕物から水を除去したものを「水で膨潤した黒千石の破砕物」として使用してもよい。 本発明で利用可能な「黒千石の破砕物」の好ましい第二の例は、過剰量の水を用いて煮た黒千石を煮汁と共に乳鉢と乳棒を用いて磨り潰した後、濾過処理でフィルター上に回収される「水で膨潤した黒千石の破砕物」である。この破砕物はほぼ白色を呈しており、黒千石の黒褐色の元となっているアントシアニンやポリフェノール等の植物色素の殆どは、濾過処理における濾液画分に移行しているものと推察される。なお、前記の通り、この破砕物から水を除去したものを「水で膨潤した黒千石の破砕物」として使用してもよい。 また、本発明で利用可能な「黒千石の破砕物」の好ましい第三の例は、過剰量の水を用いて煮た黒千石を煮汁と共に乳鉢と乳棒を用いて磨り潰した後、400×gで遠心分離を行って上澄み画分を回収し、さらにこの上澄み画分を18000×gで遠心分離したときに沈殿画分として回収される、前記第一の例よりも細かい「水で膨潤した黒千石の破砕物」である。この破砕物も、第一の例と同様にほぼ白色を呈する。また、前記の通り、この破砕物から水を除去したものを「水で膨潤した黒千石の破砕物」として使用してもよい。 本発明の免疫バランス調節剤のもう一つの好ましい形態は、前記黒千石、特に水で膨潤した黒千石のエタノール水溶液抽出物、又は前記黒千石の破砕物、特に水で膨潤した黒千石の破砕物のエタノール水溶液抽出物を使用するものである。抽出に用いるエタノール水溶液のエタノール濃度は特に限定されず、適宜濃度を選択することができるが、エタノール濃度を30体積%とするのが好ましく、60体積%とするのがより好ましい。 本発明で利用可能な「エタノール水溶液抽出物」の好ましい第一の例は、過剰量の水を用いて煮た黒千石を煮汁と共に乳鉢と乳棒を用いて磨り潰した後、遠心分離処理して回収される沈殿画分に過剰量エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、その濾液として回収し、これを遠心分離処理して上澄みとして回収される抽出物である。加えるエタノール水溶液の量は、過剰量であれば特に限定されず、例えば10倍量とすることができる。また、それぞれの上澄み画分を、そのまま「エタノール水溶液抽出物」として用いてもよく、あるいは回収後に適宜凍結乾燥等して用いることができる。 本発明で利用可能な「エタノール水溶液抽出物」の好ましい第二の例は、過剰量の水を用いて煮た黒千石を煮汁と共に乳鉢と乳棒を用いて磨り潰した後、遠心分離処理して回収される沈殿画分に過剰量エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、フィルター上に回収される固形分にさらに過剰量エタノール水溶液を加えて濾過処理を行うことにより濾液として回収し、これを遠心分離処理して上澄みとして回収される抽出物である。この場合、得られた固形分にさらに過剰量エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、その濾液を回収する工程を1又は2以上加えてもよく、また、加える過剰量エタノール水溶液の濃度を適宜選択することができる。例えば、過剰量の水を用いて煮た黒千石を煮汁と共に乳鉢と乳棒を用いて磨り潰した後、遠心分離処理して回収される沈殿画分に過剰量の30体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、フィルター上に回収される固形分に過剰量の60体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行うことにより回収される濾液を、さらに遠心分離処理して上澄みとして抽出物を回収することができる。なお、加えるエタノール水溶液の量は、過剰であれば特に限定されず、例えば10倍量とすることができる。また、上澄み画分を、そのまま「エタノール水溶液抽出物」として用いてもよく、あるいは回収後に適宜凍結乾燥等して用いることができる。 また、本発明で利用可能な「エタノール水溶液抽出物」の好ましい第三の例は、過剰量の水を用いて煮た黒千石を煮汁と共に乳鉢と乳棒を用いて磨り潰した後、800×gで遠心分離を行って回収される沈殿画分に過剰量の30体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、フィルター上に回収される固形分に過剰量の60体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行うことにより回収される濾液を、さらに485×gで遠心分離処理を行って上澄みとして抽出物を回収することができる。なお、加えるエタノール水溶液の量は、過剰であれば特に限定されず、例えば10倍量とすることができる。また、上澄み画分を、そのまま「エタノール水溶液抽出物」として用いてもよく、あるいは回収後に適宜凍結乾燥等して用いることができる。 本発明では、上記の黒千石、「水で膨潤した黒千石」、「黒千石の破砕物」又はそれらの「エタノール水溶液抽出物」が、特に「水で膨潤した黒千石」、「水で膨潤した黒千石の破砕物」又はそれらの「エタノール水溶液抽出物」が、免疫バランス調節剤として、免疫賦活剤として、免疫バランス調節用飲食物として、又は免疫賦活用飲食物として使用される。すなわち本発明は、上記の黒千石、「水で膨潤した黒千石」、「黒千石の破砕物」又はそれらの「エタノール水溶液抽出物」、特に「水で膨潤した黒千石」、「水で膨潤した黒千石の破砕物」又はそれらの「エタノール水溶液抽出物」を免疫バランス調節剤又は免疫バランス調節用飲食物として、特に免疫賦活剤又は免疫賦活用飲食物として使用すること、換言すれば動物の免疫バランスを調節すること、あるいはその免疫能を強化、増強ないし活性化することを目的としたあるいは意図した、上記の黒千石、「水で膨潤した黒千石」、「黒千石の破砕物」又はそれらの「エタノール水溶液抽出物」の、特に「水で膨潤した黒千石」、「水で膨潤した黒千石の破砕物」又はそれらの「エタノール水溶液抽出物」の使用に関するものである。本発明では、上記の黒千石、「水で膨潤した黒千石」、「黒千石の破砕物」又はそれらの「エタノール水溶液抽出物」をまとめて、「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」と表すこととする。 本発明にいう免疫バランス調節、すなわち免疫バランスを調節する作用とは、Th1系免疫能とTh2系免疫能の一方、特にTh1系免疫能を賦活化し、Th2系免疫能の行き過ぎた亢進を減弱することで、両免疫能が調節された状態に導く作用を意味する。なお、本発明にいう免疫バランスの調節は免疫バランスの調整と交換可能に使用される。また「免疫賦活」とは、動物、特にヒトを含む哺乳動物に備わる異物又は悪性新生腫瘍等に対する生体防御機構である免疫能、特にTh1系免疫能を強化、増強ないし活性化することを意味する。 一般に、Th1系免疫は、抗原提示細胞である樹状細胞やマクロファージからの抗原ペプチドの提示とIL−12の作用によって誘導されるTh1細胞(Tヘルパー1細胞)が関与する細胞性免疫として理解されている。Th1細胞は、IFNγ等Th2細胞の分化阻害やB細胞の成熟阻害を介したIgE抗体の産生を抑制するサイトカインの他に、IL−2やTNF−α等を産生し、キラーT細胞の活性化や樹状細胞やマクロファージ等の抗原提示細胞の活性を高める働きを有する。一方のTh2免疫系は、抗原提示細胞であるマクロファージからの抗原ペプチドの提示とIL−4の作用によって誘導されるTh2細胞(Tヘルパー2細胞)が関与する液性免疫として理解されている。Th2細胞は、IL−4やIL−13等のB細胞の成熟を介したIgE抗体の産生を増加させるサイトカインの他に、IL−5、IL−6、IL−10を産生する。 Th2細胞から産生されるIL−4、IL−10は、Th1細胞からのIFNγの産生を抑制するように、互いにその作用を調節し合うことが知られており、またTh2系免疫能が優性であると細胞性免疫が抑制され、感染症が重症化し易く、またB細胞の成熟を介したIgE抗体産生が増加し、アレルギー体質に陥りやすいと考えられている。従って、Th1系免疫能とTh2系免疫能のバランスの崩壊、特に行き過ぎたTh2免疫系機能の亢進ないし優性は、必ずしも生体にとって好ましいものとは言えない。 本発明で使用する「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、後の実施例に示すように、抗原提示細胞、NK細胞、T細胞、B細胞等の免疫細胞に対する活性化、すなわちTh1系免疫能を賦活化し、免疫能を強化、増強、ないし活性化するという免疫賦活作用を有する。また、本発明で使用する「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、Th2細胞の分化阻害やB細胞の成熟阻害に重要なIFNγの産生を誘導する作用、NK細胞やT細胞のIFNγ産生誘導に重要なサイトカインであるIL−12の産生を誘導する作用を示す。さらにこうした免疫賦活作用、IFNγの産生誘導、あるいはIL−12の産生を誘導する作用を通じて、行き過ぎたTh2系免疫能を減弱させることにより、Th2免疫系機能が優位にある状態、例えばアレルギーを緩和することができる。 この様に、「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、免疫賦活能を介した免疫バランス調節剤として利用することができる。具体的には、本発明の免疫バランス調節剤には、アトピー性皮膚炎、肌荒れ、敏感肌、花粉症、喘息、気管支喘息、鼻炎、蕁麻疹等のアレルギー性疾患等の予防、治療あるいは症状の改善効果を期待することができる。 また、上記のように、本発明で使用する「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」はTh1系免疫能を強化、増強、ないし活性化する、すなわち免疫賦活作用を有しており、免疫賦活剤として利用することができる。さらに、本発明で使用する「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、IFNγ産生誘導剤として、又はIL−12産生誘導剤としても利用することができる。従って、「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」を有効成分とする免疫バランス調節剤及び免疫賦活剤には、ウイルスや細菌等による感染症や悪性新生腫瘍等の予防、治療あるいは症状の改善効果を期待することができる。特に、本発明で使用される「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」を継続的に摂取することにより、ウイルスや細菌等に感染しにくい体質へと、あるいは悪性新生腫瘍に罹患しにくい体質へと、体質改善を図ることもできるものと期待される。 さらに、本発明で使用される「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、抗原提示細胞に直接作用することで、T細胞に対する抗原提示において重要な役割を果たす主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及びMHCクラスII分子の発現、さらにT細胞等を補助的に活性化する働きのあるCD86及びCD40分子の発現を上昇させる作用を有する。従って、本発明における「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、抗原提示細胞活性化剤としても有用である。 本発明で使用される「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、そのまま免疫バランス調節剤、特に免疫賦活剤として利用できる他、適当な賦形剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、安定剤等と組み合わせて組成物とし、乳剤、油剤、水和剤、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤等その他の一般的な剤型に製剤化して使用することも可能である。特に、経口的に摂取が可能な剤型とすることが好ましい。 組成物あるいは剤型における「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」の配合量は特に規定されるものではないが、組成物あるいは製剤全量中、乾燥固形分として1〜99重量%、好ましくは10〜99重量%、更に好ましくは50〜99重量%配合させるのがよい。 上記組成物あるいは各種の剤型は、「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」の他に、ビタミンや生薬等の薬物を有効成分として必要に応じて配合し、医薬品、医薬部外品の形態としても差し支えない。あるいは、デンプン、タンパク質、ミネラル成分その他の栄養素を含む食品原材料や食品添加物と組み合わせることで、免疫バランス調節作用あるいは免疫賦活作用を有する飲食物やサプリメントの形態に加工して使用することもできる。 飲食物の形態の例としては、チューインガム、キャンディ、錠菓、グミゼリー、ビスケット又はスナック等の菓子、アイスクリーム、シャーベット又は氷菓等の冷菓、羊羹、最中、甘納豆等の和菓子、プリン、ジャム等が挙げられるが、これらには限定されない。これらの飲食物に対する「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」の添加量としては、飲食物の形態によっても異なるが、0.001重量%以上の添加が望ましく、嗜好性の面からは5重量%以下の添加が好ましい。この様な飲食物の形態にある「黒千石、黒千石の破砕物又はそれらのエタノール水溶液抽出物」は、免疫バランスを調節することを、あるいは免疫力を強化、増強、ないし活性化することを目的としてあるいは意図して使用される限り、本発明の実施の一態様として理解される。 以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定的に解釈されるものではない。<実施例1>水で膨潤した黒千石のIFNγ産生誘導能(1)水で膨潤した黒千石の調製 黒千石を約20g量りとったあと、milliQ水で繰り返し表面を洗い、表面に付いた汚れを十分に除去した。さらにmilliQ水200mLを加え、オートクレーブで121℃、20分間、加圧しながら黒千石を水で膨潤させ、ペーパーフィルターを用いて回収した。さらにこの水で膨潤した黒千石を−30℃で凍結した後、凍結乾燥機を用いて乾燥させた。(2)水で膨潤した黒千石の破砕物の調製 黒千石を約10g量りとり、milliQ水で繰り返し表面を洗い、表面に付いた汚れを十分に除去した。さらにmilliQ水60mLを加え、オートクレーブで121℃、20分間、加圧しながら黒千石を水で膨潤させた。 ペーパーフィルターを用いて煮汁と黒千石を分け、黒千石を乳鉢に移し、煮汁を加えながら乳棒で磨り潰した。磨り潰した黒千石を煮汁と共に50mL容チューブに移して、1500rpm(485×g)で10分間分遠心分離処理を行い、上澄み画分を回収した。この上澄み画分の10mLを15mL容チューブに移し、1500rpm(485×g)で10分間遠心分離処理を行って、再度、上澄み画分を回収した。 この2回目の遠心分離処理後の上澄み画分1mLを1.5mL容エッペンチューブに移し、15,000rpm(17360×g)で10分間遠心分離処理して、可溶画分と沈殿画分である水で膨潤した黒千石の破砕物とをそれぞれ得た。(3)脾臓免疫細胞の分離 チャールス・リバー社より購入した7週齢のC57BL/6雌マウスより脾臓を採取した。10%FCS、2.38mg/mL Hepes、0.11mg/mLピルビン酸ナトリウム、200U/mLペニシリンG、0.1mg/mLストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地(和光純薬社)中でピンセットを用いて脾臓をほぐした。細胞を培養液と共にナイロンメッシュ (和光純薬社) を通して組織部分を除去しながら回収した。小型冷却遠心機(himac CF7D2、HITACHI社)を用いて1500rpm、5分間遠心処理したあと、上清を捨て2mLの0.155M塩化アンモニウムで37℃、1分30秒インキュベートすることで赤血球を排除し、脾臓免疫細胞/前記RPMI−1640培地を調製した。(4)IFNγ産生誘導作用の確認 前記(1)で凍結乾燥サンプルをPBSで懸濁後、最終的に0.06mg/mL〜4mg/mLとなるように、(3)の脾臓免疫細胞/前記RPMI−1640培地に添加して共培養を行った。また前記(2)より得た可溶画分は最終的に5〜320倍稀釈となるように、また沈殿画分である破砕物は最終的に250〜16000倍稀釈となるように、それぞれ(3)の脾臓免疫細胞/前記RPMI−1640培地に添加して、37℃、5%CO2雰囲気下で共培養を行った。共培養は、96穴平底プレート(Nunc社)を用い、脾臓免疫細胞の濃度は5×105cell/ウェルとした。48時間後、培養上清中のIFNγ量をELISA Mouse IFNγ BD OptEIA set(BD Bioscience社)を用いて定量した。 その結果、(1)の凍結乾燥サンプルと(2)の破砕物に、脾臓免疫細胞に対するIFNγ産生誘導能が確認された。一方、(2)の可溶画分には脾臓免疫細胞に対する有意なIFNγ産生誘導能は確認されなかった(図1)。<実施例2>黒千石のIFNγ産生誘導作用に対する収穫年度の影響 平成17、18、19年各年に収穫され、室温保存されていた黒千石から実施例1の(2)と同じ操作によって破砕物(沈殿画分)を調製し、実施例1の(4)と同じ操作(稀釈倍率を除く)によって脾臓免疫細胞に対するIFNγ産生誘導能を調べた。 その結果、収穫年度によらず、何れの破砕物についても脾臓免疫細胞に対するIFNγ産生誘導能を有することが確認された(図2)。<実施例3>黒千石と他の豆類とのIFNγ産生誘導作用の比較 中国産のオレンジささげ(Vigna unguiculata)、北海道のあずき(あずき−1、商品名「十勝産大粒手撰豆」、Vigna angularis)のあずき、北海道産の小豆(あずき−2、Vigna angularis)、宮城産の大豆(商品名「鶴の子大豆」、Glycine max)、北海道産の大納言(Phaseolus angularis)、北海道産の黒豆(Glycine max)それぞれから、実施例1の(2)と同じ操作によって可溶画分と沈殿画分を調製し、実施例1の(4)と同じ操作(稀釈倍率を除く)によって、脾臓免疫細胞に対するIFNγ産生誘導能を調べた。 その結果、黒千石以外の豆から調製された可溶画分と沈殿画分のいずれにも、脾臓免疫細胞に対する有意なIFNγ産生誘導能は確認されなかった(図3)。<実施例4>黒千石の脾臓免疫細胞に対する増殖促進作用の確認 実施例2における収穫年度の異なる黒千石から調製した破砕物と脾臓免疫細胞との48時間の共培養の終了後、各ウェルから培養上清を一部除去し、代わりに適量のTetraColor ONE試薬(生化学工業社)を加え、さらに2時間インキュベートした。インキュベーション後の各ウェルの450nm及び630nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(EZA−ABS、IWAKI社)を用いて測定した。これらの吸光度の差(450nmの吸光度−630nmの吸光度)の値から、細胞増殖の程度を定量化することができる。 その結果、破砕物を加えないコントロールと比べて、破砕物を培地に添加することで脾臓免疫細胞の増殖が促進されることが確認された(図4)。<実施例5> 実施例1の(4)における破砕物(実施例1の(2)の沈殿画分、1000倍稀釈)と共培養した脾臓免疫細胞について、培養36時間後の培養液中のNK1.1陽性NK細胞及びNKT細胞、CD11c陽性樹状細胞、CD19陽性B細胞、TCRβ陽性T細胞を、それぞれ抗NK1.1+(PK136)、抗CD11c+(HL3)、抗CD19+(1D3)、抗TCRβ+(H57−597)各モノクローナル抗体を用いて染色し、フローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience社)を用いて検出した。上記各分子は、脾臓免疫細胞における代表的な表面抗原である。また併せて、前記各細胞の細胞表面抗原の陽性細胞における初期活性化抗原であるCD69分子について、抗CD69モノクローナル抗体(H1.2F3)を用いて染色した。なお、培地に何も添加してない群を無添加コントロールとして用意した。 その結果、無添加コントロールと比較して、黒千石の破砕物との共培養により、前記細胞表面抗原を有する細胞数が有意に増加していることが確認された(図5)。<実施例6> チャールス・リバー社より購入した7週齢のC57BL/6雌マウスの大腿骨から骨髄細胞を採取し、6穴平底プレート(Nunc社)に1×106cell/ウェルとなるよう播種し、10ng/mLのGM−CSF (Peprotech社)の存在下で6日間培養し、抗原提示細胞である樹状細胞(DC)を誘導した。この細胞と実施例1の(2)の黒千石破砕物(沈殿画分、1000倍稀釈)とを10%FCS、2.38mg/mL Hepes、0.11mg/mLピルビン酸ナトリウム、200U/mLペニシリンG、0.1mg/mLストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地中で共培養し、36時間後における細胞表面のMHCクラスII分子及びCD86分子の発現レベルを、抗MHCクラスII分子モノクローナル抗体(AF6−88.5)及び抗CD86モノクローナル抗体(GL1)を用いたフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience社)により検出した。 その結果、黒千石の破砕物を添加しないコントロール(control)と比較して、黒千石の破砕物を添加することにより、MHCクラスII分子及びCD86分子の発現が有意に促進されていることが確認された(図6)<実施例7> 実施例6で調製したDCを実施例1の(2)の黒千石破砕物(沈殿画分、1000倍稀釈)と10%FCS、2.38mg/mL Hepes、0.11mg/mLピルビン酸ナトリウム、200U/mLペニシリンG、0.1mg/mLストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地中で共培養し、0、4及び8時間後におけるDC表面のMHCクラスI分子、MHCクラスII分子、CD40及びCD86の発現レベルを、抗MHCクラスI分子モノクローナル抗体(AF6−120.1)、抗MHCクラスII分子モノクローナル抗体(AF6−88.5)、抗CD40モノクローナル抗体(3/23)及び抗CD86モノクローナル抗体(GL1)を用いたフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience社)により検出した。 その結果、黒千石の破砕物を添加しないコントロールと比較して、黒千石の破砕物を添加することにより、DC表面のMHCクラスI分子、MHCクラスII分子、CD40及びCD86の発現が有意に促進されていることが確認された(図7)。<実施例8>黒千石と他の豆類との抗原提示細胞の活性化作用の比較 実施例6で調製したDCを実施例3で調製した各種の豆由来の破砕物(沈殿画分)と16時間、前記RPMI−1640培地中で共培養した後の培養上清を用意し、培地中のIL−12p70をマウスIL−12BD OptEIAセット(BD Bioscience社)を用いて定量した。 その結果、黒千石由来の破砕物がDCに対する有意なIL−12p70産生促進能を有する一方、その他の豆由来の破砕物にはDCに対するIL−12p70産生促進能は確認されなかった(図8)。<実施例9> 実施例1の(2)で調製した沈殿画分(破砕物)を100%エタノールで懸濁した後、プラスチックシャーレに広げ、遮光したデシケーターにて一晩乾燥させた。残った固形物を回収し、サンプルとした。これらのサンプルを最終濃度0〜100μg/mLになるように調節して、実施例1の(4)と同様にして、マウス脾臓免疫細胞に対するIFNγ産生誘導能の評価を行った。 その結果、100%エタノールを用いて乾燥させた黒千石の破砕物についても、IFNγ産生誘導能が確認された(図9)。<実施例10>(1)黒千石きな粉の調製 含水量15%以下の乾燥黒千石を、遠赤外線処理した炒り鍋で100℃乃至150℃で15分乃至20分間、一様に攪拌しながら加熱焙煎した後、さらに温度を180℃乃至200℃に上げて30秒〜1分間加熱焙煎して炒り上げた。この加熱焙煎した黒千石から得られる黒千石きな粉500mgを、milliQ水2mLに懸濁して十分に撹拌した後、1500rpm(485×g)で遠心分離を行った。その上澄み画分を回収し、15000rpm(17360×g)で再び遠心分離して回収される沈殿画分を100μLのPBSで懸濁して、黒千石の破砕物を得た。この破砕物を用いて、実施例1の(4)と同様にして、マウス脾臓免疫細胞に対するIFNγ産生誘導能の評価を行った。 その結果、黒千石きな粉からの破砕物についても、IFNγ産生誘導能が確認された(図10)。<実施例11>黒千石によるIFNγ産生誘導作用におけるTLR依存性の検討 チャールス・リバー社より購入した7週齢のC57BL/6雌マウス、TLR2(Toll Like Receptor 2)欠損マウス、TLR4(Toll Like Receptor 4)欠損マウス及びTLR9(Toll Like Receptor 9)欠損マウスからそれぞれ脾臓を採取し、実施例1の(3)と同じ操作によって脾臓免疫細胞/前記RPMI−1640培地を調製した。実施例1の(2)と同じ操作により、沈殿画分である水で膨潤した黒千石の破砕物を得、200倍稀釈となるようそれぞれの脾臓免疫細胞/前記RPMI−1640培地に添加して、37℃、5%CO2雰囲気下で共培養を行った。共培養は、96穴平底プレート(Nunc社)を用い、脾臓免疫細胞の濃度は5×105cell/ウェルとした。48時間後、培養上清中のIFNγ量をELISA Mouse IFNγ BD OptEIA set(BD Bioscience社)を用いて定量した。また、沈殿画分である水で膨潤した黒千石の破砕物を加えずに、同様に培養したそれぞれの脾臓免疫細胞の培養上清中のIFNγ量を定量し、これをコントロールとした。 その結果、黒千石の破砕物を添加して共培養したC57BL/6雌マウス及びTLR9欠損マウスの脾臓免疫細胞の培養上清中では、コントロールと比較して高いIFNγ産生が確認された。一方、黒千石の破砕物を添加して共培養したTLR2欠損マウス及びTLR4欠損マウスの脾臓免疫細胞の培養上清中においては、コントロールと比較してIFNγ産生がされているものの、C57BL/6雌マウス及びTLR9欠損マウスの脾臓免疫細胞の培養上清中に比べると、著しいIFNγ産生の減弱が確認された。このことから、沈殿画分である水で膨潤した黒千石の破砕物は、TLR2又はTLR4によって認識され、IFNγの産生を誘導することが示された(図11)。<実施例12>黒千石のエタノール抽出画分によるIFNγ産生誘導作用の確認 黒千石を約10g量りとったあと、milliQ水で繰り返し表面を洗い、表面に付いた汚れを十分に除去した。さらにmilliQ水60mLを加え、オートクレーブで121℃、20分間、加圧しながら黒千石を水で膨潤させた。 ペーパーフィルターを用いて煮汁と黒千石を分け、黒千石を乳鉢に移し、煮汁を加えながら乳棒で磨り潰すことにより黒千石破砕物懸濁液を調製した。この懸濁液を3000rpm(800×g)で20分間遠心分離処理を行うことにより沈殿画分と上澄み画分とを得、凍結乾燥機を用いてこの上澄み画分を乾燥させることにより水溶画分を調製した。 前記沈殿画分を10倍量の30体積%エタノール水溶液に懸濁して30分間攪拌した後、濾紙(Whatman社)を用いて30体積%エタノール固形分と30体積%エタノール濾液とに分離した。30体積%エタノール濾液を1500rpm(485×g)で15分間遠心分離処理し、得られた上澄み画分を濃縮遠心機(EYELA社)で処理してエタノールを蒸発させた後、液体窒素で冷却し、凍結乾燥機で完全に溶媒を除去することにより、30体積%エタノール抽出画分を調製した。 次いで、前記30体積%エタノール固形分を10倍量の60体積%エタノール水溶液に懸濁して30分間攪拌した後、濾紙(Whatman社)を用いて60体積%エタノール固形分と60体積%エタノール濾液とに分離した。60体積%エタノール濾液を30体積%エタノール濾液と同様に処理することにより、60体積%エタノール抽出画分を調製した。 さらに、前記60体積%エタノール固形分を10倍量の100%エタノール水溶液に懸濁して30分間攪拌した後、濾紙(Whatman社)を用いて100%エタノール固形分と100%エタノール濾液とに分離した。100%エタノール濾液を30体積%エタノール濾液及び60体積%エタノール濾液と同様に処理することにより、100%エタノール抽出画分を調製した。 それぞれ調製した、水溶画分、30体積%エタノール抽出画分、60体積%エタノール抽出画分及び100%エタノール抽出画分をPBSで懸濁後、最終的に6.25μg/mL〜400μg/mLとなるように、実施例1の(3)と同じ操作によって得た脾臓免疫細胞/前記RPMI−1640培地に添加して、実施例1の(4)と同様にしてIFNγ量を定量した。 その結果、水溶画分及び100%エタノール抽出画分を添加した場合は、いずれもIFNγ産生はほとんど確認されなかった。一方、30体積%エタノール抽出画分又は60体積%エタノール抽出画分を添加した場合は、いずれも12.5μg/mL〜400μg/mLとなるように添加した場合において、IFNγ産生が顕著であることが確認された。特に、30体積%エタノール抽出画分を50μg/mL〜100μg/mL及び60体積%エタノール抽出画分を50μg/mL〜200μg/mLとなるように添加した場合において、IFNγ産生が非常に顕著であることが確認された(図12)。<実施例13>60体積%エタノール抽出画分によるIFNγ産生誘導作用におけるTLR依存性の検討 実施例12と同じ操作によって調製した60体積%エタノール抽出画分をPBSで懸濁後、最終的に50μg/mL、100μg/mL又は200μg/mLとなるように、それぞれ、実施例1の(3)と同じ操作によって得た脾臓免疫細胞/前記RPMI−1640培地に添加し、実施例1の(4)と同様にしてIFNγ量を定量した。 その結果、60体積%エタノール抽出画分を添加して共培養したC57BL/6雌マウス及びTLR9欠損マウスの脾臓免疫細胞の培養上清中では、いずれの濃度となるように添加した場合も、コントロールと比較して高いIFNγ産生が確認された。また、TLR2欠損マウスの脾臓免疫細胞の培養上清中では、60体積%エタノール抽出画分を添加して共培養した場合、コントロールと比較してIFNγ産生がされているものの、50μg/mL及び100μg/mLとなるように添加した場合、同濃度で添加した場合のC57BL/6雌マウス及びTLR9欠損マウスの脾臓免疫細胞の培養上清中に比べると、著しいIFNγ産生の減弱が確認された。さらに、60体積%エタノール抽出画分を添加して共培養したTLR4欠損マウスの脾臓免疫細胞の培養上清中では、いずれの濃度となるように添加した場合も、IFNγ産生はほとんど確認されなかった。以上のことから、60体積%エタノール抽出画分は、TLR2又はTLR4、特にTLR4によって認識され、IFNγの産生を誘導することが示された(図13)。<実施例14>60体積%エタノール抽出画分によるIL−12p70産生誘導作用におけるTLR依存性の検討 チャールス・リバー社より購入した7週齢のC57BL/6雌マウス、TLR2欠損マウス、TLR4欠損マウス及びTLR9欠損マウスそれぞれの大腿骨から骨髄細胞を採取し、実施例6と同じ操作によってDCを誘導した。実施例12と同じ操作によって60体積%エタノール抽出画分を得、PBSで懸濁後、最終的に200μg/mLとなるようにして、実施例8と同じ操作により、それぞれのDCと共培養を行った。12時間後、実施例8と同じ操作により培養上清中のIL−12p70を定量した。また、60体積%エタノール抽出画分を添加せずに同様に培養したDCの培養上清中のIL−12p70量をそれぞれ定量し、これをコントロールとした。 その結果、60体積%エタノール抽出画分を添加して共培養したC57BL/6雌マウス及びTLR9欠損マウスのDCの培養上清中では、コントロールと比較して高いIL−12p70産生が確認された。また、TLR2欠損マウスのDCの培養上清中では、60体積%エタノール抽出画分を添加して共培養した場合、コントロールと比較してIL−12p70産生がされているものの、C57BL/6雌マウス及びTLR9欠損マウスのDCの培養上清中に比べると、著しいIFNγ産生の減弱が確認された。さらに、TLR4欠損マウスのDCの培養上清中では、コントロールと同様にIL−12p70産生が全く確認されなかった。以上のことから、60体積%エタノール抽出画分は、TLR2又はTLR4、特にTLR4によって認識され、IL−12p70産生を誘導することが示された(図14)。<実施例15>60体積%エタノール抽出画分によるヒト末梢血単核球におけるIFNγ産生誘導作用の検討 健康な被験者2名(図15中に示す被験者−1及び被験者−2)より末梢血を採取し、リンパ球比重分離液(SIGMA社)を用いて末梢血単核球を単離し、それぞれの被験者について末梢血単核球/前記RPMI−1640培地を調製した。これを96穴平底プレート(Nunc社)に末梢血単核球の濃度が2×105cell/ウェルとなるよう播種し、そこに0.1μg/mL又は1μg/mLとなるよう抗CD3抗体(ミルテニーバイオテク社)を加えてT細胞を刺激した。その後、実施例12と同じ操作によって調製した60体積%エタノール抽出画分をPBSで懸濁後、最終的に50μg/mL又は100μg/mLとなるように、それぞれの末梢血単核球/前記RPMI−1640培地に添加し、37℃、5%CO2雰囲気下で共培養を行った。48時間後、培養上清中のIFNγ量をhuman IFNγ BD OptEIAセット(BD Bioscience社)を用いて定量した。また、抗CD3抗体及び/又は60体積%エタノール抽出画分を添加せずに同様に培養した末梢血単核球の培養上清中のIFNγ量をそれぞれ定量し、これをコントロールとした。 その結果、いずれの被験者の末梢血単核球の培養上清中においても、抗CD3抗体を加えなかった場合はIFNγ産生がほとんど確認されなかった。一方、0.1μg/mL又は1μg/mLの抗CD3抗体を加えた場合、コントロールと比較してIFNγ産生が確認された。また、そのIFNγ産生量は60体積%エタノール抽出画分を添加することよって増加し、60体積%エタノール抽出画分を50μg/mLとなるように添加した場合よりも、60体積%エタノール抽出画分を100μg/mLとなるように添加した場合の方が、より増加することが確認された(図15)。 水で膨潤した黒千石、水で膨潤した黒千石の破砕物、黒千石の破砕物であって水で膨潤したもの又はそれらのエタノール水溶液抽出物を有効成分とするTh1系免疫賦活剤。 水で膨潤した黒千石が水で煮た黒千石又は水蒸気で蒸した黒千石である、請求項1に記載のTh1系免疫賦活剤。 水で膨潤した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で膨潤したものが水で煮た黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で煮たもの、若しくは水蒸気で蒸した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水蒸気で蒸したものである、請求項1に記載のTh1系免疫賦活剤。 黒千石の破砕物が、水を移動相とした遠心分離において400×gで上澄み画分に回収され、18000×gで沈殿画分に回収される破砕物である、請求項1から請求項3のいずれかに記載のTh1系免疫賦活剤。 さらに水分が除去された水で膨潤した黒千石、水で膨潤した黒千石の破砕物又は黒千石の破砕物であって水で膨潤したものである、請求項1から請求項4の何れかに記載のTh1系免疫賦活剤。 エタノール水溶液が、30体積%エタノール水溶液及び/又は60体積%エタノール水溶液である、請求項1から請求項5の何れかに記載のTh1系免疫賦活剤。 エタノール水溶液抽出物が、エタノール水溶液を移動相とした遠心分離において485×gで上澄み画分に回収される抽出物である、請求項1から請求項6の何れかに記載のTh1系免疫賦活剤。 抗原提示細胞を活性化させるための、請求項1から請求項7の何れかに記載のTh1系免疫賦活剤。 脾臓免疫細胞を活性化させるための、請求項1から請求項8の何れかに記載のTh1系免疫賦活剤。 水で膨潤した黒千石を磨り潰したものを、水を移動相として400×gの遠心分離を行い、回収される上澄み画分をさらに18000×gで遠心分離を行って、沈殿画分として回収される破砕物からなる黒千石の破砕物を有効成分とするTh1系免疫賦活剤。 水で膨潤した黒千石を磨り潰したものを、水を移動相として800×gの遠心分離を行って回収される沈殿画分に30体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、回収される濾液を485×gの遠心分離を行って上澄み画分に回収される抽出物を有効成分とするTh1系免疫賦活剤。 水で膨潤した黒千石を磨り潰したものを、水を移動相として800×gの遠心分離を行って回収される沈殿画分に30体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、さらに回収される固形分に60体積%エタノール水溶液を加えて濾過処理を行い、回収される濾液を485×gの遠心分離を行って上澄み画分に回収される抽出物を有効成分とするTh1系免疫賦活剤。


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