生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_抗酸化活性物質の製造方法
出願番号:2010516861
年次:2014
IPC分類:C07C 51/367,C07C 62/32,C07B 53/00


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多田 全宏 JP 5464444 特許公報(B2) 20140131 2010516861 20090609 抗酸化活性物質の製造方法 国立大学法人東京農工大学 504132881 白洲 一新 100124659 多田 全宏 JP 2008150882 20080609 JP 2008312727 20081208 20140409 C07C 51/367 20060101AFI20140319BHJP C07C 62/32 20060101ALI20140319BHJP C07B 53/00 20060101ALN20140319BHJP JPC07C51/367C07C62/32C07B53/00 G C07C 51/367 A61K 31/192 A61K 31/366 A61P 3/10 A61P 17/10 A61P 25/28 C07C 62/32 C09K 15/08 CAplus(STN) CASREACT(STN) REGISTRY(STN) 特開2006−199666(JP,A) 特開2007−508320(JP,A) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2004年,Vol. 14,1943-1946 Walter L. MEYER, Richard A. MANNING, Erich SCHINDLER, Robert S. SCHROEDER, D. Craig SHEW,Diterpenoid Total Synthesis, an A→B→C Approach. VIII. Introduction of Oxygen at Carbon-11. Total S,The Journal of Organic Chemistry,米国,1976年,Vol. 41, No. 6,1005-1015 3 JP2009060547 20090609 WO2009151057 20091217 18 20120508 水島 英一郎 本発明は、抗酸化活性物質の製造方法に関する。さらに詳しくは、サワラ等はじめとする樹木を原料とするカルノシン酸及びその誘導体の製造方法に関する。 ローズマリー、セージ、シソ、オレガノ、バジル、タイム、マジョラム、ペパーミント等のシソ科植物は、全世界に広く分布し、約200属3500種が知られている。上記シソ科植物に含まれる抗酸化物活性物質を構造的な特徴から分類するとフェノール性ジテルペン、カフェ酸誘導体、フラボノイド、ビフェニル誘導体の4つの型に大別される。 上記シソ科植物の中でも、ローズマリーは、古くから肉料理の香辛料や民間薬として知られ、カルノシン酸、カルノソール、ロスマノールに代表される強い抗酸化活性成分を含有することが広く知られている(非特許文献1)。近年、このようなローズマリーが含有する上記抗酸化活性物質は、抗菌活性、脳神経細胞死防止効果、脳血症の治療・予防効果、アルツハイマー病予防効果、脂肪吸収防止効果、抗炎症作用、糖尿病患者の血糖値低下効果、美白効果など様々な活性が報告されており、食品添加物、サプリメント、医薬等としての利用が検討されている(特許文献1及び非特許文献2ないし非特許文献4)。 例えば、ローズマリー及びセージからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来の抽出物を有効成分として含有する、神経突起伸長剤が開示されている(特許文献2)。 上記抽出物の一例であるカルノシン酸は、ローズマリー等の所定部位をアルコールにて抽出して得られることが開示されている。しかしながら、ローズマリーの全草5000グラムに対し、アルコール処理等を行い得られるローズマリーの抽出物から分離されたカルノシン酸は、わずか1.5グラムであり、製造効率としては十分でないという問題点がある。 また、上記抗酸化活性物質の一つであるカルノシン酸を抽出する方法として、ローズマリーの葉を水溶性酸の存在下で、低級アルキルアルコール水溶液で処理して、さらに任意にカルノシン酸を抽出して精製することを含む方法が開示されている(特許文献3及び特許文献4)。しかしながら、上記これらの方法においては、カルノシン酸の出発原料としてローズマリーの葉を使用している。ローズマリーの葉は、生産量と価格によりその供給量は大きく変わりものであり、安価にしかも大量にカルノシン酸を供給できる製造方法という観点からすれば十分ではない。 一方、サワラは、日本特産の針葉樹であり、天然生は栃木、群馬、及び長野県上高地などに多く分布している。その葉及び樹皮には、カルノシン酸の原料となる、ピシフェリン酸等の関連化合物を大量に含有する(非特許文献5)。さらにサワラには、現在、合成食品添加物として使用されているジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)と同様活性を有する特定の物質が含まれていることが明らかになっている。上記合成食品添加物として使用されているジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が発がん性など人体に影響を及ぼすことを鑑みれば、サワラを有効利用した活用法が期待されているところである。 このようにサワラ等の樹木は、植物資源として有望であるが、それらの成分の際立った利用方法は開発されていない。一方、ローズマリー等の主要抗酸化活性物質であるカルノシン酸の効率的な製造方法は開示されていない。 なお、本件特許出願人は、本件発明に関連する文献公知発明が記載された刊行物として、以下の技術文献を開示する。特開2001−158745号公報特開2007−230945号公報特表2001−518072号公報特開2003−55686号公報多田全宏、「シソ科香草に含まれる抗酸化活性物質の生理活性」、FFIジャーナル オブ ジャパン、2000年、184号S. C.Etter, 「Spices & Medicinal Plants」, Journal of Herbs, 11, 121-159 (2004)T. Satoh,K. Kosaka, K. Itoh, A. Kobayashi, M. Yamamoto, Y. Shimojo, C. Kitajima, J. Cui,J. Kamins, S. Okamoto, M. Izumi, T. Shirasawa, S. A. Lipton, 「J. Neurochem.」, 104, 1116-1131 (2008)K.Ninomiya, H. Matsuda, H. Shimoda, N. Nishida, N. Kasajima, T. Yoshino, T.Morikawa, M. Yoshikawa, 「Bioorg. Med. Chem. Lett.」, 14 (8), 1943-1946(2004)du Xiao,M. Kuroyanagi, T. Itani, H. Tatsuura, M. Udayama, M. Murakami, K. Umehara, N.Kawahara, 「Chem. Pharm. Bull.」, 49 (11), 1479-1481 (2001). 以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、日本の山野に広く存在する樹木であるサワラ等の常緑広葉樹を出発原料とし、カルノシン酸及びその誘導体等を抽出して、抗酸化活性物質を製造する方法を提供することある。 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、サワラ等を原料とし、その抽出物であるピシフェリン酸等の化合物のフェノールのオルト位を特定の酸化剤により酸化することにより、強抗酸化活性成分であるカルノシン酸及びその誘導体を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、以下の技術的事項から構成される。すなわち、[1] 下記一般式(1)で表されるピシフェリン酸誘導体と、(上記一般式(1)において、R1は、COOR3、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかであり、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基を表す。)下記一般式(2)ないし一般式(4)で表されるいずれかの酸化剤、(上記一般式(2)及び(4)において、R4、R5及び、R6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表す。上記一般式(3) において、Xは、ハロゲン原子、nは1を表す。)を、反応させることにより、酸化する第1の工程と、前記第1の工程において生成するピシフェリン酸誘導体中間体を還元反応又は加水分解反応をさせる第2の工程を有することを特徴とする下記一般式(5)で表される抗酸化活性物質の製造方法。(下記一般式(5)中、R1は、COOR4、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかであり、R2、R7及びR4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基のいずれかを表す。)[2] 前記酸化剤が、一般式(3)において、X=Iであり、かつn=1である2−ヨードキシ安息香酸(IBXと言う)であることを特徴とする[1]に記載の抗酸化活性物質の製造方法。[3]前記酸化剤が、一般式(4)で表される2−ヨードキシ安息香酸トリアシルエステル誘導体であることを特徴とする[1]に記載のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。[4] [1]ないし[3]の何れかに記載の製造方法により、製造した抗酸化活性物質。[5] [4]に記載の抗酸化活性物質を含有することを特徴とする糖尿病抑制剤。[6] [4]に記載の抗酸化活性物質を含有することを特徴とするアルツハイマー病抑制剤。[7] [4]に記載の抗酸化活性物質を含有することを特徴とするニキビ治療薬。 本発明によれば、サワラから極めて高い収率にて、カルノシン酸等に代表される抗酸化活性物質を簡易かつ大量に製造することができる。また、本発明によれば、安価な特定の酸化開始剤を使用することにより、簡易な工程によりカルノシン酸等の抗酸化活性物質を製造することができる。 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。(サワラ等の樹木ついて) 本発明の抗酸化活性物質の製造方法は、まず、サワラ等樹木から、ピシフェリン酸及びその誘導体を抽出し、特定の過酸化物により、ピシフェリン酸等のフェノールのオルト位を酸化し、その後還元反応または加水分解する工程を有することを特徴とするものである。 本発明において、抗酸化活性物質とは、例えばカルノシン酸、カルノソール、ロスマノール等に代表される強い抗酸化活性を有する化合物をいう。本発明において「抗酸化活性物質」とは、ローズマリーのみから抽出したものした以外にも、セージ、シソ、オレガノ、バジル等のローズマリー以外のシソ科植物を出発原料とし、又はこれらの出発原料を組み合わせたものを出発原料として製造される組成物を含むものである。本発明の抗酸化活性物質の製造方法に使用される原料は、本発明の製造方法の目的物質であるカルノシン酸等の原料となる、ピシフェリン酸及びその誘導体をその成分に含んでいればよく、特に制限されるものではないが、例えば、ヒノキ科のサワラ属の樹木を例示することができる。上記樹木としては、例えばサワラ、シノブヒバ、オウゴンシノブヒバ、ヒムロおよびヒヨクヒバを例示することができる。上記例示した針葉樹の中でも、その生産量及び取り扱いの観点から、サワラが好ましく、これらの原料を混合して使用することもできる。以下、本発明の製造方法の目的物質である抗酸化活性物質の出発原料となるピシフェリン酸及びその誘導体の一般式を示す。 上記一般式において、R1は、COOR3、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかである。すなわち、R1は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基である。 R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1ないし6のアルキル基であり、炭素数1ないし6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等を例示することができる。上記一般式において、R1がカルボキシル基(R1=COOH)かつR2が水素原子(R2=H)である場合には、下記化学式で示されるピシフェリン酸となる。なお、ピシフェリン酸は、サワラに最も多く含まれているジテルペンであり、かつ化学的に安定かつ、無色、無臭の結晶である。また、R1がメトキシカルボニル基(R1=COOCH3)かつR2が水素原子(R2=H)である場合には、ピシフェリン酸メチル、R1がカルボキシル基(R1=COOH)かつR2が水素原子(R2= CH3)である場合には、o-メチルピシフェリン酸メチルとなる。 サワラは、日本国の至るところで入手することができる常緑高木であり、きわめて容易に入手することができる。さらに、サワラは、入手容易でありかつ、大量に存在するバイオマスである。なお、本発明においては、サワラの部位の中で、ピシフェリン酸とその誘導体化合物を多く含むのでもその葉と樹皮を使用するのが好ましい。 サワラ等の原料から、ピシフェリン酸等を抽出する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下の方法により抽出することができる。すなわち、サワラ等の原料を溶媒に浸漬又は溶媒によって還流することにより容易に抽出することができる。使用できる溶媒としては、水、アルコール、アルカン、カルボン酸、エステル、ケトンを例示することができる。また、これら溶媒は、単独で使用することもでき、これら2種類以上を適宜混合して使用することもできる。 上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル1−プロパノール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、3−メチル1−ブタノール、2、2ジメチル1−プロパノールなどが挙げられる。また上記アルカンとしては、ペンタン、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどが挙げられる。 ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトンが挙げられる。また、必要に応じて、上記の有機溶媒から二種類以上を採択して混合溶液として使用することもできる。上記溶媒の中でも、安全性等の取り扱いの観点から、水、アルコールの単独又は水とアルコールとの混合溶媒を使用することが好ましい。特に好ましくは水とエタノールの混合溶媒とするのが好ましい。 上記溶媒抽出を行う場合の抽出時間及び抽出温度は、原料の種類により適宜設定することができる。例えば、原料をサワラとし、抽出する溶媒としてメタノールを採択して抽出する場合には、その抽出温度を還流温度にする事が望ましく、抽出反応時を10時間ないし24時間とすることができる。上記抽出方法により、生成した下記一般式で示されるピシフェリン酸及びその誘導体を含有する溶液を抽出後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて分離後、再結晶によって精製することができる。(ピシフェリン酸のオルト位酸化) 本発明の抗酸化活性物質の製造方法は、上記化学式で示されるピシフェリン酸及びその誘導体の構造式中、フェノールのオルト位酸化反応に際して、下記一般式で示される特定の過酸化物を採択した点に特徴を有する。すなわち、本発明においては、下記一般式で表される酸化剤を使用し、ピシフェリン酸及びその誘導体のフェノールのオルト位を酸化するものである。 (上記一般式(2)及び一般式(4)において、また、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表す。上記一般式(3)において、Xは、ハロゲン原子、nは1を表す。) 一般に、フェノール類のオルト位酸化反応において採択される方法としては、セレン酸化物による直接酸化方法、過酸化ベンゾイルによる酸化方法、空気酸化、2-Iodoxybenzoic acid(以下、「IBX」と言います。)による酸化等方法を例示することができるが、これに限定されるものではない。本発明においては、種々の酸化剤を使用することによって、例えばサワラ属樹種等から抽出される、ピシフェリン酸誘導体を酸化することができる。例えば、ジアシル類を表す上記一般式(2)において、R4及びR5をハロゲン化フェニルとしたハロゲン化フェニルとしたメタクロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO)と、ハロゲン化フェニルとハロゲン化アルキル基としたクロロアセチルメタクロロ過酸化ベンゾイル(CAMCBPO)を使用することができるが、これらの酸化剤に何ら限定されない。また、上記IBXの中でも酸化効率及び安全性の観点から、上記一般式(3)の中でも、Xをヨウ素とし、n=1としたIBXが特に好ましい。この点、後述する実施例においては、酸化剤としてIBXや過酸化ジアシルを用いたがこれに限定されない。本発明においては、酸化剤として、上記一般式で表される安息香酸誘導体を使用することもできる。 上記酸化剤の中でも、IBXによる酸化では、酸化物が更に酸化され、複雑な混合物を生成することが多い。IBXによるオルト位酸化では、酸化物が更に酸化され、オルト−キノンを生成するが、一般的にオルト−キノンは不安点で分解しやすいので水素化ナトリウムよって速やかに還元することによってカテコールに変換した。また、安全かつ取り扱いが簡便な酸化剤としてメタクロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO)とクロロアセチルメタクロロ過酸化ベンゾイル(CAMCBPO)を開発した。 なお、本発明で使用する酸化剤である上記IBXは、2−ヨード安息香酸から所定の条件にて、簡易に製造することができる。以下に反応式を示す。(オルト位酸化後のエステル基の還元的除去) IBXによる酸化後の生成したオルトキノンの還元反応に使用される還元剤としては、カルボキシル基を還元しない程度の緩やかな還元性を有する触媒であれば特に制限されるものではないが、たとえば、トリアルコキシ水素化アルミニウムリチウム[LiAlH(OR)3]、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)水素化ホウ素ナトリウム、トリアルキル水素化ホウ素リチウム(LiR3BH)及びジアルキル水素化アルミニウムを例示することができる。なお、これらの還元剤は単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。(オルト位酸化後のエステル基の加水分解) また、オルト位酸化後のエステル基は加水分解によっても除去することができる。加水分解反応の触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基類と水―メタノール、水―エタノールなどの溶媒の組み合わせが考えられる。 これらの還元反応または加水分解により、本発明の製造方法において目的とする抗酸化活性物質を製造することができる。このように本発明においては、入手可能で安価な過酸化物を使用してピシフェリン酸等の化合物のフェノールのオルト位を効率よく酸化することができる結果、抗酸化活性物質を高い効率で製造することができる。 さらに、本発明においては、製造された抗酸化活性物質を既知の方法によりカルノソールおよびロスマノールに変換することができる。例えば、カルノソールは、カルノシン酸をDDQ、酸化銀または空気などによって酸化すると、生成するキノンーキノンメチド互変異性体がラクトン化し、製造することがきる。ロスマノールは、カルノソールを塩化メチレン中、ピリジニウムクロロクロメート(PCC)による酸化、または、炭酸水素ナトリウム存在下、空気による酸化によって製造することができる。 酸化剤として、IBXを使用し、さらに生成したオルトキノンを水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を使用してエステル基を還元することができる。以下に反応式を示す。さらに、加水分解をすることにより、以下のIBXを用いたカルノシン酸の合成方法により、カルノシン酸を製造することができる。 このように本発明の製造方法によればカルノシン酸及びその誘導体の抗酸化活性物質を簡易かつ容易にしかも大量に製造することができる。更にこれらの抗酸化活性物質を原料としてカルノソール、ロスマノール等の有用な化合物を大量に製造することができる。 以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。(実施例1)<ピシフェリン酸の分離> サワラの葉(東京都府中市晴見町東京農工大学農学部森林から採取)を採取し、そのまま出発原料とした。上記サワラの葉160gを秤量し、メタノール約800ml中で約65℃にて、24時間還流した。次に、上記還流操作により得られたメタノール抽出液を減圧濃縮した後、酢酸エチルと水により液/液による抽出操作を行った。さらに、上記抽出操作後、酢酸エチル層を濃縮し、その濃縮物をシリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル(体積比3:1)を用いて、カラムクロマトグラフィーを行った。ピシフェリン酸を含む画分を濃縮後、再度同様にカラムクロマトグラフィーを行い、得られたピシフェリン酸を含む画分をヘキサン/酢酸エチル(体積比3:1)を用いて結晶化させ、目的化合物であるピシフェリン酸248 mgを得た。 上記生成したピシフェリン酸の融点及びその微細構造をそれぞれ、融点測定器及び1H−NMR、13C−NMRにより測定した。なお、融点測定器は、 Laboratory Device社製MEL-TEMPを使用し、補正なし条件下で測定した。1H−NMRおよび13C−NMRの測定は、日本電子社製JEOLalpha-600 (1H: 600 MHz, 13C: 150.8 MHz) スペクトロメーターを使用し。重クロロホルム中テトラメチルシランを標準として測定した。 図1にピシフェリン酸の分析結果を示す。 ピシフェリン酸:m.p. 174-180 ℃ ; 1H-NMR(600 MHz, CDCl3) δ: 6.89 (1H, s), 6.67 (1H, s), 3.10 (1H, sept., J = 6.6 Hz), 2.89(1H, dd, J = 16.2, 6.0 Hz), 2.82-2.76 (2H, m), 2.46 (1H, dddd, J = 13.1, 12.0,11.0, 5.9 Hz), 1.94 (1H, m), 1.87 (1H, ddd, J = 11.0, 4.4, 2.8 Hz), 1.60 (1H,ddd, J = 13.7, 3.4, 3.1 Hz), 1.49 (1H, dd, J = 13.2, 1.8 Hz), 1.45 (1H, d, J =12.6 Hz), 1.24 (2H, m), 1.22 (3H, d, J = 6.6 Hz), 1.21 (3H, d, J = 6.6 Hz),0.96 (3H, s), 0.82 (3H, s)13C-NMR (150 MHz,CDCl3) δ: 181.2, 150.6, 138.2, 133.5, 129.2,127.4, 112.3, 52.2, 47.5, 41.7, 36.7, 34.0, 32.1, 29.3, 26.8, 22.6, 22.3, 20.3,20.1, 18.6.<ピシフェリン酸のオルト位酸化> ピシフェリン酸(200mg:0.63mmol)を塩化メチレン(10ml)に溶解させた後、m‐クロロ過酸化ベンゾイル(590mg:1.9mmol)を加え溶解させた。この溶液を室温、アルゴン下で16時間放置した後、濃縮した。濃縮残渣は酢酸エチルに溶かし、ヘキサンを加えて析出した結晶をロ別した。母液を更に濃縮しオルト位酸化されたカルノシン酸モノエステル含む混合物が得られた。この混合物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルーヘキサン)を行いカルノシン酸モノエステルの粗生成物(130 mg)を得た。 カルノシン酸モノエステル : light yellow powder ; 1H-NMR(600 MHz, CDCl3) δ: 8.20 (1H, s), 8.10 (1H, dd, J = 7.5, 1.8 Hz), 7.60 (1H, dd, J =8.4, 1.8 Hz), 7.45 (1H, t, J = 8.4 Hz), 6.69 (1H, s), 3.35-3.32 (1H,m),2.97-2.86 (2H, m), 2.40-2.33 (1H, m), 1.91-1.87 (2H, m), 1.61-1.59 (2H, m),1.52-1.48 (1H, m), 1.34-1.25 (2H, m), 1.20 (3H, d, J = 6.6 Hz), 1.17 (3H, d, J= 6.6 Hz), 1.01 (3H, s), 0.89 (3H, s) 13C-NMR (150 MHz,CDCl3) δ: 180.17, 163.70, 140.06, 136.69,135.71, 134.81, 133.62, 130.97, 130.32, 129.94, 128.43, 124.77, 119.2, 53.82,48.36, 41.59, 34.32, 34.29, 32.59, 31.99, 27.64, 22.94, 22.75, 21.16, 20.05,18.54 以上の結果より、カルノシン酸モノエステルを含む分画をこれ以上精製することなく、還元的条件下でエステル基を加水分解し、水酸基への誘導を行なった。カルノシン酸モノエステルを含む分画(70 mg)をメタノール(9ml)に溶かし、1%-NaOH(1ml)と水素化ホウ素ナトリウム(13.2 mg)を加え、アルゴン下2時間加熱還流した。生成物は1M塩酸で酸性にし、食塩水―酢酸エチルで抽出した。抽出液は食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮残渣はヘキサン抽出し、抽出液を濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル 5:1後に3:1)で精製し、カルノシン酸 (23 mg)を得た。 カルノシン酸: 1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 6.58(1H, s), 3.35-3.31 (1H,m), 3.20 (1H, sept, J = 7.2 Hz), 2.85-2.79 (2H, m),2.42-2.37 (1H, m), 1.92-1.78 (2H, m), 1.65-1.49 (3H, m), 1.36-1.22 (2H, m),1.22 (3H, d, J = 3.0 Hz), 1.20 (3H, d, J = 3.0 Hz), 1.01 (3H, s), 0.93 (3H, s);13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ: 182.63,142.06, 141.53, 133.70, 128.92, 122.04, 119.44, 53.96, 48.76, 41.88, 34.44,34.41, 32.60, 31.48, 27.16, 22.68, 22.47, 21.85, 20.38, 18.88. 以上より、ピシフェリン酸からカルノシン酸までの2段階の総収率は25-55%であった。(実施例2)<クロロアセチルメタクロロ過酸化ベンゾイル(CAMCBPO)を用いたカルノシン酸の合成> クロロ酢酸(59.7mg, 0.63 mmol)を塩化メチレン(15 ml)に溶解し、ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC, 143.5 mg, 0.70 mmol)を加え、アルゴン気流下0 ℃で15 分撹拌した後、メタクロロか過安息香酸(mCPBA, 152.7 mg, 0.88 mmol)を加え、アルゴン気流下0 ℃で30 分撹拌し,クロロアセチルメタクロロ過酸化ベンゾイル(CAMCBPO)を生成させた。この反応液に、ピシフェリン酸(100 mg, 0.32mmol)を加え、アルゴン気流下0 ℃→室温で66 時間撹拌した。セライトにより、dicyclohexylureaを濾過し、母液を濃縮後、酢酸エチルとブラインによって液‐液抽出した後、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 5 : 1)に供し、カルノシン酸モノエステルを含む租生成画分(71.1 mg)を得た。この画分をこれ以上精製することなく、MeOH(9 ml)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(35.9 mg, 0.95 mmol)を加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液(1%水溶液, 1 ml)を加えアルゴン気流下2時間加熱還流した。1 N塩酸によって反応を停止し、ヘキサンで液‐液抽出し、有機層を飽和NaHCO3及びブラインで洗浄した後MgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 10 : 1)に供し、租生成であるカルノシン酸(23.3mg, 0.07 mmol, 22.4%)を得た(化13を参照)。)(実施例3) フェノール類のオルト位酸化反応において使用する、酸化剤としてIBXを使用し、生成物を還元する事によって、カルノシン酸を製造した。<2-iodxybenzoicacid (IBX)の製造> 過硫酸カリウム塩(デュポン社商品名:Oxone)(14.9 g, 26.0 mmol)を水(90 ml)に溶解し、2-iodobenzoic acid (2.0 g, 8.00 mmol)を加え、70℃で3時間攪拌した。反応液を1時間氷冷し、生成した結晶を吸引濾過し、水(6×40 ml)とacetone(2×40ml)で洗浄した。結晶個体を室温で乾燥させIBX(0.57 g, 2.03 mmol)を収率25%で得た。 IBX ; whitepowder ; m.p. ; 232-233 ℃ ; 1H-NMR (600 MHz, d6-DMSO) δ ;8.15(1H, d, J = 7.8 Hz), 8.04(1H, d, J = 7.2 Hz), 8.00(1H, t, J = 7.9 Hz),7.85(1H, t, J = 7.8 Hz) ; 13C-NMR(150 MHz, d6-DMSO) δ ; 167.49, 146.55, 133.38, 132.95, 131.43, 130.08, 124.99<IBXを用いたカルノシン酸の合成> ピシフェリン酸(316.4mg, 1.00 mmol)を無水DMF(5 ml)に溶解し、IBX(336.0 mg, 1.20 mmol)を加え、アルゴン気流下室温で1時間攪拌した。TLCにて酸化反応進行を確認後、反応液にNaBH4(378.3 mg,10 mmol)を加えアルゴン気流下室温で6時間攪拌した。その後1 M HClを加え反応を停止させ、Hexaneで液−液抽出した後、有機層をbrineで洗浄した。その後MgSO4で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 10 : 1)で精製し、カルノシン酸(114.3mg, 0.34 mmol)を34%の収率で得た。 カルノシン酸;yellow powder ; 1H-NMR(600 MHz, CDCl3) δ ;6.57 (1H, s), 3.30 (1H,d, J = 12 Hz ), 3.17 (1H, sept, J = 7.2 Hz), 2.86-2.78(2H, m), 2.42-2.35 (1H, m), 1.88-1.85 (1H, m), 1.75 (1H, t, J = 12 Hz),1.62-1.56 (2H, m), 1,48 (1H, d, J = 12 Hz), 1.34-1.23 (2H, m), 1.21 (3H, d, J =3.0 Hz), 1.20 (3H, d, J = 3.0 Hz), 1.01 (3H, s), 0.90 (3H, s); 13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ ; 183.39, 142.10,141.32, 133.79, 129.02, 122.08, 119.38, 53.95, 48.67, 41.81, 34.46, 34.33,32.59, 31.44, 27.13, 22.49, 22.12, 21.69, 20.31, 18.83 以上の実施例から、サワラから高い収量でピリフェリン酸(Pisiferic acid)を分離精製し、これをオルト位酸化することにより、ローズマリーの主要抗酸化活性物質であるカルノシン酸(Carnosicacid)を効率的に製造する事ができることが理解される。 上記実施例は、近年、アルツハイマー病や様々な生活習慣病の予防効果があることで注目されているローズマリーの主用抗酸化活性物質を、木材資源として大量植林されているサワラの葉から供給する事を可能にしたものであり、その技術的意義は極めて大きい。(実施例4及び実施例5)<抗菌活性の測定> 実施例1によって合成したローズマリーの主要抗酸化活性物質であるカルノシン酸(実施例4)およびこのカルノシン酸から合成したカルソール(実施例5)を用いて、抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌活性(抗MRSA活性)および抗アクネ菌活性を測定した。すなわち、ニキビ(座瘡)は思春期頃から皮膚に生ずる慢性炎症性疾患で、ニキビの発症と悪化は食生活やストレスなどの要因と毛穴に寄生したアクネ菌や黄色ブドウ球菌、皮膚ブドウ球菌の増殖(感染症)が重要な役割を果たすと考えられている。現在までに本疾患の治療薬として使用が認められている医療用外用抗菌薬は、種類が少なく古いものが多く、臨床治療に応用できる薬剤が少ない。このため、日本のみならず海外でもニキビ(座瘡)の治療効果を持つ新規の有効な治療薬が求められている。このような観点から、合成したローズマリーの主要抗酸化活性物質を用いて、抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌活性および抗アクネ菌活性を測定した。また、比較例として、実施例4及び実施例5と同様な条件下におけるバンコマイシン(比較例1)及びアンピシリン(比較例2)の場合の抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌活性(抗MRSA活性)および抗アクネ菌活性を測定した。測定結果を表1に示す。 なお、抗アクネ菌活性の測定は、以下のように行った。すなわち、実施例1で得られた抗酸化活性物質を試料として、プルロニックL44(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)にて10倍にて希釈し、これをアクネ菌用培地に10重量%希釈することで試料を1.0重量%濃度に調製した。コントロールとしては10重量%プルロニックL−44を用いた。GAM液体培地にてアクネ菌を24時間培養した後、沈殿させ、アクネ菌用培地にて上記GAM液体培地を2回洗浄し、これを接種菌液として試料に接種した。その後、24時間、48時間後に残存菌数をカウントした。カウントは、アクネ菌用培地を用いて1.0〜100,000倍まで段階希釈し、平板塗抹法を用い嫌気的に培養後カウントした。なお、上記抗アクネ菌活性測定と同様の条件にてメチシレン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌活性の測定を行った。 表1によれば、本発明の抗酸化活性物質の製造方法により得られた主要な抗酸化活性物質は、顕著な抗菌活性を有しており、これらの結果は、本発明の抗酸化活性物質がニキビ治療薬として有用である可能性を示している。 本発明の抗酸化活性物質の製造方法は、木材資源として大量に植林されているサワラを原料とした抗酸化活性物質の製造方法であるので、林業及び環境技術分野の発展に貢献することができる。さらに、本発明のカルノシン酸の製造方法は、医薬及び医療技術分野の技術革新に大きく貢献することができる。下記一般式(1)で表されるピシフェリン酸誘導体と、(上記一般式(1)において、R1は、COOR3、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかであり、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基を表す。)下記一般式(2)ないし一般式(4)で表されるいずれかの酸化剤、(上記一般式(2)及び(4)において、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表す。上記一般式(3)において、Xは、ハロゲン原子、nは1を表す。)を、反応させることにより、酸化する第1の工程と、前記第1の工程において生成するピシフェリン酸誘導体中間体を還元反応又は加水分解反応をさせる第2の工程を有することを特徴とする下記一般式(5)で表される抗酸化活性物質の製造方法。(上記一般式(5)中、R1は、COOR4、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかであり、R2、R7及びR4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基のいずれかを表す。) 前記酸化剤が、一般式(3)において、X=Iであり、かつn=1である2−ヨードキシ安息香酸(IBXと言う)であることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化活性物質の製造方法。 前記酸化剤が、一般式(4)で表される2−ヨードキシ安息香酸トリアシルエステル誘導体であることを特徴とする請求項1の抗酸化活性物質の製造方法。


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