タイトル: | 公表特許公報(A)_架橋コラーゲンおよびその使用 |
出願番号: | 2010509553 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07K 14/78,A61L 27/00 |
ジャクリーン・エイ・シュローダー グレゴリー・エス・ダッパー ケネス・シー・オルソン JP 2010528046 公表特許公報(A) 20100819 2010509553 20080522 架橋コラーゲンおよびその使用 アラーガン、インコーポレイテッド 591018268 ALLERGAN,INCORPORATED 田中 光雄 100081422 山田 卓二 100101454 岩崎 光隆 100067035 中川 将之 100144923 落合 康 100156144 ジャクリーン・エイ・シュローダー グレゴリー・エス・ダッパー ケネス・シー・オルソン US 60/939,664 20070523 C07K 14/78 20060101AFI20100723BHJP A61L 27/00 20060101ALI20100723BHJP JPC07K14/78A61L27/00 V AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2008064503 20080522 WO2008147867 20081204 15 20100121 4C081 4H045 4C081AB11 4C081BB08 4C081CC05 4C081CD12 4C081CE11 4C081DA12 4C081EA05 4H045AA10 4H045AA20 4H045BA05 4H045BA09 4H045BA50 4H045CA40 4H045EA28 4H045EA34 4H045FA83 本発明は、概して、身体処置組成物および身体処置方法に関する。より具体的に述べると、本発明は、哺乳動物の軟組織を増大させるための、改善された体積安定性(「持続性」)を持つ架橋コラーゲンインプラントを提供する。 コラーゲンは、医薬担体として、外科的補綴物(縫合糸および創傷被覆材)として、そしてまたインプラント材料として、使用されてきた。多くの例では、コラーゲンが、その機械的性質を改良し、その免疫原性を低下させ、かつ/または吸収に対するその耐性を増加させるために、化学薬品、放射線、または他の手段で架橋される。例えば米国特許第4,424,208号には、改善された持続性を持つ架橋コラーゲンおよび再構成コラーゲン線維を含むコラーゲン組成物が記載されている。これらの材料は非常に効果的であるが、非架橋コラーゲンよりは収縮(シネレシス)が少ないとはいえ、主として身体によるその流体成分の吸収により、植込み後に体積が収縮する。一定した体積または持続性が望ましいので、補充インプラント材料の1回または複数回の追加注入が要求される。 したがって、インビボで軟組織処置部位に導入された後に改善された持続性を持つコラーゲン組成物を提供することは、有益であるだろう。発明の概要 本発明は、哺乳動物の軟組織を増大させるための、マイクロないし非フィブリル状かつ高濃度で架橋されたコラーゲンに関する。本発明の架橋コラーゲンは、中性pHで架橋されたコラーゲンと比較して、改善された体積安定性または持続性を持つ。 ある態様において、本発明は、架橋コラーゲンの製造方法を特徴とする。本方法は、マイクロないし非フィブリルコラーゲンを得るステップ、該マイクロないし非フィブリルコラーゲンを架橋剤で処理するステップ、および架橋コラーゲンを分離するステップを伴う。マイクロないし非フィブリルコラーゲンは、pH2〜5またはpH9〜12の懸濁液または溶液中でフィブリルコラーゲンをインキュベートすることによって得ることができる。好ましい一実施形態では、懸濁液または溶液のpHが4.2〜5.0の間にある。架橋時のマイクロないし非フィブリルコラーゲンの濃度は、3〜150mg/mL、好ましくは38〜52mg/mLの範囲内にある。典型的には、該処理ステップは、pH2〜5またはpH9〜12においてマイクロないし非フィブリルコラーゲンを架橋剤で処理した後、架橋の完了を促すためにpH6〜8においてマイクロないし非フィブリルコラーゲンを架橋剤で処理することを含む。本発明の方法は、場合により、局所麻酔剤(例えばリドカイン)を架橋コラーゲンと混合するステップを、さらに含んでもよい。そのように製造された架橋コラーゲンは本発明に包含される。 本発明はまた、マイクロないし非フィブリルコラーゲンと架橋剤とを含む架橋コラーゲンを提供する。マイクロないし非フィブリルコラーゲンは架橋剤によって架橋される。そのような架橋コラーゲンは上述の方法に従って製造することができる。 架橋コラーゲンは、I型、II型、III型、IV型もしくはV型コラーゲン、またはそれらの組合せに由来しうる。また、テロ含有コラーゲン、アテロコラーゲン、もしくは誘導体化コラーゲン、またはそれらの組合せに由来することもできる。 好ましくは、架橋剤は、マイクロないし非フィブリルコラーゲン中のアミノ酸残基間に共有結合を形成する能力を持つ。適切な架橋剤の例には、カルボジイミド、ポリアルデヒド、ポリスルホン、活性化PEG、エポキシド、イミダゾールおよびジイソシアネートなどがあるが、これらに限るわけではない。ある実施形態では、架橋剤がグルタルアルデヒドである。 架橋I型コラーゲンのいくつかの実施形態では、1000アミノ酸残基あたりの遊離ヒドロキシリジンおよびリジン残基の数が22〜32の範囲内、より典型的には24〜29の範囲内にある。 本発明の架橋コラーゲンはゲル状態であって、線維状態ではない。これはゲル中に水を閉じ込め、線維状コラーゲン懸濁液のように分散しない。ゲル状態の架橋コラーゲンは、インビボで、線維状態の架橋コラーゲンよりも良く、その形状を維持する。本架橋コラーゲンの線維は、中性pHで架橋された線維状コラーゲンの線維よりも小さい。 さらに本発明は、本発明の架橋コラーゲンとリドカインなどの局所麻酔剤とを含有する組成物を提供する。局所麻酔剤は架橋コラーゲンと混合される。さらにまた、本発明は、針が装着されたシリンジを含有する包装品であって、シリンジに本発明の架橋コラーゲンが充填されるものも提供する。 もう一つの態様において本発明は、哺乳動物において空隙および欠損を埋め、組織体積を増加させるための方法を特徴とする。この方法は、哺乳動物に本発明の架橋コラーゲンを投与することを伴う。好ましくは、架橋コラーゲンは皮内注入または皮下注入によって投与される。 本明細書において、「マイクロないし非フィブリルコラーゲン」とは5〜70nmの直径を持つコラーゲンを指し、「フィブリルコラーゲン」とは>70nmの直径を持つコラーゲンを指し、「線維状コラーゲン」とは、フィブリルコラーゲンおよびそれより大きな線維を指す。「テロ含有コラーゲン」とは無傷(intact)のテロペプチドを持つコラーゲンを指し、「アテロコラーゲン」とは、テロ部分が部分的にまたは完全に除去されているコラーゲンを指し、「誘導体化コラーゲン」は化学修飾コラーゲンを指す。誘導体化コラーゲンの例には、脱アミド化、メチル化、スクシニル化、およびホスホリル化コラーゲンなどがあるが、これらに限るわけではない。「ゲル状態」の架橋コラーゲンは5〜70nmの線維直径範囲を持つマイクロないし非フィブリルコラーゲンを含有し、「線維状態」の架橋コラーゲンは、70nmより大きい線維直径を持つフィブリルコラーゲンを含有する。 本明細書において、コラーゲン中の「遊離ヒドロキシルリジンおよびリジン」とは、無修飾ヒドロキシルリジンおよびリジンを指し、「中性pH」とはpH6〜8を指す。 本発明は、軟組織の欠損および空隙を、軟組織を膨らませかさ高くする材料で増大させ、埋めるための、架橋コラーゲンフィラーを提供する。本発明の架橋コラーゲンは、皮膚深層の矯正および整形にとりわけ有用である。これは、矯正することが難しい領域であって、しかも生体適合性ボーラスが身体に機械的強度を提供しうる部分にとって、その優れた形状保持性ゆえに、理想的である。 本発明の上述の特徴および他の特徴ならびにそれらを得る方法およびそれらを使用する方法は、以下の説明を参照し、それを添付の図面と併せて解釈することにより、さらに明白になり、最も良く理解されるだろう。これらの図面は本発明の典型的な実施形態だけを図示しており、したがってその範囲を限定するものではない。代表的な従来の架橋コラーゲン製造プロセスおよび本発明の架橋コラーゲン製造プロセスを図解するフローチャート。従来の架橋コラーゲンと比較した本発明の架橋コラーゲンの持続性を示す図。発明の詳細な説明 本発明は、マイクロないし非フィブリル状態で(そして好ましくは高濃度で)架橋されたコラーゲンが、中性pHで架橋されたコラーゲンと比較して、改善された持続性を持つという予想外の発見に、少なくとも部分的には基づいている。 より具体的に述べると、フィブリルコラーゲンはかなり多孔性であり、細胞および大きな分子の輸送を許す。拡散障害をさらに増加させるために、より小さな線維(マイクロフィブリル)コラーゲンを架橋することにより、網目構造内に、より大きな剛性が作り出された(RosenblattおよびShenoy, 1993「生体ポリマーゲルにおける鎖剛性と拡散放出(Chain Rigidity and Diffusional Release in Biopolymer Gels)」Proceed Intern Symp Control Rel Bioact Mater 20, Controlled Release Society, Inc.)。フィブリルコラーゲンマトリックスが大きな分子の拡散を減速する能力を持つのに対して、より小さな線維および非フィブリルコラーゲンは、より小さな分子の拡散を調整することができる(Rosenblattら, 1989「コラーゲン線維サイズ分布が拡散によるコラーゲンマトリックスからのタンパク質の放出速度に及ぼす影響(The Effect of Collagen Fiber Size Distribution on the Release Rate of Protein from Collagen Matrices by Diffusion)」J Controlled Release 9:195-203)。架橋マイクロフィブリルコラーゲンは、より緻密な網目構造または網状構造を持ち、それが、生物学的分解に対してより高い耐性または持続性を持つコラーゲンマトリックスを作り出す。本発明では、下記の実施例で述べるように、マトリックス内への細胞およびタンパク質の浸透を減少させるように、I型コラーゲンマトリックスを改質した。 本発明は、特に、注入可能な架橋I/III型コラーゲンインプラントで、哺乳動物において空隙および欠損を埋め、組織体積を増加させることに向けられる。すなわち本発明は、コラーゲンを、マイクロないし非フィブリル状態および好ましくは高濃度で架橋することによって、架橋コラーゲンを製造する方法を提供する。 本発明の架橋コラーゲンは主としてウシまたはブタ真皮などの哺乳動物原材料に由来するが、ヒト胎盤材料、ヒト線維芽細胞培養から産生されるコラーゲン、または細胞株から発現される組換え生産コラーゲンも使用することができる。ドナーは、その材料が最終的に植え込まれるホストに遺伝的に類似している必要はない。 図1を参照して説明すると、従来のプロセスでは、Allergan Medical Biomaterials(94538カリフォルニア州フリーモント、ミルモントドライブ48490)の精製I型ペプシン消化ヒトコラーゲンが、低温および低張なイオン強度(生理的条件と比較して)で溶液を中和することにより、溶液から再構成される。溶液のpHを、溶液中のコラーゲンがフィブリルに再凝集するレベルまで上昇させる。再構成された線維状コラーゲンは、中性pHにおいて架橋剤で架橋される。次に、架橋コラーゲンを遠心分離によって収集し、調製/ホモジナイズし、滑らかにし、篩分する。 これに対して、本発明のプロセスでは、コラーゲン懸濁液が遠心分離によって濃縮される。そのペレットをホモジナイズし、架橋に先だってpHを非中性レベルに調節する。架橋時のコラーゲン濃度は通常、3〜150mg/mL、より典型的には30〜60mg/mL、35〜55mg/mL、または38〜52mg/mLの範囲内にある。pHは、使用しようとする架橋剤にとって適当な非中性レベルに調節される。例えばグルタルアルデヒドによる架橋の場合は、pHを約4.5に調節することができ、ジビニルスルホンによる架橋の場合は約10に調節することができる。pHを所望の酸性レベルに調節するには、典型的には、HClの希溶液などが加えられ、一方、pHを所望のアルカリ性レベルに調節するには、NaOHなどが使用される。 架橋はpH2〜5またはpH9〜12、より好ましくはpH2〜3、2〜4、3〜4、3〜5、もしくは4〜5、またはpH9〜10、9〜11、10〜11、10〜12、もしくは11〜12で始まる。これらのpH域ではコラーゲン線維がほどかれてマイクロないし非フィブリル状態になる。より多くのリジン基が露出され、架橋に利用することができる。さらにまた、高いコラーゲン濃度が反応速度を増加させる。コラーゲンは、架橋されて小さい線維構造を形成しつつ、安定化される。好ましくは初期架橋後に、完全な架橋を促すために、0.5Mホスフェート(pH11.2)などを使ってpHを中性pH、例えばpH6〜8に、さらに調節する。次に、架橋コラーゲンゲルの崩壊または自発的線維形成を引き起こすことなく、pHを調節して中性に戻すことができる。 通常、架橋剤は多官能性であり、とりわけ二官能性である。本発明の架橋条件は、例えば、従来のプロセスで製造される同等な処方のインプラントと比較して改善された持続性を持つ共有結合架橋コラーゲンを生成するような条件である。この架橋度に到達したら、場合によっては、反応停止剤の添加によって架橋反応を停止させる。反応停止剤は架橋剤との水溶性付加物を形成する。架橋時の懸濁液中のコラーゲンの濃度、架橋剤の濃度、および架橋反応の継続時間は、改善された持続性を持つ生成物を与えるような架橋の種類および程度をもたらすための重要なプロセス条件である。 コラーゲンは、いくつかある従来の化学架橋剤(グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、エポキシド、カルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チオール誘導体化ポリエチレングリコール(PEG)などを含むが、これらに限るわけではない)のどれによっても架橋することができる。 アルデヒドは好ましい架橋剤である。コラーゲンを架橋するために使用することができるアルデヒドの例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、ピルビンアルデヒド、ジアルデヒドデンプンである。グルタルアルデヒドはとりわけ好ましい。架橋剤の官能基(例えばアルデヒド基)と反応して水溶性付加物を形成する官能基を持つ化合物は、架橋反応を停止させるために使用することができる。アミノ酸などの遊離アミノ基を持つ反応停止剤は好ましい。グリシンはとりわけ好ましい。反応混合物中のグルタルアルデヒドの濃度は、典型的には、約0.001wt%〜約0.05wt%である。グルタルアルデヒドはコラーゲン線維のヒドロキシリジンおよびリジン残基と反応することにより、コラーゲン中の遊離ヒドロキシリジンおよびリジンの数を減少させる。上述のグルタルアルデヒド濃度では、架橋後の1000アミノ酸残基あたりの遊離ヒドロキシリジンおよびリジン残基の数が約22〜32、より典型的には約24〜29である。ヒドロキシリジンおよびリジン含量を測定するには、架橋コラーゲンをホウ化水素で還元し、還元された材料を減圧下、5.7N HCl中、100℃で24時間加水分解しうる。アミノ酸分析を、利用可能な分析機(例えばDurrum Model D-500分析機)で行うことができ、ヒドロキシリジンおよびリジン/アラニン比を非架橋対照に観察されるものと比較することによって、ヒドロキシリジンおよびリジン残基が定量される。 架橋反応の継続時間は、通常、半時間〜約1週間の範囲内にある。反応は、通常、約10℃〜約35℃で行われる。反応停止剤は、架橋剤に対して少なくとも化学量論的比率で加えられる。 とりわけ好ましい架橋プロトコールは、約38〜約52mg/mLのコラーゲン濃度、pH約4.2〜約5.0、および約0.01wt%のグルタルアルデヒド、約22℃で約16時間である。 架橋反応を終結させた後に、未反応のアルデヒド、アルデヒドポリマー、そして反応停止を行った場合には、未反応の反応停止剤、およびアルデヒド-反応停止剤付加物を除去するために、架橋コラーゲン生成物を緩衝剤水溶液で洗浄することができる。リン酸ナトリウム-塩化ナトリウム緩衝溶液(pH6.9〜7.4)は好ましい。洗浄した生成物は、例えば濾過または遠心分離などにより、適切なタンパク質濃度範囲、典型的には約20〜約65mg/mL、とりわけ約25〜約40mg/mLまで濃縮することができる。タンパク質濃度は、場合に応じて、緩衝液の添加またはさらなる濃縮によって、この範囲に調節することができる。洗浄した生成物は約20ppm未満の遊離アルデヒド含量を持つ。 架橋コラーゲンの調合は、典型的には、注入時の局所疼痛を低減するために、イオン強度を等張性(すなわち約0.15〜約0.2)に調節すること、およびリドカインなどの局所麻酔剤を約0.3wt%の濃度まで添加することを伴う。とりわけ好ましい架橋生成物は、30.0〜37.0mg/mLのコラーゲン濃度、2.7〜3.3mg/mLのリドカイン濃度、および7.0〜7.6のpHを持つ。架橋生成物をさらにホモジナイズし、マイクロフルイダイゼーションによって滑らかにし、コラーゲン線維を所定の孔径の篩に通すことによって篩分する。 次に、架橋コラーゲンを、注入用の25ゲージ針またはそれよりゲージ数の大きい針を装着したシリンジに充填する。皮膚増大に用いられる製剤の場合、「注射可能な」という用語は、その製剤が25程度の低いゲージ数を持つシリンジから、通常の用手加圧下に実質的なスパイキングなく投薬できることを意味する。 本発明の架橋コラーゲンを製造するための上記のステップは、好ましくは、滅菌された材料を使って滅菌条件下で行われる。 本発明の架橋コラーゲンは、軟組織を増大させ、先天異常、後天的欠陥もしくは美容上の欠陥を修復または矯正するために、皮内または皮下に注入することができる。そのような状態の例は、片側小顔面症、頬および頬骨形成不全、片側乳房形成不全、漏斗胸、胸筋発育不全(ポーランド奇形)、および口蓋裂修復または粘膜下口蓋裂に続発する口蓋帆咽頭不全(咽頭後インプラントとして)などの先天異常;陥凹性瘢痕、皮下組織萎縮(例えば円板状エリテマトーデスに続発するもの)、角化病変、摘出眼における眼球陥入(またsuperior sulcus症候群)、顔面のざ瘡陥凹、皮下組織萎縮を伴う線状強皮症、鞍鼻変形、ロンベルク病、および片側声帯麻痺などの後天的欠陥(外傷後、術後、または感染後);ならびに眉間のしわ、深い鼻唇線、口周囲の地図状しわ、こけた頬、および乳房形成不全などといった美容上の欠陥である。 特に、本発明は、耐久性がある強い生体適合性バルキング剤で空間を埋める軟組織増大用注射剤を提供する。従来の架橋コラーゲンと比較して、本発明のコラーゲン線維はサイズが小さく、より多くの空間を占める網目構造を形成する。本発明の架橋コラーゲンは弾性および弾力性である。これは長期にわたってその形状を保ち、破壊および細胞浸潤に抵抗する。 下記の実施例は本発明の範囲を例示しようとするものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。この実施例は使用される可能性のある手法の典型であるが、当業者に知られる他の手法を代わりに利用してもよい。実際、当技術分野における通常の知識を有する者は、本明細書の教示内容に基づいて過度の実験を要さずに、さらなる実施形態を容易に構想および創造することができる。実施例本発明の架橋コラーゲンの製造 Allergan Medical Biomaterials(94538カリフォルニア州フリーモント、ミルモントドライブ48490)の精製I型ペプシン消化ヒトコラーゲンを、pHを7.0〜7.6に上昇させ、次に17000×gで5〜7分間遠心分離することによって、沈降させた。上清を遠心管から無菌的にデカントし、コラーゲンペレットをホモジナイゼーション容器中に無菌的に吸い込んだ。沈降したコラーゲンを無菌的にホモジナイズした。タンパク質濃度は91.6mg/mLだった。 0.05M HCl緩衝液および滅菌濾過WFI(注射用水)をホモジネートと混合した。タンパク質濃度は44.6mg/mL、pHは4.8だった。 3000ppmグルタルアルデヒド緩衝液を上記酸ホモジネートと混合した。その混合物を1.5時間インキュベートし、再混合し、さらに23時間インキュベートし、再混合し、さらに72時間インキュベートして、再混合した。タンパク質濃度は37.1mg/mL、pHは4.6だった。 架橋ホモジネートを0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH11.2)と混合し、次に0.04Mリン酸ナトリウム/2.6M塩化ナトリウム/60mg/mLリドカイン緩衝液と混合した。ホモジネートを24時間インキュベートし、再混合した。タンパク質濃度は31.9mg/mLだった。次に、調合されたホモジネートをマイクロフルイダイザーに通し、篩分した。従来の架橋コラーゲンと本発明の架橋コラーゲンの比較 従来の架橋コラーゲンを得るのに、Allergan Medical Biomaterials(94538カリフォルニア州フリーモント、ミルモントドライブ48490)の精製I型ペプシン消化ヒトコラーゲンを沈降させ、架橋した(約3mg/mLおよび中性pHにおいて)。従来の架橋コラーゲンを遠心分離によって収集した後、ホモジナイズし、調製し、マイクロフルイダイゼーションによって滑らかにし、篩分した。本発明の架橋コラーゲンを得るには、Inamed Biomaterials(94538カリフォルニア州フリーモント、ミルモントドライブ48490)の精製I型ペプシン消化ヒトコラーゲンを約3mg/mL、中性pHで沈降させ、遠心分離によってコラーゲンを収集した。pHを4.4〜4.8まで低下させ、コラーゲンを架橋した。次に、本発明の架橋コラーゲンをホモジナイズし、調製し、マイクロフルイダイゼーションによって滑らかにし、篩分した。 本発明の架橋コラーゲンの生体適合性を試験し、従来の架橋コラーゲンのそれと比較した。細胞毒性研究および複数のウサギ皮下植込み研究によって安全性を評価した。データは、本発明の架橋コラーゲンが、従来の架橋コラーゲンのように生体適合性であったことを証明している。 より具体的に述べると、細胞毒性研究はISO溶出法を使って行った。本発明の架橋コラーゲンインプラントは、細胞溶解または細胞毒性を何も引き起こさなかった(表1)。 ウサギ皮下植込みアッセイを使って、従来の架橋コラーゲンインプラントおよび本発明の架橋コラーゲンインプラントに対する組織応答を、いくつかの異なる時点で比較した。本発明のインプラントに対する組織応答は、従来のインプラントで見られるものと類似していた(表2)。非刺激性ないしわずかに刺激性の範囲の顕微鏡スコアは、許容できる変動性の範囲内にあり、満足できるとみなされる。 本発明の架橋コラーゲンインプラントの持続性を従来の架橋コラーゲンインプラントと比較するために、ラット皮下植込み研究を行った。ラット植込み研究の一部として、植込み部位の肉眼的評価を行った。どちらのインプラントについても、調べた全ての時点において、嚢形成も有害反応も見られなかった(表3)。 有効性を評価するために、従来の架橋コラーゲンと比較した本発明の架橋コラーゲンの持続性を、ラット皮下モデルにおいて湿重量回収率を形状保持性と併せて測定することによって評価した(McPhersonら, 1988「注射可能なコラーゲンの開発と生化学的特徴づけ(Development and Biochemical Characterization of Injectable Collagen)」J Dermatol Surg Oncol 14, Suppl 1)。形状保持性は、しわ矯正を維持するコラーゲンインプラントの能力のよい尺度であると考えられる。インプラントがその形状を維持できない場合、それはしわを効果的に矯正しないだろう。 図2に要約するラット皮下研究からのデータは、24週間の植込み後に、本発明のインプラントが、平均して、従来のインプラントよりも大きい湿重量回収率を持ち、その高さを従来のインプラントよりも良く維持したことを示している。 本明細書で言及した全ての特許および論文は、参照により、そのまま本明細書に組み込まれる。 マイクロないし非フィブリルコラーゲンを得ること; 該マイクロないし非フィブリルコラーゲンを架橋剤で処理すること;および 架橋コラーゲンを分離することを含む、架橋コラーゲンを製造する方法。 マイクロないし非フィブリルコラーゲンを、フィブリルコラーゲンをpH2〜5またはpH9〜12の懸濁液中または溶液中でインキュベートすることによって得る、請求項1に記載の方法。 マイクロないし非フィブリルコラーゲンを、フィブリルコラーゲンをpH4.2〜5.0の懸濁液中または溶液中でインキュベートすることによって得る、請求項2に記載の方法。 マイクロないし非フィブリルコラーゲンの濃度が3〜150mg/mLの範囲内にある、請求項1に記載の方法。 マイクロないし非フィブリルコラーゲンの濃度が38〜52mg/mLの範囲内にある、請求項4に記載の方法。 処理ステップが、マイクロないし非フィブリルコラーゲンをpH2〜5またはpH9〜12において架橋剤で処理した後、マイクロないし非フィブリルコラーゲンをpH6〜8において架橋剤で処理することを含む、請求項1に記載の方法。 架橋コラーゲンが、I型、II型、III型、IV型もしくはV型コラーゲンまたはそれらの組合せに由来する、請求項1に記載の方法。 架橋コラーゲンが、テロ含有コラーゲン、アテロコラーゲンもしくは誘導体化コラーゲンまたはそれらの組合せに由来する、請求項7に記載の方法。 架橋剤が、マイクロないし非フィブリルコラーゲン中のアミノ酸残基間に共有結合を形成する能力を持つ、請求項1に記載の方法。 架橋剤が、カルボジイミド、ポリアルデヒド、ポリスルホン、活性化PEG、エポキシド、イミダゾールおよびジイソシアネートからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。 架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項10に記載の方法。 局所麻酔剤を架橋コラーゲンと混合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。 局所麻酔剤がリドカインである、請求項12に記載の方法。 請求項1に記載の方法に従って製造された架橋コラーゲンを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において空隙および欠損を埋め、組織体積を増加させる方法。 架橋コラーゲンが皮内または皮下注入によって投与される、請求項14に記載の方法。 請求項1に記載の方法に従って製造される架橋コラーゲン。 架橋コラーゲン中の1000アミノ酸残基あたりの遊離ヒドロキシリジンおよびリジン残基の数が22〜32の範囲内にある、請求項16に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲン中の1000アミノ酸残基あたりの遊離ヒドロキシリジンおよびリジン残基の数が24〜29の範囲内にある、請求項17に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンがゲル状態であって、線維状態ではない、請求項16に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンがゲル中に水を閉じ込め、線維状コラーゲン懸濁液のように分散しない、請求項19に記載の架橋コラーゲン。 ゲル状態の架橋コラーゲンが、インビボで、線維状態の架橋コラーゲンよりも良く、その形状を維持する、請求項19に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンの線維が、中性pHで架橋された線維状コラーゲンの線維よりも小さい、請求項19に記載の架橋コラーゲン。 請求項16に記載の架橋コラーゲンおよび該架橋コラーゲンと混合された局所麻酔剤を含む組成物。 局所麻酔剤がリドカインである、請求項23に記載の組成物。 シリンジおよび針を含む包装品であって、シリンジに請求項16に記載の架橋コラーゲンが充填される包装品。 マイクロないし非フィブリルコラーゲン;および 架橋剤を含み、該マイクロないし非フィブリルコラーゲンが該架橋剤で架橋される、架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンが、I型、II型、III型、IV型もしくはV型コラーゲンまたはそれらの組合せに由来する、請求項26に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンが、テロ含有コラーゲン、アテロコラーゲンもしくは誘導体化コラーゲンまたはそれらの組合せに由来する、請求項27に記載の架橋コラーゲン。 架橋剤が、マイクロないし非フィブリルコラーゲン中のアミノ酸残基間に共有結合を形成する能力を持つ、請求項26に記載の架橋コラーゲン。 架橋剤が、カルボジイミド、ポリアルデヒド、ポリスルホン、活性化PEG、エポキシド、イミダゾールおよびジイソシアネートからなる群より選択される、請求項29に記載の架橋コラーゲン。 架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項30に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲン中の1000アミノ酸残基あたりの遊離ヒドロキシリジンおよびリジン残基の数が22〜32の範囲内にある、請求項26に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲン中の1000アミノ酸残基あたりの遊離ヒドロキシリジンおよびリジン残基の数が24〜29の範囲内にある、請求項32に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンがゲル状態であって、線維状態ではない、請求項26に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンがゲル中に水を閉じ込め、線維状コラーゲン懸濁液のように分散しない、請求項34に記載の架橋コラーゲン。 ゲル状態の架橋コラーゲンが、インビボで、線維状態の架橋コラーゲンよりも良く、その形状を維持する、請求項34に記載の架橋コラーゲン。 架橋コラーゲンの線維が、中性pHで架橋された線維状コラーゲンの線維よりも小さい、請求項34に記載の架橋コラーゲン。 請求項26に記載の架橋コラーゲンおよび該架橋コラーゲンと混合された局所麻酔剤を含む組成物。 局所麻酔剤がリドカインである、請求項38に記載の組成物。 シリンジおよび針を含む包装品であって、シリンジに請求項26に記載の架橋コラーゲンが充填される包装品。 請求項26に記載の架橋コラーゲンを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において空隙および欠損を埋め、組織体積を増加させる方法。 架橋コラーゲンが皮内または皮下注入によって投与される、請求項41に記載の方法。 本発明は、マイクロないし非フィブリル状かつ高濃度で架橋されたコラーゲンを開示する。本発明の架橋コラーゲンゲルは、中性pHで架橋されたコラーゲンと比較して、改善された体積安定性または持続性を持つ。また、本発明の架橋コラーゲンの製法、および哺乳動物の軟組織を増大させるためのその使用をも開示する。