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タイトル:特許公報(B2)_シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン製造方法
出願番号:2010511975
年次:2014
IPC分類:C12N 15/09,C12N 9/02,C12P 13/24


特許情報キャッシュ

木野 邦器 原 良太郎 JP 5506668 特許公報(B2) 20140328 2010511975 20090512 シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン製造方法 協和発酵バイオ株式会社 308032666 高島 一 100080791 土井 京子 100125070 鎌田 光宜 100136629 田村 弥栄子 100121212 山本 健二 100122688 村田 美由紀 100117743 木野 邦器 原 良太郎 JP 2008125213 20080512 20140528 C12N 15/09 20060101AFI20140501BHJP C12N 9/02 20060101ALI20140501BHJP C12P 13/24 20060101ALI20140501BHJP JPC12N15/00 AC12N9/02C12P13/24 A C12N 15/00−15/90 PubMed CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq 特開平05−111387(JP,A) Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accession No. BAB52605, <http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sviewer/viewer.fcgi?14026006:DDBJ:6834598> 19-MAY-2007 uploaded, KANEKO T., et al., Definition: L-proline 3-hydroxylase [Mesorhizobium lotiMAFF303099] Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accession No. CAC47686, <http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sviewer/viewer.fcgi?15076132:EMBL:12424088> 06-MAY-2008 uploaded, CAPELA D., et al., Definition: Putative L-proline 3-hydroxylase [Sinorhizobium meliloti 1021] Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accession No. BA000012, <http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sviewer/viewer.fcgi?47118328:DDBJ:6834598> 19-MAY-2007 uploaded, KANEKO T., et al., Definition: Mesorhizobium loti MAFF303099 DNA, complete genome Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accession No. AL591688, <http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sviewer/viewer.fcgi?30407155:EMBL:12424088> 06-MAY-2008 uploaded, CAPELA D., et al., Definition: Sinorhizobium meliloti 1021 complete chromosome 3 JP2009058808 20090512 WO2009139365 20091119 15 20120511 池上 文緒 本発明は、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ酵素と、該酵素を使用するシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンの製造方法と、前記酵素をエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターと、該組換えベクターを含む形質転換体とに関する。 ヒドロキシ−L−プロリンは、L−プロリンにヒドロキシル基が導入された構造を有する修飾アミノ酸の一種である。ヒドロキシル基が導入される部位(3位又は4位の炭素原子)の違いと、ヒドロキシル基の空間的配置(トランス配置又はシス配置)の違いとにより4種類の異性体が存在する。ヒドロキシプロリンの異性体のうち、シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンは、カルバペネム系抗生物質、消炎剤として利用されているN−アセチルヒドロキシプロリン等の医薬品の合成中間原料として有用な物質である。 シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンの製造方法としては、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン誘導体からシス−4−ヒドロキシ−L−プロリン誘導体を有機合成する方法(特許文献1)が提案されているが、合成の原料であるトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン誘導体自体が高価だという問題点を有する。ヘリコセラス属等の微生物を使用してL−プロリンからシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを生成する方法(特許文献2及び3)も提案されているが、生成量が0.65g/Lと極めて低く、実用的ではない。特開2005−112761号公報特許第3005085号公報特許第3005086号公報 産業上有用なシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを経済的・効率的に製造する方法を開発する必要がある。 本発明は、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼを提供する。本発明のL−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼは、((1)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、(2)配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(3)配列番号1又は2のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(4)配列番号3又は4のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(5)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される場合がある。 本発明はシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンの製造方法を提供する。本発明のシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンの製造方法は、本発明のL−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼと、L−プロリンとを用意するステップと、(2)前記L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼを前記L−プロリンに対して作用させて、シス−4−ヒドロキシプロリンを得るステップとを含む。 本発明は、本発明のL−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼをエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。 本発明は、本発明の組換えベクターを含む形質転換体を提供する。 本明細書において「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合で連結した化合物である。「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」は、メチル基を含むアルキル基、リン酸基、糖鎖、及び/又は、エステル結合その他の共有結合による修飾を含む場合がある。また、「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」は、金属イオン、補酵素、アロステリックリガンドその他の原子、イオン、原子団か、他の「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」か、糖、脂質、核酸等の生体高分子か、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステルその他の合成高分子かを共有結合又は非共有結合により結合又は会合している場合がある。 本明細書でアミノ酸を表す場合、L−アスパラギン、L−グルタミン等の化合物名で表す場合と、Asn、Gln等の慣用の3文字表記で表す場合とがある。化合物名で表す場合には、アミノ酸のα炭素に関する立体配置を示す接頭辞(L−又はD−)を用いて表す。慣用の3文字表記で表す場合には、該3文字表記は特に断りのない限りL体のアミノ酸を表す。本明細書において、アミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合した化合物であって、ペプチド結合により重合することが可能ないずれかの化合物を指す。本明細書におけるアミノ酸は、生体内でメッセンジャーRNAからリボゾームで合成されるタンパク質の翻訳に用いられる20種類のL−アミノ酸とこれらの立体異性体であるD−アミノ酸とを含むがこれらに限定されない、いずれかの天然又は非天然のアミノ酸を含む場合がある。 本明細書では、ヒドロキシプロリン(以下、「Hyp」という。)の異性体について、ヒドロキシル基が導入される部位(3位又は4位の炭素原子)の違いと、ヒドロキシル基の空間的配置(トランス配置又はシス配置)の違いとにより、トランス−3−Hyp、シス−3−Hyp、トランス−4−Hyp、シス−4−Hypとそれぞれ表す場合がある。 シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(シス−4−Hyp)の構造は化学式Iで表される。 本発明のL−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼは、そのアミノ酸配列をエンコードするヌクレオチド配列からなるDNAを、無生物発現系か、宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系かで発現させることにより産生される。前記宿主生物は、大腸菌、枯草菌等のような原核生物と、酵母、菌類、植物、動物等のような真核生物とを含む。本発明の宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系は、細胞や組織のような生物の一部か、生物の個体全体かの場合がある。本発明の酵素タンパク質は、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有することを条件として、無生物発現系又は宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系の他の成分が混在する状態で本発明のシス−4−Hypの製造方法に使用される場合がある。本発明の酵素タンパク質を前記宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系で発現させる場合には、前記酵素タンパク質を発現する宿主生物、例えば本発明の形質転換体が生きた状態で本発明のシス−4−Hypの製造に用いられる場合がある。このとき、本発明のシス−4−Hypの製造は、休止菌体反応系や発酵法によって行うことができる。あるいは、前記酵素タンパク質は、精製された状態で本発明のシス−4−Hypの製造方法に使用されてもよい。 配列番号1のアミノ酸配列と、配列番号3のヌクレオチド配列とは、それぞれ、ミヤコグサ根粒菌メソリゾビウム・ロチMesorhizobium loti MAFF303099由来のBAB52605タンパク質のアミノ酸配列と、BAB52605タンパク質をコーディングする遺伝子のヌクレオチド配列とである。BAB52605タンパク質は、L−プロリンをシス−4−Hypに変換する能力を有する。配列番号1のアミノ酸配列は、データベースGenBankにアクセッション番号BAB52605として登録されている。配列番号3のヌクレオチド配列は、データベースGenBankにアクセッション番号BA000012として登録されている。なお、BAB52605タンパク質はGenBankではL−プロリン 3−ヒドロキシラーゼとしてアノテーションされていたが、本発明の実施例で示すとおり、実はプロリンからシス−4−Hypを生成するL−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有し、L−プロリン 3−ヒドロキシラーゼ活性は示さない。 配列番号2のアミノ酸配列と、配列番号4のヌクレオチド配列とは、アルファルファ根粒菌シノリゾビウム・メリロチSinorhizobium meliloti 1021由来のCAC47686タンパク質のアミノ酸配列と、CAC47686タンパク質をコーディングする遺伝子のヌクレオチド配列とである。CAC47686タンパク質は、L−プロリンをシス−4−Hypに変換する能力を有する。配列番号2のアミノ酸配列は、データベースGenBank/EMBLにアクセッション番号CAC47686として登録されている。配列番号4のアミノ酸配列は、データベースGenBankにアクセッション番号AL591792として登録されている。 本明細書においてヌクレオチド配列の相同性は、本発明のヌクレオチド配列と、比較対象のヌクレオチド配列との間でヌクレオチド配列が一致する部分が最も多くなるように整列させて、ヌクレオチド配列が一致する部分のヌクレオチドの数を本発明のヌクレオチド配列のヌクレオチドの総数で割った商の百分率で表される。同様に、本明細書においてアミノ酸配列の相同性は、本発明のアミノ酸配列と、比較対象のアミノ酸配列との間で配列が一致するアミノ酸残基の数が最も多くなるように整列させて、配列が一致するアミノ酸残基の数の合計を本発明のアミノ酸配列のアミノ酸残基の総数で割った商の百分率で表される。本発明のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の相同性は、当業者に周知の配列整列プログラムCLUSTALWを使用することにより算出することができる。 本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、Sambrook、J.及びRussell、D.W.、Molecular Cloning A Laboratory Manual 3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に説明されるサザンブロット法で以下の実験条件で行うことを指す。比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドをアガロース電気泳動によりバンドを形成させた上で毛管現象又は電気泳動によりニトロセルロースフィルターその他の固相に不動化する。6× SSC及び0.2% SDSからなる溶液で前洗浄する。本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを放射性同位元素その他の標識物質で標識したプローブと前記固相に不動化された比較対象のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション反応を6× SSC及び0.2% SDSからなる溶液中で65°C、終夜行う。その後前記固相を1× SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄し、0.2× SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄する。最後に前記固相に残存するプローブの量を前記標識物質の定量により決定する。本明細書において「ストリンジェントな条件」でハイブリダイゼーションをするとは、比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した固相に残存するプローブの量が、本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した陽性対照実験の固相に残存するプローブの量の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%以上であることを指す。 本発明のタンパク質は、(1)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、(2)配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(3)配列番号1又は2のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(4)配列番号3又は4のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(5)配列番号3又は4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される場合がある。 本発明の融合タンパク質は、特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質のアミノ末端又はカルボキシル末端に連結したものである。 本発明の特異的結合タグペプチドは、前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質を調製する際に、発現したタンパク質の検出、分離又は精製をより容易に行うことを可能にするために、他のタンパク質、多糖類、糖脂質、核酸及びこれらの誘導体、樹脂等と特異的に結合するポリペプチドである。特異的結合タグと結合するリガンドは、水溶液中に溶解した遊離状態の場合も固体支持体に不動化される場合もある。そこで、本発明の融合タンパク質は固体支持体に不動化されたリガンドに特異的に結合するため、発現系の他の成分を洗浄除去することができる。その後、遊離状態のリガンドを添加したり、pH、イオン強度その他の条件を変えることにより、固体支持体から前記融合タンパク質を分離して回収することができる。本発明の特異的結合タグは、Hisタグ、mycタグ、HAタグ、インテインタグ、MBP、GSTその他これらに類するポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。本発明の特異的結合タグは、融合タンパク質がN末端アミダーゼ活性を保持することを条件としていかなるアミノ酸配列を有してもかまわない。 本発明のタンパク質のL−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性は、本発明のタンパク質と、L−プロリンと、2−オキソグルタル酸と、2価鉄イオンと、L−アスコルビン酸とを含む反応液中で前記タンパク質をL−プロリンに対して作用させることにより生成したシス−4−Hypを定量することにより評価される場合がある。 シス−4−Hypの定量は、LC/MS等のような当業者に周知の分析機器の使用により実施される場合がある。 本発明の製造方法のステップ(2)では、本発明の組成物とL−プロリンとに加えて、pH調整のための緩衝液成分を含む反応液を用いて実施される場合がある。好ましくは前記緩衝液成分としてHEPESが使用され、pHは7.0〜7.5に調整される場合がある。好ましくは前記反応液は、本発明のタンパク質による水酸化反応に電子供与体として関与する2−オキソグルタル酸をさらに含む場合がある。前記反応液は、2価鉄イオン、L−アスコルビン酸等をさらに含む場合がある。 本発明の製造方法のステップ(2)において本発明の組成物をL−プロリンに対して作用させるために、反応液が所定の反応時間及び反応温度でインキュベーションされる。本発明の製造方法において、本発明の組成物、L−プロリン、2価鉄イオン、2−オキソグルタル酸等の反応液中における濃度か、反応液量か、反応時間か、反応温度か、その他の反応条件かは、シス−4−Hypの目標とする製造量及び収率と、製造に要する時間、費用、設備等と、その他の条件との関係で当業者により決定される場合がある。 本発明の製造方法で取得されるシス−4−Hypは、遠心分離、カラムクロマトグラフィー、凍結乾燥等のような当業者に周知の操作の組合せにより回収される場合がある。また、本発明の製造方法で取得されるシス−4−Hypは、LC/MSのような当業者に周知の分析技術を使用して生成量又は純度を評価される場合がある。 本明細書において「組換えベクター」とは、所望の機能を有するタンパク質を宿主生物において発現させるために使用される、該所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドが組み込まれたベクターである。 本明細書において「ベクター」とは、所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを組み込み宿主生物へ導入することにより、所望の機能を有するタンパク質を該宿主生物において複製及び発現させるために用いられる遺伝因子であり、プラスミド、ウイルス、ファージ、コスミド等を含むがこれらに限定されない。好ましくは前記ベクターはプラスミドの場合がある。さらに好ましくは前記ベクターは、pET−21d(+)プラスミドの場合がある。 本発明の組換えベクターは、制限酵素、DNA連結酵素等を使用する当業者に周知の遺伝子工学手法を用いて本発明のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドといずれかのベクターとを連結することにより作製される場合がある。 本明細書において「形質転換体」とは、所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドが組み込まれた組換えベクターが導入され、該所望の機能を有するタンパク質に関連する所望の形質を表すことができるようになった生物である。 本明細書において「宿主生物」とは、形質転換体の作製において、所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドが組み込まれた組換えベクターが導入される生物である。前記宿主生物は、大腸菌、枯草菌等のような原核生物と、酵母、菌類、植物、動物等のような真核生物とを含む。前記宿主生物は大腸菌の場合がある。 本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターをいずれかの適切な宿主生物に導入することにより作製される。組換えベクターの導入は、電気刺激で細胞膜に空隙を作るエレクトロポレーション法、カルシウムイオン処理と併せて行うヒートショック法等を含む当業者に周知のさまざまな手法により実施される場合がある。組換えプラスミドのマップ。水酸化反応試験についての反応停止とアミノ酸の誘導体化との手順を示す概念図。L−プロリン及びHypの4種類の異性体の標準試料についてHPLC分析を行なった結果を示すグラフ。BAB52605タンパク質を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液、Pro非添加反応液(陰性対照)及び2−OG非添加反応液(陰性対照)のHPLC分析結果を示すグラフ。CAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液、Pro非添加反応液(陰性対照)及び2−OG非添加反応液(陰性対照)のHPLC分析結果を示すグラフ。非発現反応液(陰性対照)のHPLC分析結果を示すグラフ。MS分析試料の調製の手順を示す概念図。BAB52605タンパク質、CAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液のMS分析結果を示すグラフ。BAB52605タンパク質、CAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液中の反応生成物と、シス−4−Hypの標準試料とのMS/MS/MS分析により取得されたフラグメンテーションパターンを示すグラフ。 以下の実施例によって本発明について詳細な説明を行なうが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 1.タンパク質BAB52605、CAC47686をエンコードする遺伝子のクローニング、導入及び発現 1−1.方法 (遺伝子増幅の鋳型となる微生物染色体DNAの抽出) ミヤコグサ根粒菌メソリゾビウム・ロチMesorhizobium loti MAFF303099は(独)農業生物資源ジーンバンクより、アルファルファ根粒菌シノリゾビウム・メリロチSinorhizobium meliloti 1021(NBRC 14782T)は(独)製品評価技術基盤機構より入手し、これらの染色体DNAを遺伝子増幅の鋳型として使用した。 前記2種類の微生物を5mLのTY培地(0.5% Bacto Trypton、0.3% Bacto Yeast extract、0.04% CaCl2)中で、28°C、3日間液体振とう培養を行なった。培養後遠心分離(4°C、5000×g、10分間)によって菌体を回収し、定法に従いそれぞれの微生物菌体から染色体DNAを抽出した。 (目的の遺伝子の増幅) 表1に示す本発明の酵素をエンコードする遺伝子をそれぞれの微生物菌体の染色体DNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。前記PCRには、Expand High Fidelity PCR System(Roche)を使用した。その反応条件は表2に示す。クローニング及び発現の条件を表3に示す。ミヤコグサ根粒菌メソリゾビウム・ロチMesorhizobium loti MAFF303099と、アルファルファ根粒菌シノリゾビウム・メリロチSinorhizobium meliloti 1021とを鋳型とするセンスプライマー及びアンチセンスプライマーは、それぞれ、配列番号5及び6と、配列番号7及び8とに示す。 (組換えプラスミドの取得) PCRにより増幅した目的のDNAをインサート用DNAとし、それぞれのインサート用DNA1μgとベクターであるpET−21d(+)1μgとを、制限酵素NcoI及びHindIIIを使用する37°C、16時間の反応により切断した。切断産物をGFX PCR Purification Kit(GEヘルスケア)で精製した後、それぞれのインサート用DNAとベクターとを、DNA Ligation Kit<Mighty Mix>(タカラ)を使用する16°C、3時間の反応により連結した。ライゲーション産物を、塩化カルシウム処理した大腸菌JM109株にヒートショック法により導入した。それぞれの組換えプラスミドを保持した大腸菌JM109株を、LB−A寒天培地(1% Bacto Trypton、0.5% Bacto Yeast extract、1% NaCl、1.5% Bacto Agar、100μg/mL アンピシリン)で37°C、16時間培養し、次いでLB−A液体培地(1% Bacto Trypton、0.5% Bacto Yeast extract、1% NaCl、100μg/mL アンピシリン)5mL中で37°C、16時間培養し、その後QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を使用してプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドの内部塩基配列をDNAシークエンサーにて解析し、所望のDNAが挿入されていることを確認した。作製した組換えプラスミドのプラスミドマップを図1に示す。 (目的の遺伝子の発現) BAB52605タンパク質、CAC47686タンパク質のそれぞれをエンコードするDNAの挿入が確認された組換えプラスミド(それぞれpEBAB52605、pECAC47686という。)を、塩化カルシウム処理した大腸菌Rosetta2(DE3)にヒートショック法により導入し、表3に示す手順で発現させた。すなわち前記大腸菌をLB−AC寒天培地(1% Bacto Trypton、0.5% Bacto Yeast extract、1% NaCl、1.5% Bacto Agar、100μg/mL アンピシリン、34μg/mL クロラムフェニコール)にて37°Cで一晩培養した。生育したシングルコロニーをLB−AC液体培地(1% Bacto Trypton、0.5% Bacto Yeast extract、1% NaCl、100μg/mL アンピシリン、34μg/mL クロラムフェニコール)5mLに接種し、37°C、200rpmで16時間振とう培養を行なった。その後、前記液体培地1mLを100mLの新鮮なLB−AC液体培地に接種し、37°C、200rpmで振とう培養を行なった。O.D.660=0.5に達した時点で、終濃度が0.1mMとなるようにイソプロピル−β−d−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、25°C、100rpmで培養し遺伝子発現を誘導した。9時間後、培養菌体を遠心分離(4°C、5000×g、10分間)して回収し、20mM HEPES・NaOH緩衝液(pH7.5)5mLに懸濁した。前記懸濁液を超音波破砕(3分間)した後、遠心分離(4°C、20000×g、30分間)して上清(無細胞抽出液)を回収した。 1−2.結果 上述の抽出及び増幅操作により、BAB52605タンパク質及びCAC47686タンパク質をエンコードする遺伝子のクローニングに成功した。上述の組換え操作等により、前記遺伝子を含む組換えプラスミドを作製することができた。得られた組換えプラスミドのプラスミドマップを図1に示す。前記組換えプラスミドの導入操作により、該組換えプラスミドを有する形質転換体を作製することができた。前記形質転換体による前記遺伝子の発現操作により、BAB52605タンパク質、CAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液をそれぞれ取得することができた。得られた無細胞抽出液を、以下の実験に使用した。 2.BAB52605タンパク質、CAC47686タンパク質によるL−プロリンの水酸化反応 2−1.方法 実施例1で得られたBAB52605タンパク質又はCAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液によるL−プロリンの水酸化反応をそれぞれ実施した。表4に示す組成の反応液(以下、「標準反応液」という。)を調整し、30分間、30°C、170rpmで攪拌しながら反応を行なった。また、陰性対照として、標準反応液からL−プロリンを除いた反応液(以下、「Pro非添加反応液」という。)と、2−オキソグルタル酸(2−OG)を含まない反応液(以下、「2−OG非添加反応液」という。)と、BAB52605タンパク質又はCAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液のかわりに前記タンパクを発現するベクターを含まない大腸菌Rosetta2(DE3)の無細胞抽出液を含む反応液(以下、「非発現反応液」という。)とを調製し、標準反応液と同様に30分間、30°C、170rpmで攪拌しながら反応を行なった。反応後、図2の手順に従い反応停止と、マーフィー試薬(1−fluoro−2,4−dinitrophenyl−5−L−leucinamide)を使用して反応液中に含まれる全アミノ酸の誘導体化とを行なった。その後、0.45μmフィルターを用いて反応液をろ過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供した。HPLC分析の各種条件は表5A及びBに示す。また、生成物の分子量測定のために、BAB52605タンパク質又はCAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液の質量分析(MS分析)を行った。図7の手順に従い、イオン交換カラム(Waters Oasis HLB 6cc Extraction Cartridge)を用いて反応液中の物質を精製し、減圧乾固後メタノールに溶解し、MS分析試料とした。MS分析の条件を表6に示す。 2−2.結果 図3に、L−プロリンと、Hypの4種類の異性体との標準試料についてHPLC分析を行なった結果を示す。Hypの異性体はいずれも分離された単一のピークとして検出されたため、ピーク物質の同定は保持時間により行なうこととした。 図4に、BAB52605タンパク質を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液、Pro非添加反応液(陰性対照)及び2−OG非添加反応液(陰性対照)のHPLC分析結果を示す。標準反応液ではL−プロリンのピークの減少とシス−4−Hypのピークの生成とが観察されたが、2−OG非添加反応液ではL−プロリンのピークしか観察されず、Pro非添加反応液ではいずれのピークも観察されなかった。 図5に、CAC47686タンパク質を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液、Pro非添加反応液(陰性対照)及び2−OG非添加反応液(陰性対照)のHPLC分析結果を示す。BAB52605タンパク質についての図4の結果と同様に、標準反応液ではProのピークの減少とシス−4−Hypのピークの生成とが観察されたが、2−OG非添加反応液ではProのピークしか観察されず、Pro非添加反応液ではいずれのピークも観察されなかった。(2−OG非添加反応液で観察された33分台の小ピークはPro非添加反応液でも観察されたことから基質でも生成物でもない、反応液にもともと含まれる物質についてのピークだと考えられる。) 図6に、非発現反応液(陰性対照)のHPLC分析結果を示す。非発現反応液ではL−プロリンのピークしか観察されなかった。 図8に、BAB52605タンパク質(上段)及びCAC47686タンパク質(下段)を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液のMS分析結果を示す。それぞれの分析結果において、シス−4−Hypの誘導体に相当するプロトン付加型イオン(m/z=426.1)及びナトリウム付加型イオン(m/z=448.1)が検出された。 図9に、BAB52605タンパク質(上段)及びCAC47686タンパク質(中段)を含む無細胞抽出液で反応を行なった標準反応液中の反応生成物と、シス−4−Hypの標準試料(下段)とのMS/MS/MS分析により取得されたフラグメンテーションパターンを示す。それぞれの分析結果において共通のフラグメンテーションパターンが観察され、前記タンパク質を含む無細胞抽出液による反応生成物についてのMS/MS/MS分析のフラグメンテーションパターンがシス−4−Hypの標準試料のパターンと同一であることを確認した。 これらの結果より、BAB52605又はCAC47686タンパク質とL−プロリンとの存在下でシス−4−Hypが生成されることから、前記タンパク質はいずれも、L−プロリンを位置選択的及び立体選択的に水酸化しシス−4−Hypを生成する水酸化酵素であることが確認された。Entrez Protein等のデータベースで公開されている推定タンパク質機能は、BAB52605タンパク質については「L−proline 3−hydroxylase」であり、CAC47686タンパク質については「PUTATIVE L−PROLINE 3−HYDROXYLASE PROTEIN」であった。しかし、本実験の結果からは前記タンパク質の両方の機能がL−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼであって、L−プロリン 3−ヒドロキシラーゼ活性はないことが確認された。また、BAB52605又はCAC47686タンパク質に触媒される反応では2−OGの存在下でシス−4−Hypが生成されることから、前記タンパク質はいずれも、2−OGの存在下でProの4位の炭素原子とそれに結合する水素原子との間に酸素原子を添加する2−OG依存型ジオキシゲナーゼであることが確認された。(1)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、(2)配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(3)配列番号3又は4のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(4)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(3)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質を含むことを特徴とする、L−プロリンからシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを製造するための組成物。(A)(1)配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、(2)配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(3)配列番号3又は4のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質と、(4)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(3)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質と、L−プロリンとを用意するステップと、(B)前記少なくとも1種類のタンパク質を前記L−プロリンに対して作用させて、シス−4−ヒドロキシプロリンを得るステップとを含むことを特徴とする、シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンの製造方法。 以下の(1)〜(4)からなる群より選ばれるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入して得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中にシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを生成、蓄積させ、該培養物中からシス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを採取することを特徴とする、シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンの製造方法:(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、(3)配列番号3又は4で表されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、および(4)配列番号3又は4で表されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、L−プロリン シス−4−ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。配列表


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